<論説>ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法--損害防止費用不担保約款の有効性をめぐって
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(2) 第一章. はじめにーーードイツ保険契約法成立過程にみる強行規定の位置づけーーー. ドイツでは、保険に関して、保険契約法および保険監督法を中心に、商法、民法等によって規整している。なかで. も、ドイツにおける現行保険契約法は、 E U市場統合による保険市場自由化の流れのなかで、 その制定からそろそろ. 一七九四年に施行されたプロイセン普通法(﹀口問。52口 。 ∞. 一九O八年五月七日、帝国議会本会議においてすべての草案について一括承認され、同月三. 一 O O年を迎えようとしている。 ドイツ保険契約法は、. )HeO 戸田. US829mES) をもって開始し、保険契約法の成立した一九O八年にようやく終わりを. O 日付で成立した。その立法作業は、同国において、 ﹁自己円。の}忌同位片品目。同 告げる。. この制定までに一世紀を要したドイツ保険契約法は、同国における最初の特別法であるだけでなく、右法が、 その. 制定にあたって基礎とし、同じく一九O八年に成立したスイス保険契約法とならんで、保険契約法の先駆として、諸 外国立法の模範となっている。. 総則および付則を含め、計八章一九四条から構成されているドイツ保険契約法は、わが国現行商法第三編﹁商行為﹂. 第一 O章﹁保険﹂が総則部分を設けず、損害保険に関する規定からはじまっているのに対して、第一章に総則として. ﹁各種の保険に適用される規定﹂が設けられている。総則部分にあたる同章は、第一節﹁総則﹂、第二節﹁告知義務お. よび危険の増加﹂、第三節﹁保険料﹂ならびに第四節﹁保険代理商﹂と四節に細分化された合計四八条の規定により. - 48-. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.
(3) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. 成り立つ。. 続く第二章﹁損害保険﹂に関する規定でも、まず、第一節において、すべての損害保険に適用される規定を定めた. うえで、第二節﹁火災保険﹂にはじまり、以降第三節﹁電害保険﹂、第四節﹁家畜保険﹂、第五節﹁運送保険﹂、第六. 節﹁責任保険﹂にいたるまで、各種保険に関する規定を設けている。損害保険における各種保険については、﹁火災 保険﹂と﹁運送保険﹂のみ定めるわが国商法とは、大きく異なる。. ω. また、﹁生命保険﹂について規定した第三章に加え、﹁傷害保険﹂と題された第四章では、わが国ではいまだその規 定のない傷害保険契約に関する規定が、制定時からすでに設けられている。. このように、 その構成や規定内容から、 いまなお評価の高いドイツ保険契約法ではあるが、同法が成立する一九O. 八年以前のドイツには、プロイセン普通法に設けられた保険法規定を除いて、陸上保険に関する法律は存在していな. い。当時、保険契約に関しては学者の著作、判例および普通保険約款を基礎として形成された慣習法によって規整さ れていた。. さらに、 一八五三年にすでに制定されていた普通ドイツ商法典(﹀口問。白色ロ⑦ ω口。三∞各g 出 F ) m g念日 ω向。∞丘与5. ω. に規定が存在する海上保険を除いて、同圏内の多数の邦において、保険者は保険監督法による制限を受けることもな. 向 山 戸. く、全く意のままに保険約款を作成することができた。保険者が契約自由の原則を余すところなく利用しつくすとい う情況が、しばしば表出している。. 保険契約者や被保険者にとって過酷と思われる保険約款の規定に対して、制限を加え、保険契約者や被保険者の地. 位を有利にするための努力は、 とくに判例のなかに見受けられる。判例は当時から、信義則を用いて、保険契約者や. 4 9.
(4) 被保険者の不利益において変更することができない法原則が存在することをすでに確認していた。とはいえやはり、. 契約自由の原則に支えられている保険契約において、契約当事者により約定された保険約款の規定内容を、それと異. なる意味に解釈することにも限界がある。そこで、保険契約において保険契約者および被保険者を保護するために、. 一八七0年代に展開された保険取引の大量化にともない、普通保険約款が急速に発展してい. 保険約款によっても排除または制限することのできない絶対的な法規 S Zo-E。同2宮g 詳 N己 の 必 要 性 が 主 張 さ れ るようになった。 こうした背景に加え、. くなかで、満を持して制定されたのが、ドイツ保険契約法だったのである。同法は、その制定にあたって、最大の目. 標であった保険契約者および被保険者保護を達成すべく、契約の自由を制限し、 その基礎を強行規定におく特別法と なっている。. 保険契約を規整する目的をもってかかる法が制定されたとしても、右法が任意法であるかぎりは、保険者に対して、. 保険契約者および被保険者を保護するという法政策的配慮は存在し得ない。保険約款その他によって、保険契約者お. よび被保険者の利益が侵害されることがないようにするために、最小限度まもるべき保険契約者および被保険者の利. 益を確保するために、強行規定を制定することが必要である。強行規定を設けることこそが、保険契約における保険. 契約者および被保険者を保護し、契約当事者間の適切な利害調整という目的を達成するための法技術である。事実、. A山可. ドイツ保険契約法の成立によってもた胃りされた最大の進歩は、契約の自由に対して、制限を加えることによって、保. 険約款にしばしば表出していた深刻な弊害(∞各委号28冨5忌ロ品。)が除去されることになった点にあるといわれる。. そして、保険契約者および被保険者保護という観点から起草され、制定されたこのドイツ保険契約法にもまた、わ. 5 0-. 一. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.
(5) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. 一項、﹁保険契約者は保険. が国商法六六O条をはじめ、 イタリア、中国などと同じく、損害防止義務および損害防止費用負担義務に関する規定. (HWZEロ同名ESけ)に関して、. が設けられている。両義務は、同法六二条および六三条に、 それぞれ規定されている。 ドイツ保険契約法六二条は、保険契約者の損害防止義務. 事故発生に際しできる限り損害の防止および軽減に努め、かっその際保険者の指示に従わなければならない。保険契. 約者は、事情が許せば、 その指図を求めなければならない。数人の保険者が関与し、かっ、これらの保険者から相反. 保険契約者がこの義務に違反したときは、保険者はその給付義務から免れる。但し違反が故意または重大な. する指図があったときは、保険契約者は自己の誠実な判断にしたがって行動しなければならない。 二項. 過失にもとづかないときはこの限りでない。重大な過失にもとづく違反の場合において、保険者は、義務の適当な履. 保険契約者が六二条にしたがって支出した. 行がなかったとしても損害の範囲は少なくならなかったであろうときは、 その限りにおいて給付義務から免れない﹂。 損害防止費用(出EEロ mmwggロ)については、続く六三条に、﹁一項. 費用は、保険契約者がその事情において支出を必要としたものである限り、 その効果がなかったときにおいても、保. 険者の負担とする。保険者は、 その指図にしたがって支出された費用は、 それと他の填補額との合計額が保険金額を. 超えるときにおいても、これを填補する。保険者は費用として必要な金額を保険契約者の請求があれば前払いしなけ. 一部保険においては、費用は五六条、五七条に定める割合でのみ填補される﹂。. ればならない。 二項. ω. 二O世紀における各国制定法は、保険契約者および被保険者を保護するために、多くの強行規定を設ける。その先. 駆的立場にあり、わが国をふくめ、近代保険契約法の制定に、多大なる影響を及ぼしてきたドイツ保険契約法におい. -51-.
