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重症度 HG 1 意識障害の程度 JCS 2 軽症 1 2 清明 ~ぼんやりしている 0~1 中等症 3 見当識障害 ( 返答まちがいあり ) 2~20 傾眠 ( うとうとしている ) 重症 4 半昏睡 ~ 昏睡 ( 返答なし~ 反応なし ) 30~200 劇症 5 深昏睡 ( 瀕死 ) 300 1

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Academic year: 2021

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- 1 –

くも膜下出血 ( SAH )

くも膜下出血( subarachnoid hemorrhage = SAH )とは、くも膜下腔に出 血する病態をいい、SAH の原因の約 80%以上は脳動脈瘤の破裂によります。 とくに 40 歳以上の成人年齢層で脳底部に SAH を認めた場合その可能性はさら に高くなり、SAH の治療はすなわち破裂脳動脈瘤の治療といえます。 脳動脈瘤は、脳底部血管とくにその分岐部において、生まれつき(先天的に) 存在する弱い部分に後天的な高血圧や動脈硬化など血行力学的ストレスが加わ ることにより発生すると考えられています。 このような脳動脈瘤を有する人は、全人口の約 6%といわれますが、加齢とと もに瘤サイズは増大し、やがて破裂し SAH をきたすと考えられています。しか し、脳動脈瘤が SAH をきたすのは年間約 1%といわれ、脳動脈瘤には破裂の危険 性の高い瘤とそうでないものがあり、一般に(風船のように膨らんだ)のう状 動脈瘤で破裂の危険性は大きく、瘤自体の形状や大きさも破裂の因子になるこ とが知られています。 SAH の発症は、成人のとくに女性に好発し、他に高血圧、喫煙、飲酒、ストレ スなどとの関係が指摘されていますが、これらはいずれも絶対的な因子ではな く、したがって SAH はいつ・どのような状況でも発症するといえます。 さらにやっかいなことは、通常脳動脈瘤は破裂するまで無症状であり、大多 数の人は、脳動脈瘤の存在に気付かず社会生活を営んでいるという事実です。 ある日、それまで元気であった人が突然発症し、重症の場合には意識障害にお ちいり、治療を開始してはじめて脳動脈瘤の存在が判明するわけです。 SAH の症状 は強烈な頭痛が有名ですが、初期の頭痛は比較的軽いものもあり、 ウォ−ニング・サイン(警告徴候)と呼ばれます。また、高率に嘔吐を伴うこ とが特徴的で、このような頭痛発作では第一に SAH を疑います。 さらに、SAH では意識障害やけいれん発作が初発症状のこともあり、これらの 症状は SAH 初期の脳虚血によるものと考えられ、一過性のことが多く、意識の 回復につれて頭痛を訴えるようになります。 SAH 重症度(ハント・グレイド=HG①)は意識障害の程度(ジャパン・コ−マ・ スケ−ル=JCS②)と相関することから、SAH の治療予後を知る上で基本となり、 重症度を軽症∼劇症に分類し検討しました [ 表−1 ]。

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- 2 – 重症度 HG① 意 識 障 害 の 程 度 JCS② 軽 症 1・2 清明∼ぼんやりしている 0∼1 中等症 3 見当識障害(返答まちがいあり) 傾眠(うとうとしている) 2∼20 重 症 4 半昏睡∼昏睡(返答なし∼反応なし) 30∼200 劇 症 5 深昏睡(瀕死) 300 ①ハント グレイド:くも膜下出血重症度、②ジャパン コーマ スケール:意識障害分類 [ 表−1 ] SAH 重症度と意識障害の程度 SAH の診断、とくにその初期診断において CT は必須であり、前述の症状より SAH を疑うときは、できるだけ早期の CT 検査を行います。CT は、同時に SAH の 程度と拡がり、合併する脳内血腫や水頭症の有無の診断を可能にし、今後の診 断・治療方針が決定されます [ 図−1 ]。 しかし、SAH が軽症の場合は、頭痛を訴え歩行来院し、CT のみでは出血が判 明せず、MRI(フレア−画像)・MRA 診断が必要になることがあります。 確定診断は、造影剤の点滴静注による三次元 CT アンギオ(3D-CTA)またはカ テ−テル法による脳血管撮影(DSA)が必要です。 ただし、DSA については、発症6時間以内は行うべきではないとの意見もあり、 当院では、患者さんの重症度・CT 所見・発症の時間帯や状況などから、発症後 24 時間以内を目処にして検査を行うようにしています [ 図−2 ]。 [ 図−1 ] [ 図−2 ] SAH の CT 脳血管撮影:術前(左)、術後(右) 右中大脳動脈瘤(矢印)が術後消失している

