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全文

(1)

論 文

における

「地代論」

若干の問題について マルクスの

周 人

最劣等地の差額地代 絶対地代

おわりに

RdFO

•••

d

はじめに

差額地代の第1形態

「虚偽の社会的価値」

差額地代の第2形態

n J 4

はじめに

マルグスの「地代論」は,日本資本主義の分析においても一定の役割を果たした。それは農 日本の高率高額(それは米の収護の約50%を占めていた〉の現物地代の性格が,

地改革前の,

またはそうでない地代(半封建地代か前資本制地代〉であるかをめぐる講 もし封建地代ならば日本の革命はブルジョア草命でな 封建地代であるか,

座派と労農派の論争に関してであった。

そうでなければ,社会主義革命を目指すものでなければならないとみられ ければならないし,

この問題に解答を くまたは もちろん『資本論』で分析されている「地代論

J

が直接,

「資本制地代に先行する諸形態」での「本源的地代」

ていたのである。

しかし,

与えるものではない。

地代の本源的形態dieurspringhliche Torm der Rente)は,封建地代の本質解明を行なってL

そこでの諸論点は,改革前わが国小作料の解明の必須な前提理論だったのであり,

櫛田民蔵,野田栄太郎,平野義太郎,山田盛太郎などの学者によって,

るのであり,

この問題に関する論争

また日本農民の小作料を, [j'資本論』での「農民的分割地所有」論との関係で,類推的意味 での差額地代,絶対地代,および「名目地代

J

として把握した議論も展開された(例えば栗原 百寿教授〉し,さらには戦後の農地改革後の日本農民の農産物価格論の基礎理論として「農民 が展開されたのである。

的分割地所有」論が一定の役割を果したのである。

日本におけるマルクス経済学理論の発展のためにも寄与する またマルグスの「地代論」は,

マ ル ク ス の 「 地 代 論」は「生産価格論」とともに,マルクスの価値論の首尾一貫性を破壊するものであるとして,

土方成美,小泉信三,二木保幾,高田保馬の諸学者はマルクス価値論の崩壊を宣言したが,

れに対し,河上肇,櫛田民蔵,野呂栄太郎らのマルクス経済学者から,反批判がなされ,

にそのごマルクス主義者内部の論争として戦後も続行されたのである。その戦後にまでもち越

p

さら ところの重要な論争問題を提起して,学界でも問題となった。すなわち,

(2)

された論争での代表的論客は,山田勝次郎教授と向坂逸郎教授であった。

このように「地代論」は実践的にも理論的にも重要な意義をもっており,理論的にはマルク ス経済学理解の試金石でもある。以下マJレグスの資本制地代の理論的要点を考察することにし ょう。

『資本論~ 3巻6篇で展開されている「地代論」は,資本の分析にとって不可欠である。そ の理由は農業における資本の投下を分析しなければ資本の分析は完了しないからである。この 意味で「地代論」は, [j'資本論』段階での理論経済学の最終段階に位置している。

他方,農業が資本制的に営まれている場合の農業経済を分析するにあたって,その抽象的・

基礎的な理論部分として,農業経済学の出発点をなすのが,

I

地代論」である。

このように「地代論」は,理論経済学の最終部分であると同時に,農業経済学の出発点でも ある。

さて『資本論』で展開されている「地代論」は,差額地代から始まり絶対地代へと展開され ているが,その理由はなぜであろうか。

『資本論』の叙述をみればわかるように, [j'資本論』は下向の結果到達した商品から出発し て,貨幣→資本→土地所有(地代〉へと上向的に叙述されている。

土地所有の経済的利用の実現形態としての地代は,まず差額地代から考察され,次で絶対地 代に移っている。その理由は,やはりマルグスの『資本論』の抽象から具体への展開が,地代 の考察でも適用されているからである。すなわち資本主義的非土地生産部門の代表として産業 資本を考察し,次で商業資本,利子生み資本の考察を終えたマルクスは,最後に農業への資本 投下を考察する。この考察順序は,拍象から具体へと上向的になされている。

この農業への資本投下によって,土地所有者は地代を入手できるのだが,マルクスはこの地 代を差額地代から考察し,ついで絶対地代に移る。その理由の一つは,差額地代が農業独自の 超過利潤の地代への転化したものだからである。

マルクスは,農業独自の超過利潤の考察以前に,すでに工業の超過利潤を解明し終っている。

超過利潤とLサ点では,工業の超過利潤も差額地代の実体である農業の超過利潤も本質的な差 はない。マルクスはこのことを次のように述べていた。

「単なる差額地代一一それは資本がある他の投下部面の代りと土地に投下されることから生 ずるのではない一一ーには理論的には何ら困難な点はない。それは,すべての工業生産部面で平 均的条件よりも優良な条件のもとで作業するすべての資本にとって存在する超過利潤にほかな らない。ただ,それが農業では,種々の土地種類の自然的豊度の差異というような堅固な〈相 対的に〉固定的な基礎にもとづく故に,固定化されるだけである。

J

(エンゲルス宛1862年8月

2日の書簡〉

したがって,工業の超過利潤の理解を基礎として,水力利用工場を例として,土地的条件に 起因する超過利潤〈差額地代〉を,まずマルクスは考察したのである。ここではまだ土地所有

(3)

マルクスの「地代論」における若干の問題について 3  そのものが生み出す地代は考察されていないのであって,差額地代は,

r

土地経営の独占」か ら生ずるのである。したがって「土地所有の独占」は,さしあたり問題にならない。

r

土地所

有の独占」が存在せず,例えばソ連のような土地固有の場合でも,コルホーズの生産物は,社 会主義的商品として販売され,その際,優等地のコルホーズ経営は超過生産物を生産する。こ れが社会主義社会における差額地代である。

筆者はかつて本誌14巻第4号と15巻第1号で,モスクワ国立大学,国立出版所, 1959年出版 の『社会主義農業における地代~ (263ページ〉の著書を紹介し,また『経済学の諸問題』誌上 で行われた社会主義農業における地代の討論についてて本誌15巻3号, 4号, 16巻3号, 18巻 1号で紹介したことがある。そこではソヴエト社会主義社会における差額地代の存在が肯定さ れ,その分配問題が論争されていた。したがって「土地所有の独占」を問題にする以前に「土 地経営の独占」によって生ずる差額地代を解明し,この差額地代の解明がされたのちに,

r

土 地所有の独占」の経済的利用の実現形態である「絶対地代」が考察されるのである。なぜなら

「土地経営の独占」は,その土地所有形態がどのようなものであっても差額地代を優等地に発 生させるのであって,ここでは「土地所有」そのものは差額地代発生の原因ではないからであ

る。

ただし,差額地代第2形態の場合は,土地所有が,地代を固定化するかしないかによって,

地代額そのものが変化するのであるから,この意味では,差額地代第2形態は,差額地代第1 形態と絶対地代の中間にあって,土地所有としての土地所有の果たす役割が地代の成立に中間 的にではあるが関与している。

これに対して絶対地代は,

r

土地所有」なくしては発生し得ないのであって,この意味で

「土地所有」そのものが,農業資本の低位構成とあいまって,絶対地代発生の原因となってい るのである。

2 .  