(6) て、損害防止義務および損害防止費用負担義務は、 どのように解釈され、適用されているのであろうか。. 各国制定法が、強行規定中心主義を採用しているなかで、わが国現行商法第三編﹁商行為﹂第一 O章﹁保険﹂に定. めるところには、保険契約者および被保険者保護のための強行規定は設けられていない。損害防止義務および損害防. 止費用負担義務を規定する商法六六O条ももちろん、 わが国では、任意規定である。とくに、右規定に定める保険者. の損害防止費用負担義務の強行性の是非が問われているわが間にあって、強行規定中心主義を採用する、 その代表格. ともいうべきドイツ保険契約法が右義務に関する規定を強行規定とするのか、あるいは任意規定と解しているのか、 いずれにせよ同法を検討することは、 わが国にとって非常に有益であると考えられる。. そこで、以下では、ドイツ保険契約法における損害防止義務および損害防止費用負担義務について、とくに保険者 の損害防止費用負担義務を規定する同法六三条の強行性を中心に検討していく。. ω. ︿ 註 ﹀ わが国において唯一のドイツ保険契約法の立法過程に関する体系的ないし包括的な研究として、坂口光男﹃保険法立法史の研 究﹄(文民堂、一九九九年)がある。. 汁. HCC. 内. ω 大森忠夫﹃法律学全集三一保険法︹補訂版︺﹄二八頁(有斐閣、一九八五年)。 ω4向日・ M)円OEml冨mW2F.︿。EtEEHMmmg ユgmωmgoNWN白・﹀丘-m向。 ∞一回Hd岳l冨 巴ZFMOBESE円NCB ︿号EOFφ. E 巳凶︹目。∞︿角巴のFOE出向君。円SF m σ 包EmEH向。ロロロ宮門田口ωの E H (日N己宏ロ﹀口問。EESロ︿。円巴与。門戸ロm コドロ問20江E m ω 向。∞⑦什N ロ 巴 m向 ∞0・ 己 ⑦ HeHdmの F m唱 ∞ -KF 唱回門日・戸 H U w。 w Z. なおドイツ保険契約法およびその日本語訳については、青谷和夫﹃主要国保険契約法﹄三三頁以下 (三成書房、 一九七五年) を参照のこと。 わが国現行商法は、 第三編第一 O章﹁保険﹂ のなかで、 第一節﹁損害保険﹂および第二節﹁生命保険﹂ について規整するに. ω. - 52-. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.
(7) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. とどまり、傷害保険や疾病保険に関してはまったく規定していない。しかしながら、商法が傷害保険契約に関する規整を欠いた. まま現在にいたっていることは問題であって、これについて立法をなす必要があることは従来から指摘されていたところであ. り、近年における傷害保険契約の重要性にかんがみれば、そのような必要性は従前にも増して高まっているということができ. る 。 こうした現状を受けて、わが国においても、傷害保険契約法の新設のための試案として、損害保険法制研究会により一九九五. 年﹁傷害保険契約法(新設)試案﹂が、続く一九九八年には生命保険法制研究会が﹁傷害保険契約法新設試案﹂を作成、それ. ぞれ公表されている。さらに二O O三年には、傷害保険契約法研究会が両案を調整、一本化した﹁傷害保険契約法試案﹂を作 成している(傷害保険契約法研究会編﹃傷害保険契約法試案(二OO三年版)理白書﹄二一頁(二O O三年))。 現在、保険法としては最新立法である一九九五年に可決・施行された中国保険法や、同じく一九九五年のわが国損害保険契. ω. 約法改正試案、一九九八年の生命保険契約法改正試案に、ドイツ保険契約法の与える影響は大きい。. ω二四一頁。. 。坂口・前掲注. ω. それに尽きるものではない。けだし、保険者は、保険契約の私法的な内容を保険約款によって規律することができるので、保険. 凶. ω. 2D・ω)唱∞・台。・ 切言。昨 l冨o o p m-mo ・ ・ 以下、坂口・前掲注 六八1六九頁。 坂口光男教授は、ドイツ保険契約法立法の法政策目標について、それが﹁保険法の統一ということに求められる。しかし、. σ角間唱。︿号ω仙のF O E口問問。。 F Y H ω 問 団 F Sロ u ∞・8 ・ ∞ ∞ 仙川坂口・前掲注 六七頁。. ω ω ω. E 唱一回(同・ YHUω ア ∞-NHλ 8 ・ のぽ円} 8・︿耳切片 FO 吋 ⑦ の 門 戸 H M m ω 山 イタリア民法典一九一四条は、被保険者の損害防止・ 義 務および保険者の損害防止費用負担義務について五項にわたって規定. 同二四三頁。 ) 。 西島梅治﹃現代法学全集二六保険法︹第二版︺﹄一四頁(筑摩書房、一九八O年. められる。ドイツ保険契約法立法の最大の目標は、保険契約者保護にある﹂と述べる(同二四二i 二四三頁)。. 契約に関する統一的な法が存在していないとしても、保険者にはとくに不都合は感じられないはずであるからである。それに もかかわらず、保険契約立法の必要性はどこにあるのかということを問うならば、それは、保険契約者を保護するという点に求. ω ω ω ω. している。一項は、﹁被保険者はできる限り損害の回避または軽減に努めなければならない。. 5 3-.
(8) 二項被保険者がこの目的のために支出した費用は、保険者が当該費用が不当に支出されたことを証明した場合を除き、その 額が損害額との合算で保険金額を超過するとき、ならびにその目的を達成しなかったときといえども、保険価額とその保険の目. 的が事故発生時に有した価額の割合で保険者が負担しなければならない。 三項保険者は、保険事故による損害を回避または軽減するために、被保険者により用いられた手段で保険の目的に直接生じ た物的損害につき、当該手段が不当に使用されたことを自ら証明する場合を除き、責任を負う。. 四項保険の目的の損害防止およびその保存のための保険者の関与は、その権利に影響を及ぼさない。 五項損害防止に関与する保険者は、被保険者が要求する場合には、その費用をあらかじめ支払いまたは保険価額の割合で費. 印 ) 。 用分担しなければならない﹂(の巳ロo∞自EL D当守ミさ忌ととSEN芯ミ・同OB95∞?七 m m γ ω∞ イタリア保険法については、栗田和彦日今井薫 H岡田豊基 H小棲純﹁イタリア保険法の逐条的研究(一 )j(六・完)﹂関西大 学法学論集三九巻二号二O 二頁以下、四O巻二号二一一頁以下、四O巻六号、四一巻四号二O五頁以下、四二巻六号二九三頁 以下、四三巻三号二九四頁以下が詳細である。. ω. 一九九五年六月三O 日の第八期全国人民代表大会常務委員会第一四会議で可決され、周年一 O月一日に施行された中国保険 法も、同四一条一項に、﹁保険事故が発生する場合において被保険者は、できる限り必要な措置を講じて損害の防止と軽減に努 める義務を有する。. 二項保険事故が発生した場合において被保険者が保険の目的の損害を防止し軽減させるために支出した必要かつ合理的な 費用は保険者がこれを負担する。保険者の負担額は、保険の目的の損害填補額とは別途、これを算出する。但し、負担額は、 保険金額を超過してはならない﹂(子新年 H曹守嘩 U高聖平﹃中華人民共和国保険法理論与実務叢書最新保険法条文評義﹄一 O九頁(人民法院出版社、一九九五年))。 また中国保険法およびその日本語訳については、清河雅孝﹁中国新保険法の制定﹂文研論集一一二号一頁以下(一九九五年) を参考のこと。. mmopg ︿︿の・. 側同法六二条に規定する損害防止義務については、﹁﹁損害の防止義務﹂というよりは﹁保険の目的物の救護義務﹂と表現する O 一頁(文民堂、一九九六 のが妥当であるように思われる﹂との指摘もある(坂口光男﹃保険契約法の基本問題﹄一 001一 年 ) ) 。. 側近代的立法ではもちろん強行規定を中心としていることから、強行規定中心主義が正しいことは異論の余地がない (西島・. - 54-. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.
