J. Jpn. Acad. Mid., Vol. 17, No. 1, pp. 25-34, 2003. 6
原
著
異 常妊 娠 妊婦 のパ ー トナー の役 割 遂 行 を支 え るケ ア
Support
and care for partners
of
high-risk
pregnancies
新 川 治 子(HarukoSHINKAWA)* 要 約 目 的 異 常 妊 娠 妊 婦 のパ ー トナ ー は,ア ン ビバ レ ン トな心 理状 態 に あ る に もか か わ ら ず,経 済 的 だ け で な く,心 理 的 に も妊 婦 に対 す る キ ーパ ー ソン の役 割 を取 る こ とが 期 待 され て い る。 そ こで彼 らの役 割 遂 行 を支 え る た め に 実践 され て い る看 護 ケ ア を明 らか に す る こ とを 目的 と した 。 方 法 半 構 成 的 な面 接 を 広 島 県 内 の2施 設 で異 常 妊 娠 妊 婦 の ケ ア を実 践 し て い る看 護 者21名 に実 施 した 。 そ して,272単 位 のパ ー トナ ー の役 割 遂 行 を支 え る看 護 ケ ア につ い て 内容 分 析 を行 った 。 結 果 看 護 ケ ア が 実施 され る場 面 は,看 護 者 が パ ー トナ ー と直 接 接 す る場 面 だ け に限 られ な い こ とが 明 らか に な っ た 。 また,パ ー トナ ー の役 割 遂 行 を支 え る看 護 ケ ア は,《 関係 づ く り》,《役 罰 遂 行 能 力 の把 握 》, 《適 切 な情 報 提 供 》,《空 間 的 時 間 的 配 慮 》,《サ ポ ー タ ー の 養 成 》,《任 せ て お く》 と い う6種 類 に分 類 で きた。 結 論 パ ー トナ ー の 役 割 遂行 を支 え る看護 ケ ア は6種 類 に分 類 で きた。 今 後 は積 極 的 に待 つ側 面 に も看 護 者 の意 識 が 向 け られ る こ とが 望 まれ る。 キ ー ワー ド パ ー トナー,異 常妊 娠,キ ー パ ー ソ ン,役 割,支 援 Abstract PurposeThe purpose of this research is to shed light on how nursing practices support the role of partners of high-risk pregnancies (HRP). Partners of HRP are often ambivalent about their roles and responsibilities. They not only have an important role in the economic support of their partners, but they are also expected to be the key-person in her psychological support system.
*日 本 赤 十 字 広 島 看 護 大 学(The Japanese Red Cross Hiroshima College of Nursing)
2002年11月29日 受 付2003年6月5日 採 用
異常 妊 娠妊 婦 のパ ー トナ ー の役割 遂 行 を支 え るケ ア
Method
Semi-structured interviews were conducted with 21 nurses who care for HRP at two hospi-tals in Hiroshima Prefecture. Content analysis was done on 272 incidents of nursing support and care for the partners of HRP.
Results
Data used was not solely restricted to incidents where nursing staff had direct contact with partners of HRP. With respect to the role of partners, nursing care was divided into 6 classifications ; "creating a relationship", "assessing partners competency", "providing appro-priate information", "spatial and temporal considerations", "support role education", and "partner response"
. It was assumed that each of these care classifications contained a posi-tive intervention aspect, and a response intervention aspect.
Conclusion
It has become clear that the 6 classifications of care proposed in this research can be ob-served in the care partners of HRP receive. ? It is hoped that nursing staff will realize the importance of observing the responses of artners of HRP.
Key Words partner, high-risk pregnancy, key-person, role, support
