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<判例研究>常習窃盗罪における一事不再理効・形式裁判における訴因の拘束力--最三判平成15年10月7日刑集57巻9号1002頁

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(1)常習窃盗罪における一事不再理効・形式裁判における訴因の掲束力. 常習窃盗罪における一事不再理効・ 形式裁判における訴因の拘束力 一一最三判平成 1 5年 1 0月 7日刑集 5 7巻 9号 1 0 0 2真一一. 辻. 本. 曲. 央. 事実の概要. 本件は,被告人が単独又は共犯者と実行した複数の窃盗罪の一部につい て単純窃盗罪で有罪判決が下され,確定した後,改めて同時期に実行した その余の事実についてやはり単純窃盗罪で公訴提起された事件であるが, その際,前訴と後訴の公訴事実は全体として実体法的には常習特殊寄盗罪 の関係にあり,一事不再理効は公訴事実の同一性(単一性〉が認められる 範囲に及ぶという克解を前提にすると,前訴の確定によりいわばー罪の一 部について「確定判決を経た j ことになり,後訴については免訴判決によ り手続が打ち切られるべきではないか,という点が問題となった。事実の 詳細は,以下のとおりである O 被告人は,平或 1 2年 4丹 1 4日,立J I I簡裁〈未公刊)より,平成 1 1年 1丹 から同年 4丹にかけて実行された l件の窃盗罪及び 3件の建造物侵入罪を 惇う窃盗罪により存罪判決を受けた(懲役 1年 2月〉。右判決は,平成 1 2年. 5月初日に確定したが,その後,被告人は,改めて平成 1 0年 1 0月から 1 1年 8月にかけて実行された 2 2件の窃盗罪又は建造物浸入罪を伴う窃盗罪によ り起訴された。第一審(東京地八王子支判平成 1 3年 G月 2 8日刑集 5 7巻 9号. 2 8 7(1 2 4 )一.

(2) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第. 3号. 1 0 1 8頁 i こ搭載)は,再種の事例について一事不再理効を認めて免訴判決を 9年 1月2 4日判時 1 1 3 6号 1 5 8頁を引用し免訴判決を求 下した高松高判昭和 5 める被告人側の主張を退け,公訴事実どおり有罪判決を下した〈各々につ いて併合罪関係を認定し懲役 2年〉。もっとも,第一審判決は,本件捜査の 経緯において,検察官は確定裁判の相当以前から被告人両名には多数合窃 盗の余罪があることを察知していながら,余罪の捜査を進めることなく捜 査すべき事件を事実上放置していたという点について, i [ 検察官は]本来 は適正迅速な捜査を行って,同時審判を求めることにより,被告人らに不 剥益を蒙らせることを避けるべき責務があることが明らかで、あり,この点 において,検察官側には厳しい反省が求められる j と指摘している O その. 4 年 3丹 1 5日高飛集 5 5巻 1号 1 0頁〉でも原審の 後,第二審(東京高判平成 1 判断が維持されたため,被告人側は,原判決及びそれが支持する一審判決 は苗出高松高判昭和 5 9年の判断と矛居するものであるとの理吉(刑訴法4 0 5 条 3号)で上告を提起した。最高裁は,以下のように判示し,原判決と矛. 震する右高松高判昭和 5 9年の「判例を変更し J(刑訴法4 1 0条 2号),原判 決を維持して,被告人側の上告を棄却した。. 判決要旨. 「常習特殊窃盗罪は,異なる機会に犯された別儲の各窃盗行為を嘗習性 の発露という面に着 Bしてー罪としてとらえた上,刑罰を加重する趣旨の 罪であって,常習性の発露という面を除けば,その余の面においては,同 罪を構成する各窃盗行為相互関に本来的な結び付きはな L、。したがって, 実体的には常習特殊窃盗罪を構成するとみられる窃盗行為についても,検 察官は,立証の難易等諸般の事情を考慮し,常習性の発露という面を捨象 した上,基本的な犯罪類型である単純寄盗罪として公訴を提起し得ること. 2 8 8(123)-.

