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日衛誌 (Jpn. J. Hyg.),73,67 74(2018) 日本衛生学会 総 説 ミニ特集 こころとペルソナの発達に関するアプローチ こころとペルソナの発達に関するアプローチ 解離性同一性障害患者への voice approach の可能性 澤口聡子 1,2 1 厚生労働省国立保健医療科学院

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緒   言 厚生労働科学における行政医師の対象分野が,従来 の対人保健・対物保健から,地域医療構想や地域医療 計画の立案へと変化する時代となった。保健所長に求 められるものの中に,医療・健康・福祉の人材・手段・ 方 法・ 機 器 を い か に 配 置 す る か に 関 す るMEDICAL ミニ特集 こころとペルソナの発達に関するアプローチ

こころとペルソナの発達に関するアプローチ

―解離性同一性障害患者への

voice approach の可能性―

澤 口 聡 子

1,2 1厚生労働省国立保健医療科学院 2昭和大学医学部法医学講座

Approach to the Development of Mind and Persona

—Possibility of Utilizing the Voice Approach for Dissociative Identity Disorder Patients—

Toshiko SAWAGUCHI

1,2

1National Institute of Public Health, Ministry of Health, Labor, and Welfare 2Department of Legal Medicine, Showa University School of Medicine

Abstract

Objectives: To access medical specialists by health specialists working in the regional health field, the possibility of utilizing the voice approach for dissociative identity disorder (DID) patients as a health assess-ment for medical access (HAMA) was investigated. The first step is to investigate whether the plural personae in a single DID patient can be discriminated by voice analysis.

Methods: Voices of DID patients including these with different personae were extracted from YouTube and were analysed using the software PRAAT with basic frequency, oral factors, chin factors and tongue fac-tors. In addition, RAKUGO story teller voices made artificially and dramatically were analysed in the same manner. Quantitive and qualitative analysis method were carried out and nested logistic regression and a nested generalized linear model was developed.

Results: The voice from different personae in one DID patient could be visually and easily distinquished using basic frequency curve, cluster analysis and factor analysis. In the canonical analysis, only Roy’s maxi-mum root was <0.01. In the nested generalized linear model, the model using a standard deviation (SD) indi-cator fit best and some other possibilities are shown here.

Conclusions: In DID patients, the short transition time among plural personae could guide to the risky situation such as suicide. So if the voice approach can show the time threshold of changes between the different personae, it would be useful as an Access Assessment in the form of a simple HAMA.

Key words:

persona identification(人格同定),personal identification(個人同定),dissociative identity dis-order(DID,解離性同一性障害),health allocation(HA,健康政策に必要な資源・情報の配 分配置,ヘルスアロケーション),voice approach(ボイスアプローチ),health assessment for medical access(HAMA,医療にアクセスする為のヘルスアセスメント),access assessment (AA,アクセスアセスメント)

受付2017 年 7 月 20 日,受理 2017 年 9 月 20 日

Reprint requests to: Toshiko SAWAGUCHI, M.D., Ph.D., L.B.A. National Institute of Public Health, Ministry of Health, Labor, and Welfare, 2-3-6 Minami, Wako, Saitama 351-0197, Japan

TEL: +81(48)458-6111, FAX: +81(48)469-3716 E-mail: [email protected]

