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地学雑誌 Journal of Geography 119(2) Existence of New Independent Regional Metamorphic Belt in the Sanbagawa Metamorphic Belt: Orogenic Evolut

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三波川変成帯中の新たな独立した広域変成帯の存在

白亜紀から第三紀の日本における造山運動

青 木 一 勝

**

柳 井 修 一

***

丸 山 茂 徳

Existence of New Independent Regional Metamorphic Belt in the Sanbagawa Metamorphic Belt :

Orogenic Evolution of Japan from Cretaceous to Tertiary Kazumasa AOKI*, Shigeru OTOH**, Shuichi YANAI***

and Shigenori MARUYAMA* Abstract

  The Sanbagawa metamorphic belt in SW Japan was previously considered to extend in the E-W direction from the Kanto Mountains to Kyushu Island, a distance > 800 km. However, Aoki

et al. (2007) recently demonstrated that protoliths of metamorphic rocks in the Oboke area of the belt in central Shikoku accumulated at the trench after ca. 90-80 Ma. Furthermore, Aoki et

al. (2008) showed that these rocks suffered blueschist metamorphism at 66-61 Ma, which differs from the timing of the Sanbagawa metamorphism. Thus, these results show that the Sanbagawa belt in Shikoku is a composite metamorphic belt. We, therefore, redefine the traditional San-bagawa belt; the structurally upper part is the SanSan-bagawa metamorphic belt (sensu stricto). It formed as an accretionary complex at ca. 140-130 Ma and subsequently experienced BS-EC facies metamorphism at ca. 120-110 Ma (Okamoto et al., 2004). By contrast, the structurally lower segment termed the Shimanto BS facies metamorphic belt, formed as an accretionary com-plex after ca. 90-80 Ma and experienced peak metamorphism at ca. 60 Ma. Our observations have important implications for the lateral extension of these two metamorphic belts in SW Japan. The accretionary ages of the traditional Sanbagawa belt in the Kanto Mountains are younger than the Sanbagawa peak metamorphic age (Tsutsumi et al., 2009), clearly indicating that the entire region of Kanto Mountains Sanbagawa must belong to the Shimanto metamor-phic belt. The same timing relationships were also found for the Sanbagawa belt on Kii Peninsu-la (Otoh et al., 2010). These results, therefore, indicate that the Shimanto metamorphic belt is exposed in Shikoku, Kii, and Kanto, thus the spatial distribution of Sanbagawa belt (ss) is less than half of its previous extent. The metamorphic grade of the Kanto Mountains in the Shiman-to metamorphic belt ranges from pumpellyite-actinolite facies Shiman-to epidote-amphibolite facies. Therefore, the higher-grade rocks of the Shimanto metamorphic rocks are exposed in the Kanto Mountains in comparison with Shikoku and Kii Peninsula. Hence, these two distinct BS-EA-EC 地学雑誌 Journal of Geography 119(2)313—332 2010   * 東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻  ** 富山大学大学院理工学研究部 *** 株式会社ジオ・コミュニケーションズ

  * Department of Earth and Planetary Sciences, Tokyo Institute of Technology  ** Graduate School of Science and Engineering, University of Toyama *** Japan Geocommunications Co. Ltd.

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I.は じ め に  現在も活動的な島弧—海溝系をなす日本列島の ほとんどは,過去約 5 億年間にわたって,東ア ジア大陸縁辺部における海洋プレート収束域,い わゆる沈み込み帯で発達・成長してきた複数の造 山運動の産物によって構成されている(例えば, 磯㟢・丸山, 1991; Maruyama et al., 1997)。し たがって,日本列島の地体構造区分の研究は,日 本列島の地質構造発達史のみならず,かつて東ア ジア大陸縁辺部で起きたプレート収束域での造山 運動の理解につながる。  これまで日本列島における地体構造区分は,本 質的には,主要地質体,とくに付加体や高圧変成 帯の岩相層序と形成年代によって定義・区分され てきた。四万十帯北帯の付加体の場合であれば, ほぼ非変成の海洋・半遠洋性および陸源砕屑岩類 からなり,微化石分析による付加年代約 100— 70 Maで特徴づけられる地質体と定義され,そ の分布範囲,および境界が明確に野外で確認され てきた。また,高圧変成帯の場合では,低変成度 (例えば,パンペリー石—アクチノ閃石相)から高 変成度(例えば,エクロジャイト相)までの一連 の変成岩類からなり,特定の変成ピーク年代をも つ地質体として定義され,同様に野外で分布境界 が確認されてきた。  現在用いられている地体構造区分の名称は,プ レートテクトニクス理論導入以前の地向斜造山論 に基づく区分時に命名されたものが引き続き使用 されている。しかし,近年,照射型誘導結合プラ ズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)や高分解能型 二次イオン質量分析装置(HR-SIMS)などの精 密年代分析装置の発達により,これまで以上に精 度よく地質体の堆積・付加年代や変成年代に対し て制約を与えることが可能になり,地体構造区分 やその名称について抜本的な改正が必要になって きた。  本稿では,西南日本に分布する広域高圧変成帯 である,いわゆる三波川変成帯に関する最近の新 しい研究成果を紹介し,“四万十変成帯”という 新しい地体構造単元の識別を提案する。さらに日 本列島における白亜紀から第三紀にかけての造山 運動論について“三波川造山運動”と“四万十造 山運動”という概念を提案し,それら造山運動の 実態についてわれわれの見解を述べる。

(?) metamorphic belts are virtually equivalent in terms of spatial distribution, metamorphic range of grade, and facies series. Pacific-type orogenic belts typically comprise accretionary com-plex, high-P/T metamorphic belt, fore-arc sediments, and batholith belt landward from the trench (Maruyama et al., 1996). In SW Japan, the Sanbagawa belt (ss) is paired with the Ryoke

low-P/T metamorphic belt and with the ca. 120-70 Ma Sanyo TTG batholith belt. Furthermore the related fore-arc basin may have developed penecontemporaneously with the Shimanto BS-EA orogeny, which is paired with the late Cretaceous to early Tertiary San-in TTG belt, which extending along the Japan Sea coast. In-between the intervening Izumi Group, a fore-arc basin deposit formed during the Campanian to Maastrichtian. Thus, these two groups of orogenic units, which formed during independent orogenies were both extensively modified during the opening of the Japan Sea ca. 20 Ma. The southward thrusting of the Ryoke and Cretaceous TTG belts over the Sanbagawa extended beyond the southern limit of the Sanbagawa, leading the up-down relationship of the Sanbagawa (ss) and the Ryoke belts.

