艦隊これくしょん Mercenary Fleet
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あ
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泥沼化 す る深 海 棲艦 と 人類 の戦 争、 そ ん な中 、 軍部 は 金 で 雇 い入 れ た 傭 兵の 司令官や 問 題 児の 艦娘を集め た 傭 兵 艦隊を 結 成、 独立 戦 闘団 と し て 深 海 棲 艦 と の 戦 い へ 投 入 す る。 報 酬 次 第 で 危 険 な 任 務 も 遂 行 す る 傭 兵 た ち の 艦 隊 〝 M e r c e n a r y F l e e t 〟 は 今 日 も 危 険 と死の渦 巻 く海 域を突 破す る││ ! 艦 こ れ を 始 め て い る 内 に 脳 内 設 定 で 繰 り 広 げ ら れ る 鎮 守 府 イ メ ー ジ を 具 現 化 し て い る う ち に 沸 い て 来 た 艦 こ れ シ リ ー ズ。 お 付 き 合 い 頂 け た ら 幸 い で す 。P i x i v 同 時 連 載 中 作 品。タ グ の ﹁ 未 実 装 艦﹂ ﹁ 海 外艦﹂ はそのうち登場 予定。目
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│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 年 表 1 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ プロローグ 5 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ #1 ﹁赴任﹂ 7 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ #2 ﹁傭 兵の 艦隊﹂ 11 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ #3 ﹁艦娘 たち ﹂ 17 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ #4 ﹁ 整 備任務﹂ 23 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ #5 ﹁初出撃﹂ 27 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ #6 ﹁ 捨て られ た 艦隊 ① ﹂ 34 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ #7 ﹁ 捨て られ た 艦隊 ② ﹂ 37 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ #8 ﹁ 捨て られ た 艦隊 ③ ﹂ 41 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ #9 ﹁艦船建造﹂ 53 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ #10 ﹁新 しい 艦娘﹂ 62 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ #11 ﹁沖ノ島沖 攻略作戦① ﹂ 72 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ #12 ﹁沖ノ島沖 攻略作戦② ﹂ 83
年
表
2 年前 1月上旬 深 海 棲艦 が 初め て 確認 さ れる。 太平 洋 海 域 に 出現。 東南 アジア 並びに オーストラリア が大打 撃を受 け る。 1月 中 旬 深 海 棲艦 が 日 本 近 海に 出現、 海 上自衛隊 ・ 在 日 米 軍艦隊 に よる撃退 作戦が 実施。 深 海 棲 艦 の 戦 力 差 に よ り 作 戦 は 失 敗 。 太 平 洋 沿 い の 沿 岸 部 は大打 撃を受 け る。 生 き 残 った わ ずかな 日 米 艦隊 は横 須賀 ・ 舞鶴 ・ 呉などに 退 避 す る。 また 、インド洋・ 大 西洋 に も深 海 棲艦 が 出現。 各国 に よる必 死の 反撃 作戦が展 開 さ れる が 、 そのど れも が 失敗に終 わる。 海 底ケーブル など も深 海 棲艦 の破 壊工 作に より喪 失す る。 1月下旬 米海 軍 太平 洋艦隊 の 残 存 勢力を集 結させ 、 ハワイ沖 にて 防衛 戦 を行 うが 、壊滅。 大 西 洋 に 展 開 中 の 米 艦 隊 も バ ミ ュ ー ダ 沖 の 戦 い で 完 全 に 喪 失す る。 中 国 海 軍も同 時 期 に大 規 模 反抗 作戦 を行 う も壊滅 す る。 また 、 この時 期より深 海 棲艦 が制空権 を確保。 内 陸 部 を 除 き 深 海 棲 艦 艦 載 機 に よ っ て 航 空 路 も 制 圧 さ れ る。 ハワイ諸島 は 深 海 棲艦 に よ って占 領。 拠 点 と し て 利 用 さ れ る 事 を 恐 れ た 米 国 政 府 は 核 攻 撃 を 決 断 IRBM に よるハワイ 核攻 撃 作戦が 実行 さ れる。 2月 パナマ、スエズ運河 が 深 海 棲艦 に より 占 領。 米 軍 に よ り I R B M が 発 射 さ れ パ ナ マ 運 河 は 破 壊、 機 能 を 喪 失 。 各国沿岸部 では 深 海 棲艦 に よる上陸 作戦が展 開 さ れる。多 数の戦死 者 が 出るも陸上 での戦 闘 はまだ 分 があ る と判 明。 絶 望的 な 遅滞 戦 闘 が 各 地で 行われる。 沖縄 では 深 海 棲艦 が 上陸、 在 日 米 軍 と 自衛隊 に よる沖縄撤退 作 戦が 実施 さ れる。 戦死 2500名以上 の戦 闘 の 後 に 沖縄 は 深 海 棲艦 に 完 全制圧 。 小 笠 原諸島 で も同様 の 深 海 棲艦 の 上陸 があ り、 こち らも 占 領 さ れる。 3月 日 本で 〝艦娘〟 の 技術 と 〝妖精〟 が発 見 さ れる。 深 海 棲艦 に 対 す る 優位性が判 明後、実 戦に 投 入さ れる。 中 国 で は 深 海 棲 艦 の 上 陸 に よ り 沿 岸 部 で 大 規 模 な 戦 闘 が 発 生 す る。 自国内 での核兵器 使 用と 人 海戦 術 の崩 壊 に より、 中 国 は 事実 上 崩 壊、内 戦へ 突 入す る。 こ れ に より、 陸路 での ユーラシア 大 陸 横 断 は 事実上不可能 と な る。 4 月 沖 縄 奪 還 作 戦 開 始。自 衛 隊 と 在 日 米 軍 残 存 部 隊 に よ る 反 撃 で 沖縄を 奪 還。 次いで 小 笠 原諸島も 奪 還 に 成功 し 、 日 本 近 海の制海権 確保 は 完 了 す る。 以後、 小規 模な戦 力 の み が 日 本 近 海に 出現 す る だけとな り 戦 線 は 移行。 艦娘 に よる 海 上護衛を 伴う 輸送 作戦が 実施 さ れる。 5 月 ア メ リ カ の 東 海 岸 と 西 海 岸 で 大 規 模 な 深 海 棲 艦 の 侵 攻 作 戦が 開始。 艦 娘 建 造 技 術 輸 入 の 為 に 日 本 政 府 と の 交 渉 が 続 く が 輸 送 の 目 処 が 立 たず 頓 挫 。 7月 ドイツ が 独自技術 で 艦娘 の 開 発に 成功。 大 西 洋 海 域 で は 潜 水 艦 の 艦 娘 に よ る 大 規 模 な 攻 撃 作 戦 が 展 開 さ れる。 8 月 ア メ リ カ 政 府 と の 交 渉 に よ り 艦 娘 建 造 技 術 の 輸 出 が 決 定、 自衛隊 が 国防軍 へ改 名。
9 月 イ タ リ ア が 艦 娘 の 開 発 に 成 功。ド イ ツ 海 軍 が ド ー バ ー 海 峡 の奪 還 に 成功 す る。 1 0 月 ド ー バ ー 海 峡 奪 還 を 皮 切 り に イ ギ リ ス が 艦 娘 開 発 技 術 の 導 入に 成功 す る。 11月 太平 洋 戦 線 の 拡 大に伴い 、 志願 兵制 度 が 導 入さ れ 海 軍 への 入 隊者 が 増加 す る。 1 2 月 生 き 残 っ た 原 潜 コ ロ ン バ ス に よ る 太 平 洋 横 断 作 戦 ︵パ シ フィック・ライナー 作戦 ︶実行。 深 海 棲 艦 の 攻 撃 を 避 け 、国 防 海 軍 の 艦 娘 の 護 衛 地 点 へ と 向 か う 。 しかし 、 その 直後 に ハワイ諸島沖を航行 中に ロスト、 沈没 と 断 定。 1 年前 1 月 日 本 海 軍 に よ る 精 鋭 の 潜 水 艦 娘 に よ る 太 平 洋 横 断 作 戦 が 実施 さ れる。 後 に ハワイ諸島沖 にて全 艦ロスト。 作戦が中止さ れる。 2 月 イ ギ リ ス が 艦 娘 の 建 造 に 成 功。ド イ ツ 海 軍 と の 共 同 作 戦 が 実施 さ れる。 こ れ に伴い シーレーン の 確保 が 開始 さ れる。 5月 フランス が 艦娘 の 建造 に 成功 す る。 イタリア 海 軍 が 艦娘 の戦 力化を完了、 本格 的 な 実 戦 投 入が 始 ま る。 6月 地中海奪 還 作戦 ︵セイレーン 作戦 ︶開始。 イギリス ・ ドイツ ・ フランス ・ イタリア 含 む4ヶ国連合艦隊 に よる 作戦 行動 が 実施 さ れる。 7月 黒 海にて ロシア が 艦娘 の 建造 に 成功 す る。 9月 地中海奪 還 作戦 成功。 地中海は 完 全に 掌握。 ヨ ー ロ ッ パ 戦 線 は 北 海 の 戦 い と ス エ ズ 運 河 奪 還 に 移 行 し て い く 。 10月 中 国 での 内 戦終結 。 樹 立 した 新 政権の呼び 声 の元 、 国防 海 軍 に よる 中 国沿岸 の 深 海
