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加齢と脂質代謝異常に伴う筋エネルギー代謝に関する研究

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(1)

原 著

倭女医雄、籠64巻略表幽遠〕

加齢と脂質代謝異常に伴う筋エネルギー代謝に関する研究

東京女子医科大学 産婦人科学教室(主任:武田佳彦教授)        イケ  ダ   カ   ナ   エ        池 田 加 奈 枝 (受付 平成6年1月19日) AStudy of Mllscle Energy Metabolism witll Reference to Age and       Upid Metabolism Abnormalities       Kanae夏KEDA Department of Obstetrics and Gyn㏄010gy(Director:Prof. Yoshihiko TAKEDA)       Tokyo Women’s Medical College    This study aimed to evaluate the efficiency of peripheral circulation according to age and abnormality of lipid metabolism.    Energy metabolism of forearm muscies was determined by phosphorus−31 nuclear magnet量c resonance spectroscopy before, during and after standardized exercise prior to venous occlusion. Serum cholesterol fraction were simultaneously measured. Thirty・six healthy women(age range 23∼63years)and 30 healthy men(range 24∼55 years)were investigated.    Venous occlusion caused the return.of muscle energy and intramuscular pH to be slow. This indicated the va1玉dity of the assumption that circulat童on supplies an energy basis and removes 面etabolic products.    Age−dependent peripheral circulatory efficiency was noted in men. Abnormality of lipid metabo・ lism reduced the efficiency of peripheral circulation量n both sexes. In women, it was present in menopause which is caused by a deficiency of estrogen. It is suggested that peripheral circulatory eff孟ciency is strongly correlated with ovarian function in women.    In conclusion, the muscie energy determination combined with the load test is useful for the eva監uation of peripheral circulatory efficiency. In addition, the simultaneous determination of serum lipids provides supportive information. This study may be of help in analyzing the pathophysiology of peripheral circulatory disturbance in climacteric disorders.       緒  言  Phosphorus−31 nuclear magnetic resonance spectroscopy(31P−MRS)は生体内のエネルギー 代謝を無侵襲に観測する良い手段であるため,近 年,研究手段として広く応用されるようになって きた.骨格筋のエネルギー代謝に関しても多くの 研究がなされてきた’)∼7).

 Nunnallyらはウサギ灌流心の冠動脈を結紮

し,生じた心筋梗塞部から31P−MRSで経時的にエ ネルギー代謝,細胞内pHの変化を観察した8). Chanらはラットの.出血モデルを作り,腎の代謝 の変化を31P−MRSで追跡した9}。両者とも循環不 全によるクレアチン燐酸(PCr)の減少またはアデ ノシン三燐酸(ATP)の減少,細胞内pHの低下 を認めた.  以上の文献から,消費されたエネルギー基質や 産生された代謝産物は循環により供給,除去され ると仮定し,その妥当性を考察した.  本実験では特に運動負荷後のエネルギーとpH の回復過程に着目し,31P−MRSを用い筋エネル

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超伝導磁場1.9囎a 均一磁場領域 1/し マンシェット 図1 MRSボア内における駆血下運動負荷の略図 上腕を平均血圧で駆血 9分間 安静期 2分間 運動負荷期 2分間 回復期 5分間

  一MRSによる前腕の筋エネ,、ギー嫡の齪_」

 ↓ 空腹時採血 測定項目  総コレステロール  HDL−C         図2 実験のプロトコール ギー代謝を指標として循環負荷による変動を性 差,加齢,脂質代謝異常を中心として検討し,末 梢循環機能に対応して評価した.  女性では更年期に心血管病変のリスクが増大す ると報告され10)∼12研究が進んでいるが,末梢循環 障害の評価は確立していない.本実験の方法がそ の病態解明や,評価の指標となり得るかどうかを 検討した.        対象ならびに方法  1.対象  被検者は既往歴,現病歴に高血圧,血栓症,糖 尿病のない健常者,男性30名〔年齢24∼55歳, 38.7±1.4(mean±SE,以下同様)歳〕,女性36名 (年齢23∼63歳,40.8±2.1歳)の計66名である. 測定に際し10分間の安静を保った.  2.方法

