ミクロ経済学 II
(1) 機会費用と交換
丹野忠晋
拓殖大学政経学部
2018 年 9 月 26 日
トレードオフをどう見るか
企業,個人,社会は様々な制約に直面
生産面のトレードオフを示す考え方がこれから 学ぶが生産可能性フロンティア
分かり易くする一種のモデル
ある財を沢山作れば,他の財を諦める必要
海で魚を捕れば山で猟をする時間が少なくなる
工場で自動車を作ればお米を作る農地が減る
他の要因は無視して 2 種類の財で考える
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生産可能性フロンティア /2
生産可能性フロンティアとは生産要素を効率的に 使ったときの生産物の組み合わせを図に表したもの
それは,利用可能な生産要素とそれを用いて生産物 を作るための生産技術を前提にしている
海でサンマを捕るかあるいは山でマツタケを捕るか
利用可能な選択肢の集まりを機会集合という
生産可能な財の集まりは機会集合の一種
一日頑張ってその活動のみを行えば,サンマを 10 匹,マツタケを 10 個取れるとしよう
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生産可能性フロンティアの例
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マツタケ の数量
サンマ の数量
10 9
0 5 7 10
A
B
効率的な生産A
他の効率的な生産
B
C
5
非効率的な生産
3
C
3
D
実現不可能な生産D
生産可能性フロンティア
サンマとマツタケの例
A 点、 B 点ではサンマとマツタケを両方増や す事は不可.サンマ増にはマツタケ減が必要
これは効率的な生産パターンを意味する
効率的な生産点は複数ある
一方, C 点ではサンマとマツタケを同時に増 やすことができる.非効率的な生産パターン
左上に位置する D 点は不可能な生産パターン
世の中フリーランチはない
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生産可能性フロンティアと機会費
用 外側は生産不可,内側は生産可能,境界は効率的
生産可能性フロンティアは人々のトレードオフを表現
生産可能性フロンティアから人々の機会費用を読み取 ることが可能
ある選択の機会費用とはそれをすることによって諦め なければならないもの
A(5,9) 点から B(7,5) 点に移るとき,サンマを 2 匹増や
すにはマツタケを 4 個諦めなければならない
7-5=2, 5-9=-4
2 匹のサンマの機会費用は 4 個のマツタケ
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生産可能性フロンティアと機会集 合
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マツタケ の数量
サンマ の数量
10 9
0 5 7 10
A
5
B
+2
-4
サンマを増やすためにはマツタケを諦めなければならない 点
A
から点B
に引いた直線 の傾きが機会費用を表す生産可能性フロンティアと機会費
用 A(5,9) 点と B(7,5) 点を通る直線の傾きを求める
傾きは-2
サンマを 1 匹増やすにはマツタケを 2 個諦めなければ ならないことを意味する
マイナスはトレードオフの関係があることを意味す る
あるものを増やす(+)には他方を諦める(-)
傾きの大きさ ( 絶対値 ) は機会費用を測る
マツタケを 2 個犠牲にしている
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タテの変化 5 - 9 - 4
傾き= =
= = -2
ヨコの変化 7 - 5
2
個人から国の生産のトレードオフ
国全体の生産を生産可能性フロンティアで表現
日本の自動車と米の生産
すべての資源をクルマに費やせば 2000 万台のク ルマが生産可能とする
反対に資源をすべてお米に費やせば 1500 万トン の米
様々な可能性の中で,現在日本はお米を 900 万ト ン,自動車を 1000 万台生産 (A)
自動車を増産すれば米を減らす必要 (B)
内側の点は非効率な生産 (C)
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一国のトレードオフ:米と自動車
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自動車 の数量 ( 万台 )
現実の生産パターンお米の 数量 ( 万ト
ン)
2000
0
1800 500
900 1500
生産可能性フロンティア
1000
自動車を増やすにはお米を 減らさなければならない
A
B
C
生産可能性フロンティアは右下が
生産可能性フロンティアの特徴 り
1. 右下がりである
2. 外側に向かって突き出ている.上に凸と言います
