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これからの教育の在り方、特に義務教育や無償教育にかかる論点
(論点1)少子高齢化・グローバル化が進む中、将来を見据え、教育はどうあるべきか。 特に、子供の発達の変化等も踏まえ、義務教育の在り方やその期間、無償教 育の期間は、どうあるべきか。 ① 幼児期の教育の在り方(略) ② 高校教育の在り方 (義務教育化について) ○ 意義、効果について、どう考えるか。 ・ 諸外国では、高校中退の抑止や就職のための準備期間の確保等の観点から、義 務教育修了年齢を引き上げる動きがある ○ 専門教育や職業教育を行うなど高校の多様化や、入学者選抜等との関 係について、どう考えるか。 (無償化について) ○ 経済状況にかかわらず、意欲、能力のある全ての者が高校教育を受け られるよう支援する意義、効果について、どう考えるか。学校段階の区切りにかかる論点
(論点2)論点1における義務教育や無償教育の期間を踏まえ、新たな学校段階の区切 りは、どうあるべきか。 ○ 学校段階間の円滑な移行について、どう考えるか。 ・ 幼稚園と小学校、小学校と中学校の間などの子供、教師の交流・連携 ・ 小学校高学年からの専科教員指導など指導形態の連携 等 ○ 小中一貫校の制度化など一貫教育について、どう考えるか。 ・ 小中一貫教育を制度化する意義、効果(円滑な移行、教育課程の区分の柔軟化、 既に制度化されている中高一貫教育との関係) ・ 小中高一貫教育の意義、効果 等 ○ 高校の位置付け、年限等について、どう考えるか。 ・ 学科(普通科、専門学科、総合学科)、卒業後の進路などの多様性との関係 ・ 大学との接続の在り方(大学への飛び入学、高校の早期卒業の制度化) 等 ○ 学校段階の区切りの変更について、どう考えるか。 ・ 義務教育、無償教育の期間との関係 ・ 区切りの変更の意義、効果 等 資料12 ≪これまでの会議における主な意見≫ (論点1)これからの教育の在り方、特に義務教育や無償教育にかかる論点 (高校教育にかかわる意見) ○高校教育を受ける期間は、社会人になるための助走期間であり、知の向上に加え、社 会的ルールを守る意味と責任を理解させる規範意識の育成が重要。この間に、夢を持 ち、自らの理想を実現していく具体的な決意や気構えとして、志に高めていくことが 必要。 ○高校教育では、教育内容で大学教育との連続性をもたせ、大学教育を受ける上で必要 な基礎知識を高校教育で取得することが重要。専門に特化しない幅広い内容を学習し、 豊かな教養を習得することを基本とすべき。 ○14,15歳の段階から多様な進路選択ができることが重要ではないか。東京都にお ける都立高校の多様化の取組は参考になる。 ○職業訓練も含め 18 歳までの義務教育化も考えられるのではないか。多様な価値観で個 人がそれぞれの能力を発揮できるよう、画一的な教育から脱却することが重要。 ≪これまでの提言における主な内容 ~高校教育の在り方~≫ ○高校教育においては、生涯にわたって学習する基盤が培われるよう、義務教育の基 礎の上に、主体的に学ぶ習慣と文系・理系を問わない幅広い教養を身に付けさせ、 その上で、一人一人の個性の伸長を図りつつ、一定の専門的な知識等を習得させる とともに、社会の発展に寄与する志や責任感を養うことが求められる。(第四次提 言) ○生徒の多様な状況や学習ニーズに対応して、例えば、次のような高校教育の特色化 を進めるとともに、体験活動を充実し、能力や意欲に応じて様々な進路に挑戦でき るようにする必要がある。(第四次提言) ・グローバル・リーダーとなるための国際的素養と総合力を育成する学校 ・科学技術人材としての素養の育成を目指し、先進的な理数系教育を行う学校 ・産業構造の変化等に対応した専門的な知識・技能を育成する学校 ・学び直しへの支援、考える力の育成、学習意欲の喚起を図る学校 ・進路への自覚を深めさせるため、多様な科目選択や就業体験等を行う学校
3 (論点2)学校段階の区切りにかかる論点 (学校段階間の円滑な移行にかかわる意見) ○義務教育を考える場合、小1プロブレムや中1ギャップなど、学校間の段差をできる 限り少なくすることが求められる。そうしないと、区切りを変えるだけでは、ギャッ プが生じる時期が変わるだけで、問題は解決しないのではないか。 ○学校現場では課題が山積しているが、区切りを見直すことで解決できるのか、現行制 度の運用面で解消できるのかを見極めることが重要。例えば、中1ギャップのような 校種間の区切りの問題は、どのように区切っても出てくる可能性があるのではないか。 ○不登校が増えるのは中学 1 年である。いろいろな小学校から集まって中学校に入学し、 新しい環境になる。区切りそのものよりも、小学校の5、6年のときに、中学校と連 携を図って、いろいろな子供たちが互いにかかわるような準備期間をとるような仕組 みにする方が大事ではないか。 (一貫教育にかかわる意見) ○小中一貫教育や中高一貫教育に取り組むことにより、社会性が身に付き、学力が向上 するなどの成果がある。地域の特性に応じた教育を進めることで児童生徒の地域への 愛着や、保護者・地域の理解も深まるなどの効果もある。