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ALLOCATION・HEALTH ALLOCATION・WELFARE ALLOCATION を如何に最適化するかという対策・施策 立 案・ 施 行・ 評 価 能 力 が 含 ま れ る こ と と な っ た。 Allocation の次のステップに,Plan Do Check Act(PDCA) を動かす能力が必要とされる。地域包括ケアにおける PDCA は,多職種で構成され,多職種間の連携が迅速に 遂行される為に幾つかのツールも用意されつつある。 幾つかの領域において,保健福祉連携の為の行政施策 が始まっており,保健医療連携・福祉医療連携はやや遅 れをとる側面が存在する。保健医療連携・福祉医療連携 を適切に動かすために,ツール作成時に工夫が必要とな る(図1-1)。ここで示すものは,そのような工夫の一 例である。地域包括ケアの時代には,保健と福祉が中心 になり,必ずしも専門医・専門家がon time に存在しな い状況が多く発生し存在する。その時,専門医・専門家 につなぎ,望ましくない状況を未然に防ぐために,役に たつ工夫の一助を示すことがこの稿の目的となる。これ までも,医療介護連携については,超高齢社会日本が向 き合う主要課題の一つとして取り組まれており,慢性疾 患に対して医療的介入を伴いながらも日常生活の連続性 が保つことをめざし,介護のみならず生活面の支援・サー ビスとの連携が模索されてきた (1)。国の政策において, 医療側・介護側,それぞれの連携のスキームが提示され てきたが,「地域における医療・介護の総合的な確保を 推進するための関係法律の整備等に関する法律(2014 年6 月 25 日)(1) を基盤として,取り組みは本格化し たが常に課題は大きい。今後,医療介護連携のみでなく, また医療から保健・福祉へという方向性のみでなく,そ の他の領域においても,保健から医療へ,福祉から医療 へという方向性の連携を実現することが,小児・成人・ 高齢者何れの年齢においても,QOL の確保と健康寿命 の延伸・生産寿命の延伸の為に必須となる。 政策・対策・施策の大枠を決める時に,集団に対する アプローチが必要となり,公衆衛生学の一分野として社 会疫学が注目を集める時代となった。社会疫学は社会科 学と疫学の視点と方法論を統合したアプローチ (2) であ り,「健康状態の社会内分布と社会的決定要因を研究す る疫学の一分野」(The branch of epidemiology that studies the social distribution and social determinants of states of health)(3) と定義される。社会構造要因が健康のリス ク因子となるという仮説が,社会疫学の根底にある。 しかし,実際に,対策・施策の運用にあたり,特に第 二次予防・第三次予防の実務で,個人を対象とする衛生 学的な視点が必要となる。個人を対象として効果が見ら れない時に集団を対象とするアプローチで効果がみられ るという臨床的指摘は多くあるが,逆に集団を対象とす る行政的アプローチのみでは十分な効果が発揮されず, 個人を対象とするステップを設定する必要性を示唆する 報告も出されている (4)。 指標による目標を掲げた国の政策において,掲げられ た指標と目標が現実を必ずしも反映していないため,政 策が成功しても現実的な実感が感じられないという声が ある。保健の対象のみならず,福祉の対象も,未病・未 重症化・未再発の時点で,既に医療の対象として認識さ れる必要がある。実務的に医療につなぐ際には,個々の 患者が対象となり,どのような状況で医療につなぐべき か,ものさしや目安を具体的に示す必要がある。予防の 為の健康科学のみでなく,医療のための健康科学が慢性 疾患への在宅対応展開の中で必要とされ,QOL 向上の 為に医師によるTailor-made-Health(medical care)と医療 の視点を反映したTailor-made-Welfare(medical welfare) が期待される。 Tailor made medicine については既に良く知られた概念 であるが,医療と保健における行為を一人一人に展開す