(3) 常習窃盗罪における一事不再理効・形式裁判における訴犀の拘束力. i ま,当黙である。そして,実体的 i こは常習特殊窃盗罪を講戒するとみられ る窃盗行為が単結窃盗罪として起訴され,確定判決があった後,確定判決 前に犯された余罪の窃盗行為〈実体的には確定判決を経由した窃盗行為と 共に一つの常習特殊窃盗罪を構成するとみられるもの)が,前同様に単純 窃盗罪として起訴された場合には,当該被告事件が確定判決を経たものと みるべきかどうかが,問題になるのである o (原文改行〕この問題は,確 ) の訴因及び確定判決後に 定判決を経由した事件(以下「前訴j という 0. 超訴された確定判決前の行為に関する事件(以下「後訴」と L寸。)の訴 罰が共に単純窃盗罪である場合において,再訴因間における公訴事実の単 一性の有無を判断するに当たり,右両訴菌 i こ記載された事実むみを基礎と して両者は併合罪関捺にあり一罪を講成しないから公訴事実む単一性はな いとすべきか,それとも,右いずれの訴因の記載内容にもなっていないと ころの犯行の常習性という要素について証拠により心証形成をし,両者は 常習特殊窃盗として包括的ー罪を構成するから公訴事実の単一性を書定で きるとして,前訴の確定判決の一事不再理効が後訴にも及ぷとすべきか, という問題であると考えられる o (原文改行〕思うに,訴因説更を採用した 現行刑訴法の下においては,少なくとも第一次的には訴因が審判の対象で あると解されること,犯罪の証明なしとする無罪の確定判決も一事不再理 効を有することに加え,前記のような常習持殊窃盗罪の性質やー罪を構成 する行為の一部起訴も適法になし得ることなどにかんがみると,前訴む訴 因と後訴の訴因との間の公訴事実の単一性についての判断は,基本的に は,苗訴及び後訴の各訴因のみを基準としてこれ与を比較対照、することに より行うのが相当である O 本件においては,前訴及び後訴の訴因が共に単 純寄盗罪であって,再訴菌を通じて常習性の発露という面は全く訴因とし て訴訟手続に上程されておらず,両訴因の相互関係を検討するに当たり, 常習性の発露という要素を考慮すべき契機誌存在しないのであるから,こ. -2 8 9( 1 2 2 ).

(4) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻第 3号. こに常習特殊窃盗罪によるー罪という観点を持ち込むことは,相当でない というべきである O そうすると,別値の機会に犯された単純窃盗罪に係る 両訴因が公訴事実む単一性を欠くことは明らかで、あるから,前訴の謹定判 。 、 決による一事不再理効誌,後訴には及;まないものといわざるを得な L 〔原文改行〕以上の点は,各単純窃盗罪と科荊上一罪の関係にある各建造物 浸入罪が併せて起訴された場合についても,異なるものではな~ ' 0 (原文. 改行〕なお,苗訴む訴因が常習特殊窃盗罪又は常習累犯窃盗罪〈以下,こ の両者を耕せて「常習窃盗罪j という。)であり,後訴の訴密が余罪の単 純窃盗罪である場合や,逆 i こ,前訴の訴因泣単純窃盗罪であるが,後訴の 訴菌が余罪の常習寄盗罪である場合には,両訴因の単純窃盗罪と常習窃盗 罪とはー罪を構成するものではないけれども,両訴因の記載の比較のみか こは常習窃盗罪のー罪 らでも,両訴因の単純窃盗罪と宮習寄盗罪が実体的 i ではないかと強くうかがわれるのであるかち,訴因自体において一方の単 耗窃盗罪が他方の常習窃盗罪と実体的に一罪を構成するかどうかにつき検 討すべき契機が存在する場合であるとして,単純窃盗罪が常習性の発露と して行われたか否かについて付随的に心証形成をし,両訴因関の公訴事実 の単一性の有無を判断すべきであるが(最高裁昭和 4 2年(あ)第 2 2 7 9号同. 4 3年 3月2 9日第二小法廷判決・刑集2 2巻 3号 1 5 3頁参照),本件は,これと 異なり,諒訴及び後訴の各訴因が共に単純窃盗罪の場合であるから,前記 のとおり,常習性む点につき実体に立ち入って判断するのは棺当ではない というべきである。 j. 研 究. 1 . 常習特殊窃盗罪 本件は,前訴と後訴の公訴事実における一事不再理効の範囲が争点と. - 290(21).

