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部品 A 平均 a 分散 σa 2 N(a,σa 2 ) N(y,σy 2 ) 製品 P.17 部品 B 組合せる 平均 y 分散 σy 2 平均 b 分散 σb 2 N(b,σb 2 ) 図 3.1 A と B とが独立の関係にあれば, 製品のばらつき ( 分散 ) は, 次式で求められる σy

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 第3章

 発生確率を考慮した設計-統計的設計法

 いくつかの部品を積み重ねていくと組立品の寸法はどうばらつくか,いろいろ部品 で構成された回路の特性値は,部品の許容差とどのような関係になるかということ が問題になる。  このような構成素子の値のばらつきと,全体のばらつきの評価に確率分布を導入 して設計するのが統計的設計法である。これには積率法(モーメント法)とモンテ カルロ法があるが,まず,統計的設計法でない最悪状態法を対比させる必要から とりあげる。

§3.1 最悪状態法

目次に戻る  簡単な場合として, A=a±Δa ,   B=b±Δb という公差をもつ部品を積み重ねたとき, A+B=(a+b)±(Δa+Δb) としてA+Bの寸法のばらつきを考えるのが最悪状態法である。しかし,このような 極端の値はめったに起こらない。ものを作ったときのばらつきは中央値付近に 大部分が集中し,中央値からはずれていくにつれてその値の出現頻度は減ってい く。つまり,出現確率を考えないで,全体が機能不具合となる最悪値のみをとりあげ て,そんなことが起こらないようにと心配しているのであるから,全体特性の変動を 見込む範囲を必要以上に広くとったり,個々の部品の許容差を必要以上に厳しく したり,管理のコストや不良として廃棄されるコストなどがアップして不経済な設計 になってしまう。  全体を構成する部品の数が多くなれば多くなるほど,最悪値どうしの組合せは 起こり得ない確率になってくるのである。  したがって,絶対に事故の許されないシステムや,多くの判定条件を伴うデジタル 回路の評価などには用いられるが,一般的には確率分布を考えたもっと合理的な 設計方法が望ましいわけである。  〔具体的な例〕 A=10±1.2 ,   B=8±0.6 Δa=1.2=3σa ,  Δb=0.6=3σb (σa=0.4     ,  σb=0.2) y=A+B=(a+b)±(Δa+Δb) y=(10+8)±(1.2+0.6) y=16.2~19.8(幅3.6)

§3.2 積率法(モーメント法)

目次に戻る  図3.1のような分布をもつ部品A,BからA+BをつくるとA+Bのばらつきの幅は どうなるだろうか。おのおの平均値 a, b, 標準偏差 σa, σb の正規分布を 仮定すると, AとBが互いに独立ならば,分散の加法性によって A+B は平均値 a+b, 分散 σa2+σb2 の正規分布する。

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N(a,σa2) N(y,σy2) N(b,σb2) 図3.1  AとBとが独立の関係にあれば,製品のばらつき(分散)は,次式で求められる。 σy2=Σ(∂f/∂Xi)0 2 σxi2  積率法は,原点に関する一次積率(平均値)と母平均のまわりの二次積率で合成 された特性値の分布を推測する方法であるが,各素子のばらつきはそれぞれの 平均値のまわりで正規分布しているという前提でやっている。また,計算することが 可能な理論式とそれが微分可能であること,高次の項を省略しているので誤差が 無視できない場合もあることなど万能ではないが,実用性のある手法である。  〔具体的な例1〕 A=10±1.2 ,   B=8±0.6 y=a+b Δa=1.2=3σa ,  Δb=0.6=3σb (σa=0.4     ,  σb=0.2) ∂y/∂a=1 ∂y/∂b=1 σy2=(∂f/∂a)2σa2+(∂y/∂b)2σb2 σy2=σa2+σb2 分散の加法性 平均値:a+b=10+8=18 分散:σy2=σa2+σb2=0.42+0.22=0.2 標準偏差:σy=0.447 y=平均値±3×標準偏差=16.66~19.34(幅2.68)  〔具体的な例2〕 図3.2において, V0=Vi×EA×ET , いま  公称値 許容差 T(=3σ限界)  Vi=100V ±1V (3σVi=1V)  EA=0.2 ±0.001 (3σEA=0.001)  ET=10 ±0.1 (3σET=0.1) (∂V0/∂Vi)0=(EA×ET)0=0.2×10=2 (∂V0/∂EA)0=(V0×ET)0=100×10=1000 (∂V0/∂ET)0=(V0×EA)0=100×0.2=20 とすると, μV0=100×0.2×10=200

