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電子対の量子絡み合いを操る最新理論を確立

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Academic year: 2021

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平成23年1月19日 独立行政法人 物質・材料研究機構

独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田 資勝)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(拠点長: 青野 正和)の王 志リサーチアソシエートと古月 暁主任研究者らのグループは、電子対の非局所的量子絡 み合い 1) 状態(図1)に関する最新の理論を確立した。本研究成果は米国物理学会の論文誌 Physical Review Letters(オンライン版)で近日、公開される。 量子絡み合い状態にある電子対の片方を測定すれば、離れた場所にあるもう一つの電子の量子状態が瞬時 に分かり、また、相互制御も可能になる。今までに、光の非局所的量子絡み合いの検証が報告されているが、 電子を用いた実験はまだ成功していない。今回発表した理論では、最先端のナノテクノロジーを駆使して、 電子対に対し定量的な測定ができるようになる。光と比べて電子の反応時間が短いため、高速な量子計算2) や量子テレポーテーション手法3)の確立に繋がる研究成果である。 二つの量子状態の重ね合わせでできた状態は量子絡み 合い状態と呼ばれ、量子力学の根幹に係る特異な現象であ る。シュレーディンガーの猫4)や量子力学誕生期のアイン シュタインとボアの論争等があまりにも有名である。今ま でに、異なる偏光を持つ2束の光の非局所的量子絡み合い の検証は成功している。将来のデバイスを考えれば、コン パクトで且つ反応時間が短い電子系での非局所的量子絡 み合いの実現と制御が望まれる。 研究グループが注目したのは、電子対の集合体になって いる超伝導状態である。超伝導体から電子対を取り出して 二つの電子を別々の場所に運ぶため、二つの超伝導体の先 端に量子ドットという閾を設けてある2本のナノワイヤで 繋げ(図2)、電子間のクーロン斥力を利用して電子対が同 じ経路を辿るのを妨げる。二つの電子が相手との量子絡み 合い状態を保持しながら、異なる経路を通って終点の超伝 導体で再結合すれば、電気抵抗は生じないが、途中で量子 絡み合いが壊れていれば、有限な電気抵抗が生じる。 異なる経路に分かれて終点で再結合する超伝導電子対の 数と同じ経路を辿る超伝導電子対の数との比率は、2本の ナノワイヤが囲む区域に通る磁束の変化に伴う最大超伝導 電流の振動を調べれば分かることを研究グループが解明し た。比率が 1:1 の場合の振動周期は、0:1 の場合の振動周期 の2倍になる。 今までの研究では、電気抵抗の測定から上記比率を推測していたため、別れた二つの電子が本当に量子絡 み合い状態を保っているかどうかの判断は難しかった。しかし、今回の方法は量子状態と直結する超伝導電 流を測定するので、曖昧さが残らない。 図1:電子対量子絡み合い状態の模式図 図2:2 つの超伝導体と量子ドットを含む 2 本のナノワイヤからなるデバイスの模式図

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研究グループはさらに二つの量子ドットにそれぞれ1個の電子をトラップさせた場合についても調べた。 量子ドットに局在する電子対がスピン逆向きになっている一重項状態(図 1)を取れば、超伝導電子対の二 つの電子は異なる経路を辿った後に再結合して超伝導電流に寄与できるが、そうでなければこの寄与がなく なる。二つのケースでの超伝導電流の違いを利用すれば、それぞれの量子ドットにトラップされ、離れ離れ になっている二つの電子の量子絡み合い状態を制御できる。これは量子計算の基本になる量子ビットの新し い操作原理を与える。 猫の生きている状態と死んでいる状態の重ね合わせはまだできないが、離れ離れになっている電子対の量 子絡み合い状態の生成と制御が手の届くところに来ている。 <参考図> 量子絡み合い状態を保持したまま異なる経路に分かれて終 点で再結合する超伝導電子対の数と同じ経路を辿る超伝導電 子対の数との比率(青は 0:1、赤は 1:1)によって、閉じた経路 を通る磁束に伴う最大超伝導電流の振動周期が変化する様子。 <脚注> 注1 量子絡み合い:二つの部分系からなる複合系が、それぞれの部分系の純粋な量子波動関数の直積で表わ せない場合のことを量子絡み合い状態という。二つの部分系が空間的に離れて直接的な相互作用がなくて も、一つの部分系の測定結果が分かれば、もう一つの部分系の波動関数が瞬時に収縮する。この非局所的 な相関が量子絡み合いの本質である。 注2 量子計算:従来の計算機は 1 ビットにつき、0 か 1 の何れかの値しか持ち得ないのに対して、量子計算 では、1 ビットにつき 0 と 1 の値を任意の割合で重ね合わせて保持することが可能である(量子ビットとい う)。このため、量子計算は古典計算機では実現し得ない超並列処理が実現する。 注3 量子テレポーテーション:量子絡み合いとごく簡単な古典情報の通信を用いて離れた場所に古典情報と 比べて膨大な情報を持つ量子状態を転送すること。 注4 シュレーディンガーの猫: 物理学者のエルヴィン・シュレーディンガーが猫の生きている状態と死ん でい でいる状態の重なりあった状態を用いて、量子力学の不完全さを批判した思考実験のこと。現在では、巨 は、 視的に量子力学の効果が現れる実験系が知られており、「シュレーディンガーの猫」は量子力学が引き起 こす こす奇妙な現象を説明する際の例示に用いられる。 <謝辞> 本研究成果は、文部科学省・世界トップレベル研究拠点形成(WPI)プログラムの助成を受けて達成された ものである。 <本件に関するお問い合わせ先> 独立行政法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 古月 暁 (ふるつき ぎょう) E-mail: [email protected] TEL: 029-860-4897

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