ミクロ経済学 基本講義
第 2 回 企業行動 Ⅱ
Ⅰ.利潤
りじゅん最大化
さ い だ い か生産量の決定
※ 企業の利潤(π)を式にすると以下のようになる。 (1) 収 入しゅうにゅう関数かんすう・費用ひ よ う関数かんすうからのアプローチ 利潤(π) = 収入(R) - 費用(TC) 費用関数は、生産量と最小費用との関係を表すものですから、これを 前提に費用を考えるなら、費用最小化は実現されているといえます。 では、利潤(π)はもはや最大化されているのでは? R x O R = P・x P TC x O TC=VC+FC 同じ平面上で重ね合わせる 収入関数 短期費用関数◆ 生産量x0を選択した場合(原点Oからx1までの範囲) ◆ 利潤が最大となる生産量の下では、以下の条件が成立する。 ⇒ 収入よりも費用の方が大きくなり、損失(赤字、マイナスの利潤)が発生してしまう。 ⇒ 費用最小化が実現されたとしても、利潤最大化を実現するとは限らない。 収入が費用を上回り、プラスの利潤を確保できる領域はx1からx4までの範囲 (x1とx4では「収入=費用」となり、利潤はゼロ) 【 利潤最大化生産量の決定条件 ① 】(1階条件) 収入関数(直線)の“傾き● ●” = 費用関数の“(接線の)傾き● ●” なぜ価格(P)と限界費用(MC)が一致するところで生産を行うべきなのか? ・ P > MCのとき(生産量x2) 生産量を増やすと利潤が増える(= 改善の余地あり)。 ・ P < MCのとき(生産量x3) 生産量を減らすと利潤が増える(= 改善の余地あり)。 ・ P = MCのとき(生産量x*) 生産量を変更しても、利潤は増加しない。 ∴ もはや利潤について改善の余地のない状態 利潤最大 R、TC x(生産量) O ● x0 FC R = P・x TC=VC+FC ● ● ● ● ● ● ● ● x1 x2 x* x3 x4 MC P(一定) ● π=0 π=0 P = MC 〔P:価格(一定)、MC:限界費用〕
※ ところが、P=MCという条件だけでは、「損失」が最大となる生産量も含まれてしまう。 R、TC MC P R x O x TC MC O x0 x0 x* x* P P MC E F ● ● ● ● ● ● MC逓増 (右上がり) MC逓減 (右下がり) 損失最大 【 利潤最大化生産量の決定条件 ② 】(2階条件) 以下の条件を加えれば、損失が最大となる生産量を排除できる。 (MC曲線右上り● ● ●) x*の決定 限界費用が逓増● ●する
(2) 利潤りじゅん関数かんすうからのアプローチ ※ 収入(R)と費用(TC)の“差額”(= 利潤π)をグラフにしてみる。 関数πを xで微分 ⊿π ⊿x = 1・P・x 1-1 - = 0 ⊿TC ⊿x ⇔ P-MC = 0 ∴ P=MC R、TC π R x O x TC MC O x0 x0 x* x* 最大利潤 P 利潤 りじゅん 関数 かんすう (π=R-TC) E ● ● ● ● ● ● ● ● ● x1 x4 ● x1 x4 ⊿π ⊿x
=0
π = R - TC =P・x - TC これを生産量(x)で微分してゼロとおくと、 ♬ 利潤関数の“頂上”では、「接線の傾きの大きさ」はゼロ● ●になっている。 ∴ 利潤最大化生産量x*を求めるには、“利潤関数を微分してゼロ”とおけばよい。~★ 計算練習 ★~ (V問題集 №006) P=130 であるから、利潤最大化条件P=MCより、 130 = q2-7q+10 ⇔ q2-7q-120 = 0 ⇔ (q-15)(q+8)= 0 ∴ q=15 (q=-8 はあり得ない) π = R - TC 生産量qで微分してゼロとおくと、 完全競争市場において、ある企業の総費用関数TCは、財の生産量をqとすると次の式で与え られる。財の市場価格を 130 としたとき、この企業の利潤を最大にする生産量として、正しい のはどれか。 1. 5 2. 8 3. 10 4. 15 5. 17 MC = = 3・ q⊿TC 3-1-2・ q2-1+1・10q1-1+0 ⊿q TC = q1 3- q2+10q+25 3 7 2 1 3 7 2 ⇔ MC = q2-7q+10 = 130q -( q1 3- q2+10q+25) 3 7 2 ⊿π ⊿q ⇔ 130-q2+7q-10 = 0 ⇔ q2-7q-120 = 0 = 1・130q1-1- 3・ q3-1+2・ q7 2-1-1・10q1-1-0 = 0 2 1 3 「掛けて-120、足して-7」 になる数の組み合わせを考える。 解法 1 : P=MCを使って解く 解法 2 :利潤関数をたてて、微分してゼロとおく ⇔ (q-15)(q+8)= 0 ∴ q=15 (q=-8 はあり得ない)