(9) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. ω. ω. 前掲注 一四頁)。 わが国現行商法は、一八六一年に制定されたドイツ旧商法典を参照かつ模範としているが(大隅健一郎﹃商法総則︹初版︺﹄ 一九頁(有斐閣、一九七八年)、西原寛一﹃近代的商法の成立と発展﹄六五頁(日本評論新社、一九五三年)および服部栄三. ﹁商人主義・商行為主義とドイツ旧商法﹂鈴木禄弥 H五十嵐清 H村上淳一編﹃概観ドイツ法﹄所収一三四頁(東京大学出版会、 一九七一年))、一九九五年に損害保険法制研究会が作成、公表した損害保険契約法改正試案には、ドイツ現行保険契約法の影響. が随所に見られる。 なおわが国損害保険契約法改正試案に関しては、損害保険法制研究会編﹃損害保険契約法改正試案傷害保険契約法(新版). ω. 損害防止義務および義務違反の効果. 損害防止義務の法的性質. 損害防止義務. 笹山ニ且早. ω. 試案理白書一九九五年確定版﹄(財団法人損害保険事業総合研究所、一九九五年)。 この点について、大森忠夫博士は、﹁近代的保険立法の一般的傾向である加入者保護のための強行法的規定の定立という問題 について、何らの考慮も払っていない点も甚だ問題である﹂と指摘する(大森・前掲注 二七頁)。. 第一節 第一款. ドイツ保険契約法には、義務(耳目目。宮)と規定されながら、責務 (OE 円 高gZ5 と解される、 一連の諸規定が存. 在する。同法二ハ条に設けられた告知義務をはじめ、同五八条の併存保険における通知義務、七一条に定める保険の 目的の譲渡の通知義務や三三条の保険事故の通知義務などが、 それである。. EHCI--損害防止および軽減義. そして、 ここに同国保険契約法六二条一項に定める損害防止義務 a EEDm告白. ぽ品。門戸H 務(∞岳山品。ロ 任 。ロ( 什 E E H H m∞ m者 -EH l H m名目。宮)ーーーもまた、責務と解されている諸規定の一つにふくまれる。. -5 5.
(10) 実のところ、保険契約法六二条一項に規定する損害防止義務の法的性質をいかに解するかについては、従来から学. 右法が一九O八年に制定された当時、損害防止義務については同六二条にすでに定められていたものの、損害防止義. ZOEぽ向。ロFEC とみる説 } 内 ロ ロ 問 ) であると主張する危険制限説、さらには右義務を保険契約法上の責務(向。 mENZ 。. ω. 帥. り、現在では、損害防止義務が損害防止責務であることを前提に、解釈が展開されている。. 保険契約者は、出火時、家財道具に危険が及んだときにはそれを傍観してはならないだけでなく、むしろ消火作業. ないものとして、損害を防止し軽減するという情況にあることを期待されている。. 則に背るものである﹂とする見解と同意である。すなわち、保険契約者は、保険事故によって生じた損害が填補され. ω. り、損害の発生について痛庫を感ぜず、その発生及び拡大を挟手傍観することは、著しく保険者の意思に反し、信義. において商法六六O条一項に損害防止義務を課すその理論的根拠を論じる際、﹁被保険者が、保険契約があることによ. 四二条が規定する﹁給付における信義誠実の原則﹂にもとづいて表出されたものと解釈されている。これは、わが国. 保険契約法六二条一項に定める保険契約者の損害防止義務が責務とされるにいたって、同義務は、ドイツ民法典二. ω ω. まで、 その主張は多岐にわたる。しかしながら、同法六二条に第二項を設けた際、右規定に責務と明示したこともあ. 減義務に関する規定は保険契約者に一定の行動を課しているのではなく、反対にそれは危険制限(出庄町oσg 各品中. 説の対立があった。古くは、右義務を法的義務(却のの宮告白山岳け)と解する法的義務説にはじまり、損害防止または軽. ついて定めるにいたったのだが、 そのときにはその文言に義務ではなく責務が用いられている。. 務違反に関する規定はなかった。 そこで一九三九年一二月一九日、同条に第二項を加え、損害防止義務違反の効果に. 第5 1巻第 3・ 4号. に従事しなければならない。保険契約者は、みずからはもちろん、同じく交通事故に巻き込まれた自動車運転手をそ. -5 6. 近畿大学法学.
(11) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. のままそこから立ち去らせてはならない。 それに加えて、相手方である自動車運転手のそのカ lナンバーを書き留め. なければならない。 それらの行為が、ときとして有効な債務請求を可能にする。つまりは保険利害関係者の利益のた めに、保険契約法六二条は、責務としての損害防止義務を規定しているのである。. しかしながら、保険契約法六二条一項に定める損害防止義務を責務と解する結果として、注意すべきことがある。. 一項に保険契約者に損害を防止し軽減す. 法 律 上 の 責 務 が 、 問 題 と な る 。 す な わ ち ド イ ツ 保 険 契 約 法 は 、 保 険 契 約 者 が 責 務 に 違 反 し た 場 合 、 その効果について 同法六条に規定を設けている。 ところが、こと損害防止義務にいたっては、保険契約法六二条において、. る義務として規定し、同じく二項に右義務違反の効果について定めている。法律効果は、保険契約法六二条二項に直. 損害防止義務の開始時期. 接に規定されている。損害防止義務違反に限っては、保険契約法六条三項は適用できない。. 第二款. 包 含BEEユ立品。∞︿角色。F 25Hm丘 mLE)﹂と定める。損害防止義務規定を設ける各国制定法のな. ドイツ保険契約法六二条一項は、 その規定文言からも明らかなように、損害防止義務の開始時期について﹁保険事 故発生に際し. σ (. かこは、 その開始時期について、ドイツ保険契約法と同様に条文に明示しているものと、とくに定めていないものと. に二分される。さらに、前者のように損害防止義務の開始時期について明文化しているもののなかでも、その内容は、. ドイツ保険契約法六二条一項に用いられている﹁保険事故発生に際し﹂をはじめ、﹁保険事故発生後﹂、﹁保険事故が発. ωω. 生しまたはその発生が切迫していると思われるとき﹂、あるいは﹁保険事故が発生する場合﹂と多種多様である。. - 57-.
(12) 近代保険法がおおむね損害防止義務の開始時期について明文規定しているなかで、わが国現行商法六六O条一項. は、﹁損害ノ防止ヲカムルコトヲ要ス﹂る旨定めるのみで、 その開始時期に関しては特段、規定を設けていない。従. 来から解釈に委ねられてきた。わが国では、国内保険約款の多くが損害防止義務の開始時期について﹁保険事故が発. 生したとき﹂あるいは﹁保険事故発生にあたり﹂と約定していることも考慮したうえで、現在、損害防止義務は保険. 一九九七年に起草されたわが国損害保険契約法改正試案(以下、﹁改正試案﹂という)六六O条一. 事故が発生したことを前提として履行すべき義務と解するのが通説となっている。 現状を踏まえ、. 項には、﹁保険事故の発生にあたり﹂という文言が加えられ、保険事故の発生以前においては、被保険者または保険. 契約者は損害防止義務を負わないことを条文に明示した。右規定は、損害防止義務の開始時期について、保険事故の. 発生の防止は損害防止義務にふくまれないとするわが国通説を、明文化した形となっている。. ω. のみならず、損害防止義務の開始時期に幅をもたせるという趣旨から、﹁保険事故の発生にあたり﹂と定め、﹁保険. 事故発生後﹂や﹁保険事故が発生したとき﹂といった断定的な表現も用いていない。これは、ドイツ保険契約法六二. 条一項が﹁保険事故発生に際し﹂と定めて、損害防止義務を保険事故の発生前と発生後の境界において履行すべき義 務と解するのに依拠した結果といえよう。. このように、 いまなお各国保険法からその参考にされ続けているドイツ保険契約法ではあるが、同国内では、同法. 六二条一項に規定する﹁保険事故発生に際し﹂という文言の厳密に意味するところが、とくに責任保険との関係から. 長きにわたって争われてきた。同条一項における損害防止義務は、その開始時期が保険事故の発生を前提としている. ことは、保険契約法六二条一項に規定する﹁保険事故発生に際し﹂という文言からも明らかである。 それにもかかわ. 5 8-. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.
