北
海道の河川を取り巻く環境は 1900 年代後半以降大きく変化し, 自然環境が比較的保た れていると考えられている北海道東部の太平洋沿 岸地方も例外ではない.環境変化の要因としては, 森林伐採による集水域環境の変化,鉱工業や農業 加工業の発達による汚濁水の流入,生活排水の流 入,ダム建設,河川改修が挙げられる.これらは 人間活動が河川に直接与えた負荷と考えられ,生 息する魚類に大きな影響を与える.さらに近年で は人間が持ち込んだ生物が与える影響も考えられ る.北海道東部の河川における過去の魚類相の調 査結果は少なく知見は断片的であるが,多くの河 川において上記の人為的影響により魚類相が変化 してきた可能性がある.北海道の東部地方には生 活史の過半あるいは全部を河川内で送るサケ科魚 類としてサクラマス (Oncorhynchus masou masou), 1 〒 985–0802 北海道釧路市桂恋 116 独立行政法人 水産総合研究センター北海道区水産研究所 2〒 400–0121 山梨県甲斐市牛句 497 山梨県水産技術センター 3 現住所:〒 062–0922 北海道札幌市豊平区中の島 2–2 独立行政法人 水産総合研究センターさけます センター (2008 年 7 月 10 日受付; 2009 年 2 月 6 日改訂; 2009 年 2 月 9 日受理) キーワード:河川,魚類相,北海道,ヤマメ,イワナ,ニジマスToru Nagasawa*, Kentaro Morita and Jun-ichi Tsuboi. 2009. Longitudinal distrib-ution and changes in the fish fauna of a mid-scale river, Shoro River system, east-ern Hokkaido, with notes on signal crayfish. Japan. J. Ichthyol., 56(1): 31–45.
Abstract The distribution of fishes in the Shoro River system, a mid-scale river in eastern Hokkaido, Japan, was assessed using electric fishing gear. Of the 8 species recorded during the summer of 2007, Siberian stone loach (Barbatula toni), white-spotted charr (Salvelinus leucomaenis), masu salmon (Oncorhynchus masou masou) and dace [Tribolodon sp(p).] were relatively abundant. Among of these four species, Siberian stone loach showed the most extensive distribution in-cluding above a large scale dam which provided a barrier to the fish migration. Only three other species were recorded below the dam, but not recorded above the dam. Two exotic species, rainbow trout (Oncorhynchus mykiss) and signal crayfish (Pacifastacus leniusculus) were also recorded, the former being relatively abundant above the dam and in the uppermost reach below the dam in the main stream, but rare in the tributaries. Signal crayfish appeared mainly in the tributary streams flowing into the lower reaches of the main stream. Neither species had been recorded from the Shoro River system in the 1970’s. The distribution of the two native salmonids, masu salmon and white-spotted charr, overlapped broadly in both the main stream and lesser tributaries. In the uppermost reach below the dam, exotic rainbow trout were dominant salmonid, and native masu salmon being less common than downstream.
*Corresponding author: National Salmon Resources Center, 2–2 Nakanoshima, Toyohira-ku, Sapporo 062–0922, Japan (e-mail: [email protected])
Japanese Journal of Ichthyology © The Ichthyological Society of Japan 2009
アメマス (Salvelinus leucomaenis),オショロコマ (Salvelinus malma krascheninnikovi),イトウ (Hucho
perryi) の在来 4 種に加え,ニジマス (Oncorhynchus
mykiss),カワマス (Salvelinus fontinalis),ブラウン