まずは、現行制度の弾力的 運用の効果を検証すべき。現行制度でできないことがあれば、学制改革を検討すると いう二段階の議論が必要。 ○発達の移行期が学校の区切りに重なっている。その段階にもっと少人数指導を導入し、 5歳から13歳位までを一貫して考えることもできるのではないか。 (高校の位置付け、年限等にかかわる意見) ○高校は、16~18 歳までだが、優れた人材を活用するという意味では、18 歳まで高校に とどめて、その後に大学ということではなく、大学に早期入学するような措置も考え る必要があるのではないか。 ○高校の達成度に達している生徒には、早期に大学入学資格を与え、卒業できるシステ ムに変えていくのがよいのではないか。諸外国では、非常に優秀な者を早期に高等教 育に受け入れるシステムが実際に行われている国がある。 ○子供の伸びている能力を更に高める上で、例えば、高校時代に大学の指導に触れる機 会があることがよい。 (学校段階の区切りにかかわる意見) ○昭和46年の中央教育審議会答申以降の学制に関する改革について、成果と課題を十 分に踏まえる必要がある。検証の結果、学制の見直しが必要であれば、その根拠につ いて、国民の理解や支持を得る必要がある。
4 ○知・徳・体のバランスの取れた育成といった観点から、どのような区分が望ましいの かを考えていくことが必要。小学校1年生や高学年の児童の状況を踏まえると、義務 教育や中等教育の開始時期は今のままでよいか検討する必要がある。 ○アメリカは、かつて主流であった6-3-3制から、現在は4-4-4制等が増えて いる傾向がある。東京都も小中高一貫教育で4-4-4という区切りを検討している が、試験的な取組をスピードアップして、良いものは積極的に取り入れていくことも 考えられるのではないか。 ○授業理解度の低下、学校が楽しいと感じられないなどの内面的な課題の増加とともに、 暴力行為、いじめの認知件数、不登校者数が中学校1年生において大幅に増える実態 を解消するため、小中一貫による8-1制(8年間の区分は柔軟に考え、最後の1年 間は学習点検と再指導、キャリア教育の充実のための期間)が望ましいのではないか。 ≪視察、外部有識者ヒアリングにおける主な意見≫ ○思春期の子供の身長、体重の伸びの大きい時期は戦後 50~60 年の間で約 2 歳早ま り、女子の初潮年齢は昭和初期からの 80~90 年の間で約 2 歳早まっている。また、 10 歳ぐらいが子供の脳の成熟や、基礎的な能力の大きな節目である。ただ、実際に は個人差があり、おおむね中学校 1 年の終わり頃に足並みが揃う。 (学校段階間の円滑な移行にかかわる意見) ○思春期においては、子供の心のケアをしながら丁寧に指導をする必要があるが、小 学校と中学校では指導方法に大きなギャップがある。小学校の指導と中学校の指導 とのつなぎを良くすることで、学力向上や生徒指導面で配慮できるのではないか。 (一貫教育にかかわる意見) ○小中一貫制を実施する中で、子供の心と体の成長や具体的思考から抽象的思考に変 わる区切りを考慮し、4-3-2制を取り入れたところ、学力向上やいじめ、不登 校・長期欠席数の減少等の効果がみられた。 ○中高一貫教育では、6年間、生徒の育成に関わることができるため、発達段階に応 じた教育を行うことができ、生徒の進路実現にもつながっている。 ○義務教育の中で、その区切りについては、地域に委ねながら工夫することもできる のではないか。 (高校の位置付け、年限等にかかわる意見) ○高校の3年間で、文系・理系両方にわたる幅広い教養を身に付けさせ、学校行事や 部活動とも両立させて学習に取り組み、進路希望を達成させることは、確かに厳し
5 く、様々な工夫をしているが、高校時代に多少苦労しても頑張らせる経験にも意義 があると考えている。 ○高等学校は、大学入学前に十分な教養教育を行うため、4年間とすることも考えら れるのではないか。日本の高等学校の教員の質は高く、可能ではないか。 ○飛び入学者には高卒資格がないことがネックとなっている。入学後、コースが自分 に合わないと感じたときに進路変更しようとしても、他大学の入学資格が制度とし て保証されていないことが課題。柔軟に高校の卒業を認める制度にしてほしい。 (学校段階の区切りにかかわる意見) ○戦後、米国の対日教育使節団が勧告し、日本の教育刷新会議が6-3-3制を取り 入れた背景には、当時、ニューヨークを中心に、6-3-3制が最も進歩的な制度 だと受け止められていたことがある。対日教育使節団のメンバー自身が受けた教育 は8-4制等であったが、当時の最新モデルを伝えたのだと理解できる。 ○5、6歳の時期と 10~13 歳の時期に、脳や体の変化の大きい移行期がある。発達 心理学の立場からどういう区切りがベストか簡単には言えないが、小学校5年又は 6年から中学校1年又は2年の時期を、小学校か中学校のいずれかにつけたり、小 学校と中学校の中間の移行期として別に位置づけたりすることは考えられる。