 1)MRSの測定

 スペクトルは,磁場強度1.9tesla,ボア内径27

cmのスペクトロメーター(大塚電子 USA

Inc.社製BEM250/80)を用い,燐の共鳴周波数 34.45MHzで測定した.ボア内の超伝導による均 一磁場領域と一致する位置に設置した直径4cm の表面コイル上に,被検者の右前腕部を密着固定 した(図1).  MRSの測定は,被検者の右上腕を平均血圧で 駆血した状態で行った.測定は2分間の安静の後, 2分間は握力15kgで1秒間握り,1秒間休むとい う運動負荷を加え,さらに運動負荷解除後5分間 は安静にして,計9分間施行した.これをそれぞ れ安静期,運動負荷期,回復期とした(図2).パ ルス幅は30∼45μs,パルスの繰り返し時間は2秒 とし,60回加算して2分毎に記録した.ただし回 復期2∼5分は90回加算した結果を記録した.  2)MRSによる筋エネルギー代謝の評価法  安静期,運動負荷期,回復期の筋エネルギー代

謝と筋肉内pHの変動を経時的に観測した(図

3)..PCr,.無機燐(Pi)の組織中の濃度は,各々 のスペクトルの高さで相対的に示される.エネル ギー代謝は,PiとPCrの比(Pi/PCr)により評価 した.  筋肉内pH(pH)は, Piピークの化学シフト値 (δ)をもとに,以下の換算式13)で計算した.   pH=6.90−log(δ一5.805/3.290一δ)  エネルギー代謝の評価はPi/PCrおよびpHの 基礎値,最高値(最低値)上昇速度(下降速度), 回復率,回復速度によった.

(3)

    ほ 甲一     貿  甲         孟 ∼へ♂∼伸i     :1:1 甲 ’ 罫 ダ 回復期2∼5分

l  l   l

        i。襯。.,分

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1 甲l

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 一10.OOO        O.000         10,000         20,DOO       (戸pm)   図3 31P・MRSによる前腕筋のスペクトル 安静期,運動負荷期,回復期0∼2分,回復期2∼5 分のスペクトルを示す. ピーク1二sugar phosphate,ピーク2:Pi,ピーク 3:PCr,ピーク4:γ一ATP,ピーク5:α・ATP, ピーク6:β一ATP.  Pi/PCrの回復率は,運動負荷後のPi/PCrの最 高値(ピーク値)と回復期5分の値との差を基礎 値と最高値の差で除し,百分率で表した.同様に,

pHの回復率はpHの最低値をピーク値として求

めた.Pi/PCrの上昇速度, pHの下降速度は,1 分間当りのPi/PCrの上昇, p}1の下降とした.同 様に,Pi/PCrの回復速度, pHの回復速度を求め た.  測定に当り,運動負荷中,および回復過程で2 峰性のPiが観察されるケースがあった.この場 合,2つのPiを合成し,1つのピークと見なして 測定した.  3)血清脂質の測定 手.0 0.8  0.6 δ 駐  O.4 0,2 0.0 「*

*P<Oρ1 r一*一  γ  翻無駆血群     躍平均血圧持続駆血群 「*一「  ア   安静    運動   回復2分   回復5分 図4 予備実験 無駆血群と平均血圧持続駆血群の  Pi/PCrの推移  安静:安静期,運動:運動負荷期,回復2分:回復  期0∼2分,回復5分=回復期2∼5分.  平均血圧持続駆血群では回復期において無駆血群に  比しPi/PCrの有意な回復遅延(p〈0.01)を認めた.  MRSの測定に先立ち,空腹時に採血し,総コレ ステロール,HDLコレステロール(HDL−C)を酵 素法で測定した.  動脈硬化指数(AI)は,総コレステロールと

HDLCの差をHDL−Cで除し算出した.

 4) 月巴満非旨数  以下の式から肥満指数’4)を算出した.   肥満指数%=体重/理想体重×100   理想体重=〔身長(cm)一100〕×0,9  3.実験群  対象を男女別に以下のように分類し比較した.  1)AIによる分類  AI値が3.5以上の15例〔男性10名:年齢38.8± 2.9(mean±SE,以下同様)歳;AI値4.19±0.15, 女性5名:年齢57.4±2.2歳;AI値4.36±0。29〕 をAI高値群, AI高値群を除外した残りの51例 (男性20名:年齢38.7±1.6歳;AI値2.50±0.17, 女性31名:年齢38.1±2.!歳;AI値2.10±0.12) をAI低値群とした.  2)年齢による分類  さらに,AI低値群を年齢により40歳未満27例 (男性9名:年齢32.6±2.0歳,女性18名:年齢 29.8±1.1歳)と40歳以上24例(男性!1名:年齢 43.6±1.1歳,女性13名:年齢49.6±2.0歳)に分 け,それぞれを若年群,高年群とした.

