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サンプリング点 f = 1/2 f = 1/2 f = 2/2 f = DC f = 3/2 f = 1/2 f = 4/2 f = DC f = 5/2 f = 1/2 A/D 出力周波数 1/ 1/2 2/2 3/2 4/2 5/2 6/2 エリアシンク 信号 ( 妨害波成分 ) A/D 入力で

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(1)

受信機のデジタル信号処理

データビット幅と S/N A/D コンバータのビット幅が広いほど量子化雑音が低減され高 S/N が実現できる。ビット幅と S/N 理 論値の関係は以下の式で表される。 S/N = 6.02 × ビット幅 + 1.76 [dB] ビット幅 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 S/N[dB] 7.8 13.8 19.8 25.8 31.9 37.9 43.9 49.9 55.9 62.0 68.0 74.0 80.0 86.0 92.1 98.1 ただし、この S/N は A/D コンバータの各種誤差を含んでいないので実際はもう少し悪くなる。また、 A/D コンバータのノイズフロアも考慮していない。それに受信機で使用する場合は A/D コンバータへの 入力信号の S/N の方が低いことが多いので、上記のような S/N にはならない。逆に言えば A/D コンバー タのビット幅による S/N は A/D コンバータへの入力信号の S/N より充分高い(30dB 以上)値にする必要が ある。そうでないとデジタル処理系のために雑音指数が劣化する。通常はこのような後段回路が雑音指 数に影響を与えることはなく、影響が出るような設計は好ましくないし、そのために RF アナログ系の 性能を上げるよりデジタル系を改善する方が設計上楽である。 A/D コンバータのノイズフロアと入力信号レベル A/D コンバータにはノイズフロアがあり、そのレベルより充分大きな 信号を入れないと S/N が確保できない。通常は A/D の分解能を生かす ためにフルスケールいっぱいを使えるようなレベルまで入力信号を増 幅して A/D に入力するが、フルスケール以下で使用する場合はノイズ フロアと入力レベルの関係に注意が必要である。ビット幅と S/N で述 べたのと同様に総合雑音指数が劣化しないよう、A/D への入力レベルは A/D のノイズフロアより充分高い(30dB 以上)値にする必要がある。 A/D のフルスケールと入力信号レベル ビット幅を有効に利用するためには入力信号は A/D のフルスケールまで増幅して入力するのが望まし いが、アナログ系帯域内に大きな信号が入った場合に A/D が飽和して復調音が歪むため、ビット幅によ り S/N が低下しない程度に入力レベルを下げ(AGC をかける)、余裕分を近接周波数信号の大入力への対 応に振り向けるのがいい。AGC は最終的には A/D が飽和しないように制御する。 サンプリングレートとアンチエリアシングフィルタ A/D コンバータでアナログ信号をサンプリングする場合、サンプリング定理により必要なサンプリン グ周波数 fs は使用帯域幅の 2 倍である。例えば 8kHz までの周波数を使用する場合はサンプリング周波 数は 16kHz 以上である。サンプリングレートは低いほどデジタル処理回路の負担が少なくなり(フィル タタップ数が少なくてよい)、ハードウェアなら規模が小さくなるし、DSP 等でソフトウェア処理する場 合はより低速の DSP が使用できる。ただし、サンプリングする際に「折り返し」(エリアシング)という 現象が発生するため、サンプリングレートは低いほどアナログフィルタ回路の負担が大きくなる欠点が ある。 サンプリング周波数を fs とした場合、いろいろな周波数信号をサンプリングした結果を図?に示す。 1/2fs 以下の周波数では A/D 変換器入力時の周波数がそのまま出力されるが、1/2fs 以上の周波数の入 力信号は、A/D 変換されると 1/2fs 以下の周波数に変換されてしまう。このような現象をエリアシング(折 り返し)と呼ぶ。一度折り返されてしまうと使用帯域内の信号と混信してしまいフィルタで除去不可能 なので、A/D 変換前のアナログ信号の段階で 1/2fs 以上の周波数成分を充分減衰させる必要がある。そ のためのアナログフィルタを「アンチエリアシングフィルタ」と呼ぶ。アンチエリアシングフィルタに 要求される減衰特性は、サンプリング周波数と使用帯域幅の関係で決まる。サンプリング周波数=使用 帯域幅×2、つまり最低限のサンプリング周波数の場合、使用帯域を少しでも超えたら折り返し信号と して帯域内に落ち込むために、帯域上限を越えたら数 10dB 減衰させるようなフィルタが必要である。 しかしこのようなフィルタは実現不可能であり、確実に折り返し信号の落ち込みが発生する。 A/D ノズフロア 30dB 以上 A/D 入力信号

