• 検索結果がありません。

1. はじめに消費エネルギー ( 電力 ) は, 集積回路の技術の方向性を決定してきた大きな性能尺度である. 回路の集積度の向上に伴ない, バイポーラトランジスタから MOS トランジスタへ,n-MOS から CMOS へと, より消費エネルギーの小さなデバイスや回路構造が採用されてきた. すでに,

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "1. はじめに消費エネルギー ( 電力 ) は, 集積回路の技術の方向性を決定してきた大きな性能尺度である. 回路の集積度の向上に伴ない, バイポーラトランジスタから MOS トランジスタへ,n-MOS から CMOS へと, より消費エネルギーの小さなデバイスや回路構造が採用されてきた. すでに,"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

[特別招待論文] 低消費エネルギー化システム LSI 設計手法

-システム設計からのアプローチ-

安浦

寛人

†九州大学システム

LSI 研究センター 〒816-8580 春日市春日公園6—1

E-mail: †yasuura@slrc.Kyushu-u.ac.jp

あらまし 低消費エネルギー化はシステム LSI 設計における重要な技術課題である.発熱に起因する回路の性能

や信頼性の低下を防ぎ,微細加工技術のもたらす集積度を向上の恩恵を受けるために,低消費エネルギー化は必須

の技術である.さらに,携帯情報機器等のバッテリー駆動機器へ搭載されるシステム

LSI においては,バッテリー

の容量(機器の重量や大きさに大きな影響を与える)の削減や充電頻度の削減による利便性の向上と関係し,低消

費エネルギー化の成否が機器の商品価値を決定することも少なくない.地球規模での環境問題が重要視される中,

低消費エネルギー化技術は,半導体や情報機器の市場規模そのものを規定する要因ともなりうる.本稿では,シス

テム設計レベルでの低消費エネルギー化技術の基本方針を議論し,具体的な手法をいくつか紹介する.

キーワード システム LSI 設計,消費エネルギー,消費電力,動的電圧制御,データパス幅最適化

Design Methods for Low-Energy-Consumption System LSIs

Approaches from System Design-

Hiroto YASUURA

†System LSI Research Center, Kyushu University 6-1 Kasuga-Koen, Kasuga, Fukuoka, 816-8580 Japan

E-mail: †yasuura@slrc.Kyushu-u.ac.jp

Abstract Reduction of energy consumption is one of the most important technical issues in System-on-a-Chip (SoC or

System LSI) design. For preventing the decrease of system performance and reliability caused by heating and for

enjoying the increase of the number of transistors on a chip by the progress of fabrication technology, the reduction of

energy consumption is very important. In mobile information terminal devices, which are driven by batteries, the

energy consumption of SoCs on the devices strongly influences the frequency of battery charge and the weight and the

size of the batteries, which are directly involved with the commercial value of the devices. Since the global environment

problem is argued as a large political problem in the 21st century, the low-energy design technology for SoC may be a

significant factor to determine the size of the market of semiconductors and information technology. In this article, basic

concepts of the energy reduction technology for SoC in the system design level are discussed, and several examples of

energy reduction techniques are presented.

Keyword SoC Design, Energy Consumption, Power Consumption, Dynamic Voltage Scaling, Datapath width

Optimization

(2)