差額地代の第

1

形態

マルクスは表ーを掲げて差額地代第1形態を解明している。

この表ーの前提条件は(1)豊度の異なる土地〈位置は捨象〉が並行的に耕作されていること, (2)  表 一

生 産 物

投資下本額

利 潤 地 代

土地種類 クオー

I

シリング クオー

I

シリンク守 クオー

I

シリンク守

ター ター ター

A  1  60  50  1/6  10 

B  2  120  50  11/6  70  l  60  C  3  180  50  21/6  130  2  120  D  4  240  50  31/6  190  3  180  合 計

I

10 

I  州

nnv  q a   nhu  u

(4)

等面積の土地が耕作されていること, (3)各等級地に平均資本が投下されていること,であった。

いうまでもなく,現実に差額地代が発生するのは,このような前提条件の下においてではな L、。どのような豊度の土地から耕作が行なわれるかは,位置との関係などでさまざまであり,

豊度の差もさまざまである。耕作の順序にしても,必ずしも下向順序や上昇順序ではなく,さ まざまな交錯の場合が当然みられる。また投下資本も優,並,劣の各種の資本投下がみられる のであって,平均資本が投下されるとはいえない。そのうえ,科学の発展につれて農業生産性 の増大が種々の原因で発生しうるのである。しかし,このような現実に近い条件の下での理論 的考察では,差額地代の本質,その成立のメカニズムの把握は複雑となり,説明も困難となる。

それゆえマルクスは一定の面積〔たとえば1エーカー〉のうえに,一定の資本(たとえば50 リング〉が,

A

, 

B

, 

C

, 

D

4

つの豊度の異なる地に投下されている,として差額地代を分 析しているのである。この場合,この50シリングの資本は,社会的・標準的資本である。ある 与えられた農業発展段階のもとでの平均的資本の投下を前提とした場合,平均資本以上の優秀 な資本が投下される経営には超過利潤が発生し,逆の場合には逆となるのであり,このことは 農・工ともに共通で、ある。

さて以上のような諸前提のもとで,マルクスは表ーを作成し,この表を用いて差額地代を明 らかにしたのである。

表ーは最劣等地Aから最優等地Dまでのそれぞれに同等分量の資本 (40C10V)が投下さ れているにもかかわらず, AとくらべてBで は し Cでは2,Dでは3クォーターのより多く の生産物(例えば小麦〉が収獲されていることを示している。この収獲の差は,表ーの詰前提 のもとでは,唯一の原因である土地的条件(豊度〉の差によるものである。土地経営の独占に よってB,C, D地の経営が利用できる土地的条件に起因する生産力の差が,生産物量の差と なっているのである。表示すれば以下の通りである。

生 産 晶 と │ 一 一 当 り の │ 土 地 豊 度 │ 土 地 豊 度 を 吋 趨そ の 生 格 生 産 価 格 力によって生じ

T W

ト 時

A  1 Q=60sh.  1 Q=60sh.  最 劣 等 2 Q=60sh.  1 Q=30sh.  Aの2 60sh.  C  3 Q=60sh.  1 Q=20sh.  Aの3 120sh.  D  4 Q=60sh.  1 Q=15sh.  Aの4 180sh.  360sh. 

さて表ーをみてわかることは, 1クォーターの小麦の市場価値が最劣等地Aの個別的価値に よって規定されているということである。このことは農産物の市場価値は土地的条件(豊度〉

が相対的にゼロの経営の個別的価値によって規定されていることを示している。別言すれば,

前提によって平均資本の個別的価値が市場価値を規定しているということである。そしてこの ことは,工業におるけいわゆる「平均原理」は農業にも貫徹しているとし〉うことであり,農業

(5)

マルクスの「地代論」における若干の問題について 5  におけるいわゆる「限界原理」なるものは,ただ土地的条件においてのみ成立しているという ことである。この点を理解することは差額地代理解の基本をなすものである。

マルクスの差額地代の表ーによる差額地代の本質とその成立のメカニズムの解明は,極めて 抽象的にではあるが,否,抽象的で、あるからこそ,見事に成功しているのである。

マルクスは次に差額地代第1形態の抽象的解明を,より一歩具体的に A

I

下降順序

J

,B 

I

上 昇順序

J

(3) 

I

交錯」の3つの場合にわけて行なっている。

「下降順序」はD地から始まり,

I

上昇順序」はAから始まる。

I

交錯」は需要の増大によ って,いろいろの形で行なわれるが,豊度と位置の関係,農耕方法の改良発展などが,

I

交 錯J

した土地への資本投下の原因となるのである。

現実には「下向順序」や「上昇順序」および「交錯」のいずれの場合にも差額地代は発生す る。リカードは, しかし,土地の豊度がたえず低下し,農業がたえず退歩し,それゆえ農産物 の一般的生産価格がたえず上昇してゆくとLづ事情のもとでのみ差額地代は形成され得る,と

していた。しかしこのようなリカードの見解は現実にあわない理論である。農業が進歩し発展 しながら,差額地代は成立するのである。すなわち農業における生産技術上の発展や土地改良 によって豊度が高まる場合や,より多くの面積が耕作される場合にも,差額地代が増大するか

らである。

ところで,大内力教授はその著書『地代と土地所有~ (東大出版会, 1958年10月〉で,

I

原理論」

では「下降順序」の場合のみを考察の対象とすべきであり,

I

上昇順序」は,具体的・歴史的 事実にかかわるものであるから除外すべきだと述べている。すなわち大内教授は歴史的事実と

しては上向序列が下向序列にいりまじってあらわれ,新たな優等地が耕作圏内にはいってきて いるが,そのような歴史的事実が,すぐ理論の前提として与えられていいものかどうかは問題 であろうとして次のように述べている。

