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いしずえNo.174

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Academic year: 2021

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大手町パークビルディング

皇居東御苑に隣接する地に誕生した大手町パークビルディン グ。緑溢れるこの地に、大手町初の住機能であるサービスレジ デンスの導入や多様な働き方に対するサポート機能を整備。 国際金融拠点としての大手町の都市機能強化を目指した本 事業は、街に新たな潤いと賑わいをもたらします。 ISHIZUE NO.174 所在地 〒100-0004 東京都千代田区大手町1-6-1(大手町ビル837区) TEL.03-3211-6771 FAX.03-3211-6772 http://www.bmi.or.jp/ 《禁無断転載》 ※本誌は、日本ビル経営管理士会の機関誌を兼ねて、 発行 いしずえ│ No.174  │ 2018年1月20日発行 一般財団法人 日本ビルヂング経営センター[BMI]│日本ビル経営管理士会[JBMS]

JAPAN BUILDING MANAGEMENT INSTITUTE/ JAPAN BUILDING MANAGERS SOCIETY DATA

新年

No.

174

http://www.bmi.or.jp

I S H I Z U E

2 0 17 NewYear 年頭のご挨拶 ビル経営の人材育成機関としてさらに充実した展開を 櫻井 康好 一般財団法人 日本ビルヂング経営センター 理事長 大手町ホトリア街区

大手町パークビルディング

杉山 昌徳 三菱地所株式会社 丸の内開発部 ユニットリーダー 新春寄稿 2018年のビル事業を展望する 『変わり目』に潜む『ビジネスチャンス』発掘の年 石澤 卓志 みずほ証券㈱ 市場情報戦略部 不動産テックとは何か? 不動産テックによるビル事業・ビル経営の変革の方向性 第3回 IoT /ビッグデータ時代のビル事業・ビル経営はどうあるべきか? 谷山 智彦 株式会社野村総合研究所 渡辺晋のビルマネジメントゼミナール│Vol.31 民法改正の賃貸借への影響「賃貸人の地位の移転」 渡辺 晋 弁護士 都市・街・ビル ビル開発に関わる、都市計画・都市再開発を学ぶ Vol.3 都市機能更新と地域開発 河村 茂 (一社)建築・住宅国際機構 理事 博士(工学)  【新連載】ビル運営管理システムを理解し、活用する 第1回 ビル内で活用されているビル運営管理システムの全体像 小出 俊弘 ㈱トータル・システム・デザイン 代表  いしずえニュース セミナー開催報告/開催予定の経営研究セミナー 「いしずえ」電子ブック配信のご案内/更新登録のご案内 CONTENTS

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大手町ホトリア街区

皇居外苑濠に隣接する緑豊かな複合オフィス

大手町パークビルディング

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 (一財)日本ビルヂング経営センターは、1月11日(木)にホテルオー クラにおいて、(一社)日本ビルヂング協会連合会、(一社)東京ビル ヂング協会、(一社)全日本駐車協会、(一社)東京駐車協会、(公財) 日本建築衛生管理教育センターと共催で、平成30年新年賀詞交歓会を 開催した。  髙木茂会長の挨拶、簗和生国土交通大臣政務官の祝辞、岡谷篤一評 議員の乾杯の音頭に続いて、盛大な宴が催された。  1月23日(火)に大手町フィナンシャルシ ティ・カンファレンスセンターで、「“働き方 改革”がもたらすビル経営の大転換」をテー マに、第19回新春特別ビル経営セミナーを開 催した。講師と個別のテーマは右記のとおり。  なお本セミナーの動画は、後日、BMIネッ トアカデミーにアップロードいたしますので、 ご活用下さい。 ※ アップロードが完了次第、メールにてご連絡いたし ます。  明けましておめでとうございます。  近時のオフィスビル市況は好景気を背景に賃料の上 昇、空室率の低下等回復基調を維持しておりますが、 ビル事業の安定的成長のためには、災害対応(BCP 対応)、環境対応、さらには働き方改革、生産性向上 など時代の要請も踏まえたうえでビル市場動向を的確 に把握し、多様化するテナントニーズへの積極的な対 応が求められております。オフィスビルは社会の知的 生産活動を支えるインフラとして、こうした急速な変 革を着実に受け止め、事業活動を望ましい方向に促進、 発展させる役割があります。そしてこれらに適切に対 処できる人材が求められております。

新年賀詞交歓会を開催

第19回新春特別ビル経営セミナーを開催

ビル経営の人材育成機関として

さらに充実した展開を

一般財団法人 日本ビルヂング経営センター 理事長 

櫻井 康好

 当センターは、ビル業界唯一の人材育成機関として、 ビル経営管理士制度の運用、ビル経営管理講座、各種 セミナーの開催、ビル事業関連の情報提供などを実施 しております。  また、当センターでは、ビル経営管理士等の一層の 活動をサポートするため、センターホームページ上の 「メンバー専用サイト」、「動画配信サイト」等、IT 環境の充実を図っております。本年も、ビル事業関係 者の方々に有益な情報の提供に努めて参りますので、 宜しくお願い申し上げます。  最後に皆様方のますますの御活躍と御繁栄を心から 祈念し、年頭のご挨拶といたします。 挨拶する髙木茂会長 岡谷評議員 簗政務官 年頭のご 挨拶 1. 三菱地所が変わる   ∼働き方改革と進化し続けるオフィスづくりの取組み∼ 三菱地所㈱ 取締役会長 杉山 博孝氏 2.グローバルトレンドから読み取る:    テナントの働き方改革が求めるオフィスとは ジョーンズラングラサール㈱ 執行役員 佐藤 俊朗氏 3.働き方変革時代のベンチマーク:「性能評価」の活用法   ∼健康経営から持続可能な街づくりまで∼ ㈱ヴォンエルフ 代表取締役 平松 宏城氏 4.人々を惹きつける“WeWork”の魅力

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 平成29年度「ビル経営管理士試験」が昨年12月10日(日) に全国6都市で実施され、699名の受験申込みがあり、615 名が受験した。合格発表は30年1月31日(水)で、合格 者はその後登録申請を行うことによって「ビル経営管理士」 の資格が授与される。  ビル経営管理士は、不動産特定共同事業を行うにあたり 事業を管理監督するために設置が義務付けられている公的 資格者であり、金融商品取引法の「不動産関連特定投資運 用業」の人的要件としても位置づけられたことから、平成 26年度から受験者は600名超の高水準を維持している。  日本ビル経営管理士会では、会員相互の交流を目 的として、11月16日に東京・中央区の明治屋京橋ビ ル7階「明治屋ホール」で、ネットワーキングイベ ントを開催した。本年度のネットワーキングイベン トは、第25回CBAセミナー「京橋エドグランに見 る新しいオフィスビル事業の取組み」を開催後、現 地にてランチ会として開催され、74名の会員が参加 した。  CBAセミナーの講演は午前10時から、日本土地 建物㈱都市開発事業部副部長・藤枝雅幸氏が行い、 続いて、京橋エドグランの現場見学が行われた。  その後、明治屋ホールに戻り、午前11時45分か らネットワーキングイベント・懇親会が開かれた。  冒頭の日本ビル経営管理士会・高木会長の挨拶、 乾杯の音頭によって、会員相互の和やかな懇談の輪 が広がった。

