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情勢分析_中東の石油・ガス産出国をめぐる最近の動向と今後の予測

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はじめに  2018年には,世界の石油とガスに関連する分野においても,歴史の転換点となるような いくつもの大きな変化が生じた。2018年においては,中国経済の減速,米国の好景気の終 焉,欧州の政治の混乱と景気悪化などの傾向が顕著となってきており,2019年において世 界の人々が株価,債券価格,金利,為替,石油等の資源価格の動向を,一喜一憂して見ざ るを得ない経済の減速傾向が出てきている。政治的には,シリア,イラク,リビアを始め として,各国で続いた騒乱も漸く一定程度の目処が立ってきたと言える状況がある。  石油需要は着実に増加が続いているものの,次第に,より環境負荷を軽減し,より洗練 されたエネルギー源(ガスおよび電気)に頼りたいとの動きが,先進国を中心として生じ てきている。他方,中東の石油・ガス産出国においては,国家経済が依然として石油とガ スおよび石化製品などのエネルギー資源輸出へ過度に依存する状態が続いている。  世界の景気動向の大きな流れが変わる中で,中東産油国は,石油とガスおよびその関連 製品の輸出に大きく依存するモノエコノミーの状態からの脱出は容易ではない。中東産油 国は,世界の動向の変化への対応は後手にまわらざるを得ず,石油価格を上げるためには 減産に取り組む必要があっても,自国だけは有利なポジションを採りたいとして,減産に は積極的に対応できない状況が生じてしまっている。  本稿では,いよいよ中東産油国が本腰を入れて将来の延命策を打ち出さなければならな い時期に来ているとの認識の下,現状分析と将来展望を考えてみる。 1.原油価格動向  世界の石油価格の動きは,2018年10月の WTI 原油で70ドル台/バレルという水準を ピークとして,その後急落し,2018年末から2019年年初においては,WTI 原油が50ド ル/バレルを下回るという状況となっている。WTI 原油価格は,現状では,米国株式の動 向に大きな影響を受けて変動しており,株価の下落があると原油価格も下がり,株価が反 発して上昇すると,原油も若干値を戻すという繰り返しとなっている。  2018年半ばで生じたWTI原油で70ドル台,ブレント原油で80ドル台という価格は,中 東京国際大学 教授 武石 礼司

中東の石油・ガス産出国をめぐる

最近の動向と今後の予測

中東情勢分析 

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東産油国としては,当面,満足できる財政収入が得られる価格帯であった。しかし,価格 が下落して50ドル前後,あるいは40ドル台となると,国内景気も悪化し,国民の不満も高 まることが懸念される政治的に危ないレベルとなる。  2018年末から2019年年初という北半球の冬季において,暖房用の石油製品需要が北半 球で高まる時期に,石油価格が低下した。この下落は,世界景気の先行きに不安を持つ人々 が増えていることを意味している。  OPECは2018年12月の総会で,2019年1月から石油生産量の上限の制限をより強化し て実施することを決定した。この OPEC の生産制限には,ロシアほかの非 OPEC 諸国も 加わることになっている。  石油価格の動向を図1で2004年から2018年末まで見ていくと,2004年から2008年の 上昇が異例に急であるとともに,2010年から2014年まで続いた100ドル超えの状況が4 年にわたり続いた点も,異例であったと言えることがわかる。  石油が世界的に取引される商品であることから,市場に与えられる様々な条件が変化す るたびに,価格が短期間で変化することはむしろ普通のことと考えなければならない。 2015年以降の価格が上下動する状況は,石油市場に与えられる様々な要因を反映した結果 として受け止めるべきと言える。  価格変動を嫌う石油の実需家にとっては,価格を固定化するヘッジという手法が存在し ており,運輸会社,船会社,航空会社等,いずれでも本業の儲けに対する石油価格の変動 の影響を抑えることは,ヘッジを行うことで可能である。つまりヘッジができるようにし 図1 原油価格動向の推移(2004年1月から2018年12月まで)  (注)WTIは期近限月,ブレントとドバイはスポット価格,いずれも各月の中間日の価格 (資料)米国エネルギー省エネルギー局(DOEEIA)データほかより作成