トラウト (Salmo trutta) が分布する(針生,1989; 1997; 小宮山,2003).これらのうち,生態的特性 の類似する在来種であるアメマス,サクラマス, オショロコマについては資源分割や流程分布等の 研究が北海道内各地で行われてきた(石城,1984; Fausch et al., 1994; Nakano et al., 1999など).なか でも,サクラマスは漁獲対象資源としても重要で あり,資源培養を目的とした研究や人工種苗放流 が日本各地で行われてきたが(真山,1992),北 海道東部の太平洋沿岸では日本海沿岸に比較して サクラマスの漁業価値が低いこともあって人工種 苗放流はほとんど行われてきていない.したがっ て,アメマス,サクラマス等はほぼ天然魚である と考えられる. 北海道東部の白糠町を流れる庶路川は日本でも 数少ないシシャモ (Spirinchus lanceolatus) が遡上産 卵する河川として知られているが,上流部に多目 的ダムが建設され,2004 年に試験湛水が完了した. ダム建設計画策定にあたっては,1980 年前後に環 境調査が行われ,シシャモやサケ科魚類等の水産 有用種を主対象とした報告書が作成されており (北海道水産資源技術開発協会,1980),また河川 規模が大きすぎないことから,魚類の流程分布お よび魚類相の変遷を調査する対象河川としては好 適であると考えられる.本稿では,2007 年にわれ われが実施した魚類分布調査結果を記述するとと もに,それを過去のデータと比較することにより 河川魚類相の変遷について考察する. 庶路川は阿寒火山群周辺に水源を有 して太平洋に注ぐ, 流程延長 66.8 km, 流域面積 約 3248 km2 の中規模河川である.流域の多くが山 間部に位置するが,本流はなだらかな白糠丘陵に 浅い谷を形成して流れるために,河川勾配は比較 的緩い.可児 (1944) を改変した水野・御勢 (1972) の区分による河川型では Aa(II) 型,Aa-Bb 移行型 あるいはBb 型の様相であり,典型的な源流型であ る Aa(I) 型の水域は支流の一部を除き少ない.ま た,典型的な下流型であるBc 型の水域も存在しな い.河口は波浪の影響を強く受けて砂が堆積し, 河川水は浅い瀬を通じて海に流入している.した がって,塩水くさび等による海水の侵入は高潮と 高波浪が重複した場合を除くと認められず,よっ て明瞭な汽水域も存在しない.本流域の大きな特 徴としては河口から30 km の中流域に高さ約 3 m の 滝が存在し,ダムの竣工以前から魚類の遡上はほ ぼ不可能であったことがあげられる.庶路ダムは 滝の上流 0.4 km に構築された堤高 48.9 m の重力式 コンクリートダムで,湛水面積は約 280 ha におよ んでいる.ダムより下流には約 26 の一次支流が存 在する.これらの支流のうち,下流部の左岸で合 流する 2 支流( コイトイ川およびトマリベツ川) は湿地帯を流れている. 2007 年の調査点は過去 データとの比較のために 1979 年に実施された調査 と同一の場所とし,本流域の 7 区間,ダムより下 流の 13 本の一次支流で魚類の採集を行った (Fig. 1). また, 規模の大きな 1 支流( クオマナイ川) と小規模な1 支流(チカツギノ沢)ではそれぞれ3 区間で,最下流で合流する湿地帯の支流(コイト イ川)では 2 区間で採集を行った.クオマナイ川, トマリベツ川, コイトイ川の 3 本を除く支流は, 調査区間の川幅が 1–3 m のいずれも小規模な河川 である.3 区間の調査域を設定したチカツギノ沢 およびクオマナイ川では最上流の調査区間(Sta.9 および Sta.13)の上端はいずれも魚類の遡上が不 可能な治山堰堤直下であり,本流合流点からの距 離はそれぞれ,0.5 km および 3.8 km である.また 石の花川にも合流点の上流 1.5 km の地点に魚類の 遡上が不可能な堰堤が存在する.なお,庶路川で は現在さけ・ます類の捕獲事業は実施されていな いが,例年釧路川水系のふ化場由来のサケ 500 万 尾程度が庶路川の飼育施設(オニヨップ川と本流 の合流点,Sta.17 の近傍に存在)にて中間育成の 後に放流されている. 魚類の採集は 2007 年 8 月 4 日から 8 月 8 日にかけて電撃捕魚器( Smith-Root 社製 LR-20型) と目合い 5 mm のタモ網を用いて行った. 本流では, 30 分採集を行い, 魚種組成を把握し た.支流においてはそれぞれ約 60 m 長の調査区間 を設置して 2 回採捕の除去法による密度推定を 行った. 生息個体数の推定にはプログラム CAP-TURE (http://www.pwrc.usgs.gov) を用いた.電撃 捕魚器の使用モードは直流で行った.採集した魚 類は約 0.005% のエチレングリコールモノフェニル エーテル水溶液で麻酔し,尾叉長と体重を測定し たのちに蘇生を待って採捕区間内に放流した.ま た,採集期間を中心とした 6 月中旬から 10 月中旬 にかけて本流 2 カ所(Sta.5 の上流約 1.9 km および Sta.4の下流約 2.5 km の地点およびクオマナイ川の
Sta.13)に水温計測ロガー(Onset 社製 TBI32)を 設置して 1 時間間隔で水温データを収集した.ま た,2007 年 6 月から 2008 年 5 月の期間にスノーケ リング,投網,電撃捕魚器および釣りにより,補 足的に確認した魚類についても記録した.ウグイ 属についてはウグイ (Tribolodon hakonensis) とエゾ ウグイ (Tribolodon ezoe) の両種が出現する可能性 があるが,採集現場での小型個体の判別が困難で あったためまとめてウグイ属 Tribolodon sp (p). と して扱った.また,ヤツメウナギ科については補 足調査以外で採集された個体が全てアンモシーテ ス幼生で同定が困難であったため,科階級群にと どめた.なお,サケ科魚類のうち,Salvelinus leu-comaenisには 4 亜種を認める意見もあるが,遺伝 的には河川間変異が想定 4 亜種間の変異よりも大 きいことが明らかになってきた (Yamamoto et al., 2004).したがって本報告では 4 亜種を区別せずに まとめて扱った.またアメマスの河川残留型,陸 封型および降海前のパーを区別せずイワナと,サ クラマスの降海前のパー,陸封型および河川残留 型を区別せずヤマメと記述した.なお,両者とも 種階級の総称として扱う場合はサクラマス,アメ マスと記述した. 比較に用いた過去の魚類相についてのデータは 「 庶路川環境調査報告書」( 北海道水産資源技術 開発協会,1980)から 7 月中旬と 8 月下旬に実施
Fig. 1. Sampling locations in the Shoro River system. Circled numbers indicate each sampling sta-tion. Open arrows indicate locations of mainstream water temperature loggers.
