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医療の IT 化 現在と未来 ITを活用した医療連携の取り組み 千葉県立東金病院 院長 平井愛山 1.地域医療のパラダイムシフトとITの飛躍的発展 21世紀に入って、医療のあり方、とくに地域医療のあり方が大きく変わろうとしてい る。具体的には①「健康日本21」運動を中心とした生活習慣病の発症予防(一次予防) と進展・重症化の防止(二次予防)1)、②「地域医療支援病院」に代表される病院完結型医 療から地域完結型医療への転換、③遺伝子解析に基づく投薬設計に代表されるレディーメ イド医療からテーラーメイド医療(個の医療)への転換である。これらは地域医療のパラ ダイムシフトとしてとらえる事ができる。平成15年8月に厚生労働省は『医療提供体制 の改革のビジョン』を発表し、21世紀の医療の進むべき方向を示した2)。その中で、もっ とも重要なことは、従来からの病院完結型医療から、新らたな地域完結型医療への転換と その実践である。今後、地域におけるそれぞれの医療機関の役割分担を明確にした上で、 一層の医療連携の推進をはかり地域医療のレベルアップを目指すという視点を持つことが 求められている。しかも特筆すべきことは、その医療連携の基盤、とくに医療情報の基盤 整備が近年の情報通信技術(IT)の飛躍的発展により大きく変容を遂げたことである3) これからの医療連携には、ヒューマンネットワークという人的連携の充実とその下支えで あるハード・ソフトを含めた医療情報ネットワーク(コンピュータネットワーク)の整備・ 充実のいずれもが要求されている。 地域における医療情報ネットワークを構成する基本的なユニットとしては、中核となる 医療機関(病院)と診療所および関連する医療・保健施設として保険調剤薬局、訪問看護 ステーション、保健所、市町村保健センターなどがあげられる。これからは入院・入所、 通院・通所と平行して在宅医療の需要が伸びる一方、「健康日本21」推進体制のもと、医 療と保健が相互に協力して地域の健康づくり・生活習慣病の一次予防に取り組む体制が強 化されてゆくと思われる4)。実際に、平成15年5月1日から「健康増進法」が施行され、 この動きは一層加速されている5) 医療連携の根本は、その規模の大きさに関わらず、信頼感に裏打ちされた緊密なヒュー マンネットワークが構築されているか否かに掛かっている。また、ネットワークの中核と なる病院がどのような理念でこのネットワークを支えようとしているのかは、ネットワー クの将来性・発展性を規定する極めて重要な因子である。今後、最新のITを活用して地 域医療連携のための情報化・情報基盤の整備を進めるにあたっては、前提として地域にお けるヒューマンネットワークが構築できているか否かが成否を分ける鍵となることを強調 したい。