TV02=(∂V0/∂Vi)02TVi2+(∂V0/∂EA)02TEA2+(∂V0/∂ET)02TET2    =(22)×(12)+(10002)×(0.0012)+(202)×(0.12)=4+1+4    = 9 TV0 = 3 部品A  平均 a  分散 σa2  平均 b  分散 σb2 製品  平均 y  分散 σy2 部品B 組合せる

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P.18 入力 出力  Vi  V0 EA ET 図3.2  〔具体的な例3〕 図3.3  図3.3の電源回路における出力:E0は, いま,Es=10,Rs=0.1,R1=20,R2=50,RL=500,E0=7±0.75V(規格) とする。各素子について平均値,標準偏差,相関係数,微係数(感度)は次のように なる。 E(Xi):平均値 σxi:標準偏差 ρ:相関係数 ∂f/∂Xi:微係数 Es 9.93 V 0.1965 0.69339 Rs 0.11 Ω 0.0213 -0.1058 R1 19.9 Ω 0.829 -0.1059 R2 50.2 Ω 2.59 0.03857 RL 481 Ω 38.8 0.0004  微係数の計算方法(差分計算法)  ∂f/∂Xi≒Δf/ΔXi=((f(x2)-f(x1))/(x2-x1) (Δxi=x2-x1)  ΔE0/ΔEs=(f(Es=10)-f(Es=9.93))/(10-9.93) =0.693385  これらの値をE0の式などに代入して E0, σE0 を求めると      =6.893  σE02=(0.69339)2×(0.1965)2+…+(0.0004)2×(38.8)2+      2×(-0.4474)×(0.69339)×(-0.1058)×(0.1965)×(0.0213)      =0.036776  σE0= 0.1918 となる。 E0の分布と規格値 E0=7±0.75 の関係は, 図3.4のようになる。 現状でE0が規格外になる確率は,正規分布表より,0.000408である。E0の分布 のマイナス効果の大きい R1の値を少し動かして7.00にシフトさせると, -0.4474 アッテネータ トランス Es Rs R1 R2 RL E0 i i E0= EsR2RL (R2+RL)(Rs+R1)+R2RL E0= 9.93×50.16×480.5 (50.16+480.5)(0.111+19.9)+50.16×480.5

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 ΔR1=ΔE0×(∂f/∂R1) =(7.00-6.893)/(-0.1059)=-1.01 となる。σEが維持されるなら,その時のE0が規格外になる確率は0.000048に なる。 ①センター値を修正した場合 κ=(上側規格-平均値)/(標準偏差)   =(7.75-7.00)/0.1918   =(7.75-7.00)/0.1918   =3.91(0.000048) ②センター値を修正しない場合  κH=(7.75-6.893)/0.1918=4.47(0.000004)  κL=(6.893-6.25)/0.1918=3.35(0.0004) 図3.4

§3.3 モンテカルロ法

目次に戻る  モンテカルロ法では特性値 Xi の分布が正規分布でなくてもかまわない。実験あるいは 過去の経験から任意の形の分布にしてもよい。そこからランダムに1つずつ値を抽出し, (X1,X2,…,Xn)の一組をつくって,Y=f(X1,X2,…,Xn)に代入してその組に対応する1つの Yの値を計算する。これを何回も繰り返すことによってYの値の分布を得ることができる。 この方法はコンピュータを使ってシミュレーションにより実行するのに適している。これを フローチャートで示すと図3.5のようになる。  図3.5の手順で注意しなければならないのは,特性間の相関がある場合である。そういう ものが存在するなら,あらかじめ関係式を入れておかなければならない。 正規分布,指数分布, 一様分布,実測値の 頻度分布など No   Yes 図3.5 モンテカルロ法のフローチャート P.20  〔具体的な例〕 7.75 6.25 7.0 6.893 4.47σE0 3.35σE0 E0の分布状況 試行回数を設定 素子の分布型を設定 指定した分布型に応じ た乱数を発生させる 各素子の値の組合せ ができる 方程式に各値を代入 して計算する 指定回数完了 総合特性の分布を作成