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サンプリング点

f = 1/2fs

f = 2/2fs

f = 3/2fs

f = 4/2fs

f = DC

f = 1/2fs

f = DC

f = 1/2fs

f = 5/2fs

f = 1/2fs

1/2

fs

2/2

fs

3/2

fs

4/2

fs

5/2

fs

6/2

fs

0

A/D入力

周波数

1/fs

A/D出力

周波数

A/D入力での1/2fs以上の周波数成分は、A/D変換後は1/2fs以下

の周波数に変換されて妨害波となる

エリアシング信号(妨害波成分)

A/D入力 周波数 A/D出力周波数 1/fs 0 A/D入力 周波数 減衰 1/2fs 1/2fs 0 使用帯域幅 1/2fsでとんでもなく急激に切れる アナログLPFが必要(実現不可能) 使用帯域幅

最も低いサンプリング周波数の場合

(fs=使用帯域幅×2)

エリアシング周波数 fs fs そこで通常はサンプリング周波数を使用帯域幅×2より少し高く(例えば 1.2 倍)しておく。この場合、 アンチエリアシングフィルタは使用帯域内でフラットな振幅特性とし、1/2fs で数 10dB 減衰するような 特性とする。帯域上限と 1/2fs が離れるほど減衰が緩やかで済むため、現実の部品のQで実現可能なフ ィルタ仕様になり折り返しが落ち込むことは無くなるが、サンプリング周波数が高くなってデジタル処 理系の負担が大きくなるので両者のトレードオフで決定する。ただ、サンプリング周波数を 1.2 倍や 1.3 倍にしてもアンチエリアシングフィルタに要求される減衰特性は急峻で、楕円関数フィルタや多段チェ ビシェフフィルタが必要であり、回路が大型化し調整も手間がかかり、減衰特性は確保できても群遅延

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偏差が大きくなってデジタル変調信号(PSK 等)の復調に悪影響が出ることは避けられない。また、FPGA 等ハードウェアによるデジタル処理用 LSI の大規模化、低価格化や DSP の高速化、低価格化が進んで少々 のデジタル処理系負担増は問題がなくなり、現在ではよほどの理由がない限りはこの方式は使用される ことはない。 A/D入力 周波数 1/fs 0 A/D入力 周波数 減衰 1/2fs 1/2fs 0 使用帯域幅 帯域上限まで通過し1/2fsで 切れるアナログLPFを設計 (楕円関数、多段チェビシェフ) 使用帯域幅 A/D出力周波数

サンプリング周波数を少し上げる場合

(fs>使用帯域幅×2)

エリアシング周波数 fs fs オーバーサンプリング 先述のように必要最低限のサンプリング周波数付近でサンプリングを行う場合う、アンチエリアシン グフィルタには非常に鋭い減衰特性が要求されデメリットが大きい。一方、デジタル処理用半導体の進 歩はめざましい。そのため、近年ではアナログ系の負担をデジタル処理系に移し、サンプリング周波数 を数倍(クロック信号生成の都合で通常は 2n倍)に上げてサンプリングし、帯域内の半分以下しか使わな いような構成とすることがほとんどである。こうすることにより折り返される周波数が数倍に上昇し、 アンチエリアシングフィルタに要求される特性は緩やかになり簡単な回路で済むようになり、群遅延特 性もほぼフラットにできる。このような方式をオーバーサンプリングという。帯域幅の4倍(最低サン プリング周波数の2倍)でサンプリングする場合は「2倍オーバーサンプリング」、帯域幅の8倍では「4 倍オーバーサンプリング」と呼ぶ。倍数が大きいほどアンチエリアシングフィルタに要求される特性は 緩やかになり、簡単なフィルタで済む。 A/D入力 周波数 1/fs 0 A/D入力 周波数 減衰 1/2fs 1/2fs 0 使用帯域幅 緩やかなアナログLPFでOK 数段のベッセルフィルタ使用可 (小型、群遅延特性良い) 使用帯域幅 A/D出力周波数