棲艦掃討 作戦が 行われる。 1 1 月 深 海 棲 艦 の 大 規 模 攻 勢。艦 娘 戦 死 2 8 0 0 名 と い う 大 損 害。 1 2 月 イ ギ リ ス 海 軍 に よ る 大 西 洋 突 破 作 戦 ︵ブ レ イ ク ス ル ー 作 戦 ︶実施。 艦娘部隊 が 投 入さ れる が 、深 海 棲艦 の大 艦隊 と 遭遇 し失敗 。 現 在 2月 国防 海 軍 が 北 海 道│アリューシャン列島 の 航路確保 に 成功。 3月 国防 海 軍 に よるアメリカ への 艦隊 派 遣 作戦 ︵シアトル 急 行 作 戦 ︶ が 実施。 輸送艦2隻 と 艦娘35隻 が アッツ島 海 軍基 地 を出航、 深 海 棲艦 の大 艦隊 と 遭遇 し 被害甚 大 。 輸送艦1隻沈没、 1隻 中破 、 艦娘 戦死 22名 という大 損害を被 り なが らもシアトル 港へ入港 。 4 月 艦 隊 派 遣 作 戦 の 成 功 に よ り 艦 娘 の 建 造 技 術 が ア メ リ カ に 伝 わる。 5月 アメリカ で 艦娘 の 建造 に 成功。 東海 岸 奪 還 作戦に 初投 入さ れ、成果を挙 げ る。 6月 バミューダ諸島 奪 還 作戦 実施。 ア メ リ カ 海 軍 の 艦 娘 部 隊 3 0 0 名 を 越 す 戦 力 を 用 い た 大 規 模 作戦で バミューダ諸島を 奪 還。 7月 アメリカ・イギリス 海 軍 に よる 大 西洋航路確保 作戦 実施。 特 定 の海 域 で戦 果を挙 げ る が 、 深 海 棲艦 の 猛反撃 に より艦娘 の 被害 は 甚 大 。 作戦は失敗す る。 8月 国防 海 軍上 層 部 に よる新部隊 発 足、 実験部隊 が 編成 さ れ ﹁傭 兵 艦隊﹂ が組織さ れる。
プロローグ
あ る日、 海か ら侵 略 者 が 現れ た 。 人 にあ ら ず 、生 物にあ ら ず 、 そして機 械 にあ ら ず ││ 強 大 な 力 を 持 っ た そ の 存 在 、深 海 棲 艦 は 瞬 く 間 に 5 つ の 海 に 現 れ た 。 人類 は 、深 海 棲艦 という敵に 立 ち 向 かうた め に 軍隊を 派 遣。 だが 、 深 海 棲艦 の恐 る べき 力 と テクノロジーを 前に 、 軍隊 はなすす べ も なく敗 北 した 。 始め に 諸外国 の海 軍 が 、 ついで中 国、ロシア、 そして 日 本 。 アメリカ軍 は 陸 海空 を 含 む 全兵 力を 太平 洋 と大 西洋 に 投 入 、 深 海 棲 艦 の 侵 攻 を遅ら せたが 、1ヶ月 の 内 に 壊滅 した 。 人類 は絶 望 した 。 海は 深 海 棲艦 の手に 落 ち 、 海か ら陸 への 侵 略が カ ウントダウンを始め ていた 。 だが 、 こ れ までかと 思われ た 人類 に 、 救 世 主が 現れ た 。 人 であ り、 機 械 にあ ら ず 、 そして兵器であ る 乙女 ││艦娘。 深 海 棲艦 に 立 ち 向 かえ る 唯 一 の武 装を持 ち 、 海 上を移動 し 深 海 棲艦 を排除 でき る、人類 の救 世 主 。 人類 は 艦娘を調 べ 、育 て 、 そして 実 戦へと 投 入した 。 艦娘 たちは戦った 。 人類 は 徐々 に海 上 での主 導 権 を取り 戻していった 。 そして 、深 海 棲艦 が海 を 制圧して 二 年 。 人類 と 深 海 棲艦 の戦いは 膠 着 状 態の 様相を 呈していた 。 深 海 棲艦 に 対抗 しう る艦娘 の存在 、 崩 壊 した 軍を 支え る べく 参加 し た 義勇 兵たち 、 そ れ に呼 応 す るよ うに戦う 艦娘 たち ││ 海 軍基 地は 増設 さ れ、 戦いの 為 に 莫 大な戦 費 と 資源 が 投 入さ れ た 。 そ れ に呼 応 す る かの よ うに 、深 海 棲艦も進化 し 、増殖を続 けた 。 だが 、 数え 切れ ない戦い を 繰 り返 して も尚、 深 海 棲艦 の 勢 いは止ま ら ず 、 いつしか 人類 の 反撃 は 一定 の ライン で停止し 、 ついに戦 争 は 泥 沼 の中に 沈ん でいった 。 増 え 行 く戦死 者 と 、 そ れ と 同 じ 量 で 補 充さ れ ていく 艦娘。だが 、 日増 しに 艦娘 の 補 充 量 と 深 海 棲艦 の 補 充 量 は 深 海 棲艦 優 勢 に なっていく 。 事 態 を重 く 見 た 軍司令部 は 、 あ る方法を立 案す る。 精鋭 の 艦娘 の 損耗を防 ぎ 、 尚且 つ 独立 して 行動可能 であ り、 任務を 独自 に 遂行 し 、 誰 か ら の影 響も受 けずに作戦 目標を達成 す る事 の 出 来 る、非 正 規部隊 の 設立 であ る。 民間軍事企 業 や退 役 軍人 か ら、 こ れら の 部隊を指揮可能 な 人員 が 引 き 抜 か れ、 部隊 へと 編 入さ れ、 極 秘裏 に 建造 さ れ た 基 地 や 放 棄 さ れ た 基 地がこの 部隊 の根 城 として用 意 さ れ た 。 正 規部隊 とは 違 い 、 資源 の 配 当 も少 ない 小規 模な 部隊 の 設立 に 難色 も 示す 軍高官も現れ たが 、 研 究 チーム の用 意 した データ と 、 深 海 棲艦 への 反抗 作戦に 投 入さ れ た 実験部隊 の活 躍 が 、 ついに本格 的 な 採 用 を 踏み切ら せた 。 こうして 、軍 の 内部 に 独立部隊 が 設立 さ れ た 。 傭 兵 艦隊 の登場であ る。
#1
﹁赴任﹂
鎮守府 に着 任 す る提 督の 秘書艦 になってほしい 。 司令部 か ら通達 さ れ た命 令 は 至 極簡素かつ 重 大な も のだった 。 とうとうこの時が や って来たか 、 と 、 吹 雪型5 番 艦 の 叢雲 は 覚悟 し た 。 艦娘 の 適 正 を持 ち 、 文 字 通り軍 に 〝徴 用 〟 さ れ た彼女にとって 、 初 め ての 任務 であったが 、 そ れ は 責任重 大な 仕事 であ る。新 たに 新造 さ れ た 艦隊を指揮 す る司令官 の 補 佐 、 そ れ と 同 時に 初 戦におけ る 経 験不 足 の 提 督たち をサポート す る という 責任重 大な 仕事。 不安 と 期待を胸 に 、 軍 の 輸送 機で 目的 地であ る基 地へと や って来た 叢雲 は 、信 じ られ ない物 を見 てい るよ うな 気分 になっていた 。 ﹁ ⋮⋮ここが 、鎮守府よ ね ?﹂ 彼女の 目 の前に 広 がってい る のは 、 おお よ そ 軍 港と呼ぶには 程遠 い 施設 だった 。 港ではあ る。一応 は港なのだが 、 どう も規 模が 小 さすぎ る。 田 舎 の 港町と も言 え るよ うな 小 さな 漁 港ぐ ら いの大きさ 、 整 備 こそさ れ てい る が 建 て て か ら 相 当 の 時 間 が 建 っ た で あ ろ う 兵 舎 や 司 令 部 と 思 し き 建 物 。蔦や雑草 が伸び るフェンス、 放 置 さ れ て久しいであ ろ う 軍 用 ト ラック などがこの 施設 のくたび れ加減を助長 していた 。 港の 隣 にはとて も小 さな 滑走路 が用 意 さ れ てい る が 、 こち らも軍 港 と 同 じく 設備も 放 置 さ れ っぱなしの よ うだった 。 話 に 聞 か さ れ て い た 〝 鎮 守 府 〟 の イ メ ー ジ と は あ ま り に か け 離 れ ていた 。叢雲 が 想像 していた 鎮守府 は 、 巨 大な 軍 港であ り 数 多 くの戦 隊、 艦隊 が 軒を連 ねていたはずだった 。 だが 、 ここはどう 考 えて も そ れら の 精鋭 の 軍事基 地とは 程遠 い 、 ひどい場所だった 。 まさかの 左遷人事 か 、 と 叢雲 はがっく り と 項垂れ た 。 同期 の 艦娘 たちは 、 み な ベテラン の 提 督と 最 強の 精鋭艦隊 に 引 き 抜 か れ ていた 。 なのに 、 自分 だけはこ ん な 鎮守府 で 閑職 まがいの 事を し なき ゃ いけないのか 、 と 自 問す る。 とにかく 、 叢雲 は 提 督へ 会 いに 、 錆 の浮いた案 内板を頼り に 建 物の二階 にあ る執務室 へと 向 かった 。 ﹁ はあ ?﹂ 叢雲 は 思わ ず素っ 頓狂 な 声を漏ら していた 。 執務室 の ドア は 鍵 が 掛 かったままだった 。 そ れ ばか り か 、 一枚 の メ モ書 きが セロテープ で張 られ てい る。 〝滑走路 で昼 寝 中 〟 所 要 にて 外出 中 、 または 不 在だったな ら まだ 理解 できた 。 しかし 、 そ れ ばか り か 滑走路 で昼 寝 してます 、 とは 一 体どういう 事 なのか 。 彼女 も艦娘 であ る が 、 そ れ と 同 時に 軍人 であ る。 この よ うな 左遷 ま がいの 辺境基 地 、 そしていい 加減 な 司令 と来 れ ば 腹立 たしい 気持 ち も 沸 いてく る。叢雲 は 小走り で 建 物 を出る と 、滑走路 へと 向 かった 。 滑 走 路 の 脇 に は 1 機 の 軍 用 機 が 鎮 座 し て い た 。双 発 の プ ロ ペ ラ エ ン ジ ン を 載 せ た 小 型 の 機 体 │ │ ア メ リ カ 軍 が 使 用 し て い た C O I N 機 ︵軽 攻 撃、 対暴動 機 ︶ 、 OV│10。