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(1)

接触場面のコードスイッチングが参与者に与える影 響 : 多言語を背景にした大学院生のグループディ スカッションを対象に

著者名(日) 田崎 敦子

雑誌名 異文化コミュニケーション研究

巻 19

ページ 85‑99

発行年 2007‑03

URL http://id.nii.ac.jp/1092/00000264/

asKUIS 著作権ポリシーを参照のこと

(2)

接触場面のコードスイッチングが 参与者に与える影響

―多言語を背景にした大学院生のグループ ディスカッションを対象に―

1)

田 崎 敦 子

Influence of code-switching on Japanese and international students in group

discussions at graduate school

T ASAKI Atsuko

Japanese and international students at a graduate school of science and technology are expected to work together to complete their research activities. However, their native and nonnative status of Japanese can make them unequal in the process of communication, which may affect their research activities. In order to compensate for the lack of Japanese ability of the international students, both Japanese and international students use code-switching from Japanese into English in their commu- nication. This paper analyzed their code-switching in group discussions and examined how the use of English influenced their way to participate in communication, and their relationships. The results show that code- switching changes their relationships from native-nonnative speakers of Japanese, to nonnative speakers of English, and also “Japanese-English speakers.” These roles help them to be equal in terms of language use and participate more equally in the discussions. As they continue to communicate with each other with these changes, they create their own communication style, which helps to enhance their rapport. This active communication where they use their own styles and balance their rela- tionships will supports their research activities at graduate school.

キーワード: 二言語使用、大学院留学生、共同研究活動、日英混合話 者、英語非母語話者

(3)

はじめに

近年、日本の大学院では国際化の一環として積極的に留学生を受け入れ ている。留学生が大学院で学位を取るためには、日本人学生と共に、意見 交換をしながら専門分野の知識を深めていく必要があり、両者のコミュニ ケーションが研究活動を行う上で非常に重要である。しかし、留学生数が 増えてその背景が多様化した結果、日本語でコミュニケーションできる能 力を十分に備えていない者も多くなった。このような限られた日本語能力 の留学生と日本人学生のコミュニケーションでは、英語へのコードスイッ チング

(

以下、CS

) が頻繁に使われる (

三牧 2005

)

。国際語としての英語使 用が広まり

( Crystal 1998 )

、日本人学生と留学生の英語能力が向上してい る現在、留学生の日本語能力を補う手段として英語を使用する機会は今後 も増えるであろう。日本で学ぶ留学生の大半は非英語圏出身であるため、

日本人学生と留学生が英語を使用した場合、それは英語非母語話者同士の コミュニケーションとなる。

ファン

( 1998、2006、Fan 1994 ) は、接触言語による接触場面の分類を

提起している。その中で、参与者のどちらかが相手の言語を用いてコミュ ニケーションを行う場面、つまり参与者が母語話者

(

以下、NS

)

―非母語話 者

(

以下、NNS

) となる場面を ‘

相手言語接触場面

、参与者の双方が自分 の言語ではなく第三者の言語を使用する NNS 同士のコミュニケーション を

第三者言語接触場面

とし、それぞれの場面で参与者のコミュニケー ションへの参加方法が異なると述べている。では、同じコミュニケーショ ンの場面で、参与者が日本語と英語を使う場合、彼らはどのようにコミュ ニケーションに参加し、どのような関係を構築するのだろうか。本研究が 対象とする日本人学生と留学生は、共に研究活動を行う上で大学院生とし て対等な立場で話し合いをする必要があり、彼らのコミュニケーションに おいては相互理解を達成させるだけでなく、コミュニケーションへの参加 方法、関係構築が非常に重要である。したがって、英語への CS が彼らの 参加方法や関係に与える影響を考慮しなければ、それが効果的なコミュニ ケーションの手段であるかどうかは判断できない。

二言語使用の影響を見るためには、その二言語がどのように切り替えら

(4)

れるのか、つまり CS を分析する必要がある。そこで本研究では、研究活 動において英語を頻繁に使用する理工系大学院の日本人学生と留学生を対 象に、彼らのグループディスカッションにおける日本語から英語への CS を分析し、二言語使用が両者に与える影響を明らかにする。

1.

先行研究

1–1.