るために,Tailor made health という概念を組むことが可

能である。生涯保健という概念がある,health promotion

も,生涯保健という概念の下にlife health promotion とし

て拡張される。多因子疾患においても,単一遺伝子疾患 においても,epigenetic な因子が関与し,1 世代を超え て複数世代を視野にいれる今日において,「ゆりかごか ら墓場まで」に相当する,母子保健・小児保健・成人保 健・高齢者保健という対象領域の前後に,更に,誕生前 から次世代次次世代につながるより縦断的な時を超える 枠組みに再設定することが望まれる。予防の為の健康科 学のみでなく,医療のための健康科学が慢性疾患への在 宅対応展開の中で必要とされ,QOL 向上の為に Tailor-made-Health(medical care)が期待される。 こ の よ う なTailor-made-Health や Tailor-made-Welfare の直接的な対象は,臨床法医学の対象と重なるものとな る。法医学には主として死者を対象とする法医病理学と, 生者を対象とする臨床法医学があり,ここには外因後の 生存(虐待・家庭内暴力・損傷・中毒・災害等)とその 後のpost-traumatic syndrome(PTSD)・個人同定・親子 鑑定等の生きた対象が含まれる。この領域はこれからの 地域包括支援の対象として含まれる可能性が高い。更に, 次のような領域が内包される (5)。刑又は保護処分の執 行のため矯正施設(刑務所,少年刑務所,拘置所及び少 年院)に収容されている人のうち,高齢又は障害のため 釈放後直ちに福祉サービスを受ける必要があるものの釈 放後の行き場のない人等は,釈放後に必要な福祉サービ スを受けることが困難である (5)。このため平成 21 年 には,法務省が厚生労働省科学研究費補助金を用いて地 域定着促進事業(地域定着支援センター)を開始した (図1-2)。この事業では,各都道府県の地域生活定着支 援センターが,矯正施設収容中から,矯正施設や保護観 察所,既存の福祉関係者と連携して,支援の対象となる 人が釈放後から福祉サービスを受けられる (5) 橋渡しに とり組んでおり,現在では地域移行も課題となっている。 この地域定着・地域移行対象は福祉の対象であるばかり でなく,保健と医療の対象であり,地域包括支援に内包 する為に,府省庁共通の枠組みも期待される。この領域 を福祉サービスのみならず保健と医療のケアの対象とし

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て,福祉から保健・医療への橋をかける際に,何を目安 に医療にアクセスするかを量るAccess Assessment(AA) が有効でないかと想定される。 解離性同一性障害は,一人の個体の中に存在する複数 のペルソナ(人格)が共存する現象と解釈されており, 心的外傷の強い出来事に対する急性反応として,臨床法 医学にも内包される対象となる。今回,この臨床法医学 の範疇から,Tailor-made-Health や Tailor-made-Welfare の 対象として強いストレスの事後に発生する解離性同一性 障害(多重人格)へのvoice approach を試行した。 解離性同一性障害は解離性同一症とも言われ,アメリ カ精神医学会のDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-5)(6) により次のように定義される。 ・ 2 つまたはそれ以上の,他とはっきりと区別される パーソナリティー状態によって特徴づけられた同一性 の破綻 ・ 同一性の破綻とは自己感覚や意志作用感の明らかな不 連続で, ・ 感情・行動・意識・記憶・知覚・認知・感覚運動機能 の変容を伴う ・ その症状は臨床的に意味のある苦痛・社会的職業的・ 他の重要な領域における機能の障害を引き起こす ・ その症状は物質や他の医学的疾患の生理学的作用によ らない 性虐待の事後に,被害者に解離性同一性障害(多重人 格)が発生し,その3 割程度が自殺の転帰をとることは 既に報告されている (7)。地域保健の関係者から聴取す る限り,把握されている患者数より実数がより多い状況 が想定され,医療保健関係者に自殺発生のリスクがより 高いことが知られていない状況が多く存在する。地域包 括時代の医療・保健において,ハイリスク者が常に医療 管理下にない状況が想定される。自殺や逸脱行為等のリ スクが高まった場合に,より手厚いケアの下に移行する ための一つの指標としてvoice approach の可能性を提案 した。その第一ステップとして,一人の個体の中に存在 する複数のペルソナの音声識別がどこまで可能かを生体 図1-1 地域包括ケアにおける連携 図1-2 新しい地域包括支援体制。厚生労働省 PDF 内閣官房内閣審議官 山本麻里公表