オーバーサンプリングの場合

(fs=使用帯域幅×4,8,16・・・・)

1/4fs以下 1/4fs以下 エリアシング 周波数 fs fs

(4)

間引き(デシメーション) オーバーサンプリングしたままだとサンプリング周波数が高く、その後の処理速度やハードウェア規 模がオーバーサンプリングしない場合の数倍必要となるため、通常は間引き(デシメーション)を行って 必要最小限のサンプリング周波数に下げる。ただし、間引きを行うとアンチエリアシングフィルタの帯 域内だが間引き後のサンプリング周波数の 1/2 以上の周波数成分が折り返されて帯域内に落ち込むため、 間引き前にデジタル LPF でその周波数成分を取り除く必要がある。このようなフィルタを「デシメーシ ョンフィルタ」と呼ぶ。 1/2間引き 2個に1個だけ データを取る 1/2間引き ・間引きとはn個に1個のサンプリングデータだけ使い、他は捨てること。 ・間引き後のサンプリング周波数をfs'とすると、間引き後は1/2fs'以  上の周波数成分がエリアシングのように折り返され帯域内に落ち込   む。よって間引き前にデジタルLPFで1/2fs'以下のみ通過させるように  する必要がる。 入力 周波数 出力 周波数 1/4fs 1/2fs (間引き後の サンプリング周波数) fs エリアシング信号 アンチエリアシングフィルタで抑圧 アンチエリアシングフィルタを通過し、間引 きで帯域内に落ち込む周波数 ① ② ① ② 減衰量 A/D入力 周波数 1/2fs 0 使用帯域幅

間引きとデシメーションフィルタ

(2倍オーバーサンプリングの場合)

1/4fs fs 使用帯域幅 デシメーション フィルタで取り 除く周波数帯域 1/4fs 間引きによ り帯域内に 落ち込む周 波数範囲 fs:間引き前のサンプリング周波数

アンチエリアシングフィルタ特性

アンチエリアシングフィル タで取り除く周波数帯域 減衰量 1/2fs

デシメーションフィルタ特性

fs 0 入力 周波数

(5)

アンチエリアシング

フィルタ(LPF)

A/D

コンバータ

デシメーションフィルタ

(FIRフィルタ)

間引き

(ラッチ)

分周

(n=2,4,8・・・)

サンプリングクロックfs fs=fc×N (N=4,8,16・・・・) 入力信号 カットオフ周波数=fc クロック 復調等のデジタル 信号処理系へ サンプリングレート=fs サンプリングレート=fs/n カットオフ周波数=fc クロック クロック

n倍オーバーサンプリングの系統図

オーバーサンプリング次数が高いとデシメーションフィルタの減衰特性がきつくなり、フィルタに必要 なタップ数が大きくなりハードウェア規模が大きくなったり DSP 処理時間が増大するので、アンチエリ アシングフィルタの仕様とトレードオフを行う必要がある。通常は 2~4 倍オーバーサンプリングが両 者のバランスがよい。

非現実的なタップ数が必要な場合は FIR フィルタではなく CIC フィルタを使用する。CIC はアナログ フィルタの楕円関数フィルタのような有極フィルタ(有限周波数で減衰量が無限大になる点がある)で、 利得に周波数特性があるので、要求されるフィルタ仕様によってはそれを補正する FIR フィルタ(振幅 イコライザ)が必要となる場合がある。

(6)

アンダーサンプリング エリアシングにより 1/2fs より高い周波数の信号は 1/2fs 以下に折り返されて混信となるが、逆転の 発想でエリアシングを利用して高い周波数の信号を低いサンプリング周波数でサンプリングしてしま お う と い う の が ア ン ダ ー サ ン プ リ ン グ で あ る 。 入 力 周 波 数 が nfs ~ (n+1/2)fs の 場 合 ( た だ し n=1,2,3・・・・・)、エリアシングによりサンプリング後の周波数は 0~1/2fs に変換され、入力周波数が (n-1/2)fs~nfs の場合はスペクトラムが反転して 0~1/2fs に変換される。よってサンプリング周波数 を適当に選べば外部で周波数変換を行わなくてもサンプリングと同時にベースバンドに周波数変換で きる。ただし、帯域幅はサンプリング周波数の 1/2 であり、入力周波数の半分ではないので注意。アン ダーサンプリングが適用できるのは入力信号の中心周波数に比較して帯域幅がかなり狭い場合だけで ある。

