• 検索結果がありません。

河道内樹木群管理の基礎的研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "河道内樹木群管理の基礎的研究 "

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

河道内樹木群管理の基礎的研究

~治水と環境の調和を目指して~

STUDY FOR THE VEGETATION MANAGEMENT IN RIVERS

AIMING AT THE HERMONY BETWEEN FLOOD CONTROL AND ENVIRONMENT

土木工学専攻 7 号 大沼 史佳 OHNUMA Fumiyoshi

1. はじめに

近年,わが国の河道には樹木が繁茂し,洪水の流下 を阻害するといった問題が生じている.そのため,樹 木群の管理によって洪水流下能力の確保が行われて

いる

1), 2)

.樹木群を適正に管理するためには,樹木群

の有する治水機能と環境機能を評価する必要がある.

しかし,有効な手法が得られていないのが現状である.

本研究では,利根川中流域の高水敷上に繁茂する樹 木群を対象として,洪水流に対する樹木群の抵抗評価 と,生物の現地調査に基づく河川環境上からの樹木群 の評価法を示し,現地での視点に重きを置いた樹木群 管理の一つの考え方を提案することを目的としてい る.

2. 治水上の樹木群の評価

治水上の樹木群の役割を評価するためには,洪水流 への樹木群の抵抗評価が重要となる.ここでは,樹木 群の繁茂形態を考慮した非定常平面二次元解析によ る樹木群の抵抗評価を示し,計画規模の洪水に対する 樹木群の影響を検討する.

検討の対象とした利根川の栗橋(130.4km)から芽吹 橋(104.1km)までの区間は,図-1 に示すように複断面 蛇行河道であり,132.5km 左岸に渡良瀬川合流点,

121.5km 右岸に江戸川分派点を有している.高水敷に

は,主にヤナギやオギ,ヨシが繁茂している.

(1)非定常平面二次元解析による樹木群抵抗の評価 樹木群のある河道の洪水解析手法に非定常平面二 次元解析がある

1)

.この解析では,式(1)に示す運動方 程式の抵抗項は,摩擦抵抗項と樹木群抵抗項からなる.

,

√ , (1)

ここで, n :マニングの粗度係数, K :樹木群透過係数,

h:水深,h

tree

:樹高,h

a

:min(h, h

tree

),g:重力加 速度,(u, v):流速方向成分(  ,  )である.摩擦抵抗の 大きさは粗度係数,樹木群抵抗の大きさは樹木群透過 係数によって評価している.定常流解析では,洪水ハ イドログラフごとに非定常性の影響の程度が異なる ため,樹木群透過係数と粗度係数の値にその影響が表 れるという問題が生じる.これに対し,洪水流の非定 常性を考慮した非定常平面二次元解析では,洪水の水 面形には河道内の様々な影響がその積分値として現 れていることに着目し,観測された水面形の時間変化 を説明する長い区間での平均値として樹木群透過係 数と粗度係数を与えることによって,大きな洪水につ いて同一の値でこれらを評価することが可能である

3)

. 摩擦抵抗項は,河道の断面形状や河床材料の摩擦によ る抵抗を評価しているため,粗度係数は,その本来的 な意味の河道の粗度を表すほぼ一定の値で与えられ る.一方,観測された水面形の時間変化を説明するよ うに樹木群抵抗値を評価することにより,様々な樹木

0.0 5.0 (km)

水位観測地点

利根川 江戸川

渡良瀬川 巴波川 思川

栗橋 芽吹橋

生態系環境調査対象地点 河川水辺の国勢調査実施地点 低水路

堤防

T-4 T-1,T-2,T-3 W-1,W-2,W-3

芽吹橋

115.0km

120.0km

■:樹木群

105.0km 110.0km 125.0km

130.0km

栗橋

flow

利根川

江戸川

図-1 検討対象区間の概要

0.020 0.025 0.030 0.035 0.040 0.045 0.050 0.055 0.060

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 高水敷粗度係数n(m-1/3・s)

樹木群透過係数 K (m/s) 利:平成 10年,13年,14年 利:平成16年 22号,23号 利:昭和57年

30 40 50 60 70 80

0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60

樹木群透過係数K(m/s)