ネイビーブルー に塗 装 さ れ、 真 っ 白な 識 別帯 を 機主に塗ったそ れ は 、 明ら かに 司令部 の 使 用してい る 機 材とは全く異なった 、 異 質 な存在であった 。 その 翼 の 下、 日陰 に 人 影があった 。 木 製 の ビーチチェアを広 げ 、 雑 誌をアイマスク代わり に昼 寝を してい る。 まず 、叢雲 の 目 に 飛 び 込ん できたのは 提 督の 服装 だった 。 一般的 な海 軍 用の 仕官 制 服 ではなく 、 そ れ は 野 戦 服 だった 。黒一色 で 染められ た BDU に 、 ピストルベルトを付 けてい る。足 には 、 こ れ また BDU と 同 じく 黒色 の コンバットブーツ がは められ てい る。 叢 雲 は 提 督 の 腰 を 見 た 。ピ ス ト ル ベ ル ト に ぶ ら 下 が っ て い た の は ホ ル ス タ ー だ っ た 、 そ こ か ら は 黒 光 り す る 自 動 拳 銃 の ハ ン マ ー と グ リップ がは み出 してい る。 ││珍 しい 。今 時 、自動拳銃 まで 持 ち 出 す 提 督がい る な ん て 。 内 海 、 そ れも 極 め て 辺鄙 な場所にあ る この 基 地で 、 わ ざ わ ざ 自動拳 銃を 携帯す る提 督など 叢雲 は 見 た 事 が無かった 。 叢雲 は 、提 督に 声を かけた 。 ﹁ あなたが 提 督 ?﹂
返事 はない 。 代わり に 、 提 督は も そ も そと 身 体 を動 かし 、 雑誌を少 しだけ 持 ち 上 げ る と 、叢雲を見 た 。 ﹁俺 が 提 督だが ﹂ また 雑誌を ず ら し 、提 督は昼 寝 の 続 き を し よ うとす る。 ﹁ ⋮⋮ 今日 か ら部隊 に 配 属になった特 型駆逐艦5 番 艦 の ﹂ ﹁叢雲、 だ ろ﹂ 寝よ うとしなが ら提 督が答え る。 ﹁今 朝 か ら プ ロ フ ィ ー ル を 読 ん だ よ。 ど う せ 今 の 所 は ヒ マ だ し 、 ま 、 ゆ っく りやろ う や﹂ 叢雲 は 今度 こそ 怒 った 。 ﹁ い い 加 減 に し な さ い !あ ん た 本 当 に 提 督 な の ?給 料 で も 泥 棒 す る 気 ?﹂ ﹁ ⋮⋮ ﹂ 昼 寝 の 続 き を し よ うとしていた 提 督は 、 思わ ず 叢雲 の大 声 にびくっ と 身 体 を震わ せた 。提 督は 雑誌を どけて 、 む く り と ビーチチェア か ら 起 き 上 がった 。 思わ ず 叢雲 は息 を 呑 ん だ 。 いい 加減 な 口調 だったが 、 顔 つきは 精悍 で 、 目 つきは 鋭 く 、 彼が 只者 ではない 人間 であ る事を容易 に物 語 って いた 。 で も その 威厳 は 一瞬 で 、 あくび を漏ら してか ら ぐっ 、 と 背を 伸 ばして眠 気を飛 ばすと 、 提 督は やる気 があ る のか無いのか 解ら ない 様 子で 、話を始め た 。 ﹁ ま ぁ 、今 日 中 に や ら な き ゃ い け な い 事 も あ る と 言 え ば あ る し ⋮⋮ ま あ 、仕事 にす る か ﹂ こ り ゃ と ん で も な い 鎮 守 府 に 着 任 し た な 、 と 叢 雲 は 改 め て 後 悔 し た 。 ビーチチェア と 雑誌を 片 付 けた 提 督は 、 叢雲 と 一緒 に 執務室 へと 向 かっていた 。 簡単な 自己 紹 介を互 いに 済 ませ る と 、 2人 は手 始め と 言わん ばか り に 雑談を始め ていた 。 ﹁ あ ま り 言 い た く な い け ど 、 こ こ は 相 当 な お ん ぼ ろ ね 。左 遷 さ れ た の
かし ら﹂ ﹁左 遷 と 言 う よ り も 何 と 言 う か ⋮⋮ 俺 は そ も そ も 軍 人 で す ら な い か ら な⋮⋮ ﹂ ﹁ は ?どういう 事よ、 その格好だしあ ん た 提 督でし ょ ?﹂ 叢雲 の 言葉 に 、提 督は 首を左右 に振った 。 ﹁軍 と 契 約 を 結 ん だ 雇 わ れ 司 令 官 だ 。軍 属 と も 言 え る だ ろ う が 、 正 規 の 軍人 ではないな 。 い や、 元 軍人 だったが ﹂ ﹁ あ ら、退 役してまた 復 帰したの ?そ れ と も、傭 兵か何か ?﹂ ああ 、 と 提 督は答え る。 ﹁ そ ん な所だ ﹂ 提 督は ポケット か ら鍵を取り出 すと 、 執務室 の 鍵を はずし 、 ドアノ ブを 捻った 。 ド ア を 開 け る 前 、提 督 は ふ と 思 い 出 し た よ う に 叢 雲 へ と 向 き 直 っ た 。 ﹁ ああそうだ⋮⋮ 言 い 忘れ てたな 。 着 任 お め でとう 、 戦 争を始める ぞ ﹂
#2
﹁傭
兵の
艦隊﹂
執務室 には 、 乱 暴 に 段ボール箱 が並べ られ てお り、 荷解 き も さ れ な いまま積 み上 げ られ ていた 。 机と 椅 子は 置 いてあ る が 、 その 上 には何 も置 か れ ていない 。 内装も 無く 、 ただ単に 荷 物 を 積 み上 げただけの 殺風 景な 部 屋 。 本当 に着 任 してすぐだったという 事を 改 め て 実感 した 叢雲 だったが 、 提 督 は手 始め に 近 場の 段ボール箱 の ガムテープを 剥がし 、開封 す る。 ﹁ ま 、 と り あえず手 始め に 引越 し作業手 伝 ってく れ﹂ ﹁ ⋮⋮ ﹂ そ ん な 事 だ ろ うと 思 った 、 と 叢雲 は 諦める事 にした 。 提 督 の 持 ち 込 ん だ 荷 物 は か な り の 量 だ っ た 。 そ の 大 半 は 事 務 書 類 だ 。 早速、 アルミ製 の 棚を 組 み立 て 提 督と 一緒 に 書類をファイルケース ごと並べていく 。一通り棚 へ 書類を 並べ る と 、 今度 は 提 督用の机に 一 通り 物 を 並べていった 。 そ れ が終 わ って 一 息つくと 、 叢雲 はふと 部 屋 の中に 置 か れ た ロッカー に 目を向 けた 。 ﹁ 大きい ロッカー ね 、 何 を 入 れる の ?﹂ ﹁ そ りゃ銃 に決まって る だ ろ う ﹂ 提 督はそう 言 うと 、 積 み上 げ られ た 荷 物の中か ら黒 く 、 長 い 袋を見 つけ る と ジッパーを下 げて中 身を取り出 した 。 そ れ は 軍 用の 突撃銃 だった 。軍 が制 式 にしてい る 武器ではなく 、 ア メリカ製 の M4カービンや、 M16A2突撃銃、 更 には レミントン製 の ポンプアクション式 散弾 銃 まで入ってい る。 ﹁ そ ん な も の 何 に 使 う の か し ら ⋮⋮ 大 体 、 そ の 腰 に 付 け て る 拳 銃 も ⋮⋮ ﹂ ﹁護身 用に決まって る﹂ 提 督はあっさ り と 言 い放った 。 ﹁俺 は 元 々 陸 軍 で 働 い て い て ね 。俺 に は 海 軍 の 連 中 が み ん な 銃 も 持 た ずに戦 争 してい る事 が 非 常 識 に 思 え る が ﹂ ﹁銃 じ ゃ深 海 棲艦 は 倒 せない わよ﹂呆 れ た よ うに 叢雲 は 言 うが 、提 督は ﹁ 当た り 前だ ろ﹂ と 返 した 。 ﹁基 地 の 警 備 用 に 使 う 。基 地 の 資 源 目 当 て に 入 る コ ソ 泥 だ っ て い る だ ろ う 。 物 騒 なご時 勢 だ 、 お前 も 平時に 1 挺く ら い 持 っておけ ﹂ ﹁ ええ ー ⋮⋮ ﹂ 叢 雲 は 再 び 引 い て し ま っ た 。や は り こ の 提 督 は ヤ バ い か も し れ な い 、 という 予感 がど ん ど ん的 中 を始め、 叢雲 の 心 に 警鐘を鳴ら し 始め ていた 。 日も落 ち 、 時 計 の 針 が 夜 へ入 り始める頃、 司令室 の片 付 けか ら 兵 舎 の 清掃、 設備点検 などの作業 を 終 わら せた 叢雲 と 提 督は 食堂 で 雑談を しなが ら 晩 飯 にあ り ついた 。 兵 舎 の 食堂 はが らん どうだった 。 元 々規 模こそ 小 さいが 、 艦娘 と 提 督の 2人 だけとな る と 、 さ ら に 広 く 感 じ られ た 。 ま さ か 赴 任 初 日 で レ ー シ ョ ン だ け の 晩 飯 に な ろ う と は 誰 が 予 想 で き よ うか 、 と 思 いなが ら叢雲 は 食後 の レーション容 器 を 片 付 けた 。 ﹁ とこ ろ で 叢雲、 お前は 酒を飲む か ?﹂ 提 督は 不意 に席 を立 つと 、 そのまま 食堂 の 厨 房へと 向 かっていく 。 ﹁ は ?まだ未 成 年だし 飲み はしないけど⋮⋮ ﹂ ﹁ そうか ﹂ 提 督は 厨 房へ入 る と 、 すぐに戻ってきて席へ 付 いた 。 片手に 握 った 瓶を見 て 、叢雲 はすぐにその 言葉 の 意 味 を察 した 。 ﹁赴任 祝い ﹂ 提 督 は そ う 言 う と 、栓 抜 き も 使 わ ず ビ ー ル 瓶 の 王 冠 を 素 手 で 開 け た 。 乾杯の 音頭も取ら ず 、 そのままぐいっと ビールを 煽った 提 督は 、 美 味そうにごくごくと 一口、二口 と 飲ん でいった 。 も う 驚 くだけ無 駄 だと 思 った 叢雲 は 、 呆 れ つつ も紙コップ に 満 たし た水 道 水 を くいっと煽った 。 ﹁ はぁ⋮⋮ 上 手く や ってけ る かし ら この 部隊﹂ 叢雲 は 思 ったままの 言葉を口 にす る。提 督は 怒りも せず 、 逆 に 笑 っ て 見 せた 。
