[持続可能な年金運営を目指して]
平成27年11月10日
企業年金連合会 村瀬清司
日 本 の 企 業 年 金 の 課 題 と
企業年金連合会の資産運用
目次
1 企業年金連合会について 2
2 日本の企業年金制度の動向 6
3 社会保障審議会企業年金部会について 24
4 確定拠出年金法等の改正 30
5 確定給付企業年金の改善 39
[拠出弾力化と柔軟で弾力的な給付設計の検討]
6 企業年金連合会の資産運用 51
昭和42(1967)年に厚生年金保険法に基づき厚生年金基金連合会として設立され、平成16(2004)年
の法律改正により平成17(2005)年10月に企業年金連合会に改組。それまでの厚生年金基金に、確定
給付企業年金や確定拠出年金を加えて年金通算事業を行う「企業年金の通算センター」として、また、
企業年金制度の充実・発展のために制度改善、税制改正、規制緩和等に積極的に取り組む「企業年金
のナショナルセンター」として新たにスタートした。
その他、客観的かつ中立的な立場から、会員に対する各種情報の提供、相談、助言及び役職員研修
など会員の健全な発展を図るために必要な事業(会員支援事業)を行っている。
企業年金の通算センター
企業年金のナショナルセンター
一時金等を移換
厚生年金基金
確定給付企業年金
確定拠出年金
厚生年金基金
確定給付企業年金
企業年金連合会
年金受給者
企業年金同士で
直接移換
再度、転職した場合に
移換が可能
年金給付
政府など
企業年金連合会
委員会活動
実態調査
関係団体など
会員
要望・提言
要望・提言
意見・要望
会員
会員
会員
会員
企業年金連合会とは
会員数(※平成26年度末)
厚生年金基金
確定給付企業年金
確定拠出年金
444
818
137
企業年金のナショナルセンター
政策提言活動
常設委員会等を開催し、企業年金運営に関する重要事項を調査審議、会員へ情報発信
企業年金制度の拡充及び税制見直し等に資する政策提言活動を実施
※本年度は7月に「平成28年度企業年金税制改正に関する要望」「厚生年金基金の課題等に関する要望」を
厚生労働省に提出
広報活動
企業年金制度の拡充を目指した広報活動をホームページ、メールマガジン、月刊誌等により実施
会員支援サービス
相談・助言事業
客観的・中立的な立場から制度運営全般、年金財政、資産運用等について、相談助言を実施
研修事業
体系的・実践的な知識を習得するための会員向け役職員研修を実施
企業年金に関する情報提供
年金制度の解説、豊富な統計データを集約した「企業年金に関する基礎資料」等を発行
企業年金の実態に関する統計調査(財政・事業運営実態調査、資産運用実態調査、確定拠出年
金実態調査)を実施
企業年金の通算センター
企業年金連合会
(※2)
中途脱退者 約2,923万件
解散基金加入員等
約255万件
受給者 約676万人
年金資産 約12.7兆円
運用収益 約1.6兆円
修正総合利回り13.97%
(※4)
厚生年金基金
確定給付
企業年金
中途脱退者
解散基金
加入員等
約7万件
(※1)
年金
給付
通算センター事業
受給者
約7,200億円
(※3)
※1 平成26(2014)年度数値 ※2 平成26(2014)年度末数値 ※3 平成26(2014)年度給付額 ※4基本年金等
3階
2階
1階
国民年金(基礎年金)
厚生年金保険
厚生年金基金
確定給付企業年金
確定拠出年金
国民年金基金
確定拠出年金
(企業型)
確定給付
企業年金
自営業者等
民間サラリーマン
公務員等
第2号被保険者の
被扶養配偶者
4,038万人
第1号被保険者
第3号被保険者
第2号被保険者等
6,712万人
932万人
国 民 年 金 ( 基 礎 年 金 )
厚生年金保険
被保険者数 3,599万人
年金払い
退職給付
確
定
拠
出
年
金
(
個
人
型
)
国
民
年
金
基
金
(代行部分)
厚生年金基
金
1,742万人
加入員数
45万人
加入者数
21万人
加入者数
505万人
加入者数
782万人
加入員数
363万人
加入者数等の数値は平成27(2015)年3月末現在
※については平成26(2014)年3月末現在
(旧共済年金)
被保険者数439万人
※
:日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満のすべての人が対象となる公的年金制度。
:サラリーマンや公務員等を対象に、老齢基礎年金の上乗せとして報酬比例年金を支給する公的年金制度。
:厚生年金の一部を国に代わって支給するとともに、企業の実情に合わせた上乗せ給付を行う企業年金制度。
:年金規約の規定に基づき、加入した期間や給与水準等に応じてあらかじめ給付額が定められている企業年金制度。
:拠出した掛金額と加入者本人が運用指図した結果生じた運用収益との合計額を基に給付額が決定される企業年金制度。