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本稿では、我が国を代表する電子カルテネットワークシステムと言われる「わかしお医 療ネットワーク」6)の誕生までのプロセスを振り返り、ITを活用した情報伝達が地域に 導入され成果を上げるためには何が必要であるかを、地域医療連携を構築するプロセスに 焦点をあてて具体的に検証してみたい。 2.病院完結型医療から地域完結型医療への転換:在宅医療ネットワークと医薬分業 地域医療における医療機関の役割分担の明確化と医療連携の強化の具体例として、ガン の疼痛緩和をはじめとする終末期医療を在宅でおこなう在宅ホスピスを取り上げてみたい。 在宅ホスピスを支えるシステムには、これからの地域医療連携のあり方や、そこにいたる プロセスについて学ぶものが多いと考えられるからである。今までは、入所型の終末期医 療サービス(入所ホスピス)が主流であったが、在宅中心静脈栄養(HPN)や在宅癌性 疼痛緩和療法の技術的進歩、診療報酬制度の改革と介護保険の導入、そして地域の在宅医 療体制の整備が進んだ結果、従来は困難と考えられてきた医療度の高い在宅医療が可能に なりつつある。とくに、平成14年度に市場に投入されたガン疼痛緩和のための麻薬の貼 付剤は、在宅ターミナルケアに新たな1頁を切り開いた7)。一方、ガン患者におけるアンケ ート調査によれば、在宅医療を希望する者の割合は、完治を目的とした治療の場合でも3 5%を超えており、緩和を目的としたケアの場合には、実に80%近くの者が在宅でのケ アを希望している8)。このようにガンのターミナルケアにおいては、今後ますます在宅での ケア、すなわち在宅ホスピスの需要が高まってゆくと思われる。その際、重要なことは『地 域の皆で支える在宅医療』という新しい概念である。 従来の在宅医療への地域中核病院の関わり方としては、中核病院が往診を担当する医師 や看護スタッフからなる在宅チームを院内で結成し、HPNの薬剤などは院内の薬剤部で 調製し、地域の医療スタッフを交えずに病院スタッフのみで在宅医療を進める、所謂『病 院完結型在宅医療』が大部分であった。 しかし、これからの地域医療のあり方を考えるとき、求められているのは『従来の病院 完結型在宅医療から新たな地域完結型在宅医療への転換』である。地域完結型の在宅医療 体制の具体例として、図−1に千葉県立東金病院と山武郡市医師会および同薬剤師会が構築 し運用している在宅ターミナルケアネットワークシステムとそれぞれの役割分担を示す9) 在宅医療は主治医である診療所医師に加えて、調剤薬局薬剤師および訪問看護ステーショ ン看護師など、地域の医療スタッフが担い、当院は、中核病院として、地域の医療スタッ フの技術指導・研修支援にあたるとともに、後方支援病院として、急変した在宅患者を2 4時間無条件で引き受けている10)11)12)13)。こうした役割分担を明確にして、ヒュー マンネットワークに支えられた地域医療連携システムの構築と実践の積み重ねが、やがて は当該医療圏のレベルアップに確実につながってゆくのである。 それでは、どのようにしてこのような先進的な医療連携ネットワークが千葉県の一地域 である山武医療圏で立ち上がったのであろうか?その鍵は、医薬分業に基づく院外処方の

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導入である。実は、私が院長として赴任した平成10年以前には、当院と診療所および調 剤薬局等の地域医療施設との間には医療連携と呼べるようなネットワークは存在していな かった。医療連携、特に医薬の連携の指標としてしばしば取り上げられるのが、院外処方 箋の発行率、すなわち院外処方率である。平成10年までは、当院の院外処方率はわずか 3から4%と極めて低迷しており、医療連携の推進とはほど遠い状況であった。また病院 から2km以内には一軒の調剤薬局もない状況であったため、院外処方の全面導入は極め て困難であると思われていた。そこで、院長着任直後から、薬剤部を中心に院内プロジェ クトチームを組むとともに、山武郡市薬剤師会と何度も話し合いを繰り返し、山武医療圏 内にある全部で51の調剤薬局に『面で対応していただく』ことになった。これらの調剤 薬局は、文字通り『当医療圏にひろく面のように』分布している。こうした薬剤師会との 協力体制をふまえて、平成10年8月1日より、当院は全面院外処方に踏み切った9)。そし て、院外処方導入後のトラブルの回避と、主要内服剤についての学術基盤を病院スタッフ と調剤薬局のスタッフとが共有する場としての勉強会である『東金病院イブニングセミナ ー』(月1回開催)を院外処方開始と同時にスタートさせた。東金病院イブニングセミナー は、平成16年9月現在までに58回開催している。この定期的な研修会は、地域の薬剤 師の研修支援の場としてきわめて重要であるばかりでなく、病薬連携のヒューマンネット ワークを緊密化する効果が大で、医薬連携のあらたなプロジェクトを立ち上げるきっかけ を提供する場ともなった。実は、先に述べたHPNを活用した在宅ターミナルケアネット ワークのプロジェクトは、その実施に先立つ3ヶ月前のイブニングセミナーで取り上げら れた「ホームIVHの最近の話題」を契機として立ち上げられたものであることを付け加 えたい。 このように医薬分業・院外処方の導入と定期的研修会を契機として医薬連携の基盤、と くにヒューマンネットワークが整備されていったことが、後に最新のITを駆使した電子 カルテネットワークによる我が国初のオンライン服薬指導の成功につながってゆくのであ る。また、この院外処方の導入に伴って、見えてきたのが、『医療圏全体を面としてとらえ、 点である東金病院がこれを支援する』という視点である。地域医療においては、『実践を通 して理念をつかむ』ということが実は大切なことであり、これまで当院が推進してきた医 療連携に基づく一連の地域医療支援の基本理念である『点による面の支援』構想はこうし て、院外処方の導入・実践の中から生まれたことを強調したい9) 3.医療連携の人的基盤の整備:ヒューマンネットワークの構築 前章で、山武医療圏においては、医薬分業・院外処方の実施と定期的な研修会(東金イ ブニングセミナー)の開催を契機に、一気に医薬連携が進んだことを述べたが、それでは 医療機関同士の連携、とくに病院・診療所間における連携、いわゆる病診連携はどうなっ ていたのであろうか?私が院長に着任した当時、当院は一次医療機関からの紹介率は1 0%前後と極めて低迷しており、また地元医師会との定期的な学術集会は全く開催されて