1/2

fs

fs

3/2

fs

2fs

5/2

fs

3fs

0

A/D入力

周波数

1/fs

A/D出力

周波数

エリアシング信号

4fs

5fs

7/2

fs

9/2

fs

この周波数を入力

エリアシングにより0~1/2fsに周波数変換

される。スペクトラムは反転しない。

受信機の 455kHz IF 信号のように、入力信号の中心周波数に比較して帯域幅が狭い場合、通常と同じ 構成(例えば fs=1MHz)でサンプリングを行うと DC~455kHz までの全ての周波数情報を取り扱うことがで きるが、情報が載っているのはそのうち数 kHz 程度しかなく、回路の能力としては無駄が多い。

A/D

コンバータ

デシメーション

フィルタ

間引き

f=455kHz BW=10kHz 復調等のデジタル 信号処理系へ IF入力

アンチエリアシング

フィルタ

4倍オーバーサンプリング A/D変換系

920kHz 3680kHz 920kHz 1/2fs= 1840kHz 460kHz 使用可能帯域幅 実際に使用 する帯域幅 アンチエリアシングフィルタ特性 このため、以下のような構成が使われる。まずアンチエリアシングフィルタとして 455kHz セラミッ クフィルタを使用し急峻な減衰特性を得る。ただし群遅延歪が大きいので帯域幅は検討が必要である。 セラミックフィルタは減衰が急峻なのでオーバーサンプリングする必要はなく、充分減衰する周波数を ナイキスト周波数とする。これでもサンプリング周波数に比べて使用帯域幅は狭く無駄が多いため、デ ジタル処理でもっと低い IF 周波数やベースバンドに周波数変換し、間引きを行いサンプリング周波数 を下げる。この方式ではデジタル処理系の負担が大きいのでデバイス選定時にゲート数は要注意である。

(7)

A/D コンバータ LPF 間引き f=455kHz 復調等のデジタル 信号処理系へ IF入力

デジタルダウンコンバータを使用した構成

940/32= 29.375kHz 940kHz fs=940kHz 1/2fs= 470kHz 使用可能帯域幅 実際に使用 する帯域幅 455kHz BW=10kHz セラミックフィルタ セラミックフィルタ 通過特性

455kHz 5kHz 14.69kHz1/2fs= デジタルダウンコンバータ 実際に使用 する帯域幅 セラミックフィルタ 通過特性 群遅延歪の仕様に より帯域幅を決定 別の方法としては、ベースバンドに周波数変換してサンプリングする方法がある。これなら帯域幅を 全て有効利用が可能でサンプリング周波数を下げることができるが、アナログでの周波数変換が必要で スプリアスが出やすい。 A/D コンバータ デシメーション フィルタ 間引き f=455kHz BW=10kHz 復調等のデジタル 信号処理系へ IF入力

455kHz アンチエリアシング フィルタ ベース バンド

アナログダウンコンバータ+

4倍オーバーサンプリング A/D変換系

20kHz 80kHz 80kHz 以上のような各方式に対し、アンダーサンプリングでは周波数変換と A/D 変換を同時に行うため、回 路は簡単になる。 -3dB -100dB 10kHz 20kHz 455kHz 445kHz 465kHz

455kHz IFフィルタ特性

A/D

コンバータ

f=455kHz BW=10kHz 復調等のデジタル 信号処理系へ IF入力

455kHz

BW=10kHz

IFフィルタ

バンドベース

アンダーサンプリング A/D変換系

40.455kHz A/D入力 周波数 A/D出力 周波数 20.23 40.46 80.91 121.36 101.14 60.68 141.59 161.82 182.05 202.27 222.50 242.73 262.95 283.18 303.41 323.64 343.86 364.09 384.32 404.55 424.77 445.00 465.23 エリアシングにより0~1/2fsに周波数変換される。スペクトラムは反転しない。 この周波数範囲の信号も全てA/D出力帯域内に落ち込むのでノイズ、スプリアスに注意