:自営業者などの国民年金の第1号被保険者を対象に老齢基礎年金の上乗せ給付を行う公的な年金制度。
日本の年金制度
企業年金制度の沿革
企業年金
昭和41(1966)年 平成14(2002)年 平成26(2014)年 平成31(2019)年
▼ ▼ ▼ ▼
昭和37(1962)年 平成13(2001)年 平成24(2012)年
▼ ▼ ▼
適格退職
年金
厚生年金
基金
確定拠出
年金
確定給付
企業年金
昭和37年 適格退職年金制度発足
平成24年3月末、企業年金2法の成立に伴
い、10年間の移行期間を経て制度終了
昭和41年 厚生年金基金制度発足
平成26年4月~31年3月
特例解散制度等による代行割れ基金の
早期解散
平成31年4月~
新基準による基金の存続
平成13年10月 DC法施行
平成14年4月 DB法施行
33
71
126 173 219
271 311 340
371 422 439 464
507
135
314
384
430
506
570
647
727
801
796
788
782
1087 1039
835
615
531
488
477
463
453
434
431
417
408
363
917
859
778
655
569
507
443
349
250
126
0
500
1000
1500
2000
2500
平成13 平成14 平成15 平成16 平成17 平成18 平成19 平成20 平成21 平成22 平成23 平成24 平成25 平成26
適格退職年金
厚生年金基金
確定給付企業年金
確定拠出年金
(年度末)
適格退職年金の制度
廃止では、他の企業年
金制度に移行できたの
は6割。4割は解約
厚生年金基金の制度見直しに
より、今後どの程度、制度移行
されるのか不透明
(現在の厚生年金基金の加入員は
約363万人)
(万人)
□ 適格退職年金の廃止、厚生年金基金の解散等により加入者数は減少
企業年金の加入者数の推移
(参考)適格退職年金の移行結果(平成24(2012)年3月末)
適格退職年金
厚生年金基金
確定給付企業年金
確定拠出年金
中小企業
退職金共済制度
7,747事業主
25,499事業所
15,064事業主
123事業主
件数:
73,582件
(平成13年度末)
人数:
917万人
(平成13年度末)
その他(解約など)
(※1)適格退職年金から確定給付企業年金への移行数は、新規設立と同時又は既存の確定給付企業年金に適格退
職年金から権利義務承継若しくは資産移換を行っている確定給付企業年金の数である。
(※2)適格退職年金から確定拠出年金及び中小企業退職金共済制度への移行数は、適格退職年金契約の全部又
は一部を解除することにより、資産移換を行っている実施事業主数である。
(※3)複数制度への移行はそれぞれの制度に計上。
DBに2割
DCに1割
中退共に3割
※ この他、閉鎖型適年(加入者が存在せず受給者のみ
の適年)で事業主がしない等の理由によって企業年金等
に移行できず存在が認められたものが175件(受給者数:
794件)ある。
0人
(平成23年度末)
0件
(平成23年度末)
48,433事業主
(平成24年3月31日で廃止)
22,934事業主
出典:厚生労働省ホームページ
厚生年金基金の制度見直しの予定
今後の運営方針
解散後の移行方針等(複数回答可)
14件
13件
23件
28件
59件
61件
131件
0
50
100
150
その他
中小企業退職金共済制度に加入
企業型確定拠出年金に移行
現在検討中
残余財産を分配または
企業年金連合会へ移換し清算
確定給付企業年金に移行
解散後の企業年金制度は
設立事業所の自主性に委ねる
(57.5%)
(26.8%)
(25.9%)
(12.3%)
(10.1%)
(5.7%)
(6.1%)
出典:企業年金連合会「資産運用実態調査(2014年度)」(2015年6月~7月実施)。
既に前納を 実施した 35.8% 前納を 実施する予定 25.8% 前納する 予定はない 27.1% 現在 検討中 11.3% 0% 20% 40% 60% 80% 100%最低責任準備金の前納
厚生年金基金と して存続, 14, 3.5% 代行返上し確定 給付企業年金に 移行, 97, 24.0% 現在検討中, 36, 8.9% 通常解散, 201, 49.8% 特例解散の認定 を申請, 56, 13.9%15
316
992
1,430
1,941
3,101
5,008
7,405
10,050
14,991 14,676
14,278
13,884
2,379
4,350
6,664
8,667
10,334
11,706
12,902
14,628
16,440
17,328
18,393
19,832 20,137
