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手足口病患者から検出されたエンテロウイルスの遺伝子解析(

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a 東京都健康安全研究センター微生物部ウイルス研究科 169-0073 東京都新宿区百人町3-24-1

b 東京都健康安全研究センター微生物部

手足口病患者から検出されたエンテロウイルスの遺伝子解析( 2014 年度~ 2016 年度)

鈴木 愛a,長谷川 道弥a,岡﨑 輝江a,栗田 さや子a,坂本 哲理a,新開 敬行a, 貞升 健志b

手足口病は,口腔粘膜および手や足に水疱性の発疹が現れる急性ウイルス性疾患であり,主に乳幼児を中心として 毎年夏から秋にかけて流行が見られる.東京都における2014年度~2016年度感染症発生動向調査で,手足口病を疑う 患者から採取された検体322件中245件がエンテロウイルス遺伝子陽性であった.さらに遺伝子型別検査を実施したと ころ,コクサッキーウイルスA6型,A16型,A4型などが検出された.また,検出されたウイルスの構成は各年度によ り差が認められた.

キーワード:エンテロウイルス,手足口病,発生動向調査,2014年度~2016年度,CA6,CA16, CA4, EV71, 分子 系統樹解析, CODEHOP

は じ め に

感染症発生動向調査は感染症の発生状況を把握・分析 し,情報提供することにより,感染症の発生およびまん 延を防止することを目的として全国で実施されている.

手足口病は感染症法において五類感染症に分類され,定 点把握対象疾患として定点医療機関による患者の発生状 況の届出が定められている1).東京都健康安全研究センタ ー(以下当センター)では都内定点医療機関からの検体 提供を受け,ウイルスの遺伝子検査と分離培養検査を行 っている.

手足口病の原因となるウイルスは1種類ではないが,い ずれもエンテロウイルス属に分類されている.従来,手 足口病患者からはエンテロウイルス71型(以下EV71)と コクサッキ―ウイルスA16型(以下CA16)が多く検出さ れていたが,2009年以降はヘルパンギーナの主要な原因 ウイルスであったコクサッキ―ウイルスA6型(以下CA6) の検出が増加し,手足口病の主要な原因ウイルスとなっ ている2).症状としては口腔粘膜および手や足に水疱性の 発疹が出現する.基本的に予後は良好な疾患であるが,

急性髄膜炎の合併症が時に見られ,稀に急性脳炎を生ず ることがある.なかでもEV71は中枢神経系合併症の発生 率が他のウイルスより高いことが知られている3).また,

近年発生の多いCA6による手足口病では,CA16やEV71 による症例より水疱が大きいことや,発症して数週間後 に爪甲脱落症を呈す症例が報告されている4)

都内における手足口病の発生は毎年確認されているが,

特に2011年,2013年に大幅な患者数増加があり,ほぼ2 年ごとに大流行を起こす傾向にある5).今回,2014~ 2016年度における手足口病原因ウイルスの検出状況につ いて検討を行ったので報告する.

方 法

1. 供試材料

2014年度~2016年度の間に,定点医療機関で手足口病 と診断され,都の発生動向調査事業として搬入された検 体322件(2014年度59件,2015年度188件,2016年度75 件)を対象とした.検体種は咽頭ぬぐい液が314件,鼻汁 および鼻腔ぬぐい液が7件,髄液が1件であった.検体提 供者は主に小児であったが,20歳代~40歳代の成人も確 認された.

2. 遺伝子検査方法

1) エンテロウイルス属のスクリーニング検査

Viral RNA mini Kit(QIAGEN)を用いて検体140 µlから RNAの抽出を行った後,エンテロウイルス各属のスクリ ーニング検査のために5’非コード領域を増幅するKuanの 方法6)によりRT nested-PCRを実施した.得られたPCR産物 は電気泳動を行い,約297bp付近にバンドが得られたもの をエンテロウイルス属陽性として型別検査を実施した.

2) 型別検査

スクリーニング検査によりエンテロウイルス遺伝子陽 性となった検体について,CODEHOP PCR7)によるエンテ ロウイルス型別検査を行った.反応後のPCR産物を用い て電気泳動を行い,目的部位である約370bp付近のバンド を切り出した後,QIAquick PCR purification Kit(QIAGEN) を使用し精製した.続いて,BigDyeR v3.1 Cycle

Sequencing Kit(Applied Biosystems)にてシーケンス反応 を行い,ABI PRISM3130 Genetic Analyzer(Applied

Biosystems)を用いて塩基配列を決定した.

