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九州大学学術情報リポジトリ Kyushu University Institutional Repository 暖地型マメ科牧草ファジービーン (Macroptilium lathyroides(l.)urb.) のサイレージ利用に関する研究 伊村, 嘉美九州大学農学研究科畜産学専攻 https:

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

暖地型マメ科牧草ファジービーン(Macroptilium

lathyroides(L.)Urb.)のサイレージ利用に関する研

伊村, 嘉美

九州大学農学研究科畜産学専攻

https://doi.org/10.11501/3163939

出版情報:Kyushu University, 1999, 博士(農学), 課程博士

バージョン:published

権利関係:

(2)
(3)

暖地型マメ科牧草ファジービーン(Macropt泊・ωn lathyroides

(L.) Urb.)のサイレージ利用に関する研究

伊 村 嘉 美

1999

(4)

日次

第1章 緒論

1

第l節 暖地型イネ科牧草サイレージの飼料価値

1

第2節 暖地型牧草サイレージの飼料価値改善

3

第3節 ファジービーンに関するこれまでの研究

6

第4節 本研究の方向

7

第2章 ファジービーン単播草サイレージの発酵品質

10

第1節 ファジービーンの生育にともなう成分組成とサイレージ

10

発酵品質の変化ーギニアグラスサイレージとの比較一

第2節 摘要

23

第3章 ファジービーン混播あるいは混合サイレージの発酵品質

24

第l節 暖地型イネ科牧草に対するファジービーンの混播が

発酵品質に及ぼす影響

第2節 ファジービーンの混合がサイレージ貯蔵中の窒素化合物

の分解に及ぼす影響

24

34

(5)

第3節 摘要

56

第4章

ファジービーンサイレージにおける有機酸生成

58

第1節

ファジービーンと数種暖地型牧草との炭水化物組成の比較

58

第2節 サイレージ貯蔵中における水溶性炭水化物および、

有機酸組成の推移ーサイラトロサイレージとの比較-

70

第3節 摘要

95

第5章 総合考察および結論

97

第1節 サイレージ原料草としての成分含量の特徴

99

第2節

ファジービーンの栄養価

102

第3節

ファジービーンサイレージの発酵

103

第6章 要約

111

謝辞

116

引用文献

117

11

(6)

第1章

緒論

第1節

暖地型イネ科牧草サイレージの飼料価値

反努家畜の飼料として用いられる青刈作物や牧草等の飼料作物の生産

性は,

環境条件(気温,

降雨,

日射,

土壌の肥沃度等)の影響を大きく

受ける. そのた め

飼料作物の 生産量は年間を通じて一定とならず, 家

畜飼料の飼料作物依存量をその 生産量に合わせて変動させない限り, 飼

料供給量と家畜 の要求量との聞に過不足が生じる. この様な需要と供給

との不均衡を調整し, 家畜の生産性を維持する手段の一つが, 貯蔵飼料

の利用である.

牧草の貯蔵は ,

主に,

乾草およびサイレージの形態で行われている.

サイレージ貯蔵は, 乾草貯蔵と比較して, 天候に左右されず,

栄養収量

が高い時期に牧 草を収穫できる 利点がある. 近年,

ヨーロッパや北アメ

リカ等の寒地型牧草の栽培に適した国々ではサイレージ生産量が増加し,

乾草生産量を上回るようになった(McDonald

et

81.,1991) . 一方3

暖地

型牧草が 栽培される熱帯や亜熱 帯の国 々においては, サイレー ジ はほと

んど利用されていない(Humphreys, 1991) . しかしながら, このよう

な地域においても, 飼料価値の高いサイレージ の生産 ・ 利用を高めるこ

とにより 家 畜生産性を改善するこ とが可能で ある と考えられてい る

(Wilkinson, 1983b) .

11A

(7)

サイレージ の 飼料価値は, 基本的には原料草 の栄養価によ って決まる

と言えるが,

サ イレージ 貯蔵による発酵品質に も依存し , 発酵 品質の劣

るサイレージは貯蔵中の飼料価値の低下が大きい(M cDo n a ld

e t

al.,

1995) .

このサ イレージ 貯 蔵中における飼料価 値の低下は,

主に, 窒素

化合物の 分解と水溶性炭水化物 の発酵にともなうものであり,

窒素化合

物の分解産物であるアミン類は家畜に対して毒性を示し採食量を減少さ

せる. 水溶性炭水化物を基質として乳酸以外の有機酸を生成する発酵経

路にお いては乾物損失が大きく,

生成した有機酸のpH 低下力は乳酸より

弱い(McDonald

et

a1., 1991) . これらのことから,

サイレージ発酵品質

の指標として全窒素に占めるアンモニアやアミン類等の揮発性塩基態窒

素の含有比率(揮発性塩基態 窒素比率 )や総酸に占める 乳 酸含有 比率

(乳酸比率)が用いられる.

暖地型牧草は, 寒地型牧草より飼料価値が低いとされている( Minson,

1990) . また ,

一般に暖地型牧草のサイレージ 発酵品質は寒地型牧草に

劣り, 揮発性塩基態窒素比率は高く,

乳酸比率が低いと されて いる.

のため,

暖地型 牧草をサイレー ジ調製すると

飼料価値は貯蔵 中にさら

に低下する. 以上の理由から

暖地型牧草サイレージは, 寒地型牧草サ

イレージより飼料価値が劣 るとされており(Catchpoole

and Henzell ,

1971 ; Wilkinson, 1983a) ,

この飼料価値の低さが暖地型牧草サイレージ

利用上の問題点のーっと考えられる. したがって,

暖地型牧草サイレー

(8)

ジの飼料価値の改善 は, 原料草の飼料価値 およびその発酵品質の両面か

ら検討すべきであると考えられる.

第2節

暖地型牧草サイレージの飼料価値改善

(1 )マメ科牧草との混播による暖地型イネ 科牧草の飼料価値改善

一般に暖地型イネ科牧草はC4植物 , 寒地型イネ科牧草はC3植物に属す

る. 暖地型イネ科牧草は寒地型イネ科牧草より乾物生産速度, 窒素や水

分の利用効率は高いが(Brown, 1978 ; Downes, 1969 ; Hofstra and

Hesketh, 1969 ; Stout

et

a1., 1988) , 蛋白質およびミネラル含量, 消化

率および噌好性等の牧草として重要な飼料価値に関しては寒地型イネ科

牧草より劣るとされている(Minson and M cLeod, 1970 ; Minson,

1990) . このような暖地型イネ科牧草の飼料価値改善方法として, 様々

なマメ科植物との混播・混作が古くから行われてお り(D'M e l l o

a n d

Deverndra, 1995 ; Humphreys, 1991 ; Mannetje and Jones, 1992 ;

Whiteman, 1980) , 近年においても様々な暖地型草種が試験され, 乾物

収量や蛋白質収量が改善されること(Adjei,

1995

; Enenwa and

Aken'ova, 1998 ; Enenwa

et

a1., 1996 ; Gilbert

et

al., 1992 ; Ibrahim and

Mannetje, 1998 ; Larbi

et

a1., 1995 ; Shehu and Akinola, 1995)並びに家

畜生産性が改善されること(Balogun and Otchere, 1995 ; Brown

et

a1.,

(9)

1991 ; Gebrehiwot and McGraw, 1997 ; Hernandez

et

a1., 1995 ;

Mannetje, 1997 ; Muinga

et

a1., 1992 ; Mullen and Macfarlane, 1998 ;

Partridge and Wright, 1992 ; Shelton

et

a1., 1991 ; Teitzel, 1992)が数多

く報告されている.