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医工学的に検討することとした。これまで,声門等の音 声識別による同定手法は,原則的に一つの個体から一つ の声が発声される場合を対象として用いられてきたが, ここでは一人の個体の中に複数の異なる声が発声される 場合(解離性同一性障碍者)を対象とする同定手法につ いて,エビデンスとして把握可能かどうかを検討した。 またこころとペルソナの発達に関するこのシンポジウム における共通した検討事項で,この報告の過程で検討さ れたものは,以下の6 項目になる。 Ⅰ.こころの存在様式 Ⅱ.ペルソナの存在様式 Ⅲ.双方の発達の様式 Ⅳ.複数の乖離した人格を統合すべきなのか否か Ⅴ.その統合理論のコアは何か Ⅵ.その方法論における最も重要なものは何か 対象と方法 研究デザインの概要は図2 に示す。 1)一つの体の複数の人格の複数の声の同定:DID(多 重人格)者の録音音声を用いて,多重人格者のペルソナ 識別について分析 YouTube の録音音声と音声識別ソフト PRAAT(8)を用 いて試行し,周波数特性曲線(図3)を求める他,複数 人格録音音声に共通する単音節について,基本周波数・ 舌の位置・口の丸さ・顎を開けた程度の4 変数を数値化 して定量的・定性的に分析した。Non-parametric な一元 配置解析・因子分析・クラスター分析・判別分析を試行

する他,SAS の GENMOD プロシジャと LOGISTIC プロ

シジャを用い,平均値と標準偏差(s.d.)によりグルー プ化して各々別箇に,nest 処理を伴う一般化線形モデル 及びlogistic regression analysis を試行した。 2)一つの体の一つの人格から複数の声の同定 落語DVD により,意図的な演技により人格を変えた 場合及び同一人が異なる年齢で同じ演目を演じた場合双 方の識別可能性について,人格音声に共通する単音節解 析を行い,多重比較を伴うnon-parametric な一元配置解 析及び判別分析を行った。 結   果 1)一つの体の複数の人格の複数の声の同定:DID(多 重人格)者の録音音声を用いて,多重人格者のペルソナ 識別について分析 周波数特性曲線により複数人格が目視で識別可能で あった(図3)。ノンパラメトリックな一元配置解析に おいて各人格はNon-parametric な一元配置解析(SAS9.4,

EG7.1)では各人格間の有意差は,Cramer von Muses 検

定のみp=0.006 となった。因子分析・クラスター分析・ 判別分析(SAS9.4, EG7.1)においても目視による人格 識別が可能であり,多変量判別分析においてはRoy の 最大根のみ統計学的有意差を示した。質的分析としては 因子分析・クラスター分析において各人格間の相違が目 視された。nest 処理 (8–12) を伴う一般化線形モデル及

図2 研究のデザイン 図3 Frequency Curve by persona

表1 音節の相違による人格識別率の相違(最大尤度パラメータ推定値)

音節 パラメータ 推定値 s.e. Wald 95% 信頼限界 Wald χ 二乗値 Pr>ChiSq こんにちは Intercept 1.3326 0.1344 1.0693 1.5959 98.38 <0.0001 話者1 0.0014 0.001 -0.0005 0.0032 2.03 0.1545 話者2 0.0836 0.0633 -0.0405 0.2078 1.74 0.1868 おはようございます Intercept 1.2385 0.1191 1.005 1.472 108.07 <0.0001 話者1 0.0008 0.0003 0.0002 0.0014 7.27 0.007 話者2 0.0566 0.0263 0.005 0.1082 4.62 0.0316

