フラッシュ定着カラートナー技術
Flash Fusing Color Toner Technology
要 旨
新聞印刷やService Bureau などの大量印刷市場向けの 超高速フラッシュ定着電子写真システムに適用し、優れた 高速印刷特性を発揮するフラッシュ定着カラートナーの 技術開発を行なった。本カラートナーは高いフラッシュ定 着特性と広い色再現性を示す。 フラッシュ定着用トナーは、従来の電子写真システムで 一般的に用いられているヒートロール定着器からの熱伝 導による接触加熱にて溶融されるのではなく、フラッシュ ランプから発光される光エネルギーにより自己溶融して 定着される。このため、カラートナーには、フラッシュラ ンプの発光強度の強い近赤外領域に、光吸収特性を有する 近赤外線吸収剤を添加する必要がある。この吸収剤の吸収 スペクトルは比較的ブロードなため780nm 以下の可視光 をわずかに吸収し、色にごりとなって色再現域を狭めてい た。このため、フラッシュ定着用のカラートナーは定着性 と色再現性の両立が大きな課題となっていた。 本論文では、トナー吸光効率を最大限アップする目的で、 近赤外線吸収剤に対する吸光シミュレーションを行ない、 吸光効率の高い近赤外線吸収剤の組み合わせを見出した。 また、着色剤についてはフラッシュ定着に特有の分解や昇 華防止を考慮した高耐熱の材料設計を行なった。得られた カラートナーは 900ppm を越える超高速印刷評価機にて 高い光定着性と広い色再現性が得られることを確認した。Abstract
執筆者 中村 安成 (Yasushige Nakamura) 片桐 善道 (Yoshimichi Katagiri) 戸野本 好弘 (Yoshihiro Tonomoto) プロダクションサービス事業本部 IOT 開発部(Production service Business Group IOT Development)
Newly developed flash color toner technology has achieved good image quality with good fixing properties as well as wide color reproduction properties. A flash fixing method demands that color toner absorbs the light energy emitted from a Xenon flash lamp. However, color toner used in the heat roller fixing method cannot absorb light energy. Therefore, flash fixing color toner uses a near-infrared absorbent. However, there is no colorless near-infrared absorbent. As a result, it is difficult to achieve good fixing and wide color reproduction. This paper studies the relationship between the amount of light energy absorbed in the color toner and fixing properties.
As a result,
1) Polyester resin is suitable for flash fixing because of less gas emission.
2) Fixing property is proportional to the amount of light energy absorbed in the color toner.
3) It is effective to combine two or more infrared absorbents in order to achieve a high quality color fixing image.
Using these technologies, wide color reproduction is achieved in spite of using near-infrared additives, and simultaneously a good fixing property is obtained at a printing speed of more than 900ppm.
