認知症を引き起こす病気
アルツハイマー病、レビー小体型病、
脳血管型認知症、前頭側頭型認知症、
そのほか
Ⅰ.はじめに
認知症を起こす病気
=脳の細胞を壊す病気
その他
頭部外傷
薬物中毒
感染
症
クロ
イッ
ツフ
ェル
ドヤ
コブ
AIDS
梅毒
脳血管障害
脳梗塞
脳出血
動脈硬化
変性疾患
アルツハイマー病
レビー小体病
前頭側頭型
認知症
Ⅱ.アルツハイマー病
アルツハイマー病
アルツハイマー病の病期
• 前駆期
• 第1期:記銘力障害、記憶錯誤、時間に関す
る見当識障害
• 第2期:古い記憶の崩壊、語健忘、地理的見
当識の障害、
ADLの障害
• 第3期:重篤で広範な認知障害、運動機能障
害、生命維持に必要な身体機能の喪失
※ 潜在性に始まり、スロープ状に進行する
http://dementia.seesaa.net/article/9946859.html
アルツハイマー病
高齢発症型
vs 若年発症型
• かっては、アルツハイマー病は若年で発症す
るものとして、65歳過ぎに起こるアルツハイ
マー型老年痴呆と区別されていた
• 現在は、BPSDの種類、頻度を含め、基本的
な差はないのではないかと考えられている
• ただし、同じBPSDでも、80歳と60歳では、周
囲への影響が違う
• 若年発症例では男性の方が多い(?)
アルツハイマー病の診断
• MRI、CT:海馬の委縮を含む瀰漫性の脳萎
縮
• SPECT:後部帯状回、頭頂葉→大脳全般の
血流低下
• 神経心理検査:記銘力障害、見当識障害が
目立つ
• 実生活:実行機能障害が生活全体の質を低
下させる
アルツハイマー病初期の
神経心理学的症状と臨床症状
• 実行機能の低下
– 家事(特に料理)が下手になる
– 冠婚葬祭などに対応できない
– 話していると分かっているようで、実際にさせてみ
るとできない
• エピソード記憶、言語流暢性の低下
– くどいメモをたくさん書き散らす
– 指示語が増える
まっすぐお持ち下さいませ
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AD×教育歴
得点
和光病院CP 落合真弓
2010年6月
AD×HDS-R得点
得点
和光病院CP 落合真弓
2010年6月
アルツハイマー病の治療薬
1,異常なタンパク合成を阻害
2,異常なタンパクの増殖を
防ぐ=分解する
3,細胞活性を高める
ドネぺジル
(ガランタミン)
(リバスチグミン)
アルツハイマー病
アルツハイマー型認知症
対応上の注意点
• 慢性、進行性の疾患で、精神、身体の様々な
機能を障害する
• ケアの目標は、病気の進行への適応であっ
て、進行に逆らうことではない
– 無理をさせない
– 失敗をさせない
• 現在の生活をできるだけ長く維持する
Ⅲ.レビー小体型認知症
パーキンソン病とレビー小体病
• 1817年、パーキンソン(英)が振戦麻痺の症
例を報告
• 1868年、シャルコー(仏)、振戦麻痺には認知
機能の低下もある、『パーキンソン病』命名
• 1912年、レビー(独)、パーキンソン病の患者
の脳にレビー小体を発見
• 1976年、小阪、瀰漫性レビー小体病を記載
• 1995年、国際会議で「レビー型認知症」
レビー小体型認知症(
DLB)
• 皮質型認知症(新皮質型・辺縁型(移行型))
– ADに似ているが、早期には記憶障害が目立たな
い
– 視覚認知の障害が目立つ
– 進行が速い
• 皮質下型認知症(脳幹型・辺縁型(移行型))
– パーキンソン症状が先行
– 精神活動の遅延、注意の障害が前景
レビー小体型認知症の症状
• 主要な症状
– 認知機能の変動:注意、実行機能、視空間認知
の障害が有意、進行すると記憶障害
– 繰り返す幻視
– パーキンソン症状
• その他の症状
