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アレルギーの臨床 2010年11月号 (立ち読み)

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アレルギーの臨床 30(12), 2010 16 (1054)

特 集

将来展望というのは決して夢物語ではなく, 近未来において臨床応用が可能なものであり, さらにそれを知ることにより現時点での気管 支喘息医療に対する考え方の参考にもなるも のである。すなわち,将来展望を知ることに よりその治療に対するより深い理解が出来, 場合によっては現在への応用も可能になるか も知れない。本特集では,将来展望を加える ことにより,治療の最前線というものをさら に進め,本当の意味で現在可能な最先端の気 管支喘息治療を理解してもらうことを意図し た。 ガイドラインは変化するものである。今日 最新の医療であっても明日は古くなるかも知 れない。今日正しい医療であっても明日は否 定されるかも知れない。その時点その時点で 最新,最良と考えられる医療を推奨するもの がガイドラインであり,常に変化し続けなけ ればならない。そのガイドラインを十分に活 用するためには,形式的にガイドラインの表 面に従うだけではなく,その内容の理解が必 要となる。多くの気管支喘息患者はガイドラ インに従った治療でコントロールが得られる が,そうでない場合にはこれが生きてくる。 そこが専門医の役割であり,そのためにはガ イドラインの内容のより深い理解が必要にな ると考える。

-特集に寄せて-久留米大学医学部 呼吸器・神経・膠原病内科

相澤

あいざわ

久道

ひさみち Key words :ガイドライン,吸入ステロイド,吸入ステロイド/長時間作用性β 2 刺激薬配合剤、抗ロイコ トリエン薬,IgE 抗体 相澤 久道 1977 年九州大学医学部卒業,94 年九州 大学医学部呼吸器科助教授,89 年九州 大学医学部呼吸器科入局,92 年久留米 大学医学部第一内科主任教授,現在に至 る。研究テーマ:喘息,COPD,呼吸器 病学,呼吸生理学 気管支喘息は日常診療で最も頻繁に遭遇す る疾患の一つである。そのため,ごく軽症か ら重症・難治性の患者まで,さらには様々な 合併症を有していたり,様々な背景を有して いる患者など幅広い患者層を診療しなければ ならない。診療の拠り所となるのはガイドラ インである。ガイドラインは最新の診断や治 療法をエビデンスに基づいて整理し,推奨さ れる診療を示してくれている。しかしながら, この様な多様な患者を診療していく際には, ガイドライン通りにしていてもうまくコント ロール出来ない患者がどうしても出てくる。 そのような患者を数多く見ているのが専門医 である。したがって,専門医にはガイドライ ンより深い知識が必要となる。その一助とな ることが出来るように今月号の「気管支喘息 治療の最前線と将来展望」は企画した。吸入 ステロイド,吸入ステロイド/長時間作用性β2 刺激薬配合剤,抗ロイコトリエン薬,IgE抗体, 免疫療法については,ガイドラインに収載さ れていない最新の成績や情報まで解説しても らうとともに,近い将来において臨床応用可 能な情報についても併せ解説してもらった。 また,IL-5抗体については,開発の現状と最新 の臨床成績について,最後に将来の喘息治療 としてのテーラーメイド医療について解説し てもらった。

ガイドラインと最新の治療

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◆特集/気管支喘息治療の将来展望◆ アレルギーの臨床 30(12),2010 (1055)17 はじめに 気管支喘息は基本病態が T細胞,好酸球, マスト細胞,樹状細胞などを中心とする慢 性の気道炎症であり,治療の中心が抗炎症 治療になることに異論はない。その中心と なるのは当然,吸入ステロイドである。本 稿では特に単独治療を中心に概説したい。 1.喘息の重症度の割合 喘息患者における重症度の割合を見てみる と こ ち ら は , 喘 息 患 者 実 態 電 話 調 査 の AIRJ2005の結果(図 1)1)では軽症間欠型が 62.5%,軽症持続型が 11.3%,中等症持続型 が 8.5%と,軽症または中等症持続型が 8割 以上となっている。すなわち 7割を超える軽 症の患者がいることが分かっている。 2.軽症患者における吸入ステロイド療法 17 ヶ 国 , 198 施 設 に よ っ て 行 わ れ た OPTIMA Studyのデータをご紹介する。軽症 患者において行われた有名な OPTIMA Study の試験デザインを図 2に示す2)。軽症喘息患 者 698例を対象に行われた二重盲検,無作為 で行われた平行群間試験である。プロトコー ルは,ステロイドフリー4週間の観察期間後, プラセボ,吸入ステロイド 200μ g/日,吸入 ステロイド 200μ g/日 +長時間作用性β2刺激 薬 9μ g/日の 3群に分けて検討されている。 治療期間は 1年間で,対象患者は,12歳以上

吸入ステロイド

獨協医科大学越谷病院 呼吸器内科

相良

さ が ら

博典

ひろのり Inholed corticasteroid Key words :気管支喘息,吸入ステロイド,単独療法, 気道炎症 相良 博典 1987 年獨協医科大学卒業。89 〜 93 年同 大学院医学博士課程,93 〜 95 年順天堂 大学免疫学教室,95 〜 97 年サザンプト ン大学,2001 年同大学呼吸器・アレル ギー内科講師,07 年同准教授,09 年獨 協医科大学越谷病院呼吸器内科主任教 授。

Abstract 喘息の基本病態は慢性の炎症性疾患であ り,治療の中心は吸入ステロイドであること に異論はない。特に,軽症喘息に関しては吸 入ステロイドで十分にコントロールされるこ とが示されており,いくつかのエビデンスが それをサポートしている。重症度が高くなる に従い,単独治療は困難になってくるが基本 的には必要十分量のステロイドを使用するこ とは重要である。