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 五つの部品から構成される回路があり,その合成インピーダンスが下記の式 であらわせる。   y=f(X1,X2,…,X5)=Z1+Z2+Z3+Z4+Z5  構成部品のインピーダンスをそれぞれ以下の分布型を仮定して,総合特性の 分布を作成する。  部品1(Z1) 正規分布 N(50,0.22)  部品2(Z2) 正規分布 N(38,0.152)  部品3(Z3) 一様分布 9~9.3  部品4(Z4) 正規分布 N(7,0.052)  部品5(Z5) 正規分布 N(10,0.072) 具体的の手順  ①それぞれの乱数を発生させる。  部品1(Z1) x1=50.2  部品2(Z2) x2=37.9  部品3(Z3) x3=9.2  部品4(Z4) x4=7.1  部品5(Z5) x5=10.1  ②方程式に各値を代入して計算する   y= 50.2+37.9+9.2+7.1+10.1= 114.4  ③①②の手順を指定回数繰り返す。  ④総合特性の分布を作成する。

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限界と公差に関する統計的方法

1.問題点

目次に戻る  仕様の限界を計量化する場合に、設計者はいろいろな種類の問題に遭遇する。これらの 問題はそれぞれ多くの技術的問題を含むとともに、また統計的方法を援用すれば一層精密 な解答ができるような性質のものである。とくに設計者は次のことが必要である。 ① 使用条件を計量化すること(応力、負荷、環境) ② これらの使用条件の影響を評価し、設計上の能力(強度)を計量化すること ③ 安全余裕(safety margin)を定めること ④ 独立したコンポーネントあるいは個々の部品の公差限界を決めること ⑤ 組み合わせた製品の公差限界を決めること ⑥ 相互に影響しあう寸法やパラメータの公差限界を決めること ⑦ 官能品質の公差を決めること  仕様を計量化すべきであるのみならず、最適コストにおいて使用適合性を達成するのに 必要な限界値を示さなければならない。次に述べる基準によって、この要求の意味が明ら かになろう。 ① 限界はユーザーの要求を反映しなければならない すべての設計者も非設計者も原理を認めるが、しかし誰でもこれの実行は困難である。 ユーザーの要求をみつけること自体が難しいが、設計が現在の最新技術の未知の領域、 例えば宇宙環境に関するものであるときは、この困難さは倍加される。ユーザーの要求 を設計者に伝達するには、組織上の難しさがある。    それは非常に多くの”郵便局”があるので、関係者は伝達の苦労と手間どりのために、 ユーザーの要求を探るのをあきらめ、あて推量せざるを得ないことになる。もちろん ”正しい”方法はユーザーの要求を分析し、この知識を用いて設計を行い、テストによっ て設計を立証し、その上で仕様を決定することである。しかし、これには費用もかかり 時間もかかるので、実際としてはせいぜいいくつかの重要な品質特性についてのみ   行う程度である。 その他の条件については、いわゆる”技術的判定”という方法が使われる。これは、 いわゆる過去の経験、防衛的な過剰品質仕様、常識のていよい計量化の混合された    ものである。 ② 限界は使用材料と製造工程の能力に適合したものでなければならない 一般的には、設計者は材料の特性については良く知っており、設計にはこの知識が    良く反映されている。 しかし、設計者は製造工程の能力についてはあまり知っていない。その結果、多くの 製造上の問題が発生して、設計者には現実を知らないという非難があびせられる。 実際には、設計者は事実を知りたいと思っている。しかし、工程能力のデータが計量 化されていないこともあり、しかもこの知識が(ハンドブックの材料特性の表のように) すぐに利用できる形で設計者に伝達されることは少ない。工程能力に関する情報を 定量化し、設計者が使えるようにすれば、設計者はそれを使って彼なりの現実主義を 改善する方法を知るだろう。それまでは、関係するすべての部署のチームにより限界    を審査を行うという手段に頼らなければならない。 ③ 限界は、品質の費用と品質の価値とのつり合いをとらなければならない 大抵の場合、設計者は今のところ独力で費用と価値のつり合いをとることはできな い-というのは、彼は本当に必要な情報をほとんど持っていないからである。この結 果、設計者は通常、設計不良については直接の責任を持っているが、製造コストが 高くなることについては直接の責任がないため、仕様が過剰品質になりがちである。