﹁随分 と ストレート に 言 う 艦娘 だな 。 ま 、 こ れ が 俺 の やり方 って所だ ﹂ 冗談 じ ゃ ない 、 と 叢雲 は 思 ったが 、 まだ 赴任 して 1日目、 目 の前に 座る提 督という男の 実力 までは 計り知れ ない所があ る以上、 叢雲 は 反 応 に 困 ってしまう 。 ﹁ そ れ に し て も、今 日 は 最 悪 だ っ た な 。2 人 で や れ る 範 囲 で 頑 張 っ た が 、 まだまだ 基 地とは 言 えないな ﹂ ﹁ そ れも そうね⋮⋮ ﹂ 2人 は周 囲を見回 していた 。 食堂 の 蛍 光灯は 、 今2人 が 座 ってい る箇 所 を除 いて 電気 が 消 えてい る。 兵 舎も叢雲 の 部 屋 や、 提 督の 執務室 に ブリーフィングルームを除 いてまだ手 付 かずのままであ り、 必要最 低 限 の 清掃 と整 備を して 、 何 とか 使 え る状 態にしたに 過 ぎない 。 ﹁遺 棄 さ れ た も 同 然 の 基 地 だ っ た か ら な ⋮⋮ ま 、明 日 に は 人 出 も 足 り る だ ろ う ﹂ ﹁ そ れ で 、実 戦はいつか ら にな る の ﹂ 叢雲 は 気 になっていた 話を切り出 した 。 彼女は 艦娘 であ る。 そ れ は 、 彼女 自身 が 深 海 棲艦 と戦うた め の戦 力 として 配置 さ れ た 事 に 他 な ら ない 。 とな れ ば 、 実 戦に 借り出 さ れる の も 時 間 の問 題 だ 。艦娘 として 訓練を 積 み、 戦いの 基礎を習 い 、 偽 装 の 使 い 方をマスター した 叢雲 にとって 、 そ れ は 一 番 気 にな る話 だった 。 ﹁暫 く先だ ﹂ その 返事 に 、 叢雲 はがっか り した よ うな 、 ほっとした よ うな 気持 ち にな る。 ﹁ ふ ーん ⋮⋮ 燃料や 弾 薬 の 蓄 えは ?﹂ ﹁出撃一回分 ぐ ら いだ 。 ま 、 すっか ら か ん という ヤツ だ ﹂ 提 督 は ぐ い っ と ビ ー ル を 煽 っ て か ら 言 い 放 っ た 。叢 雲 は 呆 れ た 顔 を 浮かべた 。 ﹁ こ こ は 鎮 守 府 で し ょ ?油 も 弾 も 無 い の に ど う や っ て 深 海 棲 艦 と 戦 う つ もり なの ?﹂ ﹁ こ れ には 深 い 事情 があってだな⋮⋮ ﹂ 提 督は テーブル に ビール瓶を置 くと 、 BDU の 胸ポケット か ら 手帳
を取り出 した 。 ページを 捲 り、確認を しなが ら提 督は 話を再開 した 。 ﹁ 当 初 の 基 地 の 備 蓄 量 は 1 0 0 0 ほ ど あ る 予 定 だ っ た し 、司 令 部 も そ れ を 補 充 す る 予 定 だ っ た が ⋮⋮ 叢 雲 と 俺 の 2 人 で こ の 基 地 を 回 す に は 心 も と な い と 思 っ て な 。司 令 部 の 連 中 で 話 の 通 じ そ う な ヤ ツ に 頼 ん で 、 資源 の 備蓄を回 して 艦娘を補 充す る方向 で決まった 。早 け れ ば 明日 に も 到着す る予定 だ ﹂ ﹁ いきな り建造 だな ん て 、 大判振 る舞 いね ﹂ 。 叢雲 が 聞 いた 話 では 、 新 米の 提 督の 殆 どがまず着 任 した 艦娘 と 任務 を こなすというのが セオリー との 事 だった 。 簡単な 任務 に 出撃 し 、 流 れ を つ か ん で か ら 本 格 的 な 艦 隊 の 増 強 に 乗 れ 出 す の が 一 般 的 だ そ う だ 。 着 任 していきな り、 艦娘を建造 し 資源 と 資 材 をカラ にす る という のは 見 た 事 がない 。 だが 、提 督は 叢雲 の 言葉 に 首を 振った 。 ﹁ い や、建造 してないな ﹂ ﹁ どういう 事 ?﹂ ﹁買収 だ ﹂ 提 督は ニッ、 と 悪 そうに 笑 って 見 せた 。 ﹁ 大 体 の 基 地 は 資 源 不 足 だ 、例 え 1 0 0 だ ろ う が 2 0 0 だ ろ う が 資 源 は あ っ た 方 が い い 。 素 行 の 悪 そ う な 艦 隊 の 提 督 に 話 を 持 ち 掛 け た ら アッサリ と 交渉 に乗った よ。資源 と 引 き 換 えに 、 ここの 艦隊 に 艦娘を 引 き 抜 く 事 に O K サ イ ン を 出 し た 。 ど い つ も こ い つ も 馬 鹿 ば っ か り だ 、 こ ん な 効率的 な 方法 があ る ってのに ﹂ ﹁ あ ん た⋮⋮本当に 黒 い わ ね⋮⋮ ﹂ 若 干 引 き 気 味の 叢雲 だったが 、提 督はさ も満足 げな 様 子だった 。 手帳の ページを 捲 り なが ら、提 督は 話を続 け る。 ﹁ ま あ 、 そ の 分、 問 題 児 ば か り が 集 ま っ た 艦 隊 で は あ る な 。 素 行 不 良 だった り 命 令違反を起 こした り、 あ る いは 艦隊 で孤 立 してい る一 匹 狼 とか 、 つま り は 要ら ない奴 ら の 寄 せ 集め だ ﹂ ﹁ 大 丈 夫なの 、 この 艦隊 は ﹂ 叢雲 は 心配 そうな 口 ぶ り だが 、 提 督はさほど 気 にしてないのか 、 そ
れ と も 楽 観的 なのか 、 改 め て ビール瓶を 手にとってぐいっと煽って答 えた 。 ﹁ 大 丈 夫 さ 。 か え っ て こ う 言 う 連 中 の 方 が や り や す い 仕 事 が 多 い か ら な ﹂ どこか 引 っ 掛 か り のあ る言葉 に 、 叢雲 は 思 い 切 って本 音を ぶつけて みる事 にした 。 ﹁ さ っ き か ら 話 を 聞 い て い て 思 う の だ け ど 、 こ こ は 一 体 ど う い う 部 隊 なの ?﹂ ﹁ ⋮⋮ 傭 兵の 艦隊、 だな ﹂ 提 督はそう 言 うと 、 空になった ビール瓶を 机の 上 に 置 いた 。 ﹁俺 は 雇われ司令官 で単な る 戦 争 屋 、 配置 は 小 さな 基 地 、 艦娘 は 殆 どい ないし 、 建造設備も殆 どない 、 司令部 か ら言われ た 資源 の 補 充は 他 の 鎮守府 の半 分以下 だ 。 つま り、 この 部隊 は 事実上 の支 援艦隊、 も しく は 消耗品 の 使 い捨て 部隊 だ 。 そ れ と 同 時に 、 軍 が作った 実験部隊 で も あ る。金 と 資源を 報 酬 に全て を動 かし 、 今 までの 艦隊 が 出 来なかった 仕事を押 し 付 け る為 のな ﹂ ﹁ ⋮⋮じ ゃ あ 、 何で 私 はここに ﹂ 話を聞 いて 唖 然とす る叢雲 だったが 、 提 督は半ば 同情 す るよ うな 視 線 で 叢雲を見 た 。 ﹁ 大 方、司 令 部 が 送 り 込 ん だ 監 視 役 だ ろ う よ。 そ の う ち 辞 令 が 来 る か も な 、俺 には 内緒 で ﹂ ﹁ ⋮⋮ ﹂ 押 し 黙る叢雲 だったが 、提 督は ﹁心配 す る な ﹂ と 話を続 けた 。 ﹁ ま 、 ど う せ 終 わ ら な い 戦 争 な ん ざ な い 。 こ の 戦 争 が 俺 た ち 人 類 側 の 勝 利 に な っ た 所 で 、艦 娘 や 俺 が も ら え る 恩 給 な ん て 微 々 た る も ん だ 。 そ れ ま で の 間 に 稼 ぐ だ け 稼 げ る チ ャ ン ス が あ る 艦 隊、 そ れ が 俺 た ち だ 。も ち ろ ん 仕 事 は 他 の 艦 隊 よ り も 激 務 だ が 、俺 が 指 揮 を す る 以 上、 艦 娘 の 命 を 無 駄 に 散 ら す よ う な 作 戦 は 通 さ な い 。 そ れ に 俺 た ち は 事 実上 の 独立 戦 闘団み たいな もん だ 、 普 通 の 艦隊 で 働 く より かは 、 幾 分 か 面 白いと 思 うぞ ﹂ ﹁ ⋮⋮あ ん た 、 本当に戦 争 屋なのね⋮⋮ イカれ て るわ﹂
叢雲 は 、腹 の 底 か ら 呆 れるよ うに呟いた 。 ﹁イ カ れ で 結 構。勲 章 と 名 声 が 欲 し い な ら 他 所 へ 行 け 、 命 令 書 は 俺 が 工面 して やる﹂ 提 督は 椅 子か ら立 ち 上 が る と 、 空になった ビール瓶を 手に 食堂 の 出 口 へと 向 かった 。 ﹁ と に か く 、今 日 の 仕 事 は 終 わ り だ 。部 屋 に 戻 っ て 休 め。明 日 か ら 本 格 始動 だ ﹂ 提 督は振 り返ら ず 、 叢雲 に 言葉を投 げかけ 、 食堂脇 の ゴミ箱 に ビー ル瓶を 放 り投 げ る と 、立 ち 去 っていった 。 1人残 さ れ た 叢雲 は 、 提 督の 言葉を反芻 しなが ら、 後 へ 続 く よ うに 食堂を出 て 行 った 。
#3
﹁艦娘
たち
﹂