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- 3 – SAH の治療は、A 初期治療、B 再破裂防止、C 合併症治療に要約されます。 A SAH 初期治療 SAH の恐ろしさは、初回出血に引き続き、発症後 24 時間(とくに 6 時間以内) という比較的早い時期に再破裂をきたすことであり、そのため初期治療では、 迅速かつ適切な再破裂に対する予防手段を講じる必要があります。 再破裂防止のための初期治療は、SAH にともなう脳圧亢進と全身性高血圧の管 理や頭痛や嘔吐に対する対症療法が基本になり、その後可及的早期に破裂脳動 脈瘤の確定診断を行います。 B 再破裂防止 再破裂防止の基本は、根治的治療としての外科治療であり、開頭術によるク リッピングと脳血管内手術によるコイリングの 2 つの方法があります。 通常、破裂脳動脈瘤ではクリッピングを第一選択とします。 クリッピングとは、顕微鏡手術下にチタンまたは銀製クリップを用いて、脳 動脈瘤頚部で正常血管(親血管)から動脈瘤部を遮断する手術です [ 図−3 ]。 [ 図−3 ] クリッピング術中写真:クリップ(→) クリッピングは、原則として早期手術(発症後 72 時間以内)を計画します。 これは、クリッピングにより早期の再破裂を防止するとともに、くも膜下腔の 血腫を可及的に洗浄することで、SAH 発症後 4∼13 日目に強く発生する脳血管攣 縮(スパズム)を予防するためです。 A

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- 4 – しかし、重症例では、スパズムが手術に悪影響を及ぼすため、上記期間の手 術は避けて行うことが望ましいとされるため、待機手術(発症後 2 週以後)を 計画することがあります。 早期手術と待機手術の手術成績比較は、それぞれの条件が異なり単純比較で きませんが、われわれは、軽症ないし中等症(グレイド 1∼3)では積極的早期 手術を計画します。重症(グレイド 4 )については必ずしも早期手術にこだわ らず、年齢や全身状態を考慮し、待機手術または後述するコイリングによる治 療を計画します。劇症(グレイド 5)は手術適応になりません [ 表−2 ]。 社会復帰 軽度障害 重度障害 死 亡 早期手術 60 11 10 19 待機手術 50 10 19 21 [ 表−2 ] クリッピング成績:早期手術と待機手術の比較(%)

SAH 全体のクリッピングの手術成績 は SAH 重症度によく相関し、SAH 重 症度の軽症のものほど手術成績は良好でした [ 表−3 ]。 社会復帰 軽度障害 重度障害 死 亡 軽症例 89 4 3 4 中等症例 60 16 10 14 重症・劇症例 19 16 23 42 [ 表−3 ] SAH 重症度とクリッピング成績(%) また、クリッピングの手術成績は、脳動脈瘤の発生部位別でも若干異なりま す [ 表−4 ]。 社会復帰 軽度障害 重度障害 死 亡 前大脳動脈瘤 56 13 10 21 中大脳動脈瘤 63 15 8 14 内頸動脈瘤 60 7 15 18 椎骨脳底動脈瘤 53 12 12 23 [ 表−4 ] 脳動脈瘤部位別クリッピング成績(%)

