沖縄県内の高等教育機関における自己とブランドの 結びつきがブランド・アタッチメントに与える影響
The Effects of Self-Brand Connections on Brand Attachment in Higher Education Institutions of Okinawa
新 崎 美 紀 Miki ARASAKI
【要 旨】
我が国の教育を取り巻く環境は、少子化、大学進学率の増加、財政の悪化に加え、グロー バル化と知識基盤社会の進展により、未来の予測が難しく、未知の課題に試行錯誤しつつ 対応することが求められる。大学間格差は年々大きくなってきており、倒産大学も出現し ている現状がある。教育機関は、学生の獲得やブランド力強化について考え、存続の危機 から脱却する方法や施策を練ることを強いられている。一方で、自身の価値をより高めよ うとする意識や社会の変化に応じたスキルを身につける必要性や女性の社会進出などを背 景に、教育市場は拡大しており、ますます注目が高まる。
また、沖縄県は経済問題と教育の問題が多くある一方で、地元への愛着度や自慢度は全 国的に最も強く、大学の地元出身者占有率も非常に高いことが特徴的である。教育環境が 特徴的な沖縄県に注目し、高等教育機関のブランド・アタッチメント(愛着)が関係して いると考える。ブランド・アタッチメントは、消費者とブランドとの結びつきを構成概念 であるとし、自己とブランドが結びついたときに消費者とブランドの間に強い関係性を築 くことが出来ると考えられている。
本稿では、沖縄県内の高等教育機関における自己とブランドの結びつきがブランド・ア タッチメントに影響することを論じ、教育マーケティングへの検討を行うことを示唆する。
キーワード:教育 沖縄県 高等教育機関 自己とブランドの結びつき ブランド・ア タッチメント 愛着 教育マーケティング
序論
研究目的
本研究の目的は、沖縄県内の高等教育機関における自己とブランドの結びつきがブラン ド・アタッチメントに影響を与えるのかについて明らかにすることである。
より具体的には、自己とブランドの結びつきについて菅野(2013)に倣い、ブランドが 主体となって作られる自己とブランドの結びつきと、消費者が主体となって成形される自 己とブランドの結びつきを2つの次元で捉え、それらがブランド・アタッチメントにどの ような影響を与えているかについての仮説を作成し、検証を行う。
本研究の意義
本研究により、沖縄県内の高等教育機関において自己とブランドの結びつきがブランド・
アタッチメントに影響を及ぼすかどうか明らかにすることが出来る。我が国における教育 市場の環境の変化に伴い、高等教育機関にもマーケティングの必要性が問われている現状 で、中でも教育の問題をたくさん抱えている沖縄県を取り上げる。
本研究は、沖縄県内の高等教育機関において、自己とブランドの結びつきがブランド・
アタッチメントに影響することが明らかになることで、沖縄県以外の高等教育機関におけ るブランド・エクイティの構築に考慮すべき要因として自己とブランドの結びつきとブラ ンド・アタッチメントが挙げられ、教育分野におけるブランド研究の発展が望めることと なる。さらに教育マーケティングについて、示唆を与えることが出来ると考えられる。
研究背景
我が国は、少子化が確実に進行している。18歳人口は、戦後「団塊の世代が18歳を 迎えた1966年にピークである249万人になり、その後は増減があったが、1992年には、
205万人を保っており、この頃に大学が「受験バブル」を迎えていると言われている。最 近の数年間は、18歳人口は横ばい状態を保ってきたが、文部科学省によると、2010年に 減少傾向を強め、2018年には117万になると推計しており、2024年には110万人を切って、
2031年度にはついに100万人を切り99万人との予測で、減少の一途を辿るとしている。
また、少子化が進んでいるにも関わらず、高等教育機関は増え続け、進学率も高い現状 において、高等教育機関は淘汰される時代になった。大学・短期大学を合わせた進学率は 1970~1980年代には36~37%であったが、1995年には45%、2005年には52%まで上 昇。2000年ころに日本は、大学・学部を選ばなければ、誰でも入学出来る「大学全入時代」
に突入している。そのため、大学進学者層にも変化が起きている。
さらに、2017年のデータを見ると、大学・短期大学を合わせた進学率は57%に達し、
これに専門学校などの専修学校を加えると、進学率は70%を超えている。今後、進学率 が大きく上昇することは考えにくい。
その上、私立大学の財政の悪化進展が起き、私立大学・短大・高校は約4割が定員割れ という状況であり、大学間格差は年々拡大し、倒産大学も出現している。
また、国公立大学法人化や大学校教育法の改正など、大学行政の規制緩和を背景に、大 学運営は自己責任の時代となっている。
教育機関は、学生の獲得やブランド力強化について考え、存続の危機から脱却する方法 や施策を練ることを強いられている。教育を取り巻く環境は、少子化、大学進学率の増加、
財政の悪化に加え、グローバル化と知識基盤社会の進展により、未来の予測が難しく、未 知の課題に試行錯誤しつつ対応することが求められる。
しかし、変わりゆく教育業界でも市場は拡大しており、ますます注目が高まる市場であ るだろう。日本だけでなく、世界の教育市場は成長を続けている。三井物産戦略研究所に よると、学習塾や社会人教育に対する公的及び私費支出の世界全体の総額は、2011年時 点で約4兆ドル(約400兆円)であり、世界の自動車市場を上回る水準である。日本の教 育市場規模はおよそ25兆円で、各国別に見ても、おおむね所得水準と連動し、教育費・
教育市場も拡大していると言える(三井物産戦略研究所 2013)。GDPとの割合を見てみ ると、米国は7.6%、ブラジルは7.3%もが教育市場の割合となっているが、日本は4.2%
と先進国において比較的低い水準にある。そのことを踏まえても、教育市場は、日本にお いて今後も成長が見込める市場である。