された夏季の調査分の合計値を抽出した.なお, この調査の採集漁具は地引き網,投網,三角網, 釣り具など多岐にわたり,調査の主対象であるサ ケ科魚類を除くと採集個体数も概数として扱われ ている. 2007年夏季に庶路川本 支流に設定した調査区間で電撃捕魚器により採集 された魚類は,イワナ,サクラマス(ヤマメを含 む), ニジマスのサケ科魚類 3 種,フクドジョウ (Barbatula toni), ウグイ属 , ハナカジカ (Cottus
nozawae),イバラトミヨ (Pungitius pungitius) の計
7種と貧弱で,他には円口類であるヤツメウナギ科 のアンモシーテス幼生が出現した (Table 1).また, 補足調査では,カラフトマス (Oncorhynchus
gor-buscha), サ ケ (Oncorhynchus keta), カ ワ ヤ ツ メ
(Lethenteron japonicum),イトヨ (Gasterosteus
ac-uleatus),オショロコマも出現した.なお,出現し たオショロコマは残留卵を持った産卵後と推定さ れる降海型雌(5 歳魚,尾叉長 221 mm, Sta.13)の 1個体のみであった. さらに, Sta.10, Sta.13, Sta.15の上流側にある砂防堰堤の上流域では, Sta.13の上流に設置された堰堤(2001 年完成)の 上流で採集した老齢のイワナ 1 尾 (6 歳魚,尾叉 長 360 mm) を除きサケ科魚類は確認されなかっ た.これに対し,砂防堰堤のない Sta.17 の上流側 は地形図上の水線がなくなる付近までイワナとヤ マメの分布が確認された (Fig. 1). 本流の魚類相を調査区間別にみると,ダムの上 流である Sta.7 においてはニジマスとフクドジョウ の2 種のみが出現したのに対し,ダムよりやや下流 の Sta.6 ではイワナ,ヤマメ,ウグイ属の 3 種がこ の 2 種に,さらに下流の Sta.5 ではハナカジカがこ れに加わり,ダムの上下で魚類相に大きな差がみ られた.また,魚種別にみるとフクドジョウが本 流の全調査区間から,ヤマメとウグイ属がダム上 流を除く本流区間全点から出現し,イワナも Sta.2 を除くダム下流の調査区間から出現した.これに 対しニジマスはダム下流では最も上流の Sta.6 での み出現した.なお,ダム上流のニジマスは少なく とも Sta.7 より 15 km 上流のコイカタショロ川中流 や,8 km 上流の一次支流クチョロベツ川中流まで は連続的に出現することが補足調査で確認された. また,ハナカジカは Sta.5 より下流の各調査点で, ヤツメウナギ科幼生は下流の Sta.1,2 でのみ出現 した.サクラマスの成魚はダムより下流の本流域 Sta.2,Sta.3,Sta.5,およびコイトイ川の Sta.25 の 計 4 調査区間でそれぞれ 1 尾出現した. 支流では枯れ川となっていた Sta.16 以外のすべ ての川においてイワナが出現した.また,ハナカ ジカは中流域において合流する 4 本の支流で出現 しなかった.本流においてダムより下流域に広く 分布していたウグイ属は夏季の調査でほとんど出 現しなかった.一方,本流では出現しなかったイ バラトミヨが下流域で合流する 4 支流で少数(合 計 13 個体)出現したほか,本流では下流域で 2 個 体出現したのみであったヤツメウナギ科幼生が下 流域で合流する支流で多く出現した.また,魚類 以外ではあるが,最下流で合流する 2 支流ではウ チダザリガニ (Pacifastacus leniusculus) が多数出現 した.ルオンネナイ川 (Sta.14) では,合流点付近 の本流 (Sta.4) にヤマメが分布するにもかかわらず, 支流内ではヤマメが出現しなかった.支流におけ る分布密度は,イワナが 0.01–0.81/m2 ,ヤマメが 0–0.37/m2 であり,2 種の合計では 0.03–0.91/m2 で あった. サケ稚魚は夏季の電撃捕魚器を用いた採集では 出現しなかったが, 5–6 月の潜水目視によると, Sta.4付近を中心とする本流域や,支流のクオマナ イ川下流 (Sta.11),ルオンネナイ川 (Sta.14),オ ニョップ川 (Sta.17),チプタナイ川 (Sta.23) で多数 観察された.また,夏季の支流域における採集で はウグイ属がほとんど出現しなかったが,6 月の潜 水目視観察ではアカツキ川 (Sta.22),チプタナイ川 (Sta.23) など多くの支流で多数のウグイ属が観察さ れ,特にクオマナイ川下流 (Sta.11) やチカツギノ 沢合流点付近の本流では婚姻色を呈したウグイ成 熟魚が群をなしていた. ヤマメの尾叉長は, 本流域が 67–192 mm,支流が 48–157 mm の範囲で (Fig. 2),尾叉長の中央値は本流が支流より大き か っ た ( Mann-Whitney U 検 定 , U1793.5, P0.001).イワナの尾叉長についても,本流域が 70–228 mmの, 支流が 42–206 mm の範囲にあり (Fig. 3),本流のイワナ尾叉長の中央値が支流に比 べ て 大 き か っ た ( Mann-Whitney U 検 定 , U11430.0, P0.001).本流域におけるニジマス の尾 叉 長 は, ダム下 流 の冷 泉 橋 付 近 (Sta.6) で 44–238 mm,ダム湖流れ込みより上流の大曲橋付 近 (Sta.7) で 46–297 mm であった.支流域では合計 3個体しか採集されなかったため,本流 – 支流間の 尾叉長の差異の有無は不明である.採集されたヤ マメとイワナともに尾叉長組成には複数のモード
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List of fish and cra
yfish recorded from the Shoro Ri
v
er system in summer 2007
Species
Number of indi
viduals (estimated density/m
2) Sta.1 Sta.2 Sta.3 Sta.4 Sta.5 Sta.6 Sta.7 Sta.8 Sta.9 Sta.10 Sta.11 Sta.12 Sta.13 P etrom yzontidae Unidentified P etrom yzontidae* 1100000 0 0 0 0 0 0 Salmonidae Salvelinus leucomaenis 1092880 3 1 (0.31) 23 (0.17) 38 (0.17) 19 (0.11) 18 (0.13) 19 (0.10) Oncorh ync
hus masou masou