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0.1 0.0 輩℃.1 ・0.2 一〇3

  、、 \}    了  畢一……・……一華  三   1 ’] 」 * *P<0.01 無駆血群 平均血圧持続駆血群        安静    運動   回復2分   回復5分     図5 予備実験 無駆血群と平均血圧持続駆血群のpHの推移 安静:安静期,運動:運動負荷期,回復2分:回復期0∼2分,回復5分1回復期2 ∼5分.△・pH:それぞれの期間のpHと安静期のpHとの差. 平均血圧持続駆血群では回復期2∼5分において無駆血群に比しpHの有意な回復遅 延(p<0.01)を認めた.  上記の結果を,①性差はAI高値群を除外した 男女51例,②加齢の影響は若年群と高年群(男性 20名,女性31名),③脂質代謝異常の影響はAI低 二二とAI高値群(男性30名,女性36名)について 比較検討した.  4.予備実験  本実験を始めるにあたり,上腕を平均血圧で駆 血する妥当性について以下の予備実験を行った.  年齢28∼62歳の健常婦人15名(20歳代1名,30 歳代3名,40歳代5名,50歳代4名,60歳代2名) を対象とし,全過程駆血せず2分間の安静の後2 分間本実験と同様の運動負荷をかけ,その後5分 間の回復過程を観察した(無駆血群).日を変えて 同じ対象群に対し,本実験と同様に平均血圧で持 続的に駆血し,同様に観察した(平均血圧持続駆 血群).両群の比較により安静期のPi/PCrおよび 筋肉内pHは両群で差がなかったが,回復は平均 血圧持続駆血群で有意に遅延した(図4,5).鯵 血という末梢循環への負荷がエネルギーの回復,

筋肉内pHの回復に影響を与えることが示され

た.よって本実験では平均血圧で持続的に駆血す ることとした.  5.統計処理  結果の値は平均値±SEで表した.各群の値の 比較はStudent’s unpaired t−testを用い検定し た.これらは危険率が5%未満のときその差に有 意性ありとした.また危険率が10%未満のとき傾 向ありとした.          結  果  1−a.エネルギー代謝(表1)  1)Pi/PCrの基礎値  男性では0.183±0.017と,女性の0.152±0.009 に比し高い傾向を示した(p〈0.1).男女とも若年 群,高年群では差がなかった.男性のAI高値群で は0.201±0.017で,AI低値群では0.183±0.017 だった.女性のAI高値群では0.211±0.024と,AI 低値鞘の0.152±0.009に比し有意な高値を示した (p〈0.05). .2)Pi/PCrの最高値  Pi/PCrは運動負荷により上昇し,運動負荷直 後から運動負荷解除後2分の間に最高値に達し た.Pi/PCrの最高値に性差はなく,男女とも加齢 による差はなかった.男性のAI高値群は0.508± 0.072と,AI低値群の0.731±0.084に比し低い傾 向が認められた(p<0.1).女性のAI高値群では 0.611±0.153で,AI低値群では0.708±0.085だっ た.  3)Pi/PCrの上昇速度

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表1 男女の各群におけるPi/PCrの基礎値,最高値,上昇速度,回復率,回復速度 Pi/PCr AI n 基礎値 最高値 上昇速度(/分) 回復率(%) 回復速度(/分) 男性 く3.5 ?R.5  若年群 m鷲AI高値群 0.186±0.036 O.180±0.012 O.183±0.017 O.201±0,017 0.745±0.163 O.719±0.083 O.731±0.084「      * O.508±0.072」 0.249±0.082 O.206±0.033 O.226±0,040 O.130±0.037 1⑪6.9±7.3 W4.7±9.9 X4.7±6.7 P35.2±40.7 0ユ21士0.031 O.101±0.017 O.110±0.016「      * O.061±0.015」 女性 く3,5 ?R.5  若年群 m 高年群 合 計AI高値群 18 P3 R1 T 0.144±0.012 * P:翻:ll凱」      **0.211±0.024」 0.769±0.136 O.623±0.073 O.708±0.085 O.611±0.153 0.299±0.068 O.219±0.035 O.265±0.042 O.181±0.076 88.5±2.6 X5.4±5.9 X1.4±2.9 X0.4±21.0 0.119±0.025 O.094±0.O12 O.109土0.015 O.077±0.017 mean±SE,*p<0.1,**p〈0.05。

 性差はみられなかった.男性では若年群が

0。249±0.082/分,高年群が0.206±0.033/分,AI 高値群が0.130±0.037/分だった.女性においては 若年群が0.299±0』68/分,高年群が0.219± 0.035/分,AI高値群が0。181±0.076/分だった.  4)Pi/PCrの回復率  男性は,若年群が106.9±7.3%で,高年群が 84.7±9.9%だった.女性では加齢による差はな