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びlogistic regression analysisにより,一般化線形モデルで SD 値を指標とするモデルの適合度が高く,この場合人 格間における識別率の相違を示唆できる可能性が示され た(表1,表 2,表 3-1,表 3-2,表 3-3,表 4-1,表 4-2)。 2)一つの体の一つの人格から複数の声の同定:落語家 の声の同定 落語DVD では,一人の話し手の 50 歳時と 58 歳時に 同じ演目で行った場合の単音節分析で,一人の話し手の 話声の年齢間の有意差についてはp>0.05 となり,識別 可能性は保証されなかった。二つ目の対照とした,同年 齢・同性の成人を用いて異なる音節を話した場合,SAS のGENMOD プロシジャにより nest 処理を伴う一般化線 形モデルで,音節によりモデルの適合性が変化し識別可 能性が変化することが示唆された。 考   察 ここに示された結果はPreliminal なものであるが,波 表2 音節の相違による 2 つのモデルの適合度評価 音節 適合度評価の基準 こんにちは AIC 48.9088 AICC 50.5088 BIC 54.5136 おはようございます AIC 43.8029 AICC 45.4029 BIC 49.4077 表3-1 標準偏差を用いた人格識別可能性の相違(最大尤度パラメータ推定値)一般化線形モデル パラメータ Wald 95%信頼限界 尤度比95% 信頼限界 Wald χ 二乗値 Pr>ChSq intercept 1.5962 2.2472 1.5901 2.2533 133.92 <0.0001 人格1 0.0003 0.0042 0.0003 0.0042 5.15 0.0233 人格2 0.0007 0.0058 0.0007 0.0059 6.31 0.012 人格3 -0.0014 0.0032 -0.0014 0.0033 0.61 0.4333 表3-2 平均値を用いた人格識別可能性の相違(最尤推定値)logistic regression analysis

パラメータ 人格 推定値 profile 尤度 95%信頼限界 推定値 Wald 95% 信頼限界 intercept 2 0.2246 -0.9507 1.4454 0.22460.9546 1.4038 intercept 3 -0.02881.285 1.23890.02881.2695 1.2118 intercept 3 0.0683 -2.1671 1.9833 0.06831.9279 2.0645 音節1 1 0.000373 -0.00055 0.00156 0.0003730.00063 0.00137 2 0.000469 -0.00047 0 0.0004690.00054 0.00148 3 -0.07 0.0000240.0720.5242 20.3841 音節2 1 -0.000030.00106 0.001030.000030.00101 0.000945 2 0.000089 -0.00092 0.00116 0.0000890.00089 0.00107 3 0.000019 -0.00127 0.00132 0.0000190.0012 0.00124 音節3 1 0.00024 -0.00062 0.00125 0.000240.00066 0.00114 2 0.000086 -0.00093 0.00115 0.0000860.0009 0.00108 3 -0.1095 0.000040.109525.8418 25.6229 表3-3 標準偏差を用いた人格識別可能性の相違(最尤推定値)logistic regression analysis

パラメータ 人格 推定値 profile 尤度 95%信頼限界 推定値 Wald 95% 信頼限界 intercept 2 -0.3787 -1.5852 0.8225 -0.3787 -1.4605 0.7031 intercept 3 -1.5114 -3.1035 -0.0822 -1.5114 -2.8645 -0.1583 intercept 3 -0.8591 -2.8863 1.2382 -0.8591 -2.6301 0.9119 音節1 1 0.0119 -0.00325 0.0368 0.01190.00512 0.0289 2 0.0199 0.00534 0.0453 0.0199 0.0025 0.0373 3 -0.3532 0.0158 -0.3532 -1.6407 0.9343 音節2 1 0.0123 -0.00376 0.043 0.01230.00749 0.0321 2 0.0166 0.000706 0.0476 0.0166 -0.00351 0.0368 3 0.013 -0.00703 0.0444 0.0130.00827 0.0343 音節3 1 0.00692 -0.00228 0.0205 0.006920.00277 0.0166 2 0.00925 -0.00102 0.0234 0.009250.00114 0.0196 3 -0.3314 0.008260.33141.7047 1.042