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P.22 ④ 限界は明確でなければならない あいまいな仕様は、間違った仕様よりも、もっと大きなトラブルを起こす元になる。 後者は容易に見つけ出して論争をすることができるが、前者は見落としやすい。 あいまいさは、また、”じゅうたんの下”を掃除するといった本質からはずれたところ に注意を払いがちである。どんなことでも同じであるが、論理的であることよりも     明確であることのほうが、もっと重要である。

2.使用条件と設計能力の計量化

目次に戻る 使用条件と設計能力(design capability)は、安全余裕の最小値の形で仕様に 反映させることができる。 使用条件と能力を計量化するには、データが必要である。このデータはなかなか取り にくいことが多いが、しかし、後でわかるように大きな成果が得られるので、その努力は 決して無駄はない。例えば、運転温度が重要なパラメータであるとき、最大の期待温度 が145°Fであるとしよう。さらに、能力としては平均値が165°F、標準偏差が13°    Fの強度分布(図-1参照)をしているとする。ここでは最大温度 しかわからないとす れば、安全余裕は、 145 - 165    = -1.54 13 である。この安全余裕は、平均強度が最大期待値温度145°Fより標準偏差の1. 54倍だけ大きいことを表している。標準正規分布表(U表)を使って、信頼度0.938 (145°Fより大きい面積)を計算することができる。 0.938という信頼度の推定値は、装置が常に 145°Fの温度にさらされていると 想定したものである。さてここで、もし温度が平均値85°F、標準偏差20°Fの正規  分布をするというデータが 得られたと仮定しよう。この場合、ストレスと強度の状況を 示すと図-2のとおりである。信頼度は強度とストレス間の差の分布によって評価    することができる。 μ差=165 - 85 = 80 σ差= (20)2+(13)2 = 24 差の分布は図-3に示される。安全余裕は、 0 - 80    = -3.33 24 である。 145 165 図-1 強度分布

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ストレス 強度 85 145 165 図-2 ストレスと強度の分布 0 80 図-3 強度とストレスの差の分布

3.限界設定のための工程データ分析

目次に戻る  設計者は品質を限界という見地から考えるが、工程はそうではない。その代わり工程は、 (1)工程のセッティングによってその位置が決まる中心的傾向と、(2)その工程の固有の 精度すなわち工程能力によって決まる形状と標準偏差をもったばらつきを示す製品を造り 出すのである。  製品の中心的傾向は調整であるのが普通であり、設計者は当然製造する人々がこの 調整を行うものと考えてさしつかえない。しかし、工程変動は一般にその工程の固有のもの であるので、設計者はこれを実際の姿として受入れなければならない。  一般に、設計者は工程能力に関する情報を持っていないであろう。そこで方法としては、 工程から抜き取ったサンプルのデータから、その工程が満足することができる限界を計算 して、これと彼が指定しようとしている限界を対比する(もし設計者が全く限界を考えていな いならば、工程のデータから計算した能力限界が生産性の見地からみて現実的な限界 となる。その場合、この限界を製品の機能的要求に照らして評価しなければならない)。  統計的にいえば、問題は母集団全体に含まれる個々の製品の変動が平均値5.00イ ンチ、標準偏差0.001インチの正規分布をしていると仮定しよう。そうすると、母集団の 任意の与えられた比率を含むような限界が計算できる。図-4に99%限界の位置が示 されている。標準正規分布表(u表)を見れば、標準偏差の±2.575倍の中に母集団の 99%が含まれることがわかる。したがって、この例では現実的な1組の公差限界は、 5.003 5.000 ± 2.575×0.001 = 4.997

