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中学生のうつ病とうつ状態を伴う登校拒否との比較検討

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原  著 〔書女医藩,器63巻平塚翻言〕

中学生のうつ病とうつ状態を伴う登校拒否との比較検討

愛知県精神保健センター(主任:伊藤克彦部長)      イノ    コ     カ     ヨ

     猪 子・香 代

(受付平成5年6月21日) Comparison between Depressive Disorder and School Refusal Accompallied by       Depressive Symptoms in Adolescence

    Kayo INOKO

Aichi Prefectural Mental Health Center   We report the clinical features of two patients with depresslve d孟sorder, and those of two patients with school refusal accompanied by depressive§ymptQms,in adQlesce皿ce. In Japan, school refusal is a malor concern of child psychiatrist6. A proper recognition of the difference between depressive disorder and school refusa1.is essential for carrying oht any study on childhood depression in Japan. Therefore, the purpose of this paper is to delineate clinical characteristics and to provide reliable differential criteria for both conditions, through a detailed observation of similarities and differences between the two conditioロs.   While t垣e patients with depressive disorder descriped their feelings rather activelyl those with school refusal accompanied by depressive symptoms did not seen aware of their feelingsr The latter felt anxiety regarding social competence.   Pat孟ents with these two disorders were diagnostically distinguishable on the basis of theSe characteristics. Furthermore, understanding of such characteristics has significance. in the psycho− logical treatment of patients with these two disorders.          はじめに  登校拒否にうつ状態を伴う.ことが稀ではないこ とは以前より言われている.そして登校拒杏とう つ病との関係についても様々な見解が述べられて いる1)∼4).その背景には,登校拒否やうつ病をどう とらえるかという大きな問題がある.  登校拒否は,症状的にも様々でひとつのものと 考えないとする立場もあるが4)5),わが国では多く の児童精神科医にひとつの臨床単位として考えら れている6).また,登校拒否の心理力動,家族関係,

学校状況などについての研究が重ねられてい

る7)8).最近,児童期のうつ病について注目されて いるが,わが国の児童精神科臨床においては,登 校拒否との関係を明確にしていくことが,うつ病 の様相を知るためにも重要であると思われる.  今回,中学生のうつ病とうつ状態を伴う登校拒 否の各々について症例を提示し,それらの病像を 比較検討した.これらの症例をどのように診断し ていくのかといったことを中心に考察したい.          症  例  4症例を提示するが,いずれも経過中に不登校, およびうつ状態を呈した.しかし診断的には,2 例はうつ病,他の2例はうつ状態を伴った登校拒 否と考えた.その理由は後に述べたい.  1.症例1  うつ病と考えた例で,初診時15歳(中学3年生) の男子である.  エリート・サラリーマンの父親と自宅で英語塾 を営む母親との3人家族である.父親は,高学歴 で大企業の中で激務をこなしていた.性格は負け