「抽象化された原理論の世界のなかでも,むろん一方においては人口が増大し,農産物にた

L、する社会的需要が増大してゆくことは, とうぜん前提されなければならなし、。また他方では,

土地の自然的条件には差があり,一定の条件の土地には限度があるということも,し、っばん的 に前提されているとみていいであろう。こうした前提をふまえて考えるときには, ささにもふ れたように,優等地がまず限度につきあたり,ついでより優良でない土地に耕作がひろがって ゆくとLづ下向序列がとうぜん考えられる過程であるし,また差額地代の成立はそれによって 無条件的に論証できるのである。ところがもし上向序列で考え, しかも地代の成立の必然性を とこうとすると,上述のように,われわれはつねに優等地と社会的需要との関係を規定してお かなければならない。とくにマルクスのように,上向序列を,たえず優等地へ耕境がひろがっ てゆくというふうに観念するならば,このような規定はし、っそう重要になろう。なぜならたえ ず優良な土地がくわわってゆくにもかかわらず,優良でない土地が耕作圏内にとどまっている ということは,無条件的にはいえないことであり,ただそのくわわるべき優等地に限定を附す

(6)

ることによってのみ, ¥川、うることにすぎないからである。こういうわけで,上向序列のなか で,差額地代の成立の必然性を論証するということは,抽象的・原理的に規定された世界のな かでは困難であり,いわばより具体的な,歴史的に与えられた事実を密輸入しなければなしえ ないことだといわなければならない。

J

(67‑8ページ〉

また日高普教授も, ~地代論研究~ (時潮社196210月〉で「地代論のあつかうべきものは,制 限された自然力の利用にともなう剰余価値分配の特殊な形態の論理である。そしたら当然地代 論であっかう各資本の技術内容は同一であると考えなくてはならないであろう。 …農業でも 工業でも技術改善による価値低下をつうずる価格低下の傾向は,地代論以前で既に解明しつく されているのである。制限された自然力の利用によっておこる新しいものは,制限性のもたら す価格上昇の傾向だけではないだろうか。

J

(162ページ〉と同様の見解を述べていた。これらの 誤った見解は土地の豊度がたえず低下し,農業がたえず退歩し, したがって一般的生産価格が たえず上昇してゆくところでのみ差額地代が形成されるというリカードの見解と関連している。

リカードは土地の豊度がたえず低下し,農業では収穫逓減の法則のみが作用し, したがって 農産物の生産価格が絶えず上昇してゆくとLづ事情のもとでのみ差額地代は形成されるものと みていた。しかしマルクスは差額地代は,農業の発展・進歩や農生物の生産価格が不変・低下 の場合でも成立することを,あとでみるように論証しているのである。

マルクスはウエストやマルサスやリカードの前提,すなわち,差額地代は必然的にますます 劣等な土地への進行と,絶えず低下してゆく土地豊度とLづ前提の誤まりを明らかにした。

現実にみられる交錯的な序列の展開を理論的に整理することが,原理論としては誤まりであ るとするなら,そのような原理論では,現実の解明が不可能となるであろう。およそ科学的理 論とは複雑な多様な現象を整理じ,その本質を明らかにして,現象を正しく理解することにあ

るのだから,現実と抽象的理論を切断することは誤まりなのである。

マルクスは差額地代が,ますます優等な土地に進んで行く場合にも生じることがあること,

以前の劣等地に代わってそれよりも優良な土地が最下位を占める場合にも生ずること,農業の 一層の進歩と結びついても生ずることなどを明らかにしているのである。

3 .   r

虚偽の社会的価値」

ところで表ーでは投下価値が240シリングであるにもかかわらず, 600シリングの市場価値が 成立するとしている。そしてマルクスは,

I

これこそは,市場価値一一資本制的生産様式の基 礎上で競争を媒介として自らを貫徹する市場価値一ーによる規定である。この規定は,ある虚 偽の社会的価値 einenfalschen sozialen Wertを生み出す。この虚偽の社会的価値は土地生 産物を支配する市場価値の法則から発生する」とのべている。

では,なぜ虚偽の社会的価値とよばれるのか。また虚偽の社会的価値の内容をどのように理 解すればよいのか。

(7)

マルクスの「地代論」における若干の問題について 7 

「虚偽の社会的価値」理解の前提として,まずマルクスの価値論を考察しておかなければな らない。

商品は不可欠の前提として使用価値物でなければならない。この使用価値を作り出すという 面からみて,労働は具体的有用労働として規定される。だが個々の生産者の具体的有用労働は,

「人聞の脳や筋肉や神経や手などの生産的支出

J

r

生理学的意味での人聞の労働力の支出」で ある限りは,労働は抽象的人間労働である, とマルクスは規定する。そしてマルクスはA商品 とB商品の交換式における共通者は,この抽象的人間労働であり,これが価値の実体である,

としてL情。しかし労働は商品を生産する行為であり,何らかの実体をなすものではない。そ もそも商品の価値とは,人聞がその商品に対して価値ありとする評価である。そして価値の大 きさは,その商品を生産する社会的必要労働時間によって計量される。だから,社会的必要労 働時間で価値の大きさを決定される商品そのものが,人間に不要ならば,価値はなしその大 きさも問題にならない。たとえその商品の生産に労働が投下されていたとしても,その商品は 価値物ではなく,価値はなく,その大きなも問題にはならない。

商品の価値の大きさを抽象的人間労働の大きさとして理解する見解があるが,これには問題 がある。ここでの抽象的人間労働の理解としては,前述のように「生理学的意味での人間の労 働力の支出」としての理解や,

1つの同じ人間労働力の支出」としてみる理解がある。しか し価値の大きさを規定する尺度は二重の意味をもっ「社会的必要労働時間」である。この規定 には生産諸条件も含まれているが,抽象的人間労働の規定には生産諸条件は含まれていない。

したがって抽象的人間労働の大きさが価値の大きさであるということはできない。そもそも抽 象的人間労働は,商品に対象化されて,価値の実体をなすとLづ見解,さらには抽象的人間労 働は物の属性として物化された形態をとるとLづ見解にも無理がある。労働は生産物を生産す る手段であり,物ではなく,また物の属性でもない。したがって,価値を商品に対対象化され た労働であるとする見解には疑問がある。

価値は労働であり,価値の大きさは労働時間によって測られる,ということがマルクスの労 働価値説であると一般に理解されている。しかし『資本論』の若干の箇所は,このような理解 では説明できない。例えば3巻10章にある有名な「不明瞭な箇所」または「難解な箇所」とよ ばれる箇所がそれである。すなわち「単なる比率からすれば別な結果が生ずるにもかかわらず,

最悪または最良が市場価値を規定する」としている箇所である。

『資本論~ 3巻10章でマルクスは次のように述べている。

「この分量(商品の分量一一井上〉が需要よりも小さし、か大担、ばあいには,市場価値から の市場価格の背離が生ずる。そして第lの背離は,商品量が過少な場合には最悪の条件下て。生 産される商品がつねに市場価値を調整し reguliert, 商品量が過大な場合には最良の条件下で 生産される商品がつねに市場価値を調整する regt1iertということであり,つまり,相異なる 諸条件のもとで生産される諸分量聞の単なる比率からすれば別の結果が生ずるはずにも拘わら