翌朝。叢雲 と 提 督は 滑走路 に 立 っていた 。 本 日付 けで 赴任 す る艦娘 たち を迎 え る為 だったが 、 予定 の時 間 が 近 づいて も なお 、艦娘を 乗せた 飛行 機は到着す る気配 が無かった 。 ﹁ 来ない わ ね⋮⋮ ﹂ ﹁ そうだな⋮⋮ ﹂ 2人揃 って 待 ち 続 けてい る が 、 一向 に来ないた め、 提 督はいつ も の よ うに ビーチチェアを広 げて 寝転 がって 雑誌を読ん でい る。 叢雲も、 も は やマイペース な 提 督に 対 して 怒る事も 呆 れる事も 無 駄 だと 思 い 、諦め てその横で木 箱 に 座 ってぼ んやり と空 を 眺 め てい る。 ﹁ なあ 叢雲﹂ ﹁ 何 ?﹂ 提 督は 雑誌を読み なが ら話を始める。 ﹁艦娘 にな る 前は何してた ん だ ﹂ ﹁ 何 っ て ⋮⋮ 内 地 で 普 通 に 生 活 し て い た だ け よ。 学 校 に 通 っ て い て 、 友達 と 遊ん で 、家 に帰って 家族 と 過 ごして⋮⋮ ﹂ ﹁ そうか ﹂ 提 督は 叢雲 の 言葉を聴 いてか ら、意外 そうな 顔を す る。 ﹁ 未 だ に 艦 娘 に つ い て の 事 は よ く わ か ら ん の だ が ⋮⋮ そ の 、 何 だ 。艦 娘 にな る と 記憶 ってどうな るん だ ﹂ ﹁記憶 ?﹂ 何の 話 だ ろ うか 、 と 叢雲 は 不思議 に 思 った 。 ﹁艦 娘 に な る と 、 そ の 艦 が 文 字 通 り の 軍 艦 だ っ た 頃 の 記 憶 っ て の が 混 在 す る ん だ ろ う 。 そ の う ち 、自 分 が 人 間 だ っ た の か 軍 艦 だ っ た の か 、 記憶 が 混 在す る って 事 は 起 きないのか ?﹂ ﹁んー ⋮⋮ 確 かに 、言われ て 見れ ば⋮⋮ ﹂ 叢雲 は 思 い 返 す 。 確 かに 、 自分 の 人生 は 今 まで平穏その も のだった 。艦娘 の 適 正 を見 出 さ れ、 徴 用さ れ て 艦娘 になってい る が 、 記憶 が 混 在してい る部分も 確 かにあ る。太平 洋 の戦い 、 米海 軍 との死 闘、 艦載 機の攻 撃、 敵の 雷撃、 奮 闘 す る 乗 員 と 言 った光景が 、 昔見 た戦 争 映画の ワンシーン の よ うに 客観的 に 脳内 に入 り込ん でい る し 、 人 としての 〝名 前 〟も あ る のだが 、 そ れ と 同 時 に 頭 の ど こ か で 自 分 を 駆 逐 艦 の 名 前 │ │ 〝 叢 雲 〟 と し て 自 然 と 名 乗ってしまう癖が 、艦娘 になった 直後 に 付 いたの も事実 だ 。 ﹁俺 は 艦 娘 の 事 を 知 ら な き ゃ い か ん、 命 を 預 か る 身 と し て は 特 に な 。 今後も色々 と 聞 くか も し れん が 、 その時は⋮⋮ ﹂ 提 督が 話を続 け よ うとした 矢 先 、 遠 くか らエンジン の 爆音 が 響 き 始 める。 ﹁ おっと 、 そ ろ そ ろ 来 る な ﹂ 提 督は 起 き 上 が る と 、ビーチチェアを 畳 ん だ 。 叢雲も立 ち 上 が る と 、 東の空 を見 た 。青 い空に浮かぶ 黒 い 点││ヘ リコプター の機影は 、基 地へ 近 づきつつあった 。 爆音を鳴ら しなが ら、滑走路 へ 一 機の ヘリコプター が着 陸 す る。 国防 海 軍 の 日 の丸 を付 けた CH│53E輸送ヘリ、 スーパースタリ オ ン。 ず ん ぐ り と し た 巨 体 に は 5 0 名 近 い 兵 員 を 乗 せ る 事 が 出 来 た が 、 機 体 後 部 の ハ ッ チ か ら 降 り て 来 た の は 僅 か 数 名 ほ ど の 人 影 だ け だった 。 そ れ か ら、 何 個 かの手 荷 物 を降ろ すと 、 スーパースタリオン は 再 び 離陸 し 、 ま る でこの 基 地には も う用は無いと 言 い放つ よ うにそそくさ と 飛 び 去 っていった 。 滑走路 に 取り残 さ れ た 人 影 ││艦娘 たちは 、 周 り に 聳 え るみ ずぼ ら しい 基 地の 施設を困惑 しなが ら見回 し 、 どうしていいか も解ら ず 立 ち 尽くしてい る。 提 督と 叢雲 は 、 そのまま 毅 然とした 足取り で何 を していいか も分 か ら ないまま 取り残 さ れ てい る一団││艦娘 たちへ 会 う 為 に 向 かった 。 ﹁ すいませ ーん﹂ 艦娘 の 1人 が手 をパッ と 上 げて 提 督へたずね る。 ﹁ボク たちの着 任 す る鎮守府 ってここで⋮⋮ ﹂ ﹁よ く来た 。艦隊 へ よ うこそ !俺 が 提 督だ ﹂ 提 督の 言葉を聞 いた 艦娘 たちの 反応 はさまざまだった 。
ハズレ の よ うな場所に 赴任 した 事 に 対 す る 失 望、 目 の前の 黒 い 迷 彩 服 の男が 提 督であ る という 驚愕、 そ も そ も 何 も反応 せず 黙 って 辺りを 見回 す 者。 叢雲も、 つい昨 日 は 自分も同 じ よ うな 反応を していたのか 、 と 思 い つつ 、 新 たな 仲間 の到着に 内心、 期待感や安心感 の よ うな物 を感 じて いた 。 ﹁ と に か く 挨 拶 は 後 に し て ⋮⋮ 叢 雲、施 設 を 案 内 し て や っ て く れ。一 通り 終 わ った ら 全 員をブリーフィングルーム に 集合 させ ろ﹂ ﹁わ かった わ﹂ とにかく 顔を見 て 満足 したのか 、 提 督はそのまま 滑走路を離れ て 執 務室 へと 向 かっていった 。 呆 気 に 取られる艦娘 たち を 前に 、 叢雲 は 1日分 の年 長者 として 、 そ して 提 督の 秘書艦 として挨 拶を始め た 。 ﹁叢雲よ、よろ しく 頼むわ﹂ 1 時 間 後。 簡 単 な 施 設 の 案 内 が 終 了 し た 所 で 、艦 娘 た ち は ブ リ ー フィングルーム に 集められ た 。 すでに 提 督は 資料やら 何 やらを 用 意 して 待 っていたのか 、 艦娘 たち が 部 屋 に 入 っ て き た 時 に は 部 屋 の 壁 に か け ら れ た ス ク リ ー ン の 前 で 、 パイプ椅 子に 座 っていた 。 艦娘 たちが席に着き 、 叢雲 が ﹁ 案 内 が終 了 しました ﹂ と 提 督へ報告 す る と 、提 督は よ う や く 腰を上 げた 。 ブリーフィングルーム に 集められ た 艦娘 の 顔を見 なが ら、 提 督は 話 を始め た 。 ﹁ では改 め て 自己 紹 介を し よ う 、 俺 が 提 督だ 。各自、 官姓名 ⋮⋮は 言わ なくていい 、右 か ら名 前と 艦 種 を言 え ﹂ 提 督の 言葉を皮切り に 、 一 番 右 に 座 っていた 艦娘││ 紫 色 の 髪を し た 艦娘 が席 を立 った 。 ﹁ え ー っと 、 商 船 改 造 空 母、隼鷹 で ー っす !﹂ 癖 毛を揺ら しなが ら、 明る い 声を上 げ る。提 督は何 も言わ ずに 、 表 情も変 えずに彼女の 名 前と 艦 種 を黙 って 聞 いた 。 思 いのほか 提 督が無 反応 だったのか 、 隼鷹 は 少 しだけ トーンダウン
す る と席に 座 った 。 次いで 、隣 の席の ショートヘア の 艦娘 が席 を立 つ 。 ﹁航 空 巡洋艦、最上 です ﹂ 提 督はう む、 と 頷 くだけだった 。 最上 が 座る と 、今度 は 隣 の 艦娘 が スッ と席 を立 った 。 ﹁陽炎型駆逐艦2 番 艦、不知 火です ﹂ 凛 とした 、 武 人 の よ うな態 度 の彼女は 、 すぐに スッ と席に 座 った 。 次いで 、隣 の席の メガネを かけた 艦娘 が席 を立 つ 。 ﹁金 剛 型 戦 艦、霧島 です ﹂ そして 、最後 の 一人 とな る艦娘 が席 を立 った 。 ﹁ 睦 月型駆逐艦3 番 艦、 弥 生、 です⋮⋮ ﹂ 全 員 の 顔 と 名 前 を覚 えた 提 督は 、 全 員 の 顔を見回 してか ら話を始め た 。 ﹁艦 隊 へ よ う こ そ 。今 日 付 け で 君 た ち は 原 隊 か ら 離 れ、 正 式 に 当 部 隊 へと 配 属さ れ た 。 元の 艦隊 とはかな り違 った 部隊 なので 、 今 か ら説明 す る﹂ 提 督はひとつ 咳 払い を す る。艦娘 たちは 、 少 し 不安を残 した 顔 で 提 督 を見 つ め てい る。 ﹁ ざっく り と 説明 す る と 、 ここは 傭 兵の 艦隊 だ 。他 の 鎮守府 と 違 って 、 報 酬 はほぼ歩 合 制とな る。 危 険 な作戦に 参加 した り、 敵 を多 く 撃 破す る ほど報 酬 は 上 乗せにな る。逆 に 通 常の 、 他 の 艦隊 と 同 じ よ うな 任務 を す る のな ら、他 所と給 料 はあま り変わら ない ﹂ 叢雲 は 提 督の 隣 で 話を聞 きなが ら、 昨 日 の 話を思 い 出 していた 。 提 督は 雇われ た 司令官 であ る。 だが 、 艦娘 たちは 国防 海 軍 所属の 〝 戦 力〟 であ る。人間 が 艦娘 として改 造 さ れ てい る以上、 艤装を外 せば 兵 器 か ら 人 と な る、 当 然 、 彼 女 た ち に も 給 料 は 出 る の は 事 実 で あ る。 しかし 、 給 料 は大 抵、 艦 種 や階級 に よ って 左右 さ れる。も ち ろん階級 が低け れ ば低いほど 安 く 、 高 け れ ば 高 いほど 高 給とな る。退 役 後 の恩 給 も 似 た よ う な も の だ 。話 を 聞 く 限 り で は こ の 艦 隊 は 艦 娘 へ の 報 酬 に制 限 が無い 。 さすがは 実験艦隊 と 言 ったとこ ろ か 、 と 叢雲 はこの 艦 隊 の システム に 関心 す る。
