• 検索結果がありません。

リバース型人工肩関節置換術後の肩甲骨機能と術前因子の関連性

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "リバース型人工肩関節置換術後の肩甲骨機能と術前因子の関連性"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)理学療法学 第 224 47 巻第 3 号 224 ∼ 230 頁(2020 年) 理学療法学 第 47 巻第 3 号. 研究論文(原著). リバース型人工肩関節置換術後の肩甲骨機能と術前因子の関連性* 前 田 卓 哉 1)# 池 田   崇 2)3)4) 田 村 将 希 3)4)5) 尾 﨑 尚 代 1)2)3) 西 中 直 也 3)6) 鈴 木   昌 3)6) 千 葉 慎 一 2)3)7). 要旨 【目的】Scapula-45 撮影法を用いたリバース型人工肩関節置換術(以下,RTSA)の肩甲骨機能と術前因 子の関連性について明らかにすること。【方法】対象は,RTSA を施行した症例のうち,術後 6 ヵ月以上 経過観察可能であった 28 名である。術後肩甲骨機能を示す術後 Scapula index に対して, 術前の身体所見・ 理学所見がどう影響するかを検討した。項目は,年齢・BMI・有病期間・自動肩関節屈曲角度・45°挙上 位の Scapulaindex・45°挙上位と下垂位の Scapular index の変化量とした。【結果】術後 Scapulaindex に対して有意な独立変数として抽出されたのは術前 Scapula index のみであった。 【結論】術後 Scapula index に影響を及ぼす因子は,術前 Scapula index のみであった。 キーワード リバース型人工肩関節置換術,RSA,RTSA,肩甲骨機能,Scapular notching. はじめに. 工肩関節置換術との構造上の大きな違いは,上腕骨頭と 関節窩を解剖学的に反転し置換していることである。本.  リバース型人工肩関節置換術(reverse total shoulder. 邦でも 2014 年から RTSA が導入されており,臨床スコ. arthroplasty:以下,RTSA)は 1980 年代にフランスの. アや関節可動域の改善などの術後成績の報告がされてい. Grammont によって,高度の腱板機能障害を伴う変形. 1) る 。臨床上,臨床スコアや関節可動域の改善を認める. した関節をもつ症例に対して,三角筋のみで上肢を挙上. ケースが多いが,一部に関節可動域や日常生活動作獲得. できる人工肩関節として開発された。従来の解剖学的人. の遅延や合併症を有する症例も認める。  RTSA に頻発する合併症として,肩甲骨頸部にみら. *. Relevance of Scapula Function and Preoperative Factor after Reverse Total Shoulder Arthroplasty 1)昭和大学病院 (〒 142‒8666 東京都品川区旗の台 1‒5‒8) Takuya Maeda, PT, Hisayo Ozaki, PT, PhD: Showa University Hospital 2)昭和大学保健医療学部理学療法学科 Takashi Ikeda, PT, PhD, Hisayo Ozaki, PT, PhD, Shinichi Chiba, PT, PhD: Showa University, Dept of School of Nursing and Rehabilitation Sciences 3)昭和大学スポーツ運動科学研究所 Takashi Ikeda, PT, PhD, Masaki Tamura, PT, MSc, Hisayo Ozaki, PT, PhD, Naoya Nishinaka, MD, PhD, Masashi Suzuki, MD, PhD, Shinichi Chiba, PT, PhD: Showa University Reseach Institute for Sport and Exercise Sciences 4)昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 Takashi Ikeda, PT, PhD, Masaki Tamura, PT, MSc: Showa University Fujigaoka Rehabilitation Hospital 5)昭和大学院保健医療学研究科 Masaki Tamura, PT, MSc: Graduate school of Health Science, Showa University 6)昭和大学藤が丘病院整形外科 Naoya Nishinaka, MD, PhD, Masashi Suzuki, MD, PhD: Department of Orthopaedic Surgery, Showa University Fujigaoka Hospital 7)昭和大学病院附属東病院 Shinichi Chiba, PT, PhD: Showa University East Hospital # E-mail: [email protected] (受付日 2018 年 8 月 14 日/受理日 2019 年 12 月 17 日) [J-STAGE での早期公開日 2020 年 4 月 6 日]. れる切痕状骨欠損像である Scapular notching の存在が ある. 2). 。Scapular notching 発生の原因に関しては,上. 腕骨側のインプラントと肩甲骨頸部の下部が直接的接触 により生じるという報告. 2). や,肩関節が内転した際に. 上腕骨側のカップと肩甲骨頸部のインピンジメントに よって生じるという報告. 3). がある。これらのことから,. Scapular notching は上肢の挙上初期に生じる肩甲骨の 過剰な挙上・上方回旋運動が過剰に加え,肩甲上腕関節 が内転位となる運動パターンをとるときに生じることが 推測される。Scapular notching の予防にはこのような 挙上動作は術前から改善しておくべきであると考える。 しかし,術前の挙上動作と術後経過との関連は明らかと なっていない。  Scapular notching が発生すると関節可動域や Constant score が低下すると報告されている. 4‒6). RTSA 症例に対し Scapula-45 撮影法. 。鈴木ら 1) は,. 7)8). を用いた報告. で,Scapular notching が発生した群は発生していない.