教育市場は、経済成長が鈍化した先進国においても成長している。先進国では初等・中 等教育への就学率が高水準に達しており、高等教育機関(大学・短大・高等専門学校)も 整備されているが、成長の背景としては、労働市場で自らの価値をより高めようと高等教 育機関への進学率が上昇していることと、急速なテクノロジーの変化に応じたスキルを身 につけていく必要性から再教育を含む教育機関の需要が増えていることなどが挙げられ る。また、女性の社会進出が進んできたことで、従来は家庭で行っていた幼児教育を外部 の機関に託す傾向も強まっている。
教育市場が拡大する背景としては、自身の価値をより高めようと高等教育機関への進学 率が上昇していることと、急速なテクノロジーの変化等、社会の変化に応じたスキルを身 につけていく必要性、女性の社会進出などが挙げられる。教育に対する需要は、年代や対 象も幅広く、様々な形で多くあると言え、今後も伸びていく市場であると考えられる。
沖縄県内の高等教育機関数は、大学・短期大学・高等専門学校は10校、その他の専修 学校が59校の69校である(平成30年)。そのうち国立は琉球大学、沖縄工業高等専門学 校の2校で、公立は名桜大学、沖縄県立芸術大学、県立看護大学の3校である。
大学進学率は全国平均が54.7%であり、卒業後の主な進路は大学進学率54.70%(4年
― 4 ― ― 5 ― 制大学進学率は49.40%)、専修学校進学率21.50%、就職率18.50%である(文部科学省
学校基本調査 2017)。表1で示すように、沖縄県の大学進学率は39.5%で全国平均をかな り下回った水準で最下位である。しかし、専修学校の進学率は27.3%と全国でも高い水準 であることが分かる。女性に関しては30.7%(全国2位)で、大学へ進学するよりも技術 等を習得する為に専修学校へ進学する傾向があると推測出来る。
表 1 卒業後の主な進路(沖縄)
出典:文部科学省学校基本調査(2017)を基に筆者作成
沖縄県に関するデータを表2にまとめた。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2017)
によると、沖縄県の賃金は244.4千円であり、全国平均の304.3千円とくらべてかなり低 い水準である。非正規雇用率や年間完全失業率も全国最低であり、沖縄県の経済問題は多 くある。また、その経済の問題は子育て環境にも大きく影響していることも考えられ、そ の一つの指標として子育て世帯数が多いというデータと合わせて、子育て世帯の相対的貧 困率は最下位であるといった現状がある。また学校給食費滞納率、待機児童数も多く、沖 縄県には経済や教育において社会問題が多いことが分かる。
表 2 沖縄県のランキング
制大学進学率は 49.40%)、専修学校進学率 21.50%、就職率 18.50%である(文部科学省 学校基本調査 2017)。表 1 で示すように、沖縄県の大学進学率は 39.5%で全国平均をかな り下回った水準で最下位である。しかし、専修学校の進学率は 27.3%と全国でも高い水準 であることが分かる。女性に関しては 30.7%(全国2位)で、大学へ進学するよりも技術 等を習得する為に専修学校へ進学する傾向があると推測出来る。
表 1 卒業後の主な進路(沖縄)
出典:文部科学省学校基本調査(2017)を基に筆者作成
沖縄県に関するデータを表 2 にまとめた。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2017)
によると、沖縄県の賃金は 244.4 千円であり、全国平均は 304.3 千円とくらべてかなり低 い水準である。非正規雇用率や年間完全失業率も全国最低であり、沖縄県の経済問題は多 くある。また、その経済の問題は子育て環境にも大きく影響していることも考えられ、そ の一つの指標として子育て世帯数が多いというデータと合わせて、子育て世帯の相対的貧 困率は最下位であるといった現状がある。また学校給食費滞納率、待機児童数も多く、沖 縄県には経済や教育において社会問題が多いことが分かる。
表 2 沖縄県のランキング
筆者作成 しかしながら、沖縄県の地元への愛着やふるさと自慢は全国的に最も強く、大学の地元 出身者占有率(78.20%)も非常に高いことが特徴的である。ブランド総合研究所が発表し た研究(2010)によると、「愛着度(愛着があるかどうか)」「自慢度(誇りに思うかどう か)」などが都道府県ランキングで沖縄県は最も強いという結果になった。経済的に問題 のある沖縄県で愛着や自慢度が強く、さらには沖縄戦や海外移住者が多いという背景もあ り、文化を守りたいという想いや、強い団結力を持っている可能性がある。沖縄県には経 済問題と教育の問題はかなり大きな関係性があると考えられる。
Schmitt(2012)によると、ブランド・アタッチメント(愛着)は、消費者とブランドと の結びつきを説明し、測定する為に必要な構成概念であるとしている。ブランド・アタッチ メント(愛着)は、自己とブランドが結びついたときに、消費者とブランドの間に強い関係 性を築くことが出来ると考えられている研究もある(Fournier 1998)。
拡大する教育市場の中で、高等教育機関を取り巻く環境は悪化している背景、経済や教育 について社会問題の多い沖縄県が、郷土への愛着やふるさと自慢の意識が強いこと、大学進 筆者作成
しかしながら、沖縄県の地元への愛着やふるさと自慢は全国的に最も強く、大学の地元 出身者占有率(78.20%)も非常に高いことが特徴的である。ブランド総合研究所が発表 した研究(2010)によると、「愛着度(愛着があるかどうか)」「自慢度(誇りに思うかど うか)」などが都道府県ランキングで沖縄県は最も強いという結果になった。経済的に問 題のある沖縄県で愛着度や自慢度が強く、さらには沖縄戦や海外移住者が多いという背景 もあり、文化を守りたいという想いや、強い団結力を持っている可能性がある。沖縄県に は経済問題と教育の問題はかなり大きな関係性があると考えられる。
Schmitt(2012)によると、ブランド・アタッチメント(愛着)は、消費者とブランド
との結びつきを説明し、測定する為に必要な構成概念であるとしている。ブランド・アタッ チメントは、自己とブランドが結びついたときに、消費者とブランドの間に強い関係性を 築くことが出来ると考えられている研究もある(Fournier 1998)。
拡大する教育市場の中で、高等教育機関を取り巻く環境は悪化している背景、経済や教 育について社会問題の多い沖縄県が、郷土への愛着やふるさと自慢の意識が強いこと、大 学進学率は低いが専修学校進学率が高いことなど、教育環境が特徴的な沖縄県に注目し、