Iは じ め に 異 常 妊 娠 妊 婦 は正 常 妊 娠 妊 婦 に比 べ.明 らか に 強 い不安 を体 験 す る(久 坂他,1997;福 島他,1990) が,夫 か ら適 切 な サ ポ ー トを得 た 妊 婦 は,夫 か ら 支 え られ て い る と い う実 感 を得,心 の安 定 を得 る こ とが で き る。 この こ とか ら,こ の時 期 の夫 の 妻 に対 す る心 理 的 サ ポ ー トは重 要 で あ る とい う こ と が 言 わ れ て お り(長 南,1994),核 家 族 の 定 着 に よ り一 段 と重 要 な役 罰 とな っ て い る。 同時 に,夫 が そ の後 の育 児 に果 た す 役 割 も大 きい こ とか ら, 正 常 経 過 を た どる妊 婦 とそ の 夫 同 様,入 院 中 も親 子 関 係 の 成 立 や,夫 婦 関係 の 充 実 の た め の準 備 を 行 わ な けれ ば な らな い(山 崎,1997)。 しか し,異 常 妊 娠 妊 婦 の 夫 に と って,妊 娠 経 過 が 異 常 に転 じ妻 が 入 院 した こ とは,今 後 の妊 娠 経 過 や 出産 が一 段 と予 測 しに くい もの とな る。 また, 日々 大 き くな る妻 の腹 部 や胎 児 に 接 す る こ との で き る環 境 か ら面 会 に行 か な け れ ば会 え な い うえ に, 面 会 時 間 とい う時 間 的 な制 約 を受 け る。 さ らに大 部 屋 と い う プ ラ イバ シ ー に関 す る制 約 を受 け,妊 婦 あ るい は胎 児 との 共 有 空 間 の変 更 や 愛 着 行 動 の 制 限 を 強 要 され る。 そ の た め,妊 娠 が 正 常 に経 過 して い れ ば 「announcement」,「moratorium」, 「focusing」とい う3つ の時 期 を経 て妊娠 に適 応 し, 妻 と共 に 出 産 に 向 き合 っ て い く(may,1982) が,妻 の 入 院 に よ り自分 の 通 常 の 生 活 が妨 げ られ た こ とに対 す る胎 児 へ の嫉 妬 や,自 分 の男 性 とし て の 欠 陥 に対 す る不 安,妻 と胎 児 に対 す る心配 と い うア ン ビバ レ ン トな感 情 を抱 え,夫 と して の 役 割 を遂 行 す る こ と に限 界 を感 じて い る とい う こ と が 報 告 さ れ て い る(山 崎,1997;PenticuffJH, 1982)。 また,筆 者 が行 った 切 迫 早 産 で 入 院 して い る妊 婦 の夫 に対 す る継 続 的 な面 接 調 査(新 川,2000) か ら も,彼 らは入 院 の全 期 間 を通 じ て妊 婦 や胎 児, 医 療 者 に対 し疎 外 感 や 無 力 感 を感 じて い る こ とが 明 らか に な っ て い る。 その た め,夫 が 異 常 妊 娠 妊 婦 に対 し キ ー パ ー ソ ン とし て の役 割 を遂 行 で き る よ う に,看 護 者 は 何 らか の 看 護 ケ ア を提 供 す る こ とが 望 まれ るが,そ の 実 際 に つ い て は明 らか に さ れ て い な い。 そ こで 本 研 究 で は 異 常 妊 娠 妊 婦 の 夫 の 役 割 遂 行 を支 え るた め に,現 在 看 護 者 に よ って 行 わ れ て い る看 護 ケ ア を明 らか に す る こ と を 目的 と した。 用 語 の 操 作 的 定 義 異 常 妊 娠 妊 娠 中 に妊 娠 に 伴 う何 らか の 医 学 的 理 由 で 入 院 治 療 が 必 要 とな っ た もの とす る。
異 常妊 娠 妊 婦の パ ー トナ ーの 役割 遂 行 を支 え る ケア パ ー トナ ー 「妊 婦 の 夫 」 とさ れ る人 び とは,現 代 の 家 族 構 造 に お い て は法 律 上 の 婚 姻 関 係 に限 られ な い。 そ こで 本稿 で は以 下 「パ ー トナ ー」 とす る。 II研 究 方 法 1.研 究 デ ザ イ ン 本 研 究 は,正 常 妊 娠 か らの逸 脱 に伴 い入 院 治療 を余 儀 な くさ れ た妊 婦 や胎 児 を 支 え るパ ー トナ ー に対 し,ど の よ うな場 面 で どの よ うな看 護 ケ ア を 看 護 者 が行 って い るか を明 らか にす るた め に,看 護 者 自 身 に これ まで の 経験 を語 って も らい,そ れ を記 述 し分析 す る質 的 記 述 的 方 法 を用 い た 。 2.研 究対 象 対 象 者 の 選 択 に あた っ て は,看 護 体 制 や 入 院 中 の 異 常妊 娠妊 婦 の 重 症 度,治 療 方 針 の違 い な ど に よ る看 護 ケ ア内 容 へ の 影 響 を明 確 に して お く必 要 が あ る。 そ こで,広 島 県 近 郊 の異 常 妊 娠妊 婦 に対 し入 院 治 療 が 可 能 な第2次 医 療 機 関 で,現 在 多 く の 病 棟 で 用 い られ て い る チ ー ム ・ナ ー シ ン グ とプ ライ マ リ ・ナ ー シ ン グ を それ ぞれ 実 践 して お り, 入 院 中 の 異 常 妊 娠 妊 婦 の重 症 度 や 治 療 方 針 が 類 似 して い る2施 設2病 棟 の協 力 を得 た 。 この2施 設 は いず れ も私 立 病 院 で,年 間 分 娩 数 は400か ら500件 で あ り,異 常 妊 娠 妊 婦 が 常 時1名 か ら7名 入 院 して い た。 また,主 な異 常 妊 娠 に よ る入 院 は,妊 娠 後 期 の切 迫 早 産,軽 度 の妊 娠 中毒 症,前 置 胎 盤,悪 阻 な どで あ っ た。 入 院 期 間 は お お むね2週 間 か ら2か 月 で,ま れ に4か 月 以 上 の 長 期 にわ た る こ とが あ っ た。 い ずれ の施 設 も原 則 として32週 以 前 の 出産 に関 して は母 体 搬 送 が 行 わ れ て いた 。 チ ー ム ・ナ ー シ ング を実 践 して い るA 病 棟 は産 婦 人 科 病 棟 で あ り,プ ラ イ マ リ ・ナ ー シ ング を実 践 し て い るB病 棟 は混 合 病 棟 で あ っ た。 対 象 者 は異 常 妊 娠 妊 婦 とそ のパ ー トナ ーへ の看 護 ケ ア を実 践 し て い る看 護 者48名 の う ち,病 棟 師 長 の推 薦 が あ り本 人 の承 諾 を得 られ た21名 と した。 3.調 査 期 間 平 成13年9月3日 か ら平 成13年11月26日 までで あ る。 4.デ ー タ収 集 方 法 これ まで に 異常 妊 娠 妊 婦 の パ ー トナ ー に対 し て 看 護 ケ ア を実 施 した 中 で,印 象 に残 っ て い る場 面 を1場 面 以 上 想 起 して もら い,半 構 成 的 な面 接 方 法 を用 い,そ の時 の か か わ りにつ い て尋 ね た。 こ の時 の イ ンタ ビ ュー ・ガ イ ドの 柱 は,① い つ,ど の よ うな場 面 で,② 看 護 ケア として パ ー トナ ー の 役 割 遂 行 を支 え るた め に何 を どの よ う に行 っ た の か,と した。 面 接 は1名 に対 し1回 実 施 し,そ の 内容 は対 象者 の許 可 を得 て録 音 お よ び メ モ を取 っ た。 5.