1. はじめに
近年、電子写真プリンターの高速化、カラー 化技術が急速に進み、新聞や Service Bureau に代表される高速、大量印刷分野への展開が可 能になりつつある。現在、これらの市場は膨大 な印刷ボリュームを有し、そのほとんどがオフ セット方式で印刷されている。この大量印刷分 野においても、商品である印刷物の市場価値を 高めるため、バリヤブルデータのオンデマンド 性、高生産性、媒体多様性、エコロジ性、カラー 特性、等多くの項目を同時に満たすことが強く 要望されている。これまで、多種多様な媒体に 対 す る 印 刷 特 性 に 優 れ た 印 刷 機 と し て 、 DocuPrint 1100 CF(プロセス速度:86m/分) に代表されるフラッシュ定着方式を採用した超 高速モノクロプリンターが市場導入されている。 しかし、最近の急速なデジタル化によって、こ の分野においてもカラーシステムの構築が切望 されてきた。 フラッシュ定着方式は、媒体と定着装置が非 接触であることから、ヒートロール定着方式と 比較し、厚紙、ラベル紙、シール紙、段差媒体、 等多種多様な媒体への対応が容易である。また、 待機電力やウォームアップ時間が不要であるこ とや、用紙のリサイクル時にトナーが剥離し易 いなどエコロジにも優位である。しかし、フラッ シュ定着プリンターに対して、ヒートローラ定 着器用のカラートナーを用いると、トナーが特 定の波長の光しか吸収しないため、トナーの定 着が困難であった。これに対して着色剤の他に、 近赤外線吸収剤を用いることでトナーを定着さ せる技術が開発された[1]。しかし、無色または 効率の良い近赤外線吸収剤が無い為、カラート ナーの色にごりが大きな課題となっていた。こ の課題に対し、数年前からフラッシュ定着のカ ラー化技術の研究開発に取り組んできた[2]。ま た、これまで、フラッシュ定着に関し、定着器 の効率改善[3]、光熱変換効率の改善[4]フラッ シュ発光制御技術の開発[5]が検討されてきた。 本報では、フラッシュ定着用カラートナー特 有のバインダ、赤外線吸収剤、着色剤設計につ いて言及し、超高速機での高い定着性と広い色 再現性を実現するためのフラッシュ定着用カ ラートナー技術について報告する。 なお、本報告で紹介するフラッシュ定着用カ ラートナーは、900ppm 相当の高速カラー機に 搭載して実証した。2. フラッシュ定着システムの特徴
フラッシュ定着システムの特徴は以下の3 つ が挙げられる。図1 に、フラッシュ定着とヒー トロール定着システムの比較を示す。 ① フラッシュ定着方式は媒体多様性に優れる。 これは、フラッシュ定着方式がヒートロ-ル 定着方式と異なり、媒体と定着器が非接触の ため、ジャム、しわ、カールが発生しにくい ことによる。使用可能な用紙としては、厚紙、 微塗工紙、ラベル紙、シールカード、IC カー フラッシュ定着 ヒートロール定着 定着機構成 製品 メリット デメリット 高速機対応、媒体多様性、低ランコスト、エコロジ性 定着機大型化、カラー化難 小型化、簡略化可能 カール、オフセット、クイックスタート 大型高速プリンタ オフィス向け中低速機、カラー機 再生紙 トナー (黒点) 5mm 再生紙表面の 残留トナー量1/20 フラッシュ定着 ヒートロール定着 定着機構成 製品 メリット デメリット 高速機対応、媒体多様性、低ランコスト、エコロジ性 定着機大型化、カラー化難 小型化、簡略化可能 カール、オフセット、クイックスタート 大型高速プリンタ オフィス向け中低速機、カラー機 再生紙 トナー (黒点) 5mm 5mm 再生紙表面の 残留トナー量1/20 図1. フラッシュ定着法とヒートローラ定着との比較ド、封筒、新聞紙など多様で、お客様のニー ズに対応できる[3]。 ② 高速プリンターのメンテナンス時間を大幅 に削減することができる。フラッシュ定着シ ステムは、高速ヒートロール定着システムと 比較し、定着オイルが不要なこと、定着器の フラッシュランプ交換が容易なこと、用紙 ジャムが少なく、また、超高速インクジェッ トと比較しても、メンテナンスがしやすく、 トータルのランニングコストが低く抑えら れる利点がある。 ③ エコロジに優れる。フラッシュ定着システム では待機電力やウォームアップ時間が不要 なため、余分なエネルギが少なくて済む。ま た、フラッシュ定着用トナーは脱墨性が良い ことから、用紙リサイクル工程での効率が高 く新しいパルプを減らすことができる[6]。 上記のような特徴から、大量印刷の分野にお いては、従来から高速フラッシュ定着カラーシ ステムの構築が強く要望されていた。しかし、 フラッシュ定着用カラートナーは、光吸収の観 点から定着性と色再現性とが両立できず、基本 的にカラー化は困難と考えられていた。これに 対して、筆者らはこれらの課題を両立させた新 規なフラッシュ定着用カラートナーの技術開発 を行なったので、以下に報告する。