平成29 年度ビル経営管理士試験を実施

全国6都市で615 名が受験

日本ビル経営管理士会

第3回ネットワーキングイベントを開催

京橋エドグランでの現場見学会 ネットワークイベント会場・右上は挨拶する高木会長 CBAセミナー会場

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 大手町パークビルディングは、敷地 面積約9,300㎡の地に、地上29階・地 下5階・高さ約150m・延べ床面積約 151,700㎡の建物となっており、主な用 途として、オフィス(3-20階)、サービ スレジデンス(22-29階)、店舗(1階・ B1階)、地域冷暖房施設(B5階)、保  大手町パークビルディングは、皇居 東御苑の入口である大手門至近に位置 し、千代田区大手町一丁目一番一号の 地 に、2017年1月 に 竣 工 し ま し た 図表1。隣接する「大手門タワー・J Xビル(以下、大手門タワー)(2015 年11月竣工済)」と2棟一体で都市再 生特別地区制度を活用した開発となり ます。  その敷地は、皇居東御苑及び皇居外 苑濠(大手壕)の豊かな水と緑を西側 に臨み、地下鉄5路線(東京メトロ千 代田線・半蔵門線・丸ノ内線・東西線、 都営地下鉄三田線)が乗り入れる大手 町駅に直結しており、自然豊かな環境 と利便性を兼ね備えた希少な立地です。  また、「大手町パークビルディング」 「大手門タワー」、「大手センタービル」 の3棟の存する敷地には、「お濠のほと

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1. プロジェクトの概要

りに豊かな空間を創出していきたい」 という想いを込め、「大手町ホトリア」 という街区名称を付けました。 図表 1 大手町パークビルディングの立地  三菱地所が皇居東御苑隣接の千代田区大手町一丁目一番の地で開発 を進めておりました「大手町パークビルディング」が、2017年1月31日をもっ て竣工致しました。  多様な働き方をサポートするオフィスにおける取り組みや、大手町初の住 機能であるサービスレジデンスの導入他、国際金融拠点としての大手町の 都市機能強化を目指した本事業についてご紹介させて頂きます。

大手町パークビルディング

皇居外苑濠に隣接する緑豊かな複合オフィス

三菱地所株式会社 丸の内開発部 ユニットリーダー 杉山 昌徳

大手町ホトリア街区

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(1)建物の特徴  大手町パークビルディングは、皇居 東御苑及び皇居外苑濠(大手壕)に隣 接する立地を活かし、豊かな自然と歴 史的景観との調和を意識し、日本的な 感性を持った風格ある景観形成と合わ せて、水、緑、光などの自然的な要素 の融合を追求した建物としてデザイン されています。  外壁の色調は、皇居の石垣との調和 を念頭にグレー調の御影石とガラス カーテンウォールにより構成され、東 西面は約50mの横連窓により、皇居に 開いた彫りの深い連続した表情を作り 出すとともに、建物内部からは皇居側 の緑を望むワイドな眺望を実現し、「軒 先により横長に切り取られた緑を望む」 育所(2階)、駐車場(B2,B3階)等か ら構成されています。  容積率は、大丸有エリアの基準容積 率1,300%に、大手門タワーに導入し た民間初の取り組みである皇居外苑濠 図表 2 断面図 建築概要 といった、数寄屋建築をはじめとする 日本的な景観の楽しみ方を現代的な手 法で表現しています。南北面は、約 110mの長大な壁面に対する皇居側(内 堀通り)からの景観を意識し、幅の異 なる縦柱が交互に連なる表情を形成し ました。  建物上層部の21階∼ 29階は、一部 セットバックした形状としており、こ れは、皇居側への開けた都市景観の形

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大手町パークビルディングの特徴

所在地 東京都千代田区大手町一丁目1番1号 建築主 三菱地所株式会社 設計・監理 株式会社三菱地所設計 施工 株式会社竹中工務店 竣工 2017年1月31日 主要用途 事務所・店舗・サービスレジデンス・ 児童福祉施設(保育所)・地域冷暖房 施設・駐車場等 階数 地上29階·地下5階· 塔屋2階 構造形式 地上:鉄骨造(一部CFT柱)地下:鉄 骨鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造) /制震構造 高さ 約150m 用途地域 商業地域、防火地域 敷地面積 9,338.97㎡ (約2,825.04坪) 延床面積 151,708.02㎡ (約45,891.68坪) 事務所貸室面積 60,432.73㎡(約18,280.90坪) 床許容積載荷重 基準階:500kg/㎡ 特殊階(3階・ 9階・ 15階・20階):l,000kg/㎡ フリーアクセス フロア高さ 基準階:150mm 特殊階(3階・ 9階・15階・20階):300mm 事務室天井高 基準階:2,850mm 特殊階(3階•9階・ 15階•20階):3,000mm エレベーター オフィス乗用:24台(8台×3バンク) 非常用兼人荷用:3台 空調設備 各階コンパクトAHU方式(7分割/フロア)+VAV(可変風量)方式 駐車場・駐輪場 255台(自走式75台/機械式180台) ・自転車用42台/バイク用17台 成と、皇居側に対して高さ約100mの 統一されたスカイラインを形成するデ ザインとしています。  敷地の西側には、皇居側の豊かな自 然を大手町の街へ引き込むことを企図 し、皇居外苑の豊かな自然と調和する 約3,000㎡のホトリア広場(※大手門タ ワー側の敷地と一体整備)を整備しま した。また、皇居外苑及びホトリア広 場の豊かな緑を、大手町へ引き込む「緑 のリレー」をコンセプトとして、2層 吹き抜けの開放的なオフィスエントラ ンスには、高さ約12mと約7mの2つ の大規模な屋内壁面緑化を設え、自然 の水質改善に寄与する大型貯留槽・高 速浄化施設や、環境ビジネスの交流・ 創発拠点として整備した「3×3 Labo Future」、その他、後にご紹介する大 手町パークビルディングにおける取り 組みが都市再生に資するものとしての 評価を受け、割増容積分100%を加え、 1,400%という容積率を実現しています。

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のアロマオイルの香りと共に、緑と自 然を感じる空間を創出しています 図表 3。オフィスエントランス前の日 比谷通り側の交通結節点広場には、 2020年東京オリンピック公式エンブレ ムをデザインした野老朝雄氏による、 同 氏 初 の パ ブ リッ ク ア ート 作 品 「TOWER OF CONNECT」を設置 図表 4。皇居外苑の壮大な自然と歴史 的景観と、大手町パークビルディング との繋がりを表現しています。 (2)主な用途 ①オフィス  大手町パークビルディングの3 ∼ 20 階を占めるオフィスフロアは、ワンフ ロア約1,030坪、東西約110m、南北約 50mのコの字型のプレートとなってい ます。また、オフィス専用室の内部は 無柱空間でフレキシビリティの高い執 務環境を整備し、且つ東西面はワイド スパン構造を採用し、皇居側の豊かな 自然を眼前に約50mに渡る眺望を実現 しました 図表 5 図表 6  環境負荷低減の観点においては、 Low-e複層ガラス及びエアフローウィ ンドウの採用、太陽光追尾自動角度調 整ブラインドによる昼光利用など、最 新の環境技術を導入することにより、 CASBEE / Sランク相当の環境性能 を確保し、また、日本政策投資銀行の 環境技術認証制度である「DBJ Green Building認証」において、最高評価で ある「国内トップクラスの卓越した環 境・社会への配慮がなされたビル」と しての認証を受けております。  その他、大手町パークビルディング は、「多様な働き方のサポート」をコ ンセプトの1つに掲げ、2階にはオ フィスサポートフロアとして、就業者 専用ラウンジ、店舗、保育所、更に7 階には最小40坪台からのサービス機 能付小規模オフィスを設け、入居され る企業の生産性向上を支援致します。 ② アスコット丸の内東京(サービスレ ジデンス)  大手町パークビルディングの22 ∼ 29階には、大手町初の住機能として、 中長期滞在に対応できるサービスレジ デンス「アスコット丸の内東京」が 2017年3月30日に開業致しました。 図表 4 オフィス外構部のパブリックアート 図表 6 オフィスフロア 図表 5 基準階平面図 図表 3 エントランス(左)と壁面緑化(右)