1. は じ め に

消 費 エ ネ ル ギ ー ( 電 力 ) は , 集 積 回 路 の 技 術 の 方 向 性 を 決 定 し て き た 大 き な 性 能 尺 度 で あ る . 回 路 の 集 積 度 の 向 上 に 伴 な い , バ イ ポ ー ラ ト ラ ン ジ ス タ か ら MOS ト ラ ン ジ ス タ へ ,n-MOS か ら CMOS へ と ,よ り 消 費 エ ネ ル ギ ー の 小 さ な デ バ イ ス や 回 路 構 造 が 採 用 さ れ て き た . す で に , 数 十 ワ ッ ト の 電 力 を 消 費 す る LSI も あ り , そ の 単 位 面 積 辺 り の 発 熱 量 は 暖 房 器 具 や ホ ッ ト プ レ ー ト の よ う な 調 理 器 を は る か に 越 え て い る . シ ス テ ムLSI 設 計 に お け る 消 費 エ ネ ル ギ ー の 問 題 は , 1 ) 回 路 の 発 熱 に よ る シ ス テ ム 構 成 ・ 性 能 ・ コ ス ト へ の 影 響 . 2 ) 消 費 エ ネ ル ギ ー の 増 加 に よ る シ ス テ ム 構 成 ・ 性 能 ・ コ ス ト へ の 影 響 . 3 ) 地 球 規 模 の 環 境 問 題 へ の 影 響 . の 3 つ の 視 点 か ら 考 え る 必 要 が あ る . 回 路 の 発 熱 は ,LSI の パ ッ ケ ー ジ を 規 定 す る と 共 に , そ の LSI を 搭 載 す る 機 器 の 放 熱 設 計 や LSI 上 に 集 積 可 能 な 素 子 数 の 制 約 な ど に 大 き な 影 響 を 与 え る . 発 熱 と 放 熱 の バ ラ ン ス が 壊 れ る と 回 路 の 誤 動 作 や 故 障 に つ な が る た め , 平 均 的 な エ ネ ル ギ ー 消 費 と し て の 電 力 の 低 減 が 重 要 な 設 計 目 標 と な る . 発 熱 が 大 き い 場 合 , 高 価 な セ ラ ミ ッ ク パ ッ ケ ー ジ へ の 搭 載 や 空 冷 ・ 水 冷 機 構 の 導 入 な ど を 必 要 と し , シ ス テ ム 全 体 の コ ス ト を 引 き 上 げ る 大 き な 要 因 と な る . 一 方 , 2 ) の 問 題 は , 電 源 装 置 や 電 源 ラ イ ン の 電 流 供 給 能 力 , 電 源 の 重 量 や 大 き さ な ど に 影 響 す る . 特 に 昨 今 は , 電 池 で 駆 動 さ れ る 携 帯 型 の 機 器 が 多 く な り , 低 消 費 エ ネ ル ギ ー 化 が 携 帯 情 報 機 器 の 価 値 を 左 右 す る 大 き な 要 因 と し て 注 目 さ れ て い る .電 池 の 持 続 時 間 は , 対 象 と す る の 処 理 を 完 了 す る の に 必 要 な エ ネ ル ギ ー 量 を 最 小 化 す る こ と で 最 適 化 で き る . こ の よ う な エ ネ ル ギ ー 消 費 の 低 減 は , 機 器 の 運 用 コ ス ト の 削 減 や 利 用 し や す さ の 向 上 に も つ な が る . 一 方 , 瞬 時 的 な 電 流 消 費 が 大 き い と , 電 源 の 性 能 を そ れ に 対 し て 向 上 さ せ る 必 要 が あ り , 信 頼 性 と コ ス ト の ト レ ー ド オ フ が 生 じ る . 地 球 規 模 で の 環 境 問 題 が 世 界 的 な 問 題 と し て ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ て い る 今 日 、 社 会 全 体 の エ ネ ル ギ ー 消 費 を 増 加 さ せ る よ う な 新 し い 製 品 や シ ス テ ム は 禁 止 的 に な る . ユ ビ キ タ ス コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ な ど 多 く の 半 導 体 製 品 を 社 会 の 中 に 埋 め 込 む シ ス テ ム の 構 想 が 提 案 さ れ て い る が , 社 会 全 体 と し て エ ネ ル ギ ー 消 費 を 増 大 さ せ る よ う な 提 案 で は 最 終 的 に 社 会 に 受 け 入 れ ら れ な い .シ ス テ ム LSI の 市 場 を 拡 大 す る 意 味 か ら も ,個 々 のLSI の 消 費 エ ネ ル ギ ー の 削 減 は 重 要 な 技 術 課 題 で あ る . LSI の 低 消 費 エ ネ ル ギ ー( 電 力 )化 設 計 に 関 し て は , 近 年 多 く の 論 文 や 書 籍 が 発 行 さ れ て い る . 最 近 の 研 究 成 果 を ま と め た 著 書 と し て[1],関 連 す る サ ー ベ イ 論 文 お よ び 資 料 と し て[2]-[6]を あ げ て お く . ま た , 多 く の 設 計 技 術 の 国 際 会 議 が こ の 問 題 を 取 り 上 げ て い る が , シ ス テ ム 設 計 レ ベ ル か ら 回 路 ・ デ バ イ ス 設 計 レ ベ ル ま で , 幅 広 い 分 野 の 研 究 者 が 参 加 す る 中 心 的 な 会 議 と し て は ,ISLPED (International Symposium on Low Power Electronics and Design)[7]が あ る .

2.

電 力 消 費 の モ デ ル

単 位 時 間 の 発 熱 量 ( 消 費 電 力 )P, 電 流 I, 電 圧 V, 電 荷 Q, 抵 抗 R, 消 費 エ ネ ル ギ ーUの 間 に は 下 記 の よ う な 関 係 が 成 り 立 つ . P = dU/dt = V dQ/dt = VI = V2/R = I2 R 消 費 電 力Pは 消 費 エ ネ ル ギ ーUの 時 間 微 分 あ る い は 単 位 時 間 辺 り の 平 均 値 で あ り , 消 費 エ ネ ル ギ ー は 消 費 電 力 を 時 間 方 向 に 積 分 し た も の で あ る . 発 熱 や 電 源 線 の 容 量 等 の 議 論 に は 消 費 電 力 が 重 要 で あ り , バ ッ テ リ ー の 寿 命 や 機 器 と し て の エ ネ ル ギ ー 消 費 を 議 論 す る 場 合 に は , 対 象 と す る 一 連 の 処 理 を 完 了 す る 間 に 消 費 さ れ る エ ネ ル ギ ー を 議 論 し な け れ ば な ら な い . デ ジ タ ル CMOS 回 路 の 主 な 電 力 消 費 は ,各 ゲ ー ト の ス イ ッ チ ン グ 時 の 負 荷 容 量 へ の 充 放 電 に よ る 動 的 電 力 消 費 , ゲ ー ト の ス イ ッ チ ン グ 時 の 貫 通 電 流 に よ る 電 力 消 費 , 漏 れ 電 流 に よ る 電 力 消 費 な ど か ら な る . P = CL・VDD2・f0→1 + tSC・VDD・Ipeak・f0→1 + VDD・Ileakage CL:負 荷 容 量 , VDD: 電 源 電 圧 , tSC : ス イ ッ チ ン グ 時 間 ,Ipeak : 貫 通 電 流 , Ileakage : 漏 れ 電 流 , P0→1 : 遷 移 確 率 , f0→1 : 単 位 時 間 の 遷 移 頻 度f0→1 =f・ P0→1 従 来 のCMOS 回 路 で は ,第 一 項 の 動 的 電 力 消 費 が 支 配 的 で あ っ た が , 回 路 の 微 細 化 お よ び 電 源 電 圧 の 低 下 に 伴 う し き い 値 電 圧 の 低 下 に よ り , 今 後 は 第 三 項 の 漏 れ 電 流 に 起 因 す る 静 的 な 電 力 消 費 も 無 視 で き な く な っ て く る .電 源 電 圧 VDDは ,す べ て の 項 に 影 響 を 与 え る 重 要 な パ ラ メ ー タ で あ る . 過 去 の 低 消 費 電 力 化 は , 電 源 電 圧 の 削 減 を 中 心 に 行 わ れ て き た . し か し , 電 源 電 圧 の 低 減 は , し き い 値 電 圧 の 低 減 も 伴 い , ト ラ ン ジ ス タ を OFF の 状 態 で 用 い る と き の 漏 れ 電 流( オ フ 電 流 ) が 大 き く な っ て 第 三 項 の 増 大 を 招 く よ う に な っ て い る . 100nm 以 下 の プ ロ セ ス で は ,電 源 電 圧 の 削 減 は 逆 に 消 費 電 力 を 増 加 さ せ る 効 果 を 持 つ 可 能 性 が 高 い . 一 般 に , 電 源 電 圧 を 下 げ る と 論 理 素 子 の 遅 延 は 大 き く な り , シ ス テ ム の 処 理 速 度 は 低 下 す る . 動 的 電 力 消