Key words: Orogenic belt, Orogeny, strict-sense Sanbagawa metamorphic belt, Shimanto meta-morphic belt

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II.造山運動  1)プレート造山運動論と大陸地殻の生成  プレートテクトニクスの枠組のなかで説明され る造山運動とは,プレート収束域周辺でプレート 沈み込みに伴って,ある特定の時間スケールのな かで起こる地質現象の総称である。造山運動は, 活動の場により,衝突型造山運動と太平洋型造山 運動の 2 つに大別される(Dewey and Bard, 1970; Matsuda and Ueda, 1971; Maruyama, 1997)。 衝突型造山運動は大陸と大陸との衝突境界で起こ るのに対して,太平洋型造山運動は,海洋プレー トが沈み込む場,いわゆる沈み込み帯と呼ばれる 場で起こる。その結果として形成される地質体や 地質構造を総称して造山帯と呼ぶ。衝突型造山帯 は,前縁沈降帯,前縁褶曲・衝上断層帯,高圧— 超高圧変成帯などを主要要素としてもつ。新生代 のヒマラヤ造山帯や古生代前期のカレドニア造山 帯などにその例をみる。一方,太平洋型造山帯で は,付加体,前弧海盆,高圧変成帯,バソリス帯 などの要素が形成され,その代表例として北米西 岸のコルディエラ造山帯があげられる。  主要な構成地質体のなかで高圧変成帯はとくに 重要である。なぜなら,高圧変成帯は造山帯の核 (orogenic core)を占めるからである。高圧変成 帯の存在は,マントル深度で変成作用を受けた地 質体を地表まで上昇させた大規模な造構運動を明 示する。また太平洋型造山帯では衝突型造山帯に はない巨大なバソリス帯が形成されることから, 太平洋型造山運動は,大陸地殻を新たに生成する という特徴をもつ。  2)日本列島における地体構造区分と造山運動 論の関係  過去に起きた造山運動の活動時期や規模および 造山帯形成時のそれぞれの地質体の位置関係,そ して当時の造山帯発達プロセスを議論するために は,個々の地質体の生成プロセス,形成年代,そ してその地質体の空間分布などの情報が必要不可 欠である。そのなかで個々の地質体の空間分布や 位置関係を示す地体構造区分は,造山帯形成論を 議論する上で,非常に重要な意味をもつ。  日本列島は,島弧—海溝系に関連した太平洋型 造山運動が現在も起きている場所であるが,過去 約 5 億年間においても複数回の太平洋型造山運 動を通して発達してきた。基盤岩類が広く露出す る西南日本は,日本列島の地体構造区分に関する 研究がなされてきた古典的な対象である。その中 で,4 つの高圧変成岩が識別されている。すな わち大江山帯に産する 440—400 Ma の高圧変成 岩(磯㟢・丸山, 1991; 辻森ほか, 2000),蓮華帯 の 330—280 Ma の高圧変成岩(Nishimura, 1998; Tsujimori and Itaya, 1999),周防帯の230—160 Ma の高圧変成岩(Nishimura, 1998),三波川変 成帯の 120—110 Ma の高圧変成岩(南新ほか, 1979; Okamoto et al., 2004)である。上述の通 り,高圧変成岩が造山帯の核をなすことから,西 南日本には,かつて東アジア大陸縁辺部で起きた 4回の造山運動の記録が保持されていると説明さ れてきた(磯㟢・丸山, 1991)。しかし,近年, 従来三波川変成帯と区分されてきた領域におい て,累進的三波川高圧変成作用終了後に,別個の 付加体が独立した高圧変成作用を被ってできた結 晶片岩が広域に産することが明らかになってきた (Aoki et al., 2007, 2008)。これらの事実は,西 南日本において,これまで考えられてきた過去の 造山運動と現在進行形の造山運動の間に,もう 1 つ別個の造山運動があったことを意味する。この 造山運動の実態を明らかにするためには,まず その造山運動に伴い形成した造山帯を構成する 個々の地質体の空間分布の情報をまとめる必要 がある。そこで,まず近年明らかになってきた三 波川変成帯の空間分布に関する新知見を以下に記 す。 III.三波川変成帯の地体構造区分に関する 新知見  1)三波川変成帯  三波川変成帯は,太平洋型造山運動によって形 成された高圧型の広域変成帯であり,従来,九州 佐賀関から関東山地まで約 800 km にわたって帯 状に分布する(図 1)。三波川変成帯には,低変 成度(パンペリー石—アクチノ閃石相)から高変

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成度(エクロジャイト相)までの一連の変成岩が 産出する。岩石種は,主に結晶片岩であるが,そ の南縁部に断続的に御荷鉾緑色岩類と呼ばれる弱 変成緑色岩が分布する。三波川変成帯の原岩であ る付加体が海溝で形成された年代は,微化石年代 (松田, 1978; 須鎗ほか, 1980; 岩崎ほか, 1984)や SHRIMP(高感度高分解能イオンマイクロプロー ブ)ジルコン U-Pb 年代(Okamoto et al., 2004) から,約 140—130 Ma であると考えられる(Iso-zaki and Itaya, 1990)。また,三波川変成作用の ピーク年代は,Rb-Sr 全岩アイソクロン年代や SHRIMPジルコン U-Pb 年代から約 120—110 Ma (南新ほか, 1979; Isozaki and Itaya, 1990; Oka-moto et al., 2004) で あ る。 最 近 Wallis et al. (2009)は,ザクロ石(著しく組成累帯構造を呈 する)—オンファス輝石 Lu-Hf アイソクロン年代 測定から約 90 Ma という年代を得て,これをエ クロジャイト相変成作用のピーク年代として報告 した。しかし,著しい組成累帯構造を呈するザク ロ石と周囲の基質をなすオンファス輝石との間の 平衡関係は保証されておらず,また,彼らが分析 に用いたザクロ石には Lu の組成累帯構造が認め られる。したがって,解析に用いた同位体比の値 は,成長時期の異なる鉱物の混合値の可能性があ り(Aoki et al., 2010),その年代は,他の放射性 同位体年代分析(Sm-Nd アイソクロン年代やジ ルコン U-Pb 局所分析など)によってさらなる検 証が必要である。  四国の三波川変成岩の白雲母 K-Ar 年代の多く は, 約 90—65 Ma を 示 す(Itaya and Takasugi, 1988; Wallis et al., 2001など)。三波川変成岩は マントル深部から上昇する過程で加水後退再結晶 作用を被っているので(Aoya, 2001; Ota et al., 2004; Aoki et al., 2009; Kouketsu et al., 2010な ど),これらの年代は従来考えられたような変成 作用のピーク直後の閉止温度通過年代を示すの ではなく,かなり後の後退再結晶の年代を示し ていると考えるのが妥当である(丸山ほか, 2004; Aoki et al., 2009)。  以上のことを考慮して,これまで三波川変成岩 は,約 140—130 Ma 頃に海溝で付加体として形 成された後,沈み込み帯深部に引きずり込まれ, 約 120—110 Ma にピーク変成作用を被った低変 成度(パンペリー石—アクチノ閃石相)から高変 成度(エクロジャイト相)に至る一連の変成岩類 であり,三波川変成帯はそれらが産出する領域と 理解されてきた。  しかし最近になって,三波川変成帯に,明らか に三波川変成作用よりも若い時期の別個の高圧型 変成岩類が産することが明らかになり,従来の区 分を抜本的に修正する必要が生じた。以下に, 三波川変成帯の主要分布域である,四国中央部, 図 1  西 南 日 本 外 帯 に お け る 従 来 の 領 家 帯, 三 波 川 変 成 帯,秩 父 累 帯,四 万 十 帯 の 空 間 分 布(磯 㟢・丸 山, 1991).

