平成27年度
北海道型
SMAの施工実態および技術向上に
向けた取り組みについて
国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所 寒地道路保全チーム ○田中 俊輔 国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所 寒地道路保全チーム 磯田 卓也 国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所 寒地道路保全チーム 木村 孝司 高規格幹線道路の高速走行安全性の機能と高い耐久性を有する舗装の研究を進めた結果,北 海道型SMAと呼ばれるアスファルト混合物が提案された.北海道型SMAは,平成26度,北海道 開発局が管理する路線で53工事行われ,技術普及が進んでいる.しかし,品質を満足させるた めには,材料,配合設計,施工などで十分な留意が必要であり,試験施工を進める中で,更な る技術の向上に向けた課題も明らかになってきた.本論文では,北海道型SMAの施工の手引き (案)公表後に行われた試験施工において,現地調査などを行い,北海道型SMAの施工実態を 確認した.さらに,北海道型SMAの施工技術向上に向けた新たな取り組みについても報告する. キーワード:北海道型SMA,施工技術,品質管理 1. はじめに 北海道開発局が管理する高規格幹線道路で施工されて きた排水性舗装は,雨天時などの走行安全性を確保する 効果が確認されている1), 2).しかし,積雪寒冷地特有の 厳しい環境条件3)から,耐久性に関する課題が散見され るようになった.そこで,走行安全性の機能を有しつつ, 耐久性にも優れることをコンセプトとした表層用アスフ ァルト混合物の検討が行われた結果,北海道型SMAと 呼ばれるアスファルト混合物の使用が提案され,平成26 年7月に「北海道型SMAの施工の手引き(案)」(以下, 手引き(案))4)が公表された.手引き(案)は,平成 27年12月現在,ダウンロード件数が1300件を超えている. また,北海道開発局が管理する高規格幹線道路および 一般国道において平成26年度は53工事,平成27年度も40 工事以上が行われており,技術の普及が進んでいる.そ の後,継続して試験・調査を行った結果,技術向上に向 けた新たな課題が明らかになった. 本論文では,技術向上に向けて明らかになった課題と, その課題克服に向けた新たな取り組みの現状について報 告する. 2. 北海道型SMAの施工状況 平成26年度,北海道型SMAは,北海道開発局が管理 する高規格幹線道路および一般国道などにおいて53工事 が行われた.その内,高規格幹線道路で行われた31工事 を対象に,施工された北海道型SMAの品質および出来 形のデータから,北海道型SMAの施工状況を確認した. なお,本検討では,最も一般的な施工事例となってい るアスファルト改質Ⅱ型に植物性繊維を使用した混合物 を対象とした.図-1にきめ深さ(平均きめ深さ:MPD) 5),図-2に締固め度の状況を示す. 図-1 きめ深さ(平均きめ深さ:MPD)の状況 図-2 締固め度の状況北海道型SMAのきめ深さは,所定の箇所数の測定値 の平均で,0.9mm以上とされている.平成26年度の施工 におけるきめ深さは,約9%規格値以下のデータが確認 されるものの,0.8mm以下のデータは出現せず,概ね良 好な結果であると考えられる. 次に,締固め度の状況を確認した.北海道開発局の規 格値では個々の測定値で94%(所定個数の平均値で96%) 以上とされているが,手引き(案)では,締固め度の低 下が耐久性の低下に繋がる可能性があることから,目標 値を100%と設定している4).平成26年度の状況を確認す ると,全てのデータが規格値は満足しているが,平均値 は約98%であり,目標値に達したデータは見られない. 規格値を満足していることから良好な施工状況であった と考えられるが,北海道型SMAは十分な締固めによる 高い耐久性を求められるアスファルト混合物であること から,目標値を達成していないことに懸念もある. したがって,締固め度と耐久性などの機能との関係を 明らかにし,必要に応じて対策を検討する必要があると 考えられる. 3. 北海道型SMAの締固め度と機能の関係 苫小牧寒地試験道路において,北海道型 SMA の締固 め度と耐久性などの機能との関係を検証するために,試 験舗設を行った.締固め度をある程度ばらつかせるため に複数の転圧条件を設けて舗設した.舗設後に,現地調 査や採取したコアを用いた室内試験を行って検証した. (1) 試験舗設の概要 本試験は,苫小牧寒地試験道路において表-1 に示す 混合物を用いた.舗装厚さは 4cm で既設のアスファル ト舗装上に施工し,既設路面の条件は同一とした.