(8)

サンプリング周波数は、IF 信号の通過周波数帯がちょうどベースバンドに落ちてくるよう選ぶ必要が ある。ただし、455kHz フィルタの漏れによるエリアシングにも注意が必要であり、両者の兼ね合いでサ ンプリング周波数を決める。 アンダーサンプリングは構造が簡単で回路規模も小さいがデメリットもある。 まず、A/D コンバータの入力周波数範囲が使用周波数まで延びているものでないと使えない。通常は ナイキスト周波数(サンプリング周波数の半部)までしか必要ないので最大サンプリング周波数の半分 程度しか性能を保証しないが、この場合、A/D コンバータのアナログ部分の利得が低下して使用できな いので注意。市販品の中にはアンダーサンプリングを意識し、サンプリングレートの数倍までアナログ 系の帯域を広げた A/D コンバータもあるので、そのような製品を使用すること。 また、アンダーサンプリングでは入力周波数以下の全てのエリアシング信号(熱雑音も含む)が帯域内 に落ち込んで加算されるので、使用周波数以外に信号があるとスプリアスとなり妨害を受けることにな ったり、使用周波数帯域以外のノイズレベルが高いと S/N が大きく低下する。そのため A/D コンバータ の前に使用帯域外信号を充分減衰させるようなフィルタを入れる必要がある。 また、入力信号周波数が高いので通常のサンプリングよりサンプリングクロックの揺らぎ(ジッタ)に より A/D 値が大きく変動するため、ジッタが少ない(位相雑音特性が良好な)サンプリングクロックが必 要である。

通常の

サンプリング

アンダー

サンプリング

ジッタによる クロックの揺らぎ ジッタによる サンプリング誤差 このようにアンダーサンプリングは回路が非常に簡単でデジタル系回路規模が少なくて済むのがメ リットだが、今の FPGA 集積度なら 455kHzIF なら通常のサンプリングをして間引きしてもロジック数が 不足することはないので、アンダーサンプリングはほとんど行われない。

(9)

サンプリング周波数と DSP 処理速度 現在の A/D コンバータのサンプリング速度は超高速で、8bit 3G サンプル/秒という製品すら存在する。 これだけのサンプリング速度があればサンプリング定理から言えば 1.5GHz の信号さえ取り扱いが可能 であるが、別の点で問題がある。それはデジタル信号処理回路の処理速度である。 デジタル信号処理の場合、前のサンプリング信号を入力して次のサンプリング信号が来る前に処理を 終わらせる必要がある(入出力のサンプリング周波数が同一の場合)。信号処理系が全てハードウェアで 構成されワンクロックで全処理が終わるような並列回路なら、問題となるのはハードウェアの最大クロ ック周波数や遅延などの性能であるので、それ相応の速度で動く FPGA なりを選択すればよい。今の LSI なら外部クロック 1GHz は無理でも平気で数 100MHz で動くだろう(ただしちゃんと同期回路設計して速 度優先の条件でコンパイルする必要はあろう)。 しかし、DSP を使用してソフトウェアで処理をする場合は話が全く異なる。例えば 24 タップの FIR フ ィルタを構成する場合、ハードウェアで並列構成すれば1クロックで全ての計算が完了するが、DSP の 場合は 24 回の積和演算が必要であり、通常の DSP なら処理に 24+αクロック(ただしサンプリングクロ ックではばく DSP のシステムクロック)必要となる。なお、DSP ではなく汎用 CPU を使用すると積和演算 は 1 クロックではできないのでもっと時間がかかる。DSP の種類によってはコア内部に複数の演算ユニ ットを持ち、演算内容によってはワンクロックで 8 演算を同時にこなすものもあるが、それでも専用ハ ードのように1クロックとはいかない。その代わり DSP はソフトしだいで多様な処理が可能だが専用ハ ードでは他の処理は不可能であるし、デジタルフィルタのような積和演算では特に乗算器のハードウェ アが大きくタップ数やビット幅が増えると消費するゲート数が急激に増加する。