(2) RTSA 後の肩甲骨機能と術前因子の関連性. 表 1 対象症例の背景. 等)を自覚してから手術までの期間とした。. 平均値± SD 男性:女性. 225. 2)術前および術後 6 ヵ月の自動肩関節屈曲可動域  術前および術後 6 ヵ月診察時の自動肩関節屈曲可動域. 8:20. 年齢. 75.4 ± 3.9. を採用した。また,評価者は共著者の整形外科医 1 名と. BMI. 23.4 ± 3.8. した。. 有病期間(月). 36.1 ± 49.4. 3)肩甲骨機能   ま ず, 肩 甲 骨 機 能 の 評 価 に 用 い た Scapula-45 撮 影 法. 7)8). について説明する。この撮影法は,自然下垂位. 群と比べ,術後 2 ヵ月時点で肩甲骨上方回旋角度が大き. および肩甲骨面上 45°挙上位での無負荷,3 kg 保持の組. くなったと報告している。RTSA 症例の術後成績は患. み合わせで計 4 枚を撮影する方法である。計 4 枚の撮影. 者背景の影響を受けるという報告もある. 4). 。しかし,術. のうち無負荷の組み合わせ 2 枚の組み合わせを使用し. 前の患者背景や肩甲骨機能がどのように影響するかは明. た。撮影条件は,被験者の姿勢は座位とし自然下垂位,. らかとなっていない。. 肩甲骨面上 45°挙上位ともに上腕は内外旋中間位であり.  よって本研究の目的は,RTSA 症例の術前の要因が. 体幹の側屈等の代償動作が生じないよう撮影した。撮影. 術後肩甲骨機能に影響を与えるかどうかを検討すること. 方向は関節窩に対して平行となるようにした。. である。仮説は,患者背景よりも術前の肩甲骨機能が術 後の肩甲骨機能に影響を与えるとした。 対象および方法. (1)術前肩甲骨機能(以下,術前 Scapula index)  Scapula-45 撮影法における肩甲骨面上 45°挙上位のレ ントゲン画像を用い,肩甲骨関節窩の重力方向に対する 角度を示す術前肩甲骨機能として計測した。計測方法を. 1.対象. 図 1 に示した。肩甲骨関節窩の上縁(A)・下縁(B)を.  対象は,2014 年 4 月∼ 2017 年 4 月までの間に RTSA. 通る線分 AB を抽出し,線分 AB と重力方向の線のなす. を施行した症例 58 名のうち,術後 6 ヵ月以上(6 ∼ 36 ヵ. 角度を測定しその値を術前 Scapula index とした。. 月)経過観察可能であった 70 ∼ 83 歳までの 28 名であっ. (2)術後肩甲骨機能(以下,術後 Scapula index). た(表 1) 。また,術前・術後 6 ヵ月時点に Scapula-45 撮.  術前 Scapula index の計測と同様,術後 Scapula index. 影法を用いて肩関節の機能診断を行っている者とした。. の計測も Scapula-45 撮影法によるレントゲン画像を用. 除外基準は,評価項目を満たせなかった者,レントゲン. いて評価した。術後 6 ヵ月時の肩甲骨面上 45 度挙上位. 画像において肩甲上腕関節裂隙が明確に描出されず. の レ ン ト ゲ ン 画 像 を 用 い 計 測 方 法 は 図 2 に 示 し た。. Scapula index を評価できなかった者とした。. Glenospher の上縁(C) ・下縁(D)を通る線分 CD を 抽出し,線分 CD と重力方向の線のなす角度を測定しそ. 2.倫理的配慮. の値を術後 Scapula index とした。.  本研究は後方視的研究であり,診療記録から情報収集. 4)術前および術後 6 ヵ月の肩甲骨上方回旋変化量(以. した。なお,診療情報利用に伴う同意取得は,ヘルシン. 下, 術 前 Scapulothoracic index, 術 後 Scapulotho-. キ宣言にしたがい本学ホームページによるオプトアウト. racic index). を行い,研究概要を適切に通知・公開することで診療録.  術前・術後 Scapulothoracic index は Scapula-45 撮影. 情報の利用について適切な拒否機会を設けた。なお,本. 法による自然下垂位と肩甲骨面上 45°挙上位の肩甲骨上. 研究は昭和大学藤が丘病院臨床試験審査委員会(承認番. 方回旋角度の変化量を表す。 (1), (2)で測定した術前・. 号 F2017C37)にて承認を得て行った。. 術後 Scapula index とそれぞれの肩甲骨面上下垂位の肩 甲骨上方回旋角度の差を術前 Scapulothoracic index お. 3.測定項目. よび術後 Scapulothoracic index とした。算出方法は図.  対象者の患者背景,術前・術後自動肩関節屈曲可動. 1 に示した。. 域,術前・術後肩甲骨機能,術前・術後肩甲骨上方回旋. 5)術前・術後 SHR-45. 変化量,術前・術後の 45°挙上位での Scapulohumeral.  術前および術後の 45° 挙上位での SHR を SHR-45 とし. rhythm(以下,SHR-45)を調査,測定した。また,測. た。SHR-45 を肩甲上腕関節の挙上角度と肩甲骨の上方. 定の信頼性の検討を行った。. 回旋角度変化量の比と定義し,Scapula-45 撮影法による. 1)患者背景. レントゲン画像のうち,肩甲骨面上 45°挙上位を用いて.  患者背景は,年齢,Body Mass Index(以下,BMI) ,. 評価した。45 度挙上位での肩甲上腕関節の挙上角度を. 有病期間を診療記録より調査した。年齢と BMI は手術. 算出するため,計算式を以下の通りとして術前および術. 時のものとした。有病期間は,症状(疼痛・可動域制限. 後の SHR-45 を算出した。.