以上に挙げたように

マメ科植物の導入により暖地型イネ科 牧草の飼

料価値は改善される. しかし,

イネ科とマメ科 の混播原料草あるいは両

者を混合してサ イレージ 調製し た場合に マメ科植物の発酵品質に対する

効果は認められ ていない. すな わち

マメ科牧 草は一般に乾物率と発酵

基質含量が少な く

一方で,

緩衝能が高いため にサイレージ発酵品質が

劣るとされている(McDonald

et

a1., 1991)

. 内田 ・ 北村(

1987)は,

暖地型イネ科牧 草と暖地型マメ科牧草とを混合したサイレージ の調製実

験を行い, イネ科牧草に 混合するマメ科牧草の割合が高く なる のにとも

ない混合飼料の栄養成分は改善 される が発酵品 質は低下すると報告して

いる.

(2 )発酵品質の改善

一般に, サイレージの発酵品質を改善するために, 原料草に対する予

乾, 発酵基質源の添加,

乳酸菌の接種, 酸類の 添加, 細胞壁分解酵素類

の添加,

吸湿材の添加等が行われている(Bolsen

et

a1., 1996 ; Flores,

1991 ; Henderson, 1993 ; McDonald

et a1., 1991 ;須藤,1971). 暖地型イ

ネ科牧草サイレージについても

予乾 (Miller

et

a1., 1967 ; Yokota

et

a1.,

(10)

1995)や添加物の利用(Catchpoole, 1965 ; Davies, 1963 ; IGm and

Uchida, 1990, 1991 ;小林ら, 1980, 1987 ;山野ら, 1987 ; Yokota et a1.,

1995)により発酵品質は改 善されることが報告されている. マメ科牧 草

との混播草についても, Tjandraatmadia et a1. (1993a, b)は, 糖蜜を添

加することによ り発酵品質を低下させることな く飼料価値を改善できる

ことを報 告している.

(3 )高発酵品質マメ科牧草の利用

世界中で最も一般的にサイレージ用に栽培さ れている 飼料作物はトウ

モロコシ(Zea mays L.)であり, 発酵基質含量が多く発酵品質に優れて

いる が,

暖地型イネ科牧草と同様に蛋白質含量 の少なさが問題とされて

いる(McDonald et a1., 1991) . この欠点を補う目的で暖地型マメ科牧草

が導入され, 高発酵品質 ・高飼料価値のサイレージが生産できることは

報告されている(永西ら 1991. 1996b : Tarawali. 1991 : Titterton and

Maasdorp, 1997) . この場合, トウモロコシの蛋白質含量の少なさをマ

メ科牧草 が補い , マメ科牧草の発酵品質の低 さをトウモロコシ の発酵基

質含量の多さが 改善することにより, 飼料価値 の高いサイレージが生産

されたこ とになる. 暖地型イネ科牧草の 飼料価 値改善に発酵品質に優れ

た新たなマメ科牧草が利 用できるとす れば

次のような発想が可能であ

る. すなわち,

低発酵品質である暖地型イネ科 牧草に高発酵品質のマメ

科牧草を混合す ることにより

発酵品質の改善 された高 飼料価値のサイ

-

5

(11)

-レージを生産でき ること が

トウモロコシで観察されたと同様に期待で

きる.

前述のように

一般にマメ科牧草は良質のサ イレージ調製が困難であ

るとされているが, いくつかの例外がある. Catchpoole (1970)は , 暖

地型マメ科牧草ロトノニス(

Lotononis bainesii

cv. Miles lotononis)が添

加物なし に良好な発酵品質を示す例を報告した. また,

ファジービーン

(Macroptilium lathyroides (L.)

Urb.)はサイレージ発酵品質が良好であ

ることが紹介されている(Skerman

et

a1., 1988) . これらの草種を暖地

型イネ科牧草に混合することによ りp 暖地型イ ネ科牧草サイレージの問

題点である原料草の飼料価値とサイレージの発酵品質を同時に改善する

可能性が あると考えられる. そこで, これらの 高発酵品質を示すマメ科

牧草のうち,

我が国への導入が有望視されているファジー ビーンについ

て,

その特徴を次節でとりあげる.

第3節

ファジービーン に関するこれま での研究

ファジービーンは熱帯アメリカ原産の短年生の直立型 マメ科草本であ

り,

0.5'"'-' 1.0mの草高に生育する(Skerman

et al.,

1988) . 土壌条件に

よっては永続性(Aiken

et a1.,

1991a)や生産性(Clem and Hall, 1994)

に問題があるという報告もあるが

酸性土壌に対する耐性(Andrewand

(12)

-Hegarty, 1969 ; Andrew

et

a1., 1973 ; Hutton and Andrew, 1978 ;

Murphy

et

a1., 1984)や耐湿性(川本ら, 1991a ; Ross and Cameron, 1991

;

Whiteman etal., 1984)に優れる暖地型マメ科牧草であるとされている.

牧草としての利用に関する研究では

乾物 収量, 蛋白質収 量(Jones

and Rees, 1997 ;川本ら, 1991b ; Keating and Mott, 1987 ; Muldoon, 1985

・ Thro and Shock, 1987)およびミネラル含量(Andrew and Robins,

1969a, b ; Andrew

et

a1., 1973 ; Muldoon, 1985)が比較的多いことが報告

されている. このようなファジービーンを暖地 型イネ科牧草と混播する

ことにより, 乾物収量および蛋白質収量が 増加すること(Dwivedi

e t

a1.,

1991 ;川本ら, 1985)

コムギ(Triticum aestivum L.)やソルガム

(Sorghum bicolor

Moench)との輪作体系へ導入した場合, 雑草の侵入

を抑え, 同伴作物の窒素栄養に貢献すること(Muldoon, 1984) , 牧養力

が増加すること(Aiken

et

a1., 1991b ; Pitman

et

a1., 1992) 夏季に高温

な地域ではその時期に収量が落ちる寒地型マメ科牧草に代わる利用が有

望であること(Brink and Fairbrother, 1988)などが報告されている.

第4節

本研究の方向

前節で述べたよう に ファジービーンの生育特性や飼料価値について

は多くの報告がなされているが, サイレージ利 用についてはほとんど報

(13)

-7-告されていない(Skerman et

a1.,

1988) . したがって,

まず, 第2章に

おいてファジー ビーンの 生育にともなう 成分変動および サイレージ発酵

品質を基にした刈取り適期を明らかにした.

また, ファジービーンサイ

レージの発酵品質の特徴をギニアグラス(Panicum maximum JacQ.

var.

maximum)のそれと比較することにより 明らかにした. さら に, 栄養収

亘について両草種の比較を行った.

暖地型イネ科牧草に対するファジービーンの混播は,

実用に際し主要

な栽培形態と考えられ, それにより暖地型牧草 のサイレージ発酵品質と

栄養価を同時に改善できる可能性が予想される. そこで , 第3 章第1節

に お い て フ ァ ジ ー ビ ー ン と暖 地 型イ ネ 科牧 草グリー ンパニック

(Panicum maximum var. trichoglume)あるいはギニアグラスとの混播

草の成分含量および発酵品質をそれぞれ の単播草と比較し, ファジービー

ンの混播がサイレージ発酵品質および蛋 白質含 量に及ぼす影響を検討 し

た.