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客室総数130室の本施設は、職住近接 のビジネスニーズに対応しています。 また、ホテルとして1泊からの短期滞 在も可能であり、観光需要にも対応し ます。 ③ ホトリアShops&Resaurant   「よいまち」(飲食・物販等エリア)         図表 7  隣接する大手門タワーと一体で、地 下1階及び1階には、19店舗(飲食16 店舗、物販2店舗、フィットネス1店舗) が集結。地下1階は、仕事終わりのちょ い呑み、しっかりと食事を満喫、〆の 一杯、カジュアルなハシゴ酒のできる 「都心の横丁」を創出しました。1階に は、緑地広場と木々を眼前に、開放的 なレストランを誘致し、「都心のオアシ ス」を創出しました。 (1)就業者専用ラウンジ 「PARK LOUNGE」(2階)  2階にはオフィス就業者専用ラウン ジを整備しています 図表 8。皇居の緑 と水の景観が広がるラグジュアリーな 空間と、自然を感じるカジュアルな空 間の2対応のラウンジを用意し、ラン チ等の休憩時間だけでなく、シーンに 合わせて利用可能なワークプレイスと なります。バイリンガル対応の受付を 設けるとともに、フィットネス、皇居 ④地域冷暖房施設  地下5階等には、丸の内熱供給株式 会社が地域冷暖房サブプラントを整備 し、高効率機器と蓄熱槽の連携や、ビ ルの中水から温熱を取り出して活用す るシステム等により省エネ化を図ると 共に、地域配管を通じて大手町地区の 他プラントのバックアップ機能を有し ています。 図表 8 パークラウンジ 図表 9 ザ・プレミアフロア大手町 図表 7 よいまち ランニング後の利用も想定したシャ ワールーム、コンセントレーションブー ス、仮眠室等、多様な時間と空間の使 い方を可能にする機能を提供します。 (2)サービス機能付小規模オフィス   「The Premire Floor      Otemachi 」(7階)  7階には、サービス機能付小割オ フィスとして、「The Premire Floor Otemachi 」(ザ・プレミアフロア大手 町)を整備 図表 9。最小40坪台から の小規模オフィスに、共用の受付や会 議室、多様なサービスをパッケージに て提供することで、ベンチャー企業等 の成長企業や国内外の有力企業のニー ズに対応しました。 (3)事業所内保育所 「ナーサリースクール大手町」(2階)  2階の一部には、本建物の入居テナ ントを含む子育て世代の就業環境の改 善を目的として約40名を定員とする事 業所内保育所「ナーサリースクール大 手町」を誘致しました。 (4)BCP機能  本建物では、優れた制震構造と強固

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様々な入居企業への

サポート施設と機能の導入

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な地盤に加え、非常時電源供給機能等、 入居企業のBCP(事業継続計画)を 強力にサポートします。 ①制震構造等  構造は、柱の一部に高強度コンク リートを充填した「CFT柱」を採用し、 剛性・耐力を確保しながら、コア部に 鋼板耐震壁や粘性体制振ブレース等の 制振部材を配置し、高い耐震性能を確 保しています図表10。  大手町パークビルディングの22 ∼ 29階には、大手町初の住機能として、 中長期滞在に対応できるサービスレジ デンス「アスコット丸の内東京」が 2017年3月30日に 開 業 致 しまし た 図表12 図表13。アジアの国際金融都 市と比較して東京のサービスレジデン スの整備は遅れている状況にあること に鑑み、サービス水準の高いサービス レジデンスの整備を行うことにより、

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グローバルビジネス拠点の機能を強化する

サービスレジデンスの導入

②非常時電源供給機能図表11  非常用ガスタービン発電機(2,000KVA ×2台)に加え、災害時の供給安定性に 優れた中圧ガスも使用可能なデュアル フューエル方式ガスタービン発電機 (3,000KVA×1台)を備え、A重油の みで72時間以上の発電機運転が可能 であり、中圧ガスの供給があれば最大 約10日間程度の事業継続をバックアッ プ致します。  本非常用発電機の発電電力は、共用 部の一部照明・エレベーターを稼働さ せる他、オフィス専用部にも照明・コ ンセント付加(15VA /㎡程度)を実 現でき、更にはテナント専用の非常用 発電機設置室(2室、1室あたり約 2,000KVA・コールドスタンバイ方式 の設置が可能)及びオイルタンク(3 万リットル×2基)も備え、入居企業の BCPを強力に支援することが可能です。  また、災害時に本建物内の丸の内熱 供給株式会社による地域冷暖房サブプ ラントに非常用発電電力を供給できる 仕組みとしており、これにより同プラ ントから冷水供給を受けるシステムを 構築し、真夏の災害発生時の事業継続 性を高めました。 より東京の国際金融拠点機能の強化に 資するものと考えています。  運営は、シンガポールに本社を置き、 世界28カ国で30,000室を超えるサービ スレジデンスの所有・運営を行うアス コット社(The Ascott Limited)が 担い、同社の持つブランドの中でも最 上級ブランドである「アスコット」が 日本初出店となります。  客室総数130室、全室38㎡以上の 図表10 制振構造 図表11 非常用発電設備 図表12 アスコット丸の内東京エントランス 図表13 客室:キッチン、寝室

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おわりに

大手町パークビルディングの完成により、この大手町の地にまた新たな賑わ いと変化がうまれました。是非、多く の方にお越しいただき、再開発により 日々変化する大手町の様子をぜひご覧 頂ければと思います。  敷地の西側には、東京都心部随一の 豊かさを有する皇居の自然を、大手町 の街へ引き込むことを企図し、皇居外 苑の豊かな自然と調和する約3,000㎡ のホトリア広場(※大手門タワー側の 敷地と一体整備)を、生物多様性にも 配慮した環境共生型コミュニティ広場 として整備しました図表14  コンセプトは、「交流の森」とし、人 と環境と生物が繋がる交流の森を創出 することで、環境共生を実現すること を企図致しました。 ①環境との調和  高木や低木地被類を、皇居の二の丸 雑木林を意識した在来種や地域種を主 体とした樹種でバランスよく構成し、

