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学位論文題名樹木の根系の成長に関する基礎的研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 佐 藤 孝 夫

     学位論文題名

樹木の根系の成長に関する基礎的研究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  根系の調査は地上部に比較して著しく困難であるために,研究事 例は著しく少ない。しかし環境緑化樹の植栽や維持管理,造林木の 選定や植栽方法,姦林における更新ナょどさまざまな面から根系の重 要性はきわめて高い。そこで,本論文では樹木の根系の基礎的な成 長特性を解明することを目的とし,まず根端の成長の季節的な周期 性など根端伸長の特性を調べるとともに,根系の深さや広がり,根 量の成長量およぴ根系の分布様式がどのように変化していくかを明 らかにし,根系の形態が地上部の発達に伴ってどのように変化する かを検討した。また根系への人為的な作用が樹木の成長におよぼす 影響について調査を行い,根系の成長に関する総合考察を行った。

  根端の伸長量と季節変化では,根箱を用いてイチイなど針葉樹4 種,カツラなど広葉樹38種,合計42樹種について,植栽当年およぴ 翌年の2年間の根端の伸長を調べた。そして根系の伸長の季節変化 が樹種によって異なることを明らかにするとともに,根端の1年間 の総 伸長量,1日当たりの1根端の最大伸長量などから各樹種の根 端の活カ度を比較した。また根端の伸長の開始時期およぴ停止時期 は樹種によって異なるが,根端の伸長は地上部の成長よりも早く始 まる樹種が多いこと,すぺての樹種で地上部の伸長が停止した後も 根端は伸び続けることを明らかにした。,さらに根端の伸長と地上部 の成長には明確な関係がみられることを指摘し,地上部の伸長との

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関係を4つに区分した。また根端の伸長が盛んな時期は樹種によっ て異 なるが7〜8月に最も伸長が盛んとなる樹種が多いことを明ら かにするとともに,根端の伸長量の季節変化を一山型,二山型,三 山型に分け,さらに一山型は急な山型とゆるやかな山型の2つに,

二山型は大きな山と小さな山,小さな山と大きな山,ほぼ同じよう な大 きさの山型の3つの合計6っの型に区分し,各樹種を類型化し た。根端の伸長と地温との関係では,根端の伸長は地温だけで規師 されるのではなく,地上部の成長との関係が深いことを推察した。

また濯水量や降水量と根端の伸長との関係では,通常の潅水や降水 では 根端の伸長量の増減にはほとんど影響しないことを示した。

  根系の深さと広がりおよぴ根量の成長では,シラカンバなど6樹 種の 根の深さ,根の広がりおよび根量を3〜5年間にわたプて測定 した。根の深さは樹種によって異なり,地中深くまで侵入する樹種 と,深くまで侵入しない樹種があること,根系の垂直的な成長量は いずれの樹種とも小さく,根の深さは地上部の大きさと直線的な比 例関係はみられないことを示すとともに,樹高や根元径などが同じ 大きさの場合の各樹種間の根の深さの比較を行った。また,根の広 がり倣樹種によって異なり,広がりが大きい樹種と小さい樹種があ り,根系の水平的な成長は垂直的な成長よりも大きく,しかも根の 広がりは樹高や根元径などに比例して大きくなることを指摘した。

そして樹高や根元径が同じ大きさの場合の各.樹種間の根の広がりの 比較を行った。また根量の年々の増加率は樹種によって異なるもの の,根量は地上部の重量と相関が高く,両者は比例して増加するこ とを明らかにした。

    根量の分布様式の経年変化では,カツラなど6樹種の根系の垂直 分布 量および水平分布量の変化を3〜5年間にわたって調査した。

垂直分布では細根の分布では地中深いところで剖合が年々多くなる

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樹 種 と ,深 部 で の剖合 は増 加しな いで 浅いと ころ に多く ある 樹種と が み ら れる こ と ,水平 分布 では根 株近 くに多 くの 細根が 分布 する樹 種 と , 広範 囲 に わたっ て分 散する 樹種 とがみ られ ること を示 した。

ま た 枝 張り と 根 系の分 布量 の関係 では ,ほと んど の樹種 では 全根量 で は10%以 上 が 枝張り の外 に分布 し, 細根で は50%以上 が枝 張りの 外 に あ る樹 種 も みられ ,か なりの 根量 が枝張 りを 越えて 広が ってい る こ と を明 ら か にした 。さ らに, 根密 度(E/l0003cm) はい ずれの 樹 種 と も根 株 に 近いと ころ が最も 高い が,樹 種に よる特 性が みられ ることを指摘した。

  樹 木 の成 長 に 伴 う 根 系 の 形態 変 化 で は , ア カエ ゾマ ツなど6樹種 の 実 生 苗や 天 然 生稚苗 や稚 樹の根 系の 形態を 調べ た。ア カェ ゾマツ で は 初 め垂 下 根 型であ るが ,やが て成 長に伴 って 樹高以 上の 長大な 水平 根を 持つも ゛のがみられるようになる。エゾマツやトドマツでは 同 じ 樹 齢で あ っ ても, 長い 水平根 を持 つ個体 の樹 高成長 は良 いが,