本章第1節で述べたように,

サイレージとし て栄養成分を貯蔵するに

は, 家畜の飼料として最も重要な栄養成分である蛋白質の分解が抑制さ

れ, 発酵による乳酸生成が効率的であることが重要である. そこで, 第

3章第2節以降にお いては, ファジービーンサイレージ の貯蔵中におけ

る蛋白質分解(第3章第2節)と水溶性炭水化物の有機酸発酵(第4章)

の様相をさらに詳しく検討することとした.

(14)

-8-まず, 第3章第2節においては, ファジービーンの混合が貯蔵中の蛋

白質分解に与える影響を 検討した. すなわち,

原料草におけるファジー

ビーンの含有比率を任意に増加させ, サイレー ジ発酵に対するファジー

ビーン混合割合増加の影響を蛋白質分解 の観点から詳細に検討 し, ファ

ジービーンのサイレージ発酵における蛋白質分解過程の特徴を明らかに

した.

次に, 第4章第1節においては, サイレージ発酵における乳酸生成の

主要な基質である水溶性炭水化物組成を他の暖地型牧草と比較し, ファ

ジービーンの水溶性炭水化物組成の特徴を明らかにした.

さらに,

第4 章第2節においては, サイラトロ(Macr optiliu m

atropurpureum

(DC.)

Urb.)とファジービーンを用い

原料草 の水溶性

炭水化物組成とサイレージ の有機酸組成の関係 を検討した. 有機酸組成

は初期の発酵の後の二次 発酵に より変動することから,

経時的にその変

動を観察することにより, ファジービーンのグルコースレベルとサイレー

ジの有機酸組成と の関係について論議した.

(15)

-9-第2章

ファジービーン単播草サイレージの発酵品質

第1節

フ ァ ジービーンの生育にともなう成分組成とサイレージ発

酵品質の変化ーギニアグラスサイレージと

の比較-緒言

サイレージの発酵品質 を支配する原料草の化学的要因としては, 乾物

率, 緩衝 能, 発 酵 基質含量, 蛋白質含量, 繊維 成分含量などが 挙げられ

ている(須藤1971). これらの要因に関する暖地型イネ科牧草の特徴と

しては,

寒地型イネ科牧草より緩衝能が高く,

繊維成分含量が多く, 発

酵基質含量の少ない草種が多いこと(Catchpoole and Henzell, 1971 ;

Kaiser, 1984 ;三秋ら, 1986) , 暖地型マメ科牧草の特徴としては, 乾物

率が低く, 緩衝能は高く, 発酵基質含量は少なく, 蛋白質含量が多いこ

とが挙げられる(McDonald et a1., 1991) . そのため, 暖地型牧草サ

イレージは, pHおよび揮発性塩基態窒素比率 が高く, 乳酸含量の少ない

劣質サイレージとなりやすいとされている.

このように,

一般にサイレージ発酵品質が劣るとされ る暖地型牧草の

中で, 本試験に供試し たファジーピーン(Macroptilium 1athyroides (L.)

Urb)は,

良好な発酵品質を示す例が報告されている数少な い草種のー

(16)

-10-つである . しか し

そのサイレージ発酵に関して詳細に検討した報告は

ほとんどない(Skerman

et

a1.,

1988) .

そこで本試験においては, まず, ファジービーンのサイレージの発酵

品質に影響すると考えられている原料草の化学的要因(乾物率, 緩衝能,

水溶性炭水化物含量および細胞壁成分含量)の生育にともなう推移につ

いて, 暖地型イネ科牧草ギニアグラス(Panicum maximum Jacq. var.

maximωn)と 比較検討することとした.

次に, 両草種の各生育ステージのものを原料草として サイレージ調製

を行い, 発酵品 質を示す指標であるpH, 有機酸組成 および窒素化合物組

成を生育ステージ間あるいは草種間で比較することにより, ファジービー

ンについてサイ レージ原料草としての刈取り適期並びにサイレージ発酵

品質の特徴を明らかにしようとした.

材料および方法

1.

供試草種

供試草種とし て, 九州大学農学部実験画場に おいて自家採種したファ

ジービーンと市販のギニアグラス(品種「ナツカゼJ (雪印種苗) )を

用いた. 両草種ともに1991年5月28日に 1m当たり19の種子量を畦l幅50cm

で条播した. 基肥として播種時にN, P205および、K20をそれぞれO. 5kg

/

(17)

-11-a施用し,

両草種3反復で栽培し た. 刈取りは, 播種後43日目(両草種

とも栄養生長期), 65日目(ファジービーン:開花初期,

ギニアグラス:

出穂、初期)お よび 79日目( ファジービーン:開花期, ギニアグラス:出

穏期)に行い

生草収量を測定した後サイレージ原料草を採取した.

2.

サイレージ調製

原料草は, 刈取り後直ちに約4cmに細切し,

プンゼンバルブをつけた

2 Q容ポリエチレン製実験サイロに約1.0kg (新鮮物重), 3反復で詰め

込んだ. サイロは20tの恒温室において約100日間保蔵した後開封し, 分

析用試料を採取した.

3.

化学分析

各刈取り時における原料草の乾物率は,

70t, 48時間通風乾燥法によ

り測定した. 通風乾燥後の試料は,

1 nunのふるいを通るよう粉砕し成分

分析に供した. 緩衝能はPlayne and McDonald (1966)の方法により,

全窒素(TN)含量はケルダール法, 水溶性炭水化物含量は熱水抽出物に

ついてアンスロン硫酸法により, 細胞壁成分含量はVan Soest and Wine

(1967)の方法により

in

vitro乾物消失量はペプシン ・ セルラーゼ法

(Goto and Minson, 1977)によりそれぞれ測定した.

サイレージの乾物率は. 700C通風乾燥法で得られた値を揮発性脂肪酸

および揮発性塩基態窒素が全て乾燥中に揮発するものとして補正した.

つム

(18)

また, サイレージの全窒素含量は乾燥せずにケルダール法で測定した.

サイレージの発酵品質については, 10倍容の蒸留水に一晩浸漬(10時間,

4G)し抽出した液を用い,

pHはpHメーター(堀場製作所

F13) ,

揮発

性塩基態窒素含量は水蒸気蒸留法(大山, 1971a) , 乳酸,

酢酸および酪

酸含量はガスクロマトグラフィー(島津製作所GC-6A)により分析を行 っ

た(蔭山ら, 1973)

.

なお,

このガスクロマトグラフ法では, 分析点数の

増加にと も ない 乳酸定 量の再現性が低下すること が指摘されて いるため

(柾木ら, 1994) ,

数点毎に標準溶液で再現性を確認した.

本試験におい

てプロピオン酸

吉草酸およびカプロン酸は,

全てのサイレージでピー

クは認められな いか非常に低いものであった. したがっ て ,

こ れらの酸

は総酸含量に含めず

乳酸,

酢酸および酪酸の合計量を総 酸(TA) 含量

とし, 乳酸含量を総酸含量で除した値を乳酸比率とした.

統計処理は,

二元配置分散分析およびDuncanの多重範囲検定法により

行った.

結果および考察

1.

原料草

各刈取り時における原料草の 乾物収量および栄養収量を表2-1に示し

た.

ηο

寸lム

(19)

ト・4

表2-1

原料

の栄養収

(

均値

±

標準誤

)

草種1)生育日数

乾物収量

(kg/a)

Pb

43

9士2.7a

2)

b

65

24土2.4

C

79

39士4.8

ー---_...__..._-ーー・ーー・ーー・ー・・・・ー・ーー・・・・・ー-Gu

43

65

79

ー・・・・・ーーーーー・

有意j

�j

)

草種

生育日数

交互作用

14士1.5a,b

d

55士4.7

72 :-1:4.2

e

**

**

*

全窒素収量

(kg/a)

0.4士0.12

a,b

C

0.6:-1:0.06

d

1.0 :-1:0.05

0.3士0.08

a

0.6 :-1:0.04

b,c

0.7:-1:0.05c

*

**

NS

1) Pb:ファジーピーン, Gu:ギニアグラス.