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おらず、県立病院として地域医療連携の中核機関としてあるべき姿とはほど遠い状態であ った。そこで地元医師会との学術交流を深め、院内スタッフの活性化を図る目的で、着任 直後の平成10年4月に『東金病院イブニングカンファ』を開始した。重症症例の診断や 治療を軸とした『症例検討』と、最新の医学情報の学習と院内での医療活動の啓蒙を目的 とした『話題提供』を交互に隔週から月一回行うこととした。平成16年9月現在78回 を数えるにいたっている。このイブニングカンファの成果のひとつは、地元医師会会員に 当院でおこなっている医療の姿を知っていただいたことであり、たとえば、医師会の会員 から紹介された重症症例のケースカンファでは熱い議論が重ねられた。こうして院内外の 医師たちの相互理解が進むとともに、医師会会員からの紹介患者が増加する一方、急性期 を過ぎ安定した患者の医師会会員への逆紹介も順調に増加していった。最近では、特定の 診療分野に的を絞った研修会も定期的に開催されている。たとえば、プライマリケアにお ける糖尿病診療の標準ガイドラインである Staged Diabetes Management(SDM)を活用し て、インスリン療法をはじめとする最新の糖尿病診療を診療所に啓蒙拡大(技術移転)す る取り組み(山武SDM研究会)も行われており、大きな成果を上げている14) ここで強調したいことは、このような定期的なオフラインの研修会は、地域の医療スタ ッフ間の信頼感の熟成に大きな効果があることである。今後、電子カルテネットワークを はじめとするITによる情報伝達を地域医療連携に導入活用するにあたっては、オフライ ンの研修会は、その取り組みを成功させるための必要条件であるといっても過言ではない。 4.IT化の基本:医療情報基盤の段階的整備 ITを地域医療に活用する場合に、忘れてならないことは、一歩ずつ段階を追って情報 システムを構築・運用する事であり、その構築過程で明らかになった課題を、一つ一つ解 決し、ネットワークの拡大を図ることである。ある日突然に何十台もの端末からなる医療 情報ネットワークが立ち上がり、即フル稼働するというようなことはあり得ないし、また 導入成果も上がるとは考えにくい。わかしお医療ネットワークが成果を収めることができ た背景の一つに、院内のIT化を段階を追って進めたことと複数の医療機関のITネット ワーク化をごく小規模で検証してから規模の拡大を図ったことが上げられる。わかしお医 療ネットワークの立ち上げに至るプロセスは、今後地域医療のIT化に取り組もうと考え ておられる方々にとって必ずや参考になるものと思われる。 私が院長に着任した平成10年4月には、実は当院には1台のパソコンもない状態で、 医療のIT化とはおよそ無縁の環境であった。そこで、私は地域との医療連携の推進を図 る一方、院内スタッフの活性化をめざして、着任早々からインターネット対応の院内ネッ トワーク構想をねり、平成10年12月に10余台のiMACを端末とする100Base-T 規格の院内LANが完成した。また、Gateway マシンを介してインターネットへ常時接続す るとともに、メールサーバおよびWWWサーバをたちあげた。その結果、医師研修室、全 ての病棟、中央診療部門等からの24時間インターネット接続が可能になった。LAN回