(3) 226. 理学療法学 第 47 巻第 3 号. 図 1 術前肩甲骨機能 術前 Scapula index,術前 Scapulothoracic index の計測方法. 図 2 術後肩甲骨機能 術後 Scapula index の計測方法.  SHR-45 = 45°挙上位での肩甲上腕関節角度:下垂位. (2.1)を求めた。なお,レントゲン像の計測は医療用画. から 45°挙上位までの肩甲骨上方回旋角度変化量. 像管理システム用ソフトウェア「SYNAPSE Enterprise-. =(45 − Scapulothoracic index) :Scapulothoracic index. PACS(富士フィルム社製)」を用いて行った。. 6)測定の信頼性  Scapula-45 撮影法によるレントゲン画像を用いた計測 は,筒井ら. 7)8). の計測方法と異なるため,計測値の信. 4.統計学的検討  RTSA 前後の自動肩関節屈曲可動域,Scapula index,. 頼性を検討した。. Scapulothoracic index の比較を行うために,Wilcoxon.  検者は 2 名の理学療法士であり,経験年数 7 年(A;. の符号付き順位検定を用いて検討した。また,術後肩甲. 著者)と経験年数 12 年(B)とした。Scapula-45 撮影. 骨機能を示す術後 Scapula index に対して,術前の要因. 法によるレントゲン画像 12 枚ずつ用いて,A,B とも. がどう影響するかを検討した。術後 Scapula index を従. に術前 Scapula index と術後 Scapula index を計測した。. 属変数とし,それに対して独立変数を年齢,BMI,有病. 検者内信頼性は検者 A が計測間隔を 1 週間として 3 回. 期間,術前自動肩関節屈曲可動域,術前 Scapula index,. の計測値について Shrout ら. 9). の級内相関係数 ICC(1.1). を求めた。検者間信頼性は A,B の計測値について ICC. 術前 Scapulothoracic index として,どれがもっとも影 響を与えるのかを Stepwise 重回帰分析を用い検討した。.