樹木群面積/高水敷面積 利根川 江戸川

0.020 0.025 0.030 0.035 0.040 0.045 0.050 0.055

30 40 50 60 70 80

高水敷粗度係数n(m-1/3・s)

樹木群透過係数 K (m/s) h=5.5~ h=4.4~5.5 h= ~4.5 h=5.0 h=4.0

(樹木群抵抗値:摩擦抵抗値) 実線: (1:1),一点鎖線: (3:1) 樹木群抵抗値:大

図-2 樹木群透過係数と高水敷粗度係数 図-3 樹木群透過係数と樹木群の繁茂形態 図-4 樹木群抵抗値と摩擦抵抗値の関係

(2)

群の繁茂形態を代表する値として樹木群透過係数が 決まる,と考える.

図-2 には,いずれも大規模であった平成 10 年,平 成 13 年,平成 14 年の 3 洪水について決定した対象区 間の樹木群透過係数と高水敷粗度係数を示している

3)

. この図には,洪水規模の小さかった平成 16 年台風 22 号・23 号洪水と河道状況の異なる昭和 57 年洪水につ いて決定した樹木群透過係数と高水敷粗度係数も併 せて示している.いずれの洪水についても,非定常平 面二次元解析によって観測された水面形の時間変化 と流量ハイドログラフを必要な精度で求めている.図 より,高水敷粗度係数は,河道固有の比較的狭い範囲 の値をとり,一方,樹木群透過係数は,樹木群の繁茂 形態の違いによる広がりのある値をとる.このときの 高水敷面積に対する樹木群面積の割合と樹木群透過 係数の関係を図-3 に示す.図には,江戸川について 同様に決められた樹木群透過係数

3)

も併せて示してい る.式(1)より,樹木群透過係数が小さくなるほど樹木 群抵抗値は大きくなることから,高水敷面積に対する 樹木群面積の割合が大きいほど,樹木群透過係数が小 さい(樹木群抵抗値が大きい)ことが確認できる.図 -4 は,平成 10 年洪水ピーク流量時の樹木群抵抗値と 摩擦抵抗値の大きさ関係を示す.樹木群抵抗値と摩擦 抵抗値の大きさが,(1:1)と(3:1)となる樹木群透過係数 と高水敷粗度係数の組み合わせを,それぞれ実線と一 点鎖線で示している.実線に対して左下に樹木群透過 係数と高水敷粗度係数が位置するほど,樹木群抵抗値 が大きいことを示している.このときの樹木群透過係 数と高水敷粗度係数が実線よりも左下に位置し,樹木 群抵抗値が摩擦抵抗値の 2~4 倍程度大きいことが分 かる.これより,河道の摩擦より高水敷に直立する樹 木群の方が,洪水流への大きな抵抗となっていること が確認できる.したがって,非定常平面二次元解析で は,粗度係数に河道が本来的に有するほぼ一定の値を 与えた場合,繁茂形態と有意な関係を持つ樹木群透過 係数を観測された水面形の時間変化を再現するよう に決定することは,合理的な考え方であると言える.

(2)大規模洪水を想定した解析による樹木群の評価 整備計画流量の流下を想定した準二次元解析の結

果(図-5 )を用いて,対象河道における治水上の樹 木群の影響を検討する.これより,119.5~121.5km

区間と 127.5~129.5km 区間において,整備計画流量

時の水位が計画高水位の高さを超えることが分かる.

図-6 に示す各断面での樹木群の占める断面積より,

計画高水位を超える区間下流部の 117.0~120.5km 区

間左岸と 127.0~129.5km 区間左岸に樹木群が繁茂し

ていることが分かる.また,122.0~124.5km 区間左 岸の水衝部と高水敷が突出している場所(図-1 )では,

この場所に繁茂する樹木群が洪水流への大きな抵抗 要素になると考えられる.このように,大規模洪水時 にその流下を阻害すると考えられる樹木群について は,洪水流を安全に流下させるために,樹木群の伐採 を検討する必要がある.