分 析 方法 得 られ た デ ー タ か ら,パ ー トナ ー の 役 割 遂 行 を 支 え るた め に看 護 者 が行 った 看護 ケ アの 内 容 に つ い て語 られ た もの を1単 位 と して,272単 位 につ い てKrippendorff(1980)を 参考 に内容 分 析 を した。 また,デ ー タ の信 頼 性 と妥 当性 を高 め るた め に, 対 象 者 に カ テ ゴ リー 内容 の 確 認 の 依 頼 をす る と と もに,修 士課 程 以 上 を修 了 し,質 的 研 究 法 を用 い て研 究 を行 って い る3名 の ス ーパ ーバ イ ズ を得 た。 6.倫 理 的 配慮 看 護 部 長 お よび 病棟 師 長,病 棟 主 任 に対 し,文 書 と口頭 で研 究 の趣 旨 を説 明 し承 諾 を得 た 後,対 象者 の選 定 の協 力 を依 頼 した 。対 象者 に対 して は, 面 接 開 始 前 に本 研 究 の 目的 お よ び具 体 的 方法 を文 書 お よび 口頭 で 説 明 した 。 また この時,同 意 を得 た 後 もい つ で も面 接 の 中 断 が で き,そ の こ と に よ る不 利 益 を被 らない こ とや,匿 名 性 の厳 守,語 ら れ た 内 容 を対 象 者 の 承 諾 な し に他 言 す る こ とや 研 究 目的 以 外 に使 用 しな い こ と,語 られ る内 容 に対 し中 立 的 な立 場 を と り批 評 しな い こ と を約 束 し, 同 意 書 に署 名 を も らった 。 さ らに,対 象 者 が 安 心 して面 接 を受 け る こ とが で き る よ う に院 内 の個 室 を利 用 し,外 部 に話 し声 が漏 れ な い よ う配慮 した 。 III結 果 1.対 象 の 特 性 対 象 者 は,病 棟 師 長1名,病 棟 主 任1名 を含 む 21名 で あ り,職 種 は,助 産 師17名,看 護 師4名 で あ っ た。 年 齢 や経 験 年 数 に関 す る構 成 は,表1, 日本 助産 学 会誌 第17巻 第1号(2003.6) 27
異 常 妊 娠妊 婦 のパ ー トナ ーの 役割 遂 行 を支 え るケ ア 表1年 齢 表2経 験年数 表2の とお りで あ る。 2.看 護 者 に よ って パ ー トナ ー に対 す る看 護 ケ ア が 実施 され て い る場 面 対 象 者21名 の1人 当 た りの面 接 時 間 は,18分 か ら51分 で 平 均32.8分 で あ っ た。 そ の 中 で,1人 当 た り2か ら9場 面 が 想 起 さ れ,合 計119場 面 か ら 272単 位 の 看 護 ケ アが 語 られ た 。 そ の 中 に は,直 接 パ ー トナ ー と対 面 す る,し な い に か か わ らず, どの よ うな場 面 にお い て も共 通 して心 が けて い る 態 度 として 語 られ た もの もあ っ た が,今 回 の 分 析 か ら は除 外 した 。 その 結 果,表3に 示 した よ うに,看 護 者 に よ っ て パ ー トナ ー に対 す る看 護 ケ ア が 実施 され て い る 場 面 は,パー トナ ーが 面 会 して い る時 が 最 も多 く (73場 面,61.3%),次 い で 妊 婦 と の 会 話 の 場 面 (10場 面,8.4%),入 院 時 ・ア ナ ム ネ聴 取 の 場 面 (9場 面,7、6%)が 多 か っ た 。 ま た,パ ー トナ ー が 面 会 し て い る時 や 入 院 時 ・ア ナ ム ネ 聴 取 の 場 面,ム ンテ ラ時 や ム ンテ ラ後 とい う よ う に看 護 者 が 直 接 夫 と対 面 あ る い は対 話 す る 場 面 が 全 体 の 81.5%で あ り,妊 婦 との会 話 の場 面 や,主 治 医 と の 間,カ ン フ ァ レ ン ス時 ・師 長 との 間 とい う よ う に,直 接 対 面 し な い場 面 が18.5%で あ った 。 3.パ ー トナ ー の 役 割 遂 行 を 支 え る看 護 ケ ア パ ー トナ ー の 役 割 遂 行 を支 える た め の 看 護 ケ ア は,看 護 体 制 の 異 な るA病 棟,B病 棟 の いず れ に お い て も 《関 係 づ く り》,《役 割 遂 行能 力 の 把 握 》, 《適 切 な 情 報 提 供 》,《空 間 的 時 間 的 配 慮 》,《サ ポ ー タ ー の 養 成 》,《 任 せ て お く》 とい う6種 類 に分 類 す る こ とが で きた 。 以 下 に6種 類 の 看護 ケ ア に つ い て,そ れ ぞれ の カ テ ゴ リー に 含 まれ る看 護 ケ ア を 〈 〉,実 際 に看 護 者 に よ って 語 られ た 具 体 例 を 「 」 で 記 し説 明 す る。 1)《 関 係 づ くり》 《関 係 づ く り》 と は,パ ー トナ ー が 少 しで も早 く新 しい 環 境 に慣 れ,妊 婦 を十 分 にサ ポー トで き る よ うに す る こ とを 目的 とす る看 護 ケ アで あ る。 そ の た め 看 護 者 は,〈 挨 拶 を す る〉,〈 自己 紹 介 を す る 〉,〈 話 しか け る 〉 とい う看 護 ケ ア を通 じ て,妊 婦 との 間 だ け で な く妊 婦 のパ ー トナ ー との 間 に も,新 しい 関 係 を形 成 す る と同時 に,パ ー ト ナ ー に対 し必 要 な時 に は い つ で も対 応 す る準 備 が あ る とい う メ ッセ ー ジ を伝 えて い た。 また,看 護 体 制 の違 い に よ り具 体 的 な ケ ア に違 い が み られ, チ ー ム ・ナ ー シ ン グ を行 って い る看 護 者 は く挨 拶 を す る 〉,プ ラ イ マ リ ・ナ ー シ ン グ を行 っ て い る 看 護 者 は 〈 自己 紹 介 を す る 〉 こ とに よ りパ ー トナ ー との 関係 をつ くっ て い た。 (1)〈 挨 拶 を す る 〉:チ ー ム ・ナ ー シ ング を実施 し て い るA病 棟 で 行 わ れ,パ ー トナ ー と コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ン を と る き っ か け と して 行 わ れ て い た。 「常 識 範 囲 で の挨 拶 はす る よ う に して い る。 分 娩 係 で な けれ ば あ ま り名 乗 りは し な い」 (2)〈 自己 紹 介 をす る 〉:プ ラ イ マ リ ・ナ ー シ ン グ を実 施 して い るB病 棟 で の み 行 わ れ て お り,自 己 紹 介 をす る と同 時 に,自 分 が 相 談 の窓 口 で あ る と い う看 護 者 と し て の役 割 に つ い て 説 明 して い る場 合 もあ った 。 