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日本における動物に対する理学療法の実際

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 722 42 巻第 8 号 722 ~ 723 頁(2015 年) 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 大会シンポジウム 8. 日本における動物に対する理学療法の実際* 依 田 綾 香**. 近年,伴侶動物を対象とする小動物臨床分野の獣医療は高度. い考え方が必要だと思われる。さらに,重度の障害をもつ動物. 化し,重度な疾患に対応できるようになってきた。それにより,. の飼い主は,昼夜を問わずに動物の介護におわれるため,動物. 動物の寿命が延びた一方,大きな障害をかかえた動物も増え,. の障害から飼い主の社会生活に障害がでることも少なくない。. 飼い主の介護負担も大きくなり,飼い主と動物の生活に障害が. 重度の障害をもつ動物は夜中に飲水や排泄のために吠えて飼い. でることも少なくない。日本の獣医療に「リハビリテーション」. 主を起こすので,飼い主は動物を抱えて階段を降りたときに転. もしくは「理学療法」という言葉がでてきて約 10 年が経ち,. 落して大怪我をしたり,何度も夜中に起こされるので睡眠不足. 獣医療従事者にもその重要性が認識されつつある。また,飼い. から体調不良を起こし,飼い主の仕事に支障をきたしたりする. 主も動物を家族の一員としてとても大切にするようになり,障. 場合もある。よって,日本における動物のリハビリテーション. 害をうけた動物を家族にもつ飼い主はリハビリテーションを強. は,動物と飼い主の生活障害になるものに対してアプローチす. く希望されるようになった。. る必要もあるのではないかと思われる。それには,ヒトの場合. 現在,動物のリハビリテーションを行っている獣医療従事者 1). のように患者と家族を支える広い意味でのリハビリテーション. の多くは,Canine Rehabilitation Certificate Program(CCRP). の考え方が獣医療でも必要である。日本における動物のリハビ. や Certified Canine Rehabilitation Therapist(CCRT)2) な ど. リテーションの目的はさらなる議論が必要であり,理学療法士. の海外の専門コースで学び,それをもとに実践している。しか. のもつ知識や経験が獣医療の中でも生かせるのではないかと思. し,海外と日本ではリハビリテーションの対象や目標も大きく. われる。. 異なる。海外において対象となる動物は,おもに狩猟犬などの. また,ヒトの医療ではリハビリテーションに多くの専門職種. 使役犬やアジリティー競技等に参加するスポーツドッグであ. がかかわっているが,獣医療ではまだヒトの医療における理学. る。リハビリテーション目標も海外では使役犬は使役犬の役割. 療法士の担当する分野しか存在していない。実際に行われてい. を果たせるようになることであり,スポーツドッグは競技会へ. る動物の理学療法は,関節可動域検査や形態測定など解剖学的. の復帰であり,運動機能もヒトでいうアスリートレベルが必要. な評価と歩様検査(一般的に獣医療では「歩容」とは記載しな. とされる。また,海外と日本では動物に対する価値観が大きく. い)を行い. ことなり,海外ではその動物が自分の役割を果たせない場合は. いる。しかし,プロトコルに基づいて治療を行っていても歩様. リハビリテーションの対象とならないため,重度の障害をもつ. が改善しない症例も多い。その症例を詳細にみてみると,治療. 動物が対象になることは少ない。しかし,日本では使役犬やス. プログラムそのものが不適切であったり,またプロトコルは時. ポーツドッグの割合は低く,いわゆるペットと呼ばれる伴侶動. 間的に区切られて治療プログラムが立てられているため,治療. 物がおもな対象であり,重度の障害をもつ動物も多い。また,. 後の再評価も行われずに,次のプログラムに進んでいたり,治. 飼い主と日常生活が送れることがリハビリテーション目標とな. 療前後において理学療法学的評価が十分に行われていないよう. り,運動機能もほとんどの場合は屋外へのお散歩や屋内を自由. に思われる。動物における理学療法学的評価は,筋力,協調運. に移動できればいいレベルである。したがって,海外での動物. 動などの検査はできず,感覚検査にも限度があり,評価項目も. リハビリテーションは「機能回復」が目的となっており,現在. 限られている。また「歩様検査」とは,動物はどの肢に疼痛が. 我が国でも「機能回復」のみを目標にリハビリテーションが実. あるかなど患者自身の愁訴はとれず,飼い主も肢は痛そうにし. 施されているのが現状であるが,これを目標にして動物リハビ. ているがどの肢だかわからないという場合が多いため,四肢の. リテーションを実施するとうまくいかないことが多い。海外と. 疼痛が主訴である場合,獣医師がまずどの肢に跛行が認められ. 日本での対象症例の違いや目標の違いを考えると日本の獣医療. るかを調べる検査である。よって歩様検査とは跛行肢の検出と. においては,リハビリテーションは機能回復だけにとどまらな. 跛行の程度,つまり立脚時間や歩幅,疾患別の歩行の特徴で判. *. Rehabilitation and Physical Therapy for Companion Animal in Japan ** 藤井寺動物病院動物人工関節センター (〒 583–0033 大阪府藤井寺市小山 1–2–37) Ayaka Yoda, PT, DVM: Fujiidera Animal Hospital キーワード:動物,リハビリテーション,理学療法. 3). ,疾患別プロトコル 4) をもとに治療を実施して. 断していくものであり,理学療法士の行う「動作分析」とは視 点が異なっている。そのため,関節可動域などの解剖学的な改 善はあるにもかかわらず歩様が改善されない場合などがあり, 機能解剖学的な評価と歩行との関連を解釈されることなく理学 療法が実施されているように思われる。.

