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ヒマラヤ学誌 No フンザにおける血圧と加齢との相関に関する追跡調査 石根昌幸 高知医科大学学生 欧米 日本など多くの先進諸国では 年齢が上昇するにつれ 血圧が上昇することが知られている 我々は 第 l次カラコラム医学調査において 血圧と年齢との関連を検討した 今回は第 1次調

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ヒマラヤ学誌 No.4 1993

フンザにおける血圧と加齢との相関に関する追跡調査

石 根 昌 幸

高知医科大学学生

欧米・日本など多くの先進諸国では、年齢が上昇するにつれ、血圧が上昇することが知られている。 我々は、第 l次カラコラム医学調査において、血圧と年齢との関連を検討した。今回は第 1次調査隊 に引続き、カラコラム ・フンザ地域における、年齢・血圧相関と、高血圧の頻度を日本の場合と比較 検討した。その結果、フンザ地域付近で最も近代文明の影響を受けている近接都市Gilgitから離れる距 離に対応して、年齢と血圧の相関関係は低くなり、高血圧の頻度も低下していることが明らかになっ た。 1.はじめに 日本では平均寿命が年々伸び、ついには世界ー の長寿国となった。このことは、日本が老化につ いて真剣に考えなければならない状況に置かれ始 めていることが示されている。老化現象の一つに、 血圧が高くなることは、ごく一般的に知られてい る1)。そして、高血圧が、成人病の大きな危険因 子であるといわれている。しかし、同じ年齢の老 人でも血圧の上昇の度合により、高血圧症とそう でない人が存在する。が、その理由は何なのだろ うか?

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高血圧」は、種々の因子によって誘起き れるが、日本や欧米とは環境が異なり、長寿とい われた伝説の里フンザにおいて、継続調査を実施 した。この地域は、カラコラムの6,OOOmの山々 に囲まれた水の豊かな、また文明に余り侵されて いない、牧歌的な生活を営む地域である。ここを 調査する機会を得、現代病といわれる高血圧、そ して年齢と血圧について日本と比較検討した。

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目的

血圧の国際比較に関するこれまでの研究により 1)、多くの先進諸国では、加齢にともない血圧が 上昇することが知られており、その相関係数は、 0.6から0.7である。しかし比較的、文明との接触 が希薄であると推定されるパキスタン・カラコラ ム地域や、また、日本とは全く異なったライフス タイ jレを示すフンザ地方では、血圧と年齢との聞 にどの様な相関性があるかを明らかにすることが できれば先進社会における成人病因子のひとつに は、ひろく高血圧症をなくす重要な手掛かりが得 られると推定されることから、この事について日 本とフンザ地方とで比較検討した。

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調査地域と対象

対象地域は、パキスタン園、カラコラム山群に 位置するフンザ川沿いのAliabad、Gulmit、Passu ならびにフンザ北西の村Misgalの 4ヶ村である。 これらの村は、標高2,OOOm~3 ,OOOm に位置し、 氷河による豊かな水量を得、農業と牧畜を主体と した自給自足の生活を営んでいる。上記4ヶ村は、 Aliabad、Gulmit、Passu、Misgalの順に、この付近 では最も近代文明の影響を受ゆている近接都市 Gilgitから遠く離れる位置関係にある。 対象は、Aliabad、Gulmit、Passu、Misgalの 4ケ 村住民428名と、その他の村の住民70名、計498名 (男:女=185:262、平均年齢45.6::1:18.3才)であ る。また、地理的、生活習慣の違いを検討するた めに、単一な村の住民4グループについて比較し た。 ( 1) Aliabad: 85名(男:女=32:49、平均年齢 ヶ村の中で、最もフンザ地域 4 歳) 19.04 ::1: 47.76 の近接都市Gilgitに近く、最近では、観光客等も

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フンザにおける血圧と加働との相関に関する追跡調査(石被昌幸) 多く、文明に接触する程度も高いと思われ、バザ ーJレも大きい。 (2 ) 印 刷 :271名(男:女 =110:145、平均年 齢47::!::18.8麗)カラコラムハイウェイ沿いに位置 し、氷河により水も豊富であり、夏には果物が豊 かに実をつける。農業と牧畜が中心である。 ( 3) Passu: 50名(男:女 =20:29、平均年齢 46::!::17才)カラコラムハイウェイを更に北へ行き、 中国国境は間近である。グルミットよりもギルギ ツトより遠ざかり、文明との接触がさらに薄いが、 生活形態はGulrnitと同様である。 ( 4) Misgal: 22名(男:女 =4:0、平均年齢 44.04::!:: 17.76才)旧ソ連領との国境に近く、山々 に固まれた村で、カラコラムハイウェイより非常 に遠い。

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方法

血圧は、カフ幅12cmのタイコス血圧計を用い、 日循協の方式にしたがって安静、座位、右上腕に よる聴診法で測定した。聴診には膜型聴診器を用 い、コルトコフ音のスワン第 l点を収縮期血圧 (sistolic blo吋 pressure;SBP).第 5点をもって拡張 期血圧 (diastolicbl00d問ssure;DBP)とした。 正常血圧、境界域高血圧、高血圧の分類は、 W H O分類にしたがい、正常血圧 (SB P壬140 and DBP壬90)、境界型高血圧 (SB P : 141 ~159 andfor D B P : 91~94) 、高血圧 (S B P詮1ω組 dforD B P孟95) とした。 統計学的解析にあたっては、統計処理用コンピ ユターソフトウエア、 StatViewを用い、 Pearson の積率相関係数を求め、一次回帰分析を行った。 有意水準は、 P<0.05とした。

