H19 年度
3年生講義 電気機器学基礎
補足プリントおよび演習問題
東京大学工学部電気工学科准教授
古関 隆章
Version: 0:00 JST 27
th
July 2007
重要!:平成
19 年度期末テスト直前対策版
ページの復旧が遅くなってしまいすみませんでした。
講義ノートとしてはついに最後まで完成度が低いですが、試験期間に入って「格調
高い」大量の資料を見せられても学生としては迷惑なだけだとの声にお答えして、
詳しい式による講義の補足を個々の節では行わず、主要な流れがつかめるような
キーワードとノートの章立ての記述にとどめ、本年度の期末テストの準備として、ど
こを重点的に学べばよいかを赤で示すことにしました。
電気機器学基礎 講義補足資料 (2007.07 版)
[0] 電気機器学基礎: 講義内容
(1) 2007/04/09 はじめに: 電気-機械エネルギー変換、電気機器の種類と歴史、エレクトロニクスとパワー、電気機 械エネルギー変換技術の社会的役割とその重要性 (2) 2007/04/16 電磁気と電気機器 多相交流、回転磁界の数学的表現方法、力とトルク、物理の単位 (3) 2007/04/23 電気機械エネルギー変換の基礎 ホモポーラマシン、アンペールの法則と磁気回路、誘導の法則の適用の具体例 (4) 2007/05/07 交流機の基礎 I 極巻線による回転磁界の発生、交流電圧発生の仕組み、空間的な基本波に基づく表現と空間高 調波 (5) 2007/05/14 交流機の基礎 II、同期機入門 交流巻線/多相交流概論、回転磁界の発生原理、等価電流シートを用いたモデリング (6) 2007/05/21 同期発電機 同期発電機の原理、構造と電力システム (7) 2007/05/28 同期発電機 主磁束と漏れ磁束の等価回路表現、座標変換 (8) 2007/06/04 同期発電機 空間ベクトル表現、同期電動機の種類とその特長、v 特性と同期調相機 (9) 2007/06/11 同期機応用 特性のモデリングと測定法、トルクの発生原理、、発電機の並行運転と電力系統、永久磁石同 期電動機とサーボ制御 (10) 2007/06/18 誘導電動機/ 避難訓練 誘導機の原理と特長、誘導機の構成、変圧器と誘導電動機 誘導電動機の原理と特性表現法(=T型、π 型等価回路)、 (11) 2007/06/25 モデル同定のための測定法、円線図を用いた特性の表現、誘導機駆動におけるエネルギーの 流れ、空間高調波とゲルゲス現象などの諸注意/小電力誘導機 (12) 2007/07/02 パワーエレクトロニクス入門 Iパワー素子、信号処理とパワーのエレクトロニクスの相違、DC/DC, AC/DC, AC/AC, DC/AC 変換, 自己能力を持たない素子と転流回路、高調波問題と解析法、自己消弧能力を持つ素子と PWM, AC モータのインバータによる(誘導機の)可変速駆動, サーボモータ (13) 2007/07/09 直流機その他 直流電動機と発電機、直流機の種類と特性の比較、電動機駆動制御パワーエレクトロニクス入 門II (14) 2007/07/30 期末テスト
[1] はじめに
: 電気機械の誕生から現在の産業応用における重要な地位を占めるに至った経緯、電磁気学の 基礎と電気機器学[2] 交流巻線と交流機
2.1 (磁)極を用いた交流磁界の生成
二極機モデル:電気角と空間的な角度が一致---基本原理の説明はすべて二極機モデル 固定子座標系で角度 s= P xs を定義する。ポールピッチ P= Di 2 p 、また、同様にして回 転子座標系で見た角度をN 極を基準に r としてあらわす。 B1r= B cos r 磁極が角度 だけ回転すると、固定子座標系では だけ、磁束密度が空間的にシフトす る。今、磁極が一定の角速度 だけ回転すると、電気角では極対数 p 倍となるので、 r=s–=s– pt B1s,t= B coss– pt (回転磁界の基本式)
2.2 交流電圧の発生
前述の磁極が回転する系の固定子に1 対のコイルを巻いてみる。 コイルに鎖交する磁束は mt=∫