(2) 日本における動物に対する理学療法の実際. 723. 獣医療に「動作分析」という言葉がでてきていないのは,動. 学や生理学などの基礎学問の他に,「獣医療」そのものも学ぶ. 物の動作解析がまだ十分に解明されていないからであると思わ. 必要がある。小動物臨床分野における獣医療は動物の健康を維. れる。近年,動物の歩行解析が犬では行われはじめたが,犬種. 持し,疾患を治療するだけが役割ではない。この分野の獣医療. 差も大きく,形態計測なども不十分である。また運動力学にお. の対象は「伴侶動物」と呼ばれている動物である。その伴侶動. いては,床反力は正常犬や前十字靭帯断裂などの罹患犬につい. 物とはなにか,またそれは人にとってどういう存在なのかを知. ては測定 5)6) されているが,関節モーメントやパワー,筋電. る必要がある。その伴侶動物のそばには常に「飼い主」という,. 図などはほとんど研究されていない。この動物の運動学,運動. 医療にはない特有の存在がある。その飼い主は動物をどう思. 力学の分野がもっと発展していけば,動物に対する理学療法も. い,どのように一緒に生活しているのかを知る必要がある。ま. さらに適切に実施していくことが可能であるだろう。この運動. た,飼い主によって動物に対する価値観は様々であるため,そ. 学,運動力学などの基礎知識が動物の理学療法には必要である. の価値観の多様性も理解し,接していかなくてはならない。そ. が,獣医師もこの学問に関して獣医大学での教育科目に含まれ. のようなことを理学療法士は学び,理解したときに,獣医療へ. ていないためほとんど知識はもっていない。よって,理学療法. の有意義な貢献ができるのではないだろうか。動物の理学療法. 士のもつこれらの基礎知識は,獣医療の基礎分野においても生. が発展し,動物と飼い主の生活を維持・向上させていくために. かせるはずである。. も,医療,獣医療の垣根を越えた協力が期待される。. 獣医療では「日常生活活動」という言葉もまだ聞きなれない ものである。また,動作といえば歩行のみを指し,それ以外の 動作には着目されていない。しかし,動物のリハビリテーショ ンが動物と飼い主の生活の障害まで含めてアプローチする必要 があるならば,動物の生活の自立度もきちんと把握していかな くてはいけないと思われる。これに関して議論できるようにな るには,まだ様々な問題を乗り越えていかなくてはいけない が,そこまで見据えたリハビリテーションの知識を理学療法士 は提供できるであろう。 しかし,「医療」と「獣医療」は背景からまったく違うもの であるので,理学療法士がもっている知識や経験がそのまま使 えるわけではない。理学療法士のもつ知識や経験を獣医療でも 最大限に生かすためにも,それらをきちんと獣医療にあわせて 転換していく必要がある。それには,理学療法士が動物の解剖. 文 献 1) The University of Tennessee Canine Rehabilitation Certificate program. http://ccrp.utvetce.com(2015 年 7 月 6 日引用) 2) Canine Rehabilitaion Institute. http://www.caninerehabinstitute. com(2015 年 7 月 6 日引用) 3) 藤永 徹:TEXTBOOK 小動物のリハビリテーション入門(第 1 版).インターズー,東京,2011,pp. 61–68. 4) Bockstahler B, Levine D, et al.: 犬と猫のリハビリテーション実 践テクニック.枝村一弥,佐野忠士(訳),インターズー,東京, 2010,pp. 136–296. 5) Budsberg SC, Verstraete MC, et al.: Force plate analysis of the walking gaitin healthy dogs. Am J Vet Res. 1987; 48: 915–918. 6) Voss K, Damur DM, et al.: Force plate gait analysis to assess limb function after tibial tuberosity advancementin dogs with cranial cruciate ligament disease. Vet Comp Orthop Traumatol. 2008; 21(3): 243–249..

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