平成 30 年 12 月吉日 福島県理学療法士会会員 各位 福 島 県 理 学 療 法 士 会 学術局長 佐藤竜太 福島県理学療法士会県北支部研修会のご案内 拝啓 厳寒の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、 厚くお礼申し上げます。 さて、このたび福島県理学療法士会県北支部研修会を下記の通り開催致します。今回 は国立精神・神経医療研究センター寄本恵輔先生をお招きし「神経筋疾患の呼吸理学療 法」についてご教授いただきます。 神経筋疾患の呼吸ケアについて急性期〜在宅管理ま で学べる貴重な機会となっております。お忙しい時期とは存じますが皆様お誘いあわせ の上ご参加ください。 敬具 記 1.開催日時:平成 31 年 1 月 20 日(日) (受付開始 9:30 開始 10:00 昼食 12:10〜13:00 終了 14:30 予定) 2.会場:アクティブシニアセンター・アオウゼ(福島市曽根田町 1-18MAX ふくしま 4 階) ※駐車場は併設されておりますが、2 時間無料で以後 30 分 120 円の駐車料金が必要です。 3.講師:国立精神・神経医療研究センター病院 主任理学療法士 寄本恵輔 先生 4.テーマ:神経筋疾患の呼吸理学療法 5.内容:二頁をご参照ください 6.受講費:日本理学療法士会会員のみ 4000 円 非会員 8000 円(会場にて徴収いたします) ※研修会場内での録音・録画等はご遠慮ください。 7.申し込み方法:日本理学療法士協会マイページよりお申込みください。 8.締め切り:定員 50名 となり次第〆切といたします。※好評につき定員を増やしました。 9.生涯学習ポイント:10 ポイント神経理学療法専門分野→認定(神経筋障害) 専門理学療法士 内部障害理学療法分野→専門療法士 10.準備物:日本理学療法協会会員カード、筆記用具、昼食は各自持参ください。 【問い合わせ】 ながおさ整形外科 川崎永大 住所:福島県福島市吉倉八幡8−1 TEL:024-544-1852 Mail:[email protected]
最新の神経筋疾患の呼吸ケア・呼吸理学療法 国立精神・神経医療研究センター 寄本恵輔 1、神経筋疾患の呼吸不全 「息苦しさ(呼吸困難)」とは、主観的症状であり、「呼吸の不快な感覚」である。一 方で、「呼吸不全」とは定義があり、「息苦しさ(呼吸困難)」と「呼吸不全」は同意 義語ではない。「息苦しさ(呼吸困難)」は、化学受容器関与説、気道内受容器関与説、 呼吸筋長さ-張力不均等説、中枢-抹消ミスマッチ説など多要因が関わっているが明ら かにはなっていない 1)。しかしながら、「息苦しさ(呼吸困難)」とは、呼吸調整機構 (受容器、呼吸中枢、大脳皮質、肺、呼吸筋など)に異常反応を来した際の危険信号で あると捉えることはできる。つまり、神経筋疾患患者が持つ「息苦しさ(呼吸困難)」 に対しては、「呼吸不全」を把握しつつ、多様な因子があることを理解し、多専門職 種による包括的なケアが必要となる。 神経筋疾患の呼吸不全は、呼吸筋の筋力低下による換気障害であり、基本的には酸素 化の問題はない(表 1)。代表的な疾患として、閉塞性換気障害では慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、拘束性換気障害では筋萎縮性側索硬化症(ALS)がある。いずれも呼吸障害であ り、呼吸ケアの対象となるが病態は大きく異なることを認識すべきである。COPD 等の 肺実質の病態と比較として、ALS は、肺は虚脱し、拘束性換気障害を呈する。また、症 状としては深吸気ができなくなり、呼吸不全の初期症状は息苦しさ(呼吸困難)ではな く、早朝の頭痛、眠気、注意力低下等から始まる。血液ガス分析では、動脈血二酸化 炭素分圧(PaCO2)が45torr以上となり、2 型呼吸不全を呈する。従って、酸塩基平衡へ の影響は大きく、呼吸性アシドーシスに対する代償性代謝が起こる。対処療法として は、低換気の改善のため人工呼吸療法が用いられ、ガイドラインでは気道クリアラン スを良好にすることが推奨され、呼吸理学療法としては徒手的排痰法や排痰機器の利 用がされている。しかしながら、COPD のように肺実質の障害を受ける酸素化障害患者 は、ALS 患者のような換気障害患者と比較すると、圧倒的に多く存在し、また、本邦に おいてはその系統的な教育やガイドラインは先行して発展してきた。つまり、COPD に 準じた呼吸管理や呼吸理学療法が ALS の呼吸ケアとして混同して行われてしまうこと が少なくないため難渋しているケースは多い。したがって、COPD とは全く異なる ALS に特化した呼吸管理や呼吸理学療法を理解すべきである。
表 表 表 表11 呼吸不全の比較 11 呼吸不全 酸素化の問題 換気の問題 COPD、肺気腫、肺結核 疾患 神経筋疾患疾患(ALS) 肺実質の問題 病態 胸郭の動き・呼吸筋の問題 過膨張 肺の状態 虚脱 閉塞性 FEV1.0%<70% 換気障害 拘束性 %VC<80% 一気に吐けない(気道抵抗性) 呼吸状態 深呼吸ができない(深吸気が困難) 息苦しさ(呼吸困難) 初期症状 眠気、頭痛、注意力低下 (息苦しさから始まることが少ない)
PaO2<60mmHg (SpO2<90%) 血液ガス分析 PaCO2>45mmHg