かった.男女ともAI高値群では個人差が大き

かった.  5)Pi/PCrの回復速度  性差はみられなかった.男性は若年群が0.!21± 0.031/分,高年群が0.101±0.017/分だった.AI高 値群では0.061±0.015/分と,AI二値群の0.110± 0.016/分に比し遅延する傾向が認められた(p〈 0.1).女性では若年群が0.119±0.025/分,高年群 が0.094±0.012/分,AI高値群が0.077±0.017/分 0,25 §0・20 ご 遡 0,15 回 so・10

3

差α05 G,00

  翫雛コAI騰

  目AI高値群 一*’一      *Pく0.1 ’ ’ ”、 、 、 ’ ’ ”、 、 、 ’ ” ノ、 、 、 ’ ’ ”、 、 、 ’ ’ ”、 、 、 ’ ’ ”、 、 、 、 、 、 暇i’冊 ノ ノ ノ ノ、C、 C、 ,、C、C、 ,、C、 C、 ,、C、 C、 ,、I、 C、 ,、C、 C、 ,、C、 C、 ’ンこ・こ        男 性         女 性     図6 Pi/PCrの回復速度(/分) 男性のAI高値群はAI低値群より遅延する傾向を示 した(p<0.1).男女とも有意差.はなかったが,高年群 は若年群より遅延する傾向を示し,AI高値群はさらに 遅延する傾向を示した. 表2 男女の各群におけるpHの基礎値,最低値,下降速度,回復率,回復速度 pH AI n 基礎値 最低値 下降速度(/分) 回復率(%) 回復速度(/分) 男性 〈3.5 ?R.5  若年群 m 高年群 合 計AI高値群 7.170±0.038 V.235±0.049 V,205±0.032 V.190±0,059 6.891±0.072「       卑 U.683±0.084」 U.775±0.060 U.783±0.079 0.072±0.014 O.118±0.025 O.098±0.016 O.125±0.021 61.0±20.7 S6.9±16.5 T3.1±12.7 W1.0±17.4 0.057±0,019 O.077±0.028 O.068±0.017 Oユ07±0.021 女性 <3.5 ?R.5  若年群 ォAI高値群 18 P3 R1 T 7.178±0.031 V.166±0.024 V.173±0.020 V.261±0.085 6.815±0.060 U.895±0.053 U.848±0.041 U.955±0.123 0.108±0.022 O.092±0.019 O,101±0.015 O.081±0.023 58,0±17.1 X0.1±16.6 V1.4±12.3 S1.9±15.0 0.058±0.019 O.067±0.012 O.062±0.O12 O.027±0.015 mean±SE,*pく0.1.

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だった(図6).  1−b.pHの変動(表2)  1)pHの基礎値  pHは7.166∼7.261に分布し,性差,年齢差, AI 値による差はなかった.  2)pHの最低値  運動負荷によりpHは下降し,運動負荷解除後 2∼5分に最低値に達した.pHの最低値は男性 では6.775±0.060で,女性では6.848±0.041だっ た.男性の若年群では6.891±0.072であるのに対 し,高年群では6.683±0.084と低い傾向が認めら れたが(p<0.1),AI値による差はなかった.女 性では加齢による差はなく,AI高値群が6.955± 0.123,AI低値群が6.848±0.041だった.  3)pHの下降速度  男性では若年群が0.072±0.014/分,高年群が 0.118±0.025/分,AI高値群が0.125±0.021/分 だった.女性では加齢による差はなく,AI高値群 が0.081±0.023/分,AI二値群が0.101±0.015/分 だった.  4)pHの回復率  男性の若年群は61.0±20,7%で,高年群は 46.9±16.5%だった.AI高値群は81.0±17.4% で,AI低値群は53.1±12.7%だった.女性では若 年群が58.0±17.1%,高年群が90.1±16.6%だっ た.AI高値群は41.9±15.0%で, AI低一群は 150 雲1・・ ) 回 e 50 舌 0