(8)

ず両極端の一方が市場価値を規定するbestimmen。そうしたことが生じうるのは,需要が普通 の需要をこえる場合,または供給が普通の供給以下に減少する場合だけである。最後に,生産 される商品の分量が,中位の市場価値で売れる以上に大きい場合には,最良の条件下で生産さ れる商品が市場価値を規制する regelnJ

この箇所は「単なる比率」すなわち労働時間の算術加重的平均からすれば別な価値量(平均 価値〉になるにもかかわらず, ~資本論』冒頭の社会的必要労働時間による価値(平均価値〉

とは別な価値が成立する,とマルクスはのべているのである。

r

また虚偽の社会的価値」に関 係のあるマルクスの地代表ーの240労働時間(シリングを労働時間としてみておく〉が600労働 時間の市場価値だとしているところもそうである。

詳細な考察はここでは行なうことができないが,価値は商品に対象化された労働ではない。

労働は人間に役立つ有用物を生産する手段である。そしてこの有用物を人聞が価値ありと評価 するのである。このように価値とは人聞が有用物に与える評価である。そして価値の大きさは その有用物を生産する生産費であり,結局は労働時間である。人聞が有用物を評価し,その価 値の大きさを規定するにあたって,通常の諸条件下では,マルクスのいう「社会的必要労働時 間」が価値の大きさを規定するものとしてし喝。しかし三巻10章の「不明瞭な箇所」のような 需給の特殊な場合〈例えば恐慌の過程〉では価値の大きさは「社会的必要労働時間」では規定 されないし,また「地代論」でのように「土地経営の独占」のもとでも,価値量は「社会的必 要労働時間」と一致しなくなるとしているのである。このことは,人聞が商品の価値をどのよ

うに評価するか,または社会が商品の価値をどのように評価するか,ということと価値の大き さが密接な関連をもっていることを示しているのである。この点については本誌41巻3号の拙 論を参照されたい。

いわゆる価値の「生産説」的理解は,商品の価値は生産過程で生産されており,

r

社会的必 要労働時間」で生産された商品は,すべて一定量の価値をもっている,としている。そして社 会の需要にくらべて過多に生産された商品は,一定量の価値をもっ商品であるが,ただその価 値が実現されないだけだ,とL、う。この説では,社会の需要に無関係に,価値はただ社会的に 生産過程で生産されることになる。しかし物が無用なら価値は存在しないのである。

さて個々の商品の価値は,同一生産部門内の総生産物が,市場での販売競争を通して,市場 価値として成立するというより具体的段階で考察される。そして個々の商品の生産のために必 要な社会的必要労働時間は,社会的必要労働時間の第二の意義をみたさなければならないとし

て考察されている。

次に市場価値の法則は生産価格の法則に転化するが,これは異種生産部門聞の競争とL、う段 階で市場価値が生産価格へ転化される結果である。

最後に農業においては価値規定,生産価格規定はどうなるかが考察される。

農業では最劣等に標準資本が投下されて成立する市場価値(より具体的には市場生産価格で

(9)

マルクスの「地代論Jにおける若干の問題について 9  あり,それは絶対地代を考察にいれるとさらに市場価値となる〉の大きさが,その生産物の大 きを規定する。そしてこの結果,

r

虚偽の社会的価値」が成立する。

マルクスの表ーの数字によれば240シリングの投下価値が600シリングの市場価値となり,

360シリングの差を生ずる。これはあくまでも最劣等地の生産物の個別的生産価(格絶対地代 論段階では個別的価値〉が市場生産価格(絶対地代論段階では市場価値〉を規定するからであ る。優等地の生産物はすべて1クォーターが60シリングの価値をもつものとされる。だから 600シリングが10クォーターの生産物の価値であって,価値以上の価格ではない。しかしなぜ そうなるのか。それは工業生産物と同様に,農業生産物も,その価値の大きさは,社会的・標 準的生産諸条件のもとで,労働の熟練と強度の平均度をもって生産される労働時間によって規 定されるからである。そして,この生産諸条件のなかには土地的条件は含まれないのである。

なぜ土地が含まれないか,といえば,資本的・経営的生産条件とは異なり,土地的条件は,

資本によって自由に利用されないからである。つまり一定の制限が土地利用には不可避的に介 在するからである。このため,相対的に豊度のゼロな最劣等地の社会的・標準的生産諸条件と 労働の熟練と強度の平均度での労働時間(それが1クォーター60シリングである〉によって農 産物の価値が決定されているのである。

このことからマルクスの価値の大きさの規定は,工業と同様に農業にも貫徹されている,と

L、わなければならない。

しかし,それでも農業と工業の価値の大さきの規定には,内容的に一つの重大な相異がみら れる。それは工業の場合は,個別的価値と市場価値が総計において,通常の場合一致するのに 対し,農業の場合は不一致だとL、うことである。

よく,差額地代を「強められた労働」説によって説明される。しかし工業での「強められた 労働」は個別的価値と市場価値のそれぞれの総計の一致をもたらしているのに対し,土地的条 件による「強められた労働」は総計の不一致をもたらしているのである。そしてこうしたこと

は,マルクスの指摘しているように「資本制生産様式の基礎上で競争によってみずからを貫徹 する市場価値の法則による」ものなのである。このことから価値の大きさは,労働時間の大き さのみによって規定されるものではないことを認識しなければならない。

さてこのようにして,差額地代となるところの360シリングは計画的組会社会では存在せず,

この点で工業の場合とは異なる。そしてこうなったのは土地的条件で「強められた労働」に優 等地の投下労働がなかったためであり,さらにこの土地的条件が競争によって社会化,平準化 されないからである。このような点から, 600シリングの市場価値は,非土地生産部門の生産 物の社会的な価値成立にくらべ,非社会的であり,社会的には虚偽であり,虚偽の社会的価値

なのである。

(10)

4 .  