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ず嫌いでエネルギッシュであった.弱音は吐かな いが,仕事がうまく運ばないと家庭でいらいらす るようなことはあったという.母親は,知的で社 交的な人であるが,自ら小さなことで動揺しやす い性格だと言う.患児は,明るく友人関係にも問 題なく,動物好きのやさしい少年として成長した.  中学2年の春に父親が交通事故にて亡くなっ た.その頃から患児は「母親を悲しませないよう に」と猛勉強を始めた.中学3年目なって成績が 上がったが,夏休みもさらに猛勉強を重ねた.2 学期の始めに,僅かな成績不振を気にし勉強が手 につかなくなった.そうなときも母親は患児を励 ましていた.しかし,時に母親に興奮して焦燥感 を訴えるようになり,そのことを心配して母親か ら相談を受けた.しぼらくして患児自身も自ら来 所した.患児は「しばらく前から,思考力や集中 力がなく勉強ができない.いつもボーとしている. 楽しいだろうと思うことをやってみても楽しくな い.無感動,悲しい落ち込んだ気分.夜は寝つけ ない.眠っても眠り足りない.脱力感,気力がな い」などと語った.  治療に対しては積極的で,学校での葛藤を語っ たが,休養を勧めてもそれには応じなかった.し かし,その後,受験のために無理をし,患児とし てはやむなく学校を欠席した.その時期は,抑う つ感,焦燥感が強く,苦悶状態であった.  2.症例2  うつ病と考えた例で,初診時15歳(中学3年生) の男子である.  会社員の父親,パート勤めの母親,大学生の兄, 高校3年生の姉の5人家族である.父親はやや自 己中心的で負けず嫌いなところがあるが,会社で の対人関係は良好のようである.母親は,自ら神 経質なところがあるという.大学生の兄は細事に こだわらない性格で,成績も優秀である.高校生 の姉はクラブ活動に熱中し友人関係も良好であ る.患児は成績も優秀であるが,それ以上に友人 や教師から信頼され生徒会の役員や級長などをす ることが多かったようである.  幼稚園と小学校で行きしぶりがあった.友達が できると楽しく通えた.  小学校4・5年生の頃,それまでは家庭にいた 母親がパート勤めに出始めたことをきっかけに, 「死にたくないのに自分で死んじゃいそうだ」とい うことを繰り返し考え,そのことを何度も母親に 言った.特別に治療は受けなかったが,いつの間 にか考えなくなった.  中学3年生の夏休みまでは,クラブ活動に一生 懸命だった.2学期からは,それなりに勉強に頑 張っていた.風邪を引いて熱があるのに無理をし て学校に行った次の日から急に,「死にたくないの に死んじゃうんじゃないか」と繰り返し考えるよ うになった.それと同時に,昼間うとうと眠って いて夜は眠れない.集中力がない.好きな漫画を 見ていても何にもおもしろくない.気分は優うつ. 食欲もないといった状態となり,内科医からの紹 介で当センターに来所した.患児が自ら,考えた くないことを繰り返し考える苦しみや気分の落込 みのつらさを語った.  治療に通い出してから,学校に行くことが苦し くなって,しぼらく欠席をした.欠席をしたこと で不安になったが,担任の教師と話し合うことで 落ち着いて休養することができたようである.い らいらした気分や「自分が試験で不正をしていな いのに,不正をしたのではないか」と繰り返し考 えることは持続していたけれども,学校に戻った. 高校入試を終え,しぼらくしてから気分も良く なった.  3.症例3  登校拒否と考えた例で,初診時14歳(中学2年 生)の女子である.  両親とも教師であり,2人の兄と祖母の6人家 族である.父親は,勉強家で,目的のためにはコ ツコツ何年でも努力するタイプである.母親は, 社交的で行動力があり地域活動などにも積極的で ある.長兄は,高校1年の時,散発的不登校であっ たが単位は取って進級は果たした.患児とは気が あって仲がよかったが,この春から他県の大学に 進み下宿生活となった.次兄は,高校2年生であ るが勉強ぽかりしている.患児は,成績も良くク ラス委員に選ばれることも多いが,友人関係には 消極的でいやと言えない性格である.ときどき嫌