3. 河川環境上の樹木群の評価

河川環境上の樹木群の役割を評価することを目的 として,河道において特徴的な植生とその生育してい る物理環境を推定する RHS (River Habitat Survey) や,ある対象種にとって適切な生息の場を推定する HEP (Habitat Evaluate Procedure)等日本の河道へ の適用性の検討がなされている

4), 5)

.しかし,これら の手法を我が国の河川環境における樹木群の役割を 評価するには,多くの課題が残されている.そこで,

実際に樹木群をハビタットとしている生物を指標と した河川環境上の樹木群の評価法について検討する.

ここでは,現地で採集した陸上昆虫類と既往の河川水 辺の国勢調査の結果を用いて検討を行う.

(1)利根川・渡良瀬川における生態系環境調査 図-1 に示す利根川(T-1,T-2,T-3,T-4)と渡良瀬川(W-1, W -2, W -3)の調査地点において,陸上昆虫類(陸上昆 虫およびクモ目)の採集を目的とした調査を実施した.

T-1,T-2,T-4 の樹木群は,2.(2)で治水上問題がある

と判断した区間に存在する樹木群である.調査は,

図-7 生態系環境調査の調査概要

より樹木を意識した調査内容に変更

地点:T-1,T-2,T-3 W-1,W-2,W-3 内容:・調査地点の選定

・植生断面図の作成

・土壌調査

・土壌動物調査

・昆虫類調査

ピットフォールトラップ法

地点: T-1,T-2,T-4 W-1,W-2 内容:・調査地点の確認

・植生断面図の作成

・樹木調査

・昆虫類調査

ピットフォールトラップ法 スウィーピング法 ビーティング法 見つけ採り法

2007年度夏季調査 2008年度夏季・秋季調査

図-5 整備計画流量を想定した解析結果(水面形)

図-6 各断面での樹木群の占める断面積

10 15 20 25

104

105

106

107

108

109

110

111

112

113

114

115

116

117

118

119

120

121

122

123

124

125

126

127

128

129

130

131

水位 (m )

縦断距離(km)

整備計画流量時ピ ーク水位 計画高水位

0 2000 4000 6000 8000

131 130 129 128 127 126 125 124 123 122 121 120 119 118 117 116 115 114 113 112 111 110 109 108 107 106 105 104

断面 積( m

2

)

距離標 (km)

河積 右岸樹木群 左岸樹木群

樹木 草本 地形 湿性 リター層 日射

T-1 タチヤナギ クサヨシ 凹地 有り 有り 悪い

T-2(2007) アカ メヤナギ クサヨシ 起伏が多い 無し 有り 悪い T-2(2008) エノキ オギ・クサヨシ 起伏が多い 無し 有り 良い

T-3 オギ 平ら 無し 無し 良い

T-4 アカ メヤナギ クサヨシ・ノイ バラ 凹地 有り 有り 良い

W-1 タチヤナギ・クワ クサヨシ 水辺微高地 有り 有り 悪い

W-2 クワ ノイ バラ 凹地 有り ほぼ無し 悪い

W-3 オギ・ヨシ 平ら 無し 無し 良い

表-1 調査地点の特徴

(3)

2007 年夏季, 2008 年夏季, 2008 年秋季の 3 回実施し,

2008 年からは,2007 年よりも樹木を生活の場とする 昆虫に着目し,調査地点と調査方法を充実している.

調査概要を図-7 に示し,各調査地点の特徴を表-1 に まとめている.陸上昆虫類調査は,調査法

6)

に準じ,

ピットフォールトラップ法では地表を徘徊している 種,スウィーピング法とビーティング法では樹木や草 本に付いている種,見つけ採り法では対象樹木とその 周辺に生息している大きくて目立つ種を主な対象と している.

調査により,2007 年夏季では 24 種 798 個体,2008 年夏季では 101 種 1552 個体,2008 年秋季では 83 種 775 個体の陸上昆虫類を採集した.採集した昆虫類は,

資料

例えば7)

を参考に同定している. 2007 年夏季に比べ,

調査法を増やした 2008 年夏季では, 採集した個体数,

種数ともに多かった.また, 2008 年の調査で採集した 個体数は,秋季調査に比べ夏季調査の方が多かった.