Fig. 1  Previous geotectonic subdivision of outer-zone in SW Japan (refer to Isozaki and Maruyama, 1991).

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関東山地および紀伊半島北西部について,順次具 体的に説明する。  2)四国中央部  四国中央部の大歩危地域の三波川変成帯には, 明瞭な片理構造をもつ結晶片岩が露出し,それら は一括して三波川変成岩と呼ばれてきた。また三 波川変成岩は岩相組み合わせに基づき,以下のよ うに三分されてきた。すなわち見かけの下位から 上位に向かって,泥質片岩を主体とする川口層, 砂質片岩を主体とする小歩危層,そして泥質片岩 を主体とする三縄層である(剣山研究グループ, 1984)。  しかし,Aoki et al.(2007)は,これらの 3 つ のユニットからジルコンを系統的に分離し,火成 起源を特徴づけるオシラトリー累帯構造を示す箇 所について LA-ICP-MS を用いて U-Pb 年代局所 分析を行った。その結果,下位の小歩危層および 川口層から,おのおの最も若い火成年代 92

±

4 Maおよび 82

±

11 Maをもつジルコンを見つけ た。したがって,これらの変成岩の原岩は,火成 起源ジルコンが示す年代よりも後に海溝へ運ば れ,堆積したと考えられる。  上述のように,三波川変成岩主部の原岩の付加 年代およびピーク変成年代は,小歩危層および川 口層の結晶片岩よりも明らかに古いことから,こ れらを同一の変成作用の産物とみなすことはでき ない。言い換えれば,小歩危層および川口層の結 晶片岩は三波川変成岩類とは独立の別個の変成岩 と認識される。また堆積年代から判断すると,こ れらの原岩は四万十帯北帯の付加体に相当するこ と,またそれらの高圧変成部が四国中央部におい て地窓として露出していることが示された。この ような三波川変成岩の直下に四万十帯の付加体 が分布するという地質学的関係は,すでに付加 体の累重関係(福冨・磯㟢, 1988; 磯㟢・板谷, 1991; 磯㟢・丸山, 1991)から,また小歩危層の変 成岩の全岩化学組成や礫種の類似性(Kiminami et al., 1999)やフィッショントラックジルコン年 代(Shinjoe and Tagami, 1994)から推定されて いたが,最近の火成起源の砕屑性ジルコンの年代 学によってそれが明確な形で実証されたといえる。  さらに,Aoki et al.(2008)は,変成岩岩石学 的研究および白雲母 K-Ar 年代測定を行い,小歩 危層および川口層が,累進的三波川変成作用より も明らかに若い 66—61 Ma に藍閃変成作用(広 義)を被ったことを明らかにした。これは,西南 日本における最も若い藍閃変成岩にあたる。さら に大藤ほか(2010)は,Aoki et al.(2007)と 同じ手法を用いて,四国大歩危地域の三縄層下部 層も四万十帯付加体の変成部であることを示し, さらにそれらの側方連続性や岩相の類似性に基づ き,四国全域における四万十帯北帯相当の変成岩 の分布域を推定している(図 2a)。  3)関東山地  関東山地の三波川変成岩は,原岩の岩相に基づ き構造的下位の三波川ユニットと上位のミカブ (御荷鉾)ユニットに区分されてきた(牧本・竹内, 1992)。最近,Tsutsumi et al.(2009)は,山地 北部の鮎川—三波川地域に産出する砂質片岩(3 試料)からジルコンを分離し,SHRIMP II を用 いてオシラトリー累帯構造を示す箇所の U-Pb 年 代局所分析を行った。その結果,それぞれの試料 から最も若い火成年代として,78.8

±

1.3 Ma, 91.4

±

1.4 Ma,95.3

±

1.5 Maという年代を得, それぞれの原岩の砂岩がこれらの年代よりも後に 堆積したことを示した。これらのジルコンの火成 年代と,四国の三波川変成岩の変成ピーク年代, 関東山地三波川変成岩の K-Ar 変成年代および 四万十帯北帯の付加体形成年代とを比較して, Tsutsumi et al.(2009)は関東山地の三波川ユ ニットは,四万十帯北帯相当の付加体の変成部で あると結論づけた。構造的上位のミカブユニット の付加・堆積年代および変成年代は直接求められ ていないが,四国や紀伊半島に分布する御荷鉾緑 色岩類がもつ付加・堆積年代や K-Ar 年代(松田, 1978; 須鎗ほか, 1980; 岩崎ほか, 1984, 1988; 栗本, 1995)から判断すると,ミカブユニットは, 狭義の三波川変成岩に含めるのが妥当である(図 3)。  4)紀伊半島北西部  紀伊半島北西部の三波川変成帯は,岩相,地質 構造および変成度の特徴に基づき伝統的に点紋

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図 2  (a)四 国 に お け る 地 体 構 造 区 分 図(大 藤 ほ か, 2010 を 参 照).(b)四 国 地 方 の A—B 断 面 図 お よ び K-Ar 白 雲 母 年 代(Itaya and Takasugi, 1988; 磯 㟢・丸 山, 1991; 河 戸 ほ か, 1991; Aoki et al., 2008; 大 藤 ほ か, 2010 を 参 照) と U-Pb ジ ル コ ン 年 代(Okamoto et al., 2004; Aoki et al., 2009).

Fig. 2 (a) Geotectonic subdivision and N-S cross-section of Shikoku area (refer to Otoh et al., 2010). (b) U-Pb zircon ages and K-Ar phengite ages data plotted along the N-S traverse in central Shikoku with the metamorphic zones along the A-B cross-section in central Shikoku (refer to Itaya and Takasugi, 1988; Isozaki and Maruyama, 1991; Kawato et al., 1991; Aoki et al., 2008; Otoh et al., 2010). Schematic image of infiltration late of fluid were also pro-vided. Zircon U-Pb age was taken from Okamoto et al. (2004) and Aoki et al. (2009).