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環境共生型コミュニティ広場

「ホトリア広場」の整備

緩やかなアンジュレーション(傾斜) で緑による包まれ感を生み出しました。 水景施設を設けることで、豊かな緑と 水のせせらぎが歩行者に潤いを感じさ せる空間を創出すると共に、皇居外苑 濠の石垣と調和する石垣を設け、自然 と歴史的景観の融合を図っています。 ②生物多様性への配慮  事前に行った生態調査を元に、鳥や チョウやトンボの数種を指標種(誘致 目標)に設定。これらの種を誘致する 為の取り組みとして、食餌木や吸蜜植 物を取り入れ、鳥の巣箱も設置。水景 施設は、一部を浅瀬としてバードパス としての機能を有し、水景の底には荒 木田土を堆積させ、細かな隙間を持つ 多孔質の石積みの採用により、多様な 生物の生息空間を確保しました。 ③交流イベントによる地域活性化  広場内には約60名分のベンチや Wi-Fi環境を整備し、就業者や来街者 が、憩いの場やリラックスしながら働 ける場として利用できる他、大手門タ ワー1階の「3×3 Lab Future」と の連携をはじめとした多様なイベント 開催により、コミュニティ活動の拠点 として地域活性化に寄与します。  このような取り組みをPDCAサイク ル化し、皇居の生物との生物多様性 ネットワークを「見える化」するため、 清掃及び植栽維持管理の一環としての 「生き物モニタリング」や、市民参加 型イベントとしての「生き物モニタリ ング」をスタートさせています。  同広場における生物多様性保全に関 する取り組み内容が評価され、財団法 人都市緑化機構の「社会・環境貢献緑 地評価システム(SEGES)つくる緑」 図表15、一般社団法人 いきもの共生 事業推進協議会(ABINC)の「いき もの共生事業所認証(ABINC認証)[都 市・SC版]」図表16を取得しております。 図表14 ホトリア広場 図表15 SEGES認定 図表16 ABINC認証 ゆったりとした面積に加え、家具・家電・ キッチン等を備え、滞在したその日か ら自宅で暮らしているかのように快適 な生活が始められ、多言語対応・ビジ ネスサポート機能(会議室、インター ネット)、快適な共用空間(ラウンジ、 ジム、プール、屋外テラス等)を提供し、 職住近接のビジネスニーズに対応して います。また、ホテルとして1泊から の短期滞在も可能であり、観光需要に も対応して参ります。

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変わり目

に潜む

ビジネスチャ ンス

2018 年のビル事業を展望する

オフィスビル市場の

「2018 年問題」は杞憂

 2017年のオフィスビル市場は、概ね 好調だったと言える。2018年も、ビル 市況は好調を維持すると思われるが、 それとともに課題も多くなりそうだ。  東京都心5区(千代田、中央、港、 新宿、渋谷)の平均空室率は2017年 11月末時点で3.03%となり、中期的に は(足元の短期的な変動を除くと)、 2008年3月末(2.89%)以来の低水準 で推移している(三鬼商事調べ)。空 室のあるビルの比率は22.98%に過ぎ ず、中期的には2008年4月(22.55%) 以来の低水準となった。  空室率の低下要因は、①2017年の ビル供給量が少ないこと、②緩やかな 景気回復が続いていること、など供給 側・需要側の双方に認められる。さら に、③賃貸条件の多様化が、多様なテ ナントの移動を促していることも大き いと思われる。  ①のビル供給量について、本稿執筆 時点(2017年12月)では、2017年に東 京23区で供給される大規模ビル(延 床面積1万㎡以上)の床面積は73万㎡ にとどまり、過去10年間では3番目に 少ないと見込まれている(森ビル調 べ)。一方、2018年の大規模ビル供給 量は140万㎡と、前年の2倍近くに増 加すると予想されている。このため、 2017年当初は、「2018年からビル市況 が悪化する」と考える不動産関係者が 多かった。しかし、その後もビル市況 が好調を維持したため、この懸念は下 火になってきた。  一般的に、ビル供給量の増加は、市 況の悪化要因と考えられている。しか しオフィス需要が強いエリアで優良ビ ルが供給されると、受け皿を得た潜在 需要が顕在化し、顕在化した需要が新 たな需要を生み出す原動力となる。東 京23区では、2003年や2012年に大規模 ビルの大量供給があり、空室率が一時 的に上昇した時期が見られたが、半年 ∼1年程度で空室は消化された。中期 的には、優良ビルの増加によってビジ ネス環境が整備されたことが、ビル市 場の活性化に寄与した。このように、 オフィス需要が強い場所には「供給が 需要を生む」効果が期待できる。  東京23区では、2018年と2020年に ビル供給量の増加が予想されている が、過去の供給実績と比べると、「大 量供給」というほどではない。2017年 ∼2021年の5年間の供給見込みは年 間103万㎡で、過去30年間の供給ペー スとほぼ同水準である。また、2008年 ∼2020年の供給計画の立地場所を見 ると、ビジネス街としては「一等地」 とされる丸の内・大手町が26%を占め るなど、オフィス需要が強いエリアが 56 56 5555 83 83 100 100108108104104 114 118 183 92 119 74 99 36 72 91 125 216 121 77 154 119 65 86 85 117 175 58 87 109 97 73 140 97 163 40 12件 24件 32件 41件 40件 36件 44件 46件 47件 29件 30件 21件 15件 14 16件 19件 28件 42件 37件 19件 28件 26 21件 25件 31件 29件 32件 16件19件 22件 21件 20件 25件 22件 21件 9件 0 50 100 150 200 250 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 万m2 暦年 未竣工 竣工済 供給件数 注:調査対象は、事務所延床面積1万㎡以上の大規模ビル 出所:森ビル㈱「東京23 区の大規模オフィスビル市場動向調査2017 」(2017 年4 月25日) 図表-1 東京 23 区の大規模ビル供給動向

新春寄稿

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ビジネスチャ ンス

発掘の年

石澤 卓志

みずほ証券㈱ 市場情報戦略部 上級研究員 1958年岩手県宮古市生。81年慶應義塾大学法学部法律学科 卒。日本長期信用銀行、長銀総合研究所、第一勧銀総合研 究所を経て、01年4 月より現職。 国土交通省、経済産業省、 経団連等の委員、国連開発機構技術顧問などを歴任。「東京 問題の経済学」(95年、東京大学出版会)など著書多数。 Takashi Ishizawa 出所:三鬼商事(株) 図表-2 東京都心 5 区の平均空室率と平均賃料の推移 円を大幅に上回っていた(平均賃料 は三幸エステート調べ)。同エリアは、 その後もビルの大量供給が続いている が、大規模ビルについては4万円が賃 料水準のベンチマークになっていると 見られる。  この時点で高額賃料が定着した背景 として、テナントがビルを選別する基 準が変化してきたことが挙げられる。 東日本大震災の以前は、オフィスコス トの削減に力を入れる企業が多く、賃 料水準が低いビルに需要が集中してい た。しかし震災後は、BCP(事業継 続計画)を重視する企業が増え、安全 性が高いビル(その多くは賃料水準が 高いビル)が注目されるようになった。 日本橋エリアについては、ビルの大量 供給が市況悪化を引き起こすとの見方 もあったが、実際は、グレードの高い ビルの増加が賃料相場を引き上げたと 言える。  丸の内・大手町エリアの著名ビルに は6万円台の賃料でテナントを募集し は比較的落ち着いた推移になっている ことも、上記の見方につながったと考 えられる。  たとえば銀座は、潜在的なオフィス 需要は強いものの、商業施設中心の エリアであるため大型のオフィスビ ルが少なく、2016年上半期のオフィス 賃料の上限は3.5万円に抑えられてい た。このような状況下で2017年1月に 竣工した「GINZA SIX」のオフィス 部分の賃料は4.5万円と設定され、銀 座エリアの賃料上限は3割近く上昇し た。その一方で、同エリアの賃料下限 は、2016年上半期は3.0万円だったが、 2017年上半期には2.5万円に低下した (日本経済新聞・オフィスビル賃貸料 調査)。  日本橋は、東京23区内でも最もビ ル供給量が多いエリアの一つと言え る。同エリアで2013年に竣工したビ ルには4万円程度で成約した事例が見 られた。これは、当時の同エリアの大 規模オフィスビルの平均である2.2万 中心となっている。都心部のビル供給 は、既存ビルの建て替えが中心である ため、床面積の純増(ネット)は、表 面的な供給量(グロス)の4割以下に とどまると見られる。  上記②の景気動向については、日本 の景気回復局面は2017年11月時点で 60ヵ月間に達し、高度経済成長期の 「いざなぎ景気」(1965年11月∼1970 年7月の57ヵ月間)を超えて、戦後 2番目の長さとなった。主要シンク タンクが2017年11月末時点で公表し ている景気予想では、2017年度の実質 GDP成長率は1%台後半、2018年度は 1%台半ばとの見方が多い。緩やかな 景気回復が続く中で、オフィス需要も 堅調と予想される。