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線敷設と同時に希望者全員にメールアドレスを配布し、電子メール使用による院内外のコ ミュニケーションの充実・強化を目指した。その後の2度の拡張工事を経て、平成15年 10月現在で、ネットワークの端末台数は140余台、サーバ20余台の一大ネットワー クに成長している。このように10余台の端末で始まった院内LANの整備は、やがて我 が国を代表する電子カルテネットワークである『わかしお医療ネットワーク』に発展して いった9) 平成12年4月より東金病院、山武郡市医師会および山武郡市薬剤師会は治験による地 域医療の底上げを目標として、『山武地域治験ネットワーク』をスタートさせた15)。これ は平成10年度の国庫補助金により治験施設整備が行われた東金病院を中核として、診療 所が参加する生活習慣病治療薬の治験を立ち上げ、診療所医師の研修支援とともに活性化 および連携強化をめざすものである。これは本邦初の診療所が参加する治験ネットワーク として全国から注目され、平成13年度の厚生労働省の治験推進事業の柱である『治験推 進ネットワークモデル』の原点となった。なかでも、治験の質を確保するとともに、重篤 有害事象発生時の迅速な対応を可能にするため、最新のITを活用して、各種臨床データ 等を東金病院に設置した治験管理用サーバに保存し、東金病院、診療所、製薬企業をオン ラインでむすぶ新たなネットワークシステムを構築した16)。この治験ネットワークシステ ムは、東金病院・診療所における被験者データ及び検査データを一元的に保存・管理する 治験サーバを東金病院に置き、サーバと東金病院各部門、山武郡市医師会の2つの診療所、 製薬企業の臨床開発部をオンラインでつないだ(図−2)。治験データの登録・参照のため に新たに治験専用のネットワーク対応電子カルテを開発し、WWWサーバを介して送受信 を行い、ネットワーク端末では、Web ブラウザ(Internet Explorer)を使用した。このネ ットワークシステムは、ネットワーク共有電子カルテを介して病院と診療所がデジタル化 された診療情報を共有・活用する点で、またネットワークのセキュリティの確保に仮想専 用線(IP-VPN)やレイヤー3スイッチの導入など最新の情報技術を活用し、その導入効果 を検証した点で、次に展開することになる『わかしお医療ネットワーク』に直結したとい っても過言ではない17) 5.わかしお医療ネットワーク:調剤薬局が参加する電子カルテネットワークの誕生 平成13年末に、厚生労働省は「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」 を策定し、21世紀の日本が目指すITを活用した新たな医療連携の姿が明らかにした18) このグランドデザインの中核となるのは、医療機関への電子カルテやレセプト電算システ ムの導入と医療機関のIT化・ネットワーク化である。厚生労働省は具体的プロセスとし て①医療施設の情報化(IT化)、②IT化された医療施設のネットワーク化、③ネットワ ークを活用した医療情報の有効利用、④根拠に基づく医療(EBM)の実践支援の4段階 をあげ、平成12年以降精力的に補助事業を全国に展開している。一方、経済産業省も医 療サービスの向上に向けた一連のIT重点化施策展開を行っている。その一環として、平 成12年度には、地域における電子カルテネットワークを構築し、医療の質の向上や患者