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ていないということは,投機を行っていて,営業外収益での利益を狙っていると言われて も仕方ない状況があることになる。  それでも,価格がどちらに向かうのか,原油市場を取り巻く状況が2019年初めの段階で どのような状況にあるのかを分析しておくことはたいへん重要である。なぜ原油価格は 2018年10月以降に急落したのか,また,今後はどのような要因が大きく影響しながら価 格が変動すると考えられるかにつき,以下で検討する。 2.世界の経済動向と原油需給  まず,重要となるのは世界の経済動向であり,石油需要が強いか弱いかは,経済が好調 か悪化するかに依存しており,経済動向次第で,エネルギー需要は変動し,さらに石油価 格はより大きく変動する。  表1は,IMF が2018年10月に発表した世界各国の経済成長率の予測であり,表の右端 2018年4月 2017 2018 2019 予測との差 世界全体 3.7 3.7 3.7 -0.2 先進国平均 2.3 2.4 2.1 -0.1 米国 2.2 2.9 2.5 -0.2 ユーロ圏 2.4 2.0 1.9 0.0 ドイツ 2.5 1.9 1.9 -0.2 日本 1.7 1.1 0.9 0.0 新興国及び発展途上国平均 4.7 4.7 4.7 -0.4 ロシア 1.5 1.7 1.8 0.3 中国 6.9 6.6 6.2 -0.2 インド 6.7 7.3 7.4 -0.1 アセアン5ヵ国 5.3 5.3 5.2 -0.1 中東・北アフリカ 2.2 2.4 2.7 -0.9 サウジアラビア -0.9 2.2 2.7 0.8 イラン 3.7 -1.5 -3.6 -7.6 UAE 0.8 2.9 3.7 0.7 イラク -2.1 1.5 6.5 1.6 カタール 1.6 2.7 2.8 0.1 クウェート -3.3 2.3 4.1 0.3 レバノン 1.5 1.0 1.4 -0.4 ヨルダン 2.0 2.3 2.5 -0.2 エジプト 4.2 5.3 5.5 0.0  (注)2018年および2019年は IMF 予測 (資料)IMF,WorldEconomicOutlook,October2018より作成 表1 世界の経済成長率の予測(単位:%)

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は2018年4月の IMF 発表の値との差を示し ている。半年の間に大きな差異が生じており, 世界の主要国は軒並みマイナスか,あるいは 2018年4月時点と同じとの予測となってい る。  米国と中国は貿易戦争の本格化に伴い,両 国とも経済成長率の低下という影響を受けている。ドイツなども,欧州経済の停滞感から マイナスの影響を受けていることがわかる。  中東諸国の中では,イランにおいて経済制裁が必至との状況から,経済が大きなダメー ジを受けるとの予測が出されている。米国の対イラン経済制裁は,原油輸出に関して,日 本を含めて6ヵ月間の猶予が与えられることとなったために,いったん緩和されており, 表中のマイナス7.6%よりも2019年には若干マイナス幅が小さくなる可能性がある。  他の中東諸国に関しては,イラク,サウジアラビア,UAEなどの数値が大幅に上昇して いるが,この数値は2018年10月に発表された原油価格が70ドルを超える状況を踏まえた 数値である。その後の価格急落を考慮していないために過大で,中東諸国の経済状況の急 回復は簡単には生じないと予測される。  次に,世界の石油需給に関して,OPEC 事務局発表の数値を見ながら検討してみる。  表2は,世界の石油需要の実績と予測で,北米の石油需要が旺盛であり,中国でも着実 な増大が予測され,さらにインドなどを含む「発展途上国その他」でも同じく石油需要が 増大すると見積もられている。  石油価格は,こうした強い需要予測に基づいて2018年の前半において,いったん上昇し たとみることができる。  世界の石油需要が堅調で,毎年100万バレル/日を超える対前年比での増大が続いてきて 筆者紹介  1975年3月,東北大学法学部卒。1975年4月アラ ビア石油入社,同社サウジアラビア駐在(1984年か ら87年)。1991年より㈶日本エネルギー経済研究所, 1994年より㈶石油開発情報センター,1997年より㈱ 富士通総研・経済研究所,2007年より東京国際大学 国際関係学部教授,早稲田大学博士(学術)。 2014 2015 2016 2017 1Q18 2Q18 3Q18 4Q18 2018 1Q19 2Q19 3Q19 4Q19 2019 OECD 合計 45.8 46.4 46.9 47.4 47.7 47.2 48.1 48.4 47.9 48.0 47.4 48.4 48.6 48.1  北米 24.2 24.6 24.7 25.1 25.2 25.4 25.6 25.6 25.5 25.5 25.6 25.9 25.9 25.7  欧州 13.5 13.8 14.0 14.3 14.0 14.2 14.8 14.5 14.4 14.0 14.2 14.8 14.5 14.4  アジア太平洋 8.1 8.1 8.1 8.1 8.5 7.7 7.7 8.3 8.1 8.5 7.6 7.7 8.3 8.0 発展途上国合計 46.3 47.4 48.6 49.9 50.1 50.8 51.2 51.6 50.9 51.1 51.9 52.2 52.7 52.0  旧ソ連 4.7 4.6 4.6 4.7 4.7 4.7 4.9 5.0 4.8 4.8 4.7 5.0 5.1 4.9  非 OECD 欧州 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.8 0.7 0.8 0.7 0.8 0.8 0.8  中国 10.8 11.5 11.8 12.3 12.3 12.8 12.7 13.1 12.7 12.6 13.2 13.0 13.4 13.1  発展途上国その他 30.2 30.9 31.5 32.1 32.4 32.6 32.9 32.7 32.7 33.0 33.2 33.5 33.3 33.2 世界合計 92.1 94.1 95.5 97.3 97.8 98.0 99.3 100.0 98.8 99.1 99.3 100.6 101.3 100.1  (注)2018年第4四半期およびの2019年の数値は予測値 (資料)OPEC“OilMarketReport,December2018”に基づき作成 表2 世界の石油需要の実績と予測(単位:100万バレル/日)