ラッチ

係数2

加算器

係数1

ラッチ

係数3 :乗算器

ラッチ

係数23

ラッチ

係数24 入力 フィルタ出力

ハードウェア(並列)による24タップFIRフィルタ処理

クロック入力まで待機 計算結果格納レジスタクリア SR1にサンプリングデータ格納 前処理 シフトレジスタ(SR)を24個準備(SR1~SR24) 乗算用係数を24個準備 SR1×係数1を計算、レジスタに加算 SR24×係数24を計算、レジスタに加算 SR1~SR24をシフト レジスタ内容を出力 タ ッ プ 数 繰 返 し

ソフトウェアによる24タップFIRフィルタ処理

お お よ そ 1 命 令 1 D S P ク ロ ッ ク 必 要 ハードウェアなら1クロックで計算終了

(10)

先に述べたようにデジタル信号処理は次のクロックが来るまでに処理を終える必要があるので、サン プリング周波数が上がると DSP が処理に使える時間が短くなる。最初に書いた 3GHz のサンプリング周 波数ともなると最高性能の DSP の内部クロック周波数をも上回ってしまい、現実的には DSP の処理速度 が追いつかず使用不能となる。おそらくこんな周波数では専用ハードウェアで処理しているだろう。 こんな極端な例でなく、例えば 10MHz のサンプリング周波数で考えてみよう。市販されている一般的 な性能の DSP の処理速度は 200MIPS(1 秒間に実行できる命令数が 200 万個)程度であり、サンプリング 間隔の時間内に実行できる演算回数はたった 20 回しかない。先の 24 タップの FIR フィルタさえ実現で きないのだ。実際に DSP で処理する内容はフィルタリング、復調、AGC 等があり、諸元にもよるがおそ らく 1000 命令程度の演算は必要だろう(経験上では QPSK の復調だけでも数 100 命令程度)。1000 命令と した場合、200MIPS の DSP で処理できる最高サンプリング周波数は 200kHz となり、A/D コンバータの性 能より遥かに下回る。現在の DSP 内蔵受信機でも IF 以降でしかデジタル処理しない理由の一つだろう。 DSP を使用するとハードは安価になりソフトの変更で様々な機能を追加できて柔軟性に富むため広く 使用されているが、上記のように DSP は処理速度のボトルネックとなるため、DSP での処理時間見積(1 サンプル毎の命令数)を誤るととんでもないことになる。そのため、余裕を持った処理速度の DSP を選 定したり、複数の DSP を使用して処理を分散させたり、必要最低限のサンプリング周波数にしたり、FPGA 等のハードウェアと組み合わせてソフト/ハードに処理を分散させたりするのが安全だ。DSP の処理能 力に余裕がないとソフトウェアのバージョンアップで機能アップなんてこともできない。類似機材を参 考に最低現のハードウェアスペックを推測し、予算が許す範囲内でハードウェアを増強しよう。 どちらにしても、DSP を使用する場合は現状の A/D コンバータの速度と比較してかなり低速でしか信 号処理はできない。どうしても高速な処理が必要な場合は FPGA 等を使用してオールハードウェア構成 にする必要がある。基本的にはデジタル信号処理の計算過程そのものは単純であり、ハードウェア化は 可能である。ただし、デジタルフィルタのビット数、タップ数によってはゲート数が巨大になるので、 そのような部分だけ DSP を使うか、もしくはもっと高いクロックで動作する積和演算器を時分割で使用 してゲート規模を減らすような工夫が必要かもしれない。

(11)

SSB 復調回路 図?に一般的なアナログ回路による SSB 復調回路例を示す。455kHz 等の IF 周波数で受信帯域幅を制 限すると同時に逆サイドバンドを抑圧してからプロダクト検波する。USB/LSB の切換は局発周波数制御 によって行う。フィルタは IF 周波数(通常は 455kHz)で 500Hz 程度~数 kHz 程度の帯域幅を要求される ため LC フィルタでは実現不可能で、クリスタルフィルタやセラミックフィルタが使用される。このよ うに、アナログ方式では基本的に逆サイドバンド信号は周波数差を利用してフィルタで抑圧するのが普 通である。この場合、フィルタのQが高いので群遅延特性は悪化する。