(3)

費 を 下 げ る た め に 電 源 電 圧 を 低 く 設 定 し た 場 合 , 一 つ の ま と ま っ た 処 理 を 完 了 す る ま で の 時 間 は 長 く な る . エ ネ ル ギ ー 消 費 は , 電 力 消 費 の 時 間 積 分 で あ る か ら , 処 理 時 間 の 増 大 は , そ の 処 理 を 完 了 す る ま で に 使 わ れ る 漏 れ 電 流 に よ る エ ネ ル ギ ー 消 費 の 増 大 に つ な が る . 単 位 時 間 辺 り の エ ネ ル ギ ー 消 費 で あ る 電 力 消 費 の 削 減 と ひ と つ の ま と ま っ た 処 理 を 完 了 す る ま で に 使 わ れ る エ ネ ル ギ 消 費 の 関 係 は , 単 純 な 比 例 関 係 で は な い .

3. 動 的 エ ネ ル ギ ー 消 費 の 削 減 手 法

3.1. 動 的 消 費 電 力によるエネルギー消費

従 来 の CMOS 論 理 回 路 に お い て は ,そ の 主 た る エ ネ ル ギ ー 消 費 は ,動 的 消 費 電 力 に 起 因 す る も の で あ っ た . あ る ま と ま っ た タ ス ク を 処 理 す る の に 消 費 さ れ る 動 的 消 費 電 力 に 起 因 す る エ ネ ル ギ ー 消 費 は 下 記 の よ う に モ デ ル 化 で き る .

Etask = Cycletask ・p

= Cycletask ・ ΣCLk・Switk・VDD2

p:1 ク ロ ッ ク 周 期 あ た り の エ ネ ル ギ ー 消 費 Cycletask: タ ス ク 処 理 に 要 す る ク ロ ッ ク サ イ ク ル 数 CLk: ゲ ー ト k の 負 荷 容 量 Switk: ゲ ー ト k の 1 ク ロ ッ ク サ イ ク ル の 平 均 ス イ ッ チ ン グ 回 数 VDD: 電 源 電 圧 こ の 式 か ら , エ ネ ル ギ ー の 削 減 に は , ク ロ ッ ク サ イ ク ル 数 の 削 減 , 負 荷 容 量 の 削 減 , ス イ ッ チ ン グ 回 数 の 削 減 , 電 源 電 圧 の 低 減 が 可 能 で あ る こ と が わ か る .

3.2. 電 源 電 圧の低 減

電 源 電 圧 の 低 減 は , 2 乗 の 効 果 が あ る の で 最 も 基 本 的 な エ ネ ル ギ ー 削 減 手 法 で あ る . し か し , 電 源 電 圧 の 低 減 は , 素 子 遅 延 を 引 き 起 こ す の で , 性 能 を 一 定 に 保 つ た め に は , 並 列 処 理 等 と 併 用 し て 処 理 速 度 の 低 下 に 対 応 し な け れ ば な ら な い . 粗 い 近 似 と し て , 電 源 電 圧 と 素 子 遅 延 が 反 比 例 す る と 仮 定 す れ ば , 電 源 電 圧 を 半 分 に し て 処 理 回 路 を 2 つ 用 意 す る こ と で , 完 全 に 並 列 化 が で き た と す れ ば ( こ の 仮 定 は 情 報 工 学 で は 馬 鹿 げ た 仮 定 で あ る こ と は 明 ら か で は あ る が ),処 理 速 度 を 一 定 に 保 っ て 消 費 エ ネ ル ギ ー を4 分 の 1 に 削 減 で き る .し か し ,一 般 に は こ の よ う に 完 全 に 並 列 化 で き る こ と は 少 な く , ア ム ダ ー ル の 法 則 か ら も 明 ら か な よ う に , 並 列 化 で き な い 部 分 が 性 能 を 強 く 規 定 す る . 現 実 の シ ス テ ム に お い て は , 処 理 の 時 間 的 あ る い は 空 間 的 偏 り が 存 在 す る . 回 路 の あ る 部 分 は 高 い 処 理 効 率 を 要 求 さ れ る が 他 の 部 分 は そ れ ほ ど で も 無 い . こ の 場 合 , 高 い 処 理 速 度 に 合 わ せ て シ ス テ ム 全 体 を 高 い 電 源 電 圧 で 動 作 さ せ る よ り , 高 い 処 理 効 率 を 必 要 と す る 部 分 だ け を 高 い 電 源 電 圧 に 設 定 し , 他 の 部 分 は 低 い 電 源 電 圧 で ゆ っ く り と 動 か す ( 空 間 的 な 電 源 電 圧 の 最 適 化 ).こ れ に よ り ,シ ス テ ム 全 体 の 効 率 を 犠 牲 に せ ず に 効 率 を 必 要 と し な い 部 分 の エ ネ ル ギ ー 消 費 を 削 減 す る こ と が 可 能 と な る . 処 理 の 偏 り は 時 間 的 に も 発 生 す る . 携 帯 電 話 で は , 待 機 時 と 通 話 時 の 処 理 量 は 大 幅 に 異 な る . こ の よ う な 場 合 , 最 高 性 能 を 要 求 す る 場 合 に 合 わ せ て 電 源 電 圧 を 固 定 す る の で は 無 く , 高 性 能 が 要 求 さ れ る と き に の み 高 い 電 源 電 圧 を 利 用 し て , そ の 他 は 低 い 電 源 電 圧 で 運 用 す る 手 法 が 有 効 で あ る . 動 的 電 圧 制 御(Dynamic Voltage Scaling あ る い は VDD Hopping)と 言 わ れ る 技 術 で あ る . 特 に ,マ イ ク ロ プ ロ セ ッ サ に お け る 処 理 に お い て は , 高 い 性 能 の プ ロ セ ッ サ を 低 い 電 源 電 圧 で 動 作 さ せ る こ と に よ り ,性 能 を 必 要 と し な い 部 分 の エ ネ ル ギ ー 消 費 を 大 幅 に 削 減 で き る こ と が 報 告 さ れ て い る .電 源 電 圧 の 制 御 は , z プ ロ グ ラ ム の コ ン パ イ ル 時 に 最 適 化 を 行 う . z 実 行 中 に オ ペ レ ー テ ィ ン グ シ ス テ ム が 制 御 す る . z 性 能 要 求 を 観 測 す る 特 別 の 制 御 回 路 を 用 意 し , そ の 回 路 か ら の 情 報 で 制 御 す る . な ど の 方 法 で 行 わ れ る .エ ネ ル ギ ー 消 費 を 最 小 化 す る 動 的 電 圧 制 御 に 関 す る 基 本 的 な 理 論 ,コ ン パ イ ラ に よ る 静 的 な 最 適 化 手 法 ,オ ペ レ ー テ ィ ン グ シ ス テ ム や 制 御 回 路 を 用 い た 動 的 な 最 適 化 手 法 な ど に 関 す る 多 く の 手 法 が 提 案 さ れ て い る[2][5][6].