6 ≪参考条文≫ ○憲法における義務教育の規定(憲法第 26 条第 2 項) すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受け させる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。 ※「普通教育」とは、全ての国民にとって共通に必要とされる一般的、基礎的な知識・技能に関する教 育であり、専門教育や職業教育と対置するものである。 ○教育基本法における義務教育の規定(教育基本法第5条) (義務教育) 第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を 受けさせる義務を負う。 2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会に おいて自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とさ れる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。 3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、 適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。 4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴 収しない。 ○学校教育法における義務教育年限の規定(学校教育法第16条) 第十六条 保護者(子に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年 後見人)をいう。以下同じ。)は、次条に定めるところにより、子に九年の普通 教育を受けさせる義務を負う。
7 ≪参考資料≫ ○高等学校学科別生徒数(平成25年度) ○高校生等の修学支援 普通科 2,398,261人 72.4% 総合学科 173,679人 5.2% 農業, 83,921人, 2.5% 工業 260,559人 7.9% 商業 209,299 人 6.3% 水産, 9,423人,0.3% 家庭, 42,777人 , 1.3% 看護, 14,831人,0.4% 情報, 3,013 人,0.1% 福祉,9,826 人,0.3% その他, 105,231人,3.2% 専門学科 738,880人 22.3% 平成 25 年度学校基本調査より ※年収は両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人(16 歳以上)、中学生1人の4人世帯の目安。 実際は[ ]で示した市町村民税所得割額(両親の合算)で判断。 ○高等学校等就学支援金制度(新制度) 平成 26 年度予算額(案) 3,868 億円(平成 25 年度予算額 3,950 億円 ) 高等学校等に在籍する生徒に対して、授業料に充てるため、高等学校等就学支援金を支給(学校設置 者が代理受領)することにより、教育費負担軽減を図る。 ※新制度は新1年生のみ対象 ◆受給資格要件として所得制限を設け、年収約 910 万円(市町村民税所得割額 304,200 円)以上の世帯の生徒については、就 学支援金を支給しないこととしている。 ◆私立高校等に通う低所得世帯の生徒については、授業料負担が大きいため、所得に応じて就学支援金を 1.5~2.5 倍した額を 上限として支給する。 ○高校生等奨学給付金 平成 26 年度予算額(案) 28 億円【新規】 授業料以外の教育費負担を軽減するため、低所得世帯の生徒に対して奨学のための給付金を創設し、 都道府県に対して所要額を交付する(1/3国庫補助)。
8 ○研究開発学校等における小中一貫教育と学年の区分(平成 25 年 4 月 1 日現在) ※上記の取組は、学校や地域の特性を活かした教科を新設することなどにより小中連携を推進するもの。 ○学年別のいじめの認知件数、不登校児童生徒数(平成 24 年度) 学年区分 合計 国立 公立 私立 6-3(従来の区分から変更なし) 34件(807校) 3件(11校) 29件(792校) 2件(4校) 4-3-2 11件(127校) 1件(2校) 9件(123校) 1件(2校) 5-4 1件(2校) - 1件(2校) -5-2-2 1件(2校) - 1件(2校) -その他 (一部の教科のみ実施、幼・高と連携等) 7件(22校) 1件(2校) 5件(18校) 1件(2校) 合計 54件(960校) 5件(15校) 45件(937校) 4件(8校) 948 1,576 2,504 3,795 5,500 6,920 21,194 33,355 36,897 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3 学年別不登校児童生徒数 15,034 18,922 21,153 21,913 21,394 19,044 29,574 21,802 12,395 7,863 5,269 3,745 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3 高1 高2 高3 学年別いじめの認知件数 (件) 平成24年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より (人)