香川生物(KagawaSeibulsu)(33):13−14,2006
香川県におけるアライグマの野生化
川 口
〒769−2102 香川県さぬき市鴨庄994−6
InvasionoftheraccoonintoKagawaprefecture,Japan
SatoshiKawaguchi,タタイー6.ぬ/〃0∫ゐq∫α〝以たf乃クー2ノ0之J‘甲α〝
の媒介が危惧されており,速やかな駆除を必
要としている(哺乳類保護管理専門委員会,
1999)。
これまで四国におけるアライグマの野生化
は確認されていなかったが,香川県では,
1995年からアライグマ保護の記事が新聞に掲
載されることが多くなり,著者もアライグマ
の死体を拾得したので報告する。
食肉目アライグマ斜に属するアライグマ
アm叩0〝/0わ「は,北米から中米にかけて自然分
布し,フランス,ドイツ,旧ソ連に人為的に
導入されている(Wilson and Reeder,1993)。
日本でも,北海道と本州において野生化が確
認され(阿部ほか,2005),本種による農水産
業被害の増加,捕食・競合・病原体の感染に
よる在来種の減少,および人猷共通感染症へ
図1.さぬき市鴨庄で拾得されたアライグマの死体.
右前足にハサミ罠でつぶされたような圧迫痕がある.
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OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
聞,2004)。
(4)2005年11月14日,発かがわ市松原の民
家の車庫で生後1,2年ほどのアライグマが
2頭保護された(四国新聞,2005)。
一卜般に保護または拾得されたアライグマが
ペットであったものか,それとも自然繁殖し
たものかを判定することは難しい。しかし,
管理下にないアライグマの幼獣が発見されて
いることから(四国新聞,2001),香川県でも
すでに自然繁殖して−いると考えられる。今後
アライグマの増加に伴い,保護や死体の採集
例も増えると予想される。
引用文献
阿部 永・石井信夫・伊藤徹魯・金子之史・
前田喜四雄・三.浦慎憶・米田政明、2005.
日本の晴乳輯[改訂版].東海大学出版会,
東京.
哺乳類保護管理専門委員会.1999l移入晴乳
類への緊急対策に閲す−る大会決議り 哺乳類
科学39:115−129.
四国新聞.1995自由隠.1995年10月17日付
け記事.
四国新聞.2001.アライグマの赤ちゃん保
護.2001年4月4日付け記事(
四国新聞.2004.珍客!?アライグマ来訪.
2004年10月13日付け記事.
四国新聞.2005lアライグマ2匹東かがわで
掃獲.2005年11月17日付け記事…
Wilson,D.Eand D.M”Reeder(Eds.),.1993。
Mammalspeciesoftheworld:ataxonomicand
geogr・aPhicrefbrence−2ndedhSmithsonianIn−
StitutionPress,WashingtonandLondon.
2005年11月4日,さぬき市鴨庄大串の路上
(北緯340 21′11”,東経134012′ 51”,標高
60m,3次メッシュコ・−ド5134−4127)でアラ
イグマの死体を拾得した。頭胴長548mm,尾長
242mm,後足長120mm,耳長63mm,体重5.1kgの
雄であった(図1)。
ロと肛門に多数のウジが認められたので,
死後数日が経過しているものと推測される。
右前足にハサミ罠でつぶされたような圧迫跡
がある以外に,目立った外傷はなかった。ま
た,胸腔内と腹腔内に出血は認められず,右
前足以外の骨折も認められなかった。した
がって,死因は交通事故によるものではな
く,罠にかかって衰弱死したものをだれかが
路上に遺棄した可能性がある。
歯はすべて永久歯であったが,犬歯4本の
歯根が完成していなかったので,亜成体と考
えられる。また,精巣上体からは成熟した精
子が検出されず,非繁殖状態であった。
過去約10年間の四国新聞を調べた結果,ア
ライグマの保護に関する記事を4件見つける
ことができた.ので,その要約を以下に記す。
(1)1995年10月14日,高松市内のス・−パー
の従業員専用門近くで,体長約80cm,体長約
5kgの1歳半から2歳になる雌のアライグマ
が1頭保護された(四国新聞,1995)。
(2)大内町中筋の与田寺境内にある焔魔堂
の天井裏で,体長14cm,体重50gの生後10日
あまりと見られるアライグマの幼獣(性別は
不明)が1頭保護された(四国新聞,2001)。
(3)2004年10月11日,多度津町の桃陵公園
束部にある民家で,体長約60cm,体重約4kg
の雄のアライグマが1頭保護された(四国新
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