3.3. スイッチング回 数の削 減

ス イ ッ チ ン グ 回 数 の 削 減 も 広 く 用 い ら れ る エ ネ ル ギ ー 削 減 手 法 で あ る . 基 本 的 に は , 計 算 に 不 要 な ス イ ッ チ ン グ を 除 去 す る . 符 号 化 や プ ロ ト コ ル を 工 夫 す る . ス イ ッ チ ン グ が 少 な い ア ル ゴ リ ズ ム を 選 ぶ . 不 要 な ス イ ッ チ ン グ を 削 減 す る 手 法 と し て は , ゲ ー テ ィ ッ ド ク ロ ッ ク や パ イ プ ラ イ ン レ ジ ス タ の 挿 入 に よ る 方 法 な ど が 広 く 知 ら れ て い る . ま た , 計 算 を し な く て も 結 果 が 簡 単 に 分 か る よ う な 入 力 の 組 み 合 わ せ に 対 し て , 計 算 を せ ず に 直 接 結 果 を 作 る プ レ 計 算 の 手 法 な ど も 有 効 で あ る . 例 え ば , 共 通 鍵 暗 号 系 の AES の 暗 号 化 回 路 に お い て , パ イ プ ラ イ ン レ ジ ス タ の 挿 入 で 消 費 電 力 6 分 の 1 に ま で 削 減 で き る . デ ー タ と し て 保 持 す べ き 情 報 を 記 憶 ・ 演 算 ・ 転 送 す る レ ジ ス タ , メ モ リ , 演 算 器 , バ ス な ど の 幅 も 重 要 な 最 適 化 パ ラ メ ー タ で あ る . 応 用 に よ っ て 異 な る デ ー タ

(4)

の ビ ッ ト 数 を 意 識 し た シ ス テ ム 設 計 法 に つ い て は 次 節 で 詳 説 す る . こ の 他 , デ ー タ を 表 現 す る 符 号 化 や バ ス 上 の 通 信 プ ロ ト コ ル な ど を 工 夫 し て ス イ ッ チ ン グ 回 数 を 削 減 す る 手 法 や 動 作 の 非 対 称 性 を 利 用 し て 頻 度 の 高 い 入 力 に 対 す る ス イ ッ チ ン グ 回 数 を 小 さ く す る 回 路 構 成 法 等 が 知 ら れ て い る .

3.4. 負 荷 容 量の削 減

負 荷 容 量 を 削 減 す る 方 法 は , 回 路 を 小 さ く し て 容 量 を 下 げ る こ と が 基 本 で あ る . 特 に , ス イ ッ チ ン グ 回 数 が 大 き い 部 分 の 負 荷 容 量 を 下 げ る 方 法 が 有 効 で あ る . 例 え ば , 頻 繁 に 実 行 さ れ る 命 令 だ け を 小 さ な メ モ リ に 常 駐 さ せ る 方 法[8]や 頻 繁 に ア ク セ ス さ れ る 変 数 で 語 長 が 短 い も の を ビ ッ ト 幅 の 小 さ い メ モ リ に 格 納 す る な ど の 方 法 が あ る[9].

3.5. クロックサイクル数の削 減

プ ロ セ ッ サ ベ ー ス の 設 計 に お い て , 最 も 無 駄 な サ イ ク ル は キ ャ ッ シ ュ ミ ス や パ イ プ ラ イ ン ス ト ー ル に 起 因 す る 計 算 と は 直 接 関 係 し な い サ イ ク ル で あ る . 命 令 や デ ー タ の メ モ リ 上 で の 配 置 を 工 夫 し , キ ャ ッ シ ュ ミ ス を 減 ら す 手 法 が 種 々 提 案 さ れ て い る . こ の 他 , キ ャ ッ シ ュ メ モ リ の ラ イ ン サ イ ズ を 動 的 に 制 御 し て キ ャ ッ シ ュ ミ ス を 削 減 す る 方 法 , ス ト ー ル の 多 い プ ロ グ ラ ム に 対 し て 命 令 パ イ プ ラ イ ン の 段 数 を 動 的 に 削 減 す る 方 法 な ど も 検 討 さ れ て い る . ア ル ゴ リ ズ ム の 改 良 は , ク ロ ッ ク サ イ ク ル 数 の 削 減 の 王 道 で は あ る が , ア ル ゴ リ ズ ム の 変 更 に と も な う 動 作 検 証 や 周 辺 回 路 へ の 影 響 等 附 随 す る 問 題 も 発 生 す る . さ ら に , 画 像 処 理 や 音 声 処 理 に お い て は , 最 終 的 に 必 要 と さ れ る 画 像 や 音 声 の 品 質 に 応 じ て 省 略 で き る 演 算 を 削 除 し て ク ロ ッ ク サ イ ク ル 数 を 削 減 す る よ う な 方 法 も 考 え ら れ る . 情 報 の 品 質 と 消 費 エ ネ ル ギ ー の ト レ ー ド オ フ を 考 え たQuality Driven Design の 手 法 も 提 案 さ れ て い る[10][11].