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いることが表2で確認できた。問題となるのは,石油供給側の動向である。  次に,表3の石油供給側で目につくのは,北米の石油生産量が増大している点で,2018 年には,対前年比で230万バレル/日の生産量の増大が生じると予測されており,2019年 の予測値でも,対前年比で160万バレル/日の増大が予測されている。  表2で示した需要の側の世界の2018年の対前年比の増大量は150万バレル/日であり, 2019年の対前年比の増大分は130万バレル/日であった。  つまり,北米のみで易々と,世界の石油需要の増大分を大幅に超えた増産を行ってしま っており,2019年も引き続き増産が可能と見なされていることがわかる。このような状況 がある以上,需給を均衡させるためには,どこかで減産が行われる必要が生じる。OPEC など,北米以外の国での減産がない限り,在庫の積み上がりを見越して,石油価格は急落 していくことになる。  減産は,いずれかの産油国で紛争が生じて対前年比での生産量が減少することでも生じ る。2018年の例で言えばベネズエラの石油生産量の減少は,国内の混乱によるもので,以 下の表4で確認できるように急減してきた。  ただし,ある国において不幸にも国際紛争・内部抗争が生じて石油生産量が減少するに 違いないとの結果だけに依存して,世界の石油需給の均衡を図ろうとしても,中々適切な 世界の石油需給の調整に達することは難しい。こうしてOPECという,産油国として自国 の収入の大半を得ている諸国が,協議して減産を行わざるを得ない状況が出現した。  表3で明らかなように,OPEC に求められる原油生産量は,2018年が3,240万バレル/ 日で,2017年よりも20万バレル/日の減少であり,2019年は3,150万バレル/日で90万バ 2014 2015 2016 2017 1Q18 2Q18 3Q18 4Q18 2018 1Q19 2Q19 3Q19 4Q19 2019 OECD 合計 24.3 25.4 24.9 25.7 27.3 27.5 28.5 28.7 28.0 28.8 28.8 30.1 31.2 29.7  北米 20.1 21.1 20.6 21.5 22.9 23.4 24.5 24.4 23.8 24.4 24.8 25.9 26.7 25.4  欧州 3.6 3.8 3.9 3.8 3.9 3.7 3.6 3.9 3.8 3.9 3.6 3.8 4.0 3.8  アジア太平洋 0.5 0.5 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4 0.5 0.4 0.4 0.5 0.5 0.5 0.5 発展途上国 11.8 11.8 11.5 11.5 11.5 11.5 11.3 11.5 11.4 11.6 11.6 11.8 12.0 11.7 旧ソ連 13.5 13.7 13.9 14.1 14.1 14.1 14.3 14.5 14.3 14.3 14.3 14.4 14.5 14.4 その他欧州 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 中国 4.3 4.4 4.1 4.0 3.9 4.0 3.9 3.9 4.0 4.0 3.9 3.9 3.9 3.9 プロセスゲイン 2.2 2.2 2.2 2.2 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 OPEC・NGL+非在来 5.9 6.1 6.2 6.2 6.3 6.3 6.3 6.2 6.2 6.3 6.3 6.4 6.4 6.4 上記合計(非 OPEC) 62.1 63.6 62.8 63.8 65.4 65.8 66.9 67.4 66.4 67.4 67.5 69.1 70.5 68.6 OPEC 30.5 31.9 32.9 32.6 32.4 32.2 32.6 32.6 32.4 31.7 31.8 31.5 30.8 31.5 供給合計 92.6 95.5 95.7 96.4 97.8 98.0 99.4 100.0 98.8 99.1 99.3 100.6 101.3 100.1 在庫変動 0.6 1.3 0.0 -0.9 0.0 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0  (注)2018年第2四半期以降は予測値。2019年の在庫変動は筆者推定。 (資料)OPEC“OilMarketReport,December2018”に基づき作成 表3 世界の石油供給の実績と予測(100万バレル/日)