賃貸条件の多様化が、

市場の活性化に寄与

 上記③の賃貸条件については、不動 産関係者の中に「空室率の低下に比べ て、賃料の上昇が鈍い」との指摘があ る。東京都心5区の平均賃料(坪当た り)は、2017年11月末まで47ヵ月連続 で上昇して19,064円となった(三鬼商 事調べ)。しかしミニバブル期のピー クだった2008年8月時の22,901円を 下回るため、このような見方が出てい ると思われる。  実際には、都心部の新築ビルを中心 に、周辺相場を大幅に上回る強気の賃 料を設定している例が多い。その一方 で、競争力が低下したビルが賃料を引 き下げる例も増えている。賃料の上限 と下限の差が拡大する中で、平均賃料 平均空室率 平均賃料(右目盛) 15,000 16,000 17,000 18,000 19,000 20,000 21,000 22,000 23,000 24,000 2 3 4 5 6 7 8 9 10 07年 1月7月 08年 1月7月 09年 1月7月 10年 1月7月 11年 1月7月 12年 1月7月 13年 1月7月 14年 1月7月 15年 1月7月 16年 1月7月 17年 1月7月 円/坪 %

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ている例も見られるが、ビルごとの差 が大きいようである。同エリアでは、 ビルを一括賃借する大型テナントが多 いが、この場合は、ロビーやエレベー タスペースなどの共用部分が賃借面積 に含まれるため、坪当たりの賃料単価 が計算上低くなる。また、有力テナン トを誘致するために戦略的に賃料を引 き下げるビルも見られる。 このように賃貸条件が多様化したこと が、多様なテナントの移転を促し、オ フィスビル市場の活性化に寄与してい る。最近のテナント移転事例を見ると、 業績が好調な業種には、新築ビルを中 心に、比較的賃料水準が高いビルに入 居する例が目立つ。たとえば、アマゾ ンジャパンは2017年12月竣工の「目 黒セントラルスクエア」に入居すると 見られている。また、グーグルの日本 法人は2018年8月竣工予定の「渋谷ス トリーム」への移転を公表している。 この他、急成長しているものの業歴が 浅い会社には、人材確保面での効果を 期待して、知名度の高いビルに入居す る例も見られる。 一方、老舗の企業には、オフィス関連 の総コストを抑えながら執務環境の改 善を図る例や、統合移転によってグ ループ力の強化を図る例が増えてい る。また、業界の再編に伴う移転も見 られる。最近では、PwCあらた有限 責任監査法人が2017年1月に竣工した 「大手町パークビルディング」に移転、 あずさ監査法人が2017年5月に竣工 した「S-GATE大手町北」に移転、新 日本有限責任監査法人などが所属する EY Japanが2018年1月に完成予定の 「新日比谷プロジェクト」に移転予定、 デロイト トーマツ グループが2018年 10月に完成予定の「丸の内3 2計画」 に移転予定など、監査法人の大型移転 が相次いでいる。  ビル供給量の増加を反映して、現在 入居しているビルが再開発の対象と なったため、移転に踏み切った例も目 立つ。たとえば「第一田町ビル」の 建て替え計画が具体化したことから、 同ビルに本社を構えていた三菱自動 車は、2018年5月に完成予定の「msb Tamachi(ムスブ田町)田町ステー ションタワー S」に本社を移転し、現 本社近くのビルに入居するオフィスも 集約する計画である。また、「第一田 町ビル」を所有する三菱重工業は「丸 の内3-2計画」への移転を計画してい る。  このような移転の活発化によって、 2017年に竣工したオフィスビルの多 くは80%以上の稼働率を達成してお り、2018年に竣工予定のビルもメイン テナントを確保した例が増えている。 さらに2019年に完成予定のビルにも、 「渋谷区宇田川町計画」や「道玄坂一 丁目駅前地区再開発」など、早くも満 室状態となった例が出ている。

地方都市の

オフィスビル市場も

概ね好調

 東京以外の主要都市のオフィスビル 市場も、概ね好調を維持すると予想さ れる。  大阪では、2013年春に20%強の稼働 率でスタートした「グランフロント大 阪」のオフィス部分が市況の重荷と なっていたが、同ビルは2017年3月ま でに、ほぼ満室を達成した。同ビル竣 工後に市況が悪化した影響もあったた めか、大阪では、新築ビルの供給が抑 制された状況が続いている。2016年は ビル供給がなく、2017年も賃貸ビルの 供給は4棟にとどまった。この結果、 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 0 7 年 1月 7月 0 81月年 7月 0 91月年 7月 101月年 7月 111月年 7月 121月年 7月 131月年 7月 141月年7月 151月年7月 161月年 7月 171月年 7月 % 大阪 名古屋 札幌 仙台 福岡 注:仙台の 2011 年 3 月時のデータは、東日本大震災の影響で調査休止。 出所:三鬼商事㈱ 図表-3 主要都市の平均空室率の推移 新春寄稿 2018年のビル事業を展望する

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大阪の平均空室率は2017年11月末時 点で3.74%と、中期的には1992年以来 の低水準で推移している。2018年の供 給予定も、大規模ビルは1棟のみと見 られ、空室率の低下が続くと予想され る。  名古屋は、2015年のビル供給量が過 去最大を記録し、その後も大量供給が 続いたが、地元経済の好調を反映して、 平均空室率は安定した推移となってい る。2017年には大規模ビル2棟を含む 4棟が供給され、このうち大規模ビル 1棟がまとまった空室を残しているが、 11月末時点の平均空室率は5.00%と、 低水準を維持している。2018年以降は ビル供給量が減少するため、空室率の 低下傾向が強まると予想される。  この他の主要都市の状況を見ると、 札幌、仙台、福岡などで、平均空室率 が過去最低水準となっている。2018年 は、札幌を除き、ビル供給量が低水準 にとどまる見込みで、オフィスビル市 場は全国的にも好調を維持すると予想 される。