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動データによる個人識別の手法 (11, 12) として,現時点 で,音声による多重人格の識別可能性を示唆するものと 把握している。 Persona(ペルソナ)とは人格と訳され,Personality(性 格)を構成しており,性格の中で外向きの表面的な構成 部分とされ,ラテン語では仮面という意味になる。ユン グは人類の集合的な心(集合的な無意識)から各人が切 り取ったもの(個性化された人格=仮面)をペルソナ (13, 14) と名付けた。ユングの見解に基づけば,解離性同一 性障害(多重人格)は一人の人の中に集合的無意識から 複数のペルソナが現れる状態ということになる。これま でDSM-III-R では多重人格とは人格は多重に存在するが 人格障害とはみなされてこなかった。解離性同一性障害 はDSM-5 の診断基準に変化がみられる精神疾患で,「異 なる複数の人格が存在する」という立場から「同一性の 破綻」という視点に,疾患を理解するポイントが変わっ てきたが,DSM-III-R における理解は今も疾患概念の基 盤にある。疾患としての概念確立や地域における包摂の ために,より具体的なエビデンスが有効である。解離性 同一性障害について,外因性の寄与が大きく,内因性精 神病とは異なる側面が大きいことは指摘すべきである。 同様にPTSD を含む,外因に起因する徴候についても同 様であり,このような配慮は徴候を有するものを心無い 偏見から保護する為に必要である。 また,保健領域のHealth Assessment においても,医 療特により適切な専門的医療や専門的ケアに何を目安 につなぐのかという視点をもつことができる(Health Assessment for Medical Accsess: HAMA)。声による人格

識別の可能性を,Voice approachとして,保健・福祉領域 から医療にアクセスする場合のAccess Assessment(AA) として使用できる可能性があるか検討することが応用的 課題となる。海外における調査特にアジアの幾つかの 国々では以前使用されたHealth Assessment(HA)の使 用が少なくなったという報告があり,HA の代わりに専 門家によるInsight Consulting が行われるという。臨床法 医学領域の支援対象者については,Insight Consulting の 時間的猶予がない相当数の患者,Insight Consulting によ り症状が増悪する患者が存在することから,社会福祉士 や保健師が医療へアクセスする際の非常に簡単なAA が あることが望ましい。 解離性同一性障害患者においては,複数人格間の切り 替わりが急峻になった場合に管理が困難になることが推 定される。今回示された音声による人格識別可能性によ り,人格交代時間を兆候として,単独患者への応用が可 能となる。Voice approach により,よりハイリスクな状 況への移行を防ぐための介入ポイントや,autoplastic に 快方にむかうことを示唆する介入解除ポイントを見出す 一助となる可能性がある。子どもの虐待等の領域におい ては,保健福祉連携体制が行政的に組まれているが,医 療保健連携更に医療福祉連携にあたり具体的な目安が必 要となる。地域の個々人が,より適切に医療へアクセス し健康な日常を確保する為に,個人のAutoplasticity の 変化を外から客観的に把握する為のAutoplastic

Informa-tion Criteria(AIC)或いは Autoplastic Index(AI)が必要 とされ,音声を用いてこれらを構成することができるか 今後の検討が望まれる。 バイオメトリクスを用いる生体個人認証や個人同定で は,遺伝子頻度の算出等と異なり標本集団の十分数のサ ンプルの測定を必ずしも基盤として行われない (13, 15, 16)。一般的には,一卵性双生児の個人同定や,一個人 表4-1 平均値と標準偏差を用いた 2 つの人格識別モデルの適合度評価 一般化線形モデル モデル 適合度評価基準 Type 1 分析 尤度比 Type 3 分析 LR 統計量 χ 二乗値 Pr>ChSq χ 二乗値 Pr>ChSq 平均値指標モデル AIC 143.6286 1.87 0.599 1.87 0.599 AICC 144.933 BIC 153.3848 標準偏差指標モデル AIC 137.098 8.4 0.0383 8.4 0.0383 AICC 138.4023 BIC 146.8542

表4-2 平均値と標準偏差を用いた 2 つの人格識別モデルの比較 logistic regression analysis

モデル 適合度評価基準 妥当性 収束基準 調整R2 乗 包括的帰無仮説β 切片のみ 切片と共変量 χ 二乗値 Pr>ChiSq 平均値指標モデル AIC 137.649 144.014 妥当 満たす 0.2178 尤度比 11.6356 0.2346 SC 143.503 167.428 スコア 7.5867 0.5763 -2LogL 131.649 120.014 Wald 1.303 0.9984 標準偏差指標モデル AIC 137.649 130.884 疑わしい 準完全分離 0.4116 尤度比 24.765 0.0032 SC 143.503 154.299 スコア 17.1654 0.0462 -2LogL 131.649 106.884 Wald 9.7065 0.3748