差額地代の第

2

形態

『資本論』第3巻の利子生み資本に関する第5篇にくらべて,地代に関する第6篇は,エン ゲルスによれば「透かに完全に仕上げられていたが決して秩序立っていなかった

J

(~資本論』

第3巻序説〉のであり,特に「最も骨が折れたのは差額地代Eのところの表と,第43章ではこ こで取扱われるべき差額地代 Eの第 3例が全く研究されていないのを発見したこと」であった,

とされている。

こうしたこともあってか差額地代第2形態論においても論争点がすくなくない。たしかに

『資本論』の第3部 第 6篇の第40章「差額地代の第2形態」から第44章「最劣等耕作地でも生 まれる差額地代」までの論点は多岐にわたっている。そのうえマルクスの説明にたいするエン ゲルスの訂正もあり,かつマルクスやエンゲルスの叙述のなかに,矛盾した説があるかのよう にみられる箇所もあるなどして,論争の原因ともなっている。

論争の多くは『資本論』の第2形態から最劣等地に生ずる差額地代の理論にいたるまでの差 額地代第2形態成立の諸条件の相違によるものである。

耕作の発展は,実際には,ある等級地から他の等級地への耕作の外延的拡大却、う形をとる だけでなく,異なる等級地の並行的耕作の土台の上で,同一の土地に追加投資がなされるとい う形によっても行われる。第1形態の土台の上での差額地代第2形態の展開である。この第2 形態はきわめて複雑で多様な運動様式を示す。だがマルクスは『資本論』の第3部 第 6篇の

「第40主主 差額地代の第2形態(差額地代H)においては(とくにその前半の部分においては〉

第2形態、の複雑で多様な運動様式をひとまず捨象し,すなわち土地としての異なる等級地の並 行的耕作,第1形態の差額地代を捨象し,さしあたりはどれか1種類の土地一一たとえばD級 地ーーしか耕作されていないとL寸前提のもとに,第2形態についての簡単で抽象的な概念や

その形成のメカニズムについての考察から始める。

マルクスの差額地代の基本表である表では, 10ポンド (96C24V 120シリング〕という 資本が2 tポンド(船リンク〉ずつ独立した資本の形で借地農業によってA,B, C, Dの 土地1エーカーに投下されているのであるが,これがもし,同じ資本が同じD地の1エーカー に次々に投下され,第1の投下は4グオーター,第2の投下は3クオーター,第3の投下は2

グオーター,第4の投下は1グオーターをあげたとすれば(逆の順でもよLつ,最後の投下資本 の1グオーターの生産価格は3ポンドで,この3ポンドについては差額地代となるべき超過利 潤はゼロとなる。そしてそれ以前の投資は超過利潤を出す。すなわち表ーが並行的におこなっ ていることを,ここでは継起的におこなっているのである。

ところでマルクスによる以上の説明においては,差額地代第2形態となる超過利潤の成立に ついてのみが考察されているのであって,この超過利潤の地代への転化が行なわれるための条 件は捨象されている。この場合には差額地代Eは差額地代Iの別の表現にすぎない。

(11)

マルクスの「地代論」における若干の問題について 11  しかし第1形態と第2形態の以上の場合においてもいくつかの差はある。

まず第2形態、が地代となるためには,地所の賃貸契約期間が介在して困難な情況に直面する こととがある。長期契約は既存の地代を固定しているため,追加投資の超過利潤を地代として 地主へ支払はなくともよいことになる。また差額地代第1形態では,生産価格と差額が不変な ら,地代総額とともに一‑c!:.¥、うのは,耕地面積の拡大とともに一一1エーカーあたりの平均 地代または資本当たりの平均地代率は増大することができる。しかし1エーカー当たりの現実 の地代の大きさは同じままである。これに反して差額地代第2形態では,同じ前提のもとで,

投下資本について計算した地代率は同じままでも, 1エーカー当たりで計算した現実の地代は 増大することができるのである。

仮りにA,B, C, Dに,相対的豊的は同じままで,それぞれ2一ポンドではなく1  5ポンド 2 

ずつの資本が投下され,生産が2倍になったとする。これは, 4つの土地種類が1エーカーで はなく 2エーカーずつ,同額の資本で経営されたと同じことである。この場合は利潤率も,地 代に対する利潤率の関係も同じままである。資本が2倍になって相対的豊度が不変だからであ る。投下資本にたいする地代率は,投下資本10にたいする地代18は,投下資本20にたいする地 代36になるだけである。同様のことは,それぞれの土地種類についてもいえる。

以上のことから,生産価格が同じままであり,利潤率も同じままであり,豊度の差も同じま まであっても,差額地代第2形態においては, 1エーカー当たりの生産物地代および貨幣地代 は増加し, したがって土地価格も上昇することがありうるのである。

差額地代第1形態の別な表現としての第2形態の考察に続いて,マルクスはそのより複雑な 運動形態の考察を行なっている。すなわち第40章の後半部分以後において,とくに「第41章 差額地代E一一第1の場合生産性が不変の場合」から「第44章最劣等耕作地でも生まれる 差額地代」にかけて,マルクスは第2形態の複雑で多様な運動様式についての考察である。

ではそれはどのような条件下で考察されているのであろうか。

議 │ 生 酷 │ 生 産 物 │ 販 踊 れ 益

i

地 代

i

地代増加

シリング フ寺ッシェノレ シリング シリンク守シリンク守

A  60  10  6  60 

。 。

B  60  12  6  72  12  12  C  60  14  6  84  24  2X12  D  60  16  6  96  36  3X12  E  60  18  6  108  48  4x12 

︒ ︐

a× U

E

ハUn

︐  

EA

マルクスは,次に生産価格が「不変

J r

低下

J r

上昇」の場合と, 追加投資の生産性が「不 変

J r

低下

J r

上昇」の場合の,種々の組み合わせから生ずる差額地代 Eについて考察する。し

(12)

かし数字例の不適切や,生産価格が上昇する場合の分析が欠如していたのでエンゲルスはマル クスとは別の地代表〈表11)を作成して,差額地代Eを考察した。

この表にはAからEまで5種類の土地が掲げられており,エーカー当たりの生産価格はそれ ぞれ60シリングである。平均利潤率を20パーセントとすれば,投下資本は50シリングである。

マルクスの表と同様に,最劣等地Aの個別的生産価格が販売価格イコール一般的生産価格であ り,優等地には, 12シリング, 24シリング, 36シリング, 48シリングの差額地代が生じている。

この差額地代Iの基礎上に追加投資が行われ,第2形態が発生するのである。これには生産価 格が不変,低下,上昇の三つの場合がある。そしてそれぞれの場合に生産性が不変,低下,増 大の三つの場合がある。以下の通りである。

〔第1の場合〕生産価格不変

(変化1)追加投資の生産性不変(総地代は2倍〉 表12

種 土 地 類 │ そ シ 再 点 │ 生 産 物 │ 販 売 価 格 │ 収

I ( 

~ 1)  ;/ 7"') 

(ブッシェル)

(シリング)

(シリンク)

i

(シリング(代 │

A  6060=120  1010=20 6  120  B  6060=120  1212=24 6  144  C  6060=120  1414=28 6  168  6060=120  1616=32 6  192  6060=120  1818=36 6  216 

(変化2)追加投資の生産性低下

(A)土地 Bが無地代になる場合〈総地代はもとのまま〕

表13

24  48  72  96  240 

土 地 種 類 │ 生 産 費 │ 生 産 物 │ 販 売 価 格 │ 収 益│地 代│

(シリング)