− 2 2 B1s, tlp ds = Bp [
sin 2– p t−sin − 2– p t]
= mcos p t− m は磁極の励磁磁束と同じ値 m=2 Bl p誘導電圧は us=ucoil=wcoil ddt =−m p wcoilm sin pt−
この誘導電圧の各周波数 s は s= p 周波数 fs= p n すなわち、誘導電圧の周波数は回転数の p 倍 ucoil= ws
2wcoilm ucoil=−
2 Uspsinst− コイル1つでは空間的な動き(回転磁界、進行磁界)は作れない。 多相交流:三相、直交二相などが必要:電気機械の理論では一般的に三相を取り上げる。 三相巻き線の空間的配置1=0 ucoil–
2Ucoilsinst 2=2
3 ucoil=−
2 Ucoilsinst – 2 3 3=−2
3 ucoil=−
2Ucoilsinst 2 32.3 交流巻き線:多層巻線 特に三相巻線
一層巻 二層巻 スロット数 Ns 極数 2 p 相 スロットの電気角 slot= p 2 Ns = msqs (たとえば qs=2 として Ns=24 となったとき p よりも長く巻く方法も短く巻く方法もある。) 巻線係数: 集中巻 <=> 分布巻/ 全節巻 <=> 短節巻 空間的なスロット位置の違いにより、回転磁界による導体への誘導電圧はスロットごとに slot ずつ位相がずれる。各々のコイルの誘導電圧 Ucoil の一群の総和(グループの電圧) Ugr は Ugr≤qsUcoil となる。すなわち、位相差の分だけ電圧が小さくなる。この効果を表す補正係数を分布巻き係数という。 sz= Ugr qsUcoil= sinqsslot 2 qssinslot2 一層巻きの誘導起電力 Ugr=qsszUcoil=s
2qswcoilszm 二層巻き: コイル幅 w をポールピッチ p より小さくとる場合 短節巻係数 ss=sin w p 2 空間高調波の低減と巻線係数: 分布巻係数*短節巻係数 巻線係数 xis=szss を用いて、 コイル群の数は二層巻きの場合極数と同じ 2p 2p ごとに同じ電圧が表れる。1つの相で並列結線されるコイル群の数を as として、 1 相あたり直列結線されるのコイルの巻数は ws=qswcoil 2p as これより二層巻きの誘導起電力 Uqs=s
2wssm 主磁束の電機子巻線に対する鎖交分は m=wssm このように、この巻き線係数は、「現実的な磁束の鎖交の不完全性を補正する」係数である。2.4 多相交流システム: 多相巻線
2.4.1 進行磁界発生原理
a) t1=0 のとき、 iU= IS iV= − IS 2 iW= − IS 2 b) St2= 3 のとき iU= IS 2 iV= IS 2 iW=− IS <==(これは 5/21 に説明した例)2.4.2 交流進行磁界の生成における等価電流シートモデル
磁気回路の電磁気的簡易計算と電気機器学を結びつける基礎的理論の部分(1) 等価電流シート Asxx=m xs mA1Us,t=− A1cos st sins= A1
A1Vs,t=− A1cosst−23sins−23 A1Ws, t=− A1cosst2 3sin s 2 3 これらを重ね合わせて As1s,t=A1Ust A1Vst A1Wst これより、 As=32 A1 となる:単相の振幅を表すベクトルの 1.5 倍の大きさのベクトルになる ことが重要。
2.4.3 回転磁界/進行磁界
磁気回路の電磁気的簡易計算と電気機器学を結びつける基礎的理論の部分(2) <磁界分布をある固定時刻で計算する具体例> 鉄心の透磁率 Fe は十分大きく、スロットや鉄心の磁気抵抗の影響を考慮し、等価ギャップ長 ' ' として実際の機械ギャップ長 よりも大きな値を置く。 たとえば、図の積分路(1)にアンペール則∮
H d s= ( は起磁力とする)より[
Hxs1 H x's1]
' '=
2slot11= zslot