本研究を進めることとする。
本論
第 1 章 先行研究レビュー
1.1 自己とブランドの結びつき
Escalas&Bettman(2009)によると、強いブランド・リレーションシップは、自己と ブランドが結びついたときに形成されると考えられており、自己とブランドの結びつきを
「個人が自己概念にブランド連想を組み込んでいる程度のこと」であると定義している。
Fournier(1998)は、自己とブランドの結びつきを、「ブランドが消費者の重要なア
イデンティティの問題やタスク、テーマに関連している程度」とし、過去との結びつき や、現在の人生の問題やテーマとの関連、他者との結びつきに貢献している程度など、
Escalas&Bettman(2009)よりも、より広い結びつきの要素を含んでいる。また、菅野(2013)
は、「ブランドが消費者のアイデンティティ、人生の目標、問題、価値に関連している程度」
と広い範囲で定義している。
Vargo(2004)によると、価値とは、「消費者がブランド側との共創プロセスにおいて 生み出されるものであり、そこでは消費者は受け手としてではなく、能動的な価値の創り 手として存在すること」であるとしている。また、南(2005)は、消費者は製品に価値が あるから購入するのではなく、消費することによって価値が生まれると述べ、藤川(2008)
は、製品が実現する価値は、消費者が購入した瞬間に発生するのではなく、製品を購入し
た後に製品を使用する過程において、消費者が企業あるいは製品と相互作用する中で生み 出されるものであると主張している。ブランドの価値共創とは、マーケターと消費者がブ ランドの意味を共に創造していく行為全体のことを指す(Allen et al. 2008)。菅野(2013)
も、ブランド・マネジメントにおける価値共創は、ブランドの使用価値に着目した概念と して捉えられると述べている。
このブランド価値共創について、消費者によって創出される2つの異なるブランドの意 味付けによって説明している。1つめは、マーケターやメディア、文化といったものによっ て創られる、shared meaning(シェアされた意味づけ)であり、2つめは、消費者自身 によって創られるpersonalized meaning(個人的な意味づけ)である。その2つの自己 とブランドの結びつきがブランド・アタッチメントに与える影響について研究を行った。
Holt(2002)は、消費者はマーケターが意図しない方向にブランドの意味を変換したり、
驚くような意味を付加したりすることがあることを指摘している。また、消費者はもはや マーケターによって創られたブランドの価値を受け入れたくはなくなっているとし、消費 者自身によって創られるブランドの価値、社会によって創られるブランドの価値の重要性 を指摘している。消費者の役割が情報の受け手から、積極的なブランドの意味の造り手に 変化したことによって、消費者によるブランドの意味付けが、ブランドの価値に与える影 響は高くなっていると考えられる(Allen et al. 2008)。
自己とブランドとの結びつきには、ブランドが自分自身を表現しているかどうかという 自己とブランドの同一化による結びつき以外にも、過去の自己との結びつきや、人生の目 標や問題との結びつき、価値との結びつきなど、様々な結びつきがあると考えられる。よっ て、本研究では、菅野(2013)の「ブランドが消費者のアイデンティティ、人生の目標、
問題、価値に関連している程度」という広域な定義を採用し、進めることとする。
1.2 ブランド・アタッチメント
アタッチメントの概念に関する研究は、心理学者によって提唱された理論である。
Bowlby(1968)によると、アタッチメントとは「人と特定の対象の間における、感情を伴っ
た、心の絆」と定義される。心理学におけるアタッチメントの理論を適用した研究はいく つか見られる。Park et al.(2006)は、ブランド・アタッチメントを「ブランドと自己を 結びつける認知的、感情的な絆の強度」と定義している。将来に渡って、ブランドと長期 的な関係への行動的意図として捉えるブランド・コミットメントの先行要因として、ブラ ンド・アタッチメントを説明している。
また、Paulssen&Bagozzi(2009)は、アタッチメント理論を適用し、ブランドへの愛着は、
ブランドの離脱や無関心といったネガティブ行動の可能性を減らし、ロイヤルティ行動を 促すと述べている。Dennis et al.(2016)は、高等教育機関におけるブランド・アタッチ
メントの役割について実証研究を行っている。顧客ベースのブランド・エクイティ(CBBE)
モデルに基づいて、ブランド・アタッチメントをブランド・エクイティに影響があるとし、
仮説検証を行った(図1)。
ブランド・アタッチメントは、満足感、信頼、コミットメント、ブランド・エクイティ に正の影響を与える結果となった。しかし、ブランド・イメージ、ブランド・アイデンティ ティはブランド・アタッチメントに影響は認められず、ブランド・アタッチメントの先行 要因としては、ブランドの意味のみが正の影響を与えた。
図 1 高等教育機関におけるブランド・アタッチメントの役割(Dennis et al.2016)
Park et al.(2006)が、消費者のブランドに対する感情的反応としてブランド・アタッ チメントの概念を捉えているのに対して、Fournier(2009)は、ブランドの愛着を感情 的反応および行動的意図として捉えている。本研究では、Park et al.(2006)に依拠して、
ブランド・アタッチメントの定義を「ブランドと自己を結びつける認知的、感情的な絆の 強度」とする。
1.3 菅野(2013)による「自己とブランドの結びつきがブランド・アタッチメントに 与える影響」
菅野(2013)は、「BBSBC」と「CBSBC」から成る自己とブランドの結びつきが、ブランド・
アタッチメントに影響を与えるかどうかについて、仮説モデルを提示し、研究を行った。
自己とブランドの結びつきをブランドの意味(価値)が創り手の主体によって、2つの次 元に分けて捉え(菅野 2013)、第1の次元であるBrand-Based Self-Brand Connection (以
