非自励なロジスティック方程式が 単調増加解をもつための必要十分条件
Necessary and Sufficient Conditions for Increasing Solutions of Non-autonomous Logistic Equations
非線形解析研究室 V09033 染谷 裕太 指導教員 竹内 慎吾 准教授
1 初めに
ロジスティック方程式は様々な分野で応用されている 有名な微分方程式であり,初期値が小さい場合は解が単 調増加関数になる性質を持っている.この方程式を一 般化すると,解が単調増加関数になる場合とならない場 合がでてきた.そこで,解が単調増加関数になるための 条件を見つけ,方程式を解かなくても判定できるように した.
2 非自励なロジスティック方程式とその解
通常のロジスティック方程式は次の形で表せる.
y′(t) =ky(t) (
1−y(t) a
)
.
ここで,aは環境収容力とよばれる正定数,kは成長率 とよばれる定数である.以下では簡単のため,k= 1と する.この解は求積法で得られ,
y(t) = et
1
a(et−1) + y1
0
,(y0=y(0))
となる.0< y0< aのとき,この解はy(t)< aかつ単 調に増加し,t→ ∞のときaに収束する.
本研究では環境収容力aを正値関数a(t)に一般化し た非自励なロジスティック方程式
y′(t) =y(t) (
1−y(t) a(t) )
(1)
を考える.
Mapleを用いて(1)の解のグラフを描いてみる.図
1はa(t) =t3−2.5t2+ 6とし,初期値をy0= 1,2,3, 4,5と設定したときの(1)の解のグラフである.
図1からわかるように,初期値y0の値によって,解 y(t)がa(t)と交わらない場合(y0 = 1,2)と交わる場 合(y0= 3,4,5)がある.後者は通常のロジスティック 方程式では見られない現象である.
図1 a(t) =t3−2.5t2+ 6 (青)と解y(t) (太線)
そこで以下では,(1)の解が単調増加関数であるため のa(t)とy0に関する条件を考える.
3 十分条件
まず,y(t)が単調増加関数になるためのa(t)とy0の 十分条件を考えてみよう.以下,0< y0< a(0)とする.
z(t) =a(t)−y(t)とおくと,(1)は z′(t) +z(t) =a′(t) +z(t)2
a(t) となる.したがってa′(t)>0を仮定すると,
z′(t) +z(t)>0.
両辺にetをかけ,0からtまで積分すると,
z(t)> z(0)e−t.
ゆえに,z(t) = a(t)−y(t)>0.また(1)の解y(t)は 正なので,
y′(t) =y(t) (
1−y(t) a(t)
)
>0.
以上より「0 < y0 < a(0)かつa′(t) >0」ならば,解 y(t)は単調増加関数になることがわかった.
4 必要十分条件
y(t)が単調増加関数であるためのa(t)とy0の十分条 件として「0 < y0 < a(0)かつa′(t)>0」が得られた.
実は次の必要十分条件が得られる.
定理
a(t)はt≥0においてC1級の正値関数とする.微 分方程式の初期値問題
y′(t) =y(t) (
1−y(t) a(t) )
,
y(0) =y0>0
の解y(t)について,次が成り立つ.
任意のt >0に対して,次の3つは同値.
(i)y′(t)>0 (ii) 0< y(t)< a(t) (iii) 1
y0
> 1 a(0) −
∫ t 0
a′(s)es a(s)2 ds
系1.解y(t)について,次が成り立つ.
任意のt >0に対して,次の3つは同値.
(i)y′(t) = 0 (ii)y(t) =a(t) (iii) 1
y0
= 1
a(0)−
∫ t 0
a′(s)es a(s)2 ds
系2.解y(t)について,次が成り立つ.
任意のt >0に対して,次の3つは同値.
(i)y′(t)<0 (ii)y(t)> a(t) (iii) 1
y0
< 1 a(0)−
∫ t 0
a′(s)es a(s)2 ds
5 定理の適用例
定理の(iii)の右辺の関数を補助関数とよび,
A(t) = 1 a(0)−
∫ t 0
a′(s)es a(s)2 ds
と表すことにする.
a(t) =t3−4t2+ 10,y0= 5として,定理を適用する.
図2が 1
y0 = 15 = 0.2とA(t)のグラフである.1
y0 と A(t)が交わっており,その交点をt1,t2(0 < t1 < t2) とする.0< t < t1またはt2< tのときはy1
0 > A(t)な ので定理の(iii)が成り立つ.よって定理によればこれ らの区間においてy(t)は(i)より増加し,(ii)からa(t) より小である.
図3はa(t)とy(t)のグラフであるが,これらの区間 では確かにそうなっていることが見て取れる.
同様に図2からt1 < t < t2では y1
0 < A(t)なので系
2の(iii)が成り立つ.よって系2によれば,この区間
においてy(t)は(i)より減少し,(ii)からa(t)より大で ある.
図3を見ると確かにそうなっている.
図2 y1
0 とA(t) (緑の破線)
図3 a(t)とy(t) (太線)
6 成長率 k(t)
以上では簡単のためにk= 1として扱ってきたが,k も成長率という役割がある.しかし,心配はいらない.
kを関数として一般化した方程式
y′(t) =k(t)y(t) (
1−y(t) a(t)
)
,k(t)>0
に対しても,(1)のときと同様にして,本定理に対応す る結果が得られる.
7 結論
非自励なロジスティック方程式の解は複雑になること もあるだろう.しかし,その方程式を解かなくても定理 によって,初期値y0と補助関数A(t)の大小関係,交点 を調べることで,解y(t)とa(t)の大小関係と交点,ま た解y(t)の増減を決定することができるようになった.
参考文献
[1] 佐藤 總夫, 自然数理と社会の数理I, 日本評論社, 1984.
[2] デヴィッド・バージェス/モラグ・ボリー著, 垣田 高夫/大町 比佐栄 訳,
微分方程式で数学モデルを作ろう,日本評論社, 1971