「受 け持 ち妊 婦 の 夫 に も必 ず『助 産 婦 の ○ ○ で す,受 け持 ちで す 』 と名 乗 る」 「受 け持 ち に 限 らず,保 健 指 導 の時 で も担 当す る 時 に は 自己 紹 介 を して い る」 (3)〈話 しか け る 〉:す べ ての 看 護 ケ アの うち2番 目 に 多 く行 わ れ て い る看 護 ケ ア で あ る。 看 護 者 に よっ て そ の 程 度 に差 は み られ た が,い ず れ も話 し か け る こ とを通 じてパ ー トナ ー との コ ミュニ ケ ー シ ョ ン を図 っ て い た。 「家族 に対 して は,コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ンを取 る よ うに して い る。 で き る範 囲 で声 をか けた り して。 な か な か 向 こ うか ら声 を か け に くい じ ゃ な い で す か 」 「面 会 して い れ ば言 葉 だ け はか け る よ うに してい る。 何 が ど う とい うわ け で は な い が 『ど うで す か』 とか,『 大 変 で す ね』 とか 」
異常 妊 娠妊 婦 の パー トナー の役 割遂 行 を支 え るケ ア 表3パ ー トナ ーの役割 遂行 を支 え る看護 ケ ァ とケ アが 実施 され て い る場面 2)《 役 割 遂 行 能 力 の 把 握 》 《役 割 遂 行 能 力 の把 握 》 は,看 護 者 が パ ー トナ ー の その 時 々 の心 理 状 態 や,病 状 や治 療 に対 す る理 解 度 か らパ ー トナ ー の役 割 遂 行 能 力 を把 握 す る こ と を 目的 とす る看 護 ケ ア で あ る。 そ の た め この 中 に は,〈 パ ー トナ ー か ら直 接 情 報 を得 て 把 握 す る 〉,〈 妊 婦 か ら直 接 情 報 を得 て 把 握 す る 〉, 〈パ ー トナ ー の表 情 や 態 度 か ら推 察 す る〉,〈 妊 日本 助産 学 会誌 第17巻 第1号(2003.6) 29
異 常 妊娠 妊 婦 のパ ー トナ ーの 役割 遂 行 を支 え るケ ア 婦 との会 話 か ら推 測 す る 〉 とい う看 護 ケ ア が含 ま れ た 。 中 で も 〈パ ー トナ ー の 表 情 や 態 度 か ら推 察 す る 〉 は,多 くの 看護 者 が 面 会 時 の看 護 ケ ア と し て挙 げ,10.7%を 占め た 。 (1)〈 パ ー トナ ー か ら直 接 情 報 を得 て 把握 す る〉: パ ー トナ ー の感 じて い る不 安 や 疑 問,家 事 へ の 参 加 度 な ど を直 接 パ ー トナ ー に質 問 す る こ と に よ り,役 割 遂 行 能 力 を アセ ス メ ン トして い た 。 「夫 に夫 婦 の 関 係 や 不安 に 関 す る質 問 を して情報 を集 め た 」 (2)〈 妊 婦 か ら直 接情 報 を得 て把 握 す る 〉:検 温 や ベ ッ ド ・サ イ ド ・ケア の 時 に,最 近 のパ ー トナ ー の様 子 や パ ー トナ ー の 家 事 参 加 度 な どに つ い て妊 婦 に質 問 す る こ と に よ り,パ ー トナ ー の役 割 遂 行 能 力 を ア セ ス メ ン トして いた 。 「検 温 を行 って い る時 の妊 婦 との 話 の 中 で,夫 の 気 持 ち を 聞 き出 して状 況 を判 断 した」 (3)〈パ ー トナ ー の表 情 や態 度 か ら推 察 す る〉:看 護 者 は直 接 パ ー トナ ー に質 問 をす るだ け で は な く, ア ナ ム ネ聴 取 時 や ム ンテ ラ に同 席 した時 のパ ー ト ナ ー の表 情 や 態度 か ら も,心 理 状 態 や 理 解 度 をア セ ス メ ン トして い た 。 ザわ か っ て い るか ど うか,自 分(私)の 言 って い る こ とを正 しい と思 って 聞 い て い る の か,そ れ と も反 発 しな が ら聞 い て い るの か,そ れ と もわ か ら な い の か,顔 色 とか 相 槌 とか を微 妙 に うか が い な が ら話 を す る。退 院 して か ら協 力 で き るの か な あ とか,そ の辺 の と こ ろ も ち ら ち ら と うか が い な が ら」 (4)〈妊 婦 との 会話 か ら推 測 す る 〉:妊 婦 と交 わ す 日々 の さ さい な会 話 の 中 か ら も,パ ー トナ ー の 役 割 遂 行 能 力 を把 握 し よ う と して い た。 「い ろい ろ な ケア をす る時 に何 気 な く世 間話 な ど を して。 ち ょ っ と問 題 が あ る ん じゃ な い か な と思 っ た り。妊 婦 の態 度 に現 れ た りして(夫 の状 況 に) 気 づ く」 3)《 適 切 な情 報 提 供 》 《適 切 な情 報 提 供 》 は,妊 婦 や 胎 児 の現状 や予 測 され る経 過,妊 婦 に対 し て行 わ れ て い る看 護 ケ ア に 関 す る情 報 を看 護 者 が パ ー トナ ー に提 供 す る こ とに よ り,パ ー トナ ー が 妊 婦 や胎 児 の状 況 に応 じ た サ ポ ー トを で き る よ う にす る こ とや,パ ー トナ ー 自身 に安 心感 を与 え る こ とを 目 的 とす る看護 ケ ア で あ る。 同時 に この 看 護 ケ ア は,パ ー トナ ー に 胎 児 の存 在 を意 識 化 させ る こ とに よ っ て父 親 意 識 を育 て る こ と も目的 とす る。 そ のた め この中 には, 〈妊 娠 に関 す る教 育 〉,〈 妊 婦 ・胎 児 の状 態 を伝 え る 〉,〈 看 護 ケ ア を 見 せ る ・説 明 す る 〉,<医 師 との仲 介 をす る 〉,〈 ム ン テ ラ に立 ち会 い補 足 す る 〉,〈 柔 軟 に か か わ り方 を選 ぶ 〉 とい う看 護 ケ ア が含 まれ た 。 (1)〈 妊 娠 に 関 す る教 育 〉:妊 婦 が 入 院 す る と, 妊 娠 に伴 って 妊 婦 に生 じ る身 体 的 変 化 をパ ー トナ ー が 目 の 当 た りにす る機 会 が 著 し く減 少 す る。 さ らに,両 親 学 級 な どパ ー トナ ー が 妊 娠 や 出産 に関 す る情 報 を得 る機 会 が 大 幅 に 削 減 され る こ とが 予 測 され る。 