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における複数のペルソナの同定ではより精度の高い同定 が必要と判断される (13, 15, 16)。ビッグデータの母集 団なしに一般的数値解析方法で,その可能性を示しえる ことが示唆された。 このシンポジウムの共通する検討項目6 項目(こころ の存在様式・ペルソナの存在様式・双方の発達の様式・ 複数の乖離した人格を統合すべきなのか否か・その統合 理論のコアは何か・その方法論における最も重要なもの は何か)について,この報告の当初は次のような視点と 仮説を前提とした。即ち,こころとペルソナの存在様式 に関しては,ユングと河合隼雄に準じ,一人の人の中に 集合的無意識からペルソナが現れることを仮説とし,こ ころは集合的無意識の状態で普遍的に存在しており,そ の中で一人の人の中に複数のこころがペルソナとして現 れることもあれば一つのこころがペルソナとして現れる こともある。その後,DSM-5 の基準を受けて,一人の 人の中に,トラウマの有無にかかわらず,正常な誰にで も複数のこころ(の要素)が存在しているが,その複数 の要素がペルソナとして急峻に切り分けられ人格の同一 性が破綻したかに見える状態が多重人格であるとなっ た。ユングの主張とDSM5 の主張は,一見,対立して いるかに見えるが,一人の人の中に,複数の心の要素が 見えない形で存在しているという前提をおくことでこの 対立を解消することができる。この複数のこころがペル ソナとして急峻に切り分けられた状態は,ヒトの生体に 対して何等かのストレスを負荷することになる。ここで はこころとペルソナの発達は,一人一人個人の発達に応 じる,個体差の大きいものとして把握している。多重人 格の個々のペルソナは小児から老人まで,いろいろな年 齢の男女が混合して存在する。誰しも自分の心の中に子 どもの自分と大人の自分が存在し,男性的な部分と女性 的な部分が存在することを認めるであろう。20 歳は成 人であるが,一人の人の中には成人に達したこころと子 どもの心が共存する。総合してこころの年齢を判断して も,20 歳とは生まれてから経過した時間にすぎず,社 会的に精神的に発達して心が成人に達する年齢は一人一 人異なる。生涯保健とは小児保健・成人保健・高齢者保 健を包括した概念であるが,Tailor-made-Health の視点 からの生涯保健では成人年齢は一人一人異なることにな る。現在の精神医学では,複数の乖離した人格を統合す ることを目標としないことで既に意見の一致がある。多 重人格の統合理論のコアには自律神経系の平衡性の保持 があり,その方法論において最も大切なことは薬剤を過 度に使用しないことであることが,シンポジウムを通し て得られた総括となる。 ここではこのような心とペルソナの存在様式の仮説を 採用しているが,例えば,ヒトの体は一種の枠のような もので,集合的無意識には枠の中も外もなく繋がってい て,私の中の複数のこころの要素は実は,あなたの心の 要素として一瞬顔を出すことも可能なのだという仮説を 採用することも可能である。ヒトの体の枠が見えている のは私たちだけで,集合的無意識から見れば,実はヒト の体の枠は透明で自由に出入り可能であるという仮説を 採用し,更にヒトの体の枠とそこから顔をだすペルソナ の関係を,中と外とが繋がっているクラインの壺のよう な仕組みのモデルとして想定して,測定データを解析す ることは必ずしも不可能でない。実は,このような視点 とモデルに実証性を持たせることが可能な生命科学の時 代がそこまで来ている。 謝   辞 本研究は,文部科学省科学研究費補助金生体センサー を用いたペルソナの識別可能性に関する研究(90235458 研究代表者:澤口聡子,分担研究者:加茂登志子・米山 万里枝・滝口清昭・坂本慎一・李孝珍・大脇敏之・多木 崇・栗原千枝子・平澤恭子・加藤則子・京相雅樹・佐藤 啓造,連携協力者:杉山登志郎)。研究班は医師(臨床医・ 小児保健・小児社会医学)および工学者(生体医工学・ 音響工学)の研究者から構成,SAS 分析施行は澤口聡 子が行った。