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サービスも向上などの効果を検証することを目的に『先進的IT活用による医療を中心と したネットワーク化推進事業−電子カルテを中心とした地域医療情報化−』を補正予算公募 事業としておこなった19)。このプロジェクトには全国から約170件という多数の応募が あり、最終的に、26件のプロジェクトが選定された。平成13年4月からシステムの開 発と構築が進められ、同年11月より3ヶ月間にわたって実証実験が行われ、その成果が 平成14年3月5日に発表された20)。これらの一連の事業により、わが国の地域医療にお けるIT化は本格的に動き出し、新たな段階に入ったと言える。 今回、経済産業省の公募事業で立ち上げられた26の電子カルテネットワークプロジェ クトの中から、具体的な成果をあげ、その後も着実に発展をつづけている事例の代表とし て当院と山武郡市医師会・同薬剤師会で立ち上げた『わかしお医療ネットワーク∼先進的 医療連携・遺伝子診療モデル事業』を紹介する。地域に電子カルテネットワークが導入さ れたことにより、従来のヒューマンネットワークのみではできなかったことが如何にして 実現されつつあるのか、ご参考になれば幸いである。 わかしお医療ネットワークの目的は、以下の4点である。すなわち①電子カルテネット ワークを活用した生活習慣病診療における医療機関格差の解消と『面診療(医療圏を面とし て捉えたときの診療機能)』の底上げ、②電子カルテネットワークを活用した新たな医薬連 携体制の確立、③在宅データの活用による糖尿病診療の充実、④生活習慣病における遺伝 子解析に基づくテーラーメイド医療の確立である。この目的を達成するために今回構築し たシステムの全体像を図−3に示す。ネットワークを構成しているのは、電子カルテサー バを設置した東金病院、15の医師会診療所、16の薬剤師会調剤薬局、16名の在宅糖 尿病患者、そして外部の遺伝子解析センターである21) わかしお医療ネットワーク上で立ち上げた医療連携システムは次のとおりである。すな わち、①地域共有電子カルテを中核とした病診連携システム、②病院・診療所・調剤薬局 を電子カルテでつなぐオンライン服薬指導システム、③生活習慣病の診療ガイドラインの オンライン配信と EBM の実践支援をめざす生活習慣病診療支援システム、④インスリン自 己注射患者の自己測定血糖値のオンライン共有と活用により糖尿病のコントロールの改善 を目指す在宅糖尿病患者支援システム、⑤遺伝子解析に基づくテーラーメイド医療を可能 にする基盤整備としての個人情報保護、被験者匿名化を行う遺伝子診療支援システムの5 つのシステムである。 東金病院に地域共有電子カルテサーバを設置し、ネットワークに参加する医療機関の診 療データの共有化を可能とした。わかしお医療ネットワークで新たに開発した電子カルテ は、いわゆるASP(Application service provider)タイプのものであり、電子カルテ サーバの基本的な仕様はデータベース管理にオラクルを用い、WWWサーバを介してXM L規格化された診療情報を端末に送受信するもので、端末ではWebブラウザとしてイン ターネットエクプローラーを用い、診療情報を参照するとともに、診察所見や服薬指導の 指示事項や指導結果などを入力登録する仕組みになっている。図−4にわかしお医療ネッ

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トワークの電子カルテの画面をしめす。 調剤薬局においては、ネットワーク端末から得られた服薬指導指示、処方情報および検 査データ(血清脂質、血糖値その他)を活用して、生活習慣病の治療薬のコンプライアン スの向上を図るオンライン服薬指導を可能とした。服薬指導にオンライン配信される検査 データを活用するのは、本邦で初めての試みである。なお、調剤薬局におけるログイン時 のセキュリティの確保のために、今回新たに、個人認証システムとしてサイン認証を導入 した6) わかしお医療ネットワークは、平成13年11月から3ヶ月間にわたって実証実験を行 い、800名近い多数の患者様のご参加をいただくとともに関係スタッフの努力により、 いずれの実証実験テーマについても当初の目標を達成することができた。以下に今回行っ た実証実験とその参加者数を示す。①紹介・逆紹介に関する実証実験:125名、②オン ライン服薬指導システムに関する実証実験:400名、③在宅糖尿病患者支援システム: 16名、④生活習慣病遺伝子診療支援システム:270名である。実証実験の詳細につい ては、既報論文を参照して頂ければ幸いである6)。わかしお医療ネットワークプロジェクト の成果は、電子カルテネットワークが様々な可能性を秘めていることを始めて明らかにし た点にある。要約すると、①診療技術移転による医療の平準化、すなわち医療機関格差の 解消による地域での生活習慣病診療の向上、②服薬指導指示と検査データ等の診療情報の 共有によるオンライン服薬指導の実現と服薬コンプライアンスの向上6)、③オンライン診療 ガイドラインを活用した生活習慣病診療におけるEBMの実践支援22)、④自己血糖測定値 のオンライン共有と活用によるインスリン治療の向上23)24)25)、⑤ITを活用した生活 習慣病の遺伝子診断のための匿名化システム26)である。 わかしお医療ネットワークは平成14年1月に、千葉県の個人情報保護審議会の承認が 得られ、同年4月より正式運用を開始している。同年5月には厚生労働省の「地域診療情 報連携推進モデル事業」の対象地区(全国2ヶ所)に選定され、将来の電子処方箋を睨ん だ、オンライン疑義照会システムなどの新たなシステム開発と在宅医療連携支援のための モバイル端末の導入とその成果の検証等の実証実験が実施された(図−5)。その成果は当 院のホームページ上に公開されているので参照頂ければ幸いである27) 6.今後の展望:地域における健康づくりのあらたなサイトとしての保険薬局の可能性 今後の地域における医療連携システム整備のかなめはインフラストラクチャー、なかん ずく高速情報ネットワーク網の構築にあると考えられる。これからはネットワーク上の動 画を含む画像データや音声データ等をオンデマンドで共有・活用するシステムが不可欠で あり、その実現のためには ADSL や光ファイバーをはじめとする高速情報回線網の地域への 普及が当面の急務である。 5年前には1台のパソコンもなく、院外処方率が5%にも満たなかった千葉県の1地域 病院が地域の診療所そして調剤薬局とともに、短期間に我が国を代表する電子カルテネッ