接触場面における参与者の関係

ファンは

( 1998、2006 )

、言語管理理論にもとづき日本語の相手言語接触 場面におけるコミュニケーションを分析した。その結果、NS と NNS は それぞれ言語ホスト、言語ゲストとしての役割を担いコミュニケーション に参加していることがわかった。言語ホストである NS は

接触言語の オーソリティー

となり、会話を維持し相互理解を確立するために、語彙 の簡略化、発話の減速化、話題の提供などで NNS の言語問題を調整し、

会話をコントロールする傾向がある。一方、言語ゲストである NNS は、

参加の回避や言語ホストに支援を求めるなどの達成ストラテジーを使用し ながら、自らの言語問題を調整するという。

同じく、日本語の相手言語接触場面を分析した一二三

( 1999 )

は、NS が NNS と会話をする際の意識面と言語面の関連について明らかにするた めに、母語場面との会話の比較分析、質問紙調査を行った。そして、NS は NNS に対して主導的役割の必要性を感じ、会話を円滑に進める配慮を する傾向があることを示した。これは、ファン

( 1998、2006 ) が明らかに

した言語ホストの心理、言語行動と共通する。日本語の相手言語接触場面 において、NS―NNS がこのような非対称なコミュニケーションへの参加 をしているとすれば、両者が対等な関係を構築することは難しい。

これに対し、参与者が共に日本語 NNS である第三者言語接触場面のコ ミュニケーションでは、接触言語のオーソリティーである NS が存在せず、

言語ホスト、言語ゲストという関係が成立しないため、言語ホストとして 会話を管理する言語行動がなくなり、参与者が協同で解決しようとするス トラテジーがより多く使用され、コミュニケーションへの参加を回避する

(5)

ストラテジーの使用が減少するという

(

ファン

1998、1999 )

。本研究の対象 者は、英語使用場面で NNS 同士となるが使用言語が英語の場合にも NS が会話の進行をコントロールする NS―NNS の場合と比べ、同レベルの

NNS 同士のコミュニケーションでは、参与者がより協力的に言語能力を

補い合い、言語使用範囲も拡大されたことが報告されている

( van Leir and

Matsuo 2000 )

。つまり、日本語使用でも英語使用でも、第三者言語接触場

面では言語使用の面でより対等な関係が構築されやすいといえる。

このように、相手言語接触場面、第三者言語接触場面では、参与者の役 割・参加方法が異なることがこれまでの研究で明らかにされている。しか し、それは使用言語がひとつということが前提であり、本研究のように同 じ参与者が日本語、英語を使用し、相手言語接触場面、第三者言語接触場 面を創造する場合、これまでの研究結果をそのまま適応することはできな い。

1–2.

日本語の相手言語接触場面におけるコードスイッチング

日本語の相手言語接触場面においては、英語への CS が NNS の日本語 能力を補い、相互理解を深める手段として使われていることが報告されて いる

(

大平

2000;

久保田

2004;

服部

2001 )

。さらに、こうした CS には単 に日本語の語彙を補償するだけでなく、談話の促進や調整をする、感情的 にインパクトを与えるなど、コミュニケーションをより豊かにする効果も ある

(

久保田

2004;

服部

2001 )

。これらの研究により、日本語接触場面にお ける英語への CS の機能や効果が明らかになったが、それはコミュニケー ションにおける CS の局所的な使用に注目したに過ぎず、使用言語の変化 が参与者に与える影響については分析されていない。

では、使用言語の変化が参与者に与える影響はどのように示すことがで きるのだろうか。Jacoby and Oches

( 1995 ) は、コミュニケーションとは

話し手と聞き手の相互行為であり、両者が協働的に作り上げるものだと述 べている。話し手と聞き手は、インタラクションを通してメッセージの意 味、相手との関係、アイデンティティーなどを共に形成する。そして、そ のインタラクションの流れは直前の発話にどのように反応するかによって

(6)

決まるという。こうしたコミュニケーションの協働構築の考えにもとづく と、CS による参与者の関係の変化は、言語の切り替えがどのように引き 出され、CS が含まれた発話がどのように応答されるのかを分析すること で明らかになると考える。

2. CS の定義

言語の切り替えについては、その特徴により

‘ CS ’

借用

( borrow- ing )’