2018 年は、

ビジネスチャンス発掘の年

 東京圏では2018年に、オリンピッ ク開催に向けてインフラ整備が進む 湾岸エリアへの関心が高まりそうだ。 東京都は、選手村が設置される晴海 を経由して、都心と臨海副都心を結 ぶBRT(バス高速輸送システム)を 2019年までに整備する計画を進めて おり、2015年9月に京成バスを運行事 業者に決定した。都政の混乱によって、 BRTが走る環状2号線の工事が大幅 に遅れているが、2018年中には整備計 画の進捗が期待される。晴海、豊洲、 臨海副都心には、オフィスビルが集積 しているが、交通利便性に難点がある ことなどから、これまではテナントの 入退去が頻繁なビルが目立った。今後 は交通アクセス網の整備によって、企 業の定着率が向上すると思われる。  中期的には、「働き方改革」による テレワークの普及が、オフィス需要に 影響する可能性がある。テレワークに はさまざまな形態があるが、在宅勤務 (自宅を就業場所とするもの)、モバイ ルワーク(顧客先や移動中など、施設 に依存せず、いつでも、どこでも仕事 が可能な状態のもの)、サテライトオ フィス(勤務先以外のオフィススペー スを就業場所とするもの)の3つに大 別できる(総務省資料による)。この うちサテライトオフィスは、1990年代 に展開を試みる企業が増えたものの、 十分な成果が認められない例が多かっ た。当時はIT機器が普及途上であっ たことや、勤労者の意識改革が進まな かったことなどが要因と思われる。し かし現在は通信環境の整備が進み、ま た、過労死・過労自殺が社会問題化し た影響もあって、多くの企業が「働き 方改革」に積極的に取り組んでいる。  テレワークの普及は、都心部のオ フィス需要の減少につながり、「オフィ スビル事業にとって逆風」との見方が ある。しかし「オフィスの立地エリア が拡大する」点は、新たなビジネスチャ ンスとなる可能性がある。現在の住宅 は、SOHO(スモールオフィス・ホー ムオフィス)に対応した物件を除くと、 在宅勤務を想定した仕様を備えていな い。今後は、テレワークの機能を盛り 込んだ「オフィス的な住宅」が必要に なるだろう。また、サテライトオフィ スについても、住宅との親和性を高め た「住宅的なオフィス」が求められる ようになると思われる。また、都心部 のオフィスも、短時間に高密度の業務 をこなすために、より高品質な執務環 境が必要となる可能性が高い。筆者は、 都心部のオフィスは、対面でなければ 交渉できない、高度な情報を扱う「社 交場」的な性格が強まると考えている。  このように、現在のオフィスビル市 場は、さまざまな点について「変わり 目」にあると言える。「変わり目」には、 従来の常識や概念では捉えられない部 分に、さまざまなビジネスチャンスが 潜んでいることが多い。そのチャンス の発掘と発展可能性の探求が、2018年 のオフィスビル事業者の課題と言え る。 出所:みずほ証券 図表-4 テレワークの概要とオフィスビル事業への影響 通勤時間の削減、 環境負荷の低減 〈テレワーク〉 (a)在宅勤務 (b )モバイルワーク (c)サテライトオフィス フレックスタイム・ 裁量労働の導入 新形態の住宅 (オフィス的な住宅) 新形態のオフィス (住宅的なオフィス) モバイル端末の 発達・普及 ホームネットワーク の普及 主婦、高齢者等の 活用 ①「働き方改革」の推進 ②情報インフラの整備 ③労働力不足への対応 『変わり目』に潜む『ビジネスチャンス』発掘の年

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データ」に着目し、IoT /ビッグデー タ時代のビル事業・ビル経営はどうあ るべきか? について考えてみたい。

データの量だけが

「ビッグデータ」ではない

 最初に「ビッグデータ」とは何かに ついて整理しておきたい。不動産に関 わる業界で「ビッグデータ」と聞くと、 どうしても日本では入手可能なデータ が少ないため難しいのではないか? と いう先入観に囚われてしまうことが多 いかもしれない。不動産業界では「情 報の非対称性」とも言われるように、  新年を迎えた現在。読者の皆様のお 手元には、友人からの数多くの年賀状 が届いているのではないだろうか。し かし、それは単なる近況の報告に留ま らず、お互いに自分の保有資産の「今 の価格」を伝えているのに等しい行為 になりつつある。本連載の第2回で紹 介したように、住所さえ分かってしま えば、その友人が住んでいる戸建住宅 やマンションの部屋単位の価格を知る ことは、誰でも無料で瞬時に知ること ができるようになった。これは第2回 で紹介した人工知能の進化だけではな く、いわゆる「ビッグデータ」の蓄積 も伴って実現されたイノベーションで ある。第3回の今回は、この「ビッグ

不動産テックとは何か?

不動産テックによるビル事業・ビル経営の変革の方向性 [図1] 不動産ビッグデータが備えるべき特性 あまり一般にはデータが公開されてお らず、また社内に蓄積されたデータを 活用した取り組みも、他業界に比べれ ば遅れがちだったからである。  しかし、今や決してそうではない。 実際、日本国内の不動産関連の情報整 備は、官民によるオープンデータの推 進や、IoT(モノのインターネット) に見られる各種センサ機器等のテクノ ロジーの進歩によって飛躍的に向上し ており、データの収集・加工・活用が とても容易になってきている。従来に 比べれば、そのデータの量は指数関数 的に増大しており、不動産関連のデー タが少ないというのは過去の話になり つつある。 本連載では、最近メディアを賑わせている人工知能やビッグデータ等のテクノロジーの進化が、ビル事業・ビル経営を どのように変貌させる可能性があるのかについて展望する。第3回目の今回は、IoT(モノのインターネット)の進展 やビッグデータの蓄積によって可能となるイノベーションの方向性について紹介する。 谷山 智彦 株式会社野村総合研究所

IoT/ビッグデータ時代の

ビル事業

ビル経営はどうあるべきか?

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連載 Volume (量) 不動産 ビッグデータ Variety (多様性) Veracity (正確性) Visibility (可読性) Value (価値) Velocity (速度) 不動産データの量が多い 価格、賃料、品質、周辺環境等 不動産データの「種類」や、数 値・画像・テキスト等、提供される 「形式」が多い 従来は不明瞭な(粗い)データ が、正確に(詳細に)提供されて いる 不動産データが分かり易い電 子化され、入手が容易である機 械判読可能な公開データ 従来は手に入らなかった 価値ある不動産データが 利用可能になる 大きなタイムラグがなく、高頻 度に更新されるような不動産 データが入手できる

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 そして、そもそもビッグデータの定 義は、Volume(量)だけではなく、 Velocity(速度、頻度)、Veracity(正 確性)、Variety(多様性)、Value(価 値)、Visibility(可読性)等、幾つか のVによって示される。つまり、ビッ グデータと言っても、データの「量」 だけが重要なのではない。  もちろんデータ量が多いことに越し たことはないが、それだけではなく正 確性や速度も重要な特性となってく る。従来までの不動産関連の情報は、 不正確だったり、頻度も年に1回だっ たりと、あまり使い勝手のよいデータ ではなかった。しかし、それが正確に 捕捉できるデータであったり、リアル タイムに今の状況を判別できるデータ であったりすれば、たとえデータの量 が少なくても、貴重な「ビッグデータ」 となるのである。