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トワークを立ち上げ、目に見える成果を上げる事ができたのは、ひとえに診療所や調剤薬 局を始めとする地域医療に情熱を持って取り組む人々に恵まれたからに他ならない。今後、 当院のような公的医療機関が地域の医療連携の中核として、根拠に基づく医療行政(医政) の担い手としてその責務を果たすためには、その地域における緊密なヒューマンネットワ ークの構築とデジタル化された医療情報ネットワークの構築のいずれもが不可欠であるこ とを強調して拙稿を終える。 参考文献 1.健康日本21公式ホームページ:http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/ about/index.html 2.医療提供体制の改革のビジョン公式ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/houdou/20 03/04/h0430-3a.html 3.開原成允:モデル事業推進の立場からの期待 INNERVISION 16(7):83-85, 2001 4.厚生労働省告示第百九十五号(国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的 な方針):http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/law/index_2.html 5.健康増進法公式ホームページ:http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/la w/index_1.html 6.平井愛山:電子カルテを中核とした新たな病・診・薬連携ネットワークの構築と展開 INNERVISION 17(7):82-89, 2002 7.櫛田康彦、高橋麗子、新田俊一:フェンタニールパッチの使用により退院可能となっ た癌性疼痛症例 日本臨床麻酔学会誌 22(8):347, 2002. 8.谷水正人、三上一郎、井上るり子、亀島喜久子、田所かおり、中岡初枝、神谷淳子、 東和子、小林由子、三好京子、斉藤秀紀、菅英樹、桝本俊一、兵頭一之介:がん患者の 在宅医療に影響を及ぼす環境と意識に関するアンケート調査 第14回日本在宅医療 研究会学術集会抄録集 121, 2003 9.平井愛山 東金病院の改革の歩みと今後の展望−新たな医療連携システムを目指して − 千葉医学 76:323-335, 1999. 10.赤沼篤夫、伊藤俊夫、武内正博、平井愛山:支援病院の存在により容易に行えた末期 がん患者の在宅医療の 1 例 癌と化学療法 27 Suppl.III:721-723, 2000. 11.平井愛山:地域で支える在宅医療 地域で支える在宅医療 後方支援病院の立場から 病院管理 38(2):200-201, 2001. 12.武内正博、平井愛山:高齢者在宅医療への取り組み 在宅ホスピスケアーを中心に 日 本老年医学会雑誌 39(2):224-225, 2002. 13.富田勲、 石井祐男、米澤正明、伊藤俊夫、平井愛山、水野喜一郎:地域完結型医療ネ ットワークにおける保険薬局の役割 癌と化学療法, 27 : 683-686, 2000.