3) 血清型の決定と分子系統樹解析

エンテロウイルス属の血清型の決定は,エンテロウイ ルスのカプシド蛋白VP1コード領域を用いて行った.取得 した塩基配列を公共の遺伝子データベースGeneBank

(2)

(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を利用したBLAST解析と,

National Institute for Public Health and the Environmentが提供 している型別分類ウェブサービス

(http://www.rivm.nl/mpf/enterovirus/typingtool#/)による解 析により血清型分類を行った.検出割合の多かったCA6 とCA16については遺伝子解析ソフトであるMEGA6による 近隣結合法を用いてそれぞれ分子系統樹を作成した.樹 形の信頼性に関してはブートストラップ法を用いて確認 を行った.

結 果

1. 検体数の比較

2014年度~2016年度にかけて,国立感染症研究所集計 の手足口病全国報告数と,当センターへの検体搬入数を 比較した(図1).いずれの年度も患者の発生は見られる が,2015年度は全国的に手足口病が大流行し,当センタ ー検体搬入数も2015年度が顕著に増加していた.

2. 月別の搬入検体数

定点医療機関において手足口病と診断された検体は1年 を通じて搬入されている.毎月のセンターへの検体搬入 数の推移を年度ごとに比較した(図2).検体搬入数は 2014年度が9月,2015年度は7月,2016年度は10月に最多 となっていた.

3. エンテロウイルスの検出と血清型

2014年度~2016年度に当センターに搬入された検体322 件のうち,245件がエンテロウイルス属陽性であった.

1) 2014年度

2014年度には59件の検体が搬入され,35件がエンテロ ウイルス属陽性であった(陽性率59.3%).陽性検体のう ち26件(型別不明やシーケンス波形が不完全であったも のを除く)が解析可能であった.検出された血清型は CA16が最も多く17件(65.4%),続いてCA6が3件

(11.5%),CA4が2件(7.7%),その他4件(15.4%)で あった(図3).その他の内訳はCA10,CA2,エコー7,

エンテロウイルス71(以下EV71)がそれぞれ1件ずつであ った.

2) 2015年度

2015年度には188件の検体が搬入され,157件がエンテ ロウイルス属陽性であった(陽性率83.5%).陽性検体の うち138件が解析可能であった.検出された血清型はCA6 が最多で91件(65.9%),CA16が42件(30.4%),その他 が5件(3.6%)であった(図4).その他の内訳はCA10が 2件,CA9が2件,CA14が1件ずつであった.

3) 2016年度

2016年度には75件の検体が搬入され,57件がエンテロ ウイルス属陽性であった(陽性率76%).陽性検体のうち 51件が解析可能であった.検出された血清型はCA6が最 も多く36件(70.6%),CA16が7件(13.7%),CA4が6件

(11.8%),その他が2件(3.9%)であった(図5).その 他の内訳はCA5とCA10が1件ずつであった.

図1. 手足口病全国報告数と当センター検体搬入数の比較

0 10 20 30 40 50 60

4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3

検 体 搬 入 数(

件)

2014年度 2015年度 2016年度

(月)

図2. 手足口病患者月別検体搬入数

CA6 11.5%

CA16 65.4%

CA4 7.7%

その他 15.4%

n=26

図3. 患者から検出されたエンテロウイルス(2014年度)

0 500 1000 1500 2000

0 100 200 300

2014年度 2015年度 2016年度

全 国 報 告 数(

件)

検 体 搬 入 数(

件)

センター検体搬入数 全国報告数

(3)

図4. 患者から検出されたエンテロウイルス(2015年度)

CA6 70.6%

CA16 13.7%

CA4 11.8%

その他 3.9%

n=51

図5. 患者から検出されたエンテロウイルス(2016年度)

4. CA6およびCA16の分子系統樹解析

検出割合の多かったCA16とCA6に対し,分子系統樹を 作成し解析を行った.

1) 近年都内で流行したCA6の比較

本調査で得られた各年度のCA6に,GenBankに登録され た国内各地のCA6のデータ(1999~2015年)を加えて分 子系統樹を作成した(図6).2つのグループに大別され,

グループⅠには2009年以降に検出された株が,グループ

Ⅱには2008年以前に検出された株が分類された.本調査 で得られた2014~2016年度の株は全てグループⅠに収束 した. グループⅠはさらにグループⅠ- Aと,Ⅰ- Bに分 けることができたが,検出年は混在していた.