2 I ただし、ここで、 zslot は1 スロットあたりの導体数とする。 H xs1=H x'1 なので、場所 xs1 における磁界の強さは、 Hxs1=zslot
2 I 2' ' 積分路(2)は 3 つのスロットを囲んでいるので Hxs2=3 H xs1 積分路(3)は 5 つのスロットを囲んでいるが、スロット 9 と 13 の起磁力は V 相および W 相に属し ているので、起磁力の算定としては半分になることに注意し、 Hxs3=4 H xs1 以下同様にして積分路(4) (5) についても同じ考え方を適用して Hxs4=5 H xs1 Hxs5=6 H xs1 この重ねあわせにより、「正弦波に近い」磁界分布 H xs が描かれる。 <一般的扱い>2.5 交流巻線の複素フェーザ表示(多相交流回路理論の復習)
2.5.1 時間に依存する諸量の空間ベクトル表示
三相を表記するための基本的な変換量 a=ej 2/ 3 a2=ej 4/3 iS=2 3
iUt aiVta 2i Wt
平面上で左周りの向きを正の回転方向と定義する この iS は計算上の複素量であり、実際の巻線電流の値の大きさはそれぞれの相の「軸」に対 する正射影で表される。すなわち、....2.5.2 場所に大きさが依存する量のベクトル表示
2.5.3 座標変換
α, β 座標(固定子座標系) x, y 座標(回転磁界座標系) d, q 座標(回転子座標系)2.6 交流巻線の電圧方程式と等価回路
3. 同期電動機
3.1 同期電動機の構成と種類
三相(多相)交流巻線: 電機子 ==>多くの場合固定子 界磁: 直流電磁石あるいは永久磁石 「磁石を持たない」もの リラクタンスモータ ==>多くの場合は回転子 大きな電気エネルギーのやり取りがあるのは、電機子巻線なので! 発電機運転と電動機運転 伝統的には圧倒的に発電機としての用途が多かった 近年では永久磁石形小形モータとしての市場が広がっている: 同期サーボ、PE と制御3.2 円筒機とその動作特性
3.2.1 電機子(固定子)
電機子電流により作成される二極機の磁束(H. Eckahrdt: Grundzuege der elektrischen Maschinen より抜粋)
3.2.2 界磁(回転子)巻線の配置と磁力線
3.2.1.2 固定子電流と磁界分布3.1.2.3 固定子および回転子起磁力の等価電流シート 3.1.2.4 空間ベクトル表現 固定子座標α、β 座標系上の空間複素ベクトル表現
3.2.2 電圧方程式
Us= RsIs j XsIs j XsmIsUP3.2.3 特性曲線
試験法との関係 3.2.3.1 無負荷運転特性 Usm=UsmI 'f 3.2.3.2. 短絡特性(短絡連続運転) Ishort= jUp Xd* Ishort= Uf ' 1sUsm=− j XsIshort= j XsmI'fIshort= j XsmI
最後の項は電機子反作用に関する項 等価回路と、その定数決定のための基本的測定法については、仁田本の 5.4.5 同期発電機の ベクトル図と等価回路、5.5.1 特性曲線の節を良く注意してみると良い。 3.2.3.3 調相運転: これについては仁田本の5.5.1 特性曲線の[5] 、5.8.4 [2]、5.8.6 の節を良く注意して読め。 6/4 の講義で扱った内容 3.2.3.4 系統に接続されている電動機/発電機 仁田本 5.4 節(発電機について)5.8.5 節(電動機について)
3.2.4 特性曲線
3.2.4.1 d-, q- 座標系における方程式 3.2.4.2 電力とトルク 無損失円筒機のトルク: Ti=msp s UsUp Xd sin 相差角の関数として表される 有効電力はトルクに回転速度(この場合 s )をかけたもの Tic=msp s UsUp Xd 定常的な安定運転のための臨界角は90 度 界磁電流が一定で負荷トルクが増えると、電機子反作用で鎖交磁束が小さくなる:臨界角も90 度よりも小さくなる 無効電力は複素電力の式より Q=ms[
−UsUp Xd cos Us 2 Xd]