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14.平井愛山、秋葉哲生、米澤正明、榎本和夫、並木隆雄、松岡健平:電子カルテネット ワークによる地域の糖尿病診療の向上 医療マネジメント学会雑誌 4(1):79, 2003. 15.平井愛山、石塚俊治、伊藤俊夫、伊藤よしみ、伊藤公道、米澤正明、久光健一:山武 地域治験ネットワーク 診療所が参加する地域完結型の新しい治験システムをめざし て 日本内科学会雑誌 90(臨増):198, 2001. 16.平井愛山、伊藤俊夫、米澤正明、榎本和夫、伊藤公道、伊藤よしみ、久光健一:山武 地域治験ネットワークの 1 年のあゆみ 臨床薬理 33(1):171S-172S, 2002 17.平井愛山.医療連携ネットワーク−ヒューマンネットワークとコンピュータネットワ ークの融合を目指して− BME 15(2):39-45, 2001. 18.保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン公式ホームページ:http://www.mh lw.go.jp/shingi/0112/s1226-1a.html 19.菅原郁郎:モデル事業の目的と意義−平成12年度補正予算事業の目的と意義− INN ERVISION 16(7):78-82, 2001. 20.佐味祐介:モデル事業継続の目的と意義 INNERVISION 17(7):72-74, 2002. 21.平井愛山:医療連携における情報伝達 ITの活用 実験治療 670:47-54, 2003 22.平井愛山:病院情報システムにおける診療ガイドラインの活用 EBMジャーナル 3 (4):60-66,2002 23.石塚俊治、小出尚史、武内正博、平井愛山、松岡健平:ネットワークを利用した血糖 自己測定転送システムによる患者個別指導 糖尿病 45 巻 Suppl.2:S281, 2002. 24.石塚俊治、平井愛山:電子カルテ共有化の試み:わかしお医療ネットワーク プラク ティス 19(5):531-536, 2002 25.平井愛山:電子カルテを中核とした地域医療情報ネットワークによる糖尿病診療のレ ベルアップ−わかしお医療ネットワークの構築と展開− 肥満と糖尿病 2:43-53, 200 3 26.石塚俊治、久光健一、小出尚史、武内正博、花園道子、大石道夫、平井愛山:オーダ ーメイド医療のための IT を活用した遺伝子診療支援システムの構築、日本内科学会雑 誌 91(臨増):252, 2002.02. 27.東金病院ホームページ:http://www.pref-hosp.togane.chiba.jp/index.html 図表 図−1 地域完結型在宅医療ネットワークシステムの図 図−2 山武地域治験ネットワーク構成図 図−3 わかしお医療ネットワークシステム構成図 図−4 わかしお医療ネットワークの電子カルテ画面 図−5 わかしお医療ネットワーク Ver2.0 の模式図

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東金病院が支援するターミナルケアネットワークシステム

−とくに在宅中心静脈栄養療法を中心に−

家 族

○○薬局

(薬剤師)

山武保健所

(保健師)

○○診療所

(医 師)

○○訪問看護

ステーション

(看護師)

東金病院

(医師、看護師

薬剤師)

クリーンベンチの設置

院外処方

中心静脈栄養

塩酸モルヒネ

(癌性疼痛緩和)

内服薬のペースト化

相談・連携

技術

研修

支援

・逆

往診

・処

技術研修支援

薬剤

の宅

訪問看護

処置

の指

重症救急時の

受け入れ

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G4MAC & IE 5.0

GateWay

DNS サーバ

POP サーバ

ISDN Rooter

Web サーバ

インターネット

ファイアウオール

東金病院院内ネットワーク

東金病院院内ネットワーク

治験用サーバ

G3MAC & IE 5.0

8312 スイッチ

リモートルーター

AR720

製薬企業

山 武 地 域 治 験 ネ ッ ト ワ ー ク

山 武 地 域 治 験 ネ ッ ト ワ ー ク

B 診療所

リモートルーター

AR300

リモートルーター

AR300

iMAC & IE 5.0

A 診療所

*

・ イ

*

・ イ

リモートルーター

AR720

*VPN : 仮想専用線 (IP-sec)