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帯,無点紋帯,および御荷鉾帯に三区分されて きた(中山, 1983; 栗本, 1995 など)。大藤ほか (2010)は,三波川変成岩とされてきた無点紋帯 から砂質片岩を 3 試料採取し,分離したジルコ ンのオシラトリー累帯構造を示す箇所を LA-ICP-MSを用いて U-Pb 年代局所分析を行った。 その結果,最も若い火成年代として,それぞれ, 80.1

±

8.8 Ma,77.4

±

17.2 Maと 81.6

±

21.8 Ma という年代を得た。測定誤差の幅は大きいもの の,無点紋帯の砂質片岩の原岩(砂岩)は,これ らの年代よりも後に堆積したことが確認された。 四国の三波川変成岩の変成ピーク年代,紀伊半島 西 部 の 三 波 川 変 成 岩 の K-Ar 変 成 年 代 お よ び 四万十帯北帯の付加年代を比較して,大藤ほか (2010)は紀伊半島西部の無点紋帯の変成岩の原 岩は四万十帯北帯相当の付加体であるとした(図 4)。 IV.西南日本外帯の高圧変成岩類の 新しい地体構造区分  1)四万十変成岩の地質構造・変成相系列・ 変成年代  上述したように,四国,関東および紀伊の三波 川変成帯のなかに,三波川変成岩よりも明らかに 後に累進変成作用を被った別の高圧変成岩が分布 していることがわかってきた。それらは原岩の 付加体としての形成年代に基づくと,四万十帯 北帯の付加体が高圧変成岩となったもの(以下, 四万十変成岩)と認定され,四国中央部において, 従来の三波川変成帯とされた領域の変成岩のなか 図 3  関 東 山 地 の 地 体 構 造 区 分 図 と A—B 断 面 図(阿 部 ほ か, 2001; 関 東 山 地 団 体 研 究 グ ルー プ, 2002; Tsutsumi et al., 2009を 参 照).

Fig. 3  Geotectonic subdivision and A-B cross-section of Kanto Mountains. (refer to Abe et al., 2001; Kanto Mountains Research Group, 2002; Tsutsumi et al., 2009). MTL: Median Tectonic Line, BTL: Butsuzo Tectonic Line.

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で構造的に最下位に産する(剣山研究グループ, 1984; Aoki et al., 2007, 2008など)(図 2b)。こ の関係は,関東山地や紀伊半島においても同様で ある(関東山地 ; 牧本・竹内, 1992; 紀伊半島 ; 大 藤 ほ か, 2010)。 さ ら に,Aoki et al.(2008, 2009)は,三波川変成岩が,そのピーク変成作 用後に四万十変成岩の構造的上位に衝上したこと を示した。以上のことから,従来,三波川変成帯 と一括されてきた領域において,ジュラ紀末~白 亜紀最初期の付加体を原岩とする三波川変成岩 は,つねに白亜紀後期の付加体を原岩とする 四万十変成岩の構造的上位に累重することが確認 された(図 2b)。  次に,この 2 種の変成岩の変成相系列および 変成年代について比較する。四国中央部大歩危地 域に産する四万十変成岩は,66—61 Ma に変成作 用のピークをむかえ,その最高変成条件は藍閃変 成作用(広義)の条件下であった(Aoki et al., 2008)。一方,四国中央部汗見川地域に産する 四万十変成岩(大藤ほか, 2010)は,約 80—75 Ma

の K-Ar 白雲母年代をもつ(Itaya and Takasugi, 1988)(図 2b)。これらの年代は,大藤ほか(2010) が同層準のジルコンから得た最も若い火成年代よ りも古いので,砕屑性白雲母の混入の結果と考え られる。しかし,K-Ar 年代の測定値同士はほぼ 一致することから,汗見川地域の変成岩の原岩は 相対的に早い時期に堆積・付加し,そして累進的 変成作用を被っていたのかもしれない。  関東山地の四万十変成岩は,これまでの研究に よれば緑泥石帯,ザクロ石帯および黒雲母帯の 3 つに変成分帯されてきた。低変成度(パンペリー 石—アクチノ閃石相)から高変成度(緑れん石—角 閃岩相)までの一連の累進的変成相系列が確認さ れ,その最高変成温度条件は,7—12 kbar,460— 540℃とされた(Toriumi, 1975; Hirajima, 1989; 牧本・竹内, 1992; 宮下ほか, 2009)(図 5)。した がって,関東山地の四万十変成岩の高変成度部 図 5  三 波 川 変 成 岩 類 と 四 万 十 変 成 岩 類 が 示 す 変 成 相系列(Toriumi, 1975; Hirajima, 1989; Aoki et al., 2008; Aoki, 2009; 宮 下 ほ か, 2009 を 参 照).変 成 相 区 分 は,Maruyama et al. (1996)を 参 照. Fig. 5  Metamorphic facies series of Sanbagawa and

Shimanto metamorphic rocks (refer to Toriumi, 1975; Hirajima, 1989; Aoki et al., 2008; Aoki, 2009; Miyashita et al., 2009). Division of meta-morphic facies is from Maruyama et al. (1996). 図 4  紀 伊 半 島 の 地 体 構 造 区 分 図( 栗 本, 1993; de

Jong et al., 2000; 大 藤 ほ か, 2010 を 参 照). Fig. 4  Geotectonic subdivision of Kii Peninsula (refer to

Kurimoto, 1993; de Jong et al., 2000; Otoh et al., 2010).