0
5,000
10,000
15,000
20,000
確定給付企業年金
(DB)
DCの導入は順調に推移
(伸び率はやや鈍化)
DBは平成23年度をピーク
に減少傾向
(事業所数)
出典:厚生労働省HP、信託協会・生命保険協会・JA共済連が公表している「企業年金の受託概況」より作成
確定給付企業年金・確定拠出年金の実施事業所数の推移
確定給付企業年金(連合会会員)におけるDC導入状況
資産規模別 DC導入状況
DCの導入状況(累計)
53件
30件
39件
33件
44件
50件
21件
23件
0
10
20
30
40
50
60
70
1000億円以上
500~1000億円
300~500億円
200~300億円
100~200億円
50~100億円
30~50億円
30億円未満
(件)
資産規模
平均導入率:47.1%
(31.9%)
(33.3%)
(43.5%)
(38.9%)
(55.0%)
(48.8%)
(55.6%)
(81.5%)
出典:企業年金連合会「資産運用実態調査(2014年度)」。0
100
200
300
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
2
10
33
80
111
138 148
158 170
189
246 249
268
293
年度
(件)
導入件数
確定給付企業年金(連合会会員)におけるCBプラン導入状況
資産規模別 CBプラン導入状況
CBプランの導入状況(累計)
33件 25件 27件 22件 38件 35件 12件 8件 23件 18件 32件 20件 29件 18件 16件 7件 0 20 40 60 80 100 1000億円以上 500~1000億円 300~500億円 200~300億円 100~200億円 50~100億円 30~50億円 30億円未満 資産規模 類似型 類似型を除く 平均導入率(合計):55.7% ・類似型 : 31.8% ・類似型を除く :26.0% (計15件、21.1%) (計28件、43.8%) (計52件、44.8%) (計66件、58.4%) (計42件、68.9%) (計57件、70.4%) (計39件、70.9%) (計51件、76.1%) (注)集計対象はCBプラン導入有無と合計資産額の記入のあった確定給付企業 年金が対象。( )内はトータルの件数と導入率。CBプランの両区分を導入している 同年金があるため、必ずしも合計件数は一致しない。 出典:企業年金連合会「資産運用実態調査(2014年度)」。0
100
200
300
400
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
3
26
93
117
126
138
144
147
153
157
165
164
163
0
15
72
100
114
120
127
134
144
165
178
194
200
年度
(件)
類似型
類似型を除く
確定給付企業年金の割引率と予定利率の分布状況
確定給付企業年金の予定利率
退職給付会計の割引率の推移
出典:企業年金連合会「財政・事業運営実態調査」及び同「資産運用実態調査」。 出典:企業年金連合会「資産運用実態調査」。0%
100%
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2.0
2.2
2.4
2.3
2.0
2.2
3.0
5.0
6.9
7.9
9.4
6.3
6.7
6.6
7.8
8.0
9.0
13.1
16.2
18.6
23.3
25.1
19.9
23.1
24.0
25.5
26.2
27.9
29.8
31.2
34.1
35.9
37.3
20.3
22.6
23.5
25.3
28.1
27.6
27.2
25.7
23.7
20.1
18.1
15.0
17.2
17.4
16.8
16.4
16.6
13.7
12.3
9.9
7.3
6.0
13.0
11.0
11.1
9.2
8.7
8.4
6.8
4.4
3.3
2.2
1.7
7.4
6.5
6.3
4.9
3.7
4.0
3.2
2.6
1.4
1.2
1.0
0.2
0.3
0.3
0.2
0.2
0.2
15.8
10.4
8.4
8.0
6.6
4.3
3.0
2.4
1.9
2.1
1.4
(年度)
2.0%未満 2.0% ~
2.5%未満
2.5% ~
3.0%未満
3.0% ~
3.5%未満
3.5% ~
4.0%未満
4.0% ~
4.5%未満
4.5% ~
5.0%未満
5.0% ~
5.5%未満
5.5%以上
0%
20%
40%
60%
80%
100%
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