水 平 根 の発 達 し ていな い個 体では 樹高 成長は 劣っ ていた 。ま たカラ マ ツ や シラ カ ン バでも 長い 水平根 を持 つ個体 弦樹 高成長 も良 いが,

垂 下 根 型や 杭 根 型の個 体で は樹高 成長 が劣っ てい た。さ らに ,エゾ   ウコギでは長い水平根を伸ばしながら.新たな地上部を発生させるこ   とにより,個体の成長と維゛持をはかっていた。このようなことから,

,根 系の 発達, とくに水平根を長く発達させることが,樹木の成長に   とってきわめて重要であることを指摘した。

    根系 への人 為的な作用が樹木の成長に及ぼす影響では,キハダの   苗 木を 用いて 調査したところ,根系の切断量が多いほど,また植栽   密 度が 高いほ ど地上部の成長は劣ることを示した。また,カツラな   ど5樹種 の苗 木を用 いて 調査し た結 果,移 植のさいに失われる細根   量 がき わめて 多い こと, およ ぴキタ コブ シなど3樹種を用いて据置   苗 と床 替苗と の成長を比較すると明らかに据置苗のほうが成長が良     一497−

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い こ とを 指 摘 し た 。 さら にシ ラカン バな ど4樹 種の苗 木を5月か ら 11月 まで毎 月植 栽し,春と秋に植栽すると活着串が高かったが,秋 植栽 では雪 害を 受けやすく翌年の成長量も少ないことを明らかにし た。 また, ナナ カマド など5樹種 の大苗 では 明らか に秋植栽よりも 春植 栽のほ うが 活着率が高いこと,荳期に植栽する場合は葉を除去 する 方法が 最も 活着率が高いことを指摘した。さらに,アカエゾマ ツ な ど3樹 種 の 苗木 を5月 から11月ま で毎 月根箱 に植 栽して 観察 し たところ,秋に植栽すると根端の伸長量弦著しく少ナょいか,全く伸,

長し ないこ とを 明らかにした。このように,根系に対する人為的な 作 用 は 地 上 部 や 根 系 の 成 長 に 大 き く 影 響す る こ と を 指 摘 した 。   総 合考察 では ,根端と地上部の成長との年周期性の関係を諭じ,

その 関係を3っの タイ プに分 類し ,同化 生産 物の利 用方法の面から 考察 した。 また 根系が環境条件によって形態が変化することから環 境に 対する 適応 性が広いこと,適応性の広い根系を持つ樹種が生存 には 有利で ある ことを推察した。さらに,生存競争における根系の 役剖 につい て論 じ,生存競争には地上部の光条件だけではなく,根 系の 養分や 水分 などを獲得するための熾熟な争いが強く影響レてい るこ とを指 摘し た。そして植栽技術への応用として,大型苗木の育 苗方 法や, 移植 の難易性・時期などについて述べた。また,植栽樹 木の 植栽に あた って汢それぞれの樹種の根系特性を考慮して行わな けれ ばなら ない こと,とくに根系が成長するための広い空間を確保 する必要があることを指摘した。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教授 教授 助教授

五十嵐 滝川 矢島

学 位 論 文 題 名

恒 夫 貞 夫     星 ニ     )1

樹木の根系の成長に関する基礎的研究

  本 論 文 は.6章 で 構 成 さ れ 、 図1( )5、 表35.引 用 文 献116、 総 頁 数224頁 の 和 文 論 文 で あ る 。BlJに 参 考 論 文43編 が 添 え ら れ て い る ,

  樹 木 の 生育 に と って き わ めて : 重 要 な根 系 に 関す る 研 究は 、 調 査が き わ めて 困 難 で あ る た め 研 究 事 例 は 著 し く 少 な い 。 本 論 文 で は 樹 木 の 根 系 の 成 長特 性 を 解明 す る こ と を 目 的 と し , 根 端 成 長 の 特 性 、 根 系 の 深 さ や 広 か り 、 根 量 の成 長 量 およ び 根 系 の 分 布 様 式 の 変 化 な ど 、 根 系 の 形 態 が 地 上 部 の 発 達 に 伴 っ て どの よ う に変 化 す る か を 諭 じ た も の で あ る 。