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P.24 となる。母集団の個々の製品の99%がこれらの限界内の値をとるはずである。  実際には、母集団の平均と標準偏差は未知であり、工程からの製品のサンプルによって 推定しなければならない。第1次の近似として 0.005 0.005 4.997 5.000 5.003 図-4 99%限界の分布 X ± 3 s とする場合がある。ここでは、サンプルの平均値 X と 標準偏差 s をそのまま母集団の 推定値として用いている。関係式の係数3はいわば任意の値である。もし母集団の真の 平均値と標準偏差がたまたまサンプルの夫々の値と等しく、またその特性が正規分布を するとすれば、母集団の99.73%の製品が上式で計算した限界内に入るだろうという ことである。これらの限界はしばしば”自然公差限界”(工程の実際の変動を認めた、また それゆえに現実的な限界)と呼ばれる。この近似法は、サンプルから推定した平均値と 標準偏差の両方に含まれる誤差を無視している。  更に精密な方法で、公差限界を設定するための方法が開発されている。例えば、正規 分布母集団について公差限界を設定する公式と表が用意されている。例えば、付録の表 Aは、平均値と標準偏差の不確実性を認めて公差限界を計算するときの係数を与えてい る。公差限界は次式によって与えられる。 X ± K s  係数 K は望ましい信頼水準、公差限界内に含まれる母集団の比率およびサンプルの データ数である。  例えば、工程から10個の丸棒のサンプルを抜き取り、平均値と標準偏差を求めたとこ ろ、5.0145インチと0.0493インチであったと仮定する。公差限界は丸棒の母集団の99 %を含み、かつ、公差の信頼水準は95%であるとする。そこで、付録の表Aを引くと、係数 Kの値は4.433であるので、公差限界は次のように計算できる。 4.796 5.0145 ± 4.433×0.0493 = 5.233  我々は、母集団の丸棒の少なくとも99%はその直径が4.796インチから5.233イン チまでであることを95%信頼できるのである。この方法は ± 3 s の自然公差限界よりも 厳密なものであるが、統計的背景をもたない人のとっては、上述のような二つの百分率は 不思議に思われるであろう。  工程のデータに基づいて公差限界を設定する全ての方法は、データのサンプルは工程を 代表するものであり、またその工程は推定ができる程度に十分に安定していることを仮定 している。しかし実際には正式の検討を行わないで、この仮定を認めてしまうことがある。

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もし十分なデータが入手できるならば、その仮定は統計的管理図によってチェックが可能 である。統計的管理状態という場合は、その工程は最終製品に非常に大きな変動を与え るようなつきとめられる変動要因が全くないことを意味する。