出典: Dennis et al.(2016)を基に筆者翻訳・作成
下 BBSBC)は、「マーケターによって創出されたブランドの意味が、消費者のアイデン ティティ、目標、問題、価値に関連している程度」と定義される。すなわち、BBSBCは、
優れた品質や機能、デザイン、ブランド・コンセプト、ブランド・ストーリーといった、
企業(マーケター)が主体となって生み出されたブランドの意味から創出される自己と ブランドの結びつきであるとしている。また、第2の次元である Consumer Based Self- Brand Connection (以下CBSBC) は、 「 消費者自身が、 個人的体験若しくは社会的な文脈 の中で創出したブラ ンドの意味が、 消費者のアイデンティティ、 目標、 問題、価値に関連 している程度 」 と定義している。菅野(2013)は、自己とブランドの結びつきを、ブランド・
アタッチメントの先行要因として着目し、どのような自己とブランドのとの結びつきの方 略が、ブランド・アタッチメントに影響するのかを明らかにした。ブランドが主体となっ て創られる自己とブランドの結びつきと、消費者が主体となって創られる自己とブランド の結びつきを2つの次元でブランドの意味付けを行い、以下の4つの仮説を立て、仮説モ デルの検証を行った(図2)。
仮説1「BBSBCは、ブランド・アタッチメントに対して正の影響を与える」
仮説2「CBSBCは、ブランド・アタッチメントに対して正の影響を与える」
仮説3「CBSBCからブランド・アタッチメントへの影響は、非耐久財、サービス財よ りも、耐久消費財ブランドにおいて、最も強い影響を与える」
仮説4「CBSBCはBBSBCよりもブランド・アタッチメントに対して、強い影響を与 える」
図 2 菅野(2013)仮説モデル
上記の仮説について、3つのカテゴリー(非耐久消費財、耐久消費財、サービス財)に 対象ブランドに分け、20代から60代の男女、計200名に対してインターネットによるア ンケート調査を行っている。調査の結果、仮説1,2,3はすべて支持されたが、仮説4に ついては耐久財及びサービス財についてのみ支持された。菅野(2013)の研究結果により、
消費者のブランドに対する愛着を高める為には、企業が創出するブランド力、製品力、サー ビス力といったものによる消費者とブランドとの結びつき以上に、消費者自身が自ら創出 するブランドとの結びつきを高めていくことが重要であるということが明らかになった。
企業が生み出すブランド・コンセプトや製品・サービスによるブランドとの結びつきより も、ブランドに対する愛着に強い影響を与える結果となった。
第 2 章 実証研究
2.1 実証モデル
以上の議論を踏まえ、本研究の仮説モデルを提示する(図3)。このモデルは、自己と ブランドの結びつきがブランド・アタッチメントに影響を与えるというものである(菅 野 2013)。本研究では、BA(ブランド・アタッチメント)についてはPark et al.(2010)
に倣うことする。BBSBC・CBSBC・BAのそれぞれの要素については、精査を行っている。
具体的には第3章の3.3 尺度にて提示する。
図 3 パスモデル(仮説モデル)
筆者作成
2.2 調査仮説
上記の仮説モデルを元に、以下の3つの仮説を提唱する。
H1 BBSBC(ブランドベースの自己とブランドの結びつき)は、BA(ブランド・アタッ チメント)に正の影響を与える
H2 CBSBC(消費者ベースの自己とブランドの結びつき)は、BA(ブランド・アタッ チメント)に正の影響を与える
所有効果と呼ばれるものがある。具体的には、人は、所有しているものを手放すことに なることに対して、入手可能であるが所有していないものよりも高い価値を感じる、と いう効果である(Kahneman et al. 1990)。所有効果が起こる原因として考えられるのは、
所有という行為が所有者にとってモノへの愛着を高める為であると考えられているとされ ている(Heyman et al. 2004)。ブランドは、実際には目に見えないものであるが、消費 者自身によるブランドの意味付けの行為は、「仮想の所有意識」を与えられると考えられ ており、この「仮想の所有意識」は、モノだけでなくブランドについても同様に発生し、
ブランドに高い愛着をもたらすとしている。そのような議論から、H1・H2を導入した。
H3 CBSBC(消費者ベースの自己とブランドの結びつき)の方が、BBSBC(ブランドベー スの自己とブランドの結びつき)よりもBA(ブランド・アタッチメント)に正の 影響を与える
消費者は、他者によって創出され、与えられたブランドの意味よりも、自身で創出した ブランドの意味をより記憶し、そのブランドに対してポジティブな評価を与えることが考 えられる。そのことからH3を導入した。
これらの仮説の検証は、図3に記してある各仮説に対応したパス係数の統計的有意性に よって行う。本モデルの有効性を確認した後、沖縄県の高等教育機関における自己とブラ ンドの結びつきとブランド・アタッチメントがブランド・エクイティに与える影響につい て考察する。
第 3 章 調査方法
3.1 調査対象
調査対象者は、琉球大学・名桜大学・沖縄国際大学・沖縄大学・沖縄キリスト教学院大 学の在学生及び卒業生、300名である。沖縄県内の高等教育機関は69校あるが、今回の 調査対象である大学以外の高等教育機関に関しては、専門性が高い専修学校等はとして対 象外とし、また調査対象とする5校の高等教育機関は4年制であることで性質が似ている と判断した。
3.2 データ収集法
データ収集は、インターネットによるアンケート調査によって行った。調査期間は 2018年12月4日~12月14日である。調査では、自身の在学する高等教育機関及び卒業 した高等教育機関において、各質問を行った。その他、自身の状況についての質問(住ん でいる地域や年収など)についても分析の為に質問を行い、さらには「ご自身の大学受験 について何かエピソードがあれば教えてください」「沖縄県内の大学又は教育について考 えていることや意見があればお聞かせください」という自由回答も用意し、研究の参考と した。本研究では、国公立大学と私立大学についての比較も行う。
3.3 尺度