検査科

外来

放射線科

病棟

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電子文書証明センタ (第三者認証機関) ・オーダリングシステム 遺伝子解析施設 S R L 遺 伝 子 ・ 染 色 体 解析セ ン ター 東金病院への接続先→ ④生活習慣病遺伝子診療支援システム ③生活習慣病 診療支援システム T C IAH H I 05 0 3T C IAH H I ①診療支援 データベースシステム ・生理検査システム ・医事会計システム ④生活習慣病遺伝子 診療支援システム 山武郡市薬剤師会調剤薬局(16ヶ所) 東金病院への接続先→ ①診療支援データベースシステム 山武郡市医師会診療所(15ヶ所) 東東金病院への接続先→①診療支援 データベースシステム②在宅糖尿病患 者支援システム③生活習慣病診療支援 システム 回線接続装置 (TA or ルータ) レイヤー3 SWハブ 院内LAN 在宅糖尿病患者 iモード パソコン 東金病院への接続先→②在宅糖尿病患者支援システム 血糖値測定装置 凡例 VPN(仮想専用線) 専用回線 ISDN等電話回線 LAN回線

システム構成図

システム構成図

②在宅糖尿病 患者支援システム IP-VPN用ルータ ・画像システム ・検体検査システム 診療所電子カルテシステム

東 金 病 院

(地域共有電子カルテ) サイン認証 サイン認証 RADIUS InterNet-VPN Iモードセンター 電子文書証明センタ (第三者認証機関) サイン認証 NTTコミュニ ケーションズ ←データー送信時のみ接続 回線接続装置 (TA or ルータ) IP-VPN 回線接続装置 (AR720) 回線接続装置 (TA or ルータ) 回線接続装置 (MUCHO) MO ディスク Proxy-RADIUS 回線接続装置 (AR720) 回線接続装置 (AR720) ○レイヤー3 SW ハブ ポート毎にデータの転送先を決定する 装置 ○RADIUS 登録番号、暗証番号認証を行う装置 ○Proxy-RADIUS 発信番号の認証を行う装置 認証サーバー

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診療支援データベース(わかしお医療ネットワーク電子カルテ)の特徴

① 診療履歴一覧(診療ナビゲータ)

から、時系列で診療内容の全体を俯瞰することができる。

② テキストデータと画像データのいずれも閲覧可能である。

③ 診察所見、処方内容、検査結果の閲覧は診療履歴のボタンを

クリックして表示する。検査既往歴一覧も表示できる。

画像一覧

より選択した画像がポップアップ表示され、ページ

めくりと読影所見を閲覧することができる。

⑤ 各種の入力画操作は

入力画面選択ウィンドウ

からおこなう。

¾メニューバー

¾患者基本情報

¾診療履歴一覧

(診療ナビゲータ)

¾入力画面選択

ウィンドウ

¾処方表示欄

¾検査表示欄

¾所見表示欄

(SOAP形式)

画像一覧

検査値一覧

検査既往歴

画像データ

(14)

診療所 診療所 患者データ登録・参照 患者データ登録・参照 医師会診療所(20箇所) 町立診療所 患者データ登録・参照 患者データ登録・参照 保健所、市町村保健センター(3箇所) 保健所、市町村保健センター(3箇所) 患者データ参照 患者データ参照 看護データ登録・参照 看護データ登録・参照 長期療養型病床群、 老人保健施設、特別養護老人ホーム(2箇所) 長期療養型病床群、 長期療養型病床群、 老人保健施設、特別養護老人ホーム(2箇所) 老人保健施設、特別養護老人ホーム(2箇所) 調剤薬局(21箇所) 調剤薬局(21箇所) 患者データ登録・参照 患者データ登録・参照 サイン認証 看護データ登録・参照 看護データ登録・参照 訪問看護ステーション(3箇所) 訪問看護ステーション(3箇所) 患者(通院および在宅) 患者(通院および在宅)

地域中核病院

地域中核病院

県立東金病院

県立東金病院

電子カルテ サーバ T C IAH HI 0 5 0 3 T C IAH HI

わかしお医療ネットワーク

わかしお医療ネットワーク

Ver

Ver

2.0 (2003

2.0 (2003

-

-

)

)

服薬指導 訪問 診療

紹介・逆紹介

モバイル端末 (ノートパソコン) サイン認証 モバイル端末 (ノートパソコン) サイン認証

山武郡市VPN網

紹介・逆紹介

血糖値データ 血糖値データ iモード

定期的研修会に裏打ちされた

緊密なヒューマンネットワーク

定期的研修会に裏打ちされた

緊密な

ヒューマンネットワーク

ヒューマンネットワーク

訪問 看護 訪問 指導

参照

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