– 抑うつ、夜驚、一過性の意識消失、起立性低血
圧、尿失禁、妄想、その他の幻覚、誤認・・・
• 抗精神病薬の副作用が強い
レビー小体型認知症の検査
• CT、MRI:全般的な萎縮は起こるが、海馬の
委縮が
ADほど目立たない
• SPECT、PET:頭頂、後頭領域の血流低下
• MIBG心筋シンチグラフィー:心臓が描出され
ない(交感神経系の異常)
• 心理検査:記憶障害が比較的軽い、視覚構
成課題の成績が悪い
• アルツハイマー病性変化と合併する例も多い
COGNISTAT「構成」
得点
P<0.01
(n=486) (n=27) (n=16)
和光病院CP 落合真弓
2010年6月
レビー小体型認知症の薬物治療
• アリセプト:認知機能、幻覚等
– 第一選択
– 副作用が出やすい(3mg以下が良い場合も)
• 抗パーキンソン薬:パーキンソン症状
• 抑肝散
• 非定型抗精神病薬
★アセチルコリン系とドパミン系は拮抗するが、
DLBではそうでもなかった
レビー小体型認知症対応上の注意点
• 記憶は保たれていることが多い(記憶障害が
軽いから、認知症が軽いわけではない)
• 抗精神病薬以外にも過敏であることが多い(
風邪薬など)
• 認知機能の低下が比較的軽い時期から、失
禁が起こる
• 食べる意欲があるうちに食べられなくなる
• 身体状態の急激な悪化が起こりやすい
Ⅳ.前頭側頭変性症
前頭側頭変性症
• 前頭側頭型認知症(ピック病)
• 意味性認知症
• 進行性失語症
• 病識欠如
• 感情・情動の変化:多幸的、不機嫌、鈍麻、
児戯的、異常な従順さなど様々
• 脱抑制・社会規範からの逸脱(going my
way behavior)
• 自発性の低下、無関心
• 常同行為
• 被影響性、転動性亢進
• 食行動の異常(大食、嗜好の変化)
前頭側頭葉変性症
(1)前頭側頭型認知症(ピック病)の症状
前頭側頭葉変性症
(1)前頭側頭型認知症(ピック病)の問題
• 40歳代から発症
• ADに比して発症率に男女差が少ない
• 性格変化、行動変化で発症するため、初期に
正しい診断がなされないことが多い
• 家族の負担が大きい
• 医療、福祉業界の偏見が強く、しばしばサー
ビスから疎外される
COGNISTAT「記憶」
得点
P<0.1
(n=486) (n=27) (n=16)
和光病院CP 落合真弓
2010年6月
FTD×HDS-R得点
得点
(n=8)
(n=8)
和光病院CP 落合真弓
2010年6月
前頭側頭葉変性症
(2)意味性認知症、(3)進行性失語症
• 意味性認知症:左側頭葉前下部を中心とする
萎縮
– 流暢に話すが、言葉の意味が分からなくなる
• 進行性失語症:左側頭葉優位の萎縮
– 流暢性低下、錯語、失名詞、失文法
• 早期には、記憶障害、行動障害目立たず
• 進行すると全般的な精神機能、身体機能が
障害される
症例
OF:意味性認知症
(男性、発症時54歳、会社役員)
• 一部上場企業事業部長、母(92)、妻(49)、娘
(会社員)、息子(大学生)
• 54歳:物の名前、人の名前が出てこない
• 55歳:脳ドック「異常なし」、週刊誌にでた認知
症専門医のリストを妻に見せる
• 56歳:1年前の週刊誌を出し、「クリニックに
行く」→初診
症例
OF:意味性認知症
(初診時症状)
• 本人は、「物忘れ」がひどいと言うが、実際は、
ものの名前、人の名前が分からない
– 約束を忘れることはない
• 漢字を忘れる
– テレビのテロップ、道路標示の地名が読めない
• ADL、IADL、社会的礼容、よく保たれている
• 計算力正常、文法正常
症例
OF:意味性認知症
(検査所見)
• CT、MRI:左側頭葉の著明な萎縮、他の部位
の萎縮は相対的に目立たない
• 心理検査