2)同列の異なる肩文字聞に有意差有り(p<0.05) .

全窒素含量

(g/kg乾物)

C

40:-1: 1.5

b

27:-1:0.3

b

26:-1: 3.8

22士3.3 b

11±0.4 a

10 :-1:0.2 a

**

**

NS

3)

* * : p

<

O.Ol

*:

p <0.05, NS:処理聞に有意差なし.

in vitro

可消化乾物収量

乾物消失量

(kg/a)

(g/kg乾物)

d

a

766:-1: 1.8

8士2.7

b

b

631:-1: 13.3

15:-1: 1.3

b

C

616:-1:15.9

24士2.4

687士0.1c

10士1.0a,b

498士4.5a

27士2.1

C

479:-1: 13.5 a

34:-1: 1.4d

**

**

**

**

NS

NS

(20)

両草種とも乾物収量, 全窒素収量および可消化 乾物収量 は生育にともな

い増加し, 全窒素含量および、in vitro乾物消失量は低下した. 草種間で比

較すると, 乾物収量および可消化乾物収量はギニアグラ スで有 意に高い

値を示 し(いずれもp <0 .01 ) , 全窒素収量 (p <0 .05 ) , 全窒素含量

( p <0.01)およびin

vitro乾物消失量(p <0.01)はファジーピーンで

有意に高い値を示した .

各刈取り時における発酵品質に影響するサイ レージ原 料草の成分組成

を表2-2に示した. 両草種とも乾物率は , 生育日数の経過にともない 増

加する傾向を示した. ファジービーンの乾物率は開花期(79日目 )にも

200

g

/kg未満であったが, ギニアグラスのそれは生育65日目の出穏期に

は約200

g

/kgに達し,

いずれの刈取り時にもファジービーンで低い値を

示した. 蛋白質分解や酪酸発酵によりサイレージの発酵品質を低下させ

るclostridiaの生育は乾 物率の影響を受けやすく, 原料草の乾物率増加に

ともない その活性が抑制さ れ,

400

g

/kgの乾物率 で完全に阻害され るこ

とが報告されて い る(]onsson et

a1.,

1990

;

Muck,

1987) . 乾物率につい

て草種間で比較 すると, ギニアグラスよりファジービーンで,

生育日数

のより少ない若い草でclostridiaの増殖が起こりやすい条件にあったと考

えられる .

水溶性 炭水化物含量は

両草種とも生育にと もない増加する傾向を示

した. 水溶性炭 水化物は サイレージ発酵の主要な基質であり,

その含量

(21)

-15-表2-2

原料草の成分組成

乾物率

水溶性

緩衝能

細胞壁成分

草種1)生育日数

炭水化物

(g/kg)

(g/kg生重)

(ミリ当量/kg生重)

(g/kg生重)

Pb

43

122

10.2

64.2

52.9

65

159

11.9

63.5

84.0

79

177

16.5

61.2

99.6

ト4

0')

Gu

43

132

7.5

64.5

75.0

65

195

9.2

69.9

135.0

79

266

26.8

76.9

186.1

1) Pb:ファジーピーン, Gu:ギニアグラス.

(22)

はサイレージ発酵品質に重要な影響を及ぼす(W ei ssbach

e t

al.,

1974) . 良質なサイレージ調製に必要な含量はおよそ 30g /kg生重とされ

ているが(H aigh, 1990 ; Wilkinson,

198 3a),

両草種で水溶性炭水化物

含量が最も多くなった 7 9日目刈取り草でもその値には達しなかった. 水

溶性炭水化物について草種間で比較すると, 43および65日目刈取り草に

ついてはギニアグラスよりファジービーンで,

生育日数間で比較すると,

より生育の進んだもので高い値を示し,

サイレ ージ発酵に関し て幾分か

は良い条件にあったと考えられる.

緩衝能は, ファジービーンで生育にともないやや低下する傾向を示し,

ギニアグラスで生育 にともない増加する傾向を示した.

サイレージのpH

は一般に は4'"'-'6の問で変動するが, その領域でのpH緩衝力は有機酸塩お

よび植物蛋白質 によるものと考えられ,

それら の含量はイネ科牧草と比

べマメ科牧草で高いことが知られている(Playn e

and

M c D o nald,

1966) .

そのため緩衝能もマメ科牧草の方が高い傾向を示 す. 一般に 緩

衝能は,

イネ科牧草では 30'"'-' 40ミリ当量/100g乾物,

マメ科牧草では 5 0

'"'-' 60ミリ当量/100g乾物とされている(Kaiser, 1984 ; McDonald

et

a1.,

1991) . 本研究で得られた緩衝能を乾物当たりに換算するとファジ-ビー

ンで 34.6'"'-' 52.6ミリ当量/100 g乾物, ギニアグラスで28.9'"'-'48.8 ミリ当量

/100 g乾物となる. したが って, ファジービ ーンの緩衝能はマ メ科草種

としては低い傾 向を示すが

イネ科草種よりは 高い特徴があると考えら

門i

-i

(23)

れた.

細胞壁成分含量は,

両草種とも 生育に ともない増加する傾向を示し,

いずれの刈取り時にもフ ァジービーン で 低い値を示した.

繊維成分が多

いため詰め込み密度を高くすることが比較的困難な暖地型イネ科牧草は,

密封時に サイロ内に含まれる酸素量が多くなり ,

それが発酵品 質を低下

させる原因のーっと考えられてい る(Catchpoole and He nze

11

, 1 971) .

また,

Greenhill (1963a,b)は, サイレージ中での乳酸生成は細胞の崩壊

および細 胞内容物の浸出 に引き続いて起こり,

細胞崩壊が数時間遅れる

と詰め込み3日目に おけるサイレージのpHが高くな ったことを報告して

おり,

繊維成分 が多い 細 胞からは細胞内容物の 浸出が遅 れることが発酵

品質 の 低下 につ ながると 考えられる.

本試験では細胞壁成分含量を繊維

成分含量 の指標とし, 草種 間で比較すると,

ギニアグラ スより ファジー

ビーンで,

生育日数 間で 比較するとより若い も のが低い値を示し, サイ

レージ発酵に関して良い条件に あったと考えられる.

2.

サイレージ発酵品質

各サイレージのpH,

揮発性

塩基態窒素比率および有機酸組成を表2-3に示した. pH, 揮発性塩基態窒素比率, 乳酸含量,

酢酸含量, 酪酸含

量および乳 酸比 率 に ついて は

草種聞に 有意差が認められ た(

p

<

0.01) . ファジービーンは, いずれのサイレージにおいてもpHは4.5以下,

揮発性塩基態窒素比率は100

g

/kgTN以下であり,

ギニアグラスサイレー

(24)

-18-ト4

(.!)