4.非単位体製品に対する公差限界の設定

目次に戻る  個別製品(例えばボルト、ポンプ、トースター)について、品質特性の公差限界を設定 するときには、次のような点については明確である。 ① 単位製品の定義は個別な製品である(ボルト)。 ② 製品は1単位を基準としてテストされ、使用される。そのため、公差限界は製品の 個々の単位について適用され、また、すべての単位は公差に合致しなければならない。  非単位体製品(coalesced product:ガソリン、鋼板、石炭)の場合は事情が異なってくる。 ① 単位製品の定義としては、1つの集合体(mass)である(例えば、化学薬品の運搬    車の1台分) ② 製品はその集合体の試料のテストによって評価される。製品は試料の形では使わ れないので、ひとつの試料の測定結果はほとんど重要な意味を持たない。しかし、多 数の試料を測定することはその集合体の特性を決定する上で重要である。  非単位体の場合、仕様としてはまずその集合体を物理的に定義し、ついで集合体の品質 特性の限界を定め、最後にその集合体の試料の測定値の限界を決めなければならない。 品質限界は普通平均値と標準偏差によって定義される。例えば、ある集合体のロックウェ ルCスケール硬度限界は、下記のように表わされるであろう。 平均値 = 58 ± 1 : 標準偏差 = 最大 1.5  集合体の試料の限界は、集合体のサンプリングの変動が含まれることを認識しなければ ならない。平均値のサンプリング変動に対する公式によると、その変動は、(1)サンプリン グ・サイズ、(2)その集合体自体の固有の変動、によることを示している。従って、テストの 指定限界は、定められた測定数と関係あるはずである(この点が、製品の各々の単位に 適用される個別製品のテスト限界とはっきり違っている)。テストすべき試料数およびそれ に対応する限界の決定は、計量抜取方式の概念に基づいている。  非単位体製品の特別な問題は、大きな混乱をまねく原因となることがある。ある会社で 化学製品の不純物の含有率が問題になった。仕様書には不純物の含有率は”12%を越 えないこと”と記載されていた。不幸にも、製造部門の人々と品質管理部門の人々の間で、 12%という数字の解釈に相違があった。  品質管理部門の人々は、その数字は製品の不純物について一回の測定値でもみな12 %以下でなければならないということを意味するものと解釈していた。製造部門の人々は、 その数字の意味を一日の間に取られた測定値の平均が12%以下でなければならないと 思っていた。どちらの部門の人々も、集合体と試料を区別することの重要性を十分に認識 していなかったために、この仕様の不一致は数ヶ月にわたって続いたのである。

5.相互作用のある寸法の公差限界

目次に戻る  相互作用のある寸法(interacting dimension)とは、他の寸法との組み合わせ、 あるいは合弁で最終的な効果を生み出す寸法のことである。図-5に示すような簡単な 機械組立部品を考えよう。構成部品A、B、C の長さは、これらが全体の組立長さを決め るので、相互作用のある寸法である。  さて、各構成部品は図-5に示す規格で造られたとする。組立長さの理論上の規格は、 3.500±0.0035 となり、限界値は 3.5035および3.4965 となるであろう。この理 論は三つの極端な部品を組み合わせることによって証明できよう。  構成部品の公差を加算する方法は数学的には正しいが、あまりにも慎重すぎるきらい がある。 P.26

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A B C 1.000 ± 0.001 0.500 2.000 ± 0.002 ±0.0005 図-5 機械組立 最大 最小 1.001 0.999 0.5005 0.4995 2.002 1.998 3.5035 3.4965  ここで、構成要素としてA部品のうち約1%が、構成要素Aの下側公差限界を下まわるこ と予測されるとし、また構成要素B、Cについても同じように考えられるとしよう。もし構成要 素Aがランダムに選ばれるとすると、平均的にはそれが下側から外れるのは100回に1度 のチャンスしかない。構成要素B、Cについても同様である。ここで重要なのは次の点であ る。もし組立がランダムに行われ、構成要素が各々独立に製造されるならば、三つの構成 要素がみな同時に下側限界を下まわるチャンスは、 1 1 1 1 × × = 100 100 100 1,000,000 である。すなわち、三つの構成要素がみな小さすぎて、寸法の小さな組立品ができるのは、 ほぼ100万回に1度のチャンスしかない。このように、単純な加算式に基づいて構成要素 と組立品の公差を設定することは、構成品がみな小さい(あるいは大きい)構成要素から 組立られる確率が非常に低いということを認識していない点で、慎重すぎるのである。  統計的方法は、いくつかの独立した原因による分散と従属する、すなわち全体の結果と しての分散との関係に基づいている。これは次のように表すことができよう。 σ結果 = σ2原因A + σ2原因B + σ2原因C + … 先の組立品の例では、この公式は次のようになる。 σ組立品 = σA2 + σB2 + σC2  さて、ここでは各々の構成要素について、公差は範囲は ± 3標準偏差(あるいは標準 偏差のある定数倍)に等しいとしよう。  σ は T を 3 で割ったものに等しいので、分散の関係式は次のように書き替えることが できる。 T/3= (TA/3)2 + (TB/3)2 + (TC/3)2 T組立品 = TA2 + TB2 + TC2  このように、公差の二乗を加算することによって、全体の結果の公差の二乗が決まる。 この結果は一般に使っている公差の単純加算の方式と対比されるものである。  統計的方法による効果は、驚くばかりである。下表は、上式を用いた場合に組立品の 公差が±0.0035になるような構成要素の可能な公差の二つの組み合わせを示したもの である。