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われ者の友人ができて教師や母親につきあいをや めるよう忠告を受けたりするような:こともあった という.  兵児の通う中学はいまだに管理教育をすすめる 教師が大勢を占め,真面目な生徒である患児でさ えも教師から靴下の柄な:どを理由に屈辱感を味わ せられるような叱責や罰を受けていた.中学2年 の2学期の始めに,慕っていた女教師にやはり ちょっとしたことで叱責を受けた.それから学校 を休みだし,母親に連れられて当センターに来所 した.患児は「学校に行かないのではなく,夜は 眠られず朝は起きられないから学校に行けない」 と語った.母親に尋ねると,学校に行かなくとも 朝は無理に起こしているが,無気力で殆ど何もし ないという.  患児は「私が病気ではない」と言って治療には 拒学的であ?た.学校で教師から叱責を受けた様 子や気の強い友達に怒られたりすることは語る が,そのことに対する自分の感情は語らない.学 校に行けないのはなんとなくとしか言わなかっ た.  両親面接を中心に経過をみた.無気力状態から 脱した後,しぼらく友人や家庭教師と積極的に交 流し,家庭でも勉強や趣味に意欲的であったが, 登校はしなかった.登校を再開したのは翌年の4 月であった.  4.症例4  登校拒否と考えた例で,初診時12歳(中学1年 生)の女児である.  自営業の父親,主婦の母親,小学校4年生の弟 と父方祖父母の6人家族である.父親はエネル ギッシュに仕事をこなしている.母親は,同居の 祖父母に気を使った生活を送っている.弟は成績 も優秀で,友達もたくさんいる.患児は,他人に 対して気を使う.他人に頼まれるといやと言えな い.友達と同じことをしていると安心していられ るといったところがあった.  保育園に通い始めた頃は,行きしぶりがあった. 母親と一緒にいたいと思ったという.  小学校時代は特に問題なく過ごぜた.  中学生になり,不良といわれる上級生がいたり, こわいなと思った.クラブ活動も自分の入りたい ところは希望者が多く,苦手なスポーツ・クラブ に入った.  2学期になってから,「夜寝つけなくて朝起きら れず,だるい.朝は気持ち悪くて,吐き気がする. ぐったりしてしまう.学校では友達と話すことが できない」という状態であった.学校に行っても 保健室に行ってしまう,学校に行けないことも多 いということで大学病院を受診した.  患児は通院はしてきたが,自分のことは余り話 そうとせず診察室では何気ない話題で終わること が多かった.母親は通院には反対であり,病院に 来るより学校に行ってほしいと言っていた.患児 は家庭には居場所がないので,登校はするが保健 室に行くことが多かった.学校に行けない理由は 腹痛や発熱であると言っていた.そうするうちに, 養護教諭とうちとけることができた.また,不良 と考えていた上級生とも保健室で顔なじみとなっ た.毎日会って話をするうちに身近となり,こわ いとも思わなくなっていった.家では母親の言動 にカッと怒っていたのが,落ち着いて過ごぜるよ うになった.3ヵ月位の経過で学校に通えるよう になった.          考  察  1.Depressionの視点から  これらの症例をDSM¶1−R9)のうつ病性障害 にあてはめて考えてみた.  症例1は大うつ病エピソードの症状の基準の9 項目中6項目を満たし(抑うつ気分,喜びの減退, 不眠,焦燥,気力の減退,思考力や集中力のなさ), DSM−III−Rの大うつ病の診断基準にあてはまる と考えられた.但し,1年以上の間隔をおいてい るが父親を亡くしており,死別反応を鑑別しなく てはならない.父親を亡くしたということへの反 応という面もみられるので,死別反応に大うつ病 が伴ったと考えた.  症例2も,抑うつ気分,喜びの減退,食欲減退, 過眠,集中力の減退によって,同じように習うつ 病と考えられた.この症例は強迫観念をどう考え るかということが問題となる.計うつ病に関連し た強迫観念の内容であるかどうかで,強迫性障害 一E262一

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と診断するか否か決ってくるが,強迫性障害と診 断したとしても大うつ病が併存していると考えな くては弔うつ気分や睡眠障害な:どを説明できない であろう.強迫性障害としても,その強迫観念の 内容は死の反復思考や罪責感といったうつ病によ るものと近縁のものである.  症例3は,壁間の主観的訴えとしては不眠や登 校への億劫さのみである.両親は無気力や興味の 減退を観察しているが,それを考慮に入れても呪 うつ病エピソードの診断基準は満たさず,特定不 能のうつ病性障害といわなけれぽならない.  症例4も,抑うつ気分,不眠,易疲労性ほ訴え るが,大うつ病エピソードの診断基準は満たさず, 特定不能のうつ病性障害となる.