anadromous for m adult 0110100 0 0 0 0 0 0 O. masou masou others 1 0275220 1 3 (0.13) 10 (0.06) 14 (0.07) 36 (0.17) 14 (0.10) 3 (0.11) Oncorh ync hus m ykiss 00000 1 8 2 8 1 (0.01) 0 1 (<0.01) 1 (<0.01) 0 0 Cyprinidae T ribolodon sp (p).** 10 4 1 64370 0 0 0 0 0 0 Cobitidae Barbatula toni 91 02 75 10 5 2 0 5 (0.06) 3 (0.02) 10 (0.04) 14 (0.08) 0 2 (0.01) Gasterosteidae Pungitius pungitius 0000000 0 0 0 0 0 0 Cottidae Cottus nozaw ae *** 2111300 7 (0.07) 20 (0.14) 57 (0.14) 3 (0.02) 12 (0.07) 15 (0.07) Astacidae P acifastacus leniusculus 0000000 0 0 0 0 0 0
Ta b le 1 . (Continued) Species Number of indi
viduals (estimated density/m
2 ) Sta.14 Sta.15 Sta.16**** Sta.17 Sta.18 Sta.19 Sta.20 Sta.21 Sta.22 Sta.23 Sta.24 Sta.25 P etrom yzontidae Unidetified P etrom yzontidae* 0 0 0 0 0 5 (0.04) 2 (0.03) 32 (0.15) 16 (0.24) 107 (1.15) 11 (0.03) 3 (0.02) Salmonidae Salvelinus leucomaenis 17 (0.24) 95 (0.81) 0 30 (0.19) 46 (0.35) 80 (0.49) 8 (0.09) 3 (0.01) 11 (0.11) 11 (0.11) 0 2 (0.01) Oncorh ync
hus masou masou
anadromous for m adult 0 0 0 000000 0 0 1 (<0.01) O. masou masou others 0 12 (0.10) 0 50 (0.37) 13 (0.09) 51 (0.35) 9 (0.10) 7 (0.04) 8 (0.08) 9 (0.09) 8 (0.03) 51 (0.27) Oncorh ync hus m ykiss 00 0 000000 0 0 0 Cyprinidae Tr ibolodon sp (p).** 0 0 0 000000 0 0 1 (<0.01) Cobitidae Barbatula toni 0 11 (0.12) 0 1 11 (0.71) 28 (0.24) 17 (0.11) 55 (0.61) 11 (0.05) 14 (0.16) 21 (0.27) 7 (0.02) 6 (0.02) Gasterosteidae Pungitius pungitius 00 0 00001 (<0.01) 7 (0.09) 0 4 (0.01) 1 (<0.01) Cottidae Cottus nozaw ae *** 4(0.06) 0 0 0 0 2 (0.02) 0 8 (0.04) 4 (0.04) 14 (0.14) 1 (<0.01) 5 (0.03) Astacidae P acifastacus leniusuculus 00 0 000000 1 7 (0.18) 5 (0.02) 25 (0.12) *Ammocetes lar v
ae; **most specimens
T.
hakonensis
, but smaller specimens identification uncer
tain; ***ma
y included small number of
C. amb
lystomopsis
; **** w
ater
が存在する.いずれも最小のモードは 0 歳魚と考 えられるためヤマメは尾叉長 110 mm 未満,イワナ については尾叉長 100 mm 未満の個体は 0 歳魚と推 定される.そこで,0 歳魚だけで本支流間の尾叉 長組成を比較したところ,ヤマメ(Mann-Whitney U検定,U 2952.5,P0.003),イワナ(Mann-Whitney U検定,U4072.5,P0.001)ともに本 流に生息する個体が大きい傾向にあった. また,0 歳魚の尾叉長を支流の定点間で比較し たところ,ヤマメでは平均尾叉長が70.9 mm–105.5 mmで,イワナは 61.9–82.0 mm で支流間にばらつ きみられ,どちらの種とも尾叉長に有意差が認め られた(ヤマメ: Kruskal-Wallis 検定,H69.45, P0 . 0 0 1 ; イ ワ ナ : K r u s k a l - Wa l l i s 検 定 , H153.35,P0.001).各支流調査点におけるヤ マメとイワナの合計の分布密度とそれぞれの 0 歳 魚の平均尾叉長はどちらの種でも負の相関があり (Fig. 4),高密度分布域では 0 歳魚が小型である傾 向を示した. 本調査で確認されたサクラマス成魚は 4 個体で, 尾叉長はそれぞれ,472 mm (Sta.2), 462 mm (Sta.3) と 462 mm (Sta.5) で ほ ぼ 同 様 の 大 き さ で あ り (Sta.25 では測定前に 1 個体が逃亡),2 次性徴から 判断していずれも雄であった. 夏季の庶路 川 3 地点における水温は, 7 月中旬より上昇傾向 が強まり 8 月 15 日に最高水温を記録し,その後緩 やかに下降した (Fig. 5).また,3 地点の大まかな 傾向は良く一致していたが,支流のクオマナイ川 で最も水温が低く,本流下流で最も水温が高かっ
Fig. 2. Fork length distribution in masu salmon (On-corhynchus masou masou) collected in the Shoro River system. A, main stream. B, tributaries. Data for anadromous adults not included.
Fig. 3. Fork length distribution in white-spotted
charr (Salvelinus leucomaenis) collected in the Shoro River system. A, main stream. B, tributaries.
Fig. 4. Relationships between total estimated densi-ties and mean fork length of 0 age class of two salmonid juveniles (masu salmon and white-spotted charr) these two species at each tributary sampling sta-tion. Solid circles: masu salmon, open circles: white-spotted charr.