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は,マントル深部約 30—40 km で変成され,その 後,表層まで上昇したと考えられる。また,これ までに報告された白雲母 K-Ar 年代は,緑泥石帯 で約 80—70 Ma,ザクロ石帯で約 80—60 Ma,そ して,黒雲母帯で約 70—60 Ma である(平島ほか, 1992; Miyashita and Itaya, 2002)。上述の原岩 の堆積年代と白雲母 K-Ar 系の閉鎖温度,および 変成温度に基づくと,関東山地の四万十変成岩は 約 80—60 Ma の間に変成作用のピークをむかえた と考えられる(Tsutsumi et al., 2009)。  紀伊半島北西部の四万十変成岩の変成相は,こ れまでの研究に基づくと,パンペリー石—アクチ ノ閃石相から藍閃石片岩相(広義)に及ぶ(王・ 前川, 1997)。無点紋帯の大部分の変成岩の白雲 母 K-Ar 年代は,約 80—69 Ma(栗本, 1993, 1995) であるので,紀伊半島北西部の四万十変成岩類 は,80—69 Ma の間に変成作用のピークをむかえ たと考えられる。しかし,無点紋帯南部では, 97—83 Ma といった古い年代も報告されている (栗本, 1993, 1995)。大藤ほか(2010)は,この 地域の変成岩が約 80 Ma 以降に堆積・付加した ことを明らかにしており,97—83 Ma といった古 い年代は,砕屑性白雲母の混入の結果と推測され る。しかし,一方で,無点紋帯南部の岩石につい ては,無点紋帯北部・中央部の変成岩に連続しな い可能性も指摘されており(栗本, 1995),北部 や中央部の原岩よりも早い時期に堆積・付加した 後に,累進的四万十変成作用を被ったのかもしれ ない。  2)四万十変成帯の提案  これまで四万十帯北帯は白亜紀の非ないし弱変 成付加体の分布域と定義されてきた。それらの地 域には主に,低変成度(プレーナイト—アクチノ 閃石相や緑色片岩相)の変成岩が産出し,その変 成作用は低圧型とされてきた(Toriumi and Ter-uya, 1988; Miyazaki and Okumura, 2004; Hara and Hisada, 2007; Hara and Kurihara, 2010)。 しかし,上述したように,四万十帯北帯の付加体 に相当する岩石を原岩とする変成岩は,日本列島 において,かなり広域的の空間分布をもつことが わかった(図 2,図 3,図 4)。それらはどの地域 においても三波川変成岩の構造的下位に産する。 また , その累進変成作用は高圧型の藍閃変成作用 であり,とくに関東山地においては,低変成度 (パンペリー石—アクチノ閃石相)から高変成度 (緑れん石—角閃岩相)までの一連の変成岩がすべ て露出する(図 5)。そして,その変成作用のピー ク年代は,三波川変成作用のピーク年代(120— 110 Ma)より明瞭に若い。以上を整理すると, 累進的三波川変成作用が進行している時期にはま だ四万十変成岩はその原岩すら形成されていな かったことになる。  一般に高圧変成帯は,接触変成帯に比べて,広 域的な空間分布をもち,低変成度から高変成度ま での一連の変成岩が産出し,特定の変成ピーク年 代をもつ。したがって,本稿でとりあげた四万十 変成岩は,三波川変成岩とは年代の異なる独立し た広域高圧変成作用の産物とみなせる。したがっ て,従来の三波川変成岩を 2 つに区分する必要 が生じる。すなわち,“狭義の三波川変成岩”と その構造的下位に産する別個の藍閃変成岩であ る。本稿では,西南日本おける最も若い形成年代 をもつ後者の藍閃変成岩の分布域を “四万十変成 帯”と命名する。  3)狭義の三波川変成帯と四万十変成帯の断層 境界  従来三波川変成岩と一括された中に識別された 2種の異なる変成岩の間には明確な年代差がある ので,両者間には明確な不連続面(断層)が観察 されると予想される。大歩危地域の三波川帯には ドーム状構造が確認されており,四万十変成岩が 狭義の三波川変成岩の構造的下位に産する。ただ し同地域内で実際に両変成岩が直接する様子は ドームの北翼部でのみ観察され,そこでは狭義の 三波川変成岩と四万十変成岩とが高角な断層を 介して接する様子が報告されている(岡本ほか, 2009)。しかし,この断層境界は初生的な断層と は考えにくい。なぜなら,同地域の地質体はいず れも低角度の地質構造で特徴づけられており,ま た四万十変成岩の側方への連続性(図 2a)など から判断すると,両変成岩間の境界は本質的に低 角度の断層であったと推定される。

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 そもそも狭義の三波川変成岩は,最高変成度 岩石がマントル深度相当である約 40—50 km 以上 の深さから上昇し,より形成年代の若い四万十 変成帯の上位に定置したので(Aoki et al., 2008, 2009),狭義の三波川変成岩上昇時の四万十付加 体との初生的な境界断層は,低角逆断層であった と考えられる。一方で,四万十変成岩も遅れて地 下 30 km 以深から上昇し表層へ定置されており, その上面は低角正断層境界であったと考えられ る。形成順序を考慮すれば,現在の地表で観察し うる両変成岩間の低角度断層は,おそらく後者の タイプが多いと推定される。いずれにせよ,上述 の高角度断層はそのどちらにもあたらず,最後に 両変成岩がともにドーム状隆起した時に形成され た二次的な断層境界である可能性が高い。  このように,狭義の三波川変成帯と四万十変成 帯の境界断層としては,狭義の三波川変成岩類の 上昇による逆断層,四万十変成岩類の上昇による 正断層,二次的な運動による高角度断層の 3 つ が存在しうる。これらの境界断層すべてが同一地 域において確認された例はないが,断層境界の特 定は,四万十変成帯の空間分布域の特定のみなら ず,狭義の三波川変成帯と四万十変成帯の上昇テ クトニクスを解明する上で非常に重要である。狭 義の三波川変成帯上昇時,四万十変成帯上昇時, そして二次的運動時それぞれに対応する断層境界 の系統的な特定は,今後の重要な課題である。 V.白亜紀から第三紀にかけての造山運動  かつて地向斜概念のもとに,秋吉造山運動,佐 川造山運動,大八洲造山運動および大島造山運動 (Kobayashi, 1941),本州造山運動(牛来, 1955), 阿部族造山運動(湊, 1966),四万十造山運動 (堀越, 1972)などの造山運動が日本列島につい て提唱されてきた。しかし,これらの造山運動に 対応する地質構造や地質体の分布の規模はさまざ まで,とくに造山帯構成地質体の精密な年代が不 在の状態で提案されたものが多く,また各造山帯 の範囲は必ずしも明確ではなかった。1990 年前 後になって,プレートテクトニクス理論の枠組み の中で日本列島に産する地質体の形成が説明され るようになった。磯㟢・丸山(1991),Isozaki (1996)および Maruyama(1997)は,日本列 島のようなプレート沈み込み帯で起こる造山運動 が明瞭なリズムをもつことを示した上で,プレー ト沈み込み境界における一回の造山運動が,1 つ の中央海嶺沈み込みから,次の中央海嶺沈み込み までに起きると説明した。一回の造山帯形成で, 付加体,高圧変成帯,バソリス帯,前弧海盆など の主要な造山帯要素が構成され,とくにその活動 のクライマックスは,中央海嶺沈み込みに起きる 高圧変成帯の形成・上昇とバソリス帯の形成にあ ることを指摘した。さらに,この考えに基づい て,日本列島でかつて起きたプレート沈み込み型 の造山運動を 3 つ識別し,それぞれに先駆的研 究を行った 3 人の研究者(E. Naumann,小林 貞一,および都城秋穂)の名を冠して,年代順に 古生代中頃(約 450—300 Ma)のナウマン造山運 動,古生代末~中生代初頭(約 300—220 Ma)の 小林造山運動,および中生代(約 220—75 Ma) の都城造山運動と命名した。そして,現在進行形 の造山運動については,勘米良亀齢にちなんで勘 米良造山運動と呼んだ。  この区分に従うと,三波川変成帯は都城造山運 動という単一の造山運動によって形成されたこと になる。しかし,本稿で示したように,従来三波 川変成帯とされた領域には,異なった付加・堆積 および変成年代をもつ狭義の三波川変成岩と 四万十変成岩が産する。したがって,狭義の三波 川変成帯をつくった造山運動と現在進行形の造山 運動の間に,四万十変成帯をつくったもう 1 つ 別の造山運動が起きたと判断される。そこで, 本稿では,変成帯の名称を冠して,狭義の三波川 変成帯に対応する造山運動を“三波川造山運動” と,そして四万十変成帯に対応する造山運動を “四万十造山運動”と呼ぶことにする。すなわち, 磯㟢・丸山(1991)の都城造山運動(帯)は, 三波川造山運動(帯)と四万十造山運動(帯)に 二分される。  四万十造山運動という名称は,かつて堀越 (1972)によって提案されたことがある。堀越 (1972)は,海洋プレートの沈み込みに伴う造山