(13) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. らず、損害防止義務の開始がこの時点ではあまりにも遅すぎるとされ、保険事故発生に際して右義務が開始すると定. めた六二条一項は誤ったものとの指摘がある。保険事故が直接かつ目前に迫っている場合には、損害防止義務はすで. gEO) の問題である。 に開始しているものとする、 いわゆる損害防止遡及理論(︿025守兵昨日記∞F. 連邦通常裁判所は、損害保険のなかでも責任保険の分野における損害防止義務の、そのような拡張に対しては、否. 定的な見解を表明してい仇 o 右裁判所によれば、保険事故招致について規定するドイツ保険契約法一五二条にその客. 観的根拠を求めることにより、保険契約者が保険事故を故意かつ違法に引き起こした場合にかぎり、保険者は給付義 。. 務を免れることになか、保険契約者の重過失による損害防止義務の慨怠にのみ、保険者には保険契約法六二条二項に よる給付義務の免責が生じることになる。. その結果、損害防止義務を負担する保険契約者は保護される。保険事故招致は、保険契約法六二条二項による損害. ω. 防止義務違反と同様に扱ってよいものではなく、むしろ保険契約法一五二条があることによって保険契約者に有利な 法律効果を生ぜしめるべきであるというのが、 その理由である。. ω. 責任保険における損害防止義務の遡及いかんの問題は、とりわけドイツ保険契約法六三条にもとづく損害防止費用. 請求において重要となる。損害防止義務の遡及(︿025守兵宵己記)を認めなければ、保険事故の発生前における損. 害防止義務は存在しない。保険契約法六二条一項に規定される損害防止義務では、右義務の履行によって生じた費用. N). を保障する。なおかっ. が問題となるため、保険契約者が損害防止のために講じた処置は、 それゆえにあらゆる方法を用いても保険契約法六 三条一項には該当しない。. ZEロmm∞の﹃三 前述の連邦通常裁判所判決では、責任ある保険契約者に保険保護(︿①E 片. 5 9-. 一.
(14) 責任損害を回避しようと努めた保険契約者に対して、 その費用償還を断念させるために、同一の判決が引用されてい. る。責任保険においてもまた、損害防止義務の遡及について、ドイツ保険契約法一五二条に注意を払い、相当の慎重 さをもって導き出された結果として言及されている。. 川間. k. 損害防止義務の遡及は、保険契約法一五二条にかんがみ、責任保険における保険契約法六二条を目的論的に縮小解. 釈した場合には法律上、容認されうる。結果として、保険契約者は、故意に損害防止義務に違反した場合にのみ、右. 義務違反により保険保護を喪失する。責任保険において、損害防止義務の遡及を不可能とするならば、費用償還に関. する相当の不備が生じるため、解釈を拡張し、あるいは保険契約の締結の際、保険事故の発生前に要する費用などを ふくめた特別の約款規定を設けなければならない。. 責任保険以外の損害保険では、責任保険のように、ドイツ保険契約法一五二条によって根拠づけられる特徴は存在. しない。右法六一条に規定する保険契約者の保険事故招致にもとづく保険者の給付義務の免除. (F22 日記丘EFZ乙 ω. と、同じく六二条の損害防止義務違反にもとづく保険者の給付義務の免除とのその要件は、ともに等しいからである。. 保険事故の発生によって、損害防止義務を負担することからも、このことに疑いの余地はない。. この点についてはまた、客観的にも根拠づけられる。すなわち、保険事故がすでに発生してしまっている場合には、. それ以降、物保険のための損. 多くの事例において損害を防止することはほぼ不可能である。それゆえに責任保険以外の損害保険においては、損害 防止遡及理論は適用しうる。. E '∞岳山島8 判決を皮切りに、. 連邦最高裁判所は、先の判決、および一九九一年の巧 害防止遡及理論を認め続けている。. 6 0. 第5 1巻第 3・4号 近畿大学法学.
(15) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. 保険契約者には法律上、損害防止が義務づけられている。 その前提条件となるのは、ある時点において義務が発生. することである。 その時点というのは、損害拡大の防止が可能な時点に限られない。﹁保険事故発生に際し﹂というこ. ω. とは、発生のその直近の前後をも意味する。ドイツ保険契約法六二条一項によるところの損害防止義務は、責任保険. を除いて、保険事故が直接かつ目前に迫っている時点に開始すると解することが非常に適切であると考えられている. ω. 損害防止義務の内容. のである。ただし、損害発生の高い蓋然性、ならびに時間的かつ空間的な緊密さを必要とする点に注意しなければな らない。. 第三款. わが国商法六六O条一項は、損害防止義務について﹁損害ノ防止ヲ力ムルコトヲ要ス﹂と定めている。 その文言か. らも明らかなように、ここに被保険者が果たすべき損害防止義務とは損害を防止するために努力することであるが、 同項に規定されるのは損害の﹁防止﹂のみである。. しかしながら、わが国の保険実務では以前から保険約款をもって損害防止義務を規定する際、﹁損害の防止または軽. 伺. 減﹂とすることにより、損害の防止に加えて軽減行為をも義務づけることが通例となっている。また、各国制定法の ほとんどが、損害防止義務の内容について損害の防止と軽減とを規定する。. ドイツ保険契約法六二条一項もまた、この例にもれることなく、保険契約者に対して損害の防止および軽減に努め. るよう義務づけている。加えて、損害の防止を損害の発生そのものを阻止し、あるいは損害の拡大の全部または一部. を阻止することと解するのに対して、損害の軽減とは発生はしているものの、まだ確定的ではない損害の一部または. 6 1-.
(16) ω. 全部を取り除くこととして、 その概念を区別する。. ただ、損害防止義務に求められる防止または軽減行為の程度や方法といった具体的な内容については、同法六二条. 一項には何ら規定されていない。これは同項に限ったことではなく、わが国商法六六O条一項をふくめ、各国制定法. に共通する問題である。 そのようななか、 たとえばわが国では、損害防止の程度について、被保険者は保険契約があ. るがためにこれが存在しない場合よりも特段の努力をなさねばならないとすべき理由のないことから、無保険の場合. と同程度の努力をすれば足りると解する。また被保険者が損害の防止または軽減に対して、無保険の場合と同程度の. 努力をした以上、結果として損害の防止または軽減に成功したかどうかを問わず、義務は履行されたものとして扱わ れる。. ドイツ保険契約法六二条一項に定める損害防止義務もまた、 その内容について、保険契約者は、 たとえ保険契約者. N. 品向EF丘. が保険に加入していなかったとしても、損害を回避し軽減するために保険契約者によって提供され、かつ期待されう. る 可 能 性 の す べ て を 行 う べ き で あ る と 解 さ れ て い る 。 い わ ゆ る ﹁ 自 己 責 任 性 の 原 則 (CED含己. E-F各官立)﹂による。と同時に、保険契約者は、すべての可能でかつ期待されうる損害の防止および軽減措 円S 2S 州側. 置をただちに遅滞なく採らなければならないだけでなく、これらの措置は取引上、必要とされる注意をもって行われ なければならない。. 1. さらに特筆すべきは、六二条一項が、保険契約者による損害防止および軽減義務だけでなく、右義務の履行に際し、. ω. ての保険者による指示についても規定している点である。同項によると、保険契約者は、保険者による損害防止と損. 害の拡大防止に対する指示を遵守しなければならない。保険者による指示は、損害防止および軽減義務を具体化する. -62-. 第5 1巻第 3・ 4号. 近畿大学法学.
(17) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. 意思表示であり、. ω 一方的に受領されることによって効果を生ずる。. 保険者には損害の防止とその拡大防止に対する指示を行う義務はないが、保険契約者側には事情が許す場合、保険. 者に指示を求めなければならな川 o そして保険契約者は、保険者に対して適切に損害発生の通知をすることでこの義 例制. 務を達成する。. 0. なぜならば、保険契約者による右義務違反は、もはや考えられない山らで. 保険契約者があらかじめ与えられた指示によっているならば、保険者は、損害防止および軽減義務の違反による給 強. 付義務の免責を援用することはできない川. ある。保険契約者は、保険者の指示にしたがった時点で、損害防止および軽減義務における自己責任から免れる。保. 険者から与えられた指示が明らかに目的に適さないものであるか、あるいは保険契約者が間違った情報を有責的に与 えた場合には、 それを原因として例外が発生する。. 保険契約者が保険者による指示を無視したならば、場合によってはドイツ保険契約法六二条二項により保険契約者. の保険者に対する給付請求権を失う恐れがあり、また場合によっては同国民法典六八三条に定めるところにより損害. 損害防止義務違反とその法律効果. 防止および軽減措置に要した費用について負担しなければならない。. 第二節. 損害防止義務違反の効果については、各国制定法のそのほとんどが条文を設けて規定しているのに対して、わが国. 商法には規定がない。したがって、わが国ではこの点についても、従来から解釈によってきた。そして、 それはさま ざまに解釈されてきた。. - 63-.