混用

( code-mixing )’

という区別がある。CS は、

二つの独自の 文法システムのそれぞれの内部規則にそって、話者が意識的あるいは無意 識的に作った糸のようなものを、 意味のある並置をするということ

’ ( Gumperz 1982/2004: 83、訳とページは花崎の訳書による )

と言われるよ うに、話し手が意識的・無意識的に使う場面を含める。また、CS は言語 交替が単語や句、文レベルで生起する。一方、借用は形態素的・音韻的に ベースとなる言語に組み込まれ、その一部となった単語であるため、ほと んどの場合一言語話者にも無意識に使用されるという特徴がある

( Grosjean 1982; Gumperz 1982; Myers-Scotton 1990; Poplack 1980 )

混用は、借用と同様、文中の単語レベルの切り替えであるが、特にベー スとなる言語能力を補うために使われる言語の切り替えを指す。 また、

ベース言語と形態素的・音韻的に一致しない点では CS と共通するが、他 の言語の代用にしかすぎない点では言語交替自体にコミュニケーション上 特別な意味を持つ CS とは異なる

( Bokamba 1988; Sridhar and Sridhar 1980 )

このように CS、借用、混用には、それぞれの特徴があるが、NS、NNS を対象にした本研究では、一言語話者も日常生活で使用している借用は

NNS 特有の言語交替ではないため対象から外す。混用については、言語

能力の低い NNS の言語交替の大きな特徴のひとつと捉え、CS に含める こととする。

(7)

3.

分析対象・分析方法

本研究では、都内の理工系大学院で学ぶ日本人学生と留学生が行った

10

組の日本語によるグループディスカッション

(

日本人

2

名、留学生

2

名、約

30

分間

)

を分析対象とする。こうした構成のグループディスカッションを 対象としたのは、複数の NS、NNS が参加することにより、NS―NNS 間だけでなく、NS 同士、NNS 同士など、よりダイナミックなやりとり が観察されると考えたからである。留学生の出身国は、インドネシア

( 4

)

、ベトナム

( 4

)

、バングラデッシュ

( 4

)

、中国

( 3

)

、ブラジル

( 2

)

、ラオス

( 2

)

、以下、ブルガリア、マダガスカル、ロシア、カンボジ ア、韓国が

1

名ずつである。ディスカッションは、日頃研究室で接触場面 のコミュニケーションの機会が多い日本人学生と留学生に参加を依頼した。

参与者は互いに顔見知りである。参与者にはディスカッションを録画する こと、録画資料を研究目的以外に使用しないこと、また個人情報を保護す ることについて事前に説明し、同意を得た。

また、ディスカッションの目的は与えられた話題について全員が意見を 出し合い、考えを深めることにあることを予め説明し、参与者から理解を 得た。その際、グループで結論をひとつにまとめる必要がないことも確認 した。留学生の日本語能力は中級程度

( 8〜12

ヶ月の学習暦

)

である。英語 能力は TOEFL 500〜600点で、全員日本語より英語能力の方が高いと報 告している。日本人学生の英語能力は TOEFL 490〜560点の範囲である。

ディスカッションの話題については、話題に関する参与者の知識の有 無が参与者の談話上の役割に影響することを考慮し

(

宮副ウォン

2003;

Zuengler and Bent 1991 )

、日本人学生・留学生が同じ

大学院生

として それぞれの視点で関われる話題として

理想的な指導教員

理工系大学 院に必要な英語教育

を設定した

(

各グループは、どちらか一つのトピック について話し合った

)

。ディスカッションは

10

名程度が入る小さめの教室 で行われた。筆者はディスカッションの目的や方法について説明した後、

席を外した。

ディスカッションは、すべて録画・録音し、それを文字化した。さらに、

(8)

参与者のコミュニケーション活動をより詳細に把握するために、ディス カッション直後に個別にフォローアップ・インタビューを行い

(

留学生には 日本語と英語を使用

)

、意思の疎通を図るための工夫、困難点、CS の使用 理由、CS に対する考えなどについて尋ねた。

以上の録画資料、文字化資料、そしてフォローアップ・インタビューの 結果をもとに日本語から英語への CS をすべて抽出し、CS の前後の発話 を分析することで、参与者のコミュニケーションへの参加方法を見ていく。

また、その中で参与者がどのような関係を構築するのかを明らかにする。

4.