そ こで,看 護 者 はパ ー トナ ー の面 会 時 にパ ン フ レ ッ トやVTRを 利 用 し て妊 娠 に関 す る 情 報 を提 供 して,パ ー トナ ー に胎 児 の 存 在 や成 長 を意 識 化 させ 父 親 意 識 を育 て る と と もに,今 後 の 予 測 を立 て るた めの 知 識 を提 供 し て い た。 「入 院 して母 親 学 級 が 全 部 で きな い こ とが あ るの で,ご 主人 と一 緒 に ビ デ オ 見 て も ら っ た り,こ ち らか らお話 で 経 過 を説 明 して み た り とか 。 や は り 家 に妊 婦 さん が 毎 日 い な い の で,多 分 イ メ ー ジ が つ き に くい で し ょうか ら,少 しそ うい うの で動 機 づ け み た い な 。情 報 もな い で し ょ うか ら」 (2)〈 妊 婦 ・胎 児 の 状 態 を伝 え る 〉:パ ー トナ ー の 面 会 時 に は,ほ とん どの看 護 者 が 超 音 波 ドプ ラ ー 機 や 胎 児 心拍 監視 装 置 を 用 い て,胎 児 心 音 をパ ー トナ ー に も聞 か せ て い た。 また,タ イ ム リー な妊 婦 や 胎 児 の状 態 を看 護 者 がパ ー トナ ー に伝 え るた め に,治 療 方 針 や 検 査 結 果,妊 婦 の 入 院 中 の様 子 な どを伝 えて い た 。 「(胎児)心 音 を聞 く時 とか は一 緒 に聞 い て も ら っ て,(胎 児 が)お な か に い て 元 気 な こ と を確 認 し て も ら う。 そ の 日 に診 察 な ど を して い れ ば,そ の 時 の結 果 な ど も一 緒 に伝 え る よ うに して い る」 (3)〈 看 護 ケ ア を 見 せ る ・説 明 す る 〉:看 護 者 は 妊 婦 や胎 児 に対 し何 らか の 看 護 ケ ア を実施 す る時 に は,パ ー トナ ー に で き るだ け そ の場 に い る よ う に促 した り,妊 婦 や 胎 児 に対 し て行 わ れ て い る着 護 ケ ア や 治 療 を見 せ た り,説 明 を して い た 。 「ほ ん と うは朝 夕 とか,休 日 な ん か だ った ら一 緒 に家 に い て,赤 ち ゃ ん 元 気 だ とか,お 母 さ ん元 気 だ とか い う あ た りを認 識 す る は ず の と こ ろが で き
異 常 妊娠 妊 婦 のパ ー トナ ーの 役割 遂行 を支 え る ケア な い。 自分 が 知 ら ない とこ ろ で,何 し て い る の か な っ て 時 に,そ う い う の(CTG)一 緒 に 見 た ら 少 しイ メ ー ジわ くか な とか 。 教 育 効 果 とい うよ り 安 心 して も ら え るか な と」 (4)〈 医 師 との 仲 介 を す る 〉:医 師 に よ る説 明 が パ ー トナ ー に必 要 で あ る と看 護 者 が 判 断 した時 に 医 師 に働 きか けた りこ とや,パ ー トナ ー に医 師 か らの説 明 を聞 くよ う に促 した りし て いた 。 「入 院 時 に ア ナ ム ネ を取 る時 に ご主 人 に 『ど うで す か』 っ て聞 いた ら,『 うー ん』 って い う複 雑 な表 情 だ っ た か ら,理 解 さ れ て な い の か な っ て考 え て,(夫 に)『(医 師 に)話 して も らった ほ うが い い で す ね 』 と言 っ て医 師 に ム ン テ ラ を依 頼 した 」 (5)〈 ム ンテ ラ に立 ち会 い 補 足 す る 〉:看 護 者 は で き るだ けム ン テ ラ に立 ち会 い,パ ー トナ ー の 理 解 度 に応 じ て補 足 説 明 を して い た。 「ム ン テ ラ が あ る時 に は だ い た い だ れ か が つ い て,先 生 と話 した 後 で よ くわ か っ てい ない 時 も あ るの で,ち ゃ ん と理 解 で き て とい うか 状 況 が 理 解 で きた か どうか とい う確 認 は必 ず し ます 。 先 生 も 本人 で は な く家 族 と話 して決 め る こ と もあ るの で, そ うい う時 に は補 助 的 な説 明 を した り。 不 安 を取 る よ う に し て い ます 」 (6)〈 柔軟 に か かわ り方 を選 ぶ 〉:パ ー トナ ー の気 持 ち が 動転 しや す い入 院 時 や 緊 急 手術 の 時,パ ー トナ ー の 理解 力 や 性 格 に応 じて,看 護 者 はパ ー ト ナ ー へ の情 報 提 供 の しか た を工 夫 して い た 。 「手術 の流 れ に関 す る説 明 は,そ の時 その時 に伝 え る こ とで,頭 に入 る よ う に して い る。一 度 に説 明 して も混乱 して し ま うだ ろ うか ら」 「す ご く神 経 質 な 夫 の時 に は,カ ンフ ァ レンス で 取 り上 げ て,態 度 や 言動 を統 一 して,あ ま り不 用 意 な こ とを言 わ な い よ うに して い る」 4)《 空 間 的 時 間 的 配 慮 》 《空 間 的 時 間 的 配 慮 》 は,看 護 者 が パ ー トナ ー と妊 婦,あ る い は胎 児 に対 し空 間 や 時 間 を配 慮 す る こ とに よ り,パ ー トナ ー と妊 婦,あ るい は胎 児 が本 来 もてた で あ ろ う家 族 として の環 境 に近 づ け, 健 康 的 な 親 子 関 係 の 成 立 や 夫 婦 関 係 の 充 実 とい う 課 題 の達 成 を促 す 。 それ と同 時 に,入 院 とい う特 殊 な環 境 に あ って も,パ ー トナー が 臆 す る こ とな く妊 婦 を サ ポ ー トで き る よ う にす る こ とを 目的 と す る看 護 ケ ア で あ る。 そ の た め この 中 に は,<プ ラ イベ ー トな場 所 をつ くる 〉,〈 本 来 の時 間 を つ くる 〉 とい っ た 看護 ケ ア が 含 まれ た。 (1)〈 プ ライ ベ ー トな場 所 をつ くる 〉:面 会 時 間 に は で き る だ け2人 だ け の 空 間 を確 保 で き る よ うに カ ー テ ンを 引 くな ど して場 所 を区 切 っ て い た。 