(2)陸上昆虫類の共通性の検討

伐採を検討している樹木群の周辺に生息している 昆虫類が,他の場所においても生息している場合,そ の昆虫類への樹木の伐採の影響は小さいと考えられ ることから, 2008 年の調査結果を用いて調査地点間で の採集した種の共通性について検討する.各調査地点 で採集した種数と,2 地点間で共通している種数を表 -2 に示す.これより,(a)夏季には,T-1 と T-2 で 12 種,T-2 と T-4 で 18 種,T-4 と T-1 で 20 種,(b)秋季 には, T-1 と T-2 で 9 種, T-2 と T-4 で 15 種, T-4 と T-1 で 11 種の昆虫類が共通し,他の地点間での共通種数 が 4~11 種であったことに比べて多い.また, T-1, T-2,

T-4 で確認した種のうち,その地点を含めて 2 地点以 上に生息している種の割合を図-8 に示す.これより,

(a)夏季と(b)秋季において,T-1 と T-2 では約 50%,

T-4 では約 70%の昆虫類が他の地点にも生息している

ことが分かった. 表-1 に示した各地点の特徴から, T-1,

T-2,T-4 においては,高木があり落葉の堆積層である

リター層があること,草本が繁茂していること,微地 形があること,土壌が湿っていることといった調査地 点の特徴が類似していたためだと考えられる.

(3)河川水辺の国勢調査の結果を用いた検討

日本の河川では河川水辺の国勢調査が実施され,河 川環境に関する基礎情報が集められている.この調査 は,5 年で 1 サイクルとなるように全 8 項目の調査が 行われ,生物調査として陸上昆虫類等調査,鳥類調査,

両生類・爬虫類・哺乳類調査,植物調査,魚介類調査,

底生動物調査が実施されている.今回の検討では,図 -1 の現地調査地点付近の渡良瀬川が合流する利根川 の合流点の直上流部の利根川左岸で行われた河川水 辺の国勢調査の一例を示す.1993 年,1999 年,2004 年に行われた陸上昆虫類調査の結果と,今回の調査結 果との対応関係について検討する. 表-3 に今回の調査 で確認した種数とそのうち河川水辺の国勢調査にお

いても確認されている種数,およびその割合を示す.

これより,W-2 以外の地点では,今回の調査で確認し

た約 80%以上の昆虫類が,河川水辺の国勢調査におい

ても確認されていたことが分かった.W-2 地点は,落 葉の堆積層であるリター層がなく,樹冠によって日射 が遮られており,他の地点と特徴が異なる場所であっ た.以上より,利根川の河川水辺の国勢調査地点との 対応関係が確認できたため,他の生物についても河川 水辺の国勢調査の結果が現地の状況と対応している ものと考え,河川水辺の国勢調査の鳥類・両生類・爬 虫類・哺乳類の調査結果を用いて,他地点との種の共 通性について検討する.

利根川上流区間では,1994 年,2000 年,2005 年に 5 地点を対象とした両生類・爬虫類・哺乳類調査が,

1991 年, 1997 年, 2003 年に 15 地点を対象とした鳥類 調査が実施されている.鳥類調査については,地被状 況ごとに結果が記録されているため,広葉樹林で確認 された種を用いて検討する. 図-1 に示す河川水辺の国 勢調査の調査地点を対象地点とし,利根川の他の調査 地点との確認された種の共通性を検討する.図-9 に は,(a)両生類・爬虫類・哺乳類調査と(b)鳥類調査に より対象地点で確認された種のうち,他の地点でも確 認された種の割合を示している.図より,対象地点で

夏季 T-1 T-2 T-4 W-1 W-2 計 既確認種 36 39 31 16 11 79 採集種 45 44 39 20 25 101

既確認種/採集種

80.0% 88.6% 79.5% 80.0% 44.0% 78.2%

表-3 河川水辺の国勢調査結果との対応関係

秋季 T-1 T-2 T-4 W-1 W-2 計 既確認種 31 28 26 14 12 63 採集種 31 35 35 17 18 83

既確認種/採集種 100.0%

80.0% 74.3% 82.4% 66.7% 75.9%

(b)

2008

年秋季調査 (a)

