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初任期教員のリアリティ・ショックがワーク・エンゲイジメントに及ぼす影響

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-87 292

-初任期教員のリアリティ・ショックがワーク・エンゲイジメントに及ぼす影響

○小川 倫弘、東條 光彦 岡山大学大学院社会文化科学研究科 【問題と目的】 近年,精神疾患による教師の休職や退職の増加が問 題になっている。文部科学省(2016)の調査によれば, 平成27年度に精神疾患によって休職した教育職員は 5,009人である。さらに近年、教員の年齢構成は若年 者の割合が増加しており,新規採用者には即戦力が求 められている。しかしながら大学における限られた経 験では生徒や保護者を相手にする教員の業務に習熟す ることは難しく,「リアリティ・ショック」と呼ばれ る現実とのギャップを感じることも多い。田上・山 本・田中(2004)は,教師のストレスに影響を与える 要因として,教職経験年数を指摘し,経験年数の浅い 教師は多様な問題に直面しやすいことを示した。メン タルヘルスの指標として、バーンアウトやうつ傾向を 用いた研究は数多いが,多くの教員は精神的な不調に 陥ることなく勤務していることにも目を向ける必要が ある。そこで本研究では,初任期教員におけるリアリ ティ・ショックや感情労働などの要因が彼らのワー ク・エンゲイジメントにどのような影響を与えている のかを検討する。 【方法】 対象は A 市 B 市の小学校・中学校に採用された初任 者研修受講対象者229名( A 市134名・ B 市95名)名。 研修時に質問紙を配布し、回答を求めた。調査は 3 回 ( 5 月・10月・ 2 月)実施した。回答者は 1 回目が222 名, 2 回目が208名, 3 回目が193名であった。継時変 化の分析にあたっては, 3 回すべての調査が紐付けで きた170名分のデータを用いた。 【倫理的配慮】 本研究の目的や方法を研修実施機関に説明し承認を 得た上で、実施した。対象者へは文書にて説明し、同 意を得た。 【質問紙の構成】 ・ 対象者の属性について:年齢・校種・担任業務・講 師経験年数・勤務時間・睡眠時間 ・ ワーク・エンゲイジメント:日本語版Utrecht Work Engagement Scale(Shimazu・Schaufeli・Kosugi et al.,2008), 3 因子17項目(以下WE得点) ・ ソーシャルサポート:ソーシャルサポート尺度(小 牧,1994), 2 因子14項目 ・ 被援助志向性:被援助志向性尺度(田村・石隈, 2001)のうち「援助関係に対する抵抗感の強さ」に 関する 4 項目(以下SS得点) ・ 感情労働:中学校教員用感情労働尺度(EWST)(矢 部・東條,2011) 3 因子13項目 ・ リアリティ・ショック:リアリティ・ショック尺度 (原田・松永・中村,2009), 5 因子30項目(以下RS 得点) 【結果と考察】 1 . 対象者の属性による違い 3 回の調査で得られた各尺度の得点ごとに,校種間 で平均点に差があるかを検定した。その結果,年齢と 講師経験年数,SS得点に有意な差が見られた。その他 の尺度得点の平均値には有意な差がないこと,SS得点 は,講師経験年数と弱い相関傾向,または有意に弱い 相関がある( 5 月:r=-.141, 10月:r=-.246, 2 月: r=-2.82)ことから校種による差は少ないものとして 以下の分析を行った。 2 . ワーク・エンゲイジメントの継時変化 WE得点は、有意に減少し、その後有意に回復した(F [2, 338] = 12.64, p<.001)(図 1 :棒グラフ)。下 位尺度ごとの変化を検討した結果、「活力」と「熱意」 は有意に減少後、有意に増加したが、「没頭」は 2 回 目の調査で有意に低下したものの、 3 回目の調査にお いて 2 回目の結果と有意な変化は見られなかった。 佐々木・保坂・明石(2010)の言う, 2 学期に入り, 授業や学級経営で困難に直面している様子が推察され る。 3 . ソーシャルサポートの継時変化 SS得点に有意な変化は見られなかった。 4 . 被援助志向性の継時変化について 有意な変化は見られなかった。援助関係に関する抵 抗感は,個人の特性であり,短期間では変化しにくい と考えられる。 5 . 感情労働の継時変化 感情労働尺度得点の上昇,つまり,感情労働の高ま りが見られた。下位尺度ごとの変化を検討すると, 「自己の感情表出の操作」にのみ有意な上昇が見られ た(F [2, 338] = 12.77, p<.001)。 6 . 勤務時間・睡眠時間の継時変化 勤務時間は 5 月の12.89時間から10月12.57時間, 2 月12.27時間へ一貫して有意に減少した(F [2, 320] = 12.81, p<.001)。睡眠時間は5.59時間から5.94時 間へ有意に増加した[ F(2,326)=20.40, p<.001]。 仕事に慣れたことで,業務効率が上がったと推察され る。しかし,依然として過労死ラインの月80時間以上

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-87 293 -の残業をおこなっている状況であり,早急な改善が望 まれる。 7 . ワ ー ク・ エ ン ゲ イ ジ メ ン ト と リ ア リ テ ィ・ ショックの関係 RS得点の高・中・低により,ほぼ同数の 3 群(n=76, 73, 73)に分け, 5 月の調査におけるWE得点を比較し た。その結果、RS得点が高い群は低い群よりも有意に WE得点が低かった(F [2, 219] = 3.644, p<.05)。 しかし,10月, 2 月の調査においては有意な差は見ら れなかった。松永・中村・原田・石井(2014)は,リ アリティ・ショックを感じるような体験が, 6 か月後 のストレス反応に影響する可能性を示したが,ワー ク・エンゲイジメントへの影響においては,中・長期 的な予測因子とすることは難しいであろう。 8 . 各要素との関係 ワーク・エンゲイジメントを構成する要素を検討す るために, 3 回の調査それぞれにおいて,勤務時間・ 睡眠時間・ソーシャルサポートの下位尺度・被援助志 向性・労働感情の下位尺度,リアリティ・ショックの 下位尺度を説明変数,ワーク・エンゲイジメントを目 的変数としたステップワイズ法による重回帰分析を 行った(表 1 )。その結果,情緒的サポートと生徒感 情の積極的感知がワーク・エンゲイジメントに正の影 響があることが示された。児童生徒の感情を積極的に 感知することで,より児童生徒を望ましい結果へと導 くことができ,その結果WEが高まったと推測される。 また,理想と現実のズレを感じていることがWEに負の 影響があることが示された。 9 . リアリティ・ショック,情緒的サポートとワー ク・エンゲイジメントの関係について RS得点高・中・低群をそれぞれ 5 月調査時における 情緒的サポート得点の高・低で 2 群に分け,情緒的サ ポートの量がWEの変化とどのような関係があるのかを 検討した(図 1 :折れ線グラフ)。その結果, 5 月時 には低リアリティ・ショック低サポート群(低低)と 低リアリティ・ショック高サポート群(低高)の間に 有意差が見られた。これは小牧(1994)や片山・水野 (2017)などの,サポートの高さがうつ傾向を予防す ること・充実感を向上させることと共通する結果であ る。しかし、10月時にはどちらのペアの間にも,有意 差が見られなくなっている。情緒的サポートの効果は 一時的なものであることが示唆され、継続的にサポー トをすることが必要だと考えられる。 【主要参考文献】 原田ゆきの・松永美希・中村菜々子 (2009). 中学校 教師のリアリティ・ショックとメンタルヘルスの関 連, 日本行動療法学会大会発表論文集, 35, 376-377

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