1 はトレードオフの関係を表す
2 は直線のケースもある
直線はトレードオフが変化しない
上に凸はトレードオフが変化する
単純な直線の生産可能性フロンティアを考える
真央はアイスショーとかき氷を生産している
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真央の生産可能性フロンティア
真央はアイススケートショーで演技できる
また甘味処でかき氷も作ることができる
スケートショー出場はかき氷が作られなくなる
スケートショーは最大限 9 回できる
かき氷は最大 1800 杯作れる
スケートとかき氷のトレードオフは一定とする
真央の生産可能性フロンティアを 描いてみよう
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真央の生産可能性フロンティア
かき氷 の数量
アイスショー の数量
1800
0 3 9
600
6 1200
傾き -200 は 変化しない
600 -3
アイスショーの変化 =3-6=- 3 かき氷の変化 =1200-
600=600
傾 き -200
600 -3
アイスショーの変化 =6- 9=-3 かき氷の変化 =600-0=600
傾き -200
ミクロ経済学 II 1
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生産の機会費用
アイスショーを増やすための機会費用は減らさ なければならないかき氷の生産量
生産可能性フロンティアは直線で図示できる
傾き -200 はアイスショー 1 回増やすにはかき氷 の生産を 200 杯諦める事を意味
傾きが一定は機会費用が変化しないことを示す
アイスショーの機会費用はかき氷 200 杯の諦め た生産だ
ミクロ経済学 II 1
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豊かさ は経済成長があるから
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生産可能性フロンティアはある一時点の2種類 の財の生産のトレードオフを示していた
イノベーション・技術革新により新しい生産方 法が開発された
技術の進歩とそれが経済に導入され普及する事
どんな米の量でも自動車の生産台数が増える
生産可能性フロンティアは外側にシフトする
シフト (shift) は変化を意味.曲線の動きに対
応
生産可能性フロンティアと技術革 新
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自動車 の数量 ( 万台 )
生産可能性フロンティアが外側 にシフトした.生産が点 E になっ た
お米の 数量 ( 万ト
ン)
2000
0
1800 500
800 1500
1000
E B
B(1800,500) から
E(2000,800)
に移り,自動
車もお米も増
えた
交換の利益
国際間の交換を貿易という.貿易を英語で
trade
貿易は利益を生む
何と何を交換すればよいのか?
交換の利益はどのくらいあるのか?
非効率的な人の存在意義は.何もしない?
大丈夫!生産力が低くても利益は必ず存在!
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貿易の理解の進歩:重商主義
交換の利益を理解するのに長い年月がかかった
重商主義とは
一国が裕福になるには輸入より輸出を多くする ことである
16 ~ 18 世紀,欧米先進国で支配的な考え
輸出入の差額は主に金によって決済される
一国に金が増えれば増えるほど豊かになる
他国の犠牲で国を富ます考え方
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絶対優位に基づく交易
アダム・スミスは重商主義に異を唱えた
貿易の制限は良くない
絶対優位に基づいて貿易することにより両国は 豊かになれる
2018/9/26
ある国が他の国に比べてある財の生産をより効率的
に行える時に,その国はその財の生産に絶対優位を
持つという
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絶対優位の例
日本とアメリカは小麦と衣料のみを作って いる
下の表はそれぞれの国で労働時間一単位あ たりの各財の生産量を表す
アメリカ 日本 小麦 (W) 6 1 衣料 (C) 1 2
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絶対優位の例 2
日本は衣料 (cloth) に優位性をもっている
2 (日本の衣料生産量)> 1 (米国の衣料生産量)
アメリカは小麦 (wheat) の生産が得意
6 (米国の小麦生産量)> 1 (日本の小麦生産量)
日本は衣料を輸出し,米国から小麦を輸入する
両国が得る利益を考えてみる