Ⅱ.短期
た ん ききょうきゅう供 給
きょくせん曲 線
の導出
利潤最大化条件(P=MC)には固定費用(FC)が反映されない。 与えられた財価格(P)と平均費用(AC)との比較が必要となる。 そこで いかなる財価格の下でも、企業はP=MCに従って財の供給を行って良いだろうか? ∵ 平均費用(AC)は、生産量 1 単位あたりの生産コスト であるから、固定費用も含まれている。財価格が平均費用 を上回らなければ、プラスの利潤を得ることはできない。 損失(赤字)が発生する場合には、供給を止めてしまえば問題はないのか? 短期において、x=0(生産停止)とする場合、 可変費用(VC)はゼロにできるが、固定費用 (FC)はゼロにはできない。 TC x O TC=VC+FC ● ♬ 生産を停止するとき(x=0)、利潤(π)は、 π = R-(VC+FC) = 0-0-FC ∴ π=-FC となり、固定費用と同額だけの損失(= 赤字)が発生することになる。♪ 以下で、与えられる価格について「場合分け」して考えていくことにする。 (1) P>ACのケース (財価格が平均費用の最低点を上回る場合) ◆ この図から、企業の「収入」と「費用」を“面積”で捉える。 収 入 : AEx*O (R=P・x*) 費 用 : CBx*O (TC=AC・x*) 利 潤 : AEBC (π=R-TC) ⅰ).P=MCを満たす、改善の余地のない生産量を選択している。 ⅱ).P>ACとなっており、プラスの利潤を確保している x*だけの財の供給を行う。 AC、AVC MC、P x(生産量) O ● E MC ● ● ● x* AC AVC A P B C ● ●
(2) P<AVCのケース (財価格が平均可変費用の最低点を下回る場合) ◆ この図から、企業の「収入」と「費用」を“面積”で捉える。 生産を止めてしまった方がマシなので、 企業は財の生産を停止する。 C B E A x*の生産を 行った場合の損失 C B F G
>
生産を停止(x=0) した場合の損失 損 失 : CBEA (π=R-TC) 収 入 : AEx*O (R=P・x*) 費 用 : CBx*O (TC=AC・x*) VC : GFx*O (VC=AVC・x*) FC : CBFG (FC=TC-VC) AC、AVC MC、P x(生産量) O E MC ● ● ● ● x* AC AVC A P B C ● ● F G ● ●(3) AVC<P<ACのケース (財価格が“2つの最低点”の間にある場合) ◆ この図から、企業の「収入」と「費用」を“面積”で捉える。 収 入 : AEx*O (R=P・x*) 費 用 : CBx*O (TC=AC・x*) 損 失 : CBEA (π=R-TC) VC : GFx*O (VC=AVC・x*) FC : CBFG (FC=TC-VC) C B E A x*の生産を 行った場合の損失 C B F G
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生産を停止(x=0) した場合の損失 ◆ 損失ではあっても、生産を行った方がマシ(= 損失が少ない)なので、 固定費用(FC)が削減できない短期においては、企業は財の生産を継続する。 ● G P AC、AVC MC、P x(生産量) O E MC ● ● ● ● x* AC AVC A B C ● ● F ●(4) 個別こ べ つ企業きぎょうの短期た ん ききょうきゅう供 給きょくせん曲 線 ~★ 練習問題 ★~ (V問題集 №024) ◆ 企業はP=MCに従って財の供給を行う(1 階条件) ◆ 限界げんかい費用ひ よ うきょくせん曲 線は“右上がり”でなければならない(2 階条件) ◆ 財価格が「 操 業そうぎょう停止点て い し て ん」を上回れば、短期的には財の供給を行う ≒ 「操業停止点」を上回る、右上がりの限界● ●費用● ●曲線(MC) P x O (AC) (AVC) H I 短期供給曲線(≒ MC曲線) 損益 そんえき 分岐点 ぶ ん き て ん (AC=MC) 操 業 そうぎょう 停止点 て い し て ん (AVC=MC) ● ● 黒字(π>0) ・供給する 赤字● ●(π<0) ・供給する 赤字● ●(π<0) ・供給しない ● 短期た ん ききょうきゅう供 給きょくせん曲 線 完全競争市場における、ある企業の総費用関数TC(x)が次のように与えられている。 TC(x)=x3-2x2+5x+8 ここでx(>0)は生産量を表す。このとき、損益分岐点と操業停止点における価格の組み合 わせとして正しいのはどれか。 損益分岐点の価格 操業停止点の価格 1. 5 2. 5 3. 9 4. 9 5. 12 1 2 3 4 4