表2 -3

サイレージのpH,

揮発性塩基態、窒素比率および有機酸組成(平均値±標準誤差)

草種1)生育日数

Pb

43

65

79

Gu

43

65

79

揮発性塩基態

pH

窒素

比率

(g/k�T�J)2)

4.4:1::0.10a,じu4)98士15.6

a,b

3.9士0.02

a

4.4:1::0.10

a,b

5.2:1::0.30c

4.5:1::0.04

b

5.7:1::0.05

d

49士0.2a

94士2.4

a.b

306:1::20.0d

162士31.4

b,c

204±33.2c

乳酸

(g/kg生重)

7.1:1::0.76

C

5.4土1.36

b,c

b

3.6士0.65

0.0:1::0.00 a

0.0:1::0.00

a

0.0:1::0.00

a

酢酸

酪酸

総酸

(g乳/酸kg比T率A)

3)

(g/kg生重)

(g/kg生重)

(g/kg生重)

1.1:1::0.09

a

0.0士0.00

a

8.3士0.68

b

861士21.6 c

0.9:1::0.03

a

0.0士0.00

a

6.3士1.39a,b

848士28.6 c

a

a

a.b

b

1.9:1::0.06

0.0士0.00

5.5

:1::0.58

'

649士48.9

1.9士0.66 a

1.4:1::0.03

b

3.4:1::0.63a

0:1::0.0 a

5.3:1::0.31

b

2.7士0.16

C

8.0:1::0.47

b

0:1::0.0 a

4.6士1.28

b

3.3土0.77

C

7.9士2.06

b

0:1::0.0 a

ーーーーーー...ーーーーーー・・・ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー'ーーーーーーーーーーーーーーーーーー,圃ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・ーー唖ーー-ーーー・・ーーーーーーー・・・・ーーーーーーー'ーーーーーーーーーーーーーーーー・・ーーーーーー,ーーーーーーーーー・・・ーーー・・ーー・・ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

有意'

tf

)草種

**

**

**

**

**

NS

**

生育日数

**

*

NS

NS

NS

NS

**

交互作用

NS

NS

NS

NS

NS

*

**

1)

Pb:ファジービーン, Gu:ギニアグラス.

2) TN:全窒素.

3)

TA:総酸.

4)同列の異なる肩文字聞に有意差有り(p<0.05)

5)

* *

: p<O.Ol,

*

: p <0.05, NS:処理問に有意差なし.

(25)

ジより低い値を 示した. 有機酸 組成をみると,

ファジービーンサイレー

ジはいずれも 乳 酸比率は高く酪 酸の含有は認められなかったのに対し,

ギニアグラスサイレージは乳酸は存在せず\酢酸および酪酸含量が多かっ

た.

以上に示したサイレージ発酵品質の指標であるpH, 窒素化合物組 成 お

よび有機酸組成 を草種間で比較 すると,

明らかにファジ ービーンの方が

ギニアグラスより発酵品質に優れるといえる.

次に,

ファジ ービーンサイレージの発酵品質を, トウモロコシや寒地

型イネ科牧草の良 質サイレージと 比較する. 一般に, 良質サイレージは,

pHが4.2以下, 揮発性 塩基態窒素 比率が100g /kgTN以下, 乳酸含量が80

"'"' 120 g / kg乾物(ただし,

通常乾物率が高く緩衝能の低いトウモロコシ

サイレージの乳酸含量は

それよりかなり少ない )

(McDonald

e

t

al.,

1995) , 酪酸含 量は2g /kg乾物以下,

乳酸含量 が揮発性脂肪酸含量を上

回るものとされてい る.

本試験において

ファ ジービーンサイ レージの

pHは43および79日目刈取り草で,

乳酸含量は全ての生育 日数でこの 基準

に達しなかった( 18"'"' 69 g /kg乾物)が,

揮発性塩基態窒 素比率および乳

酸比率は全ての生育日数においてこの基準に達した. これらの結果から,

ファジービーンにおいては, 乳酸含量が少なくpHもあまり低下しないが,

二次発酵による揮発性脂肪酸の生成や蛋白質分解が抑えられた乳酸発酵

型の良質サイレージとなる特徴を有すると考えられた.

-

2 0

(26)

-3.

ファジービーンの発酵品質に影響する原料草の組成

本試験において測定したサイレージ発 酵を左右する原 料草の化学的要

因は, 乾物率

緩衝能, 水溶性炭水化物および細胞壁成分含量の4 つであ

る. これらのうち

ファジービーンの乾物率は全ての刈取り日でギニア

グラスより低く,

緩衝能 は良質な発酵品質を示す寒地型イネ科牧草やト

ウモロコシより高い特徴が認められ

水溶性炭水化物含量は良質なサイ

レージの調製に必要とされる量 に達せず, サイ レージの 乳酸含量は一般

的な良質サイレージより少なく

43および79日目刈取り草サイレー ジの

pHは4.4までしか 低下しなかった. これについては, 乳酸発酵に必要な原

料草の発酵基質 含量が少ないために乳酸量が少なく,

pHが低下しなかっ

たものと考えら れる.

一方

ファジービーンの 細胞壁含量はギニアグラ

スより低い値で推移した. これらの結果から

ファジービーン サイレー

ジがギニアグラ スサイレ ージより良好な発酵品質を示した原因と考えら

れる原料草の化 学的要因 とし て

細胞壁成分含量の少ないこと が挙げら

れ, これによりサイレージ詰め込み時の酸素量が少なかったり , 細胞内

容物の浸出が早かったりすることが重要と考えられる.

4.

ファジービーン のサイレー ジ原料草とし ての刈取り適期

ファジービーンサイレージの発酵品質については

開花期のものは栄

養生長期のものより乳酸含量および乳酸比率が有意に低い値を示したが

(p<O.05) , いずれの生育ステージにおいても良質なサイレージとなる

(27)

-21-ことが示された. 本試験において, in vitro乾物消失量および全窒素含量

は少なくとも開花期までファジービーンの生育にともない低下するが,

可消化乾物収量および窒素収量は増

することが示された(表2

-

1) .

したがって, ファジービーンのサイレージ原料草としての刈取り適期は,

サイレージ発酵品質の点では若干劣るが, 栄養収量を考慮すると開花期

であると考えられる.

結論

ファジービーンはサイレージ原料草として, 乾物率は低く, 水溶性炭

水化物含量は 少なく, 緩衝能は高いものの, 細胞壁成分含量が 少ない利

点を有することが示された. その発酵品質はギニアグラスより 良好であ

り, 揮発性塩基態窒素比率および乳酸比率は, 一般に良質サイレージと

されるものと同等であった.

栄養収量は生 育にともない増加し, 発酵品質 は全ての生育ステージで

良好なものであった. し たがって, 栄養生長期から開花期までの間にお

けるファジービーンの刈取り適期は開花期と考えられた.

(28)

-22-第2節

摘要

暖地型マメ科牧草ファジービーンのサイレージ原料草としての適性,

サイレージ発酵品質および刈取り適期 を明らかにする ために, 播種後

43, 65, 79日目のファジービーンおよびギニアグラスを 原料草とし たサ

イレージ を調製し, 原料草および発酵品質の分析により得られた結果を

比較した.

生育にともないファジービーンの全窒素含量および、in vitro乾物消失量

は低下したが

可消化乾物収量および窒素収量 は増加し, 窒素収量はギ

ニアグラスを凌いだ.

サイレージ原 料草として, ファジービーンの乾物率は低く, 緩衝能は

やや高い特徴を示し 水溶性炭水化物含量は十分量存在しなかった. し

かし, 細胞壁成分含量は少なく, この点はサイレージ貯蔵 する際の利点

のーっと考えられた.

ファジービー ンサイレージの発酵品質は ギニアグラスサイレージよ

り良質なものであった. その発酵品質 を一般的な良質サイレージの基準

に照らすと, 全 ての生育ステー ジで揮発性塩基態窒素比率 が低く乳酸発

酵型の良質サイレージであることが示された.