(ブッシェル)

(シリング)

(シリング)

(シリンクコ│

A  60  10  6  60 

6060=120 128 =20  6  120 

C  6060=120 1491h=231/3 6  140  20  6060=120 16102/3=262/3 6  160  40  E  6060=120 1812 =30  6  180  60  120 

地 代 増 加

24  2X24  3X24  4X24  10X24 

地 代 増 加

。 。

20  2X20  3X20  6X20 

(13)

マルクスの「地代論」における若干の問題について 13  (B)土地 Bがまったく無地代にならない場合(総地代は 2倍以下〉

14

土地醐|キシ 1り|与ッ日|明朗 Ir~ リ沈降リン刻地代増加

A  60  10  6  60 

。 。

B  6060=120 129 =21  6  126  6  6  C  6060=120 14101ん=241/2 6  147  27  621 6060=120 1612 =28  6  168  48  62x21 E  6060=120 18131/2=311/2 6  189  69  63X21

4

n r

 × 

c u 

c u

 

a4  

U

Z υ

i  

(変化3)追加投資の生産性上昇(総地代は2倍以上〉

15

│  産 費 │ 生 産 物 [ 販 売 価 格 │ 収 益│地 代 │

土地種類

le

シリング)'

1  e

ブッシェル)

1  e

シリング

5 1 e

シリング

) I e

シリング

) 1

地 代 増 加

A  60  10  6  60 

。 。

B  6060=120 1215 =27  6  162  42  42  C  6060=120 14171/2=311/2 6  189  69  4227 6060=120 1620 =36  6  216  96  422X27 60+60=120  18+221/2=401/2  6  243  123  423X27 330 

4X426X27

〔第2の場合〕生産価格低化

(変化1)追加投資の生産性不変(総地代はもとのまま〉

16

地 代 増 加 土地種類 I生(シリ産ング費〕 生 産 物レ〉

〈ブッシェノ B  6060=120 1212=24 C  6060=120 1414=28 D  6060=120 1616=32 E  6060=120 1818=36

20 

ハUOV一ハリ4××一X9

Q υ U

U9 14 

(14)

〈変化2)追加投資の生産性低下(総地代はもとのまま〉

地 代 増 加

20  2X20  3X20  6X20  17

120  生 産 物

(ブッシェル〉

129 =21  14101J2=241/2

16+12  =28  18131/2=31'/2 生 産 費

(シリング〉

6060=120 6060=120 6060=120 6060=120 B

C D H  

〔変化3)追加投資の生産性上昇(総地代は2倍〉

18

地 代 増 加 A  6060=120 1015=25 44/5  120 

。 。

B  6060=120 1218=30 44/5  144  24  24  6060=120 1421=35 44/5  168  48  2X24  6060=120 1624=40 44/5  192  72  3X24  6060=120 1827=45 44/5  216  96  4X24 

│ 生 産 物

l

販 売 価 格

l

益 │ 地

〈ブッシェル)

(シリング)

(シリング)

(シリング〉

生 産 費 (シリング〉

10X24  240 

〔第3の場合〕生産性上昇

イ.土地Aがあいかわらず無地代地で価格調節的である場合 (変化1)追加投資の生産性不変(総地代は2倍〉

19

地 代 増 加 A  6060=120 71/210=17112 66/7  120 

。 。

6060=120 9 12=21 66/7  144  24  24  C  6060=120 101/214=241/2 66/7  168  48  2X24  6060=120 12 16=28 66/7  192  72  3X24  6060=120 131/218=31'12 66/7  216  96  4X24 

雨明 l z j l t リ 判

生 産 物 (ブッシェル〉

生 産 費 (シリング)

10X24  240 

(15)

マルクスの「地代論」における若干の問題について 15  (変化2)追加投資の生産性低下(総地代は2倍〉

20 土 地 種 類 │ 生 産 費

I (シリンクコ 与 ッ 日

i 初 期 I r~ リン湾|瓦瓦|地代増加

A  6060=120 105=15  8  120 

。 。

B  6060=120 126=18  8  144  24  24  C  6060‑120 147=21  8  168  48  2X24  D  6060=120 168=24  8  192  72  3X24  E  6060=120 189=27  8  216  96  4x24  240  I  10x24 

(変化3)追加投資の生産性上昇(総地代は2倍〉

21

│ 生 産 費

土地種類l

(シリング〉

ちッ切開閉 Ir~ リン足跡ン刻地代増加

A  6060=120 512'/2 = 17' /2  66/7  120 

。 。

B  6060=120 615 =21  66/7  144  24  24  C  6060=120 717'/2=24'/2 66/7  168  48  2x24  D  6060=120 8+20  =28  66/7  192  72  3x24  E  6060=120 922'/2= 31' /2  66/7  216  96  4x24  240  I  10X24 

ロ.より劣等な土地a地が価格調節地となる場合 (変化1)追加投資の生産性不変(総地代2倍以上〉

22

土地種類 I~シ l亮グ引与ッ日|肝~}~ I  r~ リン湾 Irv リン刻地代増加

a  120  16  7'/2  120 

。 。

A  6060=120 1010=20 7'/2  150  30  30  B  6060=120 1212=24 7'/2  180  60  2x30  C  6060=120 1414=28 7'/2  210  90  3x30  D  6060=120 1616=32 7'/2  240  120  4X30  E  6060=120 1818=36 7'/2  270  150  5X30  450  I  15X30 

(16)

(変化2)追加投資の生産性低下(総地代2倍以上〉

23

地 代 増 加 120  15  8  120 

o  。

6060=120 10 7'/2=17'/2 8  140  20  20  6060=120 12+ 9 =21  8  168  48  2028 6060=120 1410'/2=24' 196  76  202X28 6060=120 1612 =28  8  224  104  203X28 6060=120 1813'/2=31'/2 8  252  132  204X28

│雨明尽リ Alt リ刈

生 産 物

( フ や ツ シ ェ ノ レ 〉

生 産 費

( シ リ ン グ 〕

a A B C D E  

5x 1 28 380 

(豊化3)追加投資の生産性上昇〈総地代2倍以上〉

24

地 代 増 加

a  120  16  7'/2  120 

。 。

A  6060=120 1012'/2=22'/2 7'/2  1683/4  483

  f 4

15333/4 B  6060=120 1215 =17  7'/2  202'/2  82'/2  152x333/4  C  60+60‑120  1417'/2=31'/2 7'/2  236'/4  116'/4  153x333/4  6060=120 1620 =36  7' /2  270  150  154x333/4  6060=120 1822'/2=40'/2 7'/2  3033/4  1833/4  155x333/4 

│初期│巳リン A 1 t

生 産 物

( フ 守 ツ シ ェ ル 〉

生 産 費

( シ リ ン グ 〉

‑s nuq a  F hυ  ih υE目 ‑ υ581'/4 

また 土地に投ぜられる資本が多ければ多いほど,

以上の結論としてマルクスは,要するに,

それだけ1エーカー当たりの地代も,地 一国の農耕と文明一般との発展が高ければ高L、ほど,

このことはひとたび耕作されるよう と述べている。もちろん,

代の総額もますます多くなる,

になった土地種類がすべて競争能力を保持している聞のことである。何らかの事情で既耕地が 競争能力を失うなら,地代も消滅するのである。

最劣等地の差額地代

5 .  