4. デ ー タ パ ス 幅 を パ ラ メ ー タ と す る 消 費 エ ネ

ル ギ ー 最 小 化 設 計 手 法

シ ス テ ム 内 の バ ス や 演 算 器 の ビ ッ ト 幅 で あ る デ ー タ パ ス 幅 は ,シ ス テ ム の 規 模 や 消 費 電 力( エ ネ ル ギ ー ) に 大 き な 影 響 を 与 え る . ハ ー ド ウ ェ ア 設 計 は , 従 来 の 設 計 に お い て も 設 計 者 は デ ー タ パ ス 幅 に 注 意 を 払 っ て 設 計 を 行 っ て き て い る . シ ス テ ム 内 で 実 行 さ れ る 処 理 で 必 要 と さ れ る デ ー タ パ ス 幅 を 注 意 深 く 調 べ て , 設 計 者 は レ ジ ス タ や 演 算 器 の ビ ッ ト 幅 を チ ッ プ 面 積 や 消 費 電 力 を 最 小 化 す る よ う に 決 定 し て い る . プ ロ セ ッ サ を 利 用 す る シ ス テ ム 設 計 で は , 各 プ ロ グ ラ ム に 対 し て デ ー タ パ ス 幅 を プ ロ グ ラ マ が 制 御 す る こ と は 難 し い . シ ス テ ム の デ ー タ パ ス 幅 は , シ ス テ ム 設 計 者 が プ ロ セ ッ サ を 選 択 す る 時 点 で 固 定 さ れ て し ま う . 一 方 , 各 応 用 は 入 力 や 出 力 あ る い は ア ル ゴ リ ズ ム に よ っ て そ れ ぞ れ 異 な っ た 計 算 精 度 を 必 要 と し , 必 要 と な る デ ー タ パ ス 幅 は 必 ず し も 選 択 さ れ た プ ロ セ ッ サ の デ ー タ パ ス 幅 と 一 致 す る と い う 保 証 は 無 い . 例 と し て MPEG-2 ビ デ オ 復 号 器 の C プ ロ グ ラ ム の 中 に 現 れ る 変 数 を そ れ ら が 必 要 と す る ビ ッ ト 幅 ご と に 数 え 上 げ た 結 果 を 示 す . プ ロ グ ラ ム は C 言 語 で 記 述 さ れ た 約 6000 行 の プ ロ グ ラ ム で ,384 個 の 変 数 が int 型 と し て 宣 言 さ れ て い る .こ の う ち ,50 個 の 変 数 は フ ラ グ と し て 用 い ら れ て お り , 1 ビ ッ ト の 情 報 し か 保 持 し な い .384 個 の 32 ビ ッ ト で 宣 言 さ れ た 変 数 の う ち ,わ ず か 35% の ビ ッ ト だ け が 実 際 の 計 算 で 用 い ら れ る .短 い ビ ッ ト 幅 の 情 報 し か 入 ら な い 変 数 に 長 い ビ ッ ト 幅 の レ ジ ス タ を 割 り 当 て る こ と は , 計 算 の 中 で 無 駄 な 電 力 消 費 を 引 き 起 こ す 原 因 を 作 る こ と に な る . シ ス テ ム の デ ー タ パ ス 幅 は , デ ー タ パ ス 上 の 回 路 や メ モ リ の 面 積 に 大 き な 影 響 を 与 え る [12][13]. 面 積 が 大 き く な る と 回 路 内 の 配 線 の 容 量 が 大 き く な り , 動 的 な 消 費 電 力 に 影 響 を 与 え る . プ ロ セ ッ サ ベ ー ス の シ ス テ ム 設 計 に お い て は , デ ー タ パ ス 幅 は シ ス テ ム 設 計 者 が 決 定 す る こ と に な る . プ ロ セ ッ サ の 面 積 は , デ ー タ パ ス 幅 に ほ ぼ 線 形 に 比 例 す る . し か し , デ ー タ や プ ロ グ ラ ム を 格 納 す る メ モ リ の 面 積 は 必 ず し も デ ー タ パ ス 幅 に 対 し て 単 調 な 関 係 を 持 つ わ け で は 無 い .こ の た め , メ モ リ の 消 費 電 力 も デ ー タ パ ス 幅 に 対 し て 単 調 な 関 係 に は な ら な い [12]. 一 般 に , 計 算 の 精 度 を 一 定 に 保 ち な が ら デ ー タ パ ス 幅 を 削 減 す る と , 1 つ の 命 令 を 多 倍 長 演 算 命 令 と し て 実 現 す る 必 要 が あ る た め , プ ロ セ ッ サ の サ イ ク ル 数 が 増 加 し ,プ ロ グ ラ ム 中 の 命 令 の 数 も 増 加 す る .32 ビ ッ ト の 精 度 を 必 要 と す る デ ー タ に 対 す る 演 算 は ,32 ビ ッ ト 幅 の デ ー タ パ ス を 持 つ プ ロ セ ッ サ で は 1 命 令 で す む が ,16 ビ ッ ト 幅 の デ ー タ パ ス を 持 つ プ ロ セ ッ サ で は 2 命 令 を 要 す る . デ ー タ パ ス 幅 が 短 く な る と , 多 倍 長 演 算 命 令 が 増 加 す る の で プ ロ グ ラ ム 実 行 時 の 命 令 サ イ ク ル 数 は 増 加 す る . す な わ ち , ク ロ ッ ク 周 波 数 が 同 じ で あ れ ば , 性 能 は 悪 く な る . 例 え ば , 次 の nビ ッ ト 精 度 の 演 算 を 考 え る . int x, y, z; /* n bits */ z = x + y も し , デ ー タ パ ス 幅 mが n/2 ≤ m < n で あ れ ば , こ の 演 算 は 次 の よ う に 行 わ れ な け れ ば な ら な い . int x, y, z; /* n bits */