(4) RTSA 後の肩甲骨機能と術前因子の関連性. 227. 表 2 術前・術後の肩関節機能の比較 術前. 術後. 自動肩関節屈曲可動域(°). 49.1 ± 23.9. 111.3 ± 25.9 *. Scapula index(° ). 19.7 ± 15.3. 20.2 ± 15.0. Scapulothoracic index(° ). 22.3 ± 13.2. 22.6 ± 10.0. 0.97:1. 0.97:1. SHR-45 *:p<0.05. 表 3 術後 Scapula index を従属変数とする重回帰分析 術前 Scapula index. 標準偏回帰係数. p値. 95%信頼区間. 0.711. 0.001. 0.326 ‒ 1.070. すべてデータは平均値±標準偏差で表し,危険率 5%と. 決定する独立変数として術前 Scapula index のみが選択. した。統計処理には SAS Japan Inc. 社製 JMP ver.13 を. された。標準偏回帰係数は 0.711 であった。多重共線性. 使用した。測定の信頼性に関しては,IBM 社製 SPSS. を認めなかった(表 3)。. ver.25 を使用した。 7.測定の信頼性. 結   果.  術前の級内相関係数は ICC(1,1)で 0.996(0.989 ∼. 1.患者背景. 0.999) ,ICC(2,1) で 0.988(0.960 ∼ 0.997) で あ っ た。.  対象症例の背景因子の結果を示す(表 1)。対象者は. 術後の級内相関係数 ICC(1,1)0.996(0.989 ∼ 0.999),. 28 名(男性:8 名,女性:20 名),年齢:75.4 ± 3.9 歳,. ICC(2,1)で 0.989(0.963 ∼ 0.998)であった。すべて. 2. BMI:23.4 ± 3.8 kg/m , 有 病 期 間 36.1 ± 49.4 ヵ 月 で. の ICC の値は,今井ら. あった。. な再現性を認めた。. 2.術前および術後自動肩関節屈曲角度. 10). の判定基準では great(優秀). 考   察 11). により提唱された SHR は,Inman ら 12).  術前肩関節屈曲可動域 49.1 ± 23.9° ,術後肩関節屈曲.  Codman. 可動域 111.3 ± 25.9°であり,術前に対し術後で有意に. の報告した肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の動きの割合は. 可動域の改善を認めた(p<0.0001)(表 2)。. 2:1 であるということが通説となっているのに対し, Walker ら. 13). は,RTSA 症 例 の SHR に つ い て 1.3:1 1). らも RTSA 症. 3.術前および術後 Scapula index. であったと報告している。また,鈴木.  術前 Scapula index 19.7 ± 15.3° ,術後 Scapula index. 例の SHR は 1.14:1 であったと報告しており,欧米人・. 20.2 ± 15.0°であった。術前後で有意差を認めなかった. 日本人ともに,RTSA 後の SHR の比率は Inman が報告. (p=0.4956) (表 2)。. した比率に対して肩甲胸郭関節の動きの割合が増えるこ とが明らかになっている。つまり,RTSA 症例の上肢. 4.術前および術後 Scapulothoracic index. 挙上動作では,肩甲骨の上方回旋の割合が大きくなると.  術前 Scapulothoracic index 22.3 ± 13.2° ,術後 Scapulotho-. されている。今回,Scapula-45 撮影法を用いて RTSA. racic index 22.6 ± 10.0°であった。術前後で有意差を認. 症 例 の 術 後 Scapula index を 計 測 し た 結 果 は 20.2 ±. めなかった(p=0.4079)(表 2)。. 7) 15.0°であった。健常者の Scapula index (男性 22 名,. 女性 10 名,平均年齢 23.6 歳)は,12.3 ± 4.1°とされて 5.術前および術後 SHR-45. おり,45°挙上位の段階でも RTSA 症例の方が肩甲骨上.  肩甲骨面上 45°挙上位の SHR-45 を算出すると,肩甲. 方回旋角度が大きいことが示唆された。また,対象者の. 上腕関節角度:肩甲骨上方回旋変化量は術前 0.97:1,. SHR-45 を算出すると 0.97:1 となり先行研究同様に,. 術後 0.97:1 であった(表 2)。. 肩甲骨上方回旋の関与が大きいことが示唆された。しか し,今回は肩甲上腕関節角度と肩甲骨上方回旋変化量か. 6.術後 Scapula index に対する影響. ら SHR を求めており,先行研究の計測方法と異るため.  Stepwise 重回帰分析の結果,術後 Scapula index を. 比較することは適当でないと考えられる。また,Lee.