(5) 堂習寄盗罪における一事不再理効・形式裁判における訴盟の拘束力. なったが,実体法的には常習〈盗犯等防止法 2条[常習特殊寄盗罪]及び. 3条〔常習累犯窃盗罪])としてー罪の関係にあると評悟しうる複数の窃 盗罪(又泣建造物侵入罪を伴う窃盗罪)が前訴及び後訴において各々単純 窃盗罪として併合罪の関孫において公訴提起されたものである。そこで, まず,実体法的観点から,常習特殊窃盗罪の意義を確認しておこう O 本件で問題となった常習特殊窃盗罪は,. r 常習として j ①菌器を携帯す. る,②二人以上が現場で共同する,参門戸等を損壊する等の方法で人の住 居等に侵入する,④夜間に人の住居等に侵入するという方法により窃盗を 実行した場合,. 3年以上の懲役に処するものである〈法定刑は,その下隈. において,複数の単純窃盗罪を併合罪処理する場合よりも重い〉。法律上 列挙された 4つの方法む多くは,旧 7 fIJ法の加重的強窃盗罪 ( 3 6 8条以下) の構成要件に定められていたものであるが,本規定詰,該詩定の危険な方 法による窃盗等が常習的に行われる場合を構成要件として法定したもので ある O 本規定について,罪数論上,併合罪として理解する見解(1)も存する が,改正予司法草案 332条のような「……罪を犯した者が,常習者であるとき」 という規定形式であればともかく,現行規定のように「常習として……の 罪を犯したる者j という表現においてはこれを併合罪と理解することは国 難であり,通説的見解@は,いわ捗る集合犯として告括ー罪む関係にある ものと理解している。 剖えば,. r 数留の窃盗行為が常習としてなされた場. 合には,その全部は包括して一個の常習犯をなすものであり,そのー掘の 常習犯の中間に別種の罪の確定裁判が介在しても,そのためにその常習犯 ( 1 ) 青梅文雄『犯罪と証明 J1 5 3頁 ( 1 9 7 2 年,存斐閣),搾谷靭雄「大泥棒法縞を 潜る J判タ 5 3 2号 6 9夏(19 8 4 年 ) 。. ( 呂. 田藤重光『刑法縞要各論・第 3販 J6 0 0衰(19 9 0年,部文社)0 なお,鈴木茂 調『璃法総論[犯罪論J J2 5 5頁 ( 2 0 0 1年,成文堂〉は,集合犯は法益及び行為 の接点において数罪的性格をもつもむであり,位の包括ー罪とは裂留の吟味が 必要であると述べる。. -2 9 1(120)一.

(6) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻第 3号 が二個の常習犯に分割されるものではな Lリ,また,その場合「一舗の常 習犯が別罪の裁判確定後 i こ終了したりであるから,その終了時を基準とし て璃法 4 5条の適用については,その常習犯は別罪の裁判確定後の犯罪」で あり,右別罪との関で併合罪の関係を構成するものではない叱また, 盗行為が常習的に為され,. r 窃. しかもその聞に介在する単純窃盗行為もその常. 習的性癖の発露として為された場合にはその単純窃盗行為は常習詩殊窃盗 4 ) 。なお,本罪の常習性は, 行為に吸収せられてー罪として」評価される (. 本来は行為者の属性(5)であるが,本罪においては行為の形慈,すなわち犯 罪手口にも関連するものと理解されているお)。 以上のような常習特殊窃盗罪について,訴訟法上,以下のような問題が ある O 前述のとおり,本罪における「常習性」は,構成要件要素であるた め,当然ながら厳格な証明によらなければならず,常習性を行為者の震性 と理解する鳶提からは,そお認定において「具体的な人聞に内在する人格 の外部的表現とみられる諸々の情況事実jによりつつ,. r 通常は幾つかの情. 況事実を総合して J ,裁判所の自由心証における論理財・経験賠に期った 合理的推論から判断されなければならないへその欝,認定に患いられる ( 3 ) 最決昭和 3 9年 7月 98剤集 1 8巻 6号 3 7 5頁 。. ( 4 ) 福岡高宮崎支持昭和 3 3年 4月訪日高7 詩集 1 1巻 3号 9 7頁 。. r. r. 「行為者震性説J(冨藤・前掲注( 2 ) 璃法網要各論J3 5 5頁地), 行為麗性説J 〈平野龍一 F 璃法総論 IJ4 1 9頁(19 7 5年,有斐閣)地), r 行為者及び行為属性 説J(大塚仁 F 刑法概説総論・第 3版増捕版J1 3 7頁 ( 2 0 0 5年,有斐閣))が対立 しているが,最決昭和 5 4年1 0月268刑集3 3巻 s 号6 6 5頁では, 雷習性とは,賭 博を反覆累行する習霧をいい,行為者の属性として認められるものであるとい うのが,確定した判例であり,ここに習癖とは,性癖,習慣化された生活ない 行為者属性説」 し行動傾向,人格的,性格的な需向などをいう j と判示され, r が支持されている。 大塚仁 F 特別刑法J9 5頁 0959年,存斐謁),平井義丸 f 常習累犯寄盗等をめ ぐる罪数関掠と既判力の範囲について」研修 4 7 9号 1 0 7頁 ( 1 9 8 8年 〉 。 ヴ} 谷村允裕「嘗習犯罪における書習性J小林・香域編『刑事事実認定下巻J4 4 5 夏 0992 年,判例タイムズ社〉。 { 弓. r. 。. -2 9 2(1 1 9)一.