(5)

z_high = x_high + y_high + carry /* m bits */ こ の よ う に , 計 算 精 度 を 保 つ た め に は , デ ー タ パ ス 幅 が 減 少 し た 時 に は 命 令 を 増 加 さ せ る 必 要 が あ る . 2 命 令 を 使 う と , デ ー タ パ ス は 2 回 利 用 さ れ る か ら , 消 費 さ れ る エ ネ ル ギ ー は 増 加 す る 可 能 性 が あ る . す な わ ち , 1 サ イ ク ル 当 た り の エ ネ ル ギ ー 消 費 ( 消 費 電 力 す な わ ち 単 位 時 間 当 た り の エ ネ ル ギ ー 消 費 )が 減 っ て も , 処 理 全 体 を と お し て 消 費 さ れ る エ ネ ル ギ ー の 総 量 が 減 少 す る 保 証 は 無 い . 携 帯 機 器 な ど の バ ッ テ リ ー 寿 命 を 議 論 す る 場 合 に は , 1 命 令 サ イ ク ル あ た り の 消 費 電 力 を 議 論 す る よ り , 処 理 全 体 の エ ネ ル ギ ー 消 費 を 議 論 す る こ と が 重 要 で あ る . プ ロ セ ッ サ ベ ー ス シ ス テ ム に 対 す る デ ー タ パ ス 最 適 化 に よ る エ ネ ル ギ ー 最 小 化 問 題 は 次 の よ う に 定 義 さ れ る . エ ネ ル ギ ー 最 小 化 問 題 与 え ら れ た プ ロ グ ラ ム と 入 力 デ ー タ 集 合 に 対 し , 与 え ら れ た プ ロ グ ラ ム が 与 え ら れ た 入 力 デ ー タ を 処 理 す る の に 必 要 な 消 費 エ ネ ル ギ ー を 最 小 化 す る デ ー タ パ ス 幅 を 求 め よ . 1 ) 動 的 な デ ー タ パ ス 幅 最 適 化 プ ロ セ ッ サ ベ ー ス シ ス テ ム は 多 様 な ビ ッ ト 幅 の デ ー タ を 取 り 扱 う . こ れ に 対 し , シ ス テ ム の デ ー タ パ ス 幅 を 固 定 し て , 消 費 エ ネ ル ギ ー の 最 小 化 を 図 る の は , 一 般 的 に い っ て 無 理 が あ る . で き れ ば , 動 的 に デ ー タ パ ス 幅 を 制 御 で き る こ と が 望 ま し い . 使 わ な い と 分 か っ て い る デ ー タ パ ス の 部 分 を 電 気 的 に 停 止 し た 状 態 に す る こ と で , 無 駄 な ス イ ッ チ ン グ に よ る 電 力 消 費 を 削 減 す る こ と が 可 能 で あ る [3].例 え ば プ ロ セ ッ サ の 命 令 セ ッ ト に 32 ビ ッ ト 命 令 と 8 ビ ッ ト 命 令 を 用 意 し ,8 ビ ッ ト 以 下 の デ ー タ に 対 し て は ,8 ビ ッ ト 命 令 を 用 い て , 上 位 24 ビ ッ ト は ス イ ッ チ ン グ し な い よ う に す る 手 法 が 考 え ら れ る . 以 下 の よ う な 3 つ の デ ー タ が 順 次 転 送 さ れ る 場 合 に を 考 え る . A 1100 1101 0010 1010 0000 0101 0011 0001 B 0000 0000 0000 0000 0000 0000 1011 0101 C 0101 1001 0000 1110 0110 0111 1010 1110 こ の 場 合 , 通 常 の デ ー タ 転 送 路 で は , ス イ ッ チ ン グ が 28 回 発 生 す る .し か し ,上 記 の よ う に 2 種 類 の 命 令 セ ッ ト を 用 意 す る 手 法 を 使 え ば ,B の 上 位 24 ビ ッ ト を 変 化 さ せ な い こ と が で き る . A 1100 1101 0010 1010 0000 0101 0011 0001 B 1100 1101 0010 1010 0000 0101 1011 0101 C 0101 1001 0000 1110 0110 0111 1010 1110 こ れ に よ っ て , 全 体 の ス イ ッ チ ン グ 回 数 を 28 回 か ら 14 回 へ 削 減 す る こ と が で き る . 8 ビ ッ ト と 32 ビ ッ ト の 命 令 セ ッ ト を 持 つ 簡 単 な RISC プ ロ セ ッ サ に よ る 実 験 で は ,Unix の SPLIT と SORT の プ ロ グ ラ ム に 対 し , そ れ ぞ れ 16% と 28% の エ ネ ル ギ ー 削 減 効 果 が あ る こ と が 報 告 さ れ て い る . 命 令 セ ッ ト の 拡 張 に 伴 う 面 積 の 増 加 は 10% 以 下 で あ っ た . 動 的 な デ ー タ パ ス 幅 最 適 化 に は , こ の 他 に も い ろ い ろ な 方 法 が 考 え ら れ る . 今 後 の 研 究 が 期 待 さ れ る . 2 ) 有 効 ビ ッ ト 幅 解 析 デ ー タ パ ス 幅 の 最 適 化 に お い て , プ ロ グ ラ ム に 含 ま れ る 各 変 数 が そ れ ぞ れ ど れ だ け の ビ ッ ト 幅 の 計 算 を 要 求 す る か を 知 る こ と は 重 要 で あ る . 一 般 に 使 わ れ て い る プ ロ グ ラ ミ ン グ 言 語 は , 各 変 数 が 必 要 と す る ビ ッ ト 幅 を 細 か く 指 定 す る 仕 組 み を 持 っ て お ら ず , プ ロ グ ラ マ も ビ ッ ト 幅 に 関 し て は , デ ー タ 型 の 選 択 以 外 は 特 に 注 意 を 払 わ な い こ と が 多 い . プ ロ グ ラ マ に , プ ロ グ ラ ム を 作 成 す る 時 か ら ビ ッ ト 幅 の 情 報 を 管 理 し て プ ロ グ ラ ム の 付 加 情 報 と す る こ と を 要 求 す る こ と は 現 実 的 で な い . そ こ で , 既 存 の プ ロ グ ラ ム を 解 析 し て 各 変 数 が 必 要 と す る ビ ッ ト 幅 を 抽 出 す る 技 術( ビ ッ ト 幅 解 析 ) が 必 要 と な る . ビ ッ ト 幅 解 析 は , 与 え ら れ た プ ロ グ ラ ム に 対 し , プ ロ グ ラ ム へ の 入 力 の 定 義 域 と プ ロ グ ラ ム の 出 力 と し て 要 求 さ れ る 計 算 結 果 の 精 度 を 手 が か り に , プ ロ グ ラ ム 中 の 各 変 数 が 必 要 と す る ビ ッ ト 幅 を 計 算 す る 技 術 で あ る . ハ ー ド ウ ェ ア 設 計 お よ び コ ン パ イ ラ の 分 野 で い く つ か の ビ ッ ト 幅 解 析 の 技 術 が 開 発 さ れ て い る . ビ ッ ト 幅 解 析 技 術 に は 大 き く わ け て 2 つ の ア プ ロ ー チ が あ る . 一 つ は , シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 技 術 を 用 い て 実 際 に プ ロ グ ラ ム を 実 行 し , 各 変 数 の 利 用 さ れ る 状 況 を モ ニ タ す る も の で , 動 的 解 析 と 呼 ば れ る . も う 一 つ は , 形 式 的 検 証 や シ ン ボ リ ッ ク シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 手 法 を 利 用 し て 各 変 数 の 値 域 の 理 論 的 な 上 下 限 を 求 め る 方 法 で , 静 的 解 析 と 呼 ば れ る . 動 的 解 析 は , 比 較 的 高 速 に 実 行 で き る が , 対 象 と す る 入 力 デ ー タ に 対 し て し か 結 果 が 保 証 さ れ な い た め , 完 全 で は 無 い . 一 方 , 静 的 解 析 は 完 全 性 は 保 証 さ れ る が , 計 算 時 間 が か か っ た り , 極 め て 悲 観 的 な 値 し か 得 ら れ な い こ と が 多 い . 静 的 解 析 は , 下 記 の よ う に 行 わ れ る . 与 え ら れ た 入 力 の 定 義 域 か ら , プ ロ グ ラ ム の 各 命 令 ご と に そ の 代 入 先 の 変 数 の 値 域 を 割 り 出 し て い く . ル ー プ 回 数 が 限 定 さ れ な い よ う な ル ー プ が あ る と , そ の 解 析 精 度 は 一 般 に 悪 く な る . ま た , 出 力 が 要 求 す る 値 域 の 方 か ら , 変 数 の ビ ッ ト 幅 を 後 ろ か ら さ か の ぼ る よ う に 解 析 す る 方 法 も あ り , 両 者 を 組 み 合 わ せ る こ と で , よ り 精 度 の 良 い 解 析 結 果 を 得 る こ と が で き る . 例 え ば ,z = x + y と い う 加 算 命 令 に 対 し ,x と y の 定 義 域 が そ れ ぞ れ [0, 2000] と [30, 500]と し た 場 合 , 出 力 z の 値 域 は [30,