差額地代の第2形態は,第1形態のところでは存在しないと前提されていたところの最劣等 地の差額地代を成立させる。それは優等地への追加投資によって生産される農産物の個別的生 産価格が,市場生産価格を規定するか,または劣等地への追加投資によって,劣等地に差額地 代が成立するからである。

マルクスは最劣等地でも生まれる差額地代の説明にあたって以下の仮定をしている。すなわ

(17)

マルクスの「地代論」における若干の問題について 17  ち①穀物にたいする需要が増大してきて,供給を充たすためには,②地代を生む土地での生産 性の不足な逐次的投資によるか,または①土地Aでの同様に生産性の低下する追加投資による か,あるいはまた①Aよりも劣等な新たな土地での投資によるか,そのどれかによるよりほか はないということ,また⑤地代を生む土地を代表するのは土地BであるとLづ仮定である。

この仮定のもとでマルクスは次の表をかかげる。

土 地 種 類 │ エ ー カ ー │ 生 産 費 │ 生 産 物 │ 的 問 日 郎 副 諮 問 ・ │ 貨 幣 地 代 A

B C D  

ポンド ポンド クオーター ポンド

3  3 

。 。

3  10 ん' '/2  4 ん' 3  16 '/2  3 '/2  10 '/2  3  22 '/2  5 '/2  16 '/2  21  17 '/2  52 '/2  10 '/2  31 ん' 合 計 I 4 

この表では

A

B

, 

C

, 

D

の耕地面積はそれぞれ

1

エーカーずつであり,

A

地は

3

ポンドの 生産価格で1クオーターを, B地は6ポンドの生産価格で3

' / 2

グオーターを, C地は6ポンド の生産価格で5

' / 2

クオーターを, D地は6ポンドの生産価格で7

' / 2

グオーターを生産している。

B地だけをみると 6ポンドで3

' / 2

クオーターを生産しており, 1クオーター当たりの生産費は 1 

5 / 7

ポンドである。その販売価格が3

' / 2

ポンドであるから1クオーターあたりB地は.1

2 / 7

ポン ドのもうけとなり, 3 

' / 2

グオーターは4

' / 2

ポンドの地代となる利益を生む。他のC地, D地も それぞれ10'/2シリング, 16'/2シリングの地代を生み出している。この結果,すべての優等地で 差額地代が生ずる。

次に,地代を代表するものとして土地Bをえらび出し, B地での1グオークーの増産を可能 にするためには,追加投資は,市場価格がそれまでの1クオーター当たり 3ポンドとLづ 規 制 的生産価格よりも高くなることを必要とする,として,マルクスは次の表を作成する。

ポンド │クオーター│ ポンド ポンド クオーター ポンド 1  3  1  3 '/2  3 '/2 

B  l  9 '/2  4 '/2  3 '/2  15 3/4  1 11/14  6 '/4  C  1  6  5 '/2  3 119 '/4  11;'.  13 '/.  1  6  7 '/2  3 '/2  26 '/.  5 11/14  20 '/4  合 計 4  24 1ん│ 64 3;'  40 '/4  (このlクオーターの販売価格3‑10‑ポンドは,最後の追加投資の2"'  , ‑.. ~,-~-""'.- ‑‑310‑ポンドで1t'オーターを生産したの だから,これが市場生産価格だとするマルクスの見解による。すなわち追加投資による新たな超過利潤を地

1  ̲1  .1  ̲1 

代とみて, 9

2

6~正 +42=3 互の計算で算出したものである。この点でエンゲノレスとは異なる〉

(18)

もしB地の追加投資が一次投資だと仮定すれば(販売価格を31/2シリングとする〕

土地種類│ 面 積 │ 生 産 費 │ 生 産 物 │ 販 売 価 格 穀 物 地 代 貨 幣 地 代 B  地

I

1エーカー

I

3tポンド 11ク オ 十 1 3 tポンド ! 

。 。

となり,一次投資を追加投資だとすれば

積 │ 生 産 費 │ 生 産 物 │ 販 売 価 格 ! 穀 物 地 代 │ 貨 幣 地 代 地11エーカー│ 6ポンド 1 1 l 1 1 1 1 ! 1   B  3ークオーター2"  ,  I 3~ 一ポンド2 ' .  I 1‑ークオーター14"  ‑ I ‑6一ポンド4 

となる。マルクスの表では,この6ザボンドが地主のポケットにはいる,としているのである。

このマルクスの表にたいしてエンゲルスは批判的に修正を加えている。すなわち彼はL寸。

「この計算もまったく正確ではない。 Bの借地農業者にとっては, 41/2グオーターは第1に生 産 費91/2ポンド,第2に地代41/2ポンド,合計14ポンドを要費するのであって,グオーター当 たりの平均は31/9ポンドである。彼の総生産物のこの平均価格がかくして調整的市場価格とな る。するとA地の地代はり2ポンドではなく1/9ポンドとなり, Bで の 地 代 は や は り 従 来 ど お り

41/2ポシドであろう。販売価格は41/2クオーターx31/9ポンド=14ポンドであって,これから 9 1/2ポンドの生産費を控除すれば,残りは超過利潤差額地代の41/2ポンドである。そこで数字 は変更されねばならぬ。」

このエンゲルスの修正を表案すれば次の通りである。

ヱンゲルスの批判的修正表

土地種類│エーカー

l

生産費│生産物│販売価格│貨幣収益│穀物地代│貨幣地代 A  1  3  1  3 '/9  3 1/9  ポンド

1  9 1/2  4 '/2  3 1/9  14  1 25/.6  4 '/2 

1  6  5 '/2  3 1/9  17 1/9  3 4/7  11 '/9  1  6  7 '/ 3 1/9  23 1/3  5 4/7  17 '/3  合 計 4  24 1/2 

18 1/2 

57 5/9 

10 5/8 

33 1/18 

1 1

(この1;7オーターの販売価格3ホンドは."̲".  "". 9~ ーポンドにそれまでの地代 4 ポンドを加えた14ポンド を

4 t

クオーターで除した数字である。ェγゲノレスは新たな超過利潤を地代として地主に文払わないという 条件で計算しており,この点でマルクスと異なる〉

このエンゲルスの表は, B地所有者がそれまでの差額地代を固定化していることが前提とな っている。そうすると一般的生産価格は,

6ポンド十31/2ポンド十41/2ポンド

)+C

31/2クオ ーター十1グオーター)

3 1/9ポンドとなる。こうして次表のようにすべての耕地に差額地代

(19)

マルクスの「地代論」における若干の問題について 19  が生ずる。

このようにエンゲルスは, 91/2ポンド十41/2ポンド=14ポンドを, 41/2クオーターで除した 31/9シリングを市場生産価格としているのに対し,マルクスは91/2ポンド

+

61/.ポンド=153/.