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 組合わせ1の場合、単純な加算方式に用いた 構成要素の公差に比べて、構成要素Aの公差は 要素 組合せ1 組合せ2 二倍になり、構成要素Bの公差は四倍となり、 A ±0.002 ±0.001 構成要素Cの公差は最初の公差と同じである。 B ±0.002 ±0.001 組合せ2が選ばれらばれた場合にも、構成要素 C ±0.002 ±0.003 の公差を同様に増やすことができる。このように、 この方式を用いると製造工程を少しも変えずに、また組立品の公差を少しも変えずに、 構成要素の公差をずっと大きくすることができる。ここで、最も大きな一つの公差が全体の 結果に最大の影響を与えることに注目すべきである。  仮に± 0.002 インチの公差をもった構成要素Dが上記の公差組合わせのいずれに加 えられたとしても、全体の組立品の公差は ±0.0039 に増加するだけである。さて、もし 全体の公差が決まっていて、しかもそれに合致しないときに、どの構成部品の公差を減ら すべきであろうか。この公式は、どの構成部品の公差が全体の公差に最も影響を及ぼす かを決めるのに役立てることができる。このような情報は、公差をより小さくすることによっ てどれだけ経済的になるかという情報とともに、公差を決定する際の基礎となるものである。  この方法にも危険はないわけではない。それは、組立品の公差から外れることが起きる かも知れないからである。しかし、そのチャンスは計算することができ、その危険を受け入 れるか否かを判定することができる。組立品の長さがその公差限界から外れる確率を決 めるためには、まず組立品の長さの分布状態を決める(図-6)。もし構成要素がほぼ 正規分布をするとすれば、組立品の長さも正規分布に従うだろう。 3.500 図-6 組立て長さの分布  組立品の長さの平均値は、構成要素の基準寸法の和、すなわち3.500である。組立品 の長さの標準偏差は次式で表される。 σ組立品 = σA2 + σB2 + σC2  ここで、組合わせ2の構成部品の公差を使ったとし、また、工程データからこれらの公差 が 3σ(標準偏差の3倍)に等しいことがわかったとしよう。すると、 σA = 0.001/3 = 0.00033 σB = 0.001/3 = 0.00033 σC = 0.003/3 = 0.001 となり、したがって、組立品の長さの標準偏差は次のようになる。

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P.28 σ組立品 = (0.00033)2+(0.00033)2+(0.001)2 = 0.0011  組立品がその下側公差限界を超える確率は、組立品の長さの正規分布曲線の面積を 調べることによって求めることができる。したがって、  3.4965 - 3.5000 K =    = -3.2 0.0011  標準正規分布表(u表)より、組立品が 3.4965以下になる確率は、0.00069 になる。 同様にして、組立品が上側公差限界を越える確率もまた 0.00069である。これは、 規格外の組立品ができる確率は 0.138%であるということである。  すなわち、組立品の1%の約10分の1が組立品の規格に合致しないことになるであろう。 公差の公式は、組立品の外側寸法だけに限定されない。一般的にいうと、その等式の左側 には従属変数すなわち物理的結果が含まれ、一方等式の右側には独立変数すなわち物理 的原因が含まれる。ここで穴と軸の問題を考えよう。  隙間の規格としては、0.0007 ± 0.0005 が望ましいとしよう。伝統的理論によると、 軸と穴の基準寸法の間に 0.0007 だけ差があるように決め、軸の公差と穴の公差が同じ (すなわち ±0.00025)になるように、全体の公差を半分にするのである。  伝統的方法によれば、次の関係式が成り立つ。 T隙間 = T2穴 + T2軸 もし、軸の公差を穴の公差と同じに決めるとすれば、 T隙間 = 2T2 T = ±0.00035  このようにして軸と穴の公差は各々 ±0.00025 ではなく、±0.00035 に決める ことができよう。 物理的な結果としての寸法は、この公式の左側に反映され、物理的な原因は平方根の 中の符号を少しも変えずに公式の右側に反映される。もし結果が左側に、原因が右側に おけれるならば、この公式はたとえ結果が内部寸法(隙間のような)であっても、平方根の 中では常にプラス符号である。物理的な結果がたまたま起こるものとすれば、その場合の 変動の原因は加法的である。