(6)

2500]と 判 断 す る こ と が で き る . 動 的 解 析 は , 画 像 処 理 の よ う な 場 合 に 標 準 的 な 入 力 デ ー タ や , 定 義 域 の 中 で 最 も 極 端 な 値 を と る コ ー ナ ー デ ー タ を 入 力 と し て 与 え て シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 い , 各 変 数 の ビ ッ ト 幅 を 解 析 す る . 動 的 解 析 と 静 的 解 析 を う ま く 組 み 合 わ せ て , 信 頼 性 の 高 い 精 度 良 い ビ ッ ト 幅 解 析 を 行 う 技 術 が 重 要 に な る . 3 ) ソ フ ト コ ア プ ロ セ ッ サ 上 の デ ー タ パ ス 幅 最 適 化 ソ フ ト コ ア プ ロ セ ッ サ は , デ ー タ パ ス 幅 も パ ラ メ ー タ 化 で き る RTL レ ベ ル の プ ロ セ ッ サ コ ア で あ り , プ ロ セ ッ サ ベ ー ス シ ス テ ム の デ ー タ パ ス 幅 最 適 化 に 利 用 で き る . こ こ で は , ソ フ ト コ ア プ ロ セ ッ サ の プ ロ ト タ イ プ で あ る Bung DLX を 用 い た 設 計 環 境 と 実 験 結 果 を 報 告 す る . Bung-DLX は DLX RISC ア ー キ テ ク チ ャ を 基 本 と し た パ イ プ ラ イ ン 機 構 を 持 た な い プ ロ セ ッ サ で あ る . 命 令 数 は 72 命 令 で , 命 令 長 は 32 ビ ッ ト で あ る . 基 本 記 述 は 32 ビ ッ ト の デ ー タ パ ス 幅 を 持 ち , 32 本 の 汎 用 レ ジ ス タ を 持 っ て い る .レ ジ ス タ 数 や デ ー タ パ ス 幅 は , 設 計 パ ラ メ ー タ と し て ユ ー ザ ー に 解 放 さ れ て お り , カ ス タ マ イ ズ 時 に 変 更 が 可 能 で あ る . プ ロ セ ッ サ は , 約 7000 行 の VHDL 記 述 で 与 え ら れ て い る . 基 本 記 述 の 論 理 合 成 結 果 は 23,282 ゲ ー ト で あ る [14]. ソ フ ト コ ア プ ロ セ ッ サ 上 で 動 作 す る プ ロ グ ラ ム は , ビ ッ ト 幅 解 析 を 終 え た プ ロ グ ラ ム で , 各 変 数 の ビ ッ ト 幅 が 既 知 と な っ て い る . こ れ ら の ビ ッ ト 幅 情 報 を 陽 に プ ロ グ ラ ム 内 に 記 述 す る た め に , C 言 語 を 拡 張 し た Valen-C (Variable Length C) を 開 発 し た . さ ら に , Valen-C で 記 述 さ れ た プ ロ グ ラ ム を 計 算 精 度 を 落 と す こ と 無 く デ ー タ パ ス 幅 の 異 な る プ ロ セ ッ サ の オ ブ ジ ェ ク ト コ ー ド へ 変 換 す る リ タ ー ゲ ッ タ ブ ル コ ン パ イ ラ も 開 発 し た . こ の よ う な 設 計 環 境 の 下 で ,Lempel-Ziv デ ー タ 圧 縮 / 伸 長 器 に 関 す る デ ー タ パ ス 幅 を 変 化 さ せ た 場 合 の 設 計 例 を 図 1 に 示 す . 図 1 . Lempel-Ziv デ ー タ 圧 縮 / 伸 長 器 に 関 す る