データ活用の有無によって

更に拡大する「情報の非対称性」

 これらのビッグデータを活用した不 動産サービスは、第2回で紹介した価 格推定サービスやオフィス空間設計の 最適化だけではなく、各種センサに よって収集される人流データやエネル ギー関連データ等を組み合わせ、都市 や建物のスマートな管理を実現するな ど、さまざまな取り組みが行われてい る。特に、ビル経営・ビル事業におい ては、ビルはデータを生み出す宝の山 とも言え、そのデータをうまく活用し た効率的な経営が可能になるだろう。  これらの不動産ビッグデータ解析に 基づくさまざまなサービスは、従来型 の情報の不透明性・非対称性に依存し ていた不動産ビジネスの構造を大きく 変えてしまう可能性がある。これらの サービスは、情報の透明性を飛躍的に 向上させるだけではなく、不動産に関 わる意思決定を高度化させ、市場の活 株式会社野村総合研究所 上級研究員/ビットリアルティ株式会社 取締役 谷山 智彦 Tomohiko TANIYAMA 慶應義塾大学、同大学大学院、大阪大学大学院経済学研究科博士課程修了、博士(経済学)。 株式会社野村総合研究所に入社後、主に不動産・インフラ資産に関する調査・コンサルティング・ データサイエンス業務に従事。また、国土審議会専門委員(土地政策分科会企画部会)、内閣 府「都市再生の推進に係る有識者ボード」委員等の他、早稲田大学大学院経営管理研究科(ビ ジネススクール)等で非常勤講師を務める。 Profile 性化や資産の有効活用を促進させるこ とにつながるだろう。  そして、情報の非対称性については、 もう一つ大きな変化がある。それは、 蓄積されたビッグデータを活用するプ レイヤーと安穏として何もしないプレ イヤーの間に「新たな情報の非対称性」 が生じる可能性があるということであ る。今後の不動産業界では、透明で公 平な市場において、いかにデータを活 用するのかというデータの活用競争が 始まることになるかもしれない。  ただし、不動産関連の業界において 顕著に見られる事例として、そもそも データがデジタル化されていない状況 が多く見られる。データは大量に蓄積 されているかもしれないが、それは倉 庫に山積みになっている書類の山であ るという状況である。それらを一旦は 電子化して機械可読な状態に変換する ことで初めて、そのデータが宝の山な のか否かが分かる。ビッグデータとい う言葉の前に、デジタルデータ化を検 討すべき段階にいる企業も多いだろ う。

ビッグデータ時代における

ビル事業・ビル経営の方向性

 それでは、IoTやビッグデータ時代 において、これからビル事業・ビル経 営はどのように変化していくのだろう か。ビル事業から得られるビッグデー タを活用し、業務の効率化や生産性の 向上だけではなく、新たなサービス展 開も十分に行えるようになるだろう。  しかし、このような検討をする際に 見落としがちなのが、出力側のIoTで ある。まずは、各種センサ等のIoT機 器によってデータを収集し、そこから 蓄積されたビッグデータを用いて業務 を分析すること、つまり入力側のIoT やビッグデータに着目しがちである。 ところが、本来は、そのビッグデータ 分析から得られた知見を、どのように 既存の業務に活用していくのかという 出力側のIoTの方がより重要である。 いくらビッグデータから貴重な分析結 果が得られたとしても、その結果を踏 まえた効率化を、従来までと同じく人 間が行っていても効果はあまり得られ ない。効率化・自動化のための人工知 能やロボットの活用など、ビッグデー タから得られた知見を実践する仕組み も同時に検討すべきである。  そして、このIoT /ビッグデータを 活用したサービスの立ち上げには、最 低でも1年間は必要であることにも留 意すべきである。新しいサービスの検 証、特にこれから収集するデータを活 用したサービスの場合、少なくとも過 去1年間を通じた検証が必須であり、 検討を開始後すぐに事業化できるもの ではない。  さらに、ビッグデータと言っても、 その分析の結果、特に役に立つ知見は 何も得られなかったという場合も十分 に考えられる。そのため、まずは概念 実証:PoC(Proof of Concept)と呼 ばれるように、その実効性検証を小さ く早めにスタートさせるべきだろう。 まずは小さくても良いから始めてみ る、という姿勢が必要である。

2

不動産テックとは何か? 不動産テックによるビル事業・ビル経営の変革の方向性

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Vol.

31

ビルマネジメントゼミナール

渡 辺

新605条(不動産賃貸借の対抗力)

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新605条(不動産賃貸借の対抗力)   不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不 動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗 することができる。  現行605条には、『不動産の賃貸借は、これを登記した ときは、その後その不動産について物権を取得した者に対 しても、その効力を生ずる。』と定められている。  新民法では、⑴「その後」が削除され、⑵「その他の第 三者」が追加され、⑶ 「その効力を生ずる」が「対抗する ことができる」に改められた。 ⑴「その後」の削除  現行605条は、同条によって賃貸借の効力が生ずる(あ るいは、対抗できる)相手方につき、登記がなされたとき の「その後」の取得者となっており、登記後に権利を取得 した者との間だけに適用されるようにも読める。しかし、 対抗要件を具備した場合に賃貸借の効力が認められる(あ るいは、対抗できる)相手方は、登記後に権利を取得した 第三者に限られず、登記前に権利を取得した者を含むもの とされている(最判昭和42.5.2、判時491号53頁)。  新605条では、このことを明らかにするため、「その後」 を削除した。 ⑵「その他の第三者」の追加  現行605条は、「物権を取得した者」を相手方として、 賃貸借の効力を生ずるとの文言になっている。しかし、賃 借権は、登記などの対抗要件を備えれば、物権を取得した 者に限らず、二重賃貸借における他の賃借人、不動産の差 押債権者などにも対抗できるものとされている(最判昭和 42.5.2)。新605条は、「その他の第三者」という文言を追 加し、この点を明確にした。 ⑶ 「その効力を生ずる」を   「対抗することができる」に変更  賃借人が賃借権の登記をすると、 第三者対抗力(第 三者に対して賃借権を主張することができること)、およ び 賃貸借承継(所有権取得者との関係において、賃貸 人の地位が移転すること)の効果が生じる。  しかし、現行605条では、文言上は、登記の効果として、 賃貸借が「効力を生ずる」として の賃借権承継の効果 だけが定められ、 の第三者対抗力の効果については、 明示的に定められていない。  新民法605条では、「その効力を生ずる」を「対抗する ことができる」と改めて、同条が の問題を取り扱うこ とを明記した。そのうえで、新605条の2に に関する 条文を新設し、賃借権の登記の効果を、2つの条文に分け て整理した図表-1。  平成29年5月26日、民法の一部を改正する法律が国会で可決成立し、同年6月2日に公布された。平成32年4月 1日に施行される見通しである。  今般の民法改正は、明治29年に同法が制定されて以来、財産法の分野では初めての抜本的な見直しである。大 幅に条文が改められ、あるいは新設された。施行までにまだ時間はあるが、賃貸借の実務に携わる者は、賃貸借の 条文を中心に、改正内容を把握しておかなければならない。ビルマネジメントゼミナールにおいても、新民法の条 文がどのようなものになり、実務にいかなる影響があるのかを、今後テーマごとに検討していきたいと考えている。  ところで、不動産の証券化の普及拡大などを背景として、日常的にビルが売買され、ビルの所有権が移転するよ うになっている。ビル所有権移転の賃貸借への影響に関する法律問題は、ビルマネジメント業務における基本知識 である。新民法では賃借権の対抗力と賃貸人の地位の移転につき、条文が見直された。本稿では、不動産賃貸借の 対抗力に関する新605条、および賃貸人の地位の移転に関する新605条の2を取り上げて解説する。

民法改正の賃貸借への影響

「賃貸人の地位の移転」

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新605条の2

(不動産の賃貸人たる地位の移転)