結果と考察

日本人学生と留学生のディスカッションでは、単語、句、節、文レベル の英語使用が観察された。CS が含まれたやりとりを分析した結果、そこ で参与者は使用言語により 

日本語 NS―NNS

、 

日英混合話者

、 

英語

NNS 同士 ’

という関係を構築していることがわかった。

4–1.

日本語 NS―NNS

のやりとり

留学生は、表現したい日本語がわからない場合、英語を使って日本人学 生に質問することがある

(

1、942: IF1 )

2)

また、留学生は、日本人学生が使った日本語がわからない場合に、理解 困難を示したり

( Varonis and Gass 1985 )

3)、聞き返しをしたりすることが あり

(

尾崎

1992 )

、それに対して日本人学生が英語で意味を教えるという場 面も観察された

(

2

参照

)

1・2

のように、留学生が日本人学生に日本語の語彙について尋ね、日 本人学生がそれに答えるということは、両者が日本語 NS―NNS として 参加していることを示している。英語使用は日本人学生と留学生を日本語

NS―NNS の関係からを解放するのではないかと思われたが、逆に NS―

NNS

の特徴的なやりとりである意味交渉の手段として使われ、NS―NNS の関係を引き出していた。

(9)

4–2.

日英混合話者

としてのやりとり

( 1 )

英語の語彙・句の使用

1

のように、留学生が質問した後で日本語の語彙を学び、その後のや りとりでその語彙を使えば、そこでは日本語使用が前提とされ、日本語

NS―NNS の関係は続く。しかし、例 2

の日本人学生 JM4は、日本語の

意味を英語で説明した後、その英語を日本語の中に組み込み、やりとりを 成立させている

( 156: JM4 )

。本稿では、このように日本語の意味を説明す るためではなく、発話内容を伝える手段として日本語に混ぜて英語を使う

(例 1) [指導教員と学生のやりとりについて]

942 IF1:

えーと、うーん、あー、質問、質問が来て、え、うーん

( 2 )

学生、

学生が、えーと、うーん、あ、think って日本語で何ですか

? 943 JF1:

あ、考える

?

944 IM1:

うん、考える。

945 IF1:

考える=

946 JF1:

うん。

947 IF1:

=がいいと思う。

(J-Japanese student, I-International student, M-Male, F-Female)

(

2 ) [

指導教員の教え方について

]

152 JM4:

ひとつの考え方じゃなくて、こう、他の視点をくれるっていうか、

153 IM3:

?

154 JM4:

あ、他の視点、なんだろう、another point of view?

155 IM3:

ああ、そうですね。

156 JM4:

うん、another point of view を、くれる人っていうのは、やっぱ りいい先生=

157 JM5:

うん。

(10)

ことで、日本人学生と留学生が相互理解に達し、話題を発展させた場合、

両者を

日英混合話者

と呼ぶこととする。

日英混合話者として語彙を埋め込む例は他にも観察された。例

3

で留学

787: IF3

は、

比べる

という日本語の表現がわからなかったが、例

1

のように日本人学生に尋ねることはせず、発話の一部に “compare” を挿 入し発話を完成させている。これを受けた日本人学生

789: JM2

は、その 英語を修正することなくそのまま使用した。このように英語を日本語発話 に挿入することにより、日本語の語彙がわからない場合も、IF3は日本人 学生に尋ねたり、コミュニケーションへの参加を回避したりせずやりとり を続けた。その結果、話し合いの流れが中断されることなく、言語面にお いて日本人学生とより対等にディスカッションに参加することができた。

JM2

はフォローアップ・インタビューで、英語使用の継続は日本語とし てはおかしいが、留学生がわかりやすい表現だと思ったのでそのまま使っ たと報告している。JM2は留学生とのコミュニケーションを円滑に進める ために、正しい日本語を使用する日本語 NS としてではなく、日英混合話 者としてコミュニケーションに参加したのである。

こうした日本語発話への英語の語彙の挿入は、他にも

‘ take care する ’

‘ develop

すれば

などの様々な例が観察された。英語の動詞を名詞化し

する

という動詞と共に使うのは、英語圏に住む日系人の CS に頻繁に 観察される使い方である

( Azuma 1997; Nishimura 1995 )