(5) 228. 理学療法学 第 47 巻第 3 号. 図 3 Scapular notching のリスクの高い症例とそうでない症例. ら 14)は,RTSA 症例の術側と無症候である反対側の上. ることで見かけ上,肩甲上腕関節を外転位としている。. 肢挙上動作の肩甲骨の動きを比べると,肩甲骨上方回旋. このとき,上腕骨側インプラントの下方と関節窩頸部は. の動きには有意な差があったが,肩甲骨内転と後傾の動. 接近するため Scapular notching の発生リスクとなる。. きには差がなかったと報告している。これは,RTSA. 図 3 で示した症例 A の肩甲骨上方回旋角度は大きく,. 後の肩甲骨の動きの中でも,内転・後傾に比べ上方回旋. 肩甲上腕関節の外転角度が小さいことがわかる。これ. の動きが特に変化が生じていることを示している。つま. は,SHR-45 の肩甲骨上方回旋の割合が大きく,前述し. り,RTSA 後は肩甲胸郭関節の動きの中でも肩甲骨上. た SHR の値からも大きく逸脱する。この代償パターン. 方回旋の運動学的変化が生じることを踏まえたうえで介. を出現させないためにも術前から肩甲骨機能を改善して. 入する必要があることが考えられる。. おく必要性があると考えられる。Scapular notching の.  今回,術後 Scapula index に対して有意な独立変数と. 発生時期や頻度についての報告もされているが一貫性は. して抽出されたのは術前 Scapula index のみであった。. な く, 欧 米 の RTSA 症 例 100 例 以 上 を 対 象 に し た 報. このことから RTSA 後,関節の解剖学的構造が反転し. 告. 変化したことや,三角筋の張力変化が生じたとしても,. とばらつきがある。Scapular notching の発生有無で比. 術前と術後の肩甲骨機能は同様のパターンを示すことが. べると,Scapular notching が発生すると自動屈曲可動. わかった。さらに,術後 Scapula index に対して術前. 域や Constant score が低下するという報告がある。一. Scapula index は有意な独立変数であったことは,術前. 方,有意な独立変数として抽出されなかった 5 つの項目. から肩甲骨上方回旋の動きが大きい場合,術後も肩甲骨. である,年齢,BMI,有病期間,術前自動肩関節屈曲可. 上方回旋の動きは大きくなり,その逆も同様である。つ. 動域,術前 Scapulothoracic index は,術後 Scapula index. まり,Scapula-45 撮影法において評価できる上肢挙上初. に影響しないことがわかった。この結果は,RTSA の. 期の setting phase において,術前から肩甲骨の過剰な. 対象となる母集団の患者背景に,もともと大きな差がな. 上方回旋が生じている場合,術後も同様に肩甲骨の過剰. かったためと考えられる。RTSA の対応年齢は原則 70. な上方回旋が残存しやすいことが考えられる。shrug. 歳以上とされており対象患者の平均は 75.4 ± 3.92 歳で. sign が陽性のように肩甲骨の過剰な上方回旋が生じて. 2 あった。BMI の平均は 23.4 ± 3.8 kg/m ,術前自動肩. いる場合,体幹に対し上腕骨が 45°外転位を保持してい. 関節屈曲可動域の平均は 49.1 ± 23.9°であり,もともと. るが,実際には肩甲上腕関節の外転角度は少なく,反対. の母集団の変数にばらつきが少なかったことが有意な独. に内転位をとることがある。これは,上肢を挙上できな. 立変数として抽出されなかったのではないかと考えられ. いことに対する代償動作として,肩甲骨を上方回旋させ. る。 し か し, 今 回 は 術 後 成 績 の 中 で も 術 後 Scapula. 4‒6). では,Scapular notching の発生は 10.1 ∼ 68.0%.