た.水温計測開始時の 6 月 16 日にはクオマナイ川 の 一 日 の 水 温 は 1 2 . 2 – 1 3 . 6 ° C , 本 流 上 流 が 12.3–13.7°C,本流下流が 12.9–14.8°C で,各地点 とも日較差は 2°C 未満であったが,最高水温を記 録した 8 月 15 日にはクオマナイ川が 16.7–19.4°C, 本流上流が 18.7–25.4°C,本流下流が 19.3–28.5°C と本流での日較差が大きくなっていた.また,最 高水温を記録した翌日の 16 日の水温はそれぞれク オマナイ川が 15.8–17.8°C,本流上流 18.0–19.3°C, 本流下流が 17.0–20.0°C と前日に比べてかなり低 く,高水温期では日間の差も大きかった. 1979年に実施された魚 類調査( 北海道水産資源技術開発協会, 1980) と比較すると,当時全く出現しなかったニジマス が本流のダム上流域とダム下流での最上流区間に 多く出現したのが大きな特徴である (Tables 1, 2). 一方,1979 年に下流域 (Sta.1) で採集されたヌマガ レイ Platichthys stellatus は 2007 年には採集されず, 1979年に下流で合流する支流 (Sta.18, 22) で出現 していたイトヨは,2007 年の補足調査では確認さ れたものの夏季の分布調査では採集されなかった. ダム上流域はダム建設以前にも滝の存在のために サケ科魚類が分布せず,1979 年の調査ではフクド ジョウとハナカジカの2 種が分布する水域であった が,2007 年調査ではニジマスとフクドジョウが多 く出現したもののハナカジカは採集されなかった. また,過去に採集個体数が明記されているサケ科 魚類だけで組成を比較すると,1979 年に大滝下流 の本流域でヤマメ 94%,イワナ 6% であった組成 が,2007 年にはヤマメおよびイワナがともに38%, ニジマスが 24% と組成が大きく変化していた (Fig. 6).一方,支流域では 1979 年にヤマメ 57%,イワ ナ 43% であった組成は 2007 年にヤマメが 40.4%, イワナが 59.2%,ニジマスが 0.4% となっており, ごく少数のニジマスが出現したものの組成には大 きな変化が見られなかった. また,1979 年の Sta.1 から Sta.5 にかけての本流 域ではウグイ属が多数(概数で 100 個体以上)出 現し,比率でもヤマメ,イワナやフクドジョウを 大きく上回っていたが,2007 年の採集個体数は最 大で1 地点 16 個体 (Sta.3) で,全体としての比率で もフクドジョウよりも低かった. 支流での出現状況を個別にみると,1979 年には チブタナイ川 (Sta.23),アカツキ川 (Sta.22),トマ リベツ川 (Sta.21),オレウケナイ川 (Sta.20),エザ キ川 (Sta.19) 等,下流域で本流に流れ込む支流で はサケ科魚類が採集されていなかったが,2007 年 にはこれら全ての支流でヤマメとイワナが出現し た.一方,ルオンネナイ川 (Sta.14) では 1979 年に ヤマメ・イワナともに出現していたが,2007 年に はヤマメが出現しなかった.
Fig. 5. Time series data (from 16 June 2007 to 30 Sep. 2007) for water temperatures at the three lo-cations in the Shoro River system. Kuomanai River: data from WT logger set at Sta. 13. Main upper reach: data from WT logger set 1.9 km upstream of Sta.5. Main lower reach: data from WT logger set 2.5 km downstream of Sta.4. See Fig. 1 for WT logger locations.
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List of fish and cra
yfish recorded from the Shoro Ri
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er system in summer 1979. Data modified from Hokkiado suisan-sigen gijutsu ka
ihatsu k y oukai (1980) Species Number of indi viduals Sta.1 Sta.2 Sta.3 Sta.4 Sta.5 Sta.6 Sta.7* Sta.8 Sta.9 Sta.10 Sta.11 Sta.12 Sta.13 P etrom yzontidae Lethenter on r eissneri 10 00 00 00 No data No data 0 No data No data Salmonidae Salvelinus leucomaenis 00 00 04 01 No data No data 2 No data No data Oncorh ync
hus masou masou
anadromous for m adult 0 0 0 0 0 0 0 0 No data No data 0 No data No data O. masou masou others 1 0 0 1 15 75 0 2 No data No data 6 No data No data Cyprinidae T ribolodon sp (p). 100 100 100 100 100 46 0 0 No data No data 6 No data No data Cobitidae Barbatula toni 00 14 01 21 10 No data No data 5 No data No data Gasterosteidae Gaster osteus aculeatus 00 00 00 00 No data No data 0 No data No data Pungitius sp (p). 0 0 0 0 0 0 0 0 No data No data 0 No data No data Cottidae Cottus nozaw ae 15 3 0 4 5 1 1 5 No data No data 3 No data No data Pleuronectidae Platic htys stellatus 20 00 00 00 No data No data 0 No data No data