Ⅰ型(低酸素血症) 呼吸不全型 Ⅱ型(高二酸化炭素血症) 影響少ない PaO2↓ 酸塩基平衡 影響大きい pH↓、PCO2↑、HCO3↑、BE↑ 酸素化能(PF)の低下、拡散障害 肺胞-動脈血換気格差(A-aDO2)の増加 計算 Henderson-Hasselbalch、Anion Gap 人工呼吸器による換気補助が加わると 一次性変化は計算式で成り立たない 酸素療法 対処療法 人工呼吸器療法 ヘルスプロモーション(禁煙) ガイドライン 排痰・気道クリアランス 腹式呼吸、口すぼめ呼吸 上下肢筋力訓練 呼吸理学療法 徒手的排痰、排痰機器
2018年にRespiratory Medicineより「神経筋疾患における気道管理」のレビューが 報告され、その中に呼吸理学療法について明記してある 2)。呼吸理学療法は気道クリ アランス手技であり、咳嗽強化と痰の移動に分けられる。咳嗽強化において、吸気介 助、呼気介助、呼気・吸気介助があり、その中に蘇生バックを用いた強制吸気手技が 述べられている(図 1)。用語の整理や定義を検討して行く必要が述べられているが、神 経筋疾患において以下の 3 つがトピックスとして挙げられている。 図 1 神経筋疾患における気道管理(呼吸理学療法)
1) Lung Insufflation Capacity (LIC)
LIC とは、呼気を測定し、最大に、耐えうる、息溜めは含まない外側からの補助吸気
量をいう。その LIC の下限は、肺活量に応じた残気量であり、その LIC の下限は、肺
活量に応じた残気量であり、LICの上限は、蘇生バック、従量式 NIV、吸気相を用いた
MI-E(カフアシストなど)、間欠的陽圧呼吸を使った吸気補助が規定する。
LIC を 評 価 す る 方 法 と し て 、 Lung Insufflation Assist Maneuver(LIAM) 、、、、 Lung
volume recruitment(LVR)、、、、External Control of an Artificial Glottic Opening and
Closure という手技がある。測定機器として LVR Bag や Artificial External Glottic
Device があるが汎用化されておらず、本邦では 2016 年より LIC TRAINER が医療機器と
して開発・販売され、使用が可能となっている
3)
2) Maximum Insufflation Capacity (MIC) MIC とは、呼気を測定し、最大に、耐えうる、患者が息溜めを保持することができ る外側からの補助吸気量をいう。その MIC の下限は、肺活量に応じた残気量であり、 吸気補助における MIC の上限は、舌咽頭呼吸、1 方向弁あり/なしの蘇生バック、従量 式の NIV であり、この MIC テクニックは従量式で送気することや一般的には圧制限を かけない、または最大40cmH2O圧が規定している。MICを評価する方法として、最大強
制吸気(Maximum Insufflation maneuver)という手技がある。測定機器としてはバック
バルブマスク等を利用する。
3)Cough Peak Flow (CPF)
咳嗽の有効性を評価する目的で最大咳嗽流速(cough peak fl ow:CPF)を測定する
( 図 4 ) 。 CPF は 咳 嗽時 に 呼 出 さ れ る 呼 気 の 流 量 で あ り , 健 常 成 人 で は 360 〜 960 L/min の速度で呼気が排出される。有効な咳嗽力の目安として CPF270L/min 以上であ ることが必要であり、平時は問題ないが感冒症状時に咳嗽困難となるのが 240L/min以 下、常時咳嗽困難となるのは 160L/min 以下である。VC や CPF はマウスピースやフル フェイスマスクなどを接続して測定する。これらの検査はガイドラインで推奨されて おり,定期的な測定が簡易であり,呼吸障害の進行を把握するうえでも重要である。 図 2 神経筋疾患の呼吸理学療法の戦略
ALS を含め神経筋疾患の呼吸理学療法の戦略として、MIC や LIC の強制吸気量と肺活
量の差を維持・拡大し続けることが重要であり、その差が大きいほど生命予後を良好
にし、呼吸障害がある場合、その較差を 1000ml 以上保つことが重要である(図 2)
4)
1) 市川正憲:呼吸困難(息苦しさ).訴えとしてのコモンディジーズ23.コモンディジーズブ ック.123-128.2013.
2) Michelle Chatwina: Airway clearance techniques in neuromuscular disorders: A state of the art review. Respiratory Medicine 136. 98–110.2018
3) 寄本恵輔ほか:ALS の呼吸障害に対する LIC Trainer の開発-球麻痺症状や気管切開 後であっても肺の柔軟性を維持・拡大する呼吸リハビリテーション機器. 難病と在宅 ケア 21(7):9-13, 2015.
4) Bedard M-E,Mckim DA: Daytime Mouthpiece for Continuous Noninvasive Ventilation in Individuals With Amyotrophic Lateral Sclerosis. respir care, October 2016 61:10- 1341-1347