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新605条の2(不動産の賃貸人たる地位の移転)   前条、借地借家法第10条又は第31条その他の法令 の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、 その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人 たる地位は、その譲受人に移転する。 2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受 人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその 不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたと きは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この 場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間 の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた 賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。 3 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の 移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の 登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。 4 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位 が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条 の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2 第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る 債務は、譲受人又はその承継人が承継する。 当然承継の法理  所有者が賃貸している不動産につき、所有権が第三者に 移転したときには、賃借人が賃借権の対抗要件を備えてい れば、当然に賃貸人の地位も第三者(新所有者)に移転す る(当然承継の法理。大判大正10.5.30〈民録27号1013頁〉、 最判昭和39.8.28〈民集18巻7号1354頁〉)。賃貸人の地位 が当然に移転する理由は、賃貸人の債務は、所有者であれ ば履行ができるものであって、目的物の所有権を取得した 者は自動的にこの債務を引き受け、目的物の所有権を手放 した者は自動的にこの債務を免れる状態債務という性格を 有するからである。当然承継の法理は、現行民法では、条 文上は、現行605条から導かれる。建物所有者が賃貸人で あるとき、賃貸人の地位の移転には、賃借人の承諾は必要 がない(最判昭和46.4.23、民集25巻3号388頁)。  新605条の2第1項は当然承継の法理を明文化した。対 抗要件の種類については、『前条、借地借家法第10条又は 第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件』と 表現されている。  ここでの不動産の譲渡による当然承継は、所有者が賃貸 人であって、所有権が移転した場合における新所有者と賃 借人の関係が典型例であるが、地上権者が賃貸人である場 合における地上権の譲受人にも、適用(あるいは類推適用) されることが想定されている注1 。  新所有者に賃貸人の地位が移転(当然承継)するのは、 賃借人が対抗要件を具備している場合である。建物賃貸借 では現実的には想定しづらいが、賃借人が対抗力を具備し ないうちに不動産の所有権が移転したというケース(賃貸 借契約は締結したが、引渡しを受ける前に建物が譲渡され たというようなケース)では、賃貸人の地位は、所有者と第 三者(新所有者)の間の地位承継の合意がある場合に限っ て第三者(新所有者)に移転する(最判昭和46.4.23)注2 。 賃貸人たる地位を留保する合意 ⑴ 最判平成 11.3.25  賃貸人たる地位の当然承継が生ずる場面において、譲渡 人(旧所有者)と譲受人(新所有者)との間の合意によっ て賃貸人たる地位を旧所有者に留保する合意がなされるこ とがある。しかしこのような合意は、最判平成11.3.25(判 Profile 山下・渡辺法律事務所 弁護士

渡辺 晋

昭和 55 年 3月一橋大学卒業。同年 4月に三菱地所㈱入社。平成元年 11月 司法試験合格。平成 2 年 3月三菱地所㈱退社。平成 4 年 4月弁護士登録(第 一東京弁護士会)。平成 14 年 4月山下・渡辺法律事務所開設。日本大学理 工学部まちづくり工学科講師。平成 25 年6月∼ 27 年 10月司法試験考査委 員。平成 27 年4月∼マンション管理士試験委員。 登記の効力 現行民法 新民法 第三者 対抗力 「物権を取得したもの現行605条 に対しても、その効力 を生ずる」 (文言は賃借権継承、 内容は両方をカバー) 新605条 「物権を取得した者そ の他の第三者に対抗す ることができる」 賃借権承継 新605条の2 「不動産の賃貸人たる 地位は、その譲受人に 移転する」 図表-1 対抗力と賃借権承継 注1 部会資料69A。部会資料は、法制審議会民法(債権関係)部 会において、審議にあたっての課題、議論の過程、結果などに関 して公表した資料である。 注2 新民法は、『不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人 たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合 意により、譲受人に移転させることができる。』との条項を新設し た(新605条の3前段)。

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時1674号61頁)によって、『自己の所有建物を他に賃貸 して引き渡した者が右建物を第三者に譲渡して所有権を移 転した場合には、特段の事情のない限り、賃貸人の地位も これに伴って当然に右第三者に移転し、賃借人から交付さ れていた敷金に関する権利義務関係も右第三者に承継され ると解すべきであり、右の場合に、新旧所有者間において、 従前からの賃貸借契約における賃貸人の地位を旧所有者に 留保する旨を合意したとしても、これをもって直ちに前記 特段の事情があるものということはできない。けだし、右 の新旧所有者間の合意に従った法律関係が生ずることを認 めると、賃借人は、建物所有者との間で賃貸借契約を締結 したにもかかわらず、新旧所有者の合意のみによって、建 物所有権を有しない転貸人との間の転貸借契約における転 借人と同様の地位に立たされることとなり、旧所有者がそ の責めに帰すべき事由によって右建物を使用管理する等の 権原を失い、右建物を賃借人に賃貸することができなく なった場合には、その地位を失うに至ることもあり得るな ど、不測の損害を被るおそれがあるからである。』として、 その効力が制限されている。 ⑵ 新民法による賃貸人たる地位留保の扱い  賃貸人たる地位の当然承継が生ずる場面における賃貸人 たる地位留保は、最判平成11.3.25の法理によって制限され るが、実務上、賃貸人たる地位を譲渡人に留保するニーズ は少なくない。たとえば、建物を譲渡しつつ、セール&リー スバック(賃貸人の地位を譲渡人に残しておく方式)によっ て賃料収入を旧所有者が受領するものとする仕組みを採用 するときには、賃借人との従前の賃貸借関係は、旧所有者 に残しておく必要がある。このような場合、実務的には、 新旧所有者間で賃貸人たる地位留保を合意したうえで、加 えて、賃貸人の地位留保に対する賃借人の承諾を求めている。  新605条の2第2項前段は、譲渡人と譲受人との間の合 意によって賃貸人たる地位を譲渡人に留保するための要件 について、明文をもって定めた。最判平成11.3.25では、地 位留保の合意があるだけでは足りないとしているので、こ れを踏まえ①地位留保の合意+②譲受人を賃貸人、譲渡人 を賃借人とする賃貸借契約の締結、を要件とした。これら の要件を満たすと、一般的に用いられる転貸借の関係となる。 ⑶ 譲受人と譲渡人の賃貸借の終了  次に新605条の2第2項後段は、譲受人またはその承継 人と譲渡人の賃貸借(②の賃貸借)が終了したときは、賃 貸人たる地位は、譲渡人から譲受人またはその承継人に当 然に移転することを定めた。不動産の譲受人が、さらに別 の第三者(新譲受人)に不動産を譲り渡していることもあ り、その場合には、譲渡人と譲受人の賃貸借における賃貸 人の地位は、新譲受人に再移転していることから、新2項 後段は、「譲受人またはその承継人」とされている。  以上の仕組みによって、不動産の賃借人は、不動産の賃 貸人の地位をめぐる譲渡人と譲受人の関係がどのように変 遷しようとも、対抗要件を具備していれば、賃借人としての 地位を保持でき、譲受人やさらにその先に再譲受人などか らの所有権に基づく明渡請求に応じなくてよいことになる。 新所有者の登記の必要性  不動産の譲渡がなされ、賃貸人たる地位が譲受人に移転 する場合、譲受人が、賃貸人の地位を賃借人に主張する(= 主に、賃料請求)ためには登記を要する(最判昭和 49.3.19、民集28巻2号325頁)。  新605条の2第3項は、「賃貸人たる地位の移転は、賃 貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなけれ ば、賃借人に対抗することができない」と定め、最判昭和 49.3.19の考え方を明文化した。新1項の場合(=対抗力 のある賃借権の付着した不動産が譲渡されたケース)だけ ではなく、新2項後段の場合(=いったん賃貸人の地位留 保の合意がなされて譲渡人に地位が留保されたが、その後 に地位が移転するケース)においても、登記が基準となる。  所有者である賃貸人が不動産を譲り渡したときには、譲 受人は所有権移転の登記をすれば、賃借人の同意の有無に かかわりなく、賃貸人の地位をもって、賃借人に対抗する ことができる。 図表-2 賃貸人たる地位の留保 譲渡人 (旧所有者) 譲受人 (新所有者) 所有権 移転 原則:効力がない(最判平成11.3.25) 間に賃貸借契約があれば、有効 【賃貸人の地位を留保する合意】 賃貸権 契約 賃借人

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