Ta b le 2 . (Continued) Species Number of indi viduals Sta.14 Sta.15 Sta.16** Sta.17 Sta.18 Sta.19 Sta.20 Sta.21 Sta.22 Sta.23 Sta.24 Sta.25 P etrom yzontidae Lethenter on r eissneri 00 01 0 000 00 0 No data Salmonidae Salvelinus leucomaenis 71 01 0 000 00 0 No data Oncorh ync
hus masou masou
anadromous for m adult 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 No data O. masou masou others 5 1 0 1 5 0 0 0 0 0 0 No data Cyprinidae T ribolodon sp (p). 0 5 0 0 0 0 0 0 5 0 5 0 No data Cobitidae Barbatula toni 00 01 01 202 00 2 No data Gasterosteidae Gaster osteus aculeatus 00 00 4 000 50 0 No data Pungitius sp (p). 0 0 0 0 6 0 0 0 5 0 0 No data Cottidae Cottus nozaw ae 00 00 0 010 00 5 No data Pleuronectidae Platic htys stellatus 00 00 0 000 00 0 No data *About 2.3 km do
wnstream of Sta. 7 (2007). As a result of dam constr
uction, this station w
as included at the head of the ensuing
lak
e; **w
日本列島に分布する淡 水魚はおよそ 200 種であり,そのうち,北海道に は約 70 種が分布すると考えられている(後藤・中 野,1993).夏季の庶路川で採集されたのはこの うち8 種(ヤツメウナギ科アンモシーテス幼生およ びウグイ属をそれぞれ 1 種として計数)であるが, これに補足調査で確認したカワヤツメ,サケ,カ ラフトマス,イトヨ,オショロコマの 5 種,秋季 – 冬季に遡上してくるシシャモと春季に遡上する キュウリウオ (Osmerus mordax) の 2 種を加えても 15種に過ぎず,計上された魚類相は貧弱である. しかし,本調査範囲内にはトミヨ属魚類やヤチウ グイ (Phoxinus percnurus) が多く生息する止水的環 境の水域が含まれなかったことを考慮すると,庶 路川水系に出現する魚類種数はもう少し増える可 能性がある.庶路川の魚類相が貧弱である要因と しては,純淡水魚が極めて少ないこと,ハゼ科要 素が欠落していることがあげられる.前者は北海 道の各地方の河川共通に見られる特徴であり,ハ ゼ科魚類がみられない傾向は庶路川水系に隣接す いる.一方,より東側の釧路川水系の釧路湿原域 では,ウキゴリ (Gymnogobius urotaenia),ヌマチ チ ブ (Tridentiger brevispinis), ジ ュ ズ カ ケ ハ ゼ (Gymnogobius castaneus) お よ び ア シ シ ロ ハ ゼ (Acanthogobius lactipes) 等のハゼ科魚類の分布が記 録されおり(針生,1989,1997),ハゼ科要素の 欠落は北海道東部の限られた水系にみられる特徴 であると考えられる.しかし,釧路湿原域におい ても,ハゼ科魚類の分布は湿原東部域や湖沼に偏 在し,ヤマメやフクドジョウが優占する水域では 少ないことが報告されている(針生,1989,1997). アシシロハゼは汽水域を,ジュズカケハゼやヌマ チチブは砂泥底の湖沼や,河川でもBc 型の流域に 多いと考えられる(針生,1997)が,庶路川は本 流においても多くがBb 型あるいはAa–Bb 移行型の 河川形態を示し,Bc 型の流域や汽水域はほぼ存在 しない.したがって,庶路川におけるこれらハゼ 科魚類 3 種の欠落は,生息好適水域が極めて少な いことが要因と考えられる.一方,ハゼ科でもシ マウキゴリ (Gymnogobius opperiens) はBb 型の水域 に多く分布するが,庶路川ではBb 型の水域が多い にもかかわらず本種が出現採集されていない.北 海道東部でシマウキゴリの分布が確認されている のは夏期に宗谷暖流水が到達するオホーツク沿岸 – 知床半島周辺までである( 中西, 1978 ;石野ほ か,1983).庶路川河口を含む根室半島納沙布岬 – 十勝にかけての沿岸は,親潮が岸近くを流れるた め,宗谷暖流の影響を受ける紋別等のオホーツク 海の沿岸に比較して夏期の平均水温が低い(小笠 原,1990).したがって,両側回遊魚であるシマウ キゴリの降海仔稚魚が成育するには沿岸水域が低 温であることが,この種の分布を制限しているも のと考えられる.つまり,庶路川におけるハゼ科 要素の欠落は,河川の環境特性と沿岸の海洋環境 特性の両方に起因すると考えられる. これまで述べたように,庶路川本支流において 優占していた魚種は,ヤマメ,イワナおよびフク ドジョウで,本流に限るとこれにウグイ属が加わ る.この 4 種の中でもフクドジョウは本支流を通 じて最も高頻度に採集され,ダム上流にも分布す ることから庶路川を代表する優占種である. 庶路川 本支流における優占種はフクドジョウ,ウグイ属 (本流のみ)を除くとサケ科魚類である.夏季の本 流域において採集されたたサケ科魚類はサクラマ ス(ヤマメが主体),イワナおよびニジマスの 3 種
Fig. 6. Species composition of salmonids recorded
from the mainstream and tributaries of the Shoro River system in summer of 2007 and 1979. 1979 data from Hokkaido suisan-shigen gijutsu kaihatsu kyoukai (1980). Data from reaches above the Shoro dam are excluded.
