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(1)

HSV

表色系を用いた足爪評価アプリケーションの提案

野本

洋平

1

・澤井

2

・大矢

哲也

3

山下

和彦

4

・小山

裕徳

3

・川澄

正史

3 1 新潟県立大学 国際地域学部 国際地域学科(E-mail:[email protected]) 2 東京電機大学 工学部 情報通信工学科 3東京電機大学 未来科学部 情報メディア学科 4 東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科. 足爪の異常は転倒リスクと関係のある下肢筋力,姿勢制御能を低下させる.足爪の評価は,皮 膚科等の医師やメディカルフットケアワーカが実施している.これらの人材は,専門的技術を有す る技術者であり,利用者が積極的に行動し,その場所まで足を運ばなければ足爪の状態について知 ることができない.そこで本研究では足爪の状態を HSV 表色系から評価するためのアプリケーショ ンを開発した.その結果,看護師の資格を持つメディカルフットケアワーカが分類した正常群と黄 乾の異常群における HSV 表色系の値の変化を確認した.これらの結果は,足爪の健康状態や日常的 に変化する身体の健康状態を推定する指標として用いることが可能であると考える. キーワード: キーワード:キーワード: キーワード:転倒,足爪評価アプリケーション, HSV表色系 1. はじめにはじめにはじめにはじめに 足爪の異常は転倒リスクと関係のある歩行能力,下肢筋力,姿勢制御能を低下させることが明らかに されつつある[12] .現在,足爪の評価を行なっているのは,皮膚科等の医師,足部・足爪のメディカル フットケアを実施しているメディカルフットケアワーカである.医師やメディカルフットケアワーカは, 専門的技術を提供する技術者であり,利用者が積極的に行動し,その場所まで足を運ばなければ自分の 足爪の状態について知ることができず,費用もかかる.足爪の健康評価をより身近にしていくことは, すなわち歩行障害の改善や早期発見につながり,QOLの向上につながると考える.特筆したい点は,ほ とんどの高齢者は足部や足爪の状態に無関心で,どのような状態になっているか知らないことである. これまでに我々は,足爪の健康評価をより身近にすることを目的とし,RGB表色系を用いた足爪評価 アプリケーション“Nail Checker”(以下,ネイルチェッカとする)を提案した[3] .提案したアプリケーシ ョンの評価では,全ての被験者に対して同じ場所で撮影したため,窓からの光やその他の擾乱がない環 境で行った.実用的な足爪評価システムを構築する上で解決すべき重要な課題のひとつとして,画像入 力時の環境変動に対する処理精度の安定性の向上が挙げられる.足爪の撮影時に足爪の位置,照明など にできるだけ制約をつけない状態で正確に足爪画像の抽出が行われることが望まれる.本研究では, HSV表色系[4]を用い,足爪の色の画像を抽出する新たな足爪評価システムを提案する.HSV表色系は知 覚的表色系と呼ばれ,人間の知覚に比較的近い表色系として定義されている.さらにHSV表色系は照明 などによる反射や陰影の影響を受けにくいという特徴がある[4] .したがって,高齢者施設など,建物内 部で想定される照明の影響については,HSV表色系を用いることで光の擾乱などを軽減できると考える. 新しく提案する足爪評価アプリケーションは,昨今著しい展開を見せるスマートフォンを代表とする インテリジェント端末への導入を考慮した設計とした.インテリジェント端末の社会への導入は,総務 省が推進する u-japan 構想を基盤とする公衆無線 LAN や 3G 回線網等の通信インフラの充実が進められ るのと共に近年急速に進んでいる[5] .利用シーンにおける従来の携帯電話との大きな違いは,利用アプ リケーションを自由に選択・カスタマイズできることであり,各々の汎用的な利用がインテリジェント 端末にて可能となっている.また加速度センサ,角速度センサ,GPS,そしてカメラ等の各種センサが 搭載されており,これまでの PC アプリケーションの枠にとらわれない利用シーンが展開され,インテ リジェント端末のモビリティやセンシング能力等を活かした健康促進アプリケーションの利用者が急 増している.本アプリケーションでは,身近となったスマートフォンの利用を想定し,対象者が自身の 足爪を撮影した画像より自動で評価結果を計測することができ,容易に扱うことが可能となる. 2. 足爪の現状足爪の現状足爪の現状足爪の現状 2.1 高齢者の足爪の現状高齢者の足爪の現状高齢者の足爪の現状 高齢者の足爪の現状 足部,足爪に異常がある高齢者は全体の 6 割以上であると報告されている[6] .足爪の異常の一例を図 受付日 2011 年 9 月 30 日