(7) 常習窃盗罪における一事不再理効・形式裁判における訴因の拘束力. 資料として,(1)蔀科前震〈前科前墜の自数,前科との時間的牽連関孫,前 科の謹類・内容),②犯罪事実(犯罪の舘数,犯罪の動機・態様,犯罪の 主体),③習癖の発現(ただ一回の行為であっても,常習犯罪の成立を妨 げな Lすといったものが想定されるが,常習特殊寄盗罪の構成要件には具 捧的行為が列挙されているため,必然,特に③の要素が重課されることに なる。なお,本罪における常習性誌,窃盗自体の常習性だけでなく,その 方法についても常習性が認められなければならないと理解されている尺. 2 . 同種先例と問題点の整理 前述のとおり,常翌[特殊]窃盗罪は,複数の寄盗行為をその常習性の 発露という点に着巨して実体法上一罪として捕提する狸罪類型であり,右 常習性を i 徐いては各窃盗行為相互に本来的な結びつきが欠けるため,個別 の窃盗行為が単純窃盗罪として起訴されるという場合が生じうる叱この ような場合,前訴の公訴事実と後訴の公訴事実と i ま,実体法上単一のもの として評揺されうることから,一事不再理効による後訴の遮断如荷という 問題が生じる。このような問題について,従来,以下のような裁判例が見 られる O. ( 1 ) 公訴事実において常習性が指摘されている場合 最 判 昭 和4 3年 3月2 9日刑集2 2巻 3号 1 5 3夏は,前訴において被告人が実 行した複数の窃盗行為の一部について単耗窃盗罪で有罪判決が下され,確 定した後,後訴においてその余の窃盗仔為について常習累犯窃盗罪で公訴 提起されたという事例である。第一審(接本地郭昭和 4 2年 5月108刑 集 2 2 巻 3号 1 5 8頁に掲載)では,右公訴事実どおり有罪判決が下され,控訴審. (福間高事j 昭和 4 2年 9月 98璃 集 2 2巻 3号 1 6 2 頁に掲載〉でも量飛が変更さ. ( 8 ) 前出福調高宮崎支判昭和3 3 年(前掲注ω 。 〉 ( 9 ) 長沼範良「本件判解J1 f/J訴法百選第 8販 2 0 4頁 ( 2 0 0 5年 )0 -2 9 3(118)一.