であるが,このうちヤマメおよびイワナが魚の遡 上を完全に阻害する庶路ダムより下流の調査点で 広く採集されたのに対し,ニジマスはダム下流の 最上流部とダム湖よりも上流側の調査点でのみ採 集され, 前 2 種とは異なった分布様式を示した. また,ヤマメとイワナがほとんどの支流で数多く 出現したのに対し,ニジマスは上流の2 支流で計 3 個体が採集されたにすぎない.本州では,ヤマメ とイワナの流程分布様式は一般に下流からヤマメ の単独分布域,混生域,イワナの単独分布域が流 程にそって存在する(今西,1951 ;可児,1952 ; 丹羽,1954).また,北海道内でも天塩川水系名 寄川など多くの河川では,ヤマメとイワナが本州 と同様に単独分布域を持つ流程分布様式を示す (阿部ほか,1977).一方,庶路川の調査区間では ダム上流以外の本流区間 (Sta.1–Sta.6) はほぼ全域 が混成域であり,支流でもルオンネナイ川(Sta.14, イワナのみ出現),コイトイ川下流(Sta.24,ヤマ メのみ出現)の 2 箇所を除く全ての調査区間が混 成域であった.ヤマメとイワナの分布域がどのよ うに決定されるかについては,いわゆる「すみわ け」現象の記載を含め多様な解釈がなされてきて おり,河川形態の変化(イワナは Aa 型で優占)・ 小滝等の存在(上流部でイワナが優占)・夏季の 最高水温(15°C 前後を境として低水温域でイワナ が優占)等で両者の量的な置き換わりがおこるこ とが記載されてきた(今西,1951 ;可児,1952 ; 丹羽,1954).庶路川本流域でイワナがヤマメよ り多い水域は Sta.5, 6 の 2 区間と考えられるが, 河川型はこれらの区間でも Aa–Bb 移行型であり, 下流側との差や小滝の存在は認められない.また, Sta.5のやや上流で記録した水温データは25°C を超 えており,本州域における 2 種間の優占度に関与 すると考えられてきた水温よりも高く,本州河川 の典型的な分布様式とは異なっている.北海道東 部地方においてはサクラマスに加えアメマスも雌 は全て降海型の生活史を示し,河川残留型の雌は ほとんど出現しないと考えられる(大野,1933;石 城,1984).したがって,ヤマメ,イワナともに全 てが降海型の雌産卵に由来する.降海型アメマス は大型の個体で 2000 粒以上と孕卵数も多く (Grit-senko, 2002),降海型アメマスの遡上河川には多量 の仔魚が供給されることになる.したがって,雌 が全て降海型という特徴が本州河川や他地方の道 内河川と分布様式が異なることに関連している可 能性がある.さらに,庶路川においては調査した ほぼ全ての支流にヤマメおよびイワナが分布して おり,下流部で合流する川幅 2 m 程の小支流であ るアカツキ川 (Sta.22),チブタナイ川 (Sta.23) も両 種幼魚の生息場所としての役割を果たしている. さらに, 中 流 で合 流 する石 の花 川 (Sta.15), オ ニョップ川 (Sta.17), タンネナイ川 (Sta.18),エザ キ川 (Sta.19) の各支流ではヤマメまたはイワナの 推定分布密度が 0.3/m2 , 両種の合計では 0.44– 0.91/m2 であった.この値は北海道内の保護水面で ある厚田川でのヤマメ 0 歳魚の平均密度約 0.2/m2 (春日井ほか,2008)よりも大きな値であり,庶路 川支流域はヤマメやイワナの生息場所として重要 と考えられる.庶路川水系の中・下流域で合流す る支流は,遊漁者が極めて希であることが高い分 布密度に関連している可能性がある.庶路川にお いて本流域のヤマメは支流のヤマメより大きい傾 向があったが,同様の結果は尻別川水系の支流目 名川(真山,1992),サハリン南部のリュータガ川 での 9 月の調査等においても知られており(Grit-senko, 2002),夏から初秋に大型のヤマメがより規 模の大きい水域に分布することは普遍的な現象で あると思われる.ヤマメの成長量は北海道の尻別 川水系においてもサハリンにおいても6–7 月が最大 で,8 月には成長が鈍化すると考えられている(真 山,1992; Takami et al., 1998; Gritsenko, 2002).庶 路川においても同様の傾向を示すものと考えられ るため,本調査で得られた本・支流間で見られた 尾叉長組成の差異は秋以降も変化しないものと考 えられる.本流のヤマメが支流よりも大きい要因 としては,スモルト候補魚が支流から本流域に移 動したことや(真山,1992),本流では分布密度 が低いために成長が良好であったこと (Nagata, 2002) などが考えられる.庶路川本流におけるヤマ メおよびイワナの分布密度推定は行っていないが, サケ科魚類の本流の分布密度は支流よりも低いと 考えられており( 中村・丸山, 1988 ;北野・中 野,1991),いずれの可能性も有力である.また, 庶路川ではイワナ 0 歳魚の尾叉長についても本流 が支流よりも大きかったが,北海道のイワナは 1 歳の春にはスモルト化しないため (Yamamoto and Morita, 2002),この違いは支流と本流の成長の差 異と考えられる.また,密度推定を行った支流域 ではヤマメ,イワナとも,両種の合計密度が高い 水域で 0 歳魚が小型となる傾向があり,高い分布 密度が資源を巡る競合を通じて成長を阻害してい る可能性が考えられる.本調査で設定した支流の 調査区間の多くは,本流との合流点近傍にあるた め,本支流間の移動はきわめて容易である.しか