蹴嬢コAI聯

自AI高値群 71.4±12.3%だった.  各群言で有意差はなかったが,40%台の低い回 復率を示したのは,男性では高年群,女性ではAI 高値群だった(図7).  5)pHの回復速度  男女とも加齢による差はなく,男性のAI高値 群は0.107±0.021/分で,AI三値群は0.068± 0.017/分だった.女性のAI高値群は0.027± 0.015/分で,AI低値群は0。062±0.012/分だった.  2.脂質代謝(表3)  1)総コレステロール  男性では,加齢による差はなかったが,AI高値 群で209.6±8.6mg/dlと,AI二値群の180.0±6.O

mg/dlに比し有意な高値が認められた(p<

0.01).女性では若年群の162.9±4.8mg/dlに対 し,高年群では193.8±13.Omg/dlと有意な高値 が認められた(p<0.05).AI高値群では214.2± 11.4mg/dlと, AI二値群の175.8±6.6mg/dlに 対し有意な高値が認められた(p〈0.05).  2)HDL−C  男性は52.5±2.6mg/dlと,女性の57.9±1.9 mg/dlに比し低い傾向が認められた(p<0.1).男 性の若年群が58。4±4.3mg/dlであるのに対し, 高年群で47.5±2.5mg/dlと有意な二値が認めら れた(p〈0.05).AI高値群は40.7±2.Omg/dlで あり,AI低二二の52.5±2.6mg/dlに比し有意な 低湿が認められた(p<0.01).女性は加齢による 差はなかった.AI高値群では40.2±1.9mg/dlと, AI二値群の57.9±1.9mg/dlに比し有意な二値が 認められた(p<0.01)(図8). 表3 男女の各群における血清脂質       男 性        女 性      図7 pHの回復率(%) 各陰間で有意差はなかったが,40%台の低い回復率を 示したのは男性では高年群,女性ではAI高値群だっ た. 血清脂質(mg/dl) AI n 総コレステロール HDL−C 男性 乱ォ <3.5 ュ3.5 ?R.5   若年群 169.1±11,1 P88.8±5.0 P80.0±6.0「      *** Q09.6±8.6」 P62.9±4.8「      ** P93.8±13.0一」 P75.8±6.6「      *ゆ Q14.2±11.4」 58.4±4.3「     *掌 S7.5±2.5」 ロlilil凱55.2±9.1  *瓢1.1     *案*40.2±1.9」 mean±SE,*pく0,1,料p<0.05,***pく0.01.

(7)

mgld1 80 60

3

皇 40 20 0

  疎画]・・低値群

  四AI高値群  r一**一 一*一       ‘τ *p<0.05 **P<0.01 「一**一      男 性         女 牲        図8 HDL・C 男性では高年群が若年群に比し有意な低値を示した (p〈0.05).女性では若年群,高年群で差がなかった.          考  察  31P・MRS測定条件  MRSは磁場強度1.9 tesla,パルスの繰り返し 時間は2秒で測定した.signal・to−noise ratioの上 昇にはスペクトルを数回加算することが必要であ る.Parkらは5秒毎に3分で36回1), Wilsonらは 5秒毎に4分で48回2),Satrusteguiらは3秒毎に 4∼10分で80∼200回3)加算している.  本実験ではその至適条件を基礎実験により検討 した結果,60回加算(2分間)で良好な結果が得 られることを確認し,以後の検討は2秒毎の計測 を2分間加算した結果から検討した.ただし回復 期2∼5分は3分間加算した.  運動負荷  本実験での運動負荷は,その標準的な方法であ る15kg,2分間の握力試験で行った.  筋エネルギー代謝を評価するためには定量的な 負荷が望ましいが,厳密に各個体の測定範囲の筋 線維に同量の負荷をかけることは困難である.な ぜなら,腕の筋肉の太い人は筋線維数が多く,す なわち前腕筋の内,同じ仕事量をこなすために動 員される筋線維数が異なり,同一容積の筋線維に かかる運動強度は腕が細いほど増大することにな るからである.  駆血圧  外科手術等で臨床的に血流を完全遮断するため には最高血圧よりさらに200mmHg以上の高い圧 が必要と言われている’5).またIwanagaらはオキ シヘモグロビンとデオキシヘモグロビン濃度の相 対的変化をnear−infrared spectroscopyを用い測 定して求めた血流量から,最高血圧駆血下運動負 荷中にも血流量が増加することを報告16)し,轡血 や運動による血圧上昇のためと説明している.  本実験では安静時に測定した平均血圧で駆血し ており,動脈からの流入はもちろん,静脈からの 流出に関しても完全な遮断はされていないと考え られる.  目的および方法について  健常者の運動負荷によるエネルギーおよび筋肉 内pHの回復に及ぼす末梢循環状態を強調して把 握するために,平均血圧で駆血した状態で運動負 荷およびそれに続く回復過程を観察した.  Nunnallyらのウサギ灌流心の冠動脈結紮実験 や8>,Chanらのラットの出血モデル9)の結果から, エネルギー基質や代謝産物は循環により供給,除 去されると仮定できる.血流を遅延させ回復過程 に差が見いだされれば,その循環負荷に対する各 対象の末梢循環系の予備力というような潜在的な 機能の差を強調して観察することが可能になると 考えた.  ただしこの場合,回復過程に影響を与える因子 として,血流遅延の程度があげられ,血流二三の 条件をそろえる必要があった.どの個体にも同じ 条件で血流を二品させる目的で,安静時に測定し た平均血圧を用いた.この,平均血圧で駆血する という末梢循環系への負荷によりその予備力を観 察する方法は,血管内皮機能の予備力を観察する 方法として従来より用いられている17)∼19).  予備実験にて無駆血群と平均血圧持続駆血群の 安静時のPi/PCrおよび筋肉内pHに差はなかっ たが,運動二二後の回復は平均血圧持続駆血群が 有意に遅延し,欝血という末梢循環系への負荷が エネルギーの回復,筋肉内pHの回復に影響を与 えることが示された.  すなわち,31P−MRSにより筋エネルギー代謝が 測定可能であること,文献および予備実験からエ ネルギー基質や代謝産物は循環により供給,除去 されるとの仮定が妥当であることに,平均血圧に