 症例1・症例2と症例3・症例4とはDSM−III

−Rのうつ病性障害に当てはめて考えるとこのよ うに違いがみられた.しかし,臨床的にこの2群 の違いとして印象的であったのは,大うつ病と診 断した症例1・症例2は自らのうつ状態に対して 苦しみを表現したことであり;症例3・症例4は, それに対しどこか無関心であった.大うつ病エピ ソードの症状の基準は,主観的訴えによることが 多いので,症例3,症例4のように苦しみを訴え ようとしなけれぽ基準を満たさないことは自明の ことであるようにも思われる.  2.登校拒否の視点から  登校拒否という視点からこの4症例をみてみた い.  周知のとおり,登校拒否はDSM−III−Rには含 まれていない.まず,何にあてはめて,登校拒否 を考えるかということに問題がある.Johnson ら10)によってなされた定義,「非行による怠学とは 異なり,本人は登校しなけれぽならない,登校し たいという意志を有しているにもかかわらず,何 らかの神経症的なメカニズムにより登校不能に 陥っている状態」だけではなく,登校拒否に特徴 的といわれている心理力動について考えてみた い.  登校拒否は,年齢を通じて共通の特徴もあるけ れども,精神発達によって症状が変化するのは当 然である.ここでは,中学生年齢にいわれている 心理力動を中心に取り上げようと思う7)u).  症例1も経過中に不登校の時期をもつが,うつ・ 状態が高じたのちのものであり多少でも回復する と学校に戻った.また不登校の時期には抑うつ感, 焦燥感,苦悶が強く,登校刺激をしないでも取り 払うことはできなかった.症例2も同様に考えら れる.不登校の時期は,うつ状態が高じていた時 期に一致すると思われる.  症例3は抑うつ状態が改善したのちも,しばら く学校には戻らなかった.また,抑うつ状態より もむしろ教師や友人との対人関係における不適応 やそれに対する逃避的態度といったごとが患児の 問題の中心であるように考えられた≧学校に戻る 過程でも,友人関係の不安を自分で解決してから 登校するようになった.この症例の不登校は友人 や教師との対人関係への不安が関係していると考 えられる.  そして,不安に対する態度もうつ状態に対する 態度と同様に苦しみを直接に表現しないもので あった.これらの不登校に至った心理は,対人関 係に対処する能力の未熟さやそれに対する逃避的 態度という面から登校拒否と考えてよいのではな いかと思われる.  Kolvinら3)は,登校拒否をうつを伴うものとそ うでないものに分け,両者の違いを述べている. また,Bernsteinら4)は登校拒否をうつ病性障害と 不安障害の合併から4回目分けて検討をしてい る.登校拒否の中で,うつ状態を伴うものとそう でないものとの間にどのような違いがみられるか というこ・とについては今後の課題としたい.  しかし,不安障害とうつ状態の併存とだけみる のでは,患児の逃避的態度を説明することはでき ず,登校拒否の心理響動を考えることが肝要であ ろう.  症例4も同様に不登校には対人関係における不 安が関連していると思われる.そして不安やうつ 状態に対する態度は,やはり,苦しみを表現しな いものであった.症例3と比較すると,「不良がこ わい」といったような不安が語られた.家族の状 況が,不登校を受け入れられないでいたのも関連 していると思われた.そして,そのような不安を