「(妊婦 とパ ー トナ ー は)会 う時 間 が 少 な いか ら で き るだ け2人 だ け に して あ げ よ う とい う感 じで, (処置 の後 は)カ ー テ ン を閉 めて 出 て行 く」 (2)〈 本 来 の時 間 をつ くる 〉:入 院 して いな けれ ば もてた で あ ろ う夫 婦 本 来 の時 間 を少 しで も確 保 で き る よ う にす るた め に,面 会 時 間 に 関 す る制 限 を 緩 めた り,看 護 者 が 早 め に退 席 した り とい った こ とが 行 わ れ て いた 。 「ご主人 が い らして い る時 に は,私 も話 を した い けれ ど,貴 重 な 時 間 なの で あ ま り処 置 が な い よ う に とか,立 ち入 ら な い時 間 を い っ ぱ い作 っ て あ げ な い と。 し ゃべ りた い こ と もい っ ぱ い あ る ん じゃ な い か な 。 まあ,し ゃべ らな くて も2人 で い る と い う その 空 間 と い うの が 大 事 だ と思 う の で,長 い ほ うが い い か な と」 5)《 サ ポ ー タ ーの 養 成 》 《サ ポ ー タ ー の 養 成 》 は,看 護 者 が 直 接 的 か つ 具体 的 にパ ー トナ ー に介 入 す る こ とに よ り,パ ー トナ ーが 新 た な サ ポー トの 方法 を獲 得 す る こ とや, 現 在 行 っ て い る こ とに 自信 を もて る よ う に な る こ と を目 的 とす る看 護 ケ ア で あ る。 それ に よ っ て, 看 護 者 と協 働,あ るい は 主体 的 に妊 婦 をサ ポ ー ト で きる よ うに な る こ とを 目的 とす る。 そ のた め こ の 中 に は,〈 具 体 的 な 援 助 方 法 を提 案 す る 〉, 〈パ ー トナ ー の意 思 を尊 重 す る 〉,〈 パ ー トナ ー に主 導 権 を ゆ だ ね る 〉,〈 パ ー トナ ー の ケ ア を支 持 す る 〉 とい う看 護 ケ ア が含 まれ た 。 (1)〈 具体 的 な援 助 方 法 を提 案 す る 〉:看 護 者 は パ ー トナ ー に対 し,頻 繁 に面 会 に 来 る こ とや,車 椅 子 で散 歩 に行 く こ と,ベ ッ ドサ イ ドで 足 浴 を行 う こ とな ど,パ ー トナ ーが 実 施 可 能 な 具 体 的 な援 助 方法 を提 案 し て い た。 「奥 さ んが(上 の子 に会 い た くて)た びた び 泣 か れ た り して い る時 に は,旦 那 さん が 来 た 時 に 『お 子 さん を連 れ て き て あ げ て くだ さい 』 とか 言 う。 結 構 奥 さん の気 持 ち を知 らな い旦 那 さ ん も多 い し, 言 え な い奥 さ ん もい らっ しゃ るか ら」 (2)〈 パ ー トナ ー の 意 思 を尊 重 す る 〉:看 護 者 は 日本助 産 学会 誌 第17巻 第1号(2003.6) 31
異 常 妊 娠妊 婦 のパ ー トナ ーの 役割 遂 行 を支 え るケ ア パ ー トナ ー に対 し,処 置 時 に同 席 す る か ど うか の 確 認 や,看 護 ケ ア や 治療 に対 す る要 望 を聞 き,パ ー トナー が 自 らの意 思 で サ ポ ー ト行 動 を取 る こ と が で き る よ うに して い た 。 「妊 婦 さ ん と旦那 さ ん,両 方 に 『今 か ら赤 ち ゃん の 心 音 を聞 い て もい い で す か?一 緒 に聞 き ます か?』 っ て確 認 して か らす る よ う に して い る」 (3)〈 パ ー トナ ー に主 導 権 を ゆ だ ね る 〉:パ ー ト ナ ー が 主 体 的 に治 療 や看 護 に 参加 し妊 婦 をサ ポ ー トで き る よ うに,妊 婦 やパ ー トナ ー 自身 の サ ポ ー ター とな る人 物 の選 択 をパ ー トナ ー に任 せ る こ と や,パ ー トナ ー 自身 が で き る こ と に 自 ら気 づ け る よ う にか か わ っ て い た。 「胎 児 の異 常 に関 す る告 知 の 時 に,他 に身 内 のだ れ をム ン テ ラ に参 加 させ る か とか,ど の よ う な タ イ ミ ン グで 告 知 す るか とか,夫 に相 談 し決 め て も らっ た 」 「退 院 が近 くな った 時,具 体 的 に夫 に何 が で き る か を1日 の 流 れ を説 明 し,イ メ ー ジ して も らい な が ら夫婦 と共 に 話 し合 った 」 (4)〈 パ ー トナ ー の ケ ア を 支 持 す る 〉:パ ー トナ ー の役 割 遂 行状 況 に対 し てね ぎ らい の 言葉 をか け る こ とや,褒 め る,良 い こ とを して い る とい う こ とを伝 え る こ とで看 護 者 は意 識 的 にパ ー トナ ー の ケ ア を支 持 し,パ ー トナ ー が 自 ら の行 動 に 自信 を もっ て継 続 して い くこ とや,よ り主 体 的 に役 割 を 遂 行 して い く こ とを促 して い た 。 「長 期 安 静 の た め に腰 痛 の あ る妊 婦 の腰 を さす っ て い る ご主 人 に対 し,「 助 か ります。… … 患者 さん もそ うし て い た だ け る と楽 な の で,し て あ げ て い た だ け ます か 』 と声 を か け た 」 6)《 任 せ て お く》 《任 せ て お く》 は,看 護 者側 か ら能 動 的 に何 らか の ア プ ロー チ を行 う の で は な く,パ ー トナ ー や 妊 婦 か ら要 請 が あ っ た時 に い つ で も応 答 で き る よ う に,準 備 し て待 つ とい う看 護 ケ ア で あ る。 その た め この 中 に は,<よ ほ どの こ とが起 こ らな いか ぎ りは か か わ らな い 〉,〈 妊 婦 か ら要 望 が あ った 時 に か か わ る 〉,〈 パ ー トナ ー か らの 要望 が あ った 時 に か か わ る 〉 と い う看 護 ケ ア が含 まれ た 。 (1)〈 よ ほ どの こ とが起 こ ら な い か ぎ り はか か わ らな い 〉:看 護 者 は妊 婦 の 状 況 を踏 ま えて,パ ー トナ ー の役 割 遂 行 能 力 や 役 割 遂 行 上 の 問題 の 存 在 を見 極 め,パ ー トナ ー に妊 婦 の サ ポ ー トを一 任 し た り,見 守 った り して い た 。 