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レル/日の減少と予測されている。  2018年12月の OPEC 総会で決定された80万バレル/日の減産は,まさしくこうした予 測数値を突きつけられたOPEC諸国の止むに止まれない表明であったことがわかる。ただ し,いずれの国も自国の石油輸出収入の減少に結びつく減産には,積極的に取り組むこと はない。他国が減産してくれればありがたいという立場にあり,このため2019年の石油価 格は弱含む傾向が基調として存在せざるを得ない。  なお,表3で,在庫変動の値が2018年,2019年とほぼゼロ近辺で推移していくと予測 されるようになっているが,世界の石油マーケットは,過去最大と言われる過剰在庫が存 在した重しがとれた段階にある。在庫が多量に積み上がっていると,思わぬ安値の取引が 生じて価格は低位に止まざるを得ないが,在庫が平年並みの量まで下がったことで,在庫 情報に引きずられることなく,新たな市場を動かす要因の出現を待ちながら,石油価格が 上がるも下がるも,市場が決定できる状況が出現している。 3.OPEC 諸国の石油生産量の推移  2018年12月に OPEC が決定した減産目標は,2018年10月の各国の生産量を基準とし て80万バレル/日を2019年1月より削減するとの決定であった。国別目標数量は12月の OPEC 総会時点では公表されなかったが,OPEC 各国は10月時点で増産に走る動きが出 ることとなった。表4から,サウジアラビアと UAE が増産したことが読みとれる。こう したOPECの行動が報道されることで,減産の実効性とその効果が薄まってしまい,減産 が2019年1月以降も実施されると OPEC が発表しても,石油価格の下落傾向が止まらな い状態が生じた。  表4で示されているように,ベネズエラの生産量の減少は110万バレル/日当たりまで下 降したところで,下げ止まっており,また,リビア,ナイジェリア等においても,一定程 度までの生産量の回復が達成されている。  なお,2018年末までの減産に協力した非OPEC諸国も,引き続き2019年1月からの減 産に合計で40万バレル/日だけ協力することになっている。  OPEC と合わせて120万バレル/日の減産が行われることで,市況の立て直しが目指さ れている。確かに,ロシアとメキシコが従来通り,一定数量の減産を行えば,その他の国 と合わせて40万バレル/日の減産は達成可能と考えられる。  2019年において石油需給の引き締め要因として,イラン以外の OPEC 各国から期待さ れるのが,米国によるイラン制裁の本格実施である。イラン原油に関しては,中国ほか, 積極的に買い入れると予測される国もあり,イランの減産規模も100万バレル/日程度に止 まるのではないかとの観測も出されているが,イラン以外の産油国にとっては,減産取り 決めによる自国の生産量の削減分をイランが引き受けてくれることは「助かる」というの