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1から図 4 に示す.図 1 は高齢者に高率で発生している足爪の変形,変色,感染である.変色の起こる 原因は,靴や怪我などの外力が挙げられる.図 2 は足爪,足指の変形の極度な例である.特に左拇指の 足爪は後方へ向かって生えるため,伸びれば伸びるほど,拇指の付け根に刺さることとなる.この原因 を推測すると,糖尿病などの末梢循環障害や末梢神経障害などが考えられる.図 3 は高齢者に高率で発 生している肥厚である.この原因はさまざま考えられるが,メカニズムは爪が前方に伸びることができ ずに,上方へ盛り上がることで発生すると考えられている.肥厚の場合は足爪全体が白色化,または, 黄色化することが特徴である.図 4 は高齢者に限らず幅広い世代,特に女性に多く発生する巻き爪であ る.巻き爪の原因もさまざまあるが,靴や足爪の切り方などの足爪にかかる外的応力,足爪自体の成長 の生理的反射によって発生する.巻き爪にはいくつか種類があり,足爪先端が丸く変形することで巻く ケースや鋭角に皮膚に突き刺さるケースなどがある.これを上方から観察した場合,足爪先端,特に辺 縁部の色が変化する. 2.2 足爪の色情報の変化足爪の色情報の変化足爪の色情報の変化 足爪の色情報の変化 我々は 100 名以上の足爪の写真等を撮影し,独自に研究を進めてきたため,大まかな分類が可能であ る.その一例を以下に記載する.例えば,変色については,図 1 のような全体的な黒色化や図 2 の白癬 菌感染のような前方からの白色化,および表面の不均一化(でこぼこに変化する),図 3 の肥厚のよう な全体的な白色化,黄色化などが挙げられる.さらに足爪の部分的な白色,黄色,赤色化は肝硬変,リ ンパ管の形成異常,血流の変化などに起因すると報告されている[8-12] .我々が注目しているのは,例え ば,要介護予備群に当てはまる高齢者の健康支援であり,まだ見つかっていない疾病や転倒のリスクを 定量的に評価し,抽出することにある. 3. 実験方法実験方法実験方法実験方法 3.1 被験者被験者被験者 被験者 被験者は足爪に複数の異常がなく,評価の妥当性の確認が困難な例を除いた正常例の高齢者 4 名(男 性 1 名,女性 3 名,平均 80.5±2.7 歳)と黄乾の異常がある高齢者 3 名(男性 2 名,女性 1 名,平均 81.7 ±4.5 歳)とした.足爪の異常の有無は,看護師の資格を持つメディカルフットケアワーカが目視で判 断し正常群と黄乾の異常がある群に分類した.図 5 に足爪の正常例,図 6 に足爪に黄乾の異常例を示す. 被験者には,計測データを研究で使用するものであることを十分に説明し,被験者の同意を得た上で実 験を開始した. 図 1 足爪の変形,変色の一例[7] 図 2 足爪,足指の異常[7] 図 4 巻き爪の一例 図 3 足爪の肥厚の一例