8.1
9.5
12.8
14.9
27.7
54.7
72.0
84.1
47.5
48.1
48.6
50.8
52.3
33.3
20.7
11.1
7.1
7.5
8.5
8.5
6.6
3.9
1.1
0.8
31.6
29.2
25.4
21.4
10.8
6.2
3.9
2.8
5.6
5.7
4.7
4.4
2.6
1.9
2.2
1.2
(年度)
2%未満
2%
2%超~
2.5%未満
2.5%
2.5%超
今後の制度見直しの検討状況(確定給付企業年金)
(注)「その他」には「キャッシュバランスプラン(類似制度含む)の導入」、「保証期間の延長」、「最終給与比例をポイント制に変更」等が含まれる。
出典:企業年金連合会「財政・事業運営実態調査(2013年度)」。605制度の回答。複数回答可。
260件
122件
100件
79件
36件
35件
33件
32件
27件
21件
118件
0
50
100
150
200
250
300
検討の予定はない 予定利率の引下げ 具体的な方策は検討中 確定拠出年金への移行または 移行割合の増加 過去勤務債務償却期間の 短縮 終身年金を 有期年金に変更 支給開始年齢・時期の繰下げ (60歳以降の雇用延長対応) 給付利率の引下げ 掛金の引上げ 給付水準の引下げ (加入員減額) その他回答数
(5.5%)
(16.5%)
(43.0%)
(13.1%)
(6.0%)
(5.8%)
(5.3%)
(4.5%)
(3.5%)
(20.2%)
(19.5%)
修正総合利回りの推移
(注1)企業年金連合会「資産運用実態調査」。2003年度までは厚生年金基金の集計。2004年度以降は、厚生年金基金と
確定給付企業年金の集計。
(注2)修正総合利回りは、運用成果を測定する尺度のひとつ。時価ベースの資産価値の変化を測定する。
修正総合利回り(%)=総合収益/元本平均残高
(注3)幾何平均とは、投資期間中の複利での平均収益率をあらわす。
11.60
5.89
7.91
3.73 3.39
1.98
5.21 5.21
0.74
10.27
3.65
5.65
2.56
13.09
▲9.83
▲4.16
▲12.46
16.17
4.59
19.16
4.50
▲10.58
▲17.80
14.29
▲0.54
1.82
11.17
8.80
11.06
-24.0
-20.0
-16.0
-12.0
-8.0
-4.0
0.0
4.0
8.0
12.0
16.0
20.0
24.0
1986 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14(%)
年度
累積
3.68%
3.59%
幾何平均
6.35%
5年
10年
20年
3.07%
基金:12.76%
DB:10.08%
市場収益率の推移と資産構成割合
(注)国内債券…NOMURA-BPI(総合) 国内株式…TOPIX配当込み 外国債券…シティ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)
外国株式…MSCI-KOKUSAI(配当再投資、グロス、円換算)。上記の市場収益率は各社が公表するインデックス値をもとに当連合会
において算出。
90
95
100
105
110
115
120
125
130
135
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
2014
2015
国内債券(2.97%)
国内株式(30.69%)
外国債券(12.28%)
外国株式(23.54%)
国内債券
外国債券
外国株式
国内株式
2014年3月末:100
資産構成割合(2014年度)
2014年度の市場収益率
の推移
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 【合計】 【DB】 【厚生年金基金】 26.01% 27.59% 23.06% 14.83% 11.98% 20.17% 13.59% 14.47% 11.96% 15.63% 14.20% 18.29% 4.91% 5.18% 4.40% 13.58% 16.30% 8.50% 11.44% 10.28% 13.61% その他 一般勘定 ヘッジファンド 外国株式 外国債券 国内株式 国内債券 出典:企業年金連合会「資産用実態調査」(※1)継続基準:企業年金が今後も継続するという観点から検証する年金資産の積立基準で、将来の給付を賄うために必要な債務である責任準備金と純資産を比較する。 (※2)非継続基準:企業年金が解散・終了するという観点から検証する年金資産の積立基準で、過去の加入期間に応じて発生している、給付の現価である最低積立基準額と純資産を比較する。