3. 試作開発トナーの評価法
3.1 フラッシュ定着性評価 開発段階では、超高速フラッシュモノクロプリ ン タ ー ( 495J Continuous Feed Duplex Printer:印刷速度 460ppm 相当)を用い、フラッ シュ定着エネルギを 1.0~3.0J/cm2に可変でき るように改造し実験を行なった(図 2)[1]。感 光体ドラムは二層構成の有機感光体、現像機は φ50 の磁気ローラを 2 段設けた多段現像器、転 写はコロナ転写器、フラッシュランプは両面で 各2 本設けてある。プロセス速度は 35.1m/分で ある。現像剤としては、体積粒子径 75μm の フェライトキャリヤを用い、試作トナーと重量 比5%にて混合したものを用いた。転写紙とし ては連量64g/cm2の上質普通紙を用いた。用紙 上のトナー量が約6g/m2になる様に、現像バイ アスを制御した。このようにして得られたフ ラッシュ定着用カラートナーの粉像(マジェン タ)に対し、フラッシュ定着性の評価を行なっ た。なお、マジェンタトナーを中心に開発を進 めた理由は、赤外線吸収剤の色が緑色のためそ の補色であるマジェンタが最も色の影響を受け 易く色再現性が評価しやすいこと、および顔料 が赤外領域に光吸収がなく光定着に影響しない ことによる。 定着性の評価は以下のテープ剥離試験方法で 行なった。1cm2角の用紙上定着トナー像の画像 ステータスA 濃度を測定し、次いで、用紙のト ナー像上に剥離テープ(商品名「スコッチメディ ングテープ」(住友3M 社製))を粘着させた後 にテープを剥離し、剥離後の用紙上のステータ スA 濃度を測定した。その後、剥離前の用紙上 の画像印字濃度を100 とした場合、剥離後の普 通紙上の画像印字濃度をパーセンテージで表し、 これをトナー定着率として評価した。なお、カ ラー濃度の測定には、分光光度計 938 Spectro densitometer(X-Rite 社)を用いた。 3.2 色再現性 トナー付着量として約 6g/m2 の定着後のト ナー像を938 Spectro densitometer(X-Rite 社) を用い色再現性(L*a*b*)を測定した。 3.3 トナー吸収スペクトルの測定 測定試料となるカラートナーを粉体のまま石 英セル(大きさ3.4×2.0×4.8cm)に充填した。 次に、この測定試料を分光光度計(日立製、 U-4100)にセットし、スリット幅:4mm、測 定波長域:300~2000nm、スキャンスピード: 300nm/分の測定条件にて測定し、この際の波 長に対する光吸収強度を反射法により求めた。 3.4 評価トナーの準備 ポリエステル樹脂、着色剤および赤外線吸収 剤を用い、混練粉砕法によって体積平均粒径 8 Stacker part Cleaning part Surface print part TransferFlash fuser
Postprocessing
Development unit
Form hopper Back print part
Optics
図2. 定着性評価治具
Equipmental set-up to estimate fixing characteristic
~8.5μm のカラートナーを試作した。この際、 トナー混練の実測温度は130-140℃とした。
4. フラッシュ定着用カラートナー設計
4.1 バインダ樹脂 図3 に、シミュレーションによって得られた フラッシュ定着における黒トナーの温度推移を 示す。 黒トナー温度シミュレーションによれば、ト ナー最表面の温度は1ms 以下の瞬時に 500℃に 達することからバインダ樹脂への耐熱性が求め られる。汎用のトナーバインダとして用いられ るポリエステル、エポシキ、スチレンアクリル の3 種類の樹脂について 500℃における同条件 で発生するガスを比較した。その結果、ポリエ ステル樹脂は発生ガスがほとんどなく画像表面 が平滑になりやすいことから、フラッシュ定着 に適していることがわかった。