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3.2 HSV 表色系を用いた足爪の抽出方法表色系を用いた足爪の抽出方法表色系を用いた足爪の抽出方法 表色系を用いた足爪の抽出方法 足爪の疾病は,足爪の色の変化を伴う.また,体調面の変化も足爪の色にあらわれると言われる.す なわち,足爪の色の計測を行うことによって足爪の状態を評価できると考えた.足爪の入力画像は,RGB 表色系で色彩が表現されているが,これをHSV表色系に変換する[13].HSV表色系はH(色相),S(彩度), V(明度)の3要素によって構成され,人間の知覚に比較的近いモデルとして定義されている.RGB表色系 からHSV表色系への変換式を(1) 式に示す. V = MAX൫R,G,B൯ S =ܯܣܺ൫ܴ,G,B൯ − ܯܫܰ(ܴ,G,B)V H = cos−1 (G − B) + (G − R) 2ඥ(G − B)ଶ+ (G − R)(B − R)ቋ ・・・(1) 明度(V)は色の明るさを表し,RGB各成分のうち最も値が大きいものをその値とする.また,彩度は 色のあざやかさを表しており,RGB各成分の最大値から最小値を引いたものと明度との比で定義されて いる.色相は色みの種類を表し,0°~360°の範囲でその値をとる. 3.3 足爪足爪評価足爪足爪評価評価評価システムシステムのシステムシステムののの概要概要概要 概要 本研究では,撮影画像サイズと,撮影位置(カメラの高さ)の統一化が可能な足爪撮影用カメラと, 足爪画像から足爪の色の抽出を可能とするアプリケーションにより構成される.図 7 に提案するアプリ ケーションの画面の一例を示す.本論文では,足爪の色計測の有効性を評価することが目的であるため, PC への実装が可能なアプリケーションを作成した.設計では,スマートフォンへの導入実装が可能な ものとし,作成を行った.スマートフォンへの導入に求められる項目では,タッチパネル操作を考慮し たシンプルなユーザインタフェース設計,ハードウェア構成,そしてネットワーク利用を前提とした開 発を重要とし,プロトタイプアプリケーションの作成を行った. 作成したプロトタイプでは,アプリケーションウインドウの左部分に撮影した画像を提示し,右側部 分に計測結果を提示する設計とした.作成したアプリケーションは,Borland 社の提供する C++ Builder を用いて作成した.アプリケーションに搭載した機能は,スマートフォン用のアプリケーションへの導 入を考慮し,全て汎用的なコンポーネントによって構成されている.作成したアプリケーションの動作 環境は,アプリケーションの実験評価が目的であるため,Windows 用アプリケーションとして作成した. またネイルチェッカは,Windows XP,Windows Vista での動作を確認した.

足爪画像から毎回定量的に色情報を抽出するには,画像サイズと撮影位置(高さ)を一定に保つこと が重要になる.そこで,画像サイズと撮影位置(高さ)を一定に保った撮影が可能となるカメラを作成 した.作成したカメラは,高さを一定に保つ構造になっている.画像サイズは,30 万画素一定とした. カメラと PC の接続は,USB を利用する.図 8 に示すカメラの配置高さは,カメラの視野角を基に 13 [cm] と設定した.またカメラ台の幅は,足のつま先部分を挿入することを考慮し,12 [cm]とした. 図 6 黄乾の異常がある足爪の一例 図 5 正常な足爪の一例

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3.4足爪足爪足爪足爪評価評価評価アプリケーション評価アプリケーションアプリケーションアプリケーション 図 9 に足爪評価アプリケーションの利用の流れを示す.まずカメラにより足爪の画像を取得し,取得 した画像の数値処理を行う.数値処理では,取得画像をピクセルデータとして分割し,RGB 各成分のデ ータを抽出する.抽出した RGB 各成分のデータは,ネット上のサーバや端末内記憶領域に保存を行う. その後,抽出した RGB 各成分のデータは,HSV 表色系に変換し,これまでの足爪の色の平均情報と比 較され,現在の足爪の色の評価判定がなされる.また,アプリケーション利用時には,画像取得の他に, 過去データの参照についても行う仕様としており,自己体調管理としての機能を設けている. 足爪評価アプリケーションの具体的な利用手法には,マウス操作により足爪の色抽出範囲を任意に選 択する操作性を持たせた.足爪の色情報は,任意選択された範囲内の各ピクセル内 RGB 各成分のデー タを参照し,HSV 表色系のデータを算出して得ている.また,抽出された足爪の色情報は,色情報解析 を容易とするために CSV ファイルに記録することとした.また CSV ファイル形式の採用は,ネットワ ークを介したサーバへのデータ保存や,データ共有が容易となる. 4. 実験結果実験結果実験結果実験結果 表 1 に正常例の高齢者 4 名と黄乾の異常がある高齢者 3 名の HSV 表色系の計測結果を示す.メディ カルフットケアワーカの分類結果と HSV 表色系の計測結果では,明確な相関関係を得ることができな かった.HSV 表色系の計測結果では,正常群の H と S の平均値が黄乾の異常群の値より高く,正常群 の V の平均値が黄乾の異常群の値より低い傾向であったが,有意な差は確認できなかった.したがって 図 8 外寸の仕様 制御器 カメラ 13 [cm] 12 [cm] USB ケーブル 高さ 横 図 7 作成した足爪評価アプリケーション