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.結果

年齢に関して、村別の平均年齢は、表 lに示し た。年齢に於ける各村の有意差はない。図 1に受 診者全員の収縮期血圧と年齢との相聞を示した。 R=0.381と低いながらも有意の相関関係を認めた。 図 2

3. 4、 5は、 Aliabad、Gulmit、Passu、 Misgalの各村別における収縮期血圧と年齢の相闘 を示している。 Gulmitでは、 R=0.383で有意の相 関関係をを認めた。Aliabadでも同様に、 R=O.381 で有意の相関関係を認めた。 PassuではR=0.29と 小さいがやはり有意の相関関係を認めたがMisgal では R=0.21で有意差はなかった。図 6は、全受 診者における正常値血圧者、境界域高血圧、高血 圧者の割合を、図 7は日本における同様の割合を 棒グラフに示したり。日本と比較して、フンザ地 域住民の方が、境界域高血圧者がやや少なく、高 血圧者は日本の約半分と少なかった。図 8は、日 本における男女別各年齢群における境界域高血 圧、高血圧者の割合を棒グラフに示したものであ る3)。男女とも 70才台以上がひとまとめになって はいるが、高血圧の割合は年齢とともに増加して いる。図 9は、日本(図 8) との比較の元に、フ ンザ地域住民男女別各年齢群における境界域高血 圧、高血圧者の割合を棒グラフに示したものであ る。男性は70才台までは年齢と共に高血圧者の割 合は増加したが80才台以上は減少した。女性も同 様に、 60才台までは年齢と共に高血圧者の割合は 増加したが70、80才台は減少した。図 10は、 A1iabad、Gulmit、Passu、Misgalの 4ヶ村におけ る村別の高血圧、境界域高血圧者の割合を示した。 近接都市としては最も近いGilgitから距離的に離 れるにつれて、高血圧の割合は、減少する傾向が あった。図 11は、フンザ地域住民における年齢階 層別の収縮期血圧と拡張期血圧を示した。年齢が 上昇するにつれて、血圧も上昇したが、 80才台が、 70才台や90才台よりも低い血圧を示した。また、 表 lは、村別の平均年齢、収縮期血圧、拡張期血 圧の平均値を示した。

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考察 一部の地域を除いて、一般的に血圧は年齢と共 に上昇することが知られている 1)。日本、欧米諸 国では、食塩の摂取が、高血圧を引き起こす要因 であるといわれている。しかし、フンザ地域にお ける住民は、豊富な岩塩を「チャイ j と呼ばれる ミルクティーに入れ、日常的に塩分摂取している。 よって、塩分摂取量では日本より少ないとは言い がたいと考えられる。しかし、フンザ地域住民の 血圧分布は、日本と比べて高血圧の割合は明らか に低い。高血圧の原因は、日本とフンザとの動物 性蛋白の摂取量などの食文化の違いや運動習慣な どの影響も考えられ、食塩という一つの物差しだ けで考えるのには無理があるだろう。しかし、こ - 31

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とフンザ地域の中 心都市

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から遠く離れるにつれて減少してい ることがわかる。今回の調査結果からも、第一次 隊の野田の報告2)と同様に、文明度が低下するに つれて血圧と年齢の相関関係が低下していくこと が示された。これは、生活の中でマンパワーに依 存する度合が増えるため運動量の増加が大きく起 因している可能性が最も考えられる。 さまざまな要因が関連する血圧と加齢との問題 図 1

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No.41~聖書3 は、塩分摂取や運動のみならず、微量元素や摂取 脂肪酸の影響なども考えられ、今後に残された課 題であろう。

文献

1)松林公蔵(1991) 高地住民における加齢と血圧、ヒ マラヤ学誌2 :151-162 2)野田智子、松林公蔵(1992) フンザ4ヶ村における 血圧・年齢相関の比較、ヒマラヤ学誌3 :88-90 3)村谷博美他(1992) 日本人の高血圧、内科 70:811-816. 図2

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-フンザにおける血圧と加紛との相関に関する追跡調査(石根昌幸) 図6 正常者、境界域高血圧、高血圧者の割合 100 (%) (フンザ、 n=498人) 図

7

正常者、境界域高血圧、高血圧者の割合 100~ (日本、 n =2724人) 80 69.7% 60

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ヒマラヤ学誌 No.41993 図10 村別の高血圧、境界域高血圧者の割合 100 (~)

Gulmit Aliabad Passu M陥gar 高血庄の割合 10.0% 16.0 % 8.0% 9.0% {埠界型を宮む) (29.0%) (44.0%) (34.0%) (31.8%) 図11 フンザ住民における年齢階層別の血圧 160 (mmHg)

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100 DBP 80 60 10-19 20-29 3日-39 40-49 50-59 60-69 70・79 80-89 90-99 (years) (n)(9) (92) (92) (1岨) (73) (64) (28) (21) (10) Age 表 1 Gulmit Aliabad Passu Misgar ANOVA N=271 N=85 N=50 N=22 Age 47土18 47土19 46::1::17 44::1::17 NS ー・ー“ 喝s

S B P (mmHg) 122::1::20 130土21 123土23 118::1::16 P<0.01 * N.P DBP(削指) 78::1::12 8l::1::14 76土14 82::1::9 P<0.05 SBP:SystolicBlood Pressure, DBP:Diastolic BloodPressure *:P<0.05, **:P<O.Ol, 料 率:P<0.001

参照

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