。二言語の能力 が高く、日常的に二言語を使って生活している日系人と同様の CS が本研 究の対象者に観察されたということは、日本人学生・留学生とも二言語話 者としての側面を備えていることを示している。

(例 3 ) [指導教員の担当する学生数について]

787 IF3:

=先生が、そういうテーマのときには、こういうできました。私 があとに compare, compare します =

788 IF2: [あー。

789 JM2: [あー。先生の考えと自分の考えを compare するってことね。

(11)

( 2 )

英語の節・文の使用

留学生は、表現したい内容が複雑で日本語では伝えられない場合、英語 の節や文を使用することがある

(

4: 87: IF2、89: IF2、例 5: 204: IF3、

206: IF3 )

。例

4

で、87: IF2は研究を行う上で難しい点を述べようとした が、途中で日本語で発話を続けることができなくなった。しかし、英語へ の CS を使い考えを伝えることに成功している。ここで IF2は、例

3

IF3

同様、コミュニケーションへの参加回避や日本人学生への援助依頼は していない。この英語発話に対して、88: IF3、90: JM2は日本語で応答し てコミュニケーションを達成させており、ここでも参与者は日英混合話者 として参加したといえる。

この場面について、IF2は英語使用により日本語では表現できない複雑 な内容を伝えることができ、ディスカッションへの参加を高めることがで きたとフォローアップ・インタビューで報告している。一方、JM2は IF2 の英語は容易に理解でき、IF2が英語を話したことには全く抵抗がないと 述べている。自分の応答については、英語で言われたので英語で答えたほ うがいいのかもしれないと思ったが、本来日本語のディスカッションであ ること、また日本語の方が話しやすいことから、日本語で答えたという。

JM2

は、留学生の英語発話を日本語に訳すことなくそのまま英語で理解す るなど、英語 NNS として参加しながらも日本語で応答することで、日本 語 NS の立場も維持している。このように、留学生が英語で意見を述べ日 本人学生が日本語で応答してコミュニケーションを達成させる場合、留学 生は日本語 NS の助けを借りずに言いたいことを表現でき、日本人学生は

(例 4) [研究上の困難について]

87 IF2:

そして、私は、あの、when I have trouble how to do research=

88 IF3:

あー。

89 IF2:

=

Yeah, first we have no idea about how to do research. We first want to learn it.

90 JM2:

そうですよね。研究の方法はわからないと困りますよね。

(12)

英語を話す負担を感じずにやりとりに参加できるという利点がある。

4–3.

英語 NNS 同士

のやりとり

英語の発話に対しては、次の話し手がそのまま英語で応答する場合もあ る。例

5

では、指導教員との関係について話している中で、IF3が日本語 で意見を述べることが難しくなり英語に切り替えた。ここで、204: IF3が 英語の語彙を探していると、205: JF2がその語彙を提供している。この助 けにより完成した英語発話に対し

( 206: IF3 )

、207: JF2は英語で受けたた め、IF3 と JF2 は日本語を全く使用しない英語 NNS 同士としてやりと りを完成させたことになる。また

207: JF2

では、IF3の意見への追加情報、

JF2

の解釈が述べられており、どちらかが相手の言語能力を補うことなく、

両者が対等にコミュニケーションに参加しているといえる。

フォローアップ・インタビューで、JF2は、IF3が英語を使ったことで 意思の疎通が容易になったと、CS を肯定的に捉えている。自分自身の英 語については、言いたいことが正確に理解されるか不安で、日本語使用の 時にはない緊張感があると振り返っている。このコメントから、JF2は会 話をコントロールしようとする日本語 NNS ではなく、心理的にも外国語 を話す英語 NNS として参加していたことがわかる。一方、IF3は日本語 より能力の高い英語を使うことにより話しやすくなったこと、また JF2の 応答も英語だったので理解しやすかったことを報告している。こうした感 想は、IF3も言語面・心理面で英語 NNS として参加していたことを示し ている。

英語 NNS 同士のやりとりは、意見交換だけでなく、冗談を言う場面に

(例 5 ) [指導教員との関係について]

204 IF3:

=

something like that, it’s very difficult to, uh-, how to say, 205 JF2: Good relationship?