– VIQ=79、PIQ=131、FIQ=103
– VeMQ=50↓、ViMQ=95、FMQ=50↓、AQ=132
症例
OF:意味性認知症
(初診後の経過 1)
• 01.1(初発から3年):初診、診断、説明、仕事
を継続
• 01.11:妻、来院、年内で休職、年度末退職の
意志を固めた
– 会社から帰ると疲労困憊
– 実物を見ればなんだか分かるが名前が分からな
い、顔を見れば分かるが誰だか分からない
• 02.4(4年):上司に勧められてSTによる訓練
開始、障病手当金請求
症例
OF:意味性認知症
(初診後の経過 2)
• 02.6(4年):訓練がストレス、毎日パチンコ、
土日は競馬
• 03.8(5年):精神障害者手帳申請、ADの母と
衝突、他人と接触を嫌う。
• 05.4(7年):ADL自立、性格変化目立つ
– 30万持ってパチンコへ
– 切符を通さず改札口を抜けて喜ぶ
– お年寄りを押しのけて歩こうとする・・
症例
OF:意味性認知症
(家族の問題)
• 実母:当初、患者を支援、経過中にADを発症、
患者がケアしていたが、両者の進行とともに
正面衝突→母をホームに
• 妻:うつ病で治療、定期的に面接
• 娘:父の発症、退職後、一家の経済的中心と
なる
– 当初は家族の中で最も安定
– 父の初診後、3年目、リタリン依存で受診
Ⅴ.脳血管性認知症
脳血管性認知症の発症
脳血管性認知症
脳血管性認知症
• 脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化が原因になる
– 糖尿病、高血圧、高脂血症、不整脈などの基礎
疾患があることが多い
– 皮質型=大きな卒中が原因で急性に起こる
– 皮質下型=脳の内部に小さな梗塞がたくさんで
きて徐々に認知症が起こる
• 血管障害の場所、大きさ、基礎疾患の有無な
どによって症状、経過が異なる
脳血管障害による認知症(1)
一部の神経細胞が死ぬ
一部の回路が動かなくなる
まだらな能力低下
麻痺など神経症状
脳梗塞・脳出血
脳血管障害による認知症(2)
神経線維を侵す
血管障害が起こる
回路は残るが
性能が落ちる
遅くなる、一度にできることが減る
できる時、できない時がある
Ⅵ.その他の認知症
クロイツフェルド・ヤコブ病
• プリオンと呼ばれる異常なタンパクが中枢神
経に沈着することによっておこる
– 古典的散発性CJD(人口100万人に1人)
– 医原性CJD:死体硬膜、角膜、下垂体ホルモン
– 新型CJD:狂牛病から感染?
– 家族性CJD
• 急速に進行する認知症とミオクロヌスを特徴
とする
正常圧水頭症
• 定義
– 脳室拡大はあるが脳圧亢進はない
– 認知症、歩行障害、尿失禁を三主徴
– シャント手術で症状が劇的に改善する
• 自発性低下、記憶障害で発症、症状は急激
に進行し数か月で完成する
• 急激に発症し、進行する認知症を見たら直ち
に脳外科を受診させる
ハンチントン病
• 常染色体性優性遺伝
• 35歳から40歳代で発症、緩徐に進行する
• 舞踏運動、人格変化、精神症状、認知症(20
~
30%で、認知症を認めない例もある)
老年期のアルコール症
• 離脱症状:振戦せん妄など、断酒後数日から
2週間ほどで発症
• 断酒後症状:思考困難、記憶障害、睡眠障害
など、断酒後
3か月から18か月、
• 神経障害:高頻度に脳萎縮を認める
– 認知症
– 下肢の違和感、しびれ
– 自律神経障害
Ⅶ.本日のまとめ
認知症原因疾患の色々
• 早期の診断、適切な治療が予後を改善する
• 病気を知らずにケアはできない、病気だけ見
ていてもケアはできない
– 病気の特徴を知る
– クライアントの人となりを知る
• 臨床の場では、安易な一般化は危険
– 例:「ADは集団処遇、VDは個別処遇」