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表 うつ病とうつ状態を伴った登校拒否との相違点 う つ 病 うつ状態を伴った @登校拒否 主観的訴え 苦しみを自ら訴え.る 著しみを表現しない 経 過 耳うつが少しでも回復 キると学校に戻る 対人関係における不安が ウれると学校に戻る 自分で解決していき学校に戻ったが,うつ状態の 回復と時;期的には州致していた.  以上より,症例1.症例2をうつ病,症例3・ 症例4をうつ状態を伴った登校拒否と考えた。  3.中学生のうつ病とうつ状態を伴った登校拒 否との比較検討  中学生のうつ病,うつ状態を伴う登校拒否と いっても様々な症例があるので,この4症例です べて語れる訳でないが,症状,生育歴,家族関係, 学校状況,それらに対する開平の態度を比較して みたので,まとめてみた.  2群の相違点についてであるが,ひとつは前者 は抑うつについての苦しみを自ら訴えるのに対し て,後者は苦しみを表現しないということである. ふたつめは,経過の違いである.前者は学校を欠 席するときは抑うつ,焦燥,苦悶を呈するが,そ れが少しでも回復すると学校に戻った.後者は, 学校に戻るときは,.うつ状態の回復よりも,自分 なりに対人関係の不安を解決した時期であるよう に思われた.症例3は,・学校以外の生活には意欲 的となっても登校はしぼらくせずに,友人らと積 極的に交流する時期をもったのち学校に戻った. 症例4は,うつ状態の回復と不安の解決は時期的 にはほぼ一致した(表).  大井12)は葛藤反応型うつ病と神経症的登校拒否 を区別し,抑うっ状態のあらわれ方,登校刺激に・ 対する反応のしかた,課題処理への態度,登校再 開のしかた,治療に対する態度などに相違点が認 められるという.繕うつ状態のあらわれ方,登校 刺激に対する反応のしかたといわれたのは,登校 拒否にみられるうつ状態は登校拒否が持続する際 にみられる二次的な症状と捉えられているからで あろう.今回,呈示した症例3・症例4において は,登校拒否にうつ状態が伴ったが,うつ状態が 時間的にも心理的にも登校拒否の二次的なものと は考えにくかった.症例3においては登校刺激を 両親がしないでいてもうつ状態が改善をみるまで には月日を要した.うつ状態が登校刺激に反応し て起こっているとも考えにくかった.課題処理へ の態度,登校再開のしかた,治療に対する態度な: どは前述のように違いがみられた.  次に共通点を考えると,特徴的であると考えら れたのは,その病前性格である.とくに母親をも 含めた他者への配慮,争いを避ける,人にいやと いえない面などが共通して印象的であった.  家庭状況にも共通点は多い.ともに幼少期より 手のかからない良い子であった.症例1の母親は 不安が強く,ひとりっ子の患児が怒ったり争った りすることをみていられないようなところがあっ た.野晒の方も父親が家庭内でいらいらするよう なことがあっても,かえって母親を慰めるような ことが多かったようであるL症例3では,.両親面 接の中で両者からお互いを子どもに対して自立を おしつけるようなところがあると語られた.症例 2と症例4は幼少期に分離不安を思わせるような エピソードをもっているが,ともに母親の気持ち を深く思いやるというところでは共通していた.  学校状況についても共通点は多い.症例1の 通っている中学は進学熱が高く,また内申書重視 の高校入試を反映して,勉強だけでなくスポー ツ・生徒会活動・友人関係にオールマイティーを 目指す風潮があった.いじめは潜行し,いじめら れた側も問題を表面化しないでいた.患児は自分 もオールマイティを目指していたが,いじめに対 する怒りや内申点へのこだわりに対応してへきえ きし,これを自ら抑えようとしていたようである.  症例3の通う学校は教師は内申書を盾に不満を 押えつけているようなところがあった.患児はい くつかの屈辱的なエピソードを語りながらも怒り の感情はなく,教師にやさしくされる方が友人に 悪く言われて困るといった.母親の方がむしろ地 域活動のなかで情報を得て怒りがあらわであっ た.  症例2・症例4では,特徴的な学校像は出され なかったが,やはり勉強に対する厳しさは感じら