例えば, 6 単位の小麦 (= 6 W) と6単位の衣料 (= 6 C) を交換したとする
日本は小麦 6 単位を輸入して衣料 6 単位を輸出
米国は衣料 6 単位を輸入して小麦 6 単位を輸出
2018/9/26
ミクロ経済学 II 1 22
絶対優位の例 3
日本の輸入量と米国の輸出量,米国の輸入量 と日本の輸出量が等しくなっている
米国の利益 :6C-6W
日本の利益: 6W-6C
双方の利益を衣料の量 (C) で表わそう
アメリカの輸出: 6W = 1C 表から
アメリカの利益 :6C-1C=5C
日本の輸入: 6W=12C 表から
日本の利益: 12C-6C=6C
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絶対優位の問題点
日本は衣料だけを作り,米国は小麦だけを作り 貿易すればお互いに利益を得る
お互いに得意な財を作って貿易すれば良い
しかし,絶対優位にある財があるとは限らない
絶対優位にない劣位にある財しかない国はどの ように貿易をすればよいか
それを解き明かすのが比較優位
アダム・スミスの考えを受けてリカードが提唱
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比較優位
相対的な費用が低い財を輸出し,それが高い財 を輸入すればよい
貿易の利益は相対的な費用の大小で決まる
この相対的な費用は機会費用の概念に基づく
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ある国のある財が他国と比べ相対的な費用が低い
場合にその国はその財に比較優位があるという
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比較優位の例
日本と中国は今川焼きと杏仁豆腐のみを作って いる
その国でのその財の生産量一単位あたりの生産 費を表します
中国 日本 今川焼き 10 20 杏仁豆腐 10 30
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ミクロ経済学 II 1 26
比較優位の例 /2
今川焼きも杏仁豆腐も中国の方が安く生産でき ます
つまり中国はすべての財に絶対優位にある
絶対優位を持っていない日本はどのように貿易 を行えば成功を収めることができるでしょう か?
その答えを提供する概念が比較優位です
2018/9/26
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比較優位の例 /3
ここで杏仁豆腐の相対費用を比較してみましょう
杏仁豆腐の費用は今川焼の費用の何倍か?
中国の杏仁豆腐の相対的な費用 =10/10=1
中国の杏仁豆腐の生産費は今川焼きの生産費の 1 倍
日本の杏仁豆腐の相対的な費用 =30/20=1.5
日本の杏仁豆腐の生産費は今川焼きの 1.5 倍
2018/9/26
ミクロ経済学 II 1 28
比較優位の例 /4
中国の杏仁豆腐の相対費用の方が低い
1<1.5
このとき中国は杏仁豆腐の生産に比較優位を持つ といいます
ある活動に専念することを特化といいます
各々の国が比較優位にある財に特化して貿易する ことにより両国は利益を得る
2018/9/26
ミクロ経済学 II 1 29
比較優位の例 /5
生産に必要な費用を負担できる金額の存在量 は各国で次のようになっているとしよう
中国 日本 金額 600 1200
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HW: 日本は今川焼きの生産に比較優位を持
つことを示して下さい.第 3 章を読む.
ミクロ経済学 II 1 30
比較優位の例 /6
各国で半分ずつのお金で今川焼きと杏仁豆 腐を作ったとします
そのときの生産は以下のようになります
中国 日本 世界全体 今川焼き 30 30 60
杏仁豆腐 30 20 50
2018/9/26
600÷2=300 の金を中国は今川焼きに使える
300÷10
=30 単位の今川焼きを生産
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比較優位の例 /7
各国が比較優位にある財に特化したとしましょ う
中国 日本 世界全体 今川焼き 0 60 60
杏仁豆腐 60 0 60
2018/9/26
ミクロ経済学 II 1 32
比較優位の例 /8
このとき世界全体で今川焼きの量は同じ
しかし,杏仁豆腐の量は 10 単位分増加
これが比較優位による特化の利益
ここで両国が貿易を行うとする
日本が今川焼きを輸出し,中国から杏仁豆腐を 輸入することによって両国が利益を得る
日本は工業製品を輸出して食料・鉱物燃料を輸 入することは,比較優位で説明が可能です
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ミクロ経済学 II 1 33 2018/9/26