「『あ あ した ほ うが 良 い で す よ』,「こ う した ほ う が 良 い で す よ』 とい う こ と は,で き るだ け言 わ な い よ う に して い る」 「何 らか の 家 族 的 な 問 題 や 妊 婦 に精 神 的 な 問題 な どが な け れ ば,パ ー トナ ー に対 し て意 識 的 に はか か わ らな い」 (2)<妊 婦 か ら要 望 が あ っ た 時 に か か わ る>1パ ー トナ ー が 妊 婦 の ニ ー ドに沿 っ た サ ポ ー トを行 え る よ う に,看 護 者 が妊 婦 の 求 め に応 じ て,妊 婦 と パ ー トナ ー との 間 に 入 って い た 。 「妊 婦 さん の しん どさが ご主 人 に はわ か らな い み た い で,妊 婦 さ ん に 「言 っ て や っ て くだ さい,わ か らな い んで す 』 と言 わ れ て。 「とにか く身体 のサ イ ンで す か ら応 援 し て あ げ て くだ さ い』 っ て い う ふ うに指 導 して 。旦 那 さん も,『 まあ助 産 婦 さん が そ う言 うな ら,な る ほ ど』 とい う感 じ でわ か っ て も らえ て 」 (3)〈 パ ー トナ ー か らの 要 望 が あ っ た 時 に か か わ る 〉:パ ー トナ ー の ニ ー ドに応 じて,看 護 ケ ア を 提 供 して い た 。 「パ ー トナー か ら質 問 が あ った時 に,そ の質 問 の 内 容 や レベ ル に合 わ せ て 説 明 を す る よ う に して い る」 IV考 察 本研 究 は,異 常 妊 娠 妊 婦 の パ ー トナ ー が 自 らの 役 割 を遂 行 で き る よ う にす る た め に,現 在 行 わ れ て い る看 護 ケ ア に つ い て 看 護 ケ ア が行 わ れ て い る 場 面 と内 容 か ら追 究 した 。 そ の結 果,直 接 的 な か か わ りだ け で な く間接 的 な か か わ りの 中 で 行 わ れ て い る看 護 ケ ア の存 在 が 明 らか とな っ た 。 1.パ ー トナ ー と直接 対 面 す る場 面 と対 面 しな い 場 面 これ まで に,ど の よ う な場 面 で看 護 者 が 異 常 妊 娠 妊 婦 の パ ー トナ ー に看 護 ケ ア を 実践 して い るか とい う こ とに つ い て 明 らか に した研 究 は ほ とん ど な い。 そ こ で,本 研 究 で は看 護 ケ ア場 面 を特 定 せ ず,面 接 の 過 程 で看 護 者 が 想 起 した もの す べ て に つ い て デ ー タ と し て 収 集,分 析 を 行 う こ とに よ
異 常妊 娠妊 婦 の パー トナー の役 割遂 行 を支 え るケ ア り,可 能 な か ぎ り広 範 囲 にわ た る看 護 ケ ア場 面 に つ い て の追 究 を行 う こ と を試 み た. 妊 娠 期 はパ ー トナ ー に とっ て も妊 婦 に とっ て も 親 子 関 係 を成 立 させ,夫 婦 関 係 や パ ー トナー 関 係 を 充 実 さ せ る た め の 大 切 な 時 期 で あ る。 そ の た め,妊 婦 が 妊 娠 に対 し抱 い て い る不 安 を心 理 的 に サ ポ ー トす る こ とは,パ ー トナ ー の重 要 な役 割 と な る。 そ こで,異 常 妊 娠 妊 婦 のパ ー トナ ー に か か わ る看 護 者 か らは,入 院 や 異 常 妊 娠 の た め に制 約 され た 部 分,特 にパ ー トナ ー 自身 で は対 処 が 困 難 と思 わ れ る こ とに対 す る か か わ りが語 られ る こ と が 予 測 され た。 例 えば,面 会 場 所 や面 会 時 間 に対 し配 慮 す る こ とや,両 親 学級 な どで得 られ た で あ ろ う知 識 や情 報 の提 供,慣 れ な い病 室 で面 会 して い る時 に少 しで も リ ラ ッ クス で き る よ うな声 か け とい っ た看 護 ケ ア で あ る。 しか し実 際 に は,看 護 者 はパ ー トナ ー に妊 婦 や 胎児 に 関 す る知 識 や情 報 を提 供 す る に して も,面 会 時 に直 接行 う こ と もあ れ ば,適 任 者 に委 託 す る こ ともあ った 。 また そ れ 以 前 に,提 供 し よ う とす る知 識 の 内容 や そ の難 易 度 が パ ー トナー の能 力 に適 した もの とな るよ うに, 妊 婦 や パ ー トナ ー 自身 か らの パ ー トナ ー に 関 す る 情 報 収 集 も重 要 な 看 護 ケ ア と して行 わ れ て い た。 この よ う に,異 常 妊 娠 妊 婦 の パ ー トナ ー の 役割 遂 行 を支 え るた めの 看 護 ケ ア は直 接 的 な 場 面 に限 ら れ ず,直 接 対 面 し な い場 面 で も実 施 され て お り, 直 接 か か わ る こ との み が 大 切 なの で はな く,パ ー トナ ー の状 況 に適 した ケ ア を提供 す る こ とが 重 要 で あ る とい う こ とが 改 め て示 され た 。 しか し,こ の よ う な看 護 ケ ア を実 践 して い る看 護 者 た ち に あ って も 「パ ー トナ ー の面 会 の多 くは, 看 護 者 の人 数 の 減 る準 夜 帯 で あ るた め に,十 分 に か か わ る こ とが で き て い ない 」 と語 って い る。 こ の こ とか ら,パ ー トナ ー の 役 割 遂 行 を支 え るた め の看 護 ケ ア は,直 接対 面 した 時 にの み 行 う こ とが で き る もの で あ る と考 え られ て い る とい う こ とが わ か る。 そ こで 少 な くと も約20%の 看 護 ケ ア はパ ー トナ ー に直 接対 面 す る場 面 以 外 に行 わ れ て い る とい う研 究 結 果 を伝 え る こ と は,自 らが 実 践 して い る看 護 ケ ア を再 認 識 させ,「 十 分 に看 護 ケ ア が 実 践 で きて い な い 」 と い う看 護 者 の 思 い を払 拭 し,看 護 ケ ア 実践 へ の 意欲 を高 め る こ と に役 立 っ と考 え る。 さ らに,パ ー トナ ー に直 接 対 面 しな い 場 面 で の看 護 ケ ア を意 識 化 させ,看 護 ケ ア の 実 践 場 面 を拡 大 させ る こ とに も活 用 で き る と考 え る。 2.積 極 的 介 入 と積 極 的 に待 つ と い うか か わ り これ まで看 護 ケア を考 え る時,「 何 か を しな け れ ば な らな い」 とい う 「積 極 的 介 入 」 の 側 面 が 強 調 さ れ て きた とい う印 象 が あ る。 