206 IF3: Yeah, good relation with, with students.

207 JF2: We feel easy to talk and he understands our feeling.

(13)

も見られた。例

6

では、留学生 IM1、IF1が日常の言語使用について話し ている。その中で、699: IF1は日本の大学では、英語や日本語を混ぜて使 うので頭の中が混乱してしまうこと、そしてそこには母語であるロシア語 はほとんど存在していないという冗談を言い、他の参与者全員から笑いが 起きている。ここで参与者は、日本語を介さず英語での冗談をそのまま受 け笑っていることから、英語 NNS として参加していると見なすことがで きる。冗談には参与者の関与を強め、共感を作り出す効果があるが

(

佐々木

1994 )

、限られた日本語能力の留学生には日本語で冗談を言うことは難し い。また、冗談を言うために日本語について質問したり、英語で言った冗 談を日本人学生が日本語に訳したりしてはおかしさが半減する。しかし、

全員が英語 NNS として参加することにより、こうした問題が解決され、

留学生も自ら冗談を言い、他者の笑いを引き起こす積極的な参加を実現す ることができた。

(

6 ) [

日本での使用言語について

]

697 IM1:

なんか、私たちも、なんか native speaker ではないから。

698 JF1:

あー。

699 IF1:

うん、はい。English and Japanese are mixed up in my brain. With

just a little Russian.

(全員の笑い)

5.

まとめと今後の課題

本研究で対象とした日本人学生と留学生は、グループディスカッション において CS を使うことにより、日本語の相手言語接触場面から英語の第 三者言語接触場面へ転換させるだけでなく、日本語と英語を混ぜ自分たち で表現を創造しながら日英混合話者として独自の接触場面を作り出してい た。こうした使用言語の変化により、参与者の参加方法が相手言語接触場 面の特徴的な非対称なものから、より対称的になることがわかった。また、

(14)

日本語を話す際には留学生に日本語を教え会話をコントロールする立場に いた日本人学生が、英語使用になると外国語を話すことの不安や緊張を経 験し、日本語 NNS である留学生に心理的に近づく場面も観察された。CS は日本語 NS―NNS というやりとりを完全になくすことはないが、この ような多様な言語使用の過程では日本語 NS―NNS という関係もバリエー ションのひとつであり、日本人学生がコミュニケーションをリードする非 対称な関係を決定づけるものではない。

日本人学生と留学生が二言語を切り替えながら相互理解を図ると同時に 多様な関係を構築しているということは、そこに彼ら独自の言語コミュニ ティーが創造されていると捉えることができる。このように自分たちのコ ミュニケーションの方法を築き、お互いの関係のバランスをとりながらコ ミュニケーションを促進させることは、対等な大学院生として活発な議論 をするための大きな助けとなるはずである。

今回の結果から、接触場面の使用言語が参与者のコミュニケーションへ の参加方法や関係に大きな影響を与えることがわかった。今後、日本語の 接触場面における英語への CS がコミュニケーションの展開や参与者に与 える影響をさらに詳しく見るためには、言語を切り替えることによりコ ミュニケーションが阻害されることはないのか、またコミュニケーション の規範はどのように扱われるのかなどを調べる必要がある。今後も接触場 面の CS 分析を進め、使用言語とコミュニケーションの様々な側面との関 係を明らかにしていきたいと考えている。

1 )

本研究は

‘公益信託 日新製糖奨学育英基金’

の助成による。

2 )

文中の表で使用した文字化の記号は以下のとおりである。

、:発話の区切り。ごく短い沈黙

( ) :

沈黙。括弧内の数字は、沈黙の秒数

。:発話の終了(下降イントネーション)

? :

発話の終了(上昇イントネーション) ー

:

音の引き延ばし

[ :

同時発話

=

:

発話が切れ目なく続いている

(15)

3 ) Varonis and Gass ( 1985 ) は、理解困難の表示 ( indicator of non-understand-

ing ) を、( 1 ) 理解困難を明確に表示、( 2 ) 直前の発話の単語や句の繰り返し、

( 3 ) 非言語による反応、( 4 ) 要約、( 5 ) 驚きの反応、( 6 )

不適切な反応、(

7 )

明らかな訂正に分類している。

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参照

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