他 の 艦娘も同 じ よ うな 反応 だったが 、 提 督の次の 言葉 は極 め て 冷酷 無慈 悲 だった 。 ﹁ た だ し 任 務 を 拒 否 す る の な ら 拒 否 料 が 発 生 す る、 作 戦 に よ っ て は 凄 まじい 額 にな る事も あ る。 また 、 無 許可離隊や脱走 は 通 常の 艦隊以上 の 厳罰 とな る、 最悪 の場 合、 銃殺 の 対象 とな る可能 性 も あ る事を忘れ る な ﹂ 拒 否 料、銃殺。 物 騒 な単 語 が 出 てきた 瞬間 に 、 艦娘 たちの 反応 は極 め て 悪 い も のに 切り替わ った 。 ﹁ あ 、 あの 、銃殺 って⋮⋮ ﹂ 最上 が恐 る 恐 る声を あげ る。提 督は 頷 いた 。 ﹁銃 で 処 刑 さ れ る と い う 意 味 だ 。上 層 部 の 連 中 は 俺 た ち が 金 で 動 き 堕 落 す る の を 危 惧 し て い る。万 が 一 に も 脱 走 が 見 つ か れ ば 連 帯 責 任 と な る。内 地の 家族 に も重罰 が 下る だ ろ う ﹂ ぞ っ と す る 話 だ っ た 。叢 雲 は か ろ う じ て こ の 衝 撃 を 受 け 止 め た 。 一応 は 上 層 部 か ら 正 式 な命 令を 経て や ってきた彼女に 取 って 、 こ れ ぐ ら いは 想定 の 範囲内 だ 。 ﹁ ま た 、俺 た ち に は 近 い 内 に 監 視 が 付 く 。 正 規 部 隊 か ら 派 遣 さ れ た 将 校⋮⋮まあ 、 おそ ら く 艦娘 にな る可能 性があ る が 、 不 穏な 動 きが無い か常に 監視 さ れる だ ろ う 。謀反 は 許 さ れ ない 、 も し 仮 に 反 乱 を起 こし た場 合 は 、 正 規軍 と 連合艦隊 がこの 基 地 を更 地にす る。も し 生 き 残れ ば 軍法会議 の 後 に本 土 の 親族 まで 処罰 さ れる だ ろ う 、 よ って 俺 たちは あ る程度 の 首輪を付 け られ て戦 争を す る事 にな る﹂ 提 督はそう 言 うと 、叢雲を一瞬 だけ 見 た 。 現状、 監視 役の 艦娘 とな れ ば 残る選択肢 は 叢雲1人 だけだった 。叢 雲 は 、甘ん じてその 疑惑 の 視線を受 けた 。 ﹁ さ て 、話 は 変 わ る が │ │ 今 の 艦 隊 は か な り 逼 迫 し た 状 況 に あ る。 戦 況 が 、 と い う 意 味 で は な い 。基 地 と し て 成 り 立 っ て い け る か ど う か 、 だ ﹂ 提 督のいきな り の 言葉 に 、艦娘 たちは 疑 問の 顔を 浮かべた 。 ﹁ 案 内 し て 貰 っ て 皆 も 理 解 し て い る と 思 う が 、 こ こ は お ん ぼ ろ の 哨 戒
基 地 を 改 造 し た 海 軍 基 地 だ 。上 層 部 が 気 を 利 か せ て 入 渠 用 設 備 を 4 つ 用 意 し た が ⋮⋮ 建 造 ド ッ ク は 1 個 し か 無 い 。 お ま け に 各 設 備 は 我 々 で 整 備 し な け れ ば な ら な い し 司 令 部 か ら の 任 務 を 伝 え る 担 当 官 や食堂 の 飯炊 き も いない 、 ついでに 言 うと P え⋮⋮ 酒保も 無い !つま り俺 たちで全てどうにかしなけ れ ばな ら ないという 事 だ ﹂ 提 督の 言葉 で 、 すべて を理解 した 艦娘 たちはそ れ ぞ れ の 反応を 浮か べた 。 ﹁ え ー ⋮⋮そ れ って 、私 たちでこの 基 地 を運 用し ろ って 事 ?﹂ 隼鷹 が半ば 信 じ られ ない 話を確 か めるよ うに呟く 。 ﹁ そうな る﹂ 提 督の 言葉 に 、叢雲を除 く全 員 が 言葉を 失っていた 。 と ん で も ない所に 赴任 した 、 そ れ が 現実 となった 顔を してい る。 ﹁ 別 に 悲 観 す る な 。補 充 は 後 か ら 幾 ら で も 寄 越 せ る、 こ れ か ら 俺 た ち で 回 していけばこの 基 地 も 大きい 規 模になっていく 、 後 か ら 来た 連 中 に先 輩面 してい られる 権利で も貰 ったと 思 え 、 し ゃん とし ろ﹂ 提 督の 明る い 言葉 に 、 艦娘 たち も多少希望 が 持 ててきたのか 、 ホッ とした 表情を 浮かべた 。 ﹁ そ れ で ⋮⋮ 本 題 に 入 る が こ の 中 で 料 理 が 得 意 な ヤ ツ は い る か ?い な け れ ば 暫 くは レーション で 暮ら す 事 にな る ぞ ﹂ しかし 、 結局 事 態は 深 刻だった 。
#4
﹁
整
備任務﹂
一通り の 説明 が終 わり、 艦娘 たちは 一度解 散し 、 兵 舎 で 自室を選 び 、 荷 物 を置 いてか ら再度基 地の 施設 整 備 の 為 に 集合 す る事 になった 。 先ほど 、 一通り基 地 施設 の案 内 はした も のの 、 叢雲 は 迷 子が 出 ない か 心配 なた め、 全 員を連れ て兵 舎 まで来ていた 。 小 さな 団 地ほどの大きさがあ る 兵 舎 には 、 埃 ま みれ の空き 部 屋が幾 つ も あ る が 、 昨 日、 叢雲 と 提 督が 掃除 したのはたった 6部 屋であ り、 場 所 は 固 ま っ て い る 為 に 艦 娘 た ち は 好 き な 部 屋 を 取 る と い う 事 が 出 来 なかった 。 そ れ で も、 自分 が住 む 場所が用 意 さ れ てい る ことに 、 新任 の 艦娘 たちは幾 分 か 安 堵していた 。 ひ と ま ず 部 屋 に 荷 物 を 置 く 艦 娘 た ち だ っ た が 、 そ の う ち の 1 人 は 、 部 屋 を開 けて 感嘆 の 声を漏ら していた 。 ﹁ い やー、 規 模が 小 さいとは 言 えここの 鎮守府 は 寮 だけは 豪華 だねえ 。 個室も あ る し 相部 屋で も ないし ﹂ 隼鷹 は 笑 いなが ら、 が らん どうで ベッド と机だけがあ る自室を見回 して 言 う 。 ち ょ うど 、 隣 の 自室 か ら 作業着へと着 替 えて 出 てきた 叢雲 は 、 隼鷹 の 言葉 に割って入 る。 ﹁ そうかし ら ?確 かに 個室 だけ れ ど 、 そ ん なに 豪華 って ワケ では⋮⋮ ﹂ ﹁ 前 の 鎮 守 府 は 刑 務 所 み た い な 所 だ っ た よ、 ど う 考 え も 基 地 の キ ャ パ シティをオーバー してさ 。一部 屋 8人 の所 も あったし 、 ま 、 そ れ に 比 べ りゃ どうって 事 ないさ ﹂ 隼鷹 はひひっ 、 と 笑 って み せ る と 、 私 物 や 着 替 えの入った ダッフル バッグを部 屋に放 り投 げた 。 傍 か ら見 ていた 見 ていた 叢雲 は 、 気 にな る事 があ る のか 、 不意 に 隼 鷹 へ 声を かけた 。 ﹁ そういえば 、 あなたはどうしてここに来たの ?﹂ 思 い 切 った 質 問 。 そ れを聞 いた 隼鷹 は 、 少 しだけ 躊躇を してか ら質 問に答えた 。 ﹁ 前の 提 督に 嫌われ たのさ 、 ホラ、 あたし 軽 空 母 だし 装 甲 も薄 いか ら。や っ ぱ り 艦 隊 に 必 要 な の は 高 速 で 搭 載 機 数 も 多 い 正 規 空 母 な ん だ っ てさ ﹂ 隼鷹 は 皮肉気 に 笑 う 。 ﹁ そ れ に 、 あ た し み た い な 酒 飲 み は 要 ら な い ん だ っ て さ 。餞 別 代 わ り に 廃棄予定 の 古 い 艦載 機はく れ たけど ﹂ ﹁ あなた も苦労 してい る のね ﹂ まあね 、 と 隼鷹 は 首を 縦に振った 。 ﹁ ま 、今 日 は ち ょ っ と 面 食 ら っ た け ど 、少 な く と も こ こ の 提 督 は 気 に 入った よ。 そ れ に 、 前 以上 の地獄は 見 なくて 済む か も し れ ないし 。 あ たし み たいな タイプ には ピッタリ の 艦隊 だね ﹂ 地獄 。 そう 聞 いて 、 叢雲 は何のことかと 聞 こうとしたが 、 本 能的 に 堪えた 。 隼 鷹 は 一 線 部 隊 で 戦 っ て い た 艦 娘 だ 。詳 し く 聞 い た ら ど ん な 話 が 帰ってく る か も分 か ら ないのだ 。 ﹁ そ れ で さ ⋮⋮ こ の 後 動 き や す い 服 で 集 合 っ て あ る け ど 、 あ た し ら 何 す ん の ?てか 、 何その作業着 ?﹂ 隼鷹 は よ う や く 、叢雲 の格好について 突 っ 込みを 入 れ た 。 叢雲 が着てい る のは何の 変哲も ない 、 工 場で着 るよ うな灰 色 の作業 着だった 。提 督が用 意 していた 備品 の 一 つで 、 すでに手元 も指貫 の グ ローブ か ら軍 手に 替 えてい る。長 い 綺麗 な 銀髪も、 ヘアゴム で結って 小 さく 纏め てい る。 ﹁ そ れ は⋮⋮作業の 為 でし ょ﹂ ﹁も しかして 、 そういう作業なの ?﹂ 当た り 前でし ょ、 と 叢雲 は 返 した 。 ﹁ ま だ ま だ 基 地 設 備 の 整 備 が 回 ら な い の よ ⋮⋮ 今 日 中 に ボ イ ラ ー を 整 備 しないとお 風 呂に も 入 れ ないか ら、覚悟 しといた 方 がいい わよ﹂ げえっ 、 と 隼鷹 は よ う や く 顔を 歪 め た 。 艦娘 たちの整 備任務 はすぐに 始 まった 。 まず 叢雲 が ボイラー点検、 次いで 最上 と弥 生 が兵 舎 の 清掃、 隼鷹 と 霧島 が入渠 施設 と入浴 設備 の整 備 ・ 清掃、 不知 火が 備品倉庫 の整 理、 と 各々 に振 られ た 仕事を こなしていった 。