(18) 実際、わが国学説はいろいろと法律構成を展開して、損害防止義務違反の法律効果を導き出している。現在のとこ. ろ、損害防止義務者である被保険者に損害防止義務違反があっても、被保険者は保険金請求権を失わないという前提. に立ち、被保険者は自分自身が招いた債務不履行により保険者に対して損害賠償義務を負うため、保険者は被保険者. の有する保険金請求権と自己の有する損害賠償請求権とを相殺し、その差額を支払うべきとする点では異論はない。. 被保険者が故意または重過失によって損害防止義務を履行しなかったときには右義務違反を認め、単に軽過失による 場合には義務違反とはならないとすることでも一致じている。. - 64-. 学説の情況に対して、わが国保険実務では各国制定法と同様、当初から各種約款において損害防止義務違反の効果. に関する規定を設ける。保険約款における規定内容は必ずしも一様ではないが、おおむね、損害額から防止または軽. 減することができたと認められる損害額を控除した残額を基礎として填補額を決定するいわゆる損害額減額主義を採. 用するもの、保険者は義務違反があると損害を填補する責に任じないとするもの、 そして防止または軽減することが. できたと認められる部分については保険者は填補の責に任じないとするものの三種類に大別される。なかでも損害額 減額主義を採用する保険約款が、大多数を占める。. 一九九五年に公表されたわが国改正試案では、こうした情況を受けて、商法六六O条に新たに第三項を設け、損害. 防止義務違反の効果に関して規定している。同項によれば、損害防止義務者に﹁故意または重大な過失﹂がある場合. 保険者の損害填補額については、損害額から被保険者による損害防止義務の履行により防止または軽減が可能で. O. にのみ、損害防止義務違反として法的制裁を課す。損害防止義務違反を判断する際、故意と重過失とを区別していな. 、 L. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.
(19) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. あったと認められる損害の額を控除した額を基礎として決定する。これはわが国の保険約款に定めるところであり、. わが国通説による現行商法六六O条解釈と一致した規定となっている。各国制定法もまた、そのほとんどが損害防止. 義務違反の効果として、右義務違反により損害が拡大したと認められる部分について、被保険者は保険者による損害 填補を受けることができないと定める。. ドイツ保険契約法は、 そ の 六 二 条 二 項 に 損 害 防 止 お よ び 軽 減 義 務 違 反 の 効 果 に つ い て 規 定 す る 。 同 条 二 項 に よ れ. ば、保険契約者が故意または重過失にもとづいて同一項に規定する損害防止および軽減義務に違反した場合、保険者. はその給付義務を免責される。同二項は、故意によると重過失によると、 その損害防止および軽減義務の効果につい. ては区別していない。ただ重過失による右義務違反に対しては、保険契約者による義務の適当な履行がなかったとし. てもその損害の範囲が減少しなかったであろう場合には、 その限りにおいて保険者に給付義務を課している。. 故意による損害防止および軽減義務違反については保険者は給付義務を免れることになるが、この場合、連邦通常. 裁判所ではとくに客観的かつ主観的な重大性を要件とする﹁過重禁止の原則(の Eロ岳山け包含 ω巴σ耳目戸田ぐ。与♀)﹂ が考慮される。. 損害防止および軽減義務の履行に際して、重過失的な違反があった場合には、﹁すべてか無かの原則(﹀口Sloe 円. 側. 巳 の FZM)江口 N仲間))﹂が、法律にもとづくことなく必ず適用されている。保険契約法六二条二項二文は、保険契約者が l. 損害の防止および軽減のために適切な行動をとった際に要求しうる金額をもって填補されることを予定している。し. たがって、保険者による損害填補は、保険契約者が右義務の適切な履行を通じて避けることができたであろう範囲を. 減じた部分の損害についてである。保険契約者による損害防止および軽減義務違反と発生した損害との聞には、因果. 6 5.
(20) 関係を要する。 軽過失は、保険契約者にとって不利益にはならない。. 保険契約者は損害防止および軽減義務の履行に際して、故意または重過失がなかったことを立証する責任を負う。. 保険契約者はさらに重過失による事故の場合には、損害防止および軽減のための適切な行動をとったとしてもその損. ω. 害が発生したであろうことを証明しなければならない。これを証明することができれば、保険者は給付義務の免責を 州側. 援用することはできない。. ︿ 註 ﹀. ω. ドイツにおける損害防止および軽減義務の法的性質に関しては、坂口光男﹁損害防止軽減義務に関する若干の諸問題の考察│ ードイツ法理論との関連において││﹂法律論叢四五巻五・六号一三九頁以下(一九七二年)。. ユ. E B停o ω H J W 什の吋∞の O吋ロロ問ω N ω w .︿耳切片F dω 弓E 4 0gm ∞吋。。FFE∞PHW︹日出・ 斗 ドイツ保険契約法と同様、スイス保険契約法六一条やイタリア民法典一九一四条が、損害防止または軽減義務を責務と解して. ω. いる。わが国においてもまた、ドイツ保険契約法六二条に定める損害防止義務の法的性質に関する検討を踏まえたうえで、商法 六六O条一項に規定する右﹁義務は責務であると解すべきである﹂との見解がある(同一四九頁)。 わが国における保険法上の﹁義務﹂と﹁責務﹂についての研究として、大森忠夫﹁第五章保険契約法の善意契約性﹂同著 ﹃保険契約の法的構造﹄所収一六九頁以下(有斐閣、一九五二年)、石田満﹁四保険法上のo z-omgZE について﹂同著﹃保. 険契約法の諸問題﹄所収四七頁以下(一粒社、一九七二年)、同じく石田満﹁三保険契約法における OE芯 mgE立の法的性 質に関する研究序説ーーードイツ法を中心として││﹂同著﹃保険契約法の基本問題﹄六一頁以下(一粒社、一九七四年)。 司. N∞斗・ N3・出品ロ・ ・(司ロ-. ω ∞oEBF04ωEwm-mo. 側ここに同法典二四二条は、﹁債務の履行については、 信義誠実の原則と取引上の慣行にしたがうべきである﹂旨定めている 切の出)。 ( m N品N. 6 6-. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.
(21) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. ) 。 小町谷操三﹁損害防止義務について付﹂損害保険研究一二巻四号五1六頁(一九五O年. E B停 O巧mE m m W・O ・(﹃ロ -Mω)十回門古 -Nω4・. ω. 同程度の努力をすれば足りると解している(小町谷・同一五i 一六頁、野津務﹃新保険契約法論(保険法論集第二巻)﹄二五六. 噌. 。 ∞わが国もまた商法六六O条一項に定める損害防止義務の程度については、損害防止義務者である被保険者が、無保険の場合と. ・ 叶. 八1 一四九頁(文員堂、一九九一年))。 EEF04m um-mo 司E ・ ・(﹃ロ -Nω)γ同(目白 -Nω. 頁(野津務保険法論集刊行会、一九六五年)、大森・前掲注 一七一頁、田辺康平﹃新版現代保険法﹄一五九頁(文民堂、一 九九五年)、石田満﹃現代法律学講座一九商法町(保険法)﹄一七六頁(青林書院、一九七八年)、坂口光男﹃保険法﹄一四. ω. 側の 同 ∞法六条は、保険契約者の責務について、一項﹁保険事故が発生する前に保険者に対し履行すべき責務に違反した場合にお. いて、当該責務違反につき過失がないとみなされるときは、保険者は給付義務を免れるものとし、合意があった保険契約上の法. 律上の効果を生じない。保険者は、当該責務違反を知った後一ヶ月以内に予告期間を守らずに当該保険契約を解約することが できるが、当該責務違反につき過失がないものと認められる場合は、この限りでない。保険者が一ヶ月以内に解約しないとき. は、合意があった保険契約上の給付義務の免責を援用することはできない。 二項保険契約者が危険の減少または危険の増加を防止するため保険者に対して履行すべき責務に違反した場合において、 当該違反が保険事故の発生または保険者の負担すべき給付の範囲に影響を及ぼさなかったときは、保険者は、合意があった保険. 契約上の給付義務の免責を援用することはできない。 三項給付義務の免責が保険事故の発生後保険者に対して履行すべき責務の違反に関し合意されている場合において、当該 責務違反が故意または重大な過失にもとづかないときは、当該合意は、法律上の効力を生じないものとする。当該責務違反が重. 大な過失にもとづく場合であっても、その違反が保険事故の確定または保険者の負担する給付の確定もしくはその範囲に影響 を及ぼすものでないときは、保険者は、その範囲においてなお給付義務を負うものとする﹂ (m∞ぐ︿の)。. OJ司∞. 唱. ・ ・(﹃ロ. ∞ ∞ ・ 門日ロ - M -Nω)w同. ω EB停 E m-mo ω。 ∞スイス保険契約法六一条一項が、これにあたる。同項は、﹁危険事故の発生後できる限り損害の軽減に努めなければならない﹂ と規定する。 側スウェーデン保険契約法五二条一項が損害防止義務を規定するにあたり、上記文言を用いる。 中国保険法四一条一項は、損害防止義務の開始時期を﹁保険事故が発生する場合﹂と規定する。. ω. - 6 7. ( 2 8 )2 ( カ.