「価格」(= 縦軸の値)が問われていますが、まずは各点の「生産量」を計算します(各費用を表 す式が生産量で表されているからです)。次いで、この結果を各式に代入して「価格」をとります。 (1) 操業停止点の計算 操業停止点は平均可変費用曲線(AVC)の最低点に対応します。与えられた総費用関数から 平均可変費用(AVC)を計算すると、 となります。「最低点」では、平均可変費用曲線 (AVC)上にとった接線の傾きはゼロになる ので、①式を微分してゼロとおきます。 この結果を①式に代入すると、縦軸の「価格」となります。 12-2・1+5=4 ∴ P(=AVC)=4 (2) 損益分岐点の計算 損益分岐点は平均費用曲線(AC)の最低点に対応します。与えられた総費用関数から平均費 用(AC)を計算すると、 となります。「最低点」では、平均費用曲線(AC)上にとった 接線の傾きはゼロになるので、★式を微分してゼロとおきます。 AC= = xTC 2-2x+5+ … ② x AVC= = xVC 2-2x+5 … ① x 8 x x AVC O ● AVC 1 4 ⊿AVC ⊿x =2x 2-1-1・2x1-1+0 = 0 ⇔ 2x-2=0 ∴ x=1 ⊿AC ⊿x =2x 2-1-1・2x1-1+ 0 -1・8x-1-1= 0 ⇔ 2x-2-8x-2= 0 ⇔ 2x-2- = 0 = x2-2x+5+8x-1 … ★ 公 式 ◆ = x1 -1 x ◆ = x1 -2 x2 8 x2 解法 1 :最低点をとる方法(『解説』の方法) ⇔ x3-x2-4= 0
∴ x=2 この結果を②式に代入すると、縦軸の「価格」となります。 22-2・2+5+4=9 ∴ P(=AC)=9(肢 4 が正解) (1) 操業停止点の計算 操業停止点は、平均可変費用曲線(AVC)と限界費用曲線(MC)との交点に対応します。 限界費用は以下のように計算できます。 (2) 損益分岐点の計算 損益分岐点は、平均費用曲線(AC)と限界費用曲線(MC)との交点に対応します。よって、 ②式と③式からAC=MCを計算すると、 これを②式に代入すると(③式でも可)、 22-2・2+5+4=9 ∴ P(=AC)=9(肢 4 が正解) MC= = 3・x⊿TC 3-1-2・2x2-1+1・5x1-1+0=3x2-4x+5 …… ③ ⊿x x AC O ● AC 2 9 ⇔ x2(x-1)= 4 … ☆ ♪ 左辺がx2と(x-1)の掛け算になっていて、右辺が 4 になっています。この場合、掛け算で 4 になる数字(整 数)の組み合わせを考えます。1×4、2×2、4×1 の 3 つです。このうち(x-1)=1 であるとするとx=2。 このときx2=4 となり、☆式のつじつまが合います。し たがって、☆式を満たすxはx=2 と判断できます。 x2-2x+5+ = 3x2-4x+5 ⇔ 2x2-2x- = 0 8 x 8 x ⇔ x3-x2-4= 0 ⇔ x2(x-1)= 4 ∴ x=2 解法 2 : AVC=MC、AC=MCと式を立てて解く方法 ここで、①式と③式からAVC=MCを計算すると、 x2-2x+5=3x2-4x+5 ⇔ x(x-1)=0 ∴ x=1 これを①式に代入すると(③式でも可)、 12-2・1+5=4 ∴ P(=AVC)=4
(5) 供 給きょうきゅうの価格か か くだんりょくせい弾 力 性 【 参 考 】 ① 変化率について ② 供給の価格弾力性(εS) ※ 式の変形について 供給の価格弾力性 : 価格が 1%変化した時に、供給量が何%変化するかを示す。 εS = = = × 供給量の変化率 価格の変化率 ⊿x x ⊿P P ⊿x ⊿P P x 弾力性 …… “反応”の大きさを示す概念 “変化率● ● ●”の大きさで表現する 変化前 P0=200 円 価格の変化分 ● ● ● (⊿P=-60) 60 円の下落 変化後 P1=140 円 価格の変化率 = = = 価格の変化分 元の価格 -60 円 200 円 ⊿P P ・反応が大きい ⇒ 弾力的 ・反応が小さい ⇒ 非弾力的 = = = = ⊿x x ⊿P P ⊿P・x P ⊿x・x x ⊿P・x P ⊿x ⊿P・x・P P ⊿x・P ⊿P・x ⊿x・P 分子と分母にxを 掛けて約分する。 分子と分母にPを 掛けて約分する。