(8) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻第 3号. れた以外は第一審の判断が維持されたため(判決文を見る限り,一事不再 理効による免訴の成否は争点とされていな Lサ 上 告 が 提 起 さ れ た 。 最 高 裁 は,前訴確定判決以前に実行された窃盗行為について,それちの行為は蔀 訴で審判された行為との閣で実体法上ー罪を講戒し,一事不再理効による 免訴判決が下されるべきであると判示した(偉い確定判決以後に実行さ れた公訴事実だけで原判決む量刑を十分基礎付けるため,原判決を破棄し なければ著しく正義に反するとはいえないとして,上告は棄却された〉。 この昭和 4 3年判決辻,本判決のなお書きでも言及されているとおり,語 訴と後訴の「再訴国の記載の辻較のみからでも,両訴茜の単純窃盗罪と常 習窃盗罪が実体的には常習窃盗罪のー罪ではないかと強くうかがわれる」 事前であり,. r 訴因自体において一方の単純窃姿罪が地方の堂翌窃盗罪と. 実体的にー罪を構成するかどうかにつき検討すべき契機が春在する場合で ある」ことから,. r 単純窃盗罪が常習性の発露として行われたか否かについ. て付括的に d心証形成をし,両訴国間の公訴事実む単一性の有無を判断」さ れたものであると理解される O. ( 2 ) 公訴事実において常習性が指摘されていない場合 これに対し,高松高判昭和 5 9年. 1月2 4日暫時 1 1 3 6号 1 5 8頁は,同じく前訴. において被告人が実行した複数の窃盗行為の一部について単純寄盗罪で有 罪判決が下され,確定した後,後訴においてその余の寄盗行為〈全て確定 判決裂前に実行されたもの〉について再び単純窃盗罪で公訴提起されたと いう事例である O つまり,こちらは,藷出最判昭和記年とは異なり,前訴 の公訴事実にも,また後訴の公訴事実にも常習性が指摘されていなかった という事例である G 高松高裁は,以下のように判示し,この類型において も一事不再理効による免訴判決が下されるべきであると判断した。すなわ 弘前訴の公訴事実と後訴む公訴事実とはその全体において雪習特殊窃盗 罪を講成し,. r 本件起訴の窃盗行為は t ¥ずれも確定判決前の行為である -2 9 4(117)一. O.

(9) 常習窃盗罪における一事不再理効・形式裁判における諒医の拘束力 そうすると,本件起訴事実については,一罪の一部につき既に確定暫決を 経ていることになるから,免訴さるべき筋合である。〔原文改行〕もっと も,この結論に対しては,換察官の主張の知く二つむ問題がある O 一つは, 確定判決が単純窃盗であるという点である O まず,薩定判決で単純窃盗と 認定されたものを後訴において業習骨殊窃盗と認定するのは,確定判決む こ起訴され 拘束力を無視するのではないかということについていえば,後 i た事件について確定判決を経ているか否かということは,その事件の公訴 事実の全部又は一部について既に判決がなされているかどうかの問題で あって,判決の罪名等その判断内容とは関係がなく,従って確定判決の拘 束力を問題とする余地はな ~'o ……次に,本件の確定判決における単純窃. 盗の審理において常習特殊窃盗として審判を求めること誌できなかったの であ払訴追が事実上不能であった場合にも,同じー罪の一部についての 確定判決の効力を及ぼすことは不当であるとの主張についてみると,なる ほど右のような場合にまで確定判決の効力を認めると,ときに犯人を不当 に利することにもなり,正義の感情にそぐわぬ場合があることは否定でき な L、……しかしながら反対に,検察官主張のように,訴追の事実上の不 能の場合に既判力が及んでこないとすると,その例外的基準を其捧的に定 立すること自体が甚だ思難であるうえ,仮に基準が設けられでも,それを 具体的に適用するにあたって一層の圏難を招来せざるを得な~ ¥0. すなわ. ち,当該犯行及びそれと被告人とを結びつける証拠が捜査官側にどの程変 判明していたか,又知り得る可能性があったかを中心に被告人の前科, 生活歴,事件に対する撰述の程変,共犯者の有無及びその役割,被害の裏 付の程度,時期,犯行の場所,捜査の態勢等幾多の事'清を探究し総合し, 右基準に適合するか否かを判断しなければならないのであって,かくては 既判力制度の画一性を害し,被告人の立場を不安定ならしめることにな るO ……次に第二の問題は,本件の各窃盗が単純寄盗として起訴されてい 2 9 5(116).