(8)

よる駆血で末梢循環系へ負荷し,その予備力を観 察する方法を合わせて,新しい循環機能の評価を 試みた.  筋線維特性  Piは2峰性のピークが観察されることがある. 溶液中の燐は第一燐酸イオンと第二燐酸イオンと して存在し,両者の存在比はpHに関係する20).こ

のためpHの異なる環境が存在するとPiシグナ

ルが多峰化する4).  pHの低下}ま,RossらのMcArdle症候群(myo− phosphorylase欠乏症)に対する虚血運動負荷実 験2Dにより嫌気的解糖が起こらずpHが低下しな いことなどから,乳酸の貯留が原因とされている. すなわち,pHの低下は嫌気的解糖が惹起される ためと説明されている.  Parkらはヒトの前腕筋群の31P−MRSを測定し 2種類のPiのピークが観測されることを報告し た1).  従来より筋線維は組織化学的に速筋線維と遅筋 線維に分類されてきた22)23).筋線維の分類方法は 様々だが,myosin ATPase染色が最も頻繁に用 いられ,これによりtype I, type IIに二分される. さらにtype II線維はtype IIA, type IIBに細分 される22).ATPの分解速度を決定するATPase 活性は筋の収縮速度を決定する主要因である. type II線維はATPase活性が高く収縮速度も速 やかでfast−twich飾er(速筋)として分類される. またtype I線維はATPase活性が低く収縮速度 が遅くslow−twich丘ber(二筋)として分類され る.  Burkeらは脊髄αニューロンとこれに支配さ れる筋線維群を総称して運動単位どした.これを 筋線維群の収縮速度を強縮刺激に対する疲労耐性 に基づいて分類し,収縮速度が速く疲労しやすい FF(fast−twich fatiguable)型,収縮速度が速く 疲労耐性のあるFR(fast−twich fatigue resis− tant)型,また収縮速度は遅いが疲労耐性に優れた s(slow−twich)型とした.そして各々の運動単位 はtype IIB, type IIA, type I線維を支配してい ることを明らかにした24).  ヒトの骨格筋は機能的,代謝的に異なる筋線維 から構成されており,それらはミックスされたモ ザイク様に三内に存在している25).  Parkらは収縮特性による筋線維の分類を組織 化学的な筋線維の分類に対応させ,低いpH値を 示すPiの信号は二筋由来であると結論した1).  古賀らは,in vivoでウサギ骨格筋に電気刺激に より運動強度を変えて31P−MRSにより筋のエネ ルギー代謝を測定した.運動強度を増すことによ りPiが分離し, pHの低い方のPiピークが増大 した.これは運動強度が低いときには遅筋が比較 的多く使われ,強い運動を行うときには二筋が多 く動員されることを示しているとし,運動強度に よる筋線維の動員の違いを示した26).  運動強度と筋線維のタイプの動員関係は,過ヨ ウ酸Schiff反応に基づいた組織化学的方法を用 いて,筋線維内グリコーゲンの消耗の程度を測定 することにより研究されている.これにより,運 動単位は運動強度の増加に伴いS(type I)→FR (type IIA)→FF(type IIB)の順に動員される ことが示されている27).  本実験でも2峰のPiピークが観察されるケー スがあった.運動負荷により前三筋の速筋線維と 遅筋線維の両方が動員され,好気的解糖と嫌気的 解糖が同時に起こったと考えられる.本実験では 測定に際し,2峰のPiピークを合成し,筋肉内 pHを求めた.  筋エネルギー代謝の評価  負荷に伴うPi/PCrの上昇は,筋細胞に貯蔵さ れていたエネルギーの消費と,筋肉の仕事量を意 味する28)と考えられ,pHの下降はエネルギー供 給系における嫌気的解糖の依存度の上昇を意味す る28).  本実験で負荷に伴うPi/PCrの上昇の度合や上 昇速度,pHの低下の度合や下降速度は,筋線維特 性を反映していると思われる.  本実験のAI低二二は,負荷後のPi/PCrの最 高値,Pi/PCrの上昇速度に男女で差がなく,エネ ルギーの消費,筋肉の仕事量には性差がないこと・ が示された.  有意差はなかったが,男女とも高年群は若年群 よりPi/PCrの上昇速度は遅かった.加齢により