但し、発生ガス が少なくても発色性に劣る場合があるため、ポ リエステル樹脂の構成モノマ成分となるアル コール成分と酸成分についても詳細に吟味し、 発生ガスと発色性を十分に考慮した原料モノマ の組み合わせ見出し、本トナー用のバインダ樹 脂に用いた。本バインダ樹脂はカラートナーを 含めたフラッシュ定着トナー用として共通で適 用されている。 4.2 赤外線吸収剤 4.2.1 光吸収スペクトル 図4 に、黒トナーおよびヒートロール用のカ ラートナーの光吸収スペクトルとフラッシュ発 光スペクトルを示す[2]。フラッシュの発光スペ ク ト ルは 可視 領 域に は発 光ピ ー クは なく 、 830nm の近赤外領域に最も大きい発光を示し、 880nm から 1000nm にかけて断続的な輝線ス ペクトルを示す。 黒トナーでは、汎用ヒートロール用であって も可視から近赤外領域までほぼ全スペクトル領 域に吸収を有するため、ほぼ十分な定着特性を 得ることができる。これに対し、ヒートロール 用のカラートナーは、着色剤しか光吸収しない。 特に、フラッシュ発光強度の強い近赤外領域に 吸収がほとんどないため、フラッシュ光を熱に 変換することができず、トナーを定着すること ができない。したがって、カラートナーにはキ セノンランプの赤外領域の発光スペクトルを吸 収する赤外線吸収剤をトナーに添加する必要が ある。 図5 に、代表的な赤外線吸収剤である(1)フ タロシアニン、(2)オニウム、(3)シアニン、 (4)ニッケル錯体の化学構造を示す。また、 図6 にそれらの赤外線吸収剤を同じ量だけ添加 したトナーの光吸収スペクトルを示す[2]。 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 300 400 500 600 700 800 900 1000 0 5 10 15 20 25 30 黒トナー 熱ロール用 カラートナー キセノンランプ トナ ー吸光度 (a .u .) フラッ シ ュ 発 光強度 ( μ J/ cm 2) 強い発光 波長(nm) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 300 400 500 600 700 800 900 1000 0 5 10 15 20 25 30 黒トナー 熱ロール用 カラートナー キセノンランプ トナ ー吸光度 (a .u .) フラッ シ ュ 発 光強度 ( μ J/ cm 2) 強い発光 波長(nm) 図4. トナー吸光スペクトルとキセノンランプの発光スペクトルXenon flash emission spectrum and color toner absorption spectrum
Phthalocyanine Compound Onium Compound Cyanin Compound Nickel complex
Thick green Thick green Black-gray Dark brown
N N NR2 NR2 R2N R2N (X)2 N C C N C N C N M N C N C N C C N R2 R1 R3 R4 S S S S Ni NMe2 Me 2 N - (X) NR2 NR2 R2N R2N CCCCC (X) 図5. 代表的な近赤外線吸収剤
A typical type of near-infrared absorbent
図3. シミュレーションによるクロトナー温度推移
Simulation of tone surface temperature
20 120 220 320 420 520 620 0 1 2 3 4 5 時間(ms) 温 度 瞬間的に500℃以上に到達 トナー表面温度 トナー/用紙界面温度 (℃)
カラートナーに用いる赤外線吸収剤の吸収スペ クトルは不可視性と赤外吸光性の両立が要求さ れ、780nm 以下の可視領域に光の吸収がなく、 800~1000nm に強い吸収をもつ必要がある。 しかし、実際の赤外線吸収剤の吸光特性をみる と、シアニン、フタロシアニンにおいては吸収 強度が大きいが可視領域の吸収も大きいため色 再現性が不良となる。また、オニウムやニッケ ル錯体は可視領域の吸収は比較的少ないが、 800~1000nm の吸収強度が小さいため定着性 に劣ることが予想される。したがって、1 つの 赤外線吸収剤で、色がうすく、しかも、高い赤 外吸光性能を有する理想的な赤外線吸収剤はな いと考えられる。 4.2.2 吸光発熱量のシミュレーション フラッシュカラートナーの透明性は、赤外線 吸収剤による780nm 以下の吸収率が強いほど、 また、その添加量が多いほど阻害される。