【 供給曲線の傾きと供給の価格弾力性の関係 】 ※ 図形的に整理すると以下のようになる(E点を前提として計算する場合)。 ⅰ).供給曲線がプラスの縦軸切片を持つ直線であるケース ⇒ SBに比べて非弾力的 ⇒ SAに比べて弾力的 P x O A ● ● ● SA SB P1 P0 x0 xA1 xB1 ◆ εS = × = × = ⊿x ⊿P P x (B) (A) (B) (C) (C) (A) εS >1 同じ供給曲線上であれば、どの点で 計算しても供給の価格弾力性は必 ず 1 より大となる。 P x (A) S ● ● ● (B) (C) E ● O
ⅱ).供給曲線が原点を通る直線であるケース ⅲ).供給曲線がマイナスの縦軸切片を持つ直線であるケース εS =1 同じ供給曲線上であれば、どの点で 計算しても供給の価格弾力性は必 ず 1 となる。 εS <1 同じ供給曲線上であれば、どの点で 計算しても供給の価格弾力性は必 ず 1 より小となる。 P x O (A) S ● (B) (C) E ● P x O (A) S (B) (C) E ● ● ● ●
~★ 練習問題 ★~ (V問題集 №009) 完全競争市場において、ある財を生産する企業の平均費用曲線が、次式で示され、財の価格が 100 である場合、利潤が最大になる生産量とその時の利潤の組み合わせとして、正しいのはど れか。 AC=Y2-9Y+52 生産量 利潤 1. 4 272 2. 6 396 3. 6 566 4. 8 448 5. 8 756 AC:平均費用 Y:生産量 最低限解くべき問題 番 号 1 回目 2 回目 コメント № 006 / │ / │ 基本中の基本! № 009 / │ / │ これも大変良く見る出題パターンです。 № 011 / │ / │ №008 と大差ありません。 № 013 / │ / │ はじめは飛ばしても構いませんが、練習になる良い問題です。 № 016 / │ / │ 「利潤=収入-費用」です。 № 019 / │ / │ 操業停止点の計算は絶対にできるようにしておきましょう! № 022 / │ / │ 必ず“操業停止点”を先に計算する湯にしましょう。 № 023 / │ / │ これは「価格」ではなく「生産量」ですよ。 № 024 / │ / │ 必ず“操業停止点”を先に計算です。 № 030 / │ / │ 講義内容の確認に良いですね。 № 032 / │ / │ ありがちな結論です。よく出ます。 № 033 / │ / │ 誤りの選択肢も丁寧に考えてみましょう。 № 036 / │ / │ 「短期供給曲線」の厳密な示し方の例です。
まず平均費用曲線(AC)から総費用曲線(TC)を導きます。 次に、①式を生産量で微分して限界費用(MC)を求めます。 ここで②式を使って利潤最大化条件(P=MC)を立てます。財価格(P)は 100 ですから、 100=3Y2-18Y+52 ⇔ 3Y2-18Y-48=0 ⇔ Y2-6Y-16=0 ⇔ (Y-8)(Y+2)=0 ∴ Y=8、-2(生産量はマイナスにはならない) となります。 最後に利潤(π)を計算します。平均費用(AC)が問題文にあるので、『解説』にあるような計算 を行っても構いませんが、ここでは基本に立ち返って、利潤(π)を収入と費用(TC)(①式)の差 をとって計算します。 利潤(π)=収入(R)-費用(TC) =100Y-(Y3-9Y2+52Y)=―Y3+9Y2+48Y …… ③ ③式にY=8 を代入します。 π=―512+576+384 ∴ π=448(肢 4 が正解) 以 上 利潤最大化条件 P=MC (100) 総費用曲線(TC) 平均費用曲線(AC) × 生産量 TC Y AC= 微 分 AC= ⇔ TC=Y・AC ⇔ TC=Y(YTC 2-9Y+52) Y ∴ TC=Y3-9Y2+52Y …… ① MC= = 3・Y⊿TC 3-1-2・9Y2-1+1・52Y1-1=3Y2-18Y+52 …… ② ⊿Y 「掛けて-16、足して-6」 になる数の組み合わせを考える。