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が本音となる。 4.世界のエネルギー消費量と石油の重要性  2019年の石油需給の状況を見ることで,中東の産油国の置かれているポジションと,対 応の状況が明らかとなる。さらに一歩進めて,中東産油国の将来的なポジションをいかに 考えるかについて考察してみたい。  昨今,日本でも再生可能エネルギーの導入ブームが,固定価格買取制度(FIT)の導入 とともに始まっており,石油の時代は今後終わり,再生可能エネルギーでエネルギー供給 を賄うことができると主張する人々が存在する。  図2は,世界のエネルギー消費量の推移を1981年から2017年まで,カロリー換算して 積み上げで作成したものである。水力を除いた「その他の再生可能エネルギー」の供給量 が実に僅かであることを示している。  石油の消費量は,現在でも,着実に増大していることが図から読み取ることができる。 一日1億バレルという石油消費量は簡単に代替できない。しかも,現在でも着実に毎年石 油消費量は増大しており,これは特に自動車の新規の増大(純増)部分が多いことでもた らされている。  電気自動車で代替しようとしても,10年以上にもわたって使用する車が毎年導入されて 2018年までの 2018年11月と 2015年 2016年 2017年 2018年9月 2018年10月 2018年11月 供給ベース値 供給能力 供給能力との差 サウジアラビア 10,142 10,406 9,954 10,502 10,639 11,016 10,058 12,040 1,024 イラン 2,838 3,515 3,813 3,451 3,333 2,954 3,797 3,850 896 イラク 3,935 4,392 4,446 4,657 4,654 4,631 4,351 4,880 249 UAE 2,898 2,979 2,915 3,018 3,175 3,246 2,874 3,350 104 クウェート 2,771 2,853 2,708 2,795 2,764 2,809 2,707 2,920 111 カタール 666 656 607 595 612 615 618 620 5 アンゴラ 1,753 1,718 1,637 1,512 1,518 1,521 1,673 1,580 59 アルジェリア 1,106 1,090 1,043 1,057 1,057 1,052 1,039 1,080 28 エクアドル 544 545 530 528 523 525 522 540 15 ガボン 220 221 200 184 187 176 193 190 14 コンゴ 216 252 322 322 320 340 20 赤道ギニア 185 160 133 123 124 125 130 130 5 ベネズエラ 2,367 2,154 1,911 1,218 1,189 1,137 1,972 1,260 123 上記合計 29,425 30,905 30,149 29,962 30,097 30,127 29,934 32,780 2,653 ナイジェリア 1,861 1,556 1,658 1,746 1,765 1,736 1,720 -16 リビア 405 390 817 1,054 1,115 1,104 1,070 -34 OPEC原油合計 31,691 32,851 32,624 32,761 32,976 32,965 35,570 2,605  (注)コンゴは2018年6月よりOPEC加盟。2018年末までの減産ではリビアおよびナイジェリアは減産義務を負 わず。 (資料)生産量は OPEC 資料より。供給能力は OECDIEA“OilMarketReport,November,2018”より 表4 OPEC の石油生産状況(2015年以降2018年5月まで)(単位:千バレル/日)

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いる以上,代替は容易には進まない。割高な電気自動車は,補助金制度がないと先進国で も導入は難しいのが現状である。まして,発展途上国での導入はゆっくりとしか進まない。  世界の石油消費量は,今後も増大して,2030年以降に漸くピークを打つと予測される。  石油に関する消費量の増大傾向が続くという点は,より環境負荷が大きい石炭消費量の 近年の動向を見ることでも推測することができる。  例えば,石炭消費量の抑制を図るとした中国は,2014年から2016年の間は石炭消費量 を減少させたものの,2017年,2018年と石炭消費量を増大させており,電力消費量の増 大をカバーするためには,石炭消費量の増大による石炭火力の増設以外に手はないという 状況がある。  インドネシアを始めとした東南アジア諸国,韓国,インドなど,石炭消費量の増大が生 じている国は世界の中に多くある。もちろんエネルギー消費量が増大しているこれらの諸 国では,石油消費量の増大も続いている。  このように実際に生じていることを分析していくと,石油消費量の減少が将来的に生じ るまでには多くの時間がかかり,石油を代替しようとすると,新しいシステムはコストも 高いことが計算できる。  毎日1億バレル(1バレルは159リットル,ドラム缶の8分目)といった大量の石油を 消費し,流通するシステムが世界的にすでに整備されている中,この石油流通インフラを 不要とするほどの競争力がある新システムが出現するまでには,多大の時間が必要となる のは当然である。  それでは,将来の石油供給に関する展望を考える際に,キーとなる情報はどこにあるの 図2 世界のエネルギー消費量の推移(単位:石油換算百万トン) (資料)BP 統計2018より作成