(6) RTSA 後の肩甲骨機能と術前因子の関連性. index に対してのみ検討しているため,術前肩甲骨機能 に対して介入することが臨床スコアや関節可動域の改善 を望めるとは限らない。さらに,術後 Scapula index を 決定する独立変数として術前 Scapula index のみが選択 されたが,どのような術前の介入が術後に影響を与える かも明らかとなっていない。今後,術後 Scapula index のみだけではなく臨床スコアや関節可動域の改善に関連 する術前因子の検討や,術前の理学療法介入が術後どの ように影響していくかの検討をしていくことも課題と なっていく。  本研究の限界として,①対象となる症例数が少ない 点,② RTSA 後の Scapula index の正常値・理想値の 検討ができていない点,③術前肩甲骨機能に対する介入 が,術後肩甲骨機能・臨床スコア・関節可動域などへの 影響を検証できていない点,④ Scapula index の測定方 法が,胸郭でなく垂線に対する関節窩や Glenospher の 角 度 を 測 定 し て い る 点 が 挙 げ ら れ る。 ① に 関 し て, RTSA は本邦では 2014 年に承認されたが,日本人工関 節 学 会 の 2018 年 版 リ バ ー ス 型 TSA レ ジ ス ト リ ー 統 計. 15). によると 2018 年 3 月末時点の本邦での手術累積. 件数は 4 年間で 3,851 件と少ない。十分な統計パワーを 得られる症例数の蓄積とさらなる検討が必要である。② に関しては,今後臨床データを蓄積していき,肩甲骨機 能と術後成績の関連を見出せると正常値および RTSA 後の肩甲骨機能の理想値が求められるのではないかと考 えている。③に関しては,RTSA 術前に肩甲骨機能に 介入した群と介入していないコントロール群を設け,術 後肩甲骨機能や臨床スコアへの影響を検討することで肩 甲骨機能に対する術前理学療法の必要性を明らかにでき るのではないかと考えている。④に関しては,測定時に 代償動作を配慮しているが垂線に対しての肩甲骨上方回 旋角度となっており,体幹の側屈動作等の代償が完全に は考慮できていない点が挙げられる。さらに,今回の RTSA 症例の術後 Scapula index 評価時期は術後 6 ヵ月 の 段 階 で あ り き わ め て 短 い 臨 床 評 価 と な っ て い る。 Scapular notching の発生時期を考えるとさらに長期的 な経過観察と検討が必要と思われる。 結   論  術後 Scapula index に影響を及ぼす因子は術前 Scapula index のみであった。. 229. 利益相反  本研究に関し開示すべき利益相反はない。 文  献 1)鈴木 昌,西中直也,他:Scapula-45 撮影法によるリバー ス型人工肩関節置換術後の短期臨床評価.肩関節.2016; 40: 721‒723. 2)高岸憲二:リバース型人工肩関節置換術 整形外科知って るつもり.臨床整形外科.2015; 50: 134‒136. 3)Grammont P, Trouilloud P, et al.: Concept study and realization of a new total shoulder prosthesis. Rhumatologie. 1987; 39: 407‒418. 4)Zuckerman JD, Mollon B, et al.: Impact of scapular notching on clinical outcomes after reverse total shoulder arthroplasty: an analysis of 476 shoulders. J Shoulder Elvow Surg. 2017; 26: 1253‒1261. 5)Levigne C, Garret J, et al.: Scapular notching in reverse shoulder arthroplasty: is it important to avoid it and how? Clin Orthop Relat Res. 2011; 469: 2512‒2520. 6)Levigne C, Boileau P, et al.: Scapular notching in reverse shoulder arthroplasty. J Shoulder Elbow Surg. 2008; 17: 925‒935. 7)筒井廣明,山口光國,他:Scapula-45 撮影法による肩関節 の機能的診断.肩関節.1993; 17: 58‒65. 8)三原研一:肩関節機能評価に関する研究― Scapula-45 撮 影の基礎的・臨床的検討―.日本リウマチ・関節外科学会 雑誌.1995; 2: 131‒140. 9)Strout PE, Fleiss JL: Intraclass Correlations: Uses in Assessing Rater Reliability. Psychol Bull. 1979; 86: 420‒ 428. 10)今井 樹,潮見泰蔵:理学療法研究における“評価の信頼 性”の検査法.理学療法科学.2004; 18: 261‒265. 11)Codman EA: The shoulder: rupture of the supraspinatus tendon and other lesions in or about the subacromial buRTSA. Thomas Todd Company, 1934, pp. 32‒64. 12)Inman VT, Saunders JB, et al.: Observation on the function of the shoulder joint. J Bone Joint Surg Am. 1944; 26: 1‒31. 13)Walker D, Matsuki K, et al.: Scapulohumeral rhythm in shoulders with reverse shoulder arthroplasty. J Shoulder Elbow Surg. 2015; 24: 1129‒1134. 14)Lee KW, Kim YI, et al.: Three-Dimensional Scapular Kinematics in Patients with Reverse Total Shoulder Arthroplasty during Arm Motion. Clin Orthop Surg. 2016; 8: 316‒324. 15)一般社団法人日本人工関節学会ホームページ リバース 型 TSA レジストリー統計.http://jsra.info/pdf/reverseTSA20180331.pdf(2018 年 11 月 26 日引用).