2008

年夏季調査

夏季 T-1 T-2 T-4 W-1 W-2 T-1 45 12 20 9 7 T-2 ― 44 18 11 7 T-4 ― ― 39 11 6 W-1 ― ― ― 20 7 W-2 ― ― ― ― 15

表-2 採集した種数と

2

地点間の共通種数

秋季 T-1 T-2 T-4 W-1 W-2 T-1 31 9 11 5 6 T-2 ― 35 15 8 4 T-4 ― ― 35 7 7 W-1 ― ― ― 17 8 W-2 ― ― ― ― 18

(a)

2008

年夏季調査 (b)

2008

年秋季調査

図-8 他地点と共通する種の割合 (a) 2008 年夏季調査

(b) 2008 年秋季調査

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%

T‐4 T‐2 T‐1

5

地点

4

地点以上

3

地点以上

2

地点以上

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%

T‐4 T‐2 T‐1

5

地点

4

地点以上

3

地点以上

2

地点以上

(4)

確認された種の多くは,他の地点においても確認され ていたことが分かる.以上より,今回の調査地点に生 息している種の共通性は高く,他の地点においてもこ れらの種の生息場が存在していると考えられる.

4. 樹木群管理のフロー

以上の議論から,樹木群の果たす治水と環境の両面 からの役割評価に基づく樹木群管理のフローを図-10 に示す.

まず,樹木群の抵抗を評価するための水位や流量等 の水理量と,樹木群の繁茂形態等の河川環境の基礎情 報について,計画的,継続的な観測を行う必要がある.

次に,洪水観測結果を用いた洪水解析から樹木群の 抵抗評価を行う.非定常平面二次元解析では,地被状 況図や航空写真等の河道の情報から,樹木群領域や樹 木群透過係数の値を決め,観測された水面形の時間変 化を再現するように樹木群透過係数を確定する.さら に,他の洪水についても同じ抵抗値を用いて解析を行 い,樹木群の抵抗値の妥当性を検討する.樹木群の抵 抗値を決定した後,整備計画規模や既往最大規模の洪 水を想定した解析から,治水上の好影響・悪影響のあ る樹木群を判定する.

河川環境からは,河川水辺の国勢調査や日頃の調 査・点検等から,河道の状況を把握し,樹木群を評価 するために適切な生物指標を決定する.このとき,陸 上昆虫類の他に保全上重要な生物種がその指標に含 まれることが望ましい.

ここで,治水上の悪影響のある樹木群については,

その伐採により管理を検討するが,伐採の判断には河 川環境や地域にとっての重要性を十分に考慮する必 要がある.そうでない樹木群に関しても,現地調査の 結果等から,樹木群周辺に形成されている生態環境に 代償し得る環境が他の地点においても存在するか検 討する.これが確認できる場合は,場所や規模,伐採 順序等の異なる幾つかの伐採方式を検討し,樹木の伐 採が治水上の悪影響を及ぼさず,なおかつ生態環境へ の影響が小さいと判断できるものを採用する.

また,樹木の伐採後には,伐採の影響についてモニ タリングをするとともに,継続して河道内の状況の把 握,河道の抵抗値の調査を実施していく必要がある.

5. まとめ

本研究では,利根川の高水敷上に繁茂する樹木群を 対象として,治水上と環境上の樹木群の評価に基づく 樹木群管理の一つの方法を提案した.

治水上から樹木群を評価するためには,まずは洪水 流に対する樹木群の抵抗評価が重要となり,非定常平 面二次元解析では,河道が本来的に有する粗度係数と 観測された水面形の時間変化を説明する樹木群透過 係数を与えればよいことを示した.大規模洪水を想定 した解析結果から治水上の樹木群の影響を評価した.

樹木群の周囲で採集した陸上昆虫類を用いて,他の地 点との種の共通性に着目した樹木群の環境上の評価

法を示した.このとき,既往の河川水辺の国勢調査の 結果と現地調査の対応関係を確認し,樹木群の評価に この調査結果を利用し得ることを示した.