転圧 条件を表-2 に示す.転圧条件として,転圧なし(アス ファルトフィニッシャによる敷均しのみ),マカダムロ ーラによる転圧のみ(3 回,11 回),最も施工例が多い マカダムローラによる初期転圧とタンデムローラによる 2 次転圧およびタイヤローラによる仕上げ転圧,水平振 動ローラ(起振力105kN,振動数 51.6Hz)を使用した転 圧の5 条件を設定した.なお,本施工は連続施工とする など比較検証において問題となる事項の発生を未然に防 ぐよう努めた結果,施工時間などに大きな差はなく,全 て目標温度内で施工されている. 図-3 に,試験舗設におけるきめ深さなどの測定箇所 を示す.試験舗設区間は,各転圧条件につき 11m とし, 各転圧条件区間の間に 10m 程度のインターバルを設け た.また,転圧機械は常に同じ位置を走るようにした. なお,マカダムローラを用いた転圧条件では,前輪と後 輪の線圧が若干異なり,前輪のみと後輪のみの転圧箇所 があることから,それぞれで測定点を設けた.行った測 定および試験項目は,写真-1 の CT メータを用いて測定 したきめ深さ(MPD)5),舗設後にコアを採取して測定 した締固め度 6),採取したコアを用いて行った低温カン タブロ試験 6)とした.なお,CT メータによるきめ深さ の測定およびコアの採取は,すべて同じ位置で測定した. (2) 締固め度と耐久性の関係 締固め度と耐久性の関係を検証するために,採取した コアを用いて低温カンタブロ試験を行った.低温カンタ ブロ試験は,舗装の衝撃骨材飛散抵抗性を評価する試験 であり,排水性舗装などの耐久性評価の一環として行わ れている.なお,本研究では,試験温度および供試体温 度を-20℃と設定している. 図-4 に,採取したコアを用いて行った締固め度の測 定結果と低温カンタブロ試験の結果(低温カンタブロ損 失率)の関係を示す. 締固め度と低温カンタブロ損失率の関係は,決定係数 (R2)が 0.6 以上となり,相関関係が見られる.また, 締固め度が高くなると低温カンタブロ損失率は減少する 傾向にある.したがって,北海道型 SMA の品質におい て,締固め度は耐久性に大きく影響を与えるものと考え られる. 表-2 試験舗設の転圧条件 条件 初期転圧 (目標温度150~170℃) 2 次転圧 (目標温度120~140℃) 仕上げ転圧 (目標温度60~80℃) A 転圧無し(敷均しのみ) - - B マカダムローラ(10t)3回 - - C マカダムローラ(10t)11回 - - D マカダムローラ(10t)7回 タンデムローラ(6t)7回 タイヤローラ(10t)3回 E 水平振動ローラ(6t)無振動 1回 水平振動ローラ(6t)有振動 6回 タイヤローラ(10t)3回 表-1 北海道型 SMAの配合設計 項目 アスファルト (改質Ⅱ型) 石粉 スクリーニングス 粗砂 7 号砕石 6 号砕石 植物繊維 合計 配合率% 5.9 10.4 6.1 6.1 8.5 63.0 0.3(外割) 100.3
写真-1 CTメータ (3) 締固め度ときめ深さの関係 図-5 に締固め度ときめ深さ(平均きめ深さ:MPD) の関係を示す.決定係数(R2)が 0.8 以上となったこと から,きめ深さと締固め度には,高い相関があることが 分かる.また,両者の関係は負の傾きであり,相反する 関係を持つことが確認できる.そのため,表面機能を高 めるためにきめ深さが大きくなる施工を行うと密度・締 固め度が低下し,耐久性に影響する可能性がある. 本試験より得られた締固め度ときめ深さの関係式によ ると,締固め度を目標値としている 100%とした場合, きめ深さは 0.895mm となり,ほぼ規格値と同値になっ た.北海道型 SMA は,雨天時や凍結路面時に車両走行 の安全性を向上させる観点から,出来形管理において, きめ深さの規格値を0.9mmとしている.図-1,図-2 で示 したように,平成 26 年度の試験施工の締固め度におい て,規格値は満足しているものの目標値を達成していな い現状(平均値は97.8%)では,きめ深さも規格値を概 ね満足している(平均値は1.0mm).しかし,より高い 図-4 締固め度と低温カンタブロ損失率の関係 図-5 締固め度ときめ深さの関係 耐久性を求めるために,締固め度を高める転圧方法を行 った場合,きめ深さの規格値を下回るデータが増加する 可能性もあり,出来形・品質管理における規格値や施工 方法など総合的な検証が必要となることも考えられる. 図-3 試験舗設における転圧条件ごとの測定箇所 ア スファ ル ト フ ィニッ シャ 3. 5m 11m 1m@10 点=9m 1.0m 1.0m タ イヤロ ーラ 2. 2m マ カダム ロー ラ 2. 1m タ ンデム ロ ー ラ 1. 5m 0.3m 0. 75m 0. 45m 転圧条件BCD で測定(マカダムでは前輪のみの転圧部) 転圧条件BCDE で測定(マカダムでは後輪のみの転圧部) 転圧条件A(敷均しのみ)で測定