(22) 倒火災保険普通保険約款一八条は、﹁保険契約者または被保険者は、第一条(保険を支払う場合)の事故が生じたときは、損害. の防止または軽減に努めなければなりません﹂と定める。貨物海上保険普通保険約款一四条一項前文には、﹁保険契約者、被保 険者またはこれらの者の代理人もしくは使用人は、保険事故の発生にあたり、損害の防止・軽減に努めなければなりません﹂. ω. 旨の規定がある。運送保険普通保険約款二O条一項および船舶約款一五条一項もまた、同様である。 側 大 森 ・ 前 掲 注 一七一頁。 的 損 害 保 険 法 制 研 究 会 編 ・ 前 掲 注 側 六 五i六六頁。. ω. ∞の﹃即日F04司∞Ewm-m・o・(司ロ-Mω)唱一回門山口-Mω也・ 坂口・前掲注 二ハ五頁。 ∞のEBFoJ司mE唱m-mW・O・(﹃ロ-NeLZロ-N8・. 回. - 68-. 側同六六頁。. ω ω ω ω ω. 回白出NAFω唱∞∞暗室 H︿号∞何回UGFωNFωNG﹃・ ドイツ保険契約法一五二条は、責任保険における保険事故招致について以下のように規定する。﹁保険者は、保険契約者が第 三者に対して責任を負うべき事実を故意に、かっ、不法に生ぜしめたときは、責任を負わないものとする﹂(55M︿︿わ)。. ω ω. 川脚∞のEE停OJ司ωEwmH-m・o・(﹃ロ-Mω)十回(日出-N品。・ ∞。EE停o dω 弓 E ・9-m・o・(FYMω)唱一見門吉-N8・ 責任保険をめぐる研究はわが国でも多々見受けられるが、とくにドイツにおける責任保険のその損害防止義務を研究したも のに、坂口・前掲注 一七五頁以下。. 州側目。出NAFω唱∞∞暗室 H︿O円切開HC∞戸ωNFωN2・. N. 門同mwN戸内ぬもさきゅ︿。吋白仙の}55HHmm円。。﹃仲Eup日目HR-一一﹃ささSFZ︿。HemN53唱E町内向・一同55FZJH⑦吋∞NSCC唱同日ω町内・. 凶. 的門目印宗門間口のFNWRFSSF 同ZEロ官官民目。﹃什忌む戸N白FNG∞一ぎなhF︿号∞FS25mω50ESU∞wH4∞│﹀EHH-ECFO出mHEI ぎ852-。ZEロ問問。。﹃ニ∞戸52│一ggmmo名門OOFS向。EFCE-PHW025mmuEのEHSFNωFNω白40ロ052 白 日 目 ・ kr W E I H ロ ∞ w m 戸 口 品 。 H e m ︿OHeO円EH60}内日記 m Foo-ι。ロゲロHem叫咽目。仲立日間∞日)巴片}忌SU∞ゆ ∞ ロB-h高付加品川町三一﹁の 同色ロ H け ロ ロ 問 ∞ 同 ︺ 己 目 。 F A い 同 一 以 む C W H U ω ・ ∞。EE停o ωE-mw-m・o・(﹃ロ-Mω)唱出品ロ・ピω・ d弓 ∞ ο E H H H停o d ︿ ∞ } 同 日 峰 山 凶 m ・ o ・ ( ﹃ ロ M ω ) " 一 回 ( 日 出 N A E 働側. 第5 1巻第 3・ 4号. 近畿大学法学.
(23) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. o. N ω )岨 N h H H・ ∞ oEE符o 一 見 ( 日 ロdω 弓 E 9 m・ ・(﹃ロ・・. ここにドイツ保険契約法六一条は、各種の損害保険に適用される規定として、保険契約者による保険事故招致について﹁保. 険者は、保険契約者が故意または重大な過失によって保険事故を発生せしめたときは、給付義務を免れる﹂旨規定している(叩 色︿︿の)。. ω ゆ. h H ⋮y ∞∞二 VAHH︿ H∞ 円ω H N H由。PωNFωN2・ 州側回。同N 倒見。立ロロ問名20FYHus-HH ・ ∞ 5 ∞戸出含円・日∞ω・ 。E 片F05口 邸 宅 30円 ω¥︿ ω円 。 のFFN・krC2・ 問2025問 M ω )十回門日ロN h F N・ ∞oEB停o -m-mo dm 司E ・ ・(﹃ロN λ F N・ oEB停。者mE m-mo N ω )唱 一 回 門 門 口・ ・(﹃ロ-. 伺∞. 側たとえば、火災保険普通保険約款一八条。 間イタリア民法典一九一四条や中国保険法四一条などほとんどすべての立法が、﹁損害の防止または軽減﹂と定めることにより、. 。ロ門吉H -oσ2FE。∞岳山品。ロ 号 m話 HmmlEH lBE(E ロm告白目。宮{凶g ︿旬巴の日5 5ロ問∞ロ各自号PSGω 二凶∞-N4lM. 損害防止義務に軽減行為を包含している。 側∞. 。 目 ω 一七六頁・∞、西島梅治 注 二五六頁、田辺・前掲注側一五九頁、石田・前掲注 ω 小町谷・前掲注的一五1 一六頁、野津・日前︹掲ω ω 一七一頁)。. ﹃保険法︹第三版︺﹄二O八頁(悠々社、一九九八年)、坂口・前掲注側一四八i 一四九頁。 大森忠夫博士は、その理由を﹁保険者に対する信義則の要求するところ﹂に求めている(大森・前掲注. 側石田・同上、西島・同上、坂口・向上、大森・向上。. OJ司. f N ω )︹同︹日ロN品 九 日 ・ 州側∞。E B停o 唱m dω 弓庄 -mo・(司H ・ M怠 ・ 一 同 ︹ 山 口mE-m-mo ・ ・(FfNω)唱. 州側∞。E B停. S・ 州仰ぐ問﹁回白出・︿号∞同 54ωw∞ 制わが国においても、損害の防止または軽減に努める程度および方法については、それぞれの情況に照らして判断するほかない. という現状に対して、﹁被保険者としてもどの程度履行したならば損害防止義務を果たしたことになるか不明確であり、保険の. ω 一七六頁)、. 種目によっては、約款で損害防止義務の内容をある程度具体的に規定すべきであ﹂るとの見解や(石田・前掲注. ﹁被保険者は、可能の範囲内で、保険者の指示にしたがって損害防止行為をすべき﹂との指摘がある(野津・前掲注側二五六 頁 ) 。. 6 9. ( 5 0 ).