==> この形が円線図へ3.2.4.3 電流円線図 3.2.4.4 動作点よる電力の推移 3.2.4.5 V 特性 これについては仁田本の5.8.4 [2]節を良く注意して読め。 6/4 の講義で扱った内容 3.2.4.6 単独運転 3.2.4.7 単位法
3.3 突極機の特性
突極性: d 軸インピーダンスと q 軸インピーダンスが基本的に異なる 伝統的な突極機 d 軸リアクタンス> q軸リアクタンス 界磁電流ゼロでも突極性トルクがある==> リラクタンスモータ 永久磁石形モータ: d 軸リアクタンス < q軸リアクタンス 希土類永久磁石そのものは「強磁性」ではないため!! 突極機の特性 d-軸電流 Id=RSUdXdUq−Up RS2 Xd Xq q-軸電流 Iq=−XdUdRS
Uq−UP
RS2 XdXq (内部)トルク Ti=mSp s[
USUP Xd sin US2 2
1 Xq− 1Xd
sin 2]
右辺第一項は円筒機と同じ、右辺第二項がリラクタンストルク 突極機の円線図、過渡現象などについてはここでは省略 過渡現象: 発電機の並列運転 ----投入時には同期検定器で同期投入をする! (大型の発電機では特に重要) 学生実験時の2台並列運転: 動作点の設定を誤って、片方が「電動機運転」となり足を引っ張らぬように注意すること! 6/11 の講義ではここまでを扱った!4. 誘導電動機
4.1 構成と概要
簡単な構造、保守の手間がかからない構造:重要な応用上の地位 1kW 以下の容量の家電から工作機械/ 20MW の揚水発電所のポンプ始動まで 一方で、目方で売る世界:モータそのものの付加価値はビジネスの中でどこに意識されているか?
4.2 誘導機とその電流、磁束
かご形/巻線形:極数が固定子側と同一であることが必要(相数は必ずしも一致していなくても 良い) 回転子がかご形の時:バーの数が固定子のスロットの倍数にならないようにする(有害な高調波 の影響を回避するため) 誘導電圧調整器は、変圧器と誘導機の中間に位置づけられるもの4.3 誘導機の等価回路
対称な多層巻き線を持つ機械が対称性のある多相交流で励磁されていることを想定: 三相Y 結線を考え、端子と中性点の間の量を考える。 T 型等価回路/π 型等価回路: 一次側は、変圧器、同期機の等価回路と同じ形 これに二次回路の応答を付け加える。(仁田本 3.2.3 節) 固定子側から見た回転子側の影響: ギャップ磁束を介しての起電力という形でしか見えない。----したがって、勝手に固定子と同じ極数、相数を持つ巻数比 a をもつ回転子巻線を仮定しても 一般性を失わない。さらに、この a が何であるかも知る必要がない。二次回路は短絡されてい る。 リアクタンスは回転子周波数∝すべり周波数に比例する形で表現し X2 は固定子周波数 s で一意に決まる表現にして二次回路の等価回路を準備する。(6/18 の講義で説明したとお り!) 固定子からは磁束の波/起磁力分布の波は同期速度で動いているように見える<==> 同じ磁束 の波は回転子上ではすべり周波数の回転子電圧を誘導している。固定子の巻き線と仮想回転 子巻き線は対応する(同じもの)としているため、回転子起電力の相対速度は磁束の波の速度の s 倍: は E2s=s E1 回転子起磁力は固定子電流の負荷電流成分 I2 の起磁力で相殺さ れると考えて、 I2s= I2 これらを辺辺割り算して、 E2s I2s= s E1 I2 = R2 j s X2 トルクの計算はギャップ磁束と起磁力の掛け算で行う。 回転子に働くトルク <==> 固定子に働くトルク: 作用・反作用の関係にある s E1 I2 = j X2 R2 s ==> E1= j X2 I2 R2 s I2 , R2 s =R2 1−s s R2 二次損失と、機械出力の分離 これより、固定子側から見た1相あたりの等価回路が教科書の通り完成する。4.3 等価回路に基づく解析