参考文献 1) 福岡捷二 : 洪水の水理と河道の設計法 , 森北 出版, 2005. 2)財団法人リバーフロント整備センター編:

河川における樹木管理の手引き, 山海堂, 1999. 3) 福岡捷 二, 渡邊明英, 田端幸輔, 風間聡, 牛膓宏: 利根川・江戸 川分派点を含む区間における流量ハイドログラフと粗度 係数・樹木群透過係数の評価, 水工学論文集, 第 50 巻, pp.1165-1170, 2006. 4) 大石哲也 , 天野邦彦 , 尾澤卓思 :

RHS・HQA による円山川河川環境評価の検討, 応用生態

工学 8(2), 179-191, 2006. 5) 田中章 : 何をもって生態系を 復元したといえるのか?-生態系復元の目標設定とハビタ ット評価手続き HEP について , ランドスケープ研究 65(4), pp.282-285, 2002. 6)国土交通省河川局環境課, リバ ーフロント整備センター : 平成 18 年度版河川水辺の国勢 調査基本調査マニュアル〔河川版〕 (陸上昆虫類等調査編), 2007. 7) リバーフロント整備センター : 川の生物図典 , 山 海堂, 1996.

洪水時の水理量の観測(水位,流量,痕跡水位)

洪水流の再現(非定常流解析)

樹木群領域の検討・樹木群透過係数の分布 樹木群密度・繁茂形態,河道スケール 抵抗値の決定(非定常平面二次元解析)

粗度係数: 河道が本来的に有する値 樹木群透過係数:水面形の時間変化を再現する値

治水上の樹木群の影響評価

整備計画規模or既往最大規模の洪水流を想定した解析 どの樹木群が治水上好影響or悪影響を及ぼしているか

樹木群管理の検討(伐採方式の検討)

伐採による治水 上の影響評価 抵抗値の妥当性の検証

樹木群伐採の検討

河川水辺の国勢調査 日常的・継続的な河道状況の確認

樹木群の繁茂する範囲,高さ,密度等

(樹木群の繁茂形態の把握)

河川環境の把握

モニタリング(治水・環境)

河川環境上の樹木群の影響評価 陸上昆虫類を用いた評価 生態環境における樹木群の役割の検討 どの樹木群が生態環境上好影響を及ぼ しているか

対応関係の検討

異なる洪水についても同じ

値で評価できるか? Yes

No

伐採による治水上の悪 影響はないか?

No

Yes 生態環境への影響は小さいか?

(同様な生態環境か?)

伐採による生態環境 上の影響評価

No Yes

図-10 樹木群管理のフロー

図-9 他地点と共通する種の割合(河川水辺の国勢調査)

(b) 鳥類調査

0% 20% 40% 60% 80% 100%

鳥類

13

地点

12

地点以上

11

地点以上

10

地点以上

3

地点以上

2

地点以上

(a) 両生類・爬虫類・哺乳類調査

0% 20% 40% 60% 80% 100%

両生類 爬虫類 哺乳類

5地点 4地点以上 3地点以上 2地点以上

参照

関連したドキュメント

ノンペンにおいてトンレサップ川と合流し,バサック川 を分派している.計算対象年は 1997 年から 2007 年であ る.計算対象の各年の洪水氾濫規模を比較するための指 標として,洪水期(6

天正期(16 世紀)以前の木曽川は、木曽七流などと呼 ばれて、図-1 に示すように濃尾平野を幾筋も流れてい た 2) 。当時の幹流は濃尾の国境になっていた境川であっ たが、天正

実践研修の受講要件の妥当だと思う年数に ついてみると、 「2年」、 「2.5年」、 「3年」、 「3.5 年」、 「4年」、

   根系の深さと広がりおよぴ根量の成長では,シラカンバなど6 樹 種の 根の深さ,根の広がりおよび根量を3

ているのは、工産である。この落ち込みも激しく、同様 に 2002(平成 12)年を 100 とすれば、2012(平成 24)年

平成 29 年度学長裁量研究成果報告(様式2号)その2

 浜田川の洪水を軽減し、下流沿川 を洪水から守るとともに、流水の正 常な機能の維持を図ります。 ■

10 別表第1 事務管理業務 1 基幹事務 (1) 管理組合の会計の収入及 び支出の調定 ① 収支予算案の素案の作成 ② 収支決算案の素案の作成 ③