2) 近年都内で流行したCA16の比較

本調査で得られた各年度のCA16に,GenBankに登録さ れた国内各地のCA16のデータ(2002~2015年)を加えて 分子系統樹を作成した(図7).大きく2つのグループに 分類されたが,検出年は混在していた.しかし,2016年 度に本調査で検出された株は全てグループⅠに帰属して いた.

考 察

国立感染症研究所発表の統計によると,手足口病患者

から分離・検出されたエンテロウイルスは,2014年は主 にCA16とEV71,2015年と2016年は主にCA6,CA16であ った8).この傾向は都で検出されたエンテロウイルスの構 成ともほぼ一致している(図3,4,5).手足口病は従来,

CA16およびEV71が病因ウイルスであり,3~5日の潜伏期 間ののち口腔粘膜や手掌,足などの四肢末端に水疱性発 疹が出現,軽度の発熱が典型的な症状であると言われて いる.またEV71は無菌性髄膜炎,まれに麻痺や脳炎を引 き起こし重症化することが知られている3).日本国内では 2000年に西日本を中心としたEV71による脳炎および中枢 神経合併症(死亡例含む)が複数報告され9),2003年と 2010年には全国的な流行が見られた.東アジア地域では EV71の断続的な流行が発生,中国やベトナムでは多数の 死亡例が報告されている3,10).1994年以降,EV71は3~4年 周期で国内流行が見られているが11),2017年7月現在,都 内手足口病患者検体からの検出が増加してきている.

2009年以降急激に増加してきたCA6による手足口病は,

発疹が四肢末端に限局せず全身に広く分布し,39度以上 の発熱,治癒後の爪甲脱落症を来す非典型的な経過を辿 ることが特徴である4).非典型的手足口病の流行は欧州や アジアでも確認されているほか12,13).都内においても本調 査の3年間でCA6の検出割合は年々増加している(図3,4, 5).2009年前後のCA6に変化が生じているかどうかを検 討するため,VP1領域におけるCA6の分子系統樹を作成し たところ,2008年以前の株と2009年以降の株では異なる グループを形成していた.しかし,塩基配列をアミノ酸 に変換し系統樹を作成したところ,2009年前後において 明らかな差異は認められなかった.よって,CA6が手足 口病の主要ウイルスとして急速に増加してきた理由とし て,VP1領域における抗原性の変化が存在していた可能性 は低いと推察された.都内の手足口病におけるCA6の動 向は,引き続き今後も把握していく必要がある.

エンテロウイルスには多様な型が存在しており,中に は型別検査で得られた塩基配列の解析が難しい株も含ま れる.例えば2014年度はEV71が5件検出されているが,型 別のためのCODEHOP PCRを用いた際の検出感度が低く,

解析可能であったのはそのうち1件のみであった.EV71を はじめ解析結果の芳しくないものについては論文等14)を 参考に,専用プライマーの作成やプロトコールの再検討 等,さらなる改良が必要と考えられる.

CA6 65.9%

CA16 30.4%

その他 3.6%

n=138

(4)

図6. 都内で検出されたCA6のVP1領域における分子系統樹解析(2014年度~2016年度)

図7. 都内で検出されたCA16のVP1領域における分子系統樹解析(2014年度~2016年度)