既存研究を参考に、本研究のモデルを構成する3つの概念について、複数の質問からな る尺度を作成した。
表 3 アンケート項目一覧
「自己とブランドの結びつき」については、既存研究(菅野2013)に倣い、質問を行った。
菅野(2013)が対象とした財は、非耐久消費財・耐久消費財・サービス財であり、それぞ れの財で「自己とブランドの結びつき」がブランド・アタッチメントに正の影響を与える との結果となった。本研究では、高等教育機関について教育を財とする。「ブランド・アタッ
3.2 データ収集法
データ収集は、インターネットによるアンケート調査によって行った。調査期間は 2018 年 12 ⽉4日〜12 ⽉ 14 日である。調査では、自身の在学する高等教育機関及び卒業した高 等教育機関において、各質問を行った。その他、自身の状況についての質問(住んでいる地 域や年収など)についても分析の為に質問を行い、さらには「ご自身の大学受験について何 かエピソードがあれば教えてください」「沖縄県内の大学又は教育について考えていること や意見があればお聞かせください」という自由回答も用意し、研究の参考とした。本研究で は、国公立大学と私立大学についての⽐較も行う。
3.3 尺度
既存研究を参考に、本研究のモデルを構成する3つの概念について、複数の質問からなる 尺度を作成した。
表 3 アンケート項目一覧
筆者作成 筆者作成
チメント(Park et al. 2010)」に関しての質問項目は、既存研究に倣い、翻訳及び一部修 正を行った(表3)。
測定尺度項目の検討を行う為に、収集された回答データを基に、構成概念はSPSSにて 探索的因子分析(プロマックス回転、最尤法)を行った。そこでは、⑴因子抽出後の共通 性が0.4以上であること、⑵測定する概念の因子負荷量が0.4以上であること、⑶測定し ない概念の因子負荷量が0.4以下であること、⑷既存研究における質問項目と同じ内容で あること、という4つを条件とした。その結果、表4のように尺度の質問項目を決定する ことが出来た。
表 4 最終測定尺度の信頼係数(Cronbach α係数)
これらの質問項目を用いて、次の段階としてAmosを利用し、確証的因子分析を行った。
クロンバックα計数によって算出した適合度指標を見ると、モデルがデータに適合してい ることが分かる。各尺度に関する十分な信頼性が得られた(表4)。調査では、「自己とブ ランドの結びつき(ブランドベース)」6項目、「自己とブランドの結びつき(消費者ベー ス)」10項目、「ブランド・アタッチメント」4項目、「コミットメント」4項目、「信頼」
4項目、「満足感」3項目、「ブランド・エクイティ」3項目について、「そう思う」を7、
「そう思わない」を1とし、測定を行った。
第 4 章 調査結果及び分析
4.1 アンケート集計結果
アンケート回収結果は、以下で示した通りである(表5)。アンケート対象は、沖縄県 の4年制大学の在校生及び卒業生としており、20代から40代以上の男女300名である(男
た。菅野(2013)が対象とした財は、非耐久消費財・耐久消費財・サービス財であり、それ ぞれの財で「自己とブランドの結びつき」がブランド・アタッチメントに正の影響を与える との結果となった。本研究では、高等教育機関について教育を財とする。「ブランド・アタ ッチメント(Park et al. 2010)」に関しての質問項目は、既存研究に倣い、翻訳及び一部修 正を行った(表 3)。
測定尺度項目の検討を行う為に、収集された回答データを基に、構成概念について SPSS において探索的因子分析(プロマックス回転、最尤法)を行った。そこでは、⑴因子抽出後 の共通性が 0.4 以上であること、⑵測定する概念の因子負荷量が 0.4 以上であること、⑶測 定しない概念の因子負荷量が 0.4 以下であること、(4)既存研究における質問項目と同じ内 容であること、という4つを条件とした。その結果、表4のように尺度の質問項目を決定す ることが出来た。
表 4 最終測定尺度の信頼係数(Cronbach α係数)
筆者作成
これらの質問項目を用いて、次の段階として Amos を利用し、確証的因子分析を行った。
クロンバックα計数によって算出した適合度指標を見ると、モデルがデータに適合してい ることが分かる。各尺度に関する十分な信頼性が得られた(表 4)。調査では、「自己とブラ ンドの結びつき(ブランドベース)」6項目、「自己とブランドの結びつき(消費者ベース)」
10項目、「ブランド・アタッチメント」4項目、「コミットメント」4項目、「信頼」4項 目、「満足感」3項目、「ブランド・エクイティ」3項目について、「そう思う」を7、「そう 思わない」を1とし、測定を行った。
因子 測定項目 Cronbach α
BBSBC:
ブランドベースの自己とブランド の結びつき
BBSBC1 この大学の製品やサービスは、とても共感できるものだ BBSBC2 私は、この大学がやることに共感する
BBSBC3 この大学は、私に楽しみを与えてくれる BBSBC4 私は、この大学のコンセプトに共感している BBSBC5 この大学は、私に刺激や驚きを与えてくれる BBSBC6 この大学は、私に感動を与えてくれる
.885
CBSBC:
消費者ベースの自己とブランドの 結びつき
CBSBC1 この大学のことを考えるとき、様々な思い出と共にその ときの感情が呼び起こされる
CBSBC2 この大学には、個人的な思い出が詰まっている CBSBC3 この大学は、私の原動力となっている
.850
BA(Brand Attachment):
ブランド・アタッチメント
BA1 この大学との個人的なつながりを感じている BA2 この大学との気持ち的なつながりを感じている
BA3 この大学は、他人に対して「自分がどういう人なのか」を表 現している
.916 筆者作成
沖縄県内の高等教育機関における自己とブランドの結びつきがブランド・アタッチメントに与える影響
性142名、女性158名)。男女比率のバランスはとれたものの、年代は18-29歳の割合が 83%以上あり、比較的若い年齢層の調査となった。
表 5 アンケート対象者項目構成比
また、大学在学生はN=251、卒業生はN=49であり、琉球大学(N=82)、名桜大学(N=36)、 沖縄国際大学(N=142)、沖縄大学(N=24)、沖縄キリスト教学院大学(N=16)という構 成であった。国籍を回答してもらったが、アンケート回答者のほとんどが日本人であった。