BPF

IF入力

LPF

(AF)

局発 (USB) 周波数 受信 信号 局発 (LSB) 帯域幅 帯域幅 復調出力 局発

アナログ処理SSB復調回路

USB/LSBで 周波数切換 一方、デジタル方式の回路例を図?に示す。デジタル方式ではアナログ方式と同じことをやることも 可能であるが、IF 周波数で数 100Hz のフィルタを実現するのはハード規模が大きくなったりソフトウェ ア処理速度が遅くなって無理があるため、やるとしてもデジタル的に IF 周波数を落としてから行うこ とが多い。ただし、通常は算術的に逆サイドバンドを抑圧する方法で復調を行うことが多い。

復調出力

90°

IF入力 + 乗算器 乗算器 加減算器 移相器 局発

LPF

LPF

90°

移相器

デジタル処理SSB復調回路

cos(ωLt) sin(ωLt) cos(ωL1)t + cos(ωL1)t + cos(ωL+ω2)t + cos(ωL2)t sin(ωL+ω1)t + sin(ωL1)t + sin(ωL2)t + sin(ωL2)t sin(ωL1)t + sin(ωL-ω2)t = sin(ωL1)t - sin(ω2-ωL)t cos(ω1t) + cos(ω2t) ωL ω2 ω1 USB LSB 局発 cos(ωL1)t + cos(ωL2)t - cos(ωL-ω1)t + cos(ω2L)t 周波数 cos(ωL1)t + cos(ω2L)t = +:LSB、-:USB cos(ω1t):IF入力信号(LSB) cos(ωLt):局発信号 cos(ωL1)t:復調信号(LSB) cos(ω2t):IF入力信号(USB) cos(ω2-ωL)t:復調信号(USB)

BPF

(AF)

帯域幅 この方式では局発位相を 90°ずらして検波し、デジタル変調の I/Q チャネルと同じ直交するベースバ ンド信号を得る。ただし、このままではベースバンド信号は目的のサイドバンド+逆サイドバンド信号 が折り返され重なった状態で混信している。90°位相が遅れた局発で検波したベースバンド信号の位相 をヒルベルト変換(広帯域で位相を 90°ずらすフィルタ)で 90°遅らせ、もう片方のベースバンド信号 と加算/減算することで USB/LSB のみが得られる。これと同じことをアナログ回路で行えば同じように SSB が復調できるが、広帯域にわたって 90°位相差を得るフィルタをアナログ回路で作るのは困難なこ と、実現しても経年変化で漏れが増えるためほとんど行われていない。位相差が 90°からずれると逆サ イドバンドの漏れが大きくなるため混信となる。デジタル処理の場合、ビット幅による丸め誤差、フィ

(12)

ルタ定数丸め誤差、フィルタタップ数等、計算精度に起因する誤差が位相誤差(漏れの大きさ)となるが、 デジタル系が 16 ビット固定小数点ならば普通は 60dB 以上は達成できる。 逆サイドバンド抑圧は算術演算で行うため、IF フィルタで逆サイドバンド抑圧を行う必要がないので IF フィルタは緩やかな特性で構わない。受信帯域幅制限は復調後の AF 周波数帯で行えるため、フィル タの負担は小さくなる。 問題点 ・CW 復調時、可変ビートができない(AF で帯域制限を行うため)。 ・IF 帯域幅が広いままなので、AF では帯域外の信号でも IF には入力され、そのレベルが大きいとオー バーフローして復調音が歪む。よって AGC は IF でオーバーフローしないようにかけることになるが、 AF 帯域外でも IF 帯域内に強い信号があるとそちらで AGC がかかってしまう。 ・同様の理由で、A/D 入力での IF 帯域幅は広いままなので、アナログ系 IF 帯域内に強い信号があると そちらで AGC がかかってしまう。これを防止するにはアナログ系 IF 帯域幅をギリギリまで制限するか、 A/D をダイナミックレンジの広いものにする。ただ、A/D のダイナミックレンジはさほど広がらないた め、現実的には A/D の前にセラミックフィルタ等を入れてできるだけ帯域を狭くするのが得策である。

参照

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