講義中に十分説明したので、ここで補うことは特にありません。基本的計算ですので、参考書なども用いてよく慣れておくのがいいと思います。実験レポートを 書く際に、計算機も使いながらきちんと自分で必要な計算をしてみるというのが、効率の良い勉 強法だと思います。
4.4 鳳テブナンの定理を用いたトルクと電力の計算
講義中に十分説明したので、ここで補うことは特にありません。 誘導機の等価回路は式で処理をするにはそれなりに複雑なので、うまい計算の「手抜き」の方法 を工夫する必要があります。このような考察から、「同期ワットのトルク」という考え方も出てくる点 に注意してください。4.5 誘導機の試験法
講義中に十分説明したので、ここで補うことは特にありません。 ● 直流試験(固定子抵抗を測定) ● 無負荷試験(定格電圧で空回りをさせる:二次側回路開放に近い状態の測定ができる) ● 拘束試験(静止した状態で回転子からの逆起電力のない状態で、定格電流程度が流れ るよう低い電圧で測定を行う。) 一次、二次のリアクタンスは経験値に基づき適当に割り 振る。 仁田本 3.2.4 をよく読め。4.7 円線図
講義中では簡単に本質のみに限って説明したので、詳細な図の書き方などは(推奨)参考書を見 て補ってください。しかし、現在では円線図の作図そのものの実務的な意味は薄れていますので、 すべりの変化に伴う動作点の変化の様子が直感的に理解できていれば、細かなことにこだわる 必要はありません。4.8 高潮波磁界と
始動
に関わる問題
ゲルゲス現象:始動の途中で空間高調波の影響で速度がトラップされて上がらなくなる==> すべ りの大きな状態で長時間大きな損失を出しながら動作するためモータが焼けてしまう! 空間高調波、トルク脈動を防ぐために、一次、二次スロット数の「素数」化、スキューなどの伝統 的技法が確立している。 始動に関して、仁田本3.4.2 節に解説されている比例推移特性を良く理解したうえで、3.8 に説 明されている指導法を良く学べ。4.9 誘導機の速度制御
これについてはパワエレの章でも扱う。古典的方法については関係メーカのホームページなどが 非常にわかりやすい解説を与えている。4.10 小さな容量単相誘導機
完全な単相巻き線による「交番磁界」では、始動トルクはゼロだが、どちらかに回り始めれば、正 転方向と逆転方向ではすべりが異なるので、推力を得ることはできる。 不完全でも良いので位相差を持つ2相モータとする。 くまとりコイルモータ(講義中に実物を回覧) コンデンサモータ(始動時だけ短時間コンデンサを用いるものと、常時用いるものとある)単相電源では、電力が電源周波数の2倍で脈動するので、トルクにも脈動が出る。 比較的大きなキャパシタを持つコンデンサモータでは、キャパシタに一時的にエネルギーを蓄え ることで、力率改善をするとともに、この半周期分の電力の平準化が可能なので、この同期周波 数の2倍の周波数成分を持つトルク脈動の悪影響を軽減できる。 以下のパワーエレクトロニクスについては、推奨参考書である仁田本では扱っていないので、比 較的詳細な記述をした。なお、この記述は オーム社 「 図解 電気の大百科 」 15 章より」 要約したものである。
5. パワーエレクトロニクス入門
5.1
パワーエレクトロニクスとは何か
?
パワーエレクトロニクス:明確な定義はない 1960 年代から使われる: 大きな電力を扱う電子回路技術 応用分野: 加熱、照明の制御、電気機械エネルギー変換、直流/交流の電力供給システムの制 御、誘導加熱、電気精錬、電力用アクティブフィルタ、(静止形)無効電力補償装置 身近な家電応用: インバータ蛍光灯、インバータエアコン 電力の利用形態: 50/60Hz でない周波数、可変周波数 ==> 与えられる電力と、われわれの持つ負荷の橋渡しをする技術 電力供給源: 商用系統(50Hz/60Hz 安定) バッテリ、太陽電池、燃料電池(直流) ディーゼル発電、風力発電、(交流だが周波数、電圧とも不安定?) ==> パワーエレクトロニクスを用いた商用のシステム、負荷との接続を可能にする 交流電動機の双方向の電気-機械エネルギー変換、可変速駆動には不可欠 半導体による