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の軽症喘息患者で,3ヶ月以上ステロイド薬 による治療を受けていない 698例での検討で ある。主要評価項目は,初回の喘息増悪まで の期間,喘息コントロールの不良日数である。 夜間に目覚めた日の割合においての検討で は,吸入ステロイド薬単独群と合剤群に有意 差は認められなかった(図3)。また,短時間 作用型β2刺激薬の使用回数,および有症状 ◆特集/気管支喘息治療の将来展望◆ 18 (1056) アレルギーの臨床 30(12),2010 の日数に関しても図 4に示すように両者には 有意な差は認められなかった。また図 5に示 すように初回の喘息増悪までの期間を生存曲 線として解析したものでは,むしろ吸入ステ ロイド単独群が喘息増悪の比率が最終的には 合剤と比較して少ないことも示されていた。 このように,喘息治療における軽症の治療 においては合剤による治療と吸入ステロイド 図 1 喘息患者における重症度の割合 図 2 軽症患者における吸入ステロイド薬とLABA併用時の効果(1)

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アレルギーの臨床 30(12), 2010 (1117) 79

● 私は思う ●

がある。各アレルゲンの陽性率は重要な手が かりとなるが,筆者は 15年間その集計を行 ってきた1)。検査室にはあらゆる診療科から 検体が集まり,蓄積されたデータは膨大であ る。検査室での陽性率は,必ずしも一般人口 における陽性率ではないが,疫学調査の結果 とよく平行する2)。ここでは,もっともポピ ュラーなスギを中心に,樹木花粉同士の特異 的IgE濃度の相関をご紹介する。 対象は年間約 160万件を受託する某民間検 査会社で,複数の花粉に対する特異的 IgEが 同時依頼された検体のデータである。ファデ ィア社の FEIA 法で,クラス 2,0.70 UA/ml 以上を陽性とし,1 年間蓄積されたデータを 完全連結不可能匿名化して測定結果のみを 集計した。 2. 目を見張るスギの獰猛な抗原性 a. スギとマツ目花粉に対する特異的 IgEの相 関(図1) スギとヒノキが同時に測定された検体にお ける,特異的 IgE 濃度の相関を図 1(縦軸, 昭和大学横浜市北部病院 臨床検査科

木村

き む ら さとし

Key words :スギ,ヒノキ,シラカンバ,花粉,特異的 IgE,相関

1. 検査室から見たI型アレルギーの疫学 特異的 IgEは,現在約 200項目が測定可能 である。スクリーニングの際は,地域,季節 や患者の年齢に合わせ慎重に抗原を選ぶ必要 Abstract いわゆる「スギ花粉症」が国民病となって 久しいが,最近はスギ以外の花粉にも感作の 対象が拡がっているようである。患者はスギ のほか,何に感作されているのだろうか? スギが属するマツ目と,別系統であるブナ目 の樹木花粉に着目し,検査室で受託した特異 的IgEのデータを集計した。 その結果,マツ目のビャクシンやヒノキで, スギとIgE濃度に高い相関がみられた。また, これら樹木花粉が陽性の検体には,スギ陰性 検体がごく僅かしか存在しないことが判明し た。スギには,ずば抜けた「抗原惹起性」が 存在するようである。

樹木花粉同士でみた特異的 IgE 濃度の相関

—検査室からみた,スギのずば抜けた抗原惹起性—

Correlation of serum antigen specific IgE against pollen of Japanese cedar and other trees

木村 聡 1984 年新潟大学医学部医学科卒業,同年検 査診断学教室入局,内科レジデントを経て, 88 年米国ワシントン大学(Seattle)研究員, 93 年昭和大学助手,講師,2001 年昭和大学 横浜市北部病院臨床検査部長,02 年准教授。 研究テーマ:検査室からみた臨床免疫学, 感染症学。趣味:管弦楽,異文化体験,海 外旅行。

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80 (1118) アレルギーの臨床 30(12), 2010

● 私は思う ●

横 軸 と も 対 数 表 記 ) に 示 す 。 相 関 係 数 r=0.498 と中等度の相関関係が認められた。 スギとビャクシンでは,r=0.660とさらに強 い相関がみられた。しかしスギとマツとの間 (N=1,449)ではr=0.189と相関は低かった。 いずれの組み合わせも,スギのみ陽性で, 他は陰性の検体(図 1の矢印,横軸に沿って 並ぶ大量のプロットに相当)が,きわめて多 いのに気づく。とくにマツに おいては顕著で,スギ陽性・ マツ陰性の検体は,両者測定 した検体の約半数にみられた のに対し,マツ陽性でありな がらスギ陰性の検体はわずか 3件しか存在しなかった。す なわち,マツに感作された患 者の 99%以上が,少なくとも in vitroではスギに感作されて いることになる。同様にビャ クシンでも,陽性検体のすべ てがスギ陽性であり,スギ陰 性検体にはビャクシン陽性検 体は存在しなかった。ヒノキ も同様で,スギのみ陽性の検 体が 95,283件中 20,025件みら れたのに対し,スギ陰性,ヒ ノキのみ陽性は75件しかなかった。 b. スギとブナ目花粉に対する特異的 IgEの相 関(図2) 北海道や本州の高地でみられるシラカンバ では,r =0.206とスギとはごく弱い相関しか みられず,同様にハンノキ,コナラ,ブナで は,それぞれ r=0.238,0.238,0.386と,いず れもヒノキやビャクシンほど強い相関は認め 図 1 スギとマツ目花粉の特異的IgEの相関(縦軸,横軸とも対数表記である) 図 2 スギとブナ目花粉の特異的IgEの相関 n=15,153

参照

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