(10) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 3号. ることである。検察官は,裁判所は右む訴因に抱束され,重い常習特殊窃 盗の弄を認定することができないと主張するが,訴国制度の趣言,自的に 照らすと,裁判所は訴菌を超えて事実を認定し存罪判決をすることは許さ れないが,免訴や公訴棄却といった形式的裁判をする場合には訴因に拘束 されないと解すべきで忘る O すなわち,訴因は有罪を求めて検察官により 提示された審判の対象であり,訴因を超えて有罪判決をすることは,被告 人の訪禦の権利を侵害するから許されないが,これに対し,確定判決の有 無という訴訟条件の存否は職権調査事項であるうえ,その結果免訴判決が なされても,被告人の坊禦権を侵害するおそれは全くな Lゆ瓦ら,訴因に拘 束力を認める理由も必要性も存しないのである O このように解さなけれ ば,実体に合せて訴密が変更されれば免訴となるが,そうでなければ有罪 判決になるということになり,検察官の選択によって両極端の結果を生じ させるのは,不合理であって,とうてい容認できず,かかる実擦的な観点 か告も,検察官の主張は採り得ない J 。 ( 3 ) 問題点. 右二判決と本判決との関係から,①一事不再理効の客観的範茜,②前訴 確定判決の拘束力,③訴因の拘束力という点、が問題点として挙げることが できる O 右三点のうち,最判昭和 4 3年((1)類型)と,高松高判昭和 5 9年 及 び本判決 ( ( 2 )類型)とむ間では,前者においては③の観点は問題とならな いのに対い後者においては裁判所の判断に擦して重要な問題となり,か つ,高松高判昭和 5 9年と本判決は,まさにこの③の観点における見解の対 立により結論が分かれたのである C 以下,右三点について若干の検討を行 うことにする O. 3 . 検討 ( 1 ) 一事不再理効の客観的範囲. -2 9 6(1 1 5)一.

(11) 常習窃盗罪における一事不再理効・形式裁判における訴因の拘束力. i.本判決と同様,わが国の判例(1 0 )及び通説締は,一事不再理効む客観. 1 2条)を基準に決定されるものと 的範囲は「公訴事実の同一性J(刑訴法 3 理解している O そして,やはり通説的見解によると, I 公訴事実の同一性j は,公訴事実の単一性と狭義の同一性とに区別され,特 i こ前者は実体法上 の罪数論に従属し,本来的ー罪,評価上ー罪のみならず,耗7fl J 上ー罪(剤 法5 4条. 1項)の関係にある場合 i こも公訴事実の罰一性(単一性〉を基礎材. けるものと理解されている路。このように,一事不再理効の客観的範囲を 公訴事実の同一性,特に公訴事実の単一性によって決定し,右単一性を実 体法の罪数論によって決定する晃解,すなわち「実体法基準説j は,その 基準の明確性という点において護れており,かっ,理論的にも,公訴事実 の同一性・単一性の範毘においては訴因変更による審判の可能性が生じて いることから,すでに被告人はこり範囲において一度危験にさらされたと の評価により,一事不再理効は裁判所の審判が現実に行われた結果として 二重の危設J(憲法 3 9条)の法理に根拠を量くものとす の効力ではなく, I る現在の通説的見解(13)にも適合するものであることから,判例及び学説上 通説的見解として支持されている O 職 最 事j昭和 2 7 年 g月 1 2日芳u 集. s 巻 8号 1 0 7 1頁,最判昭和 3 5 年 7] 31 5日剤集 1 4 巻. g号 1 1 5 2頁0 ( 1 1 ) 井戸田梶『刑事訴訟法要説J2 5 7真 ( 1 9 9 3年,有斐罷),白寂祐司 F 刑事訴詮 法・第 3競 J3 9 5真 ( 2 0 0 4 年,日本評論社),議木茂樹『刑事訴訟法・改訂版』 2 4 1頁 0990年,青林書院),高岳卓爾『子容j 事訴訟法・ 2訂版J2 9 9頁 0984 年 , 青林書院),福井草『璃事訴訟法・第 5綾 J3 6 8夏 ( 2 0 0 6年,有斐関),松屠浩塩 『刑事訴訟法下・新抜橋正版J1 5 1頁 0999年,弘文堂),三井誠「裁判 [3]J 法教 2 7 0 号1 0 5夏 ( 2 0 0 3年〉。 鈴木・前謁注ω f 刑事訴訟法J1 1 4頁,田口守一『飛事訴訟法・第 4版捕正 版 J3 2 7夏 ( 2 0 0 6年,弘文堂入国宮裕 F 刑事訴訟法・薪版J2 0 2夏 0996年,有 斐閣 ) 0 Q 3 ) 鈴木・前掲詮締 F 刑事訴訟法J2 4 0 頁,自口・前掲注位『芳u 事訴訟法J4 5 1夏 , 田宮・前掲注Q 2 ) fIJ事訴訟誌J445頁 , 平 野 龍 -I n f lJ事訴訟法J2 8 2買 0958 年 , 有斐関〉。. 。. n. - 2 9 7(114)一.