(9)

表4 男女のAI低値群, AI高値群における肥満指数 AI n 肥満指数(%) 男性 AI低値群 `I高値群 19 P0 100.6±1.8「      * P10.6±4.0」 女性 AI低四時 `I高値群 31 T 99.6±1.8「      ** P19.3土9.1」 mean±SE,*p<0.05,**p〈0.01. エネルギーの消費,筋肉の仕事量は減少する可能 性が示唆された.  男性のAI高値群はAI二値群に比し, Pi/PCr の基礎値は有意差はなかったが高値を示し,その 最高値は低い傾向を認め,上昇速度は有意差はな かったが遅かった.  女性のAI高値群でも,Pi/PCrの基礎値は高い 傾向を認め,その最高値は有意差はなかったが低 値を示し,上昇速度は有意差はなかったが遅かっ た.  Pi/PCrの増高分が筋線維の仕事量を表すな ら,AI高値群はこの運動負荷で測定範囲の筋線維 はあまり仕事をしなかったことになる.

 男女ともAI高値群の肥満指数がAI低魚群に

比し有意に大きいこと(表4)から,皮下脂肪, 筋線維東間の脂肪により31P−MRS測定範囲内の 筋線維数が少なかったことが原因として推察され る.  男女ともAI高値群はPi/PCrの増高が少ない にもかかわらず,pHの最低値はAI低値群と変ら ず,pHの下降速度にも差がなかった. Pi/PCrの 増高に対するpHの下降の割合は,男性では有意

差はなかったがAI高値群がAI低晶群より大き

く,また女性では有意に大きい傾向があり,AI高 値群は嫌気的解糖への依存度が高い可能性が示唆 された.男女とも脂質代謝異常により嫌気的解糖 への依存度が増加し,エネルギー効率は低下する 可能性が示唆された.  女性ではとくに脂質代謝異常が閉経後の高齢者 に集中し,内分泌環境が強く影響すると考えられ る.  男女の筋線維特性  高田らは,強縮性収縮運動(骨格筋の運動は短 縮と強縮に分類されるが,本実験で行われている 収縮は強縮性収縮である)は,筋収縮の興奮収縮 連関に刺激閾値の上昇を生じ,同じ仕事量を維持 するためには閾値以上の刺激が必要であることを 報告し,筋肉の機能疲労が進展すると,神経線維 から筋線維に伝達される活動電位が減弱し,この 筋線維興奮性の低下から収縮能の低下を招いて張 力が低下すると説明している5>.また,筋肉の機能 疲労が進展すると,それまでのPiの上昇が止まっ て下降に転じ,pHの下降が上昇に転じることを 報告し,Piの上昇域やpHの低下域の大きさは, むしろ筋肉の機能を反映するものと解釈してい る6>.

 AI低二二でpHの最低値は男性が女性より有

意差はなかったが低かった.  男性の方が嫌気的解糖の機能範囲,すなわち速 筋の機能範囲が大きいことが示唆され,高田らの 報告6)と同様に筋肉の機能を反映すると考えられ る.  男性で二筋の機能範囲が大きく,女性で速筋の 機能範囲が小さい,といったことは男女の筋線維 特性の違いによるとも考えられる.動物実験では 筋線維の性差が組織化学的方法で報告されてい る29).  男女の末梢循環効率

 Pi/PCrとpHの回復には時間的なずれがあ

り,前者の回復が先行した.このずれは吉田らも 指摘しており,計測範囲に少なくとも2種の筋線 維が存在し,運動後の筋線維の代謝の違いによ る7)と説明している.  本実験では末梢循環状態を強調しており,pH の回復の遅れは,ATPの再生産よりも乳酸の筋 組織からの除去に時間がかかることが一因と考え られる.  Pi/PCrの回復過程は末梢循環のエネルギー代 謝の基質供給系を表し,pHの回復過程は末梢循 環の乳酸除去系を示すと考えられる.  男性の高年群はPi/PCrの回復率が若年群に比 し有意差はなかったが低かった.  男女ともAI高値群はPi/PCrの回復率にばら つきが大きかったが,AI低山群に比較し運動負荷

(10)

に対するPi/PCrの増高が少なかったことが影響 していると考えられる.