ポンドを41/2グオーターで除した31/2を市場生産価格としている。

この両者の差は,同一土地への追加投資は単独で平均利潤をあげ,超過利潤は地代となるも のとみる(マルクス〉か,それとも追加投資を加えた全資本が平均利潤をあげ,地代となる超 過利潤を生まなくともよい(エンゲルス〉としているかの差である。マルクス方式では差額地 代は61九ポンドとなり,エンゲルス方式では41/2ポンドとなる。

単独で追加投資が平均利潤を入手する(マルクス方式〉と,その平均利潤額は投下資本7

1 1 /

12 

ポンド (76シリングC十19シリングV=95シリング)xO. 2= 1 

7 /

12ポンドである。 そうすると C十V十平均利潤は,7 

1 1 /

12ポンド十7/12ポンドである。 これに貨幣地代61/14ポンドを加えた 合計が貨幣収益153/.ポンドとなるのである。

以上のようにマルクス方式は追加投資31/2ポンドが,それ自体で平均利潤を入手し,かつ何 らかの地代をもたらすものとして計算している。だから1クオーターの販売価格は31/2ポンド あるとする。つまり最後の追加投資31/2ポンドが1クオーターを生産し,これが市場生産価格 となるのである。そうするとB地では以前の41/2ポンドより高L、61んボンドの貨幣地代が生ず る。

これにたいしてエンゲノレス方式は,追加投資31/2ポンドは,それ以前の投資額6ポンドと合 体して平均利潤をあげればよいとしている。したがって彼は ,91/2ポンドにそれまでの地代を 加えた14ポンドを41/2クオーターで除した31/9ポンドを市場生産価格としているのである。こ の両者の差は,差額地代が固定化されている(エンゲルス〉としている,追加投資の生み出す 超過利潤が差額地代として追加され,それまでの差額地代が固定化されていない(マルクス〉

とみるかの差である。そしてこのような差のある両説はそのどちらが正ししどちらかが誤ま っているというものではなく,前提的条件の相違である。そしてこの前提的条件の差は,現実 においては,土地所有者と借地農業資本家の力関係の差とみることができ,それぞれの場合が,

したがって発生しうるのである。

資本的条件の優れた企業の入手する超過利潤は資本家の手lこはL、る。これは農業でも工業で も同様である。しかし,資本的条件をすべての耕地で同様と仮定するなら,生産物量の差額は 土地的条件に起因する。

地代の実体はこの土地的条件に起因する超過利潤である。そして地所の賃貸借が行なわれる ときにそれは確定され,その後は,その借地契約が続いているかぎり,逐次的な投資から生ず る超過利潤は,借地農業資本家のポケットに流れこむのであって,このため彼らは長期の借地 契約を求めるのである。地主は反対に,いつでも借地契約の更新ができることを望み,一年解 除可能契約(tenanciesat will)を結ぼうとするのである。したがって,借地契約によって地代

(20)

が固定されているとするなら,マルクス方式ではなくエンゲルス方式が正しい。しかし,差額 地代に転化するかどうかは不聞にし,ただ差額地代となるべき実体としての超過利潤のみを考 察しているとLづ前提によるなら,追加投資の超過利潤を差額地代として,固定化されない方 式をとるマルクスも正しL、ことになるのである。以上は優等地への追加投資についてであった。

以上のほかに最劣等の土地Aで差額地代が発生するこつの仕方がある。価格が与えられてい て変らないことを前提にして(1)追加投資が超過生産性を生みだす場合と(2)反対に土地Aでの逐 次的投資の生産性が低下して行く場合である。

この二つの場合,一つの独特な困難が現われるとしてマルクスは次の指摘を行なっている。

すなわち総生産〈または総投下資本〉について計算された1クオーターの個別的平均生産価格 がつねに規定的であるとLづ法則にかんして,この法則が,優等地の場合とは異なって土地A の新たな投資にあてはまるか,ということである。土地Aにあっては新たな投資をする際に,

個別的生産価格と一般的生産価格との均等化を制限するような生産価格は外部に与えられてい ないからである。マルクスの解答は以下の通りである。

供給の大量を産出する土地Aの既耕作エーカー数の大半が,生産性の高い新たな方法のもと に置かれる場合,規制的生産価格は低下せざるを得ない。

しかし新たな方法がA地の面積の一小部分にしか及ばなければ,それは超過利潤をもたらし,

その全部または一部が地代に転化される。この場合,生産価格を高くするものは,土地所有の 介入であり,この問題は,マルクス方式とエルンゲス方式の差としてみたところの問題でもあ

る。

差額地代Eを解明してマルクスは,差額地代Iと結びついた差額地代Eが,複雑な条件の組 合わせのもとで地代を増大させることを,あらゆる可能な諸変例をあげて解明し,耕地の平均 地代の増大によって,土地に投下された他人の資本によって地主階級がポケットにいれる地代 総額が一般的に増大する傾向を理論的に解明し,資本と同様に土地所有が労働者階級の剰余価 値をいかに搾取しているかを暴露したのである。

6 .  

絶対地代

絶対地代の本質は何か。この問題に答えるためには,商品の価値から出発して,社会的価値,

市場価値,生産価格(平均利潤〕の諸範曙を正しく把握したうえで,土地所有の独占と農業の 有機的構成の低位とL、う二条件のもとでの資本と土地所有の競争のうえに成立するのが絶対地 代であることを説明する必要がある。ここで注意すべきは「土地経営の独占」と「土地所有の 独占」を混同してはならないことである。

資本制社会における土地所有は「二種類の独占

J

(レーニン『農業問題と「マルクス批判家J~ 谷 村謙作訳,国民文庫版32ページ)としで機能する。一つは「土地経営の独占」であり,もう一つ は「土地所有の独占」である。前者は差額地代発生の原因であり,後者は絶対地代発生の原因

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