今回対象の高等教育機関のうち、北部地域に立地する名桜大学の学生のみが北部在住で あり、その他は那覇市、中南部に住んでいる。アンケート対象が沖縄県内の高等教育機関 の在学生及び卒業生であったが、調査の結果、在学生の割合が高かった為、雇用形態は
“パート/アルバイト”が66%で一番多く、次に“何もしていない”が17.3%であった。
そのため、収入は”150万円未満“が87.7%(N=263)で一番割合が高かった。
4.2 モデルの適合度とパス係数
菅野(2013)は、「非耐久消費財」「耐久消費財」「サービス財」の3つのカテゴリーにつ いてモデルの検証を行った。2次元に分類した自己とブランドの結びつきは、3つのカテゴ リーにおいてブランド・アタッチメントに正の影響を及ぼしている。そこで、実際に、今回 の調査対象である高等教育機関において、菅野(2013)のモデルに基づいて実証研究を行った。
4.1 アンケート集計結果
アンケート回収結果は、以下で示した通りである(表 5)。アンケート対象は、沖縄県の4 年制大学の在校生及び卒業生としており、20 代から 40 代以上の男女 300 名である(男性 142 名、女性 158 名)。男女⽐率のバランスはとれたものの、年代は 18-29 歳の割合が 83%
以上あり、⽐較的若い年齢層の調査となった。
表 5 アンケート対象者項目構成⽐
筆者作成
また、大学在学生は N=251、卒業生は N=49 であり、琉球大学(N=82)、名桜大学(N=36)、
沖縄国際大学(N=142)、沖縄大学(N=24)、沖縄キリスト教学院大学(N=16)という構成 であった。国籍を回答してもらったが、アンケート回答者のほとんどが日本人であった。
今回対象の高等教育機関のうち、北部地域に立地する名桜大学の学生のみが北部在住で あり、その他は那覇市、中南部に住んでいる。アンケート対象が沖縄県内の高等教育機関の 在学生及び卒業生であったが、調査の結果、在学生の割合が高かった為、雇用形態は“パー
サンプル(N=300)
項目 人数 % 項目 人数 %
性別 雇用形態
男性 142 47.3% 正社員 28 9.3%
女性 158 52.7% 契約社員 6 2.0%
年齢 派遣社員 2 0.7%
18-29 296 98.7% パート/アルバイト 198 66.0%
30-39 3 1.0% 求職中 9 3.0%
40歳以上 1 0.3% 働くことが出来ない 5 1.7%
最終学歴 何もしていない 52 17.3%
大学在学中 250 83.3% 住んでいる場所
大学 45 0.2% 沖縄県那覇市 54 18.0%
大学院修士課程 5 1.7% 沖縄県南部 65 21.7%
大学院博士課程 0 0.0% 沖縄県中部 139 46.3%
最終学歴学校名 沖縄県北部 32 10.7%
琉球大学 82 27.3% 沖縄県外 7 2.3%
名桜大学 36 12.0% 日本国外 3 1.0%
沖縄国際大学 142 47.3% 収入
沖縄大学 24 8.0% 150万円未満 263 87.7%
沖縄キリスト教学院大学 16 5.3% 150万円以上350万円未満 23 7.7%
国籍 350万円以上550万円未満 10 6.3%
日本 298 99.3% 550万円以上750万円未満 2 0.7%
台湾 1 0.3% 750万円以上1000万円未満 1 0.3%
その他 1 0.3% 1000万円以上 1 0.3%
筆者作成
― 14 ― ― 15 ―
沖縄県内の高等教育機関における自己とブランドの結びつきがブランド・アタッチメントに与える影響
表 6 適合度指標
菅野(2013)に倣い、行った実証研究の適合度指標は、表6に記す。適合度は、GFI
(Goodness Fit Index;適合度指標)=0.937,AGFI(Adjusted Goodness Fit Index;修 正適合度指標)=0.937,CFI(Comparative Fit Index;比較適合度指標)=0.970,RMSEA
(Root Mean Square Error of Approximation;平均誤差平方根)=0.070であり、習慣 的基準に比してやや適合度が劣る部分もあるが、棄却するほどの値ではない。
続いて、菅野(2013)に倣い、沖縄県の高等教育機関における自己とブランドの結びつ きがブランド・アタッチメントに与える影響について、パス係数の統計的有意性を検討す る(図4)。「BBSBC」から「ブランド・アタッチメント」に対して、正の影響を与えて いることが示された(BBSBC→BA 0.221**)。また、「CBSBC」から「ブランド・アタッ チメント」に対しても正の影響を与えている(CBSBC→BA 0.600***)。
図 4 標準化係数と検証結果
4.2 モデルの適合度とパス係数
菅野(2013)は、「非耐久消費財」「耐久消費財」「サービス財」の3つのカテゴリーについ てモデルの検証を行った。2次元に分類した自己とブランドの結びつきは、3つのカテゴリ ーにおいてブランド・アタッチメントに正の影響を及ぼしている。そこで、実際に、今回の 調査対象である高等教育機関において、菅野(2013)のモデルに基づいて実証研究を行っ た。
表 6 適合度指標
筆者作成
菅野(2013)に倣い、行った実証研究の適合度指標は、表 6 に記す。適合度は、GFI
(Goodness Fit Index;適合度指標)=0.937,AGFI(Adjusted Goodness Fit Index;修正適 合度指標)=0.937,CFI(Comparative Fit Index;⽐較適合度指標)=0.970,RMSEA(Root Mean Square Error of Approximation;平均誤差平方根)=0.070 であり、習慣的基準に⽐し てやや適合度が劣る部分もあるが、棄却するほどの値ではない。
続いて、菅野(2013)に倣い、沖縄県の高等教育機関における自己とブランドの結びつき がブランド・アタッチメントに与える影響について、パス係数の統計的有意性について検討 する(図 4)。「BBSBC」から「ブランド・アタッチメント」に対して、正の影響を与えてい ることが示された(BBSBC→BA 0.221**)。また、「CBSBC」から「ブランド・アタッチメ ント」に対しても正の影響を与えている(CBSBC→BA 0.600***)。