スイッチング パワーエレクトロニクス装置の主要部分: 半導体のパワースイッチング素子の配列 個々の素子はコントロール用電子回路の指令に基づいて動作 半導体電力変換装置(コンバータ) 整流器(ac-to-dc converter) インバータ(dc-to-ac converter) チョッパ(dc-to-dc converter)サイクロコンバータ(ac-to-ac converter, direct frequency converter) これらの機能要素を組み合わせたコンバータ 電流/電圧をスイッチングにより「切り貼り」する なぜスイッチングか?:半導体素子の飽和領域(ON)とカットオフ領域(OFF)のみを用いる <=> 通常のアナログ信号増幅器では「線形領域」=中開き 状態を使用して出力電圧の制御をする ==>本質的エネルギー損失が素子内で発生 大電力ではこの電力損失は受け入れられない:変換効率を100%に近づけることが命! パワーエレクトロニクス:基本的にON と OFF 状態しか使わない! 理想的スイッチング素子: オン状態で電圧降下ゼロ
オフ状態で漏れ電流ゼロ 状態変化(ターンオン/ターンオフ)が瞬時に完了 ===> これがあれば原理的に損失はゼロ:効率 100%が実現 実際には、状態は連続/有限時間で変化: スイッチング損失がある 波形の切り貼り==> 原理的に電源側、負荷側双方に有害な高調波を発生してしまう。 半導体電力変換装置: 電動機駆動/ロボットハンドの制御の電源として使用するとき ==> 一種の「電力増幅器」として、ブロックダイヤグラムの中で扱う オン/オフ動作 : 高調波、無駄時間、非線形性 ----制御理論的扱いは複雑
5.2 パワーエレクトロニクスのあゆみ
電力変換の必要性 19C--20C 電力制御 変換方式 直流機、誘導機などの回転機の速度制御: 抵抗制御、極数切り替え、誘導電圧調整器、変圧器タップ切り替え+整流器、 レオナード法 (三菱電機:エレベータの資料より) 巻線形誘導電動機の二次電力制御(抵抗制御、セルビウス方式、クレーマ方式) セルビウス法 誘導電動機の速度制御(二次抵抗制御)でも発電機の速度制御と同様な問題(この場合には、速度が低い側で、抵抗が大->効 率低下)があります。この損失を有効利用しようと、二次抵抗の代わりに整流回路を付けて、直流モータを回し、その直流モータで 別の発電機を回して、電力として回収するのが セルビウス方式です クレーマ方式(制御整流器を用いる点で、すでに一種のパワエレ応用にはなっている) 巻線形誘導電動機と直流電動機とを機械的に直結し、電気的にはIM の2次出力を整流し、DM の入力とするようにする。このよ うな接続で運転するとDM の電機子(回転子)に電圧を誘起し、SR で整流された直流電圧との差電圧によって直流電流 Idc が 流れ、トルクが発生して回転が持続される。よって、DM の界磁電流を SCR で調整してやれば、電機子誘起電圧が変化するので IM の速度を制御することができる。その時生じる IM の2次出力は、直結された DM により機械的出力として返還される。 ==> パワエレの時代へ 直流電動機: DC チョッパ (界磁チョッパ、電機子チョッパ)、 サイリスタレオナード方式(制御整流器) 交流電動機1980 年代以降、サイクロコンバータ/インバータによる周波数制御が主 交流電動機は電動機の極数と、電源周波数で回転速度が決まる ==> 過去には電圧制御だけで回転速度を変えられる直流機(整流子機)が可変速駆動の中心 パワーエレクトロニクス+マイクロエレクトロニクス サイクロコンバータ/インバータ 1980 年代以降は交流機による可変速駆動が急速に広まっている。 パワーエレクトロニクス:素子の発達が大きな変化の契機に 1990 年 水銀整流器(ガラス管で作られた素子) WWII 金属管整流器、イグニトロン、サイラトロンなど 可飽和鉄心を用いた磁気増幅器、セレン整流器 (頑丈さ、信頼性) 1948 年 ベル研 ショックレーらによるトランジスタの発明 1956 年 ベル研 サイリスタ npnp 接合 シリコン制御整流素子(SCR) 1958 年 GE 社 商用のサイリスタを市場に供給 パワエレ時代の幕開け 電力用トランジスタ、サイリスタの分類