レーション だけの簡素な昼 食 と 一 時 間 の 休憩を 経て 、 時 計 の 針 が 夕 方5 時 を回る頃、よ う や くすべての 仕事 が終 了 した 。 よ う や く 基 地 施 設 は 6 人 の 艦 娘 が 使 う に は 申 し 分 な い 程 度 に 機 能 を果 たしていた 。ボイラー設備 の 点検 で 、 入浴 設備 が 使 用できたのは 艦娘 たちにとっては 最高 の 朗 報だった 。 また 、 不知 火が 備品倉庫 整 理 で ﹁妖精﹂ を見 つけたの も艦娘 たち を 沸 かせていた 。 妖精、 とは 艦娘 たちの作戦 行動をサポート す る 未 知 な る 存在だ 。二 頭 身 ほ ど の 小 さ な 人 で 、 大 抵 は 少 女 の 格 好 を し て い る。艦 娘 の 建 造 や、 装備 の 開 発 、 擬装 の戦 闘能力向上 などに欠かせない存在で 、 艦娘 と セット で 開 戦 初期 か ら 存在してお り、 その 有 用さか ら軍も重要視 し てい る。 しかし 、 妖精 はどこか らや って来て 、 どう 沸 いて来 るも のな のか 、 軍や研 究機 関 の 調査 で もわ か ら ずじまいなのだ 。 だが 、 妖精 が 見 つかった 事 で 、 こ れ か ら の作戦 行動 が幾 分 か楽にな る のは 明 白だっ た 。 整 備任務 が終 了 し 、 食堂 へ 集 まった 艦娘 たちは よ う や く 休 息と晩 飯 にあ り ついた 。 霧島 の振 舞 った カレーも上々 であ り、 すぐに 艦娘 たちはその 美 味し い カレーを 堪 能 した 。 食事 が終 わる頃、遅れ て 提 督が や ってきた 。 ﹁カレー か 。俺 の 分も あ る か ?﹂ 開口一 番 、 提 督は 食堂 の 調理室 か ら漂 ってく るカレー の 匂 いに 反応 した 。 ﹁ あ り ます よ提 督 、今持 ってきますね ﹂ 霧島 が 笑顔 で答えてか ら 席 を立 った 。 ﹁ 両手が 真 っ 黒 ね 、 何 を していたの ?﹂ 叢雲 は 尋 ね る。提 督の両手は汚 れ ていて 、殆 ど 真 っ 黒 だった 。 ﹁ ほ っ た ら か し に な っ て た ト ラ ッ ク が あ っ た だ ろ。ア レ を 整 備 し て た 。 何 と か 動 か せ る よ う に な っ た ら 非 番 で 外 出 す る や 物 資 の 搬 入 に 使 え る だ ろ う ﹂ な る ほど 、 と 叢雲 は 頷 いた 。
こ の 基 地 は 陸 の 孤 島 の よ う な 場 所 に あ っ た 。 幹 線 道 路 │ │ 深 海 棲 艦 と の 戦 争 で ボ ロ ボ ロ に な っ て 放 置 さ れ て 久 し い │ │ か ら 外 れ た 一 本 道を辿れ ば正 門 までは 辿り付 け る が 、 周 囲 は 森 と山と 、 そ れ か ら 手 付 か ず の 砂 浜 ぐ ら い し か な い 寂 れ た 場 所 だ 。 幹 線 道 路 に 出 て し ま え ば 、 距離 こそあ る がまと も な 市街 地に 辿り付 け る。移動 手 段 が 飛行 場 の O V │ 1 0 と 徒 歩 し か な い 昨 日 ま で と 比 べ れ ば 格 段 の 進 歩 だ ろ う 。 なまじ 、 軍 の ジープ という 陸路 か ら の 移動 で来た 叢雲 にはあ り がたい 話 だ 。 提 督は 霧島 か ら 渡さ れ た カレーを貰 うと 、 そのままがつがつと 美 味 そうに 頬 張った 。 ﹁ あ ー ⋮⋮ 食 い な が ら で す ま ん が ⋮⋮ 明 日 か ら 早 速 出 撃 を す る。ブ リーフィング は 明日 の 13 : 00、 そ れ までに 各自艤装 の 準備をや っ ておけ ﹂ い き な り の 出 撃 に つ い て の 話 だ っ た が 、艦 娘 た ち は 微 動 だ に し な かった 。 ただ 1人、叢雲 だけはその 言葉 に 僅 かな 動揺を 浮かべていた 。 叢雲 は 司令部 か ら〝 正 式〟 に派 遣 さ れ た 艦娘 だ 。 しかし 、 ここにい る 叢 雲 以 外 の 艦 娘 は す べ て 別 の 艦 隊 で す で に 実 戦 を 終 え て い る 経 験 者 であ り、 叢雲 には 実 戦の経 験 が無い 。艦娘 の 養成 学校で 実際 に敵で あ る深 海 棲艦 の サンプルを見 たが 、 そ れ は ホルマリン に漬け られ た死 体の み だったし 射撃訓練 で も撃 ち 方 と当て 方を 教 わ っただけで 、 敵に 向 けた 事も、近 づいた 事も 無かった 。 ﹁初 出 撃 な の だ が 、募 集 枠 は 6 人 だ か ら 全 員 だ 。出 撃 報 酬 は 今 回 は 出 ないが 、 代わり に 資源 の充填で 賄われる。 特に危 険 で も ない海 域警護 任務 だ 、ボロ い 仕事 さ ﹂ カレーを頬 張 り なが ら提 督は 説明を 終え る。 全 員、 と 聞 いて 叢雲 はとうとう 出撃 す る という 事実を受 け止 め た 。
#5
﹁初出撃﹂
﹁艦娘諸君、艦隊 結 成初 の 実 戦だ ﹂ 翌日、 ブリーフィングルーム に 集 まった 艦娘 たち を 前に 提 督は 開口 一 番そう告げた 。 提 督は手 持 ちの 資料 か ら、 海 図を取り出 し 、 ホワイトボード に マグ ネット で 貼り付 け る。 ﹁今回 の 任務 は海 域警護任務 だ 、 作戦 開始 時 間 は 14 : 00。参加 戦 力 は全 員 だが 、 艦隊を2 つに 分 け る。 まず先 行 し 、 海 域を警備 し 安 全の 確保 にあた る艦 が 2隻、 そ れ か ら、 海 域 に急 行 中の 船舶を護衛 す る4 隻 の 2 つ だ 。船 団 で は な く 1 隻 の み だ が 、重 要 船 舶 だ 。沈 め さ せ る な ﹂ 提 督は 説明を続 けなが ら、 海 図を指 し示す 。 ﹁目 的 の 海 域 は こ こ だ 。 幸 い に も 危 険 度 は 低 く 制 海 権 を ほ ぼ 握 っ た も 同 然の海 域 だが 、 未だに 群れ か ら はぐ れ た 駆逐イ級 の 小規 模な 艦隊や 稀 に 軽 巡 洋 艦 を 旗 艦 と す る 敵 水 雷 艦 隊 が 紛 れ る 事 も あ る。 発 見 次 第 こ れ に攻 撃を加 え 、撃沈 し ろ。 作戦が 順調 に 行 けば 、18 : 00 で別 部隊 が海 域警護を引 き 継 ぐ 。 まあ 、 全 員 が 夕飯 時には帰ってこ れる だ ろ う 、 そ ん 時は ビールを冷や して 待 っていて やる。以上 だ 、 質 問は ?﹂ 提 督の 言葉 に 、一瞬 だけ 静寂 が 返る。 質 問 を切り上 げ られる 前に 、 弥 生 が 控 え め に手 を上 げた 。 ﹁提 督⋮⋮ 今回 の 編成 は⋮⋮ ?﹂ その 一言 に 、提 督はふと 思 い 出 した よ うに手元の 資料を見返 した 。 ﹁船舶護衛 は 霧島、 最上、 不知 火 、 弥 生 で 行 う 。過 剰と も言 え る 戦 力 だ が 、 備 え る に 越 した 事 は無いだ ろ う 。 海 域 への先 行警備 は 隼鷹 と 叢雲 の 2人 だ ﹂ 群青色 の海 面。雲 ひとつ無い 青 空 。 そこには 、 海と空 以外 は何 も 無かった 。 か ろ うじて 、 艦娘 がそこに 2人立 ってい る だけだった 。 大 海 原 の ど 真 ん 中 に 立 っ て い る 叢 雲 は 、自 分 が な ぜ こ ん な 所 に いて 、 戦いに 備 えてい る のだ ろ うかと 自 問 自 答した 。 まさに穏 や かその も のの海であ る し 、 敵の影など 見 当た ら ない 。初め ての 実 戦と 聞 いて いた 叢雲 は 、 安心 した よ うな 、 そ れ でいて 拍 子 抜 けした よ うな 感覚を 覚 えていたが 、 そ れ で も この海の 底 か ら〝 何か 〟 が 現れ そうな 不安を 感 じていた 。 ﹁ そ れ にして も、 こ ん な海 域を警護 す る理 由な ん てあ る のかし ら ⋮⋮ ﹂ 叢雲 は 不思議 がっていた 。船団を護衛 す るわ けで も なく 、 周 囲 の制 海権 を確保 した も同 然な海 域を なぜ 自分 たちが 守る のか 、 そ れ が 不思 議 でな ら なかった 。 ﹁ こ こ ら へ ん は 浅 瀬 で ね ⋮⋮ 肉 眼 で も ハ ッ キ リ 見 え る ん だ よ ね ⋮⋮ 下 見 て み な よ﹂ 隼鷹 は 下を指差 す 。 ﹁ っ⋮⋮ ?﹂ 叢雲 は海 面、自分 たちが 立 ってい る下を見 てぎ ょ っとした 。 岩 礁 か 何 か と 思 っ て い た そ れ は 、船 だ っ た 。艦 橋 に 付 い た レ ー ダ ー、 特 徴 的 な マ ス ト、 単 装 の 主 砲 ⋮⋮ 船 体 が 真 っ 二 つ に へ し 折 れ、 ぐ っ た り と 力 尽 き た よ う に 海 底 で 横 転 し た そ れ は 、ア メ リ カ 海 軍 の イ ー ジ ス 艦 │ │ ア ー レ イ バ ー グ 級 の 残 骸 だ 。 何 十 年 も 昔 に 沈 没 し た のではなく 最近 になって 沈ん だであ ろ う 残骸 か ら は 魚 が 出 入 り し 、 そ の 残骸を 周 回 す る かの よ うに 、魚 の 群れ が 泳 ぎま わ っていた 。 ﹁会 戦 当 初 の 海 域 だ ね 。艦 娘 が い な か っ た 頃、ア メ リ カ と 日 本 の 軍 艦 がここで 深 海 棲艦 と ドンパチ してたのさ ﹂ ﹁知ら なかった わ ⋮⋮ ﹂ 驚 く 叢雲 だったが 、隼鷹 はさ ら に別の 方向を指差 す 。 ﹁ あ っ ち に は 航 空 母 艦 が 沈 ん で る。ヘ リ 空 母 っ て ヤ ツ か な 。向 こ う に は 護衛艦 が 沈ん でいて 、 その 隣 には⋮⋮ ﹂ ﹁ つま り、軍艦 の 墓 場ね ﹂ ﹁ ま 、 そ ん な所だ ろ うね ﹂ 隼鷹 は周 囲を見回 した 。 ﹁ あ と も う 少 し で 、サ ル ベ ー ジ 船 が 来 る 筈 よ。私 た ち の 仕 事 は 引 き 上 げ作業の 護衛﹂