そこ で、トナー吸光効率を最大限アップする目的で、 フラッシュ発光スペクトルの発光プロファイル に相応する近赤外線吸収剤の組み合わせについ て検討を試みた。検討に際して、トナー開発効 率の向上を図る為には、実機を用いないで定着 性を予測する指標が必要と考え、以下に記述す るフラッシュ光によるトナー発熱量の算出方法 を考案した。 フラッシュランプの発光スペクトル関数を fL(λ)、トナーの光吸収スペクトル関数を fa(λ) とすると、フラッシュ光によりトナーに吸収さ れるトータルの光吸収エネルギ(ET)は以下のよ うに表される。 ET …(1) ここで、h はプランク定数、c は光の速度、λ は波長を表す。式(1)によるトナーのトータル の光吸収エネルギ(ET値)は、フラッシュ発光 の全光スペクトルについて積分して求めること が必要であるが、今回は特にフラッシュ発光強 度の高い 800~1000nm の近赤外領域の波長に ついて積分することにした。 評価トナーとしては、近赤外線吸収剤を用い ないトナー、近赤外吸収剤として、シアニン、 Ni 錯体、オニウム、フタロシアニンをそれぞれ 単独に混合したトナーの計5 種類について定着 性の実験を行なった。図7 に、光吸収エネルギ (ET値)と定着性の関係として示す[2]。光吸収 エネルギ(ET値)の増加に伴い定着性が増加し、 ET値と定着性には良い相関関係が得られてい る。したがって、ET 値を評価すれば実際のト ナーを用いないでトナー定着性を推測できるこ とが分かる。 以上の結果から考えると、定着性に関しては ナフタシアニンが最も良好であるが、可視領域 にも吸収特性を有するため色にごりが残り、単 独の吸収剤では定着性と広い色域を両立できる 淡色の赤外線吸収剤はなかった。そこで、複数 の近赤外線吸収剤を組み合わせる検討を試みた。 この際、ET値と定着性の相関をもとに、複数の 赤外線吸収剤を組み合わせたトナーについて、 定着シミュレーションを行なった。また、色再 現性については、赤外線吸収剤の吸収プロファ イルから、複数の赤外線吸収剤を組み合わせた 場合の吸光プロファイルを等価平均によって予 測し赤外線吸収剤の最適な組み合わせを検討し た。結果、オニウムとフタロシアニンをある比 率で添加することで、最も光吸収性と色にごり を少なくできることが推察された。表1 に、実
∫
=
2 1)
(
)
(
λ λ
λ
f
Lλ
f
aλ
d
λ
c
h
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 600 800 1000 1200 1400 波長 (nm) 0 10 20 30 40 50 (3) (1) (2) (4) Weak Strong トナ ー吸 光 度 (a .u .) μJ/cm 2) フ ラ ッ シ ュ 発 光強度 ( 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 600 800 1000 1200 1400 波長 (nm) 0 10 20 30 40 50 (3) (1) (2) (4) Weak Strong トナ ー吸 光 度 (a .u .) μJ/cm 2) フ ラ ッ シ ュ 発 光強度 ( 図6. 赤外線吸収剤の吸収スペクトルToner absorption spectrum with different IR absorbent 0 20 40 60 80 100 0 50 100 150 ET 値(a.u.) IR 吸収剤なし 定着 性 (%) フタロシニン オニウム Ni 錯体 シアニン 0 20 40 60 80 100 0 50 100 150 ET 値(a.u.) IR 吸収剤なし 定着 性 (%) フタロシニン オニウム Ni 錯体 シアニン 図7. 光吸収エネルギ(ET値)とトナー定着特性
Relationship between fixing characteristic and total value of optical energy, calculated from the wave length of 800~1000nm