(24) またイタリア民法典一九一四条四項は、保険者の損害防止活動への関与は認める (Z片oECS35EwむととSEN芯ミ・冨﹁. 。. ]山口O H C白?日)仰向・ ]54). 唱. M怠・ N ω ) " 同(日ロ紛∞のE E停o r mo ・(﹃ロdm 司 Em ・ N品。・ N ω )仁河島 H・ 州側∞のE B停 OJm H mo 司E 二凶・ ・(﹃ロ唱. 咽. OU・ 巳. f. 匂問問・. 530. N怠 PNew 一見(日ロ例∞のE E停o mo d司∞E m ・ ・(﹃ M K H 0・ M ω )十同門吉停o MW ∞のE B mo・(﹃ロd司∞在咽 m ・ PMω)ゆ開門山口・ピ∞・ 停0 MW ∞のE B w m w mo 4E ・ ・(﹃ 司 この点につ∞ いては、民法典一九一四条四項をもって保険者の損害防止義務への関与を認めているイタリアでも、同様に解す る。同国では、保険者は被保険者によって行われるべき仕事に関与し指示を与え、被保険者がその指示にしたがう場合には、同. c g 旬5 じく民法典一九一四条一項に規定する損害防止義務を履行したとみなされる ( 。 巳噌. 司. N h E・ N ω )ゅ一回門日ロ側∞。 ESF04ωE m-mo ・ ・(﹃ロ-. ω. N怠・ N ω )︹同門日ロw 州 ∞ のEEF04ω u m m W・O ・(﹃D 司E 木村栄一博士は、この点について、﹁わが商法が損害防止義務を定めながら、その違反の効果について何ら規定していないこ とは片手落ちであり、立法論としてはまず第一にこれに関する規定をおくこと﹂とその重要性を指摘したうえで、﹁義務違反を. 同一二九頁。 保険約款では損害防止義務とともにその違反の効果についても規定をおくのが通例となっているが、例外的に義務のみ定め る約款も存在する(古瀬村邦夫﹁損害防止義務ーーーその立法上の問題点││﹂損害保険事業総合研究所編﹃創立四O周年記念. 故意による場合と重過失による場合とでその効果を異にすべき理由は特にないと思う。故意または重過失による場合として、 両者に同一の効果を与えて差支えない﹂とする(木村栄一﹁損害防止義務に関する商法六六O条の規定について﹂吉永栄助編 ﹃田中誠二古希記念現代商法学の諸問題﹄所収二二一頁(千倉書房、一九六七年))。. ω. ω ω. ω. 損害保険論集﹄所収二一二i一二三頁(損害保険事業研究所、一九七四年))。 古瀬村・同一二三頁。 損害保険法制研究会編・前掲注 六五i六六頁。 州川西島梅治教授は﹁保険事故の発生にともなう防止義務者の精神的動揺による不注意を考慮すると、解釈論としても軽過失によ るものを除くという改正試案の立場が妥当である﹂としている(西島・前掲注側二O九頁)。. - 7 0. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.
(25) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. 仰そのようななかにあって、イタリア民法典一九一五条一項は﹁故意に通知または損害防止義務を履行しない被保険者は損害填. MM. 江 戸h G N P J N o - 同 宮 口 自5HUE-umm・出斗)。. 補を請求する権利を失う﹂旨規定し、故意による不履行の場合にのみ、被保険者の保険金請求権が失権(含S含 自 己 す る と 定. 1. 唱. 主 。 -Fwp み己九SSN芯ミ ∞⑦円 mFO∞Sユ める (CmogD ggロ自5 0 ︿耳切片F O ooE54NWω8 同 4m-・回の国・。 W 門 H 戸 H H 円 ω 問 ・ N A E ∞)仁同門吉同州∞のEB-wod司 mEwmw-mo ・ ・(﹃ロ - M N A E N ω )糧問門田口側∞。EEFod司∞E m m W・O ・(司ロ-. 第三章. 損害防止費用負担義務と損害防止費用不担保約款の有効性. 保険者の損害防止費用負担義務. -71. W 削J N包-mH5Fm由国︿︿0 ・ N ω )仁同(日ロ-NS例制∞の在日距o w mo d司∞在唱 h ・ ・(﹃ロ∞)岨一回門日ロ-N8・ wm-mo M W ∞οEB停0 4ω 司E ・ ・(﹃ロ - M ドイツ保険契約法六条もまた、契約上の義務違反について同様に規定している(仰∞︿︿の)。. ω. 第一節. ドイツ保険契約法は、同法六二条に定める保険契約者の損害防止義務に対応して、続く六三条において保険者にそ. の費用負担を義務づける旨規定する。同条によれば、保険契約者は保険者に対して、六二条に定める損害の防止また. は損害の拡大防止義務の履行において、保険契約者自身が支出した費用について償還請求権を有する。右規定は、. が国商法六六O条 一 項 を は じ め と す る 各 国 制 定 法 と 同 様 、 保 険 契 約 者 が 損 害 を 防 止 し 、 軽 減 す る た め に 支 出 し た 費 用 については、保険者にその費用を填補する義務を課す損害防止費用負担義務である。. この六三条に定める保険者による損害防止費用償還は、前条に規定する保険契約者の損害防止義務の対をなすもの. わ.
(26) 仰. として理解されている。すなわち保険契約法六三条をもって保険者に損害防止に要した費用を負担させることによ. 納. り、公平な利益調整を図っているのである。保険者は、原則的に保険契約者によって実施される損害防止または軽減. 措置によって利益を有していることから、右損害防止または軽減措置に対する費用を負担しなければならない。. 保険契約者による損害防止または軽減のための行為について、 その費用は負担されなければならない。たとえ結果. がでなくとも、保険契約者は保険事故が発生した際、保険契約法六二条に定める損害防止義務において、保険契約者. 自身に期待されている行動をとる。したがって保険者は、保険契約法六三条一項第一文に定めるところにより、同六. 二条一項によって発生する損害防止義務の範囲で、保険契約者が当然に必要であるとみなした費用を支払わなければ. ならない。なおかつ保険契約者が当該情況により費用支出の必要があると当然に考えた場合には、右費用の償還請求. ω. 権は損害防止または軽減措置の結果が得られなかったとしても失われるわけではない。. 保険契約法六三条にその償還が要求される費用には、保険契約者が、適切に損害の防止または軽減措置を講じた結. 果として蒙った財産の減額分すべてが司評価されると同時に、また意図せぬ財産損害もここにふくまれる。損害防止費. 削刷. 用に対するこのような解釈は、賠償請求権における一般原則にいう費用概念の基準を拡張した結果といえる。目前に. 迫った損害を回避し、あるいはその損害を最小限にとどめるために支出された費用は償還される。そしてこのこと は、ドイツ民法典六七七条に定める事務管理理論に説明される。. 保険者によって償還されるべき損害防止費用であるためには、保険契約者が講じた損害の防止または軽減措置が損. 害を回避し、あるいは損害を減少させるという目的に客観的に役立つものでなければならない。保険契約者の側の損. 害の防止または軽減に尽力するという意思(同ZEロ哲三口)は、ここには必要ない。たとえば保険契約者がその物が. - 72-. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.
(27) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. 付保されていることを知らなかった場合、 そしてそれを知らずに損害の防止または軽減に努めた場合にもまた、保険 契約者はその費用に関して償還請求できる。. 保険契約者が講じた損害の防止または軽減措置が損害を回避し、あるいは損害を減少させるという目的に客観的に. 役立つものでなければならないとする一方で、保険契約者が主観的に救助の意図をもって行為をする場合、しかしな. がら客観的には保険契約法六二条を根拠とする損害防止義務を基礎づける情況は存在しない場合もまた良しとされう 帥. ふ。同法六三条によって処理される事故において、この規定に関しては、保険契約者が費用を当然に必要であるとみ なすかどうかが問題となる。. 保険契約法六三条一項に規定する、同六二条にしたがって保険契約者によって支出された費用は、保険契約者が当. 該保険事故の情況に応じて、当然に必要であるとみなした場合にかぎり償還されうる。ただしここで注意すべきは、. 損害の防止または軽減措置に対する結果の見通しという点において重大な過失による誤りがあった場合には、保険事. 故の存在あるいは当該事故が間近に迫っていることを顧慮しても損害防止費用の償還請求は認められない。. さらに保険契約法六三条にいう費用の償還を請求しうるための客観的要件として、﹁相当性の基準(︿∞吾郎-E2E 位. ZZW江けの江口自)﹂を充たす必要がある。請求原因が第三者による損害防止費用であり、加えて右費用が当然に必. 回目向日向. 要であるとみなすことのできない場合にもまた、その償還請求は問題とならない。これに関しては過失の分類が問題 となるのであり、 その結果として代理人の責任の問題は生じない。. また保険者による損害防止費用の負担限度額についても、保険契約法六三条一項は規定している。同項第一文によ. れば、﹁保険契約者が六二条にしたがって支出した費用は、保険契約者がその事情において支出を必要としたものであ. l. 7 3-. 一.