6.公式における仮定

目次に戻る この公式には下記の仮定がある。 ① 構成要素の寸法は独立しており、また、構成要素はランダムに組立てられる。 したがって、組立品は寸法の大きい側、あるいは寸法の小さい側のいずれかに偏 った構成要素でけで組み立てられることがないという保証ができよう。この公式は、 ある構成要素の大きい数値のものは1つ以上の他の構成要素の基準寸法以下の数   値によって、少なくとも部分的に相殺されることが前提となっている。この仮定は、  通常は実際の状況とよく一致する。もし例外がありうるとすれば、それは いくつかの     構成要素が全く同じものである場合である。 例えば、懐中電灯にはめ込むために2個の乾電池が選ばれたとしたときに、これら は引き続いて製造されたものであるかもしれない。このような場合には、両方の乾電 池が同じ長さ、例えば両方とも本質的に寸法が大きい側である可能性がある。しかし、 構成要素が同一であっても、一つの組立品に選ばれた二つの構成要素が異なった 時間に生産され、従って、おそらく両方ともが両極端の側になるとか、あるいは同一 方向になることがないように、この同一構成要素を混ぜ合わせることによって、本質     的に独立性の仮定は成り立つのである。

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② 各構成要素の寸法は正規分布に従う。多少この仮定からはずれたとしても、さし     つかえはない。 ③ 各構成要素の実際の平均値は仕様書な書かれた基準値に等しい。最初の組立品 の例の場合は、構成要素A、B、C の実際の平均値はそれぞれ1.000、0.500、 2.000 でなければならな い。さもなければ、組み立てられたときに3.500 という 基準値が得られないであろうし、3.500 に関して設定した公差限界は現実的なもの にならないであろう。従って、相互に関係する寸法の場合は平値を管理することが重 要である。そこで、平均値の管理図を使えば、確実に平均値が公差限界値に合うよう に工程を維持することができる。さらに、また平均値が公称規格値に合っていること     をチェックするためには、計量抜取方式を使うこともできるであろう。 各構成要素の平均値を管理する必要があるとい うことは、計量値の測定が必要で あることを意味している。(目先のことだけを考えると)費用が少なくてすむ計数型の 検査は、平均値のチェックに不適当である。なぜならば、計数の測定は個々の部品   の良、不良の分類はするが、実際の平均値がどうなっているかを示すことはできない     からである。 これらの仮定のどれにも違反しないように注意する必要がある。しかし、この仮定 から相当はずれたとしても、公式に盛り込まれた概念は成り立つであろう。説明例で、 公式を用いた結果、ある公差の2倍になったことに注意しよう。しかし、このような大     きな増加は工程能力の見地から不必要であろう。

統計的公差決定方法の適用

公差の統計的決定の方法は、単に公差の表し方を、各構成部品の限界という形から、 (1)多くの構成部品の平均値( X )の上限と下限、および(2)構成部品のバラツキ(σ)の 上限という形に変えただけではない。この変更は、単なる仕様の形式を越えたもっと深遠 なものである。それは、製造計画、生産、品質管理、サービスなどの全サイクルに影響を 及ぼすものである。実際には、それは製造に関する新しい哲学である。 最初に発表された統計的公差の大規模な適用例は、L-3同軸システム(電話または テレビジョンの多重チャンネル用広帯域送信システム)にみることができる。 この公式は、すでにいろいろな種類の機械加工および電子製品に適用されてきた。この 概念は、技術的関係において、相互作用のある変数に適用することができるであろう。 このときの関係の性質は、必ずしも加算的(組立品の例)であるとか、減算的(軸と穴の例) である必要はない。公差の公式は、いくつかの変数の積および、あるいは割算によって 結果の変動を予測するためにも使うことができるのである。

参照

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