  1. 根 端 の 伸 長 量 と 季 節 変 化 に つ い て は 、 根 箱 を 用 い て 針 葉 樹4種 、 広 葉 樹38 種 の 根 端 の 伸 長 を2年 間 調 べ 、 伸 長 の 季 節 変 化 が 樹 種 に よ っ て 異 な る こ と 、 根 端 の 伸 長 は 地 上 部 の 成 長 よ り も 早 く 始 ま る 樹 種 が 多 い こ と 、 す べ て の樹 種 で 地上 部 の 伸 艮 が 停 止 し た 後 も 根 端 は 伸 び 続 け る こ と 、 さ ら に 根 端 の 伸 長 と地 上 部 の成 長 の 関 係 を4っ に 区 分 し た 。 ま た 根 端 の 伸 長 は78月 に , 最 も 戯 ん と な る 樹 種 か 多 い こ と 、 根 端 の 伸 長 量 の 季 節 変 化 を 一 山 型 、 ニ 山 型 、 三 山 型 な ど6つ の 型 に 区 分 し 、 各 樹 種 を 類 型 化 し た 。 根 端 の 伸 長 と 地 温 と の 関 係 で は 、 根 端 の伸 長 は 地温 だ け で 規 制 さ ォLる の で は な く 、 地 上 部 の 成長 と の 関係 か 深 いこ と 、 また 、 通 常の 灌 水 や 降 水 で は 根 端 の 伸 長 量 の 増 減 に は ほ と ん ど 影 響 し な い こ と を 明ら か に した 。     2. 根 系 の 深さ と 広 がり お よ ぴ 根圭 毒 の 成畏 に つ いて は 、 シラ カ ン バな ど6樹種 の 根 の 深 さ 、 広 が り お よ び 根 量 を35年 間 測 定 し 、 地 中 深 : く まで 侵 入 する 樹 種 と 、 深 く ま で侵 . 入 しな ぃ 樹 種が あ る こ と、 根 系 の垂 直 的 な成 長 量 はぃ ず れ の樹 種

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とも 小さ く、 根の 深さ は地 上部 の大逢さと矗線的な比例関係がなぃことを明らか にし た。 また 、根 の広 がり が大 きぃ樹龝と小さぃ樹種があり、根系の水平的な成 長は 垂鹹 的な 成長 より も大 巻く 、しかも根の広がりは樹高や根元径などに比例し て大 きく なる こと を明 らか にし た。なおまた、根量の年々の増加率は樹種によっ て 異 な る も の の 、 根 量 は 地 上 部 の 重 量 と 相 関 が 高 い こ と を 明 ら か に し た 。   3. 根 量 の 分 布様 式の 経年 変化 につ いて は、カ ツラ など6樹 種の 根系 の垂直 分 布量 および水司´:分布量の変化を3‑5年間調査した。細根の垂直分布では地中深 いところで割合が年々多くなる樹種と、浅いとこ,ろに多くある樹種とがみられる こと 、水 平分 布で は根 株近 くに 多くの細根が分布する樹種と、広範囲にわたって 分 散 す る 樹 種 とかみ られ た。 また 、ほ とん どの 樹種 で全 根量 の10%以 上が枝 張 りの 外に分布し、細根の50%以上が枝張りの外にある樹租tもみられた。さらに、

根密 度(g/1000cma) は根 株近く が最 も高 いが 、樹 種に よる 特性がみられ,た。

  4.樹 木の 成長 に伴 う根 系の形 態変 化つ いて は、 実生 苗、 天然生稚苗や稚樹の 根系 の形 態を 調べ 、長 い水 平根 を持つ個体の樹高成長は良いが、水平根の発達し てい なぃ 個体 では 樹高 成長 は劣 り、根系の発達、とくに水平根を長く発達させる こ と が 、 樹 木 の 成 長 に と っ てき わ め て 重 要 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た. .   5.根 系へ の人 為的 な作 用が樹 木の 成長 に及 ばす 影響 につ いて、苗木を用いた 実験から、根系の切断量.が多いほど、植栽密度が高いほど地上部の成長は劣るこ と、 移植 のさ ぃに 失わ れる 細根 量が巷わめて多いこと、および据置菌と床替苗と の成 長を 比較 する と明 らか に据 置苗のほうが成長が良いことか明らかになった。

ま た 、 苗 木 を5月 か ら11月 ま で 毎 月 植 栽 し たと ころ 、春 と秋 に植 栽す ると活 着 率カく高かったか;、秋植栽では雪害を受けやすく翌年の成長量:も少なぃこと、夏期 に植栽する場合は葉を除去する方法が最も活着串が高い結果を得た。このように、

根系 に対 する 人為 的な 作用 は地 上部や恨系の成長に大きく影響することか確認さ ォしたュ

  6.植 栽技 術へ の応 用と して、 根端 の伸 長特 性か ら移 植の 難易性を易・中・轆 に3区分 する とと もに 、根 系特性 を考 慮し た植 栽時 期を 明ら かにした。また、植 栽に あた って は、 とく に根 系が 成長するため深さよりも広い空間を確保する必要 があることを指摘したュ

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  以上のように本研究は、これまで明確でなかった樹木の根系の成長特性につい て、多くの樹種に対する実験結果に基づぃて樹ホの根端と地上部の成長との年周 期性を論じたものである。そめ成果は、造林学上また環境植栽分野の発展に寄与 するところ大きぃものかある。

  よって審査員一同は、別に行った学力確認試験の結果と合わせて、本諭文の提 出者佐藤孝犬は、博j:(農学)の学位を受けるに十分な資格があると認定した。

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参照

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