しか し,本 研 究 結 果 か ら異 常 妊 娠 妊 婦 のパ ー トナ ー の 役 割 遂 行 を支 え るた めの 看 護 ケ ア に は,「 積 極 的 介 入 」 だ けで な く,「 積 極 的 に待 つ 」 とい うか か わ りの タ イ プ が あ る とい う こ とが 考 え られ た。 今 回明 らか に な っ た6種 類 の 看護 ケ ア につ い て み てみ る と,《任 せ て お く》 とい うか かわ りが 「積 極 的 に待 つ」 看 護 ケ ア に該 当 す る。 この 看護 ケ ア は,看 護 者 側 か ら積 極 的 に介 入 す るの で はな く, パ ー トナ ーや 妊 婦 か ら要 請 が あ っ た 時 に,求 め ら れ て い る こ とに対 して い つ で も応 答 で き る よ う に 準 備 して待 つ とい う もの で あ る。 一 方,他 の5種 類 の看 護 ケ ア に つ い て は,そ れ ぞ れ に積 極 的 に介 入 す る側 面 だ け で な く積 極 的 に待 つ とい う側 面 も もっ て い る と考 え られ た 。 な ぜ な ら,《 関 係 づ く り》 の 中 の 〈話 しか け る 〉 や 〈 自己紹 介 をす る 〉 は積 極 的 な介 入 で あ る と同時 に,積 極 的 に待 つ か か わ り と してパ ー トナ ー の苦 しい 気 持 ち を聴 く, い つ で も相 談 に乗 る準 備 が あ る とい う メ ッセ ー ジ も送 っ て い る。 また,《 役 割 遂 行 能 力 の 把 握》 に つ い て もパ ー トナ ー や妊 婦 に質 問 をす る こ とに よ っ て,パ ー トナ ー の役 割 遂 行 能 力 を把 握 す る と同 時 に,そ の こ とに つ い てパ ー トナ ー の こ とを気 に とめ て い る とい う こ とや,パ ー トナ ー の 疑 問 や不 安 にい つ で も応 答 す る準 備 が あ る とい う メ ッセ ー ジ も伝 えて い るか らで あ る。 この よ う な 「積 極 的 に待 つ 」 とい うか か わ り は,自 らの 感 情 を吐 露 で き る場 所 が 少 な く,入 院 中 の妊 婦 や 胎 児 に対 し無 力感 や疎 外 感 を感 じて い る異 常 妊 娠 妊 婦 のパ ー ト ナ ー(新 川,2000)に 対 し て,彼 らの気 持 ち を喚 起 す る。 そ うす る こ と に よ っ て彼 らの気 持 ち を落 ち着 か せ,妊 婦 の 不 安 に支 持 的 な態 度 で 臨 む とい った パ ー トナ ー と して の 役 割 遂 行 を支 持 す る とい う重 要 な か か わ りの タ イ プで あ る と考 え る。 面 接 を通 じ,「 積 極 的 に待 つ 」 か か わ り を意 識 的 に 実 践 して い る看 護 者 は限 られ て い る こ とが 推 測 され た 。 しか し,パ ー トナ ー の もつ 役割 遂行 能 力 が 最 日本 助 産学 会 誌 第17巻 第1号(2003.6) 33
異常 妊 娠妊 婦 の パ ー トナー の役 割遂 行 を支 え る ケア 大 限 に 発 揮 さ れ る よ う に 支 え て い くた め に は, 「積 極 的介 入 」 の 側 面 ば か りで な く,「積 極 的 に待 つ 」 とい う看 護 ケ ア の 側 面 も意 識 して 実 践 され て い く必 要 が あ る と考 え る。 Vお わ り に 看 護 者 が パ ー トナ ー に対 し質 の 高 い 看護 ケ ア を 行 う こ とは,パ ー トナ ー の妊 娠 期 に お け る成 長 過 程 を助 長 し,パ ー トナ ー として の 役 割遂 行 を助 け, そ の こ とに対 す る満 足 感 を与 え る だ けで な く,最 終 的 に は妊 婦 の こ こ ろ を援 助 す る こ とに もつ な が る。 本 研 究 の結 果 か ら,異 常 妊 娠 妊 婦 のパ ー トナ ー に対 し看 護 ケ ア が 提 供 され る場 面 は,面 会 時 な ど の直 接 パ ー トナ ー と看 護 者 が 接 す る場 面 に 限 られ ず,妊 婦 との 会 話 の 中 で さ え も行 わ れ て い る と い う こ とが 明 らか にな った 。 ま た,パ ー トナ ー の 役 割 遂 行 を 支 え る看護 者 の ケ ア と して は,6つ の 看 護 ケ ア が抽 出 ・分 類 され,こ の6つ の看 護 ケ ア の うち,《 任 せ て お く》 を 除 く5つ の 看 護 ケ ア は 「積 極 的介 入 」 の側 面 と 「積 極 的 に待 つ」 側 面 の両 方 を もつ とい う こ とが 推 察 され た。 今 後 は,積 極 的 に介 入 す る側 面 ば か りで な く,積 極 的 に待 つ側 面 に も看 護 者 の意 識 が 向 け られ,パ ー トナ ー の 役 割 遂 行 が支 え られ る こ とが 望 まれ る。 謝 辞 こ の 研 究 の た め の 調 査 に ご協 力 い た だ い た 看 護 者 の 皆 様,ご 指 導 い た だ き ま し た 諸 先 生 方 に 心 よ りお 礼 を 申 し上 げ ます 。 本 研 究 は 日本 学 術 振 興 会 科 学 研 究 費 補 助 金 若 手 研 究(B)の 助 成 を 受 け て 行 い,こ の 一 部 を 第17回 日 本 助 産 学 会 学 術 集 会 で 発 表 し た 。 引用 文 献 長 南 記 志 子(1994), 切 迫 流 早 産 で 長 期 入 院 して い る妊 婦 へ の ケア, ペ リネ イ タル ・ケ ア, 妊娠 ・育 児期 の こ こ ろの ケ ア第13巻 春季 増 刊 号, 104-109. 福 島 裕 子 他(1990), 切 迫 流 早 産 妊 婦 の 不安 に つ い て の調 査,母 性 衛 生, 31(3), 358-365. 久 坂 ヤス 子 他(1997), 切 迫 早 産 妊 婦 の 入 院初 期 の不 安 意 識(マ イ ナ ス面)に 影 響 す る要 因 に関 す る研 究, 愛 媛 県立 医 療技 術 短期 大 学 紀 要, 10, 103-108, 1997. Krippendorff, K. (1980)/三 上 俊 治 他 訳(1989), メ ッ セ ー ジ 分 析 の 技 法 内 容 分 析 へ の 招 待 , 東 京, 頸 草 書 房.
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