本研究の一部は,2016 年度の the 12th Indo Pacific As-sociation of Law, Medicine and Science Congress 2016 in Bali の Plenary Lecture 及び Workshop,2016 年度の The Asia-Pacific Academic Consortium for Public Health (APACPH)及び第 75 回日本公衆衛生学会総会,2017 年度の第87 回日本衛生学会学術総会シンポジウム(日 本衛生学雑誌72supple:S111–S114;2017),保健医療科学 2017;66(3):304–306(転載許可有)で発表した。 利益相反なし 文   献 (1 ) 福田 敬.地域における医療介護連携の展望.保健医 療科学2016;65(2):103–104. (2 ) 木原正博.sph.med.kyoto-u.ac.jp/class-11.html (3 ) Berkman LF, Kawachi I. A historical framework for social epidemiology. In: Berkman LF, Kawachi I (eds). Social epidemiology. New York: Oxford University Press, 2000, 3–12. (4 ) 川崎千恵.乳幼児を育てる母親が認識する地域活動へ の参加によりもたらされたものと地域活動の特性.日 本公衆衛生看護学会誌JJPHN 2017;6:17–19. (5 ) 厚 生 労 働 省 ホ ー ム ペ ー ジ http://www.mhlw.go.jp/stf/ seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/ kyouseishisetsu/index.html (2017.9.6) (6 ) 日本精神神経学会.DSM-5 精神疾患の分類と診断の 手引き.東京,医学書院,2014.http://www.fon.hum. uva.nl/praat/

(7 ) Sawaguchi T. Mental Alteration with external causes of deaths: Approach via semi-nested layered logistic regres-sion analysis for traffic accidental deaths in 2016. IMJ, 2018. (in print)

(8)

(8 ) Naimi AI, Richardson DB, Cole SR. Causal inference in occupational epidemiology: accounting for the healthy worker effect by using structural nested models. Am J Epidemiol 2013;178(12):1681–1686.

(9 ) Jin Y, Hein MJ, Deddens JA, Hines CJ. Analysis of lognor-mally distributed exposure data with repeated measures and values below the limit of detection using SAS. Ann Occup Hyg 2011;55(1):97–112.

(10) Paul M, Riebler A, Bachmann LM, Rue H, Held L. Bayesian bivariate meta-analysis of diagnostic test studies using integrated nested Laplace approximations. Stat Med 2010;29(12):1325–1339.

(11) McMahon JM, Pouget ER, Tortu S. A guide for multilevel modeling of dyadic data with binary outcomes using SAS PROC NLMIXED. Comput Stat Data Anal 2006;50(12): 3663–3680.

(12) Sawaguchi T, Kyoso M, Shimatani Y, Ishijima M, Yoneyama K, Sato K. Previsional results of personal identi-fication among monozygote twins using high frequency electrocardiogram (HFECG). IMJ, 2017. (in print)

(13) Kyoso M, Yoshimoto T,Shimatani Y, Yoneyama K, Sato K, Sawaguchi T. Improvement and evaluation of an individual idenfication system using high frequency electrocardio-gram. The Showa University Journal of Medical Sciences 2014;26(2):149–157.

(14) 河合隼雄.無意識の構造.東京:岩波新書,1977. (15) Sawaguchi T. How should we identify the development of

human mind? BULLETIN of Gakushuin Women’s College 2016;18:87–91.

(16) 澤口聡子.統括研究官(生涯保健システム分野).保 健医療科学2017;66(3):304–309.

図 2 研究のデザイン 図 3 Frequency Curve by persona
表 4-2 平均値と標準偏差を用いた 2 つの人格識別モデルの比較 logistic regression analysis

参照

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