夏期には強い日射の影響を受けて日中の水温が 25°Cを超える場合もあるため, 両種の 0 歳魚に とって必ずしも好適ではないと考えられる. 庶路川に現在生息するニジマスは 1979 年には分 布が確認されておらず,近年になって人為的に移 植されたものと推定される.聞き取りによると, 釣りの愛好者グループが 1990 年ころに稚魚放流を 行ったとのことである.1990 年代中頃までに北海 道内においてニジマスの分布が確認されていたの は,72 水系であった(鷹見・青山,1999)が,そ の後も分布が確認された河川は増加し,近年のア ンケート調査では庶路川にも分布することが報告 されている(斉藤・鈴木,2006).庶路川本支流 域で採集されたニジマスには尾叉長 30–70 mm の小 型個体が含まれており,この水域で再生産が行わ れている可能性はきわめて高い.北海道内におい ても南西部の良留石川では滝上に存在した陸封ヤ マメの個体群(佐野,1968)がニジマスに置き換 わった例(遠藤,2007)や,ニジマスの増加が在 来サケ科魚類の生息密度を減少させたと考えられ る例が報告されている (Morita et al., 2004; Baxter et al., 2007).庶路川支流域においてはサケ科魚類に 占めるニジマスの割合は微小であり,ダム下の流 域における分布は現在のところ本流を含めても上 流側に限定されている.したがって,現在の庶路 川のサケ科魚類の流程分布はヤマメとイワナの広 い混生域の上流側にニジマスの優占する 3 種混生 域が存在する様式となっている.ヤマメの主分布 域より上流側にニジマスが分布する様式は阿寒川 水系でも報告されており(針生,1993),両種が ともに生息し,かつニジマスの再生産が行われて いる水域では一般に見られる傾向かもしれない. 2007年の電撃捕 魚器を使用した採集結果と1979 年に行われた多様 な漁獲方法による採集結果を比較するには限界が あるが,この間に認められる最も大きな変化は上 流側におけるニジマスの出現と下流域支流におけ るウチダザリガニの出現である.前述のようにダ ム下の支流におけるニジマスの分布は限定的であ るが,ダム上流域においてはフクドジョウよりも 多く採集され優占種となっていた.現在ではダム 上流となっている水域においては 1979 年の調査で ハナカジカがフクドジョウとともに採集されていた が,2007 年の調査でハナカジカは採集されなかっ た.2007 年のダム上流の調査水域は湛水部より上 流側に位置し,1979 年の調査点と同様に Bb 型の ある.したがって,ハナカジカはニジマス導入の 影響を受けて個体数が減少した可能性がある.ま たダム下流においても,過去に本流上部でヤマメ の比率が高かった冷泉橋付近 (Sta.6) においてニジ マスが最優占種となり,サケ科魚類中におけるヤ マメの割合が顕著に低下していた.ここで採集さ れたニジマスは尾叉長 150 mm 以上の個体が多く含 まれているため,これらの大型個体はヤマメと資 源をめぐって優位な立場にある (Taniguchi et al., 2002) と考えられる.したがって,1 歳以上のニジ マスが多く分布する Sta.6 周辺では特にヤマメの 0 歳魚がニジマスの圧迫を受けている可能性が高い. 一方,ニジマス 0 歳魚に対してはサイズの大きい ヤマメ(0 歳および1 歳魚以上)がより良好な資源 を利用できると考えられるため,ヤマメの多い水 域においてはニジマスの分布拡大に対する抑止力 が働く可能性がある(川那部,1980).庶路川は 以前より魚の遡上が不可能であった滝が存在した ため,滝より上流に建設されたダムがサケ科魚類 に与えた影響は他の水系に比較して小さいと考え られ,サクラマスやアメマスのように河川生活期 の長い在来サケ科魚類も多く分布し,本調査にお いてもサクラマス成魚の遡上が確認された.しか し,本流上部におけるニジマス,下流部湿原域周 辺におけるウチダザリガニのように外来種の進出 が進んでいることには注意を払う必要がある.特 にニジマスとヤマメは強い競合関係にあると考え られるため,将来的にサクラマスの再生産が悪化 した場合には,ニジマス優占分布域の拡大とサク ラマスの減少,ニジマス優占域のさらなる拡大と いうサクラマスにとっての負の連鎖が生じる可能 性がある.また,支流の多くにはヤマメ,イワナ 等が高い密度で分布しており,これらの支流は産 卵場や幼稚魚の生育場として重要と考えられるが, ダム下流に存在する一次支流でもチカツギノ沢, クオマナイ川,石の花川,オレウケナイ沢等にお いて本来の遡上限界よりも下流に魚類の移動を完 全に妨げる堰堤が設置されており,クオマナイ川 の 1 例(6 歳魚のイワナ 1 個体)を除いて堰堤より 上流ではサケ科魚類の分布が確認されていない. また,この個体も老齢と推定されたことから堰堤 建設以前より分布していた個体群の生き残りであ り,堰堤より上流の個体群はほぼ消滅した可能性 がある.このように,庶路川水系における在来サ ケ科魚類の生息可能域は確実に減少している.さ らに現在庶路川流域においては高速道路の建設等
の大規模な土木工事が行われており,本流 – 支流 間の魚類の往来を阻むような河川の構造物が今後 も増加する可能性がある.本調査でも小規模な支 流がヤマメやイワナの生息場として重要であるこ とが示されたが,これらの目立たない支流は釣り 人の圧力も低い反面,生息場所としての重要性も 無視した土木工事の対象となりがちである.道東 地方においては,サクラマス,アメマスともに雌 親魚は降海型に依存するため,これら魚類の往来 を妨げる構造物が増加した場合の影響が憂慮され る. また,下流域の支流で分布が確認されたウチダ ザリガニは,雑食性の甲殻類で環境省により特定 外来生物に指定されている.今後,庶路川水系で も同所的に分布する他生物への影響も懸念される. 本研究を進めるにあたり,多くの便宜を計って いただいた,山梨県水産技術センター桐生 透氏, 北海道区水産研究所森田晶子博士に厚くお礼申し 上げる.また,採捕許可申請にご協力いただいた 「さけますセンター」大熊一正氏,岡本康孝氏お よび同センター帯広事業所のみなさんにお礼申し 上げる.本研究は(独)水産総合研究センター交 付金プロジェクト研究「河川の適正利用による本 州日本海域サクラマス資源管理技術の開発」の一 環として実施した. 阿部 永・前川光司・後藤 晃.1977.下川町の動物. 44 pp, 下川町.
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