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運動は,プレート沈み込み停止で終了すると解釈 し,日本列島で認められるペルム紀から古第三紀 まで続いた造山運動を想定し,四万十造山運動と 呼んだ。しかし,磯㟢・丸山(1991)が示した ように,ペルム紀から古第三紀まで続いた単一の 造山運動を想定することは非現実的である。本稿 で用いる四万十造山運動は,堀越(1972)の説明 とはまったく異なる意味をもつことに留意されたい。  次項では,西南日本を中心にそれぞれの造山運 動に対応する地質体や造山帯の空間分布について まとめ,日本列島における白亜紀以降の地質構造 発達史についてわれわれの見解を示す。  1)三波川造山帯と四万十造山帯の構成地質体  太平洋型造山帯を構成する主要な地質体は,付 加体,高圧変成帯,バソリス帯,および前弧海盆 堆積体の 4 つである。ここでは三波川造山運動 と四万十造山運動で形成された要素を整理する。  三波川造山帯の場合,高圧変成帯が狭義の三波 川変成帯にあたることは自明である。三波川変成 作用のピーク年代は,約 120—110 Ma である。 一方,西南日本には,三波川造山運動よりも 1 つ 前の造山運動で形成された周防高圧変成帯(ca. 230—160 Ma, Nishimura, 1998)が存在する。し たがって,三波川造山帯の構成要素は,約 160— 110 Ma頃から形成されはじめた地質体にあたる。 この時期に形成された付加体として,西南日本に は,約 160—125 Ma に形成された秩父累帯南帯 (狭義 : 三宝山ユニットと斗賀野ユニット, 松岡 ほか, 1998)の付加体が産する。  一方,バソリス帯については,西南日本に,白 亜紀に活動した花崗岩質岩体が広く分布し,産 状,岩相,岩石や鉱物の化学組成,さらに帯磁率 などの違いに基づき,南から北の順で領家帯,山 陽帯および山陰帯に三分されている(Ishihara, 1971; 村上, 1979; 飯泉ほか, 1985)。ただし,こ れら帯間の境界は不明瞭で,領家帯と山陽帯に は,主に約 120—70 Ma の花崗岩類が,一方,山 陰帯には主に約 85—30 Ma の花崗岩類が広く分布 す る( 飯 泉 ほ か, 1985; Nakajima et al., 1990; Kagami et al., 1992; 小山内ほか, 1993; 沢田ほか, 1994; 加々美ほか, 1995; 貴治ほか, 2000; 西田ほ か, 2005 など)。西田ほか(2005)は,山陰中央 部の山陰帯に分布するバソリスおよびそれに付随 する火山岩の Rb-Sr 全岩アイソクロン年代を系 統的に求めた結果,それらの火成岩類は,約 80 Ma(用瀬期),75—50 Ma(因美期)および 44—30 Ma(田万川期)の 3 つに区分されること を示し,山陽帯火成活動が山陰帯の一部に及んで いること,また,75—50 Ma と 44—30 Ma の活動 の間には,明瞭な火成活動の休止がみられること を指摘した。これらの中で,約 120—70 Ma のマ グマ活動でできた領家・山陽帯の花崗岩類および 山陰帯の約 80 Ma の花崗岩類が,三波川造山運 動によって形成されたバソリス帯にあたる。同時 期の前弧海盆堆積物に相当する地質体は,現在, 西南日本において認められておらず,後の地殻変 動で失われた可能性がある。  四万十造山運動の産物については,最近存在が 確認された四万十高圧変成帯(変成年代;約 80— 60 Ma)がその一員であることは自明である。ま た,四万十帯北帯の付加体(付加年代;約 100— 70 Ma)もその一員であることも論をまたない。  バソリス帯については,形成年代から判断し て, 上 述 の 白 亜 紀 後 期 か ら 古 第 三 紀( 約 75— 50 Ma)にかけて形成された山陰帯が四万十造山 運動の産物に相当する。なお東アジア大陸縁辺部 のプレート相対運動の復元によれば,約 70 Ma 頃に沈み込むプレートが,クラプレートから太平 洋プレートに変化したこと,すなわち両プレート 間の海嶺が通過した(沈み込んだ)ことを示す (Maruyama and Seno, 1986)。したがって,山 陰帯の多くの花崗岩類は四万十造山運動がつくっ たバソリス帯と考えられる。やや若い年代(約 44—30 Ma)の花崗岩体を形成した火成活動は, その後の造山運動によるものなのだろう。  四万十造山運動の頃に形成された主要な現地性 堆積体として,西南日本中軸部に産する海成厚層 の和泉層群(後期白亜紀 ; カンパニアン—マスト リヒチアン初期, 須鎗,1973; 橋本・石田, 1997 など)がある。和泉層群は領家帯花崗岩類を不整 合に覆うことから,四万十造山運動時の前弧海盆 堆積体に相当する。