栄養収量およびサイレージ発酵品質から検討した場合, ファジービー

ンをサイレージ貯蔵する際の刈取り適期は, 開花期であると考えられた.

-

2 3

(29)

-第3章

ファジービーン混播あるいは

混合サイレージの発酵品質

第1節

暖地型イネ科牧草に対するファジービーンの 混播がサイレー

ジの発酵 品質に及ぼす影響

緒言

前章において, ファジービーン単播草の3段階の生育ステージにおける

栄養収量およびサイレージ発酵品質を検討した. その結果, ファジービー

ンは窒素収量では暖地型イネ科牧草 ギニアグラ スを上回り, 発酵品質が

良好であることが認められた.

このような特徴を持つファジービーンを暖地 型イネ科牧草 の同伴草と

して混揺栽培することに より,

暖地型牧草サイ レージの問題点とされる

栄養価値および発酵品質を同時に改善することが期待される.

そこで, 本節においては, 一般的に蛋白質含量が少なく, サイレージ

発酵品質が劣質であるとされている暖地型イネ 科牧草グリーンパニック

(Panicum maximum var.trichoglume : Bayorbor et 81, 1993b ;小林ら,

1980)あるいはギニアグラス( Panicum maximum var. maximum

(30)

-24-Bayorbor

et

al , 199 3a, b ;小林ら, 1994 ; Miller, 1969 ; Miller

et

al., 196 3 ;

Olubajo, 1981)にファジービーンを混播し, そのサイレージの発酵 品質

をそれぞれの単播草と比較することにより, 暖地型牧草のサイレージ発

酵品質および栄養価値に対するファジービーン混矯の影響を検討した.

材料および方法

1

. 供試草 種

ファジービーンと 混播する暖地型イネ科牧草 としてグ リーンパニック

およびギニアグラスを用い, 各 草種の単播草, グリーンパニックとファ

ジービーンの混播草

ギニアグラスとファジービーンの混播草の5処理区

を設けた. 栽培は九州大学農学部実験圃場において行い, 1990年5月25

日に1m2当たり種子19を畦幅50cmで条播し, N, P205および、K20をそれ

ぞれ0.5kg/a播種時に施肥した. 刈取りを行った7月30日において, グリー

ンパニック混播区およびギニアグラス混播区の合計生草収量にしめるファ

ジービーンの割合は

それぞれ17 .5および5.3%であった.

2. サイレージ調製

上記の原料草を刈取り後直ちに約3cmに細切し, ブンゼンバルブを付

けた2 Q容ポリエチレン製広口瓶に約1.2kgず、つ各処理区2反復で詰め込

み, 24'C恒温室で約 2カ月半保蔵した.

(31)

-25-3. 化学分析

乾物率, 全窒素(廿�)含量, 水溶性炭水化物含量および揮発性塩基態

窒素含量

は第2章と同様に測定した. 有機酸組成はフリ

ーク

(須藤,

1971)により分析した. 総酸(TA)含量はフリーク法 で求めた乳酸, 酢

酸および酪酸の合計量とした. なお, サイレージの乾物率については,

揮発性有機酸お よび揮発性塩基態窒素が全て乾燥中に揮発するものとし

て補正を行った.

統計処理は, 一元配置分散分析および、Duncanの多重範囲検定法により

行った.

結果および考察

1. 原料草

各処理区の原料草の成分組成を表3-1に示した. 単播草を比較すると,

乾物率はグリーンパニックで最も高く, ファジービーンで最も低い値を

示した. 全窒素含量はファジービーンで最も多く, グリーンパニックお

よびギニアグラスの2倍以上に達した. 水溶性炭水化物含量は, ギニアグ

ラスで最も高い値を示した. 単播区と混播区を比較すると, 両イネ科牧

草とも乾物率は単播区より混播区で低い値を示した. 水溶性炭水化物含

量は, グリーンパニックで単播区より混播区が高い値を示し, ギニアグ

(32)

-26-表3

-1

原料草の成分組成

処理区1)

乾物率

全窒素

水溶性炭水化物

ファジービーン割合

(g/kg)

(g/kg生重)

(g/kg生重)

(g/kg生重)

Gp

285

2.5

10.1

Gu

257

2.1

22.6

むv

Pb

203

5.8

21.4

1000

-..J

Gp/Pb

249

2.8

13.4

175

Gu/Pb

248

2.5

22.1

53

1)

Gp:グリーンパニック単播区, Gu:ギニアグラス単播区, Pb:ファジーピーン単播区,

Gp/Pb:グリーンパニックとファジーピーン混播区, Gu/Pb:ギニアグラスとファジーピーン混播区

(33)

ラスではほぼ同じ値を示した.

2. 発酵品質

表3-2に各サイレージの有機酸組成を示した . 単播草を比較した場合,

乳酸含量,

総酸含量および乳酸比率はファジービーンで他の2草種より有

意に高い値を示し(p<0.05) ,

酢酸含量および 酪酸含量は 低い値を示し

た. 両イネ科単 播草を比較した場合,

ギニアグラスで乳 酸含量,

総酸含

量および乳酸比 率は高く,

酢酸および酪酸含量 は低い値 を示した. 乳酸

比率 および酪酸含量 については有意差が認められた(p<0.05) . イネ科

牧草の単播区と 混矯区を比較すると, グリーン パニックでは混播区の乳

酸含量および乳 酸比率が有意に高く,

酢酸およ び酪酸含 量が有意に低い

値を示した(p<0.05) . ギニアグラスでは混播区の乳酸比率は有意に高

く,

酢酸含量が有意に低い値を示した(p<0.05) .

サイレージの全窒素含量, pHおよび揮発性塩基態窒素比率とそれらを

もとにした判定法による 発酵品質の等級および評点(須藤,

1971)を表

3-3に示した. 単播草種間で比較 した場合, pHは,

ファジ ービーンで最

も 低い値を示し た. グリーンパニックとギニアグラス のpHに有意差は認

められなかった(p>0.05) . pHに乾物率を加味した基準によるとその発

酵品質はいずれも劣質と判定された. 揮発性塩基態窒素比率はファジー

ビーン<ギニアグラス<グリー ンパニックの順に低い値 を示し た. その

値をもとにした評点は

ファジービーンで他の2草種より有意に高い値を

-

2 8

(34)

-表3-2

サイレージの有機酸組成(平均値±標準誤差〉

1)

乳酸

酢酸

酪酸

総酸

乳酸比率2)

処理区

(g/kg生重)

(g/kg生重)

(g/kg生重)

(g/kg生重)

(g/kg

TA)

Gp

14.9::f: 1.50

a

3)

6.2士0.40

b

1.3::!::0.20

b

22.3士0.90

a

665土38.8a

Gu

18.6::f: 1.15a,b

5.6::f:0.05

b

0.3::!::0.25

a

24.4士1.05

a

761士16.9b

b

b

t\:)

C

a

863士3.6C

<.0

Pb

30.0 ::f:0.90

4.8士0.30

O.O::!::O.OO

34.8士1.20

Gp/Pb

21.5 ::f:2.00

b

3.0士0.70

a

0.0::f: 0.00

a

24.6士1.30

a

872::f:35.9C

Gu/Pb

21.2::f:0.90

b

3.0士0.15

a

0.1::!::0.05

a

24.2士1.00

a

876::!::1.1C

1)表3-1に同じ.

2)

TA:総酸.

3)同列の異なる肩文字聞に有意差有り(p<0.05) .