カイ2乗 自由度 有意確率 NFI TLI CFI RMSEA GFI AGFI
全データ 120.428 49 .000 .950 .959 .970 .070 .937 .900
国公立 126.843 49 .000 .887 .901 .927 .117
私立 70.198 49 .000 .950 .979 .984 .049
筆者作成
図 4 標準化係数と検証結果
筆者作成
いずれのパス係数においても統計的有意性が確認出来ている為、菅野(2013)のモデルが 沖縄県の高等教育機関においても成立することが示された。
4.3 考察
4.3.1 仮説検証
本研究では、沖縄県内の高等教育機関(4 年制大学)を対象とし、高等教育機関における 自己とブランドの結びつきがブランド・アタッチメントに影響しているかどうかについて 検討した。その結果、自己とブランドの結びつきとブランド・アタッチメントがそれぞれブ ランド・エクイティに正の影響を与えるという、3つの仮説がすべて支持された。
H1 BBSBC(ブランドベースの自己とブランドの結びつき)は、BA(ブランド・アタッ チメント)に正の影響を与える。
BBSBC→BA CBSBC→BA 標準化係数 標準化係数
モデル1 .221 .600
国公立 ns .579
私立 .207 .642
筆者作成
いずれのパス係数においても統計的有意性が確認出来ている為、菅野(2013)のモデル が沖縄県の高等教育機関においても成立することが示された。
4.3 考察
4.3.1 仮説検証
本研究では、沖縄県内の高等教育機関(4年制大学)を対象とし、高等教育機関におけ る自己とブランドの結びつきがブランド・アタッチメントに影響しているかどうかについ て検討した。その結果、自己とブランドの結びつきとブランド・アタッチメントがそれぞ れブランド・エクイティに正の影響を与えるという、3つの仮説がすべて支持された。
H1 BBSBC(ブランドベースの自己とブランドの結びつき)は、BA(ブランド・アタッ チメント)に正の影響を与える。
ブランドベースの自己とブランドの結びつきがブランド・アタッチメントに正の影響 を与えた(BBSBC→BA .221**)。BBSBC(ブランドベースの自己とブランドの結び つき)についての質問項目は、「この大学の製品やサービスは、とても共感できるものだ
(BBSBC1)」「私は、この大学がやることに共感する」「この大学は、私に楽しみを与えて くれる(BBSBC2)」「私は、この大学のコンセプトに共感している(BBSBC3)」「この大 学は、私に刺激や驚きを与えてくれる(BBSBC4)」「この大学は、私に感動を与えてくれ る(BBSBC5)」の6項目であった。因子分解の際、菅野(2013)によって設定されたす べての質問項目が支持された。仮説も支持されたが、パス係数は.221で、他に設定した 仮説のパス係数よりも低い結果となったことから、ブランドベースの自己とブランドの結 びつきは、ブランド・アタッチメントに与える影響は大きくないと言えるだろう。
H2 CBSBC(消費者ベースの自己とブランドの結びつき)は、BA(ブランド・アタッ チメント)に正の影響を与える。
消費者ベースの自己とブランドの結びつきがブランド・アタッチメントも正の影響を与 えた(CBSBC→BA .600***)。パス係数の分析結果が示す中でも、消費者ベースの自己 とブランドの結びつきがブランド・アタッチメントとブランド・エクイティに与える影響 が大きいという結果となった。CBSBC(消費者ベースの自己とブランドの結びつき)に ついての質問項目は、「この大学のことを考えるとき、様々な思い出と共にその感情が呼 び起こされる(CBSBC1)」「この大学には、個人的な思い出が詰まっている(CBSBC2)」「こ の大学は私の原動力となっている(CBSBC3)」であったことから、“大学在学中の思い出” と“原動力”の2つのキーワードがブランド・アタッチメントとブランド・エクイティに 影響を与えることとなる。学生は、大学側によって創出され、与えられたブランドの意味 よりも、自分自身で創出したブランドの意味をよりポジティブな評価していることが示さ れた。
H3 CBSBC(消費者ベースの自己とブランドの結びつき)の方が、BBSBC(ブランドベー スの自己とブランドの結びつき)よりもBA(ブランド・アタッチメント)に正の 影響を与える
H1、H2により、自己とブランドの結びつきを2次元にわけ、それぞれがブランド・ア タッチメントに与える影響を検証したが、ブランドベースの自己とブランドの結びつきよ りも、消費者ベースの自己とブランドの結びつきが、ブランド・アタッチメントに影響を 与えた。そのことから、消費者としての学生は、意味の創り手として存在し、ブランドの 意味を共創していくことが示唆された。大学在学中の思い出と、原動力になりえる大学の 存在が、大学へのブランド・アタッチメントを高めており、ブランドの価値の構築に関わっ ていく可能性を示唆することが出来ると考えられる。
4.3.2 教育マーケティングへの検討
本研究で、教育マーケティングについての検討を行うにあたり、教育マーケティングの 定義は、佐野(2012)による「学習者が学習プロセスに関与する行動を促進すること」を 採用しており、サービス・マーケティング研究とリレーションシップ・マーケティング研 究の成果に依拠した教育マーケティング研究の発展について考察する。
本研究の結果によると、他のパス係数よりも消費者ベースの自己とブランドの結びつき がブランド・アタッチメントに影響を与えたことから、消費者はもはや受け手としてのみ 存在せず、積極的な価値の創り手として存在するということ(Holt 2002)であり、学生は、
大学側によって創られたブランドの価値を受け入れず、学生自身によって創られるブラン ドの価値、社会によって創られるブランドの価値の重要性が明らかとなった。「顧客関与」
と「価値共創」がより重要であることを本研究は示している。「顧客関与」はサービスの 特性であるとしているが、サービスおしての性格を持つ教育活動においても、学生・生徒 が学習活動に参加する形で学習プロセスに関与しなければ、教育活動は成り立たない。