 男性のAI高値群はPi/PCrの回復速度がAI

低値群に比し遅延傾向を認め,女性のAI高値群 でも有意差はなかったが遅かった.男女ともAI 高値群はAI二値群に比し運動負荷に対するPi/ PCrの増高が少なかった割にはその回復は遅延 していると考えられ,脂質代謝異常に伴う動脈硬 化病変が末梢循環の供給系に影響を及ぼしている 可能性が示唆された.

 また女性のAI高値群はpHの回復率,回復速

度ともにAI低値群に比し有意差はなかったが二 値を示し,脂質代謝異常が末梢循環の除去系にも 影響を及ぼしていると示唆された.  すなわち男女とも脂質代謝が末梢循環効率に関 係している可能性が示唆された.さらに男性では 加齢にも関係している可能性が示唆された.  男女の脂質代謝  男女とも加齢により総コレステロールは増加す るが,HDL−Cは男性で加齢による減少が認めら れるのに対し,女性では顕著でなかった.しかし

女性のAI高値群でHDL−Cが有意に低下し,閉

経後の経過30)と一致する成績であった.  女性の末梢循環効率と閉経  閉経により心血管病変のリスクが増大するとい う報告10)∼12),エストロゲン投与の脂質代謝への好 ましい効果に関する報告31)∼33)が数多く見られ,エ ストロゲンの末梢循環に対する効果も充分予想さ れる.  本実験で女性のAI高値群が閉経後の高齢者に 分布していることを考えると,閉経に伴うエスト ロゲン欠乏が,脂質代謝系を介して,末梢循環機 能の低下を惹起した可能性が考えられる.本実験 では末梢循環について解析したが,内分泌環境が 良好なら末梢循環障害は起こりにくい可能性が考 えられる.  加速度脈波との比較  血流を直接測定するものではないが,指尖容積 脈波は心拍出量と細動脈管の収縮状態に関連し て,末梢循環系における血行状態を表現するもの であり,脈拍の触診所見と深い関係がある.伊藤 ‘ら34)は健診センターを受診した男性549名,女性 238名について従来の波形を2回微分して得られ る加速度脈波を測定した.加速度脈波は強い年齢 相関を有し,血圧と血清総コレステロールが両性 共通の,年齢に次ぐ有意相関要因だった.男性型 要因は肺機能であり,女性型要因は肥満度,動脈 硬化指数,中性脂肪,ヘマトクリット,喫煙,ア ルコールだった.女性型要因に動脈硬化指数があ げられているが,動脈硬化指数は本実験に限らず 閉経後上昇するので,本実験を支持する結果であ るといえる.  毛細血管,細胞内外の物質の出入,静脈系の循 環を含めた末梢循環の評価法は他にあまり有効な ものが見あたらない.  よって現在のところ,31P−MRSは測定範囲の動 静脈系を含めた組織全体の末梢循環機能の評価法 として,非侵襲的で有効な検査法であるといえる. また更年期,すなわち,エストロゲンの欠乏とい う内分泌環境の異常が脂質代謝異常を介して末梢 循環にもたらす影響や,末梢循環障害の評価の指 標となり得る可能性が示唆された.          結  語  1)末梢循環への負荷が,エネルギーの回復,筋 肉内pHの回復を遅延させることが示され,エネ ルギー基質の供給,代謝産物の除去が循環による との仮定の妥当性が示された.  2)平均血圧での持続的な駆血下に運動負荷を 加え,31P−MRSを用いて筋エネルギーの回復過程 を観察する本方法により,末梢循環効率の評価が 可能と考えられた.  3)男女ともAI高値群では運動負荷後の筋肉 内のエネルギーやpHの回復は遅延し,「脂質代謝 異常が末梢循環効率の低下に関与する可能性が示 唆された.  4)男性では加齢も末梢循環効率の低下に関与 する一因子であることが示唆された.  5)女性ではAI高値群が閉経後の高齢者に分 布し,エストロゲンの欠乏という内分泌環境の変 化が強く関連するものと思われた.  6)本方法は更年期の末梢循環障害の病態解明 や,その評価の指標となる可能性が示唆された.

(11)

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参照

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