(35)

むミ

Cコ

表3-3

サイレージの発酵品質(平均値±標準誤差)

処理区1)

乾物率

(g/kg)

pH

6)

Gp

283::!::6.5d

5.9::!::0.21

C

Gu

246::!::3.2b,c

5.5::!::0.02b,c

Pb

189::!::1.1a

5.4::!::0.01

b

Gp/Pb

256±3.6c

4.8士0.19

a

Gu/Pb

234±0.6b

5.1士0.05a,b

1)表3-1に同じ.

2)乾物率とpHによる評価.

3) TN:全窒素.

4)揮発性塩基態窒素比率による評価.

5)有機酸組成による評価.

2)

揮発性塩基態窒素比率

等級

}t>(

(g /kg TN)

3)

劣質

劣質

劣質

中~劣質

劣質

182士17.8 c

146士4.6

b,c

106士5.9 a,b

104士14.5 a

127 ::!::3.5 a,b

6)同列の異なる肩文字聞に有意差有り(p<0.05) .

4)

5)

評点

フリーク評点

47士7.1 a

50士7.0 a

61::!:: 1.9 a,b

87士l1.0 b

78士2.5 c

100土0.0 b

69士5.6 b,c

99.5::!::0.5

b

78士1.4 c

100士0.0 b

(36)

示した(p<0.05).

イネ科牧草の単播区と混播 区を比較 すると ,

pH および揮発性塩基態窒

素比率は単播区より混播区で低い 値を示し,

グリーンパニックについて

はいずれの値も有意に 低下した(p<O.05) . pHをもとにした等級は単描

区, 混播 区とも全てが劣質であった. 揮発性塩基態窒素比率を もとにし

た評点は,

両イネ科草とも単播区より 混矯区で有意 に 高くなった (p<

0.05) .

一般に マメ科 牧草は乾物率および水溶性炭水化物 含量が少なく,

緩衝

能は高いことから,

発酵品質を改善する目的でマメ科牧草が混播される

ことはなく,

永西ら(1991)および内田 ・ 北村(1987)は, マメ科 牧草

の含有割合の増 加に とも ないサイレージ 発酵品 質は低下することを報告

した. しかし,

本試験の結果から,

暖地型イネ 科牧草にファジービーン

を混播すること により,

単播で栽培する場合と比較してサイレージの乳

酸比率は 増加し,

pHおよび揮発性塩基態窒素比率が低下し,

発酵品質は

改善されることが示 された.

そして

そ の効果はギニアグラスよりグリー

ンパニックで顕著であった.

3. サイレージの 発酵過程およ び栄養価値に対する混播の影響

サイレージは ,

乳酸菌を主とした微生物の発 酵で生産される有機酸類

によりサイロ内のpH を 低下させ,

二次発酵や蛋白質分解等を抑制するこ

-E4

qd

(37)

とにより, 埋蔵飼料に貯蔵性を持たせるものである. 本試験において,

ファジービーン との混播によりサイレージの総酸含量の増加は認められ

なかったが, 酢酸含量は低下し乳酸比率は増加 した(p<O.05) . このファ

ジーピーンとの 混播による有機酸組成の 改善は, 混播が貯蔵初期の発酵

において 生産される有機酸組成ヘ及ぼす 影響お よびその後の乳 酸を基質

とする二次発 酵へ及ぼす影響を反映していると 考えられる. しかし,

試験の結果から は, 混播が貯蔵初期あるいは二次発酵のいずれ に大きく

影響 したかは判断できな い. こ の点を明らかにするため には,

サイレー

ジ発酵過程を経時的に検討する必要があると考えられる.

グリーンパニックとギニアグラスを 比較した場合, サイレージの発酵

品質に対する混播の影響はグリーンパニックで顕著であった.

その原因

として , 表3-1 に示したように, グリー ンパニックではサイレージ発酵

の主要な基質である水溶性炭水化物含量 が混播 区で増加したことにより

乳酸発酵が盛んにな ったり, グリーンパニック の混播区 のファ ジービー

ンの生重割合は ギニアグラスの場合より高かったことにより混播による

発酵への影響 が強く出たことなどが考えられる.

サイレージの栄養価,

特に蛋白質含量を増加させ

栄養価値を改善す

る目的で暖地型マメ科牧草を混播す る試みは

従来から行われ てきた

(永西ら, 1991, 1996a ; Maasdorp and Titterton, 1997 ; Titterton and

Maasdorp, 1997 ;内田・北村, 1987) . 表3-1および表3-3に示したよう

(38)

-32-に, 原料草の全窒素含量は増加したが, 揮発性塩基態窒素比率は低下し

ており, いずれの草種も揮発性塩基態窒素まで分解されずに貯蔵された

窒素化合物は 単播区より混播区で多かったと考えられる. これは, ファ

ジービーンの混播により粗蛋白質含量は増加したが, 蛋白質の栄養価を

低下させるサイレージ中の揮発性塩基態窒素の割合が低下したことを示

す. したがって

本試験のファジービーンを混播した場合においても,

蛋白質栄養に関して栄養価値は改善されたと考えられる.

円。

円。

(39)

第2節

フ ァ ジービーンの混合がサイレージ貯蔵中の窒素化合物の

分解に及ぼす影響

緒言

サイレージ貯蔵中に生化学的変化を受ける主な成分は,

呼吸や発酵の

基質となる炭水化物と蛋 白質とであり,

それらの成分の変化はサイレー

ジの貯蔵性や栄養価値と密接に関連する.

これら2成分のうち,

ファジー

ビーンサイレージの蛋白質ついては

窒素化合物分解の最終産物とされ

る揮発性塩基態 窒素まで 分解さ れる窒素化合物の割合が 低い特徴が示さ

れ(第2章)) ファジービーンを暖地型イネ科牧草の混描草とすること

により,

そのサ イレージ の全窒素含量は増加し たが,

揮発性塩 基態窒素

比率は低下した(本章第1節)

サイレージ貯蔵中における窒素化合物の 分解は,

主に植物酵素 により

蛋白質が遊離アミノ酸に 分解される過 程 と, アミノ酸の脱 炭酸化や脱ア

ミノ化により揮発性塩基態窒素 (アンモニアやアミン類)が生成される

過程とに分けられる(Heron

et

a1., 1986 ; Ohshima and McDonald, 1978

;大山,1971b). 第2章 および本章第1節に示したように, ファジービー

ンサイレ ージやファジービーンを含むサ イレージでは,

上述の 蛋白質分

(40)

-解, 揮発性塩基態窒素の生成の何れか, あるいは両方が抑制されている

可能性が考えられ る.

本節おいては, 暖地型イネ科牧草青刈ヒエ(Echinochloa crus-ga1li P.

Beauv. var. frumentacea Wright)およびバヒアグラス(Paspa1um

notatum Flugge)にファジービーンを数段階の割合で混合してサイレー

ジ調製を行い, サイレージ貯蔵中の蛋白質分解および揮発性塩基態窒素

生成に及ぼすファジービーン混合の影響を詳細に検討した.

材料および方法

1.

原料草

原料草は, 暖地型イネ科牧草として1993年に九州大学農学部附属農場

で栽培したバヒアグラスおよび青刈ヒエ

暖地型マメ科牧草として九州

大学農学部試験圃場で栽培したファジービーンを用いた. 1993年8月の

刈取り時の生育段階 は, ファジービーンは開花期, バヒアグラスおよび

青刈ヒエは出穂、期であった.

2.