(7) 230. 理学療法学 第 47 巻第 3 号. 〈Abstract〉. Relevance of Scapula Function and Preoperative Factor after Reverse Total Shoulder Arthroplasty. Takuya MAEDA, PT, Hisayo OZAKI, PT, PhD Showa University Hospital Takashi IKEDA, PT, PhD, Hisayo OZAKI, PT, PhD, Shinichi CHIBA, PT, PhD Showa University, Dept of School of Nursing and Rehabilitation Sciences Takashi IKEDA, PT, PhD, Masaki TAMURA, PT, MSc, Hisayo OZAKI, PT, PhD, Naoya NISHINAKA, MD, PhD, Masashi SUZUKI, MD, PhD, Shinichi CHIBA, PT, PhD Showa University Reseach Institute for Sport and Exercise Sciences Takashi IKEDA, PT, PhD, Masaki TAMURA, PT, MSc Showa University Fujigaoka Rehabilitation Hospital Masaki TAMURA, PT, MSc Graduate school of Health Science, Showa University Naoya NISHINAKA, MD, PhD, Masashi SUZUKI, MD, PhD Department of Orthopaedic Surgery, Showa University Fujigaoka Hospital Shinichi CHIBA, PT, PhD Showa University East Hospital. Purpose: To confirm the relevance of preoperative factors based on post-reverse total shoulder arthroplasty (RTSA) scapula function using scapula-45 radiography. Method: Twenty-eight patients were observed for more than 6 months after RTSA. We evaluated how the preoperative physical findings had an influence on their postoperative scapular index, which indicates postoperative scapula function. Results: The only significant independent variable that could be extracted for the postoperative scapular index was the preoperative scapular index. Conclusion: The only factor affecting the postoperative scapular index is the preoperative scapular index. Key Words: Reverse total shoulder arthroplasty, RSA, RTSA, Scapula index, Scapular notching.

(8)

参照

関連したドキュメント

ポートフォリオ最適化問題の改良代理制約法による対話型解法 仲川 勇二 関西大学 * 伊佐田 百合子 関西学院大学 井垣 伸子

関東総合通信局 東京電機大学 工学部電気電子工学科 電気通信システム 昭和62年3月以降

8) 7)で求めた1人当たりの情報関連機器リース・レンタル料に、「平成7年産業連関表」の産業別常

自動車や鉄道などの運輸機関は、大都市東京の

〒104-8238 東京都中央区銀座 5-15-1 SP600 地域一体となった観光地の再生・観光サービスの 高付加価値化事業(国立公園型)

学識経験者 小玉 祐一郎 神戸芸術工科大学 教授 学識経験者 小玉 祐 郎   神戸芸術工科大学  教授. 東京都

 昭和大学病院(東京都品川区籏の台一丁目)の入院棟17

東京都 福祉保健局 健康安全部 環境保健課...