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 2)三波川造山帯と四万十造山帯の構成要素の 配列パタン  太平洋型造山帯では , その構成要素が海溝から 大陸方向に向かって付加体,高圧変成帯,前弧海 盆堆積体,そしてバソリス帯の順で帯状に配列す る。三波川造山帯と四万十造山帯の構成要素につ いて配列パタンを確認してみよう。まず,四万十 造山帯の構成要素については,四万十帯北帯の付 加体が最南部に位置し,北に向かって,四万十高 圧変成帯,前弧海盆堆積体の和泉層群,そして, さらに 100 km 以上内陸側に山陰バソリス帯が配 列する。したがって,四万十造山帯は,造山帯の 本来の初生的空間配列関係を保持している(図 6a)。一方,三波川造山帯構成要素の配列につい ては,秩父累帯南帯(狭義)の付加体が最南部に 位置し,北に向かって順に,狭義の三波川変成帯, そして領家—山陽バソリス帯が配列する。これら三 帯の相対的な配列関係も,基本的な造山帯の空間 的配列関係を残している(図 6b)。ただし三波川 造山帯については前弧海盆堆積体が欠如する。  このように三波川造山帯の中での要素配列順序 に大きな矛盾がないが,一点だけ異様な現象が認 められる。それは,本来隣接するはずがない狭義 の三波川高圧変成帯と領家—山陽バソリス帯が, 中央構造線を介して直接することである。この分 布パタンは,三波川造山帯の構成要素の配列が, 大きな二次的構造改変を被っていることを示して いる。  3)狭義の三波川変成帯と領家帯の地質構造関係  狭義の三波川変成帯と領家帯とは,右横ずれ変 位をもつほぼ垂直な中央構造線を挟んで接してい る。しかし,近年四国東部—瀬戸内海地域におい て南北方向の反射法弾性波探査が行われ,その地 域の詳細な地殻断面解析が行われた(佐藤ほか, 2005; Ito et al., 2009)結果,狭義の三波川変成 帯は,北に約 40°傾斜する断層を介して,領家帯 の構造的下位に産することが判明した。この構造 的累重関係は,表層地質の情報に基づき,すでに 磯㟢・板谷(1991)や磯㟢・丸山(1991)によっ て推定されていた。すなわち,関東平野,中部 図 6  中 国, 四 国 お よ び 紀 伊 地 域 の 造 山 帯 の 空 間 分 布(Ishihara, 1971; 村 上, 1979; 磯 㟢・丸 山, 1991; 大 藤 ほ か, 2010を 参 照).(a)四 万 十 造 山 帯,(b)三 波 川 造 山 帯.

Fig. 6  Spatial distribution of orogenic belts in Chugoku, Shikoku and Kii regions (refer to Ishihara, 1971; Murakami, 1979; Isozaki and Maruyama, 1991; Otoh et al., 2010). (a) Shimanto orogenic belt, (b) Sanbagawa orogenic belt. MTL: Median Tectonic Line, BTL: Butsuzo Tectonic Line, AKL: Aki Tectonic Line, ATL: Aridagawa Tectonic Line; G-HTL: Gobo-Hagi Tectonic Line.

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地方南部,四国西南部および九州全域では約 100 Maの年代をもつ花崗岩類が三波川高圧変成 岩の上位に低角度断層を介して累重する。さら に,この水平な断層が,第三紀の地層を変形させ ていることから,その活動時期が日本海拡大時で あること,また紀伊半島から四国にかけての中央 構造線が南海前弧スリバーに伴う新しい時期の横 ずれ運動を反映していることなどを根拠に,中央 構造線を約 20 Ma の日本海拡大時に活動した上 盤側が南へ向う運動センス(Top-to-the-south) をもつ低角度の古中央構造線(Paleo-MTL)と それ以降に活動した横ずれセンスをもつ高角度 の新中央構造線 (Neo-MTL)に区別できること を指摘した。上述の弾性波探査による北方向に 約 40°傾斜する断層は,磯㟢・板谷(1991)や 磯㟢・丸山(1991)が予測した古中央構造線に ほかならない(図 7)。このように,領家帯と狭 義の三波川変成帯との構造的に上下に累重する。 本来なら少なくとも数 10 km 程度は離れていな ければならない両帯の直接関係は,それらが白亜 紀に形成された後(おそらく日本海が拡大した中 新世)に,前弧域で造山帯に直交する方向の短縮 が起こり,領家—山陽帯が南方の三波川変成帯の 上へと衝上したことを示している。さらにその 後,第四紀になって南海前弧スリバーの活動に伴 い,新たにできた右横ずれ断層が新中央構造線に なったと考えられる。  4)狭義の三波川変成帯と領家—山陽帯間の初 生的距離  日本海拡大の衝上移動により,現在の分布がで きたとすると,その短縮距離,すなわち狭義の三 波川変成帯と領家—山陽帯間との初生的な隔離は, どれくらいであったのだろうか。領家—山陽帯は, 大量の島弧マグマが上昇・定置した場所なので, 当時の火山フロント直下とみなされる。一方,狭 義の三波川変成岩は,約 50—40 Ma までには非火 山性外弧付近の表層に露出し削剥された(Isozaki and Itaya, 1990)ので,領家—山陽帯間が狭義の 三波川変成帯の上位に衝上するためには,少なく ともほぼ造山帯形成当時の火山フロント—海溝間 にあたる距離を水平短縮したと考えられる。日本 における現在進行中のプレート沈み込みに対応す る火山フロントは,沈み込むプレートの角度とは 無関係にベニオフ面から約 100—150 km 離れた 地表に存在する(Hirose et al., 2008; Hasegawa

et al., 2009; Nakajima et al., 2009)。 し た が っ て,火山フロントから海溝までの距離は,おのお の,沈み込む角度を 45 °とした場合,約 100— 150 km,45°以下であれば,> 100—150 km,45° 以上であれば,< 100—150 km になる。三波川 造山運動当時の沈み込み角度は不明だが,現在, 約 100 Ma という古い年齢の太平洋プレートが 沈み込んでいる東北日本の沈み込み角度が約 30— 50°であることを考慮すると(Hasegawa et al., 2009; Omori et al., 2009),当時の沈み込み角度 はそれよりも小さかったと考えられる。以上のこ とを考慮すると,狭義の三波川変成帯と領家—山 陽帯間の元の距離は,少なくとも 100 km 以上 あったと推定できる。  領家帯には,花崗岩類に付随する高温低圧 型変成岩(P = 3.0—6.0 kbar, T = 500—800℃; Hokada, 1996; Okudaira, 1996; Brown, 1998; Kawakami, 2001; Ikeda, 2004など)が産出する。 この変成岩の変成条件が示す形成深度は,地殻中 部(約 10—20 km)である。この深さは,大陸地 殻物質における脆性—延性境界に相当するので, この面に沿って大陸地殻が変形すると推定され る。日本海拡大時,領家—山陽帯は,この境界を 境に狭義の三波川変成帯の上位に衝上したと考え られる。また,狭義の三波川変成帯と領家—山陽 帯との間に存在していた三波川造山帯の前弧海盆 堆積体や,それよりも古い造山運動により形成し た地質体は,この水平短縮やそれ以後の新中央構 造線(Neo-MTL)の横ずれ運動により削剥され, 砕屑性物質として海溝に運ばれ,海洋プレート沈 み込みによって新たに中新世付加体をつくる物質 として島弧内でリサイクルされたと考えられる (図 8)。  5)造山運動の活動時期  プレート沈み込み帯で起こる造山運動は,1 つ の中央海嶺の沈み込みにはじまり次の中央海嶺の 沈み込みによって終了するという基本単位をもつ

