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マイクロリアクタによる環境負荷低減の実現

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Academic year: 2021

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マイクロリアクタによる環境負荷低減の実現

1. はじめに

 マイクロリアクタは,100μm 程度 の微小流路の中で各種の物質生成を行 うためのマイクロ流体デバイスの総称 である.マイクロリアクタの中では,

高速でかつ均一に原料の混合が起こる ことにより,従来の撹拌槽バッチ法に 比べて,飛躍的なプロセスの革新(反 応収率向上,品質向上,連続フロー処 理,スピードアップ)が実現する(1). その結果,廃棄物の低減や省エネル ギーなどの環境負荷低減が可能とな る.さらに,マイクロリアクタを複数 個並列化するナンバリングアップによ り,短期間に量産プラントを構築する ことも可能となり,工業的普及が期待 されている.

 本稿では,マイクロリアクタの特徴 とそれを「液相反応」,「ナノ粒子生成」,

「乳化」プロセスに適用し,環境負荷 低減を実現した事例を紹介する.

2. マイクロリアクタの特徴

 マイクロリアクタは,従来の撹拌槽 バッチ法に比べて,寸法が桁オーダで 小さい.そのため,表面・界面に関連 するパラメータである拡散,熱伝達,

粘性力,表面張力等の影響が顕著にな る.たとえば,流路幅を 1mm からそ の 1/10 である 100μm にすると,2 液 の混合に要する時間は 1/100 となり,

100 倍速く 2 液を混合することができ る.ここで,注目すべき点は,混合に 要する時間が流路幅の 1 乗ではなく,

2 乗に比例する点であり,寸法効果と 呼ばれている.

 上記の「高速混合が可能」のほかに も,マイクロリアクタでは「精密温度 制御が可能」,「プロセス時間制御が容 易」,「比表面積が増大する」,「微量化 が可能」という特徴がある.

 図 1は,手のひらに乗る名刺サイ ズ(50mm × 80mm)の代表的なマイ クロリアクタである.2 種類の原料(A 液とB液)が幅 100μm の流路を交互 に流れる多層流を形成後,縮流部で高 速混合を実現する構造を有している.

3. 環境負荷低減の具体事例

 図 2は,図 1に示したマイクロリ アクタを化成品や医薬品等を対象にし た液相反応プロセスに適用して,目的 生成物(1 置換体)の反応収率が向上 した事例である.ブロム化反応では,

目的生成物の反応収率が,従来の撹拌 槽 バ ッ チ 法 と 比 較 し て 40%(58%

→ 98%)と飛躍的に向上した.さらに,

ニトロ化反応でも目的生成物の反応収 率が 10%(77%→ 87%)向上,エステ ルの還元反応でも 13%(25%→ 38%)

の向上を実現した事例である.このよ うな反応収率向上は,混合律速である 逐次反応で顕著となる.これはマイク ロリアクタの高速混合により,1 対 1 の理想状態に近い反応場が形成される ためである.上記のように,目的生成 物の反応収率向上により,廃棄物の低 減ができ,環境負荷低減が可能となる.

 図 3は,電子材料や化粧品等を対 象にしたナノ粒子生成プロセスにマイ クロリアクタを適用した事例である.

硝酸銀と塩化ナトリウムから塩化銀の ナノ粒子を生成した場合,生成したナ ノ粒子の粒径のバラツキを表す指標で ある Cv(coefficient of variation)値は,

従来の撹拌槽バッチ法では 55.0%であ るのに対して,マイクロリアクタでは 27.6%に改善されている.したがって,

マイクロリアクタの適用で,ナノ粒子 が均一に生成されている.

 図 4は,電子材料や化粧品等を対 象にした乳化プロセスにマイクロリア クタを適用した事例である.連続相を アラビアガム水溶液,分散相をシリコ ンオイルとして,水:シリコンオイル

=4:1 の条件で,乳化液滴を生成した 場合,生成した乳化液滴の平均直径は 37μm で,Cv 値は 6%となり,乳化液 滴が均一に生成されている.

 ナノ粒子および乳化液滴とも粒径の 均一化により,後処理での分級作業が 大幅に簡略できる.そのため,廃棄物 の低減や省エネルギーという観点から 環境負荷低減が可能となる(2)

4. おわりに

 20 世紀には電子デバイスのマイク ロ化により真空管がトランジスタに置 き換わり,集積度を高めて LSI(Large Scale Integration)に進化した.21 世 紀は,前述の物質生成プロセスの世界 にもマイクロ化の波が押し寄せ,従来 の攪拌槽方式バッチ法がマイクロリア クタに置き換わるパラダイムシフトが 起こるのではないかと考えている.マ イクロリアクタは,従来プロセスを革 新しつつ,環境負荷低減を実現するマ イクロ流体のキーデバイスであり,社 会イノベーション事業として成長する 技術である.

(原稿受付 2011 年 3 月 23 日)

〔富樫盛典 (株)日立製作所〕

( 1 )富樫盛典・遠藤喜重・三宅 亮,マイクロ●文 献 リアクタによるプロセス革新環境負荷低減,

(2010),55-57,情報機構

( 2 )遠藤喜重・富樫盛典,化学とマイクロ・ナ ノシステム研究会誌,8-2,(2009),1-7

図1 マイクロリアクタ 80mm

A液 100μm B液

図 2 液相反応の収率向上 20

0 40 60 80 100

ブロム化 ニトロ化 エステル還元 従来法 マイクロ リアクタ

反応収率(%)

図 3 塩化銀ナノ粒子の粒径均一化

10 100

10

5

0 15 20

粒子径(nm) 1 000 マイクロリアクタ Cv=27.6%

従来法Cv=55.0%

生成頻度(%)

図1 乳化液滴の均一化 37μm

日本機械学会誌 2011. 9 Vol. 114 No.1114 711

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参照

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