(12) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻 第 3号. もっとも,この晃解に関しては,一事不再理効を訴訟当事者,つまり検 察官を後訴遮軒という形で拘束するもむであると理解すると,検察官はこ の一事不再理効の及ぶ範囲においてすでに前訴で同時に処理しておくべき 義務を負っていたとの帰結が導かれることになるが,そのような同時延理 義務む範囲を公訴事実の同一性の範毘に求めるべき根拠は定かではない, つまり,なぜ同時処理が f 可詑Jであれば,直ちにそれが「義務j となる のかという開題が生じる。また,仮に公訴事実の同一性を基準とするとし ても,そもそもその中に単一性の概念を取り込むことは必然であるのか, つまり同時処理義務の範囲が江ぜ実体法によって画されるのかという点に ついて,より合理的な説明が要求される O 1 1 .. 以上i こ対し,学説上,一事不再理効の客観的範盟を公訴事実の同一. 性,特に公訴事実の単一性の誠念と詰切り離して決定すべきであるとする 晃解紬も,有力に主張されている。この見解は,特に実体法基準説による と公訴事実の単一性が問題となる場面において,同説とは異なり,一事不 再理効による後訴遮断の範茜を決定するにあたり実体法上の評髄には拘束 を受けず,訴追倒による同時処理の可能性など訴訟法上の観点から独自に 決定すべきであると主張するものであり, I 訴訟法基準設j と呼ぶことがで 純 青 柳 文 雄 『 刑 事 訴 訟 法 通 論 下 ・ 5訂販j] 4 8 9頁(19 7 6年,立花書房),謹美東. 4 0 5頁 ( 2 0 0 1年,有斐閣),石川才額「観念的競合 0巻 3号 7 5頁(19 6 4 年),棄藤期部『刑 における事件単一評{亜の妥当領域j 日法 3 事訴訟論集~ 1 4 1頁(19 6 5年,有斐語。初出「公訴事実の同一性について J曹時 4巻 B号 2 6頁(19 5 1年)),高田沼正『飛事訴訟の構造と救請~ 5 3頁(19 9 4 年 , 成文堂。初出 f 一事不再理む客観的範盟 ( 2 ) J法 雑2 3巻 2号 2 6 6頁〈臼 7 6年)),田 1年重判 1 9 7頁(19 7 7 年 ) , EB 宮・前掲注紛『刑事訴訟法~ 4 5 5夏 , 司守一・昭和 5 筑題正泰「一事不再理効の客観的範屈についての一考察j 法 研4 9巻 1号 1 8 1頁 0976年),中野目義郎「常習罪と後訴遮断の範囲」新報 9 2巻 1 0 = 1 1=12号 2 3頁 0986年),松本一部『事鰐式演習教室刑事訴訟法J2 1 9頁(19 8 7年,動草書房), 光藤景較『口述刑事訴訟法中・補訂版~ 2 8 6頁 ( 2 0 0 5年,成文堂),横井大三 『璃訴裁判例ノート (4) 公判~ 2 5 3頁(19 7 2 年,有斐閣〉。 洋『璃事訴訟法・新版補訂~. -2 9 8(113)一.

(13) 常習窃盗罪における一事不再理効・形式裁判における訴国の拘束力. きる O この見解は,二重起訴や一事不再理効の範囲如何といった訴訟法上 の効果を検討するにあたり,そもそも実体法に拘束されるべき根拠はない こと,実捧法基準説とは異なり個別具体事例に応じた柔軟な解決が可能で あることに加えて,アメリカ法にみる「強説的併合の原則 J( compulsory. T a t i d e n t i t孟t ) に関 j o i n d e rr u l e ) やドイツ法における「所為の同一性J( する議論錨等諸外国の法制度との比較の観点からも主張されている O もっとも,この訴訟法基準説は,. r 公訴事実の同一性Jを基礎におきつ. つ,併合罪関係にある場合でも,局時処理の可龍性がある場合には一事不 再理効が及びうるという晃解〈片冨的訴訟法基準説)と,公訴事実の同一 性の範囲内であっても,法律上及び事実上の理由から同時処理が不可能で あった場合には一事不再理効は及びえないという見解(純粋訴訟法基準説) とに区別される O それぞれの主張を見るとき,そもそも「訴訟法基準説J として一つの見解にまとめることができるかは留保が必要である O 例え ば,東京地事j 昭和 4 9年 4月 2日判時7 3 9号 1 3 1頁は,実体法上観念的競合の 関係にある酒気帯び運転と無免許運転の事例について,. r 芳j 法5 4条 1項の. いわゆる延断上のー罪の関係にある数罪に関して,確定裁判を経た一部の 罪が簡易迅速な処理を言とするいわゆる交通切符制度の適用を受けたう え,正式の裁判手続でない略式手続によって処理されたものであり,かつ, 被告人が他の罪の罪責を免れるため氏名を詐称する等,検察官において他 の罪をも探知して同一手続で訴追することが著しく菌難であったという事 実が立証されている場合においては,一部の罪についての確定裁判の既判 力は,他の罪については及ばな Lづと判断し,純粋訴訟法基準説として分. 0年 8月 2 7日高飛集 2 8巻 3号 類することができょう O 地方,大阪高判昭和 5. 3 2 1頁は,前訴において実質上処罰する趣旨で量刑の資料として考嘉され 鯨. 辻本典央. f r公訴事実 C 同 一 性 』 概 念 に つ い て (1・未完)J 近 法 53巻 2号 173. 頁 ( 2 0 0 5年〉。. 2 9 9(1 1 2 ).