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図 7  現 在 の 西 南 日 本 断 面 概 略 図 ( K od ai ra et al ., 20 00 ; 倉 本 ほ か , 2 00 0; 佐 藤 ほ か , 2 00 5; A ok i et al ., 20 07 , 2 00 8; I to et al ., 20 09 を 参 照 ・ 一 部 改 変 ). F ig . 7   A s ch em at ic c ro ss -s ec ti on o f S W J ap an f ro m A t o C ( re fe r to K od ai ra et al ., 20 00 ; K u ra m ot o et al ., 20 00 ; S at o et al ., 20 05 ; A ok i et al ., 20 07 , 2 00 8; I to et al ., 20 09 , b u t pa rt ly m od ifi ed ).

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(磯㟢・丸山, 1991)。したがって,中央海嶺の沈 み込みに関連する地質現象を認定することで造山 運動のおおよその活動時期を限定することができ る。しかし,必ずしも,活動の終了が,常に中央 海嶺の沈み込みの時期とまったく同じとは限らな い。  三波川造山帯と四万十造山帯を構成する地質体 の形成時期を図 9 にまとめて示す。造山運動の 活動のピークは,広域変成帯の形成・上昇およ びバソリス帯の形成時期にあたる(磯㟢・丸山, 1991; Isozaki, 1996; Maruyama, 1997)。四万十 造山運動については,四万十変成岩が,約 80—60 図 8  (a) 三 波 川 造 山 帯 の 配 置(約 100—80 Ma),(b) 日 本 海 拡 大 に よ る 領 家—山 陽 帯 と 狭 義 の 三 波 川 変 成 帯 と の 接 合(約 20 Ma)(Isozaki, 1996 を 改 変).領 家 帯 と 狭 義 の 三 波 川 変 成 帯 の 間 に あっ た 地 質 体 は,削 剥 さ れ 海 溝 に 充 填 し,中 新 世 付 加 体 と なっ た.

Fig. 8  (a) Original configuration of Sanbagawa orogenic belt at Cretaceous in SW Japan, (b) Removal of granite crust and old orogenic belts by contraction-erosion by opening Japan Sea (ca. 20 Ma) (modified from Isozaki, 1996).

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Maに累進変成作用を被り,その後,上昇に転じ る(Isozaki and Itaya, 1990; Aoki et al., 2008)。 またバソリス帯形成時期は,約 75—50 Ma であ る。しかし,約 70 Ma には新たな海洋プレート (太平洋プレート)が沈み込んでいるので,この 造山運動が完結する前に,その次の新しい造山運 動が開始している。このことは,三波川造山運動 についても同様である。狭義の三波川変成帯は, 約 120—110 Ma に累進的な変成作用のピークを むかえ,その後,変成帯全体が上昇に転じる。ま た,バソリス帯の活動時期は,約 120—70 Ma で ある。しかし,約 85 Ma 頃には新たな海洋プ レート(クラプレート)が沈み込み,すでに次の 四万十造山運動が開始している。したがって,1 つの造山運動は,海嶺の沈み込みによって終了す るという基本単位はもつが,実際は,前の造山運 動と次の造山運動の間には,数 10 Ma 間の移り 変わりの重複時期(漸移期)が存在することを示 す。三波川造山運動によるバソリス帯形成時期 と,四万十造山運動によるバソリス帯形成および 四万十変成帯の累進変成作用の時期が重複してい るのは,約 1500 万年という非常に短い期間に海 嶺の沈み込みが続いて起きたためと考えられる。  6)対の変成帯について  かつて都城秋穂は,日本列島に分布する広域変 成帯の研究をもとに,並走する低温高圧型変成帯 と高温低圧型変成帯が成因的に関係をもち,本質 的に 1 つの対をなすと考え,“対の変成帯”とい う概念を提唱した(Miyashiro, 1961)。しかし, その後の研究によって,衝突型の造山帯には,高 温低圧型の広域変成帯を伴わないこと(熱源にな るバソリス帯も欠如)や,太平洋型の造山帯でさ え低温高圧型変成帯と高温低圧型変成帯が並走す る関係は例外的で,低温高圧型変成帯は,高温低 圧型変成帯に代わって,バソリス帯と対をなすこ とことがわかってきた(Maruyama et al., 1996; Maruyama, 1997; 丸山ほか, 2004 など)。例え ば,対の変成帯の模式例とされた三波川変成帯— 領家帯の場合,両者は東西方向に並走するが,実 際には平面的並列ではなく,領家帯が狭義の三波 川変成帯の構造的上位に断層を境に累重すること が明らかになり,それは日本海拡大に伴う二次的 構造改変というまったく別の地殻変動によって形 成されたものである。また,北海道の神居古潭— 日高帯など,他の対の変成帯とされた例も,広域 変成作用の時代とは無関係な時代の二次的構造 図 9  三 波 川 造 山 運 動 と 四 万 十 造 山 運 動 の 活 動 時 期. Fig. 9 Activity time of Sanbagawa and Shimanto orogenies.

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運動による見かけの並列であることが示唆されて いる(Isozaki, 1996; 丸山ほか, 2004)。本来,低 温高圧型変成帯と高温低圧型変成帯とが同じタイ ミングで地表に露出する成因的必然性はない。し かし,一般に太平洋型造山帯は,大陸側に火成活 動に伴うバソリス帯と,海溝側に低温高圧型変成 帯が配置する水平方向の地質構造をもつので,大 陸側では高温低圧変成作用(接触変成作用)が, 海溝側では低温高圧変成作用が進行するという意 味での“対の変成作用”という概念は成り立つ。 謝 辞  本稿をまとめるにあたり,東京工業大学の山本伸次 博士には有益な助言をいただいた。また,査読者であ る東京大学の磯㟢行雄教授および岡山大学の辻森 樹 准教授のご指摘は,本稿の改善に役立った。オースト ラリア Queensland 大学の Kenneth D. Collerson 教授 には英語要旨をご校閲いただいた。以上の方々に厚く 御礼申し上げる。 阿部龍巳・高木秀雄・島田耕史・木村慎治・池山恵介・ 宮下 敦(2001): 関東山地三波川変成岩類の延性剪 断変形.地質学雑誌,107,337-353.

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参照

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