学習経験の価値を共創する為には、大学・学校側と学生・生徒間の価値の共有・一致が 必要となる。その為には、大学側が提供する価値と一致、若しくは限りなく近い学生・生 徒をターゲットにして選抜を行うことや、学生獲得の活動が必要となる。また、学生・生 徒とのコミュニケーションを通じて、教師と価値を共有することが重要となる。
教育マーケティングの特質を「学生・生徒の情報経験を促進することともに、学生・生 徒と大学・教員側との価値の一致を促進することをねらいとしたマーケティング」(佐野 2012)であるとしおり、その理論上の仮説は、本研究において成り立つということになる。
消費者ベースの自己とブランドの結びつきを構成するのは、「この大学のことを考えると き、様々な思い出と共にそのときの感情が呼び起こされる」「この大学には、個人的な思 い出が詰まっている」「この大学は私の原動力になっている」である。“思い出”“原動力”
がキーポイントとなり、それらを促進すること、強化することによって、ブランド・アタッ チメントを促進し、ブランドに対する価値を高める可能性があることが考えられる。
結論
我が国における教育市場の環境の変化に伴い、高等教育機関にもマーケティングの必要 性が問われている現状で、中でも教育の問題をたくさん抱えている沖縄県を取り上げて調 査を行った。さらに既存の概念モデルについて参照し、沖縄県内における高等教育機関を 対象に仮説を立て、検証を行った。
その結果、本研究は沖縄県内の高等教育機関において、自己とブランドの結びつきがブ ランド・アタッチメントに影響することを明らにすることが出来た。ブランドベースの自 己とブランドの結びつきよりも、消費者ベースの自己とブランドの結びつきがブランド・
アタッチメント、ブランド・エクイティに影響を与えたことから、消費者はもはや受け手 としてのみ存在せず、積極的な価値の創り手として存在し、学生自身によって創られるブ ランドの価値、社会によって創られるブランドの価値の重要性が明らかとなった。「顧客 関与」と「価値共創」がより重要であることを本研究は示している。
本稿により、高等教育機関のブランド・エクイティの構築に考慮すべき要因として自己 とブランドの結びつきとブランド・アタッチメントが影響していることが示され、研究の 発展が望めることとなる。また、佐野(2012)に依拠した教育マーケティングの定義・固 有の特質について検討し、今後の教育におけるマーケティング論について研究の発展に寄 与することが出来た。
インプリケーション
学生が、自身の大学に対する愛着を高める為には、大学側が創出するブランド・コンセ プトや製品・サービスなどのブランドベースの結びつき以上に、消費者自身が自ら創出す るブランドとの結びつきを高めていくことが重要であることを実証研究によって明らかに した。
消費者自身で創出したブランドの意味の方が、大学側が与えるブランドの意味よりも愛 着とブランド・エクイティに影響を与える結果となったことは、ブランドが主体となった ブランドの意味の創出だけでなく、どのようにして消費者自身に個人的なブランドの意味 を創出してもらうかという、大学側のマーケティングの必要性を示していると考えられる。
この結果から示されることは、学生が大学側から情報を受けるだけの存在ではなくなっ たおり、大学ブランドの意味や価値は、大学側(企業側)と学生側(消費者側)の双方に よって創られているものであり、ブランド意味の創り手の主体は、消費者であることを示 している。こうしたブランドの価値共創の重要性は、和田(2002)が指摘している。和田
(2002)は、「ブランドは、ブランドを提供する人々とブランドを消費する人々とのインタ ラクティブなコミュニケーションや絆があってこそのブランドである」と述べている。和 田が指摘しているように、ブランドの意味や価値は企業やマーケターによってのみ創られ るものという認識は過去のものであり、学生にとっての大学ブランドの意味(価値)とは、
大学側(企業側)から与えられるものではなくなっている。
本研究の結果が示すことは、大学側(企業側)が創り出すブランドの意味(価値)より も、消費者自身が創り出す個人的なブランドの意味(価値)の方が、よりブランドへの愛 着に影響を与えるということである。
本研究の限界と今後の課題
本研究は、いくつかの限界と今後の課題を残している。
本研究の限界については、以下の3点が挙げられる。
第1に、サンプル数の不足とターゲットの明確化である。各大学の比較など様々なカテ ゴリーの比較が行えなかったことに加え、モデルの適合度の精緻化も出来た可能性があ る。また、在学生及び卒業生を対象としたが、アンケート集計結果によると83%(300名 中250名)が在学生であった。また、300人中298人が18-29歳の若者であり、ターゲッ トをより絞り込んで調査を行うことが好ましかっただろう。
第2に、インターネットでアンケートをとったという制限があることである。アンケー トの協力願いをしたところ、「スマートフォンを持っていない」との理由で、回答出来なかっ た学生に遭遇した。インターネットでアンケートを拡散したことで、一部の学生のみが回 答した為、データに偏りがあったと捉えることが出来る。
第3に、本研究は、地元への愛着度や自慢度の意識が高く、大学の地元出身者占有率が 高い沖縄県に絞って進めたことである。沖縄県にのみ適用される可能性も否めない為、今 後他の地域やターゲットについて研究を行うことにより、本研究の意義が増すことになる。
本研究では自己とブランドの結びつきがブランド・アタッチメントに及ぼす影響について 明らかにした。調査結果から、仮説はすべて支持されたが、それぞれのパス係数が高い数 値ではなかったことから、本研究の限界について再検討することを今後の課題とする。
【参考文献】
菅野佐織(2013)『自己とブランドの結びつきがブランドアタッチメントに与える影響』(和 田充夫博士記念号)。
佐野享子(2012)『教育マーケティング理論の新展開』東信堂出版。
藤川佳則(2008)「サービス・ドミナント・ロジック~「価値共創」の視点から見た日本 企業の機会と課題」『マーケティング・ジャーナル』107号(第27巻3号)、日本マー