4. 北海道型SMAの耐久性向上に関する検討 前述したように,締固め度は耐久性に大きな影響を与 えると考えられるものの,締固め度を高めれば走行安全 性に影響を与えるきめ深さを低下させる.しかし,高規 格幹線道路に使用されている排水性舗装は,耐久性が劣 ることが課題とされており,その代替の混合物である北 海道型 SMA については,耐久性に優れることが望まれ る現状から,耐久性向上に向けた検討を行った. 北海道開発局が管理する高規格幹線道路で,平成 26 年度に行われた北海道型SMA の試験施工のうち 3 箇所 において,MPD の測定やコアの採取,非破壊密度の測 定などを行った.表-3 に試験施工の概要を示す. 工事 A では,振動の動線圧により高い締固め力が得 られるとされている水平振動ローラ 7)を用いた転圧を行 い,施工区間中の300m で 100m ごとに 3 箇所の測定箇 所を設け(計9 箇所),CT メータによる MPD,採取し たコアを用いて実際密度,締固め度の測定,および低温 カンタブロ試験 6)による骨材飛散抵抗性の検証を行った. また,工事 B と工事 C ではマカダムローラを用いた転 圧を行い,面的に品質を確認するために,図-6 に示す ように工事 A と同様の測定項目に加えて,マルチロー ドプロファイラ(写真-2 左,以下 MRP)による MPDの 測定,電磁波式アスファルト舗装密度測定装置(写真-2 右,以下PQI)による非破壊密度の測定も行った. (1) 水平振動ローラを用いた転圧方法の検討 ここでは,水平振動ローラを使用して転圧を行った工 事A と,工事 A と隣接しており,かつマカダムローラ を使用して転圧を行った工事B の品質を比較した.表-4 に各工事の配合設計,表-5 に各工事の施工状況を示し 写真-2 MRP(左)と PQI(右) 図-6 工事 B,Cにおける調査概要 表-3 高規格幹線道路における試験施工の概要 工事 敷均し 初期転圧 2次転圧 仕上げ転圧 A 145~165℃ 水平振動ローラ (7t・起振力 105kN・振動数 51.6Hz) 無振動・2回・140~160℃ 水平振動ローラ (7t・起振力 105kN・振動数 51.6Hz) 有振動・7回・120~130℃ タイヤローラ(8t) 3回・70~90℃ B 160~180℃ マカダムローラ(10t) 6回・155~175℃ タンデムローラ(6t) 6回・120~140℃ タイヤローラ(8t) 4回・70~90℃ C 165~175℃ マカダムローラ(10t) 6回・155~175℃ タンデムローラ(6t) 6回・120~140℃ タイヤローラ(8t) 4回・70~90℃ 表-5 工事 Aおよび Bにおける調査区間の施工状況 工事 天気 外気温(℃) 平均風速 (m/s) 混合物温度(℃) 施工時間 (min) 最高 最低 敷均し開始時 転圧終了時 温度低減幅 A 晴れ 22.7 19.9 2.9 159 74 85 34 B 晴れ 18.9 16.5 3.5 155 76 79 31 表-4 工事 Aおよび Bにおける北海道型 SMAの配合設計 項目 工事 アスファルト(改質Ⅱ型) 石粉 細砂 粗砂 7 号砕石 6 号砕石 植物繊維 合計 配合率 (%) A 5.8 10.8 8.4 4.2 8.7 62.1 0.3(外割) 100.3 B 5.8 11.3 4.7 4.7 10.6 62.9 0.3(外割) 100.3
図-7 きめ深さ(MPD)の測定結果 図-8 締固め度の測定結果 図-9 低温カンタブロ試験の結果 た.なお,各工事で,施工は目標温度内で行われている. 図-7 に CT メータで測定したきめ深さ(MPD),図-8 に採取したコアより測定した締固め度,図-9 に採取し たコアを用いて行った低温カンタブロ試験の結果を示す. きめ深さは,水平振動ローラを使用した工事 A では 平均値が 0.88mm とほぼ規格値程度の値となり,マカダ ムローラを使用した工事B では 1.08mm と,工事 B のほ うが 0.2mm 大きくなった.一方で,締固め度の平均値 は工事A の方が 2%以上高くなり,低温カンタブロ損失 率の平均値は12%以上低くなったことから,水平振動ロ ーラを使用した場合の方が,耐久性や骨材飛散抵抗性に ついて優れていると考えられる. 北海道型 SMA は,一般的なアスファルト混合物より 高い温度で十分な締固めが必要である 4).