主な電力用素子
(電気学会:半導体電力変換回路より)(Bose: IEEE の特集より ) (東芝 古賀氏御提供の電鉄用 PE 関係資料より抜粋) ダイオード pn 接合: 整流作用を持つ 制御の機能はない サイリスタ:3つの接合から構成される半導体素子、オン・オフ動作ができる素子の総称 通常は、陽極(A アノード) 陰極(K カソード) ゲート電極(G)の 3 端子を持ち逆阻止機能を持つ 狭義の名称 ゲートからカソードにパルス上の電流を流すことによってオン状態になる、一度オン状態になると、 ゲート電流をゼロにしても負のパルスを加えてもオフ状態にすることはできない ターンオフは、外部の電源側あるいは負荷の電圧、あるいは「転流回路」と呼ばれる巧妙に工夫 された共振回路による過渡現象によって、AK 間に逆バイアスの条件が形成され、カソード側の 電圧がアノード側に対して高くなったときのみ可能となる ターンオフ動作: pnp 形および npn 形の接合を持つ二つのトランジスタの複合動作として説明さ れる。
ターンオン:アノード電圧、アノード電圧の変化率あるいは高温接合部への光照射により可能 ==> 光点弧形サイリスタは応用上重要 スナバ回路(素子にCR 回路+ダイオードを並列接続) <==SW 損失の主要な要素 素子を過渡的大電圧から保護 アノード電流の変化率を制限 アノードの電圧変化率を抑制 (一般用)サイリスタ: 商用周波数(ターンオフ時間の規定なし、交流制御、整流、 他励式インバータに用いられる) 高速サイリスタ: 高速(スイッチング)サイリスタ 400MHz 以下 ターンオフ時間の規定がある (転流回路を用いた)自励式インバータに用いられる 高周波サイリスタ: 1-20kHz 自励式インバータに用いられる トライアック(二方向導通形) ゲート補助転流ターンオフサイリスタ (GATT) ターンオフサイリスタ( GTO ) pnpn 構造をもち、小さな正のゲート電流パルスによるターンオフ能力を持つ。(ただし、ターン オフの電流ゲインは4-5 と小さいため、比較的大きなゲートドライブ回路を要する)。ターオンの 挙動は基本的にサイリスタと同じ、ターンオフの機構は複雑。大きなスナバ回路を要する、スナバ レス回路の研究開発もなされている。sw 周波数は通常 1-2kHz 以下に抑えられる。 静電誘導形サイリスタ( SIT h) 基本的にnormally-on の素子、on 状態での電圧降下は大きめ、sw 周波数、安全動作領域は どちらも大きい。 トランジスタ バイポーラトランジスタ 電流駆動形、電流増幅率は高くない:ダーリントン接続でゲインを稼ぐ 1200V 800A 程度までモジュール化 数KVA-500kVA, 数 kHz の sw-周波数の範囲で実用化が進んでいる 静電誘導形トランジスタ( SIT) MOS 形電界効果トランジスタ (MOSFET) デブレッション形、エンハンスメント形 電圧駆動形: ターンオン/ターンオフともに高速 sw 損失は小さいが、オン電圧降下が大きい 正の温度特性(並列化が容易) バイポーラのような熱への脆弱性がない 低電圧/低電力/高スイッチング周波数用途 IGBT (Insulated Gate Bipolar Transistor)
MOSFET とバイポーラトランジスタの良いところを併せ持つ素子 MOSFET よりも電流密度を高く取り小型化が可能 ゲート電流は小さくてすむ、高sw 周波数化が可能 1990 年代以降、産業界での応用が進み GTO を置き換える応用領域が 広がりつつある。 MCT (MOS 制御形サイリスタ ) サイリスタのようにゲートへの電圧パルスで導通状態に入り、MOS ゲートへの小さな パルスでオフする。ターンオフゲインは大きくスイッチング速度も大きい。 (あまり市場には出回っていない?)