デ ー タ パ ス 幅 最 適 化 例

5. お わ り に

発 熱 や パ ッ ケ ー ジ あ る い は 携 帯 情 報 端 末 と し て の 商 品 価 値 等 低 消 費 エ ネ ル ギ ー 化 が シ ス テ ム LSI の コ ス ト や 価 値 に 大 き な 影 響 を 与 え て い る . 従 来 の 性 能 や チ ッ プ 面 積 を 重 視 し た シ ス テ ム 設 計 か ら 電 力 や エ ネ ル ギ ー を 重 視 し た 設 計 へ の 移 行 が 要 求 さ れ る . ソ フ ト ウ ェ ア や ア ー キ テ ク チ ャ も 含 め た 統 合 的 な 取 り 組 み が 必 要 と な る .

[1] M. Pedram and J. Rabaey, ed., : Power Aware Design Methodologies, Kluwer Academic Publishers, Boston, 2002.

[2] H. Yasuura and T. Ishihara, "System LSI Design Methods for Low Power LSIs,'' IEICE Trans. Electronics, vol. E83-C, no. 2, pp. 143-152, Feb. 2000.

[3] T. Kuroda, "Low-Power CMOS Design", the Journal of the IEICE, vol.81, no.11, pp.1144-1149, Nov. 1998 , (in Japanese).

[4] L. Benini, A. Bogliolo, and G. de Micheli, "A Survey of design techniques for System-Level Dynamic Power Management", IEEE Trans. on VLSI Systems, vol.8, no.3, pp299-316, June 2000.

[5] T. Okuma, H. Yasuura, and T. Ishihara, "Software energy reduction techniques for variable-voltage processors," IEEE Design & Test of Computers vol.18, no.2 , pp.31-41, March/April 2001.

[6] http://www.cse.psu./~mji [7] http://ee.ucla.edu/~islped

[8] T. Ishihara and H. Yasuura, ``Programmable Power Management Architecture for Power Reduction,'' IEICE Trans. on Electronics, vol. E81-C no. 9, pp.1473-1480, September 1998.

[9] Y. Cao and H. Yasuura ``A System-level Energy Minimization Using Datapath Optimization'', International Symposium on Low Power Electronics and Design, August 2001.

[10] C.N. Taylor, S. Dey, and D. Panigrahi, ``Energy/Latency/Image Quality Tradeoffs in Enabling Mobile Multimedia Communication'', Proc. of Software Radio: Technologies and Services, Enrico Del Re, Springer Verlag Ltd., January 2001. [11] Y. Cao and H. Yasuura, ``Video Quality Modeling for

Quality-driven Design'', the 10th Workshop on System and System Integration of Mixed Technologies (SASIMI 2001), Oct. 2001.

[12] B. Shackleford, et al, ``Memory-CPU Size Optimization for Embedded system Designs,'' Proc. of 34th Design Automation Conference (34th DAC), June 1997.

[13] S. Mahlke, R. Ravindran, M. Schlansker, R. Schreiber, and T. Sherwood, ``Bitwidth Cognizant Architecture Synthesis of Custom Hardware Accelerators,'' IEEE Trans. CAD, vol. 20, no. 11, pp. 1355--1371, Nov. 2001.

[14] F. N. Eko, et.al., ``Soft-Core Processor Architecture for Embedded System Design,'' IEICE Trans. Electronics, vol. E81-C, no. 9, 1416-1423, Sep. 1998.

(7)

参照

関連したドキュメント

〃o''7,-種のみ’であり、‘分類に大きな問題の無い,グループとして見なされてきた二と力判った。しかし,半

  まず適当に道を書いてみて( guess )、それ がオイラー回路になっているかどうか確かめ る( check

ポンプの回転方向が逆である 回転部分が片当たりしている 回転部分に異物がかみ込んでいる

であり、 今日 までの日 本の 民族精神 の形 成におい て大

子どもたちは、全5回のプログラムで学習したこと を思い出しながら、 「昔の人は霧ヶ峰に何をしにきてい

はじめに

今回、新たな制度ができることをきっかけに、ステークホルダー別に寄せられている声を分析

るものの、およそ 1:1 の関係が得られた。冬季には TEOM の値はやや小さくなる傾 向にあった。これは SHARP