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はしがき(pdf)

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Academic year: 2021

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訳者はしがき

システム生物学という言葉が,生物学だけでなく,物理学,化学,情報科学,工学の分野で ごくふつうに使われるようになっています.増殖,発生,ストレス応答などの生物機能がどの ように生み出されるのかを知るためには,細胞の基本的構成要素である遺伝子,タンパク質の 個々の働きだけでなく,それらの全体的な相互作用ネットワークの構造を正しく理解すること が必要です.そのような複雑な細胞システムを理解するためには,自然科学だけでなく,情報 科学,工学を含む幅広い学問分野の知識や方法がどうしても必要です.システム生物学は,多 様な学問の相互作用から発展していくことは疑いのないことです. 物理学をはじめ情報科学や工学では,基本的原理や法則があります.単純な原理や法則を学 べば,それに基づいて自然界の複雑な現象を理解したり,人工物の設計を行ったりすることが できます.一方,元来生物学は事例を枚挙する学問といわれ,博物学に近いものでした.しか し,ゲノム科学の進展や生体分子測定技術の長足の進歩によって,細胞内の複雑な分子間相互 作用ネットワークの構造が急速に解明されていく現在では,細胞が混沌としたもの,神秘的な ものというイメージから高度に組織化された精緻なシステムであるというイメージへとしだい に変わりつつあります.生物学は大きなパラダイム変換の時期にきています.このような変換 を推し進めていけば,生物の中にも基本的原理や法則があることを想定することができます. 本書は,そのような考え方に基づいて,細胞の分子ネットワークの構造と機能の関係の中に 普遍的設計原理を発見することに挑戦しています.ネットワークモチーフという基本構造から, 多様な生命機能(増殖,発生,ストレス応答など)を理解できることを示すことに成功しつつあ るといえます.生物中には,ネットワークモチーフがいたるところに繰り返し現れ,生物シス テムの原理を垣間見ることができます.ほかにも,適応を実現するための積分フィードバック, 遺伝子翻訳や免疫システムにおけるエラー校正システム,細胞増殖のための分子ネットワーク の最適化というように,工学のアナロジーに基づいた原理や法則が発見されつつあります. 訳者らは,著者の強い探究心に基づく,新しい体系的学問領域の創出活動に感動し,システ ム生物学に関心のある研究者,技術者,学生に生物の設計原理の新規性や面白さを知らせたい と思います.そのために,原著の滑らかな論理展開や著者の強い思い入れを含めて,すべてを 訳書に再現できるように努めました.本書は,著者の物理学,化学,生物学,情報科学,工学に わたる広範な知識や方法論に基づいて書かれていますので,読者は,そのような広範な基礎知 識や方法論を理解し,修得することが求められます.本書は,基礎的学習を踏まえた上で,大 学学部後半,あるいは大学院における講義の標準的教材として活用することによって,システ ム生物学に対する理解を深める大きな助けとなると確信します. 倉田 博之 宮野 悟

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