﹁ ⋮⋮ 提 督の 言 っていた 資源 獲 得 の 仕事 って ﹂ 叢雲 の 言葉 に 、隼鷹 は 笑 って答え る。 ﹁ そう 言 う 事。 い やー、 こ ん な 調 子で給 料 が入 る な ら、 ここの 部隊 に来 て 良 かったとか 思 う ん だけどな ー﹂ 隼鷹 はあっけ ら か ん とした 様 子で周 囲を見 渡しなが ら 呟く 。 叢雲 は 、 次第にこの 軽 空 母 の 艦娘 がど ん な 艦娘 なのか 解 って来た よ うな 気 がした 。 ﹁緊 張 感 が無い わ ね ﹂ ﹁ ま あ 、 前 の 仕 事 は 激 務 だ っ た し ね ⋮⋮ あ た し み た い な 軽 空 母 が ガ ン ガン使 い潰さ れるよ うな所だったし ﹂ ﹁ 穏 や かな 話 じ ゃ ない わ ね⋮⋮ど ん な 艦隊よ﹂ 叢雲 は 隼鷹 の 話 に ギョッ とす る が 、隼鷹 は平然とした 雰囲気 だ 。 ﹁話 題 の ブ ラ ッ ク 会 社 な ら ぬ ブ ラ ッ ク 鎮 守 府 っ て 所 だ っ た か ら ね 。艦 娘 は兵器 以下 として 見 なさ れ てなかったし 、 駆逐艦 のお 守りを任 さ れ て南 方や北方を行 った り 来た り してね⋮⋮いっぱい 沈ん ださ 、 あ ん た み たいな子が 沢 山ね 。 あ れ は地獄絵 図 だった よ ⋮⋮ ﹂ ふ と 、隼 鷹 は 自 分 の 言 葉 が 誤 解 を 招 く よ う な 物 だ っ た と 気 が つ き 、 叢雲 へ 謝り の 言葉を 入 れよ うとす る。 ﹁ ああ 、 ご めん ご めん、 別に 今 のは ││﹂ 言 いかけた所で 、隼鷹 は 思わ ず 言葉 に 詰 まった 。 叢雲 は手 持 ちの 艤装││槍を ぎ ゅ っと 掴ん だまま 、 ただ 隼鷹 の 話を こ れ以上聞 くまいと 言わん ばか り に 、 顔を 強張 ら せて 立 ち尽くしてい た 。 ﹁も しかして 、出撃初め て ?﹂ ﹁ そ 、 そう よ ⋮⋮ 建造 さ れ て 、 基礎訓練を 終えて 、 派 遣 さ れ たばか り で ⋮⋮ ﹂ 張 り詰め た 緊 張の 糸 が 、叢雲 の 言葉を徐々 に硬くさせていく 。 だが 、隼鷹 はふふっ 、 と 笑 うと 叢雲 の 肩を 優しく 叩 いた 。 ﹁安 心 し な っ て 。 あ た し が い る か ら に は 大 船 に 乗 っ た つ も り で い な よ、 艦載 機 も あ る し 、 そっちには 魚雷や 主砲 も あ る、 相 手が 雑魚 の 駆 逐艦程度 な ら 十 分 戦え る って ﹂
﹁ そう 、 かし ら ⋮⋮ ﹂ 叢雲 は 珍 しく弱 気 にな る。隼鷹 はそ ん な 叢雲を励 まそうと 、 屈 託 の ない 笑顔を 作って み せ る。 ﹁ ま 、 敵が来たってどうにかな る って 。も う 暫 くす れ ば 、 護衛 の別 働隊 も 来 る事 だし ﹂ 隼鷹 の 言 うとお り、 あと 30分 ほどで 船を護衛 しに別 働隊 が や って く る。 戦 艦 の 霧島、 重巡洋艦 の 最上、 駆逐艦 の 不知 火と弥 生、 過 剰と も言 え る護衛 戦 力 だ 。 ﹁ ⋮⋮ ﹂ だが 、 次の 瞬間 には 隼鷹 の 顔 に 険 しい物が 走 った 。 ﹁ どうしたの ?﹂ ﹁ ⋮⋮何か 悪 い 予感 がす る﹂ 隼鷹 はそう 言 うと 、 急いで 懐 か ら巻 き物の よ うな物 を取り出 した 。 彼 女 の 装 備 す る、 空 母 の 要 │ │ 飛 行 甲 板 を す ば や く 展 開 し た 隼 鷹 は 、紙を取り出 して 、 甲 板 へと 置 いた 。 ﹁航 空 隊、 発 進 !﹂ 隼鷹 が 号令を かけた 瞬間、 紙 のそ れ は甲 板 の 上を滑り なが ら たちま ち 、飛行 機の形となって 飛ん でいった 。 すぐさま空へと 舞 い 上 がった 隼鷹 の 艦載 機は 、 そのまま 西 の空へと 向 か っ て い く 。や が て 空 に 浮 か ぶ 点 と な っ て い た 艦 載 機 は 隼 鷹 の 甲 板 へと 舞 い戻ってきた 。 ﹁ こ りゃマズ いねえ ﹂ 隼鷹 は 険 しい 表情を 浮かべ る。 ﹁ 敵の 駆逐艦 が 3隻、西 か ら接近 してく る﹂ 叢雲 の 背 筋に 嫌 な 感覚 が 走る。 とうとう 現れ た敵 。 そして 、 海 域 にたった 2人 だけ 取り残 さ れ てい る間 の 悪 さ 。緊 張 感 が ピーク に 達 した 叢雲 は 、 すぐさま 西 の 方角 へ 向 けて手 法 の砲 口を向 けた 。 ﹁ ああっ 、 まだ 早 い よ !その主砲じ ゃ射程圏外 だってば ﹂ 隼鷹 は慌てて 叢雲 に 指 示 を飛 ばす 。
﹁ あ た し の 艦 載 機 で 数 を 減 ら し て み る、上 手 く い け ば 全 部 沈 め ら れ る か も﹂ ﹁も し ダメ だった ら ?﹂ ﹁ そ ん 時はあ ん たの 出 番 ﹂ ニヤッ、 と 隼鷹 は 笑 うと 、 すぐさま 艦載 機 を 発 艦 させた 。 一気 に 舞 い 上 がった数機の 艦載 機は 、 そのまま 西 の空へ 向 けて 飛 び 立 つ 。 叢雲 は 、 そこで よ う や く水平 線 の 向 こうか ら 白い 航跡を残 して 迫り 来 る、3 つの 船 影 を見 た 。 真 っ 黒 な 身 体 、 鯨 に獰 猛 な歯 を つけた 様 な シルエット、 そして両 脇 に 艤装を施 したそ れ ⋮⋮ 駆逐イ級 の 姿 だった 。 次第に 距離を 縮 め ていく中 、 隼鷹 の 艦載 機は ハエ の よ うに 駆逐イ級 へと 群 がった 。 次の 瞬間、 水 柱 と 爆 発が 巻 き 起 こ る。 派手に 身 体の破片 を撒 き散 ら しなが ら、一瞬 にして 3隻 の 駆逐イ級 は木っ 端微 塵に 粉砕 さ れ た 。 ﹁凄 い⋮⋮ ﹂ 呆 気 に と ら れ る 叢 雲 だ っ た が 、隼 鷹 は ま だ 勝 っ た 気 で い な か っ た 。 その 爆 発と水 柱 の 向 こうか ら、 まだ 動 く 船 影 を目撃 していたか ら だ 。 ﹁生 き 残り が 肉薄 してきた⋮⋮来 るよ !トドメを 刺しち ゃ って !﹂ ﹁解 った わ !﹂ 叢雲 は 槍を ぎ ゅ っと 握り締め なが ら、精 神 を集 中させ る。 マニピューレーター と繋がった 連装 砲が 、 ゆ っく り と照 準を合わ せ る。駆逐イ級 は 、 すでに 爆撃 と 銃撃 で 身を す り減ら し 、 傷付 きなが ら も その 足を 止 め ず 、 全 速 で 隼鷹 と 叢雲 へ 肉薄を 決 めよ うとす る。 徐々 に シルエット が大きくさせて 近 づいてく る そ れ は 、 すでに砲は 付 いていなかった 。 だが 、 その 魚雷 発 射管 は健在であ り、 今 まさに発 射 の態 勢 に入 ろ うとしてい る。 ﹁沈み なさいっ !!﹂ 叢雲 の 連装 砲が吼え 狂 う 。 発 射 さ れ た 2 発の砲弾のうち 、 1 発が手前の水 面 に当た り 水 柱を上 げ る。
そして 、2 発 目 が 駆逐イ級 へと命中した 。 爆 発と共に 、 全 速を かけて 突 っ 込ん できた 駆逐イ級 は 四 散した 。 頭部を 失い 、 残 った 身 体がそのまま水 面下 へと 沈ん でいく 。 決死の 攻 撃を かけた敵の 、 あっけない幕 切れ だった 。 砲 撃 の 姿 勢 で 固 ま っ て い た 叢 雲 は 、よ う や く 緊 張 感 か ら 開 放 さ れ た 。気を抜 いてしまった ら、 この海 面 にへた り込ん でしまうと 思 った が 、隼鷹 が 叢雲 の 背 中 を ば ん ば ん と 叩 いた 。 ﹁やれ ば 出 来 る じ ゃん !よ く や った よ、叢雲 !﹂ ﹁ あ 、 あたしが 、倒 した⋮⋮ !?﹂ 初め ての 撃 破 、初め ての戦 果。 緊 張 感 か ら 開 放 さ れ た 疲 れ が 、 ど っ と 叢 雲 の 身 体 か ら 湧 き 出 て き た 。 ﹁ 作戦 完了、艦隊 帰 投 しました !﹂ 基 地の 埠頭 に 、霧島 の 快 活な 声 が 響 く 。 日も落 ち 、 すっか り夜 になったこ ろ、 艦隊 は無 事 に 基 地へ帰 投 した 。 埠頭 には わ ざ わ ざ 提 督が 待 ってお り、 全 員 の帰 還を その 目 でしっか り と 見 届けていた 。 ﹁任務 ご 苦労 だった 。 十 分 に 休め、飯も買 って 置 いたぞ ﹂ 提 督の 面倒見 の 良 さに 、 一同 は よ う や く 提 督との 距離感を掴め たの か 、リラックス した 雰囲気 になってい る。 そして 、 提 督は 足 元に 置 いた クーラーボックスを 手に 取る と 、 蓋を 開 けて 皆 の前に 差 し 出 した 。 ﹁ そ し て │ │ 約 束 の ビ ー ル だ 、飲 め な い 奴 向 け に コ ー ラ も 用 意 し て お いたぞ ﹂ ﹁ヒャア !たま ん ねぇな 提 督 !﹂ 隼 鷹 は 目 の 色 を 変 え て 喜 ぶ と 、早 速 1 本 の ビ ー ル 瓶 を 手 に 取 っ た 。 も は や国内 では 貴重品 となって 、輸 入物の 外国 産 黒ビール だ 。 ﹁ では 、 お 言葉 に 甘 えて ﹂ 霧島もビールを1 本手に 取 った 。 ﹁ボク は コーラ でいいかな⋮⋮ ﹂