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れた.  このような比較的共通した状況のなかから,一 方はうつ病,一方は登校拒否がみられている.こ の差異は何なのであろうか.  ひとつ考えられることは,この中学生という時 期(12歳から15歳)の発達段階であろう.2群の 大きな違いは,葛藤に対する態度と対人関係にお ける不安の有無といったことであった.この年齢 は,認知能力といった点から考えれば,自らの葛 藤を認知し,それに対して自分自身がどのような 感情をもつかということを言語化していくには, それが可能になり始める時期といえるのではない だろうか.また,対人関係能力の発達ということ でも,この年齢は,友人との親密な関係をもつこ とを始める時期である.対人関係の未熟さは,同 じような暦年齢においても発達は個々に.ばらつき がみられるので,この時期にとりわけ未発達であ るともいえないであろう.認知能力や対人関係能 力や自我の発達における個々の差異が病態と関係 していることは考えられる.  いまひとつ考えられることは,うつと不安との 関係である.最近は児童期のうつ病についての見 解は変化がありB)14),その上で,うつ病性障害と不 安障害との関係についても検討されている15).う つと不安との関係についての研究が発展すること によって,登校拒否も含めた,これらの病態をど う考えるかということも明確になっていくであろ う.  今回,このようにうつと不登校を呈する症例を 提示し,一方はうつ病,一方は登校拒否と考え, どのように診断していくのかということを中心に 述べてきた.必ずしも患児らをどう診断するのか ということだけでなく,うつ,対人関係における 不安,それらに対する態度を理解しておくことは, 臨床的に治療の上でも重要であった.それらをひ とつの心理力闘と考えるにはうつ・登校拒否とい う概念を必要とした.          ま と め  いずれもうつ・不登校を呈する4症例を提示し た.診断的には,2例はうつ病,2例はうつ状態 を伴った登校拒否と考えた.各々についてうつ・ 登校拒否という両方の視点から診断的に検討し た.さらに,両群の相違点,共通点を検討し,そ れらの背景について考察した.  稿を終えるにあたり,御指導・御校閲いただきまし た愛知県精神保健センター伊藤克彦部長に感謝いた します.  この論文は,東京女子医科大学小児科学教室福山幸 夫教授の定年退職を記念して,先生に捧げます.  この論文の一部は,第32回日本児童青年精神医学会 総会において発表した.          文  献  1)Agras S:The relationship of school phobia   to childhood depression. Am J Psychiatry 116:   533−536, 1959  2)Hersov正:Refusal to go to schoo1. Child   Pschol. Psychiatry 1:137−145, 1960  3)Kolvin I, Berney TP, Bhate SR:   C萱assification and diagnosis of depression in   school phobia. Br J Psychiatry 145:347−357,   1984  4)Bemstein GA, Gar血nkel BD: School pho−   bia:The over董ap of affective and anxiety dis・   orders, J Am Acad Child Psychiatry 25:   235−241, 1986  5)Waldron S, Shrier I)K, Stone B et al:   School phobia and other childhood neuroses.   Am J Psychiatry 132:802−808,1975  6)山崎三二,栗田 広,皆川邦直ほか:児童・青年   期精神障害の疾患分類に関する研究(第2報).厚   生省「精神・神経疾患研究委託費」児童・青年期   精神障害の成因及び治療に関する研究,昭和63年   度研究報告書:79−84,1988  7)高木隆郎,川端つね,藤沢惇子ほか:学校怖症の   典型像.児童精神医学とその近接領域6:   146−156, 1965  8)鏡幹八郎:登校拒否と不登校.児童青年精神医学   とその近接領域 30:260−264,1989  9)American Psychiatric Association:Diagnos・   tic and Statistical Manual of Mental Disorders,   3rd ed, Revised. American Psychiatric Associa−   tion, Washington DC(1987)  10)Johnson AM, Falstein EI, Szurek SA et al:   School phobia. Am J Orthopsychiatry 11:   702−708, 1941  11)1、ast CG, Francis G, Hersen M et al:Separa.   tion anxiety and school phobia. Am J psychia・   try 144:653−657, 1987  12)大井正巳:若年者のうつ状態に関する臨床的研

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za. re *rp :,±tr , 8 I 431-469, 1978

13) Kazdin AE': Childhood depression. Child Psychol Psychiatry 31li21-160, 1990 14) Goodyer IM: Depression in childhood and adolescence. in Handbook of Affective Dis:

orders (Paykel ES ed) pp585-600, Church'sill

Livingstone, London (1992)

15) Kovacs M, Gatsonis C, Paulauskas S et al: Depressive disorders in childhood : IV. A

longi-' tudinal study of comorbidity and risk for ety disorders. Arch Gen Psychiatry 46l 776-782, 1989

表 うつ病とうつ状態を伴った登校拒否との相違点 う つ 病 うつ状態を伴った @登校拒否 主観的訴え 苦しみを自ら訴え.る 著しみを表現しない 経 過 耳うつが少しでも回復 キると学校に戻る 対人関係における不安がウれると学校に戻る 自分で解決していき学校に戻ったが,うつ状態の 回復と時;期的には州致していた.  以上より,症例1.症例2をうつ病,症例3・ 症例4をうつ状態を伴った登校拒否と考えた。  3.中学生のうつ病とうつ状態を伴った登校拒 否との比較検討  中学生のうつ病,うつ状態を伴う登校拒否と い

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