15-469ET

LC029410:CA6/Niigata/2014 15-713ET

AB698772:CA6/Saga/2009 15-347ET

LC124090:CA6/Sapporo/2015 16-624ET

16-519ET 14-670ET

AB688678:CA6/osaka/2011 LC038034:CA6/Sapporo/2011

LC124041:CA6/Sapporo/2011 14-952ET

15-588ET 15-721ET

15-696ET 15-905ET 14-912ET

15-928ET 15-470ET

16-540ET

LC124088:CA6/Sapporo/2015 LC224160:CA6/Osaka/2016

AB698770:CA6/Saga/2007 AB114116:CA6/Shiga/1999

AB162726:CA6/Kanagawa/2003 AB114094:CA6/Kanagawa/2000

AB698776:CA6/Hiroshima/2004

AB234336:CA6/Fukuoka/2005 87

19 32 21

43 99

99 93 74 67 44 16 34 53

70

87 27

98

54 39

20 33

23 47

23 54

0.01

グループⅡ グループⅠ- A

グループⅠ- B

16-685ET 16-296ET

16-288ET 16-244ET

LC038065:CA16/Sapporo/2014 LC124135:CA16/Sapporo/2015 15-446ET

14-1975ET 16-501ET 15-1012ET 16-621ET

15-1060ET

AB935241:CA16/kobe/2011 15-465ET

14-1661ET AB634452:CA16/Yamagata/2010 AB634430:CA16/Yamagata/2009 14-725ET

14-1158ET AB465377:CA16/Toyama/2002

15-562ET 14-1241ET 14-1481ET

AB902818:CA16/Okinawa/2011 LC124127:CA16/Sapporo/2013

14-1554ET 15-615ET 94

55 45 71 79 90

98 99 72

98 24

56 37

45 61

43 52

32 30

0.01

グループⅠ

グループⅡ

(5)

文 献

1) 東京都感染症情報センター:感染症発生動向調査対象 疾患.

http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/survey/ (2017年7月31日現 在,なお本URLは変更または抹消の可能性がある)

2) 病原微生物検出情報, 33, 55-56, 2012.

3) 国立感染症研究所:手足口病とは.

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/441-

hfmd.html (2017年7月31日現在,なお本URLは変更

または抹消の可能性がある)

4) 感染症週報,19, 12-13, 2017.

5) 東京都感染症情報センター:手足口病の流行状況.

http://idsc.tokyo-

eiken.go.jp/diseases/handfootmouth/handfootmouth/

(2017年7月31日現在,なお本URLは変更または抹消 の可能性がある)

6) Kuan, M.M.: J Clin Microbiol., 35(10), 2598-2601, 1997.

7) W, A.N.: J Clin Microbiol., 44(8), 2698-2704, 2006.

8) 病原微生物検出情報,手足口病患者から分離・検出さ れたエンテロウイルス 2009-2017

https://www.niid.go.jp/niid/images/iasr/rapid/natsu/teashi/1 50903/teashien_170726.gif (2017年7月31日現在,な お本URLは変更または抹消の可能性がある)

9) 吉田 茂,藤本 嗣人:病原微生物検出情報, 28, 342- 344, 2007.

10) Wang, Y., Zou, G., Xia, A.,et al.: Virology Journal., 12:83, 2015.

https://virologyj.biomedcentral.com/articles/10.1186/s129 85-015-0308-2

11) 病原微生物検出情報, 25, 224-225, 2004.

12) Chatproedprai, S., Tempark, T., Wanlapakorn, N., et al.:

SpringerPlus., 4:362, 2015.

13) Yan, X., Zhang, Z., Yang, Z., et al.: BioMed research International., Volume 2015, Article ID 802046, 8 pages.

https://www.hindawi.com/journals/bmri/2015/802046/

14) 安藤 克幸:佐賀県衛生薬業センター所報,36,

21-27, 2015.

(6)

Genetic Analysis of Enteroviruses Detected in Patients with Hand, Foot, and Mouth Disease (April 2014- March2017)

Ai SUZUKIa, Michiya HASEGAWAa, Terue OKAZAKIa, Sayako KURITAa, Tetsuyoshi SAKAMOTOa, Takayuki SHINKAIa and Kenji SADAMASUa

Hand, foot, and mouth disease (HFMD) is an acute viral disease in which a bullous rash appears in the oral mucosa, hands, and feet.

HFMD occurs from summer to autumn and mainly infects infants and young children. From April 2014 to March 2017, genetic testing was performed on 322 specimens collected from patients suspected of HFMD. Of these specimens, 245 were enterovirus-sequencing positive. Genotyping detected coxsackievirus types A6, A16 , A4 . Furthermore, the distribution of the type of enterovirus changed every year for 3 years.

Keywords: enterovirus, hand, foot, and mouth disease, A6, A16, A4, phylogenetic analysis, CODEHOP

a Tokyo Metropolitan Institute of Public Health,

3-24-1, Hyakunin-cho, Shinjuku-ku, Tokyo 169-0073, Japan

図 6.  都内で検出された CA6 の VP1 領域における分子系統樹解析( 2014 年度~ 2016 年度) 図 7.  都内で検出された CA16 の VP1 領域における分子系統樹解析( 2014 年度~ 2016 年度) 15-469ET LC029410:CA6/Niigata/2014 15-713ET AB698772:CA6/Saga/2009 15-347ET LC124090:CA6/Sapporo/2015 16-624ET 16-519ET 14-670ET AB688678:C

参照

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