サイレージ調製

原料草の予乾は行わず, メIJ取 り後直ちに約1cmに細切し,

青刈ヒエ

(Mi100区) , バヒアグラス(Bg100区) , ファジービーン(Pb100区)

の単独草, 全生重に占めるバヒアグラス あるいは青刈ヒエの割合がそれ

(41)

-35-ぞれ75% (Bg75区, Mi75区) , 50% (Bg50区, Mi50区) ,

および25%

(Bg25区, Mi 25区)になるようにファジービーンを混合したもの を各区

3反復で実験 用サイロにそれぞれ約50 g の原料草を詰め込み, 20'Cの恒

温室で約 100日間貯蔵した . なお, 実験用サイロ はMuck (1987 ) の方法

に準拠し,

ポリエチレン製の100mQ容のものを用いた.

3.

化学分析

原料草およびサイレージの乾物率は70'C, 48時間の通風乾燥法により,

水溶性炭水化物はWeinmann変法による抽出物に ついてソモジ滴定法 に

より(Smith,

1 9 7 1), 蛋白態窒素(PN)はトリクロル酢酸法(大山,

1971a )により測定した. その他に

サイレージについては

10倍容の蒸

留水に一晩浸漬(約10時間, 4'C)し抽出した液を用い,

pH, 揮発性塩

基態窒素および有機酸を第2章と同様の方法で 測定した.

統計処理は,

一元配置分散分析および、Duncanの多重範囲検定法により

行った.

結果および考察

1.

原料草の組成

原料草の組成を表3-4および表3-5 に示した. ファジービーンの乾

物率は183 g /kg生重,

青刈ヒエの それは192 g /kg生重でフ ァジービーン

(42)

-36-表3-4

原料草の成分組成(青刈ヒエ区)

処理区1)

乾物率

蛋白態窒素

水溶性炭水化物

糖/蛋白比

ファジーピーンの

(g/kg)

(g/kg生重)

(g/kg生重)

混合割合(%生重)

Mi100

192

1.3

12.5

9.28

Mi75

190

2.0

13.2

6.52

25

む3

-...:]

Mi.50

187

2.7

13.9

5.14

50

Mi25

185

3.4

14.5

4.31

75

Pb100

183

4.1

15.2

3.76

100

1) Miは青メIJヒエ, Pbはファジーピーンを表し, 略号の後の数字はその草種の混合割合(%)を示す.

(43)

表3-5

原料草の成分組成(パヒアグラス区)

1)

乾物率

蛋白態窒素

水溶性炭水化物

糖/蛋白比

ファジーピーンの

処理区

(g/kg)

(g/kg生重)

(g/kg生重)

混合割合(%生重)

Bg100

280

2.3

16.4

7.11

Bg75

256

2.7

16.1

5.87

25

む3

Bg50

232

3.2

15.8

4.97

50

αコ

Bg25

207

3.6

15.5

4.29

75

Pb100

183

4.1

15.2

3.76

100

1) Bgはパヒアグラス, Pbはファジーピーンを表し, 略号の後の数字はその草種の混合割合( % )を示す.

(44)

と同程度であり,

バヒアグ ラスでは280g /kg生重とファジーピーンや青

刈ヒエよりかな り高い値であった. 両原料草ともファジービー ンの混合

割合の増加にともない

乾物率は低下した.

ファジービ ーンの 蛋白態窒素 含量は 4.1g /kg生重で, バヒ アグラ スお

よび青刈ヒエよりかなり高い値を示した . 両草 種区ともファジービーン

混合割合の増加にともない

蛋白態窒素含量は増加した.

水溶性炭水化物含量はバヒアグラスで最も多く,

次いで

ファジービー

ン, 青刈ヒエの順に高い 値を示した. その含量 は, いずれの処理区も良

質なサイレージ調製に必要とされ ている量(30g/kg生重) (Haigh,

1990;VVilkinson, 1983a)に満たなかった. 水溶性炭水化物含量はファジー

ビーン混合割合の増加に ともない

青刈ヒエ区 では増加 し

バヒアグラ

ス区では低下した.

発酵品質と関連する と考えられている(Gordon

et

a1., 1964

;大山 ・柾

木, 1968)蛋白態窒素に対する水溶性炭水化物の比(糖/蛋白比) は, 青

刈ヒエ,

バヒアグラスの)11買に高くファジービーンでは両イネ科牧草より

低い値であった . 両草種区ともファジービーン の混合割 合の増 加にとも

ない, 糖/蛋白比 は低下した.

以上のように, 本試験で用いた暖地型イネ科牧草2草種にファジービー

ンを混合した場合

青刈ヒエの水溶性炭水化物 含量を除く全ての成分組

QU

っο

(45)

成は, サイレージの原料草としては好ましくない方へと変動した.

2.

サイレージの発酵品質

サイレージの pH, 揮発性塩基態窒素比率および有機酸組成を表3-6

および表3-7に示した. 青刈ヒエ単独サイレージ(Mil00区)のpHとファ

ジービーン単独サイレージ(Pbl00区)のそれとは同程度であり, Mil00

区とファジービーンを混合した区(Mi75区, 1担50区およびh担25区) との

聞にも有意差は認め られなかった(p>0.05). バヒアグラスについては,

バヒアグラス単独サイレージ(Bgl00区)はファジービーン単独サイレー

ジ(Pbl00区)より有 意に高い値となり(p<0.05), ファジービーンを

混合した区 のpHはいずれもBgl00区より低い値を示したが, 有意差が認

められたのはBgl00区とBg50区との間のみであった(p<0.05).

揮発性塩基態窒素比率については

Pbl00区サイレージ は両イネ科草

種の単独サイレージより有意に低い値を 示した(p<0.05) . また, ファ

ジービーンを混 合した処理区の揮発性塩基態窒素比率は, その混合割合

の多少に関わらず, いずれのイネ科牧草 単独サイレージより有意に低い

値を示した(p<0.05).

有機酸組成を 両イネ科草種の単独サイレージ とファジービーン単独サ

イレージとの間で比較すると

ファジービーン単独サイレージの乳酸含

量および乳酸比 率は青刈 ヒエおよびバ ヒアグラス単独サイレージより高

(46)

-40-,ム

ト圃&

表3-6

サイレージの発酵品質(青刈ヒエ区, 平均値±標準誤差)

処理区1)

Mi100

Mi75

Mi50

Mi25

Pb100

pH

揮発性塩基態窒素2)

乳酸

酢酸

比率(g/kg PN) (g/kg生重)

(g/kg生重)

" h

4)

h

4.7士0.01 C1,U

191

1:

31.2 U

4.91:0.03 b

113士6.5a

4.7士0.08 a

1281:17.2a

4.51:0.09 a,b

94士9.5a

4.71:0.17 a,b

106士11.6

0.81:0.65 a

8.7土1.55 b

0.9士0.67 a

4.01:0.78 a

4.01:1.85 a,b

6.91:0.98 b

10.41:0.80

C

3.71:0.32 a

8.01:1.49 b,c

2.61:0.96 a

酪酸

(g/kg生重)

7.41:2.35b

乳酸比率3)

(g/kピfA)

46士39.5 a

3.71:1.51 a

103士81.2a

0.9士0.07 a

319士126.1 a,b

1.11:0.15a

682士34.4

C

2.4

0.35a

6101: 104.6 b,c

1) Miは青刈ヒエ, Pbはファジーピーンを表し, 略号の後の数字はその草種の混合割合(%)を示す.

2)サイレージの揮発性塩基態窒素含量÷材料草の蛋白態窒素(PN)含量.

3) TA:総酸.

4)同列の異なる肩文字問に有意差有り(p <0.05) .

参照

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