5.3 各種の電力変換器
DC/DC 直流チョッパ、と直流間接変換器 AC/DC 整流器 DC/AC インバータ(負荷転流、強制転流、PWM) AC/AC 周波数同一:交流電力調整器 周波数変換:サイクロコンバータ(直接変換) インバータ(間接変換) 相数変換: サイクロコンバータ(直接変換) インバータ(間接変換) 位相制御形変換器: パワーエレクトロニクスの歴史の初期に登場 ダイオード/サイリスタ/トライアック: 自己消弧能力のない素子で構成 消弧は、外部の伝ある条件あるいは転流回路 一定の周波数の中での電圧調整を行う交流電力の調整器 周波数の変換を行うサイクロコンバータ (電気学会:半導体電力変換回路より) (電気学会:半導体電力変換回路より) 電流形と電圧形 フルブリッジ/ハーフブリッジ 混合ブリッジ PWM---パルス幅変調(Bose: IEEE の特集より ) パワーエレクトロニクスの簡単な一例 単相 ダイオード整流器と制御整流器 三相制御整流器 応用: 直流送電 (周波数変換所) 無停電電源 交流機 可変速制御 サーボドライブ(4 年生夏学期講義 堀:モーションコントロール) 誘導電動機のベクトル制御のブロック線図 (Bose: IEEE の特集より ) 電気鉄道、電気自動車、エレベータ: 典型的な可変速駆動の応用例 東海道新幹線 300 系の車上のインバータとモータのつなぎ (Bose: IEEE の特集より )
6. 直流機
----直流電動機と直流発電機
直流機の定常現象----すべての機器学の考え方の基本 仁田本でも詳細な亜t回
過渡現象: トルク制御、速度制御 feed back control の良い適用対象:
堀 モーションコントロール (4 年生夏学期講義) :ロボットなどの駆動の基礎
6.1 直流機の基本
仁田本4.1 節6.2 整流子の動作
仁田本4.2 節6.3 電気子反作用の影響
仁田本 4.4 節6.4 動作特性の定式化
特にすべての基本としての他励電動機、他励(=分巻)発電機 (仁田本 4.6.1 節 および 6.7.2 節を参照) 自励電動機/発電機 分巻界磁 直巻界磁 複巻界磁6.5 磁気回路の定式化
仁田本 4.3 節6.6 高度な制御: フィードバックによる過渡現象の制御:
トルク制御、速度制御、位置制御の可能性==> 堀 モーションコントロールの基礎古関隆章
電気機器学基礎(2007.05.28/ 06.04)演習問題
学生証番号 氏 名 [1] U 相 V 相 W 相 の巻線がそれぞれ自分の担当する位置に正弦波状の交番磁界を発生す るという仮定で、その三相巻線に2π/3 ずつ位相のずれた電流を流した結果作られる磁界を重ね 合わせると、進行磁界が得られることを、式で示せ。 [2] 同期機(円筒機)の定常状態における電圧方程式を反映した等価回路を示し、無負荷運転時 の電圧、電流の関係をベクトル図で示せ。それにより、界磁電流によって端子電圧と電流の位相 角を調整できることを説明し、同期調相機の機能を説明せよ。古関隆章
電気機器学基礎演習問題(2007.06.11 出題/07.30 提出)
学生証番号 氏 名 [1] 同期発電機(円筒機)の定常状態における等価回路を示し、その等価回路の定数を測定を通 じて定めるために必要な二つの基本的試験法と特性の計算法を説明せよ。 [2] 同期機(突極機)のトルクの式を示し、「リラクタンストルク」の存在に言及し、円筒機と特定の 異なる点を説明せよ。 [3] 同期電動機の始動方法を説明せよ。古関隆章
電気機器学基礎演習問題(2007.06.18 出題/07.30 提出)
学生証番号 氏 名 [1] 誘導電動機の一例を見て、特性計算を行ってみよう。今、3相の Y 結線の線間電圧 220V, 7. 5kW の 6 極誘導モータが、固定子から見た1相あたりの等価回路の定数として以下の値をもつ ものとする。 一次抵抗 R1=0.294 オーム、二次抵抗 R2=0.144 オーム、 一次漏リアクタンス X1=0.503 オーム、二次漏リアクタンス X2=0.209 オーム、 主リアクタンス X=13.25 オーム ただし、上記はT 型等価回路の定数であり、回路図との対応は 6/18 の講義で示した図に準拠す る。また、全ての摩擦力、風損、および鉄心で生じる損失は、電動機の負荷状態によらずほぼ 403W で一定であった。モータが低格電流、電圧で運転しており、すべりが12%であるときの、 速度、出力トルク、固定子電流(一次電流)、力率、および効率を、計算せよ。ただし、電源は周 波数60Hz の、ほぼ理想的な電圧源であり、この電源のインピーダンスの効果は無視してよいも のとする。古関隆章