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HSV表色系による画像解析評価は,視覚評価よりも自覚症状を関連づけるには有用になる可能性が考え られる.例えば,White は足爪異常における黄色化が足関節部の浮腫と合併する症例を報告している[14] . 足関節部の浮腫の早期発見,予防において,本評価システムの応用が期待される.一方,画像解析評価 法は写真撮影や色調解析が必要であり,実用には障壁となるが,近年,デジタルカメラや IT の応用・ 普及が進み,評価法の簡便化が期待できる. 5. まとめまとめまとめまとめ 本研究では,新しく足爪の色情報を基にした定量的足爪評価アプリケーションについて述べた.本ア プリケーションの利点を以下に述べる. (1)任意範囲を指定することで自動的に足爪の色を評価し,その値を表示する (2)足爪の異常を HSV 表色系から簡便にスクリーニングできる 以上の観点から足爪の状態を定量的に評価することで,足爪の健康状態や日常的に変化する身体の健 康状態を推定する指標として用いることが可能であると考える.提案した技術を応用することで,幅広 い対象者への利用と自立した生活,快適を支援することができると考える.今後は被験者数を増加し, メディカルフットケアワーカの分類結果と足爪アプリケーションの計測結果の相関を調べると共に,新 たな判定指標を追加することで計測の精度を向上させる必要がある. 謝 謝 謝 謝 辞辞辞辞 本研究にご協力いただいた東京都昭島市の施設職員,保健師,高齢者の皆様に深く感謝申し上げる. 本研究の一部は,東京電機大学総合研究所 Q09S-04,新潟県立大学教育研究活動推進事業,文部科学省 科学研究費若手(B)(課題番号:22700577)として行った. 図 9 足爪評価アプリケーションの利用 サーバ インターネット 結果の表示 過去のデータの読込み 警告 保存 ダウンロード スタート 画像撮影 HSVの計算 データの照合 表 1 HSV の計測結果

対象

H

± SD

S

± SD

V

± SD

正常

2.02±0.32

0.17±0.04

189.50±5.50

黄乾

1.75±0.33

0.14±0.04

197.00±5.35

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参考文献 参考文献 参考文献 参考文献 1) 野本洋平他,高齢者の足爪の機能改善と歩行能力評価指標の関係,ライフサポート学会誌,19(4),(2007),19-26 2) 野本洋平他,主成分分析を用いた高齢者の下肢機能の評価手法の開発,ヒューマンインタフェース学会誌,9(2), (2007),109-116 3) 野本洋平他,足爪評価システムの提案,国際地域研究論集,2(2),(2011),23-31 4) 松橋聡他,顔領域抽出に有効な修正 HSV 表色系の提案,テレビジョン学会誌,49(6),(1995),787-797 5) 総務省,u-japan 構想,http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ict/u-japan/index.html,(2010) 6) 地域保健研究会内フットケアのあり方に関する研究委員会編,フットケアのあり方に関する調査研究報告書,(1990), 2-51, 7) 宮川晴妃,メディカルフットケアの技術,日本介護協会出版会,(2003) 8) Terry R,White nails in hepatic cirrhosis,Lancet,266(6815),(1954),757-759

9) Jensen O,White fingernails preceded by multiple transverse white bands,Acta Derm Venereol,61(3),(1981),261-262 10) Wiikerson MG et al ,Red:lunulae revisited:A clinical histopathologic examinaition,J Am Acad Dermatol,20(3),(1989),

453-457

11) 大熊守也,黄色爪症候群の 1 例,臨床皮膚科,35(1),(1981) ,77-79 12) 大熊守也他,続発性黄色爪の 2 例,皮膚,23(3),(1981),316-318

13) A.R.Smith,Color Gamut Transform Pairs,ACM-SIGGRAPH`78 Conf.Proc,(1978),12-18 14) Samman PD,White WF,The "Yellow nail"syndrome,Br J Dermatol,76,(1964),153-157

参照

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