そのため,自 重に加えて振動による動荷重を付加することにより高い 締固め効果を有する水平振動ローラは 7),耐久性向上の 面では有効となる可能性がある. 今後,水平振動ローラを使用した北海道型SMAの施 図-10 MRPで横断方向に測定したきめ深さ 工において,きめ深さや締固め度などの品質や傾向を確 認し,水平振動ローラの効果や有効に働くメカニズムな どについて,明確にしていく必要があると考えられる. (2) 品質のばらつきに関する検討 品質確保の状況について詳細に検証するために,工事 B および工事 C において,きめ深さや密度・締固め度を 平面的に測定し,品質の平面的ばらつきを確認した. 図-10 に横断方向に MRP で測定したきめ深さ(MPD) を平面的に表したものを示す.なお,MRP による測定 距離1m ごとに算出したきめ深さ(MPD)を用いた.両 工事において,舗設端部の一部にきめ深さが突出して大 きくなる部分が見られた.そこで,舗設端部と端部以外 の箇所の平均値を比較すると,舗設端部は 1.21mm,端 部以外の箇所が 1.04mm となり,舗設端部の平均値の方 が0.2mm 程度大きくなっている.次に,図-11 に工事 B および工事 C において PQI で測定した非破壊密度を平 面的に表したものを示す.きめ深さの測定結果からも推
図-11 非破壊密度の平面的ばらつき 測されるように,舗設端部の非破壊密度は,端部以外の 箇所に比べて低くなっている.締固め度の平均値で比較 すると,舗設端部は 94.9%,端部以外の箇所は 97.4%と なり,規格値(94%)以下ではないものの舗設端部は 2.5%程度平均値が低くなったことから,舗設端部が耐久 性で劣る可能性がある. このように,舗設端部では転圧回数が中央部と比較し 少なくなるなどの影響により,締固め不足のような品質 の低下が発生しやすく,耐久性の観点から弱点となり得 ると考えられる.さらに,北海道型 SMA は一般的なア スファルト混合物と比較して,品質が耐久性や機能に大 きな影響を与える可能性のある混合物であることから, 舗設端部における施工方法について対策が必要と考えら れる. 5. 結論 以下に得られた知見を示す. (1) 平成26年度の試験施工では,きめ深さおよび締固 め度は,概ね規格値を満足した.しかし,締固め 度の目標値を達成した施工は見られなかった. (2) 締固め度と低温カンタブロ損失率やきめ深さには 高い相関がある.したがって,所定の機能性と耐 久性を満足する品質を確保するために適した転圧 方法を十分検討する必要がある. (3) 水平振動ローラを使用した転圧方法は,マカダム ローラを使用した方法より締固め度が高くなり, 低温カンタブロ試験の結果も試験施工において優 位となったことから,耐久性向上の観点から,有 効な転圧方法の一つである可能性がある. (4) 舗設端部では締固め不足など品質の低下が発生し やすく,耐久性の観点から弱点となり得る可能性 がある.北海道型SMAは一般的なアスファルト混 合物と比較して,品質が耐久性や機能に大きな影 響を与える混合物であることから,舗設端部の施 工方法について十分な対策が必要と考えられる. 北海道型SMAは,適切な施工方法の確立に向けて改 善の余地もあるため,今後,試験施工箇所の継続調査に よる長期耐久性や,新たな試験施工を行い,適切施工方 法などについての検討を引き続き行う予定である. 謝辞:本研究を進めるにあたり,「積雪寒冷地における 舗装技術検討委員会」の委員各位ならびに事務局の皆様, 国土交通省北海道開発局の関係者の皆様に多大なるご協 力を頂いた.ここに記して感謝の意を表す. 参考文献 1) 安倍隆二,丸山記美雄,岳本秀人:積雪寒冷地に け るアスファルト舗装の性能評価指標値の検討,北海 道開発土木研究所,1997. 2) 千葉学,田高淳,安倍隆二:開粒度舗装の雪氷路面 におけるすべり抵抗に関する一検討,寒地技術論 文・報告集,Vol.22,pp.209-213,2006. 3) 丸山記美雄,安倍隆二,熊谷政行:融雪期に発生す る舗装の損傷実態と損傷のメカニズム,第 57 回北 海道開発技術研究発表会,2014. 4) 積雪寒冷地における舗装技術検討委員会:北海道型 SMA の施工の手引き(案),2014.
5) ASTM Standards: E1845-09 Standard Practice for Calculating Pavement Macrotexture Mean Profile Depth, ASTM, 2010. 6) 日本道路協会:舗装調査・試験法便覧,第 3 分冊,
2007.
7) 坪田実,玉井昭典:ローラ機種の違いによる締固め 効果の検討,舗装,Vol.26,No.10,pp.24-29,1991.