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だろうか。  石油需要が着実に増大してきた点は,図2で示したように明らかであり,短期的に見て も,2018年,2019年と着実に石油消費量が増大すると予測できる点も表2で確認した通 りである。  問題となるのは,表3で示した石油供給側の数値であり,特に米国のタイトオイル(シ ェールオイル)の生産量がどのように推移するか次第で,OPECなどの世界の石油供給の 担い手に求められる石油生産量が異なってくると考えられる点である。  図3は,米国の石油生産量の実績と予測を2000年から2050年まで示す米国エネルギー 省作成の数値であるが,7通りもの多様な可能性が示されている。  米国では政府が見通しを作成する場合に,市場の状況,技術進歩次第で,何通りもの可 能性があり,コスト競争が行われて市場で勝ったケースが最終的に選択されてくるという 「市場の選択に任せる方針」が徹底している。  したがって,OPECが適度な価格を維持しながら,市場シェアを確保したいと希望して も,米国からは,「すべては市場が決定するのだ」との返答が返ってくることになる。  図3では,米国の今後の石油生産量としては,石油とガスが技術的・経済的に生産可能 となる際に,埋蔵量がどの程度であると見積もられるか次第で,実際の生産量が全く異な ってくるとの予測が発表されている。米国の天然ガス生産量は,今後も着実に増大すると 予測されており,天然ガスと一緒に生産される天然ガス液(NGL)もさらに増大すると予 測されている。それに加わるタイトオイル(シェールオイル)の生産量は,技術進歩と石 図3 米国の石油生産量(NGL:天然ガス液を含む)の実績と予測(2000年から2050年)    (単位:百万バレル/日) (資料)米国エネルギー省エネルギー情報局(DOEEIA)(2018)より作成

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油価格の動向に依存する。  今後も,OPECが減産を継続して世界の石油市場の需給が引き締まるのであれば,石油 価格を高止まりさせることが可能となる。しかし,その場合には米国でのタイトオイル(シ ェールオイル)の生産量が増大する可能性が高まり,現状の2倍以上,2,500万バレルを 2050年に超えるほどの生産もあり得るとの将来予測が出されている。  図3が示す,石油価格が現状と同じ40ドル/バレル台といったレベルに止まるとしても, 当面は米国では石油増産が予測されるという点は重要である。OPECは2021年か2022年 頃までは,ひたすら減産の継続を求められるポジションが続くことが予想される。  次に,図4で米国の石油生産量(NGLを除く)の予測を3ケース別に見ると,左の基本 ケースでは横ばい,中央の石油とガスの埋蔵量と技術が低位停滞のケースでは減少,右側 の石油とガスの埋蔵量と技術が高度化するケースでは大幅な生産量の増大が生じると予測 される。この図4の数値に,天然ガス生産時にガスから分離されて生産される NGL の生 産量が付加される。  こうして世界の供給量は,米国の生産動向に決定的な影響を受けて変動することとなる。 中東の産油国は,この米国の動向に翻弄されながら,しかも,需給調整役を今後も担わさ れざるを得ない。需給調整役をOPECが放棄すれば,価格は低位に止まり,かつ米国の経 済状況次第で乱高下するケースも生じるに違いない。中東産油国のように,国家の収入を 石油輸出に依存している国にとっては,自国の石油生産量が米国のマーケットの状況次第 で翻弄されることは,望ましいものではない。米国に配慮を要請したとしても,米国から は市場が選択して決めた結果であり,その状態を受け入れないことはフェアでない,公正 な取引をすべきと言われることになる。 図4 米国の石油生産量(NGLを含まず)の実績と予測(2000年から2050年)    (単位:百万バレル/日) (資料)図3と同じ

(11)

 世界では,日本および欧州の一部諸国で石油離れを促進させる動きが顕著に進んでいる が,その他の世界では,石炭の消費量を「増大」させる動きが明らかにあり,まして石油 の消費量は(もちろん)増大している状況がある。  当面,2030年あるいはさらに2035年までこうした状況が続いていくとすると,それで はその間どのような政策が採られるべきか,さらに,石油消費量がピークを打つ状況が出 てきたときに,どのような政策が中東諸国で採られるべきかに関して,予測数値を用いな がら,様々なケースにつき議論を重ねていく必要が生じている。  日本においても,世界のエネルギー消費の動向を踏まえつつ,国内の再生可能エネルギー の導入可能性を考えていく必要があり,その際には自国の産業競争力,中東産油国との関 係の維持も重要な視点となる。自国のCO2排出量の削減が何よりも優先し,世界各国はそ れぞれ自国でエネルギー政策を考えればそれで良しとしてしまうのではなく,エネルギー の対外依存度がたいへん高い日本としての立場からの主張を行いつつ,世界全体のエネル ギー供給に関して,望ましい方向性のあり方と,そのための各国の採るべき施策につき議 論を行っていく姿勢が重要であると考えられる。 *本稿の内容は執筆者の個人的見解であり,中東協力センターとしての見解でないことをお断りします。

参照

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