際のカラートナーによる定着性と色にごりの色 差(ΔE)の関係を示す。赤外線吸収剤として 特定のフタロシアニン系とオニウム系の材料を 併用することで、赤外線吸収剤を単独で用いる 場合に比べ、大幅に定着性と色にごりのバラン スが改善できた。 4.3 着色剤 次に、着色剤のフラッシュ定着への最適化に ついて検討した。フラッシュ定着におけるカ ラー着色剤への要求は高い耐熱性の確保にある。 すなわち、汎用のヒートロール用の着色剤を用 いた場合、フラッシュ定着の際、特に、イエロー、 マジェンタ、シアンの3 色を重ねた 3 次色にお いて画像にじみの発生する場合があった。図 8 に、3次色の画像にじみの一例を示す。画像に じみの原因は、フラッシュ定着の際、カラート ナーの最表面温度が瞬間 250℃以上まで上昇し、 トナー成分である着色剤が熱分解したことによ る。そこで、示差熱天秤を用い化学構造の異な るイエロー、マジェンタ、シアン着色剤の熱減 量温度からその着色剤の熱分解性を調査した。 結果、着色剤の種類により耐熱温度が大きく異 なり、中でもイエロー着色剤の多くが分解しや すいことがわかり、フラッシュ定着において耐 熱性を確保するには、分解温度 300℃以上の高 耐熱の着色剤を用いる必要があることがわかっ た。 4.4 色再現性 以上の結果から、バインダ、赤外線吸収剤、 着色剤を組み合わせイエロー、マジェンタ、シ アンの 3 色のカラートナーを試作し、900ppm 相当の超高速カラー評価機にて印刷を行ない、2 次色を含めた色再現性を調べた。図9 に、その ガマット図を示す。本設計のフラッシュ定着カ ラートナーは、十分なフラッシュ定着特性を有 するとともに、ジャパンカラー上質紙に近い広 い色域の色再現性を実現していることがわかっ た。
5. 結び
高速フラッシュ定着プリンターに適用できる、 高い定着性とジャパンカラーに近い広い色再現 性とを両立する、新規なフラッシュ定着用カ ラートナーの技術開発を行なった。その結果、 以下のことが明らかになった。 (1) フラッシュ定着では、トナーの表面温度 が高くバインダ樹脂から分解ガスが発生 する場合がある。分解ガスの発生がほと んどなく且つ画像表面が平滑になりやす いことから、フラッシュ定着用トナーの バインダ樹脂としては、ポリエステル樹 脂が最適である。 (2) 定着性を高めるためには、フラッシュ光 エネルギを吸収できる赤外線吸収剤が必 須であり、提案した光吸収エネルギ(ET 値)が定着性を評価する良い指標となる。 (3) 定着性と色にごりの両立には、複数の赤 外線吸収剤の組み合わせが有効である。 ΔE :IR吸収剤のないカラートナーとの色差 IR 吸収剤 シアニン 50 × 32 × フタロシアニン 95 ○ 25 × オニウム 79 × 7 ○ Ni 錯体 75 × 6 ○ 吸収剤なし 30 × 0 ○ オニウムと フタロシアニン併用 93 ○ 9 ○ 定着率(%) ΔE ΔE :IR吸収剤のないカラートナーとの色差 IR 吸収剤 シアニン 50 × 32 × フタロシアニン 95 ○ 25 × オニウム 79 × 7 ○ Ni 錯体 75 × 6 ○ 吸収剤なし 30 × 0 ○ オニウムと フタロシアニン併用 93 ○ 9 ○ 定着率(%) ΔE 表1. カラートナーの定着性と色にごりの関係Relationship between fixing characteristic and ΔE properties
イエロー着色剤 の昇華
図8. 3次色の画像にじみ
Image bleeding in piling three-color toners up
-60 -40 -20 0 20 40 60 80 100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 JC2001/上質紙 上質紙 フラッシュ定着 カラートナー a* b* 図9. フラッシュ定着用カラートナーの色再現性
(4) 2 次色および 3 次色の画像にじみの原因 は着色剤の分解と昇華である。画像にじ みの防止には 300℃以上の高い耐熱性を 有する着色剤を用いる必要がある。 フラッシュ定着カラーシステムは、媒体との 接触が少なく高速化が容易で、媒体多様性が高 いことから、電子写真方式の大量印刷分野にお ける技術発展へのキーテクノロジーとなると考 える。今後は、更なる高精細、高画質、低コス トおよびエコロジ化を進め、高速大量印刷技術 の発展に貢献したい。
6. 参考文献:
[1] K.Ebis, T.Kashikawa, N.Sawatari. Flash Fusible Color Toner for Color Laser Printer. FUJITSU Sci. Tech.J.,28,3.P 335-346 (September 1992)
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