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- 5 – C 合併症治療 SAH の合併症として重要なものに、脳内血腫、水頭症、スパズムがあります。 脳内血腫は、破裂動脈瘤による出血がくも膜下腔とともに脳実質内に及んだ ものです。脳内血腫が大きい場合は、クリッピングと同時に減圧目的で血腫除 去術を行いますが、脳内血腫に伴う神経欠損症状は残ります。 水頭症は、SAH のために脳脊髄液の循環障害が起こり発症します。 急性期の高圧水頭症と 1∼2 ヶ月後に発症する正常圧水頭症があり、急性期高 圧水頭症に対しては脳室ドレナ−ジ、70 歳以上の高齢者に好発する正常圧水頭 症に対しては脳室−腹腔(V-P)シャントまたは脊髄腔−腹腔(L-P)シャント を行います。 スパズムは、SAH 合併症の中でも最もやっかいな現象で、ときに脳梗塞を発症 し治療予後を悪化させる原因になります。 当院では、スパズム対策として、早期手術での可及的くも膜下血腫洗浄と、 脳循環改善薬としての塩酸ファスジル(エリル)やカルシウム拮抗薬としての 塩酸ニカルジピン(ペルジピン)点滴静注療法、また必要に応じてオザグレル ナトリウム(キサンボン)点滴静注療法を行っています。 それでも、症候性スパズムは、一過性症状悪化例 18%、後遺症残存例 3%にみ られ、治療予後に影響を及ぼす因子の一つであることには違いありません。 D その他の治療 その他、治療予後に影響する因子として、全身状態と年齢(高齢者)があり ます。年齢別にクリッピング成績をみると、70 歳を境にして社会復帰率に有意 差を認めました [ 表−5 ]。 社会復帰 軽度障害 重度障害 死 亡 70 歳未満 63 12 8 17 70歳以上 35 12 24 29 [ 表−5 ] 年齢別クリッピング成績 (%)

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- 6 – 再破裂防止の第二の手段として、瘤内コイリングと脳室ドレナージや脊髄くも 膜下腔ドレナ−ジを合併した治療を計画することがあります。 瘤内コイリングは、開頭クリッピングと比べて治療の歴史が浅く、長期の破 裂予防効果については明らかではありませんが、全身状態不良例や高齢者例、 また動脈瘤部位によっては、再破裂防止手段の一つとして有効です。 SAH の全体予後 についてみると、当院で治療した破裂脳動脈瘤による SAH 全 体(100%)のうち、クリッピングまたはコイリングによる外科治療群は 76%で、 手術予後に限れば、社会復帰率 58%、死亡率 19%と比較的良好でした。 一方、非外科治療群 24%のうち、60%は激症例で当初より手術適応なく、39% は再破裂や全身状態の悪化、特殊な形態の動脈瘤のため手術不可能な例で、3 カ 月以上の生存例は 6%以下でした。 したがって、全体予後では、死亡率 37%、社会復帰率 45%になりますが、さ らに、脳神経外科施設へ搬送されず、診断できず死亡する例を考慮しますと、 死亡率と社会復帰率は概ね半分ずつとなり、SAH の全体予後がいかに悪いかが理 解いただけると思います。 SAH 予防のためには、脳動脈瘤を破裂前に発見し治療する必要があります。 脳ドックでは、とくに高血圧症の既往歴と SAH の家族歴を有する例に対して 脳動脈瘤発見に力を注いでおり、その結果、原則 70 歳以下で、形態上破裂の危 険性が高いと考えられる未破裂脳動脈瘤に対しては、破裂の危険率と治療によ る合併症の発生率を充分考慮した上でクリッピングまたはコイリングによる治 療を行い、SAH の発症を防止するようにしています【 図−4 】。 [ 図−4 ] 未破裂左中大脳動脈瘤(→):MRA、DSA と 3D-CT の比較 2006 年 1 月 穂翔会村田病院 脳神経外科

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