(28) る限り、その効果がなかったときにおいても、保険者の負担とする﹂。右規定がその効果いかんにかかわらず、損害防. 止費用を保険者負担とする点は、わが国商法六六O条一項を含め、各国制定法も同様である。. ところが、同項は続く第二文において、﹁保険者は、その指図にしたがって支出された費用は、それと他の填補額と. の合計額が保険金額を超えるときにおいても、これを填補する﹂旨規定する。そのため、ドイツでは保険者の損害防. 止費用の負担限度額については、六三条一項第一文と第二文との関係から、保険者側からの指示なくしてなされた損. 害の防止または軽減措置に対しては、原則的に、損害填補額と損害防止費用との合計額が保険金額を超過する部分に 側. ついては、保険者によって負担されないと解されている。 つまりドイツでは、損害防止費用と損害填補額の合計が保. 険金額を超過しても保険者に全額負担させるわが国やイタリア、台湾などおおかたの制定法とは異なり、保険者によ. る損害防止費用の負担は、右費用と損害填補額とをあわせて保険金額の範囲までに制限される。. そのうえで、保険者側からの指示にしたがって支出された損害防止費用に限定して、損害填補額と損害防止費用と. の合計が保険金額を超過する場合も保険者負担とする。これはドイツ保険契約法が六二条一項第二文に、損害の防止. または軽減に際して、保険契約者に事情が許す限りは保険者の指図にしたがうよう規定しているためであり、あくま でも例外的な処置といってよい。. 帥叫. ドイツ保険契約法六三条一項と同じく保険者による損害防止費用負担額を制限する立法例に、中国保険法が挙げら. れる。右法はその限度額について損害填補額と損害防止費用の合計額が保険金額を超過しない範囲とする点でも、ド. イツ保険契約法と同様の立場をとる。しかしながら、中国保険法は、保険者による指図についてはとくに規定してい. ない。したがって同国では損害防止義務者が右義務履行にあたって保険者の指示を仰ぎ、 それにしたがって損害防止. - 74-. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.
(29) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. 費用を支出した場合も、 その費用は損害填補額とあわせて保険金額の限度でしか負担されないことになろう。. 一部保険の場合には、保険契約法六三条二項により同五六条および五七条が適用されることになる。その結果、保. 険者の損害防止費用負担については、保険契約法五六条および五七条に定める割合にしたがって決定されることにな る。各国制定法にも、同様の規定が見受けられる。. ただし、保険契約法六二条一項第二文に損害の防止または軽減措置について保険者による指図があった場合の損害. 間叫. 防止費用負担をとくに規定するドイツにおいて、同法六三条二項の一部保険に関する規定がまた保険者の指示の結果. 同 叩. として生じた費用にも適用されるのかどうかははっきりとしない。ここに一部保険の場合、保険者に保険契約法六三. 条一項二文の適用が禁じられるのならば、同法五六条が適用されなければならないことになるであろう。 m w. 保険契約者が損害防止費用として必要な金額を請求した場合には、ドイツ保険契約法は保険者に右費用を前払いす. るよう義務づけている。同法六三条一項第三文に規定する。右規定と同じく、保険者に対して損害防止費用の前払い. を認める立法例としてはイタリア民法典一九一四条五項がある。両規定に共通するのは、ともに損害の防止または軽 減行為に対して、保険者の指示あるいは関与を認める旨規定文言に明示している点である。. わが国をはじめ、各国の立法例をみても、保険者の損害防止活動への関与およびそのための費用について定めた規. 定は皆無といえる。しかしながら、保険者が損害防止活動へ積極的に関わり、 その防止あるいは軽減に努めようとす ることを否定する学説はなく、実際はむしろそれを支持する傾向にある。. - 75-.
(30) 第二節 損害防止費用不担保約款の効力と普通取引約款規制法九条. 保険者の損害防止費用負担義務を規定したドイツ保険契約法六三条は、一連の強行規定でもなければ片面的強行規. 定でもない。すくなくとも右規定が片面的強行規定でないことは、同法六八 a条をもって明文化されている。同条が. ﹁第五一条一項、二項、第六二条、第六七条および前条の規定を保険契約者の不利益に変更する合意は、これを援用. 附岬. することはできない﹂旨規定する以上、保険契約当事者等による損害防止費用負担に関する契約内容に、法が特定の 修正あるいは制限を加えることは最初から認められない。. しかしながら、保険契約法六三条に定める保険者による損害防止費用の償還を認めることは、ドイツ普通取引約款. 規制法九条二項一号の目的とするところの法規定の本質的基本理念にそうものと解される。ここに同国普通取引約款. 規制法九条は、同一項﹁約款中の条項が信義誠実の命ずるところに反して約款使用者の契約相手方に不当に不利益を. 約款中の条項が次の各号に該当する場合には、疑わしいときは、その条項は不当に不利益を与えるものと推. 与える場合には、その条項は無効である。 二項 定される。. 法規定と異なる条項が、 その法規定の本質的基本理念と相容れないとき、または、. 条項が、契約の性質から生ずる本質的な権利または義務を、契約目的の達成が危殆化されるほどに制限する とき﹂と規定する。. 保険保護が保障されている保険契約者は、損害の防止および軽減措置に費用の支出がともなう場合にも、保険契約. 法六二条二項によって実現可能なかぎりは右措置を実施することを強制される。したがって保険契約者は、保険者に. - 76-. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.
(31) ドイツ保険契約法六三条と普通取引約款規制法. よって填補される実損害に加え、損害を防止し軽減するための措置をとり続けなければならない。経済的視点から. は、損害防止費用は法律上﹁主たる損害の別の形態 P Ro-BmE向。﹃25品。 ω出mE古宮岳山宏5)﹂として現出し たものであり、これらの填補を保険者が引き受けているにすぎない。. とはいえ、ドイツ保険契約法六三条が強行規定でないことから、保険契約者への損害防止費用の償還はあちこちで. 拒絶されている。保険契約者に保障されている保険保護は、結局のところ、経済的には減じられていることになる。. いずれにせよ、ドイツ保険契約法六三条一項に定めるところと相反する保険約款規定については、普通取引約款規. 制法九条二項一号と比較、検討されなければならない。しかしながら、保険約款による規定が同法九条二項一号に定. める法規定の本質的基本理念と相容れない場合に、右規定を無効とするのか否かには疑問が残る。. たとえば一部保険のように損害防止費用の償還が相応に減じられている場合、これらの趣旨は両立しないというわ. けではない。それというのも一部保険における損害防止費用の償還の縮減は、保険契約法六三条二項によってもたョり. されたものだからである。また損害防止費用の前払いについて定める同条一項第三文もまた、普通保険取引約款規制. 刊岬. 法九条に違反しなくとも、右規定は法規定の本質的基本理念には当然には属していないので例外となりうる。. これに対して、保険契約法六三条の規定は、 やはり保険約款による合意にもとづいては変更しえない。損害防止費. 閉山吋. 用の償還責任の有無については、ドイツ民法典二四二条および二五四条二項第二文においても規定される信義誠実の. 明叫. 原則が問題となる。かつ損害防止費用の償還は一般的には、債権法に、とりわけ保険契約法に属する。それゆえ、保 険契約者はこの点について、普通取引約款規制法九条二項一号の保護を受けることになる。. その結果、損害防止費用の償還請求権の排斥または重大な制限は、無効である。保険契約者の損害防止費用の償還. 77-.
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