(14) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 3号. た犯罪事実が後訴において公訴事実として掲記されたという事例につい て,一事不再理効む範囲を公訴事実の同一性の範囲とする晃解を前提に, なおも前訴確定判決における罪となるべき事実とは公訴事実 C 同一性の範 題にはない事実について一事不再理効が認められたことか主,片面的訴訟 法基準説として理解することができょう O 右二判決は,各々訴訟法上の観 点から一事不再理効の範毘を決定する点に共通点が見られるが,その思考 において,薦者が公訴事実の同一性の範囲を限定する可能性を認めるむに 対し,後者は公訴事実の同一性を基礎としつつこれを拡張する方向で検討 していることから,本質的に異なるものと理解することができょう O しかし,いずれにせよこむような一事不再理効の範囲を訴訟の具体的状 況に着目して決定するという見解は,実体法基準説が罪数論への従震とい う点において判断の明確性が確保されたのに対し,訴訟の具体的状況に従 嘉するという基準法非常に不明確なものとなるという批判を受ける O 1 1 1 .. 以上から,一事不再理効の範囲に関して,学説上三つの見解に分類. されることが確認された。このうち,まず,実体法上ー罪の場合 i こ別訴を 許容するかという問題について,実体法基準説及び片面的訴訟法基準説に よると,これは許容されないことになるのに対して,純粋訴訟法基準説に よると,訴訟の具体的状況から同時処理義務が解除されるような場合には 許容される。つまり,例えば,本件で問題となった常習窃盗罪の場合,営 習犯を構或する護数の事実について,純粋訴訟法基準説によるならば,前 訴において一定の事情により同時延理が不可吉きであった事実について後訴 で改めて訴追することも可能となる。もっとも,このような実体法一罪の 関捺にある犯罪の分割という結果を肯定することになる純粋訴訟法基準説 は,実定法上採りえない晃解であると思われる O すなわち,実体法上一罪 の関係にある事実について複数の有罪判決が存在する場合,再有罪判決に おいて科された飛の関係如何という点が問題となるが,このような二個以. 3 0 0(1 1 1)一.

(15) 常習窃盗罪における一事不再理効・形式裁判における訴屈の拘束力. 上の剤の執行に関して,実棒法上一罪の場合には併合罪に関する刑法 5 1条 のような規定がおかれておらず,これにより,実定法上,一罪の関孫にあ る事実について護数の有罪判決の存在は予定されていないといえるからで ある Gao 他方,実体法上複数の罪が成立しうる関係にある事実についてはどう か。例えば,実体法上許合罪の関係にある複数の窃盗罪の一部が前訴にお いて審判された場合,実体法基準説からは,後訴においてその余の事実を 改めて審判することは可詫であるが,訴訟法基準説からは,訴訟の具体的 経過に鑑みて司時処理の義務性が書定されるという場合,前訴で現実に審 判されなかった事実についても後訴で改めて訴追することはできないとい う可能性が生じる O 確かに,複数の窃盗罪が問題となるような場合,仮に 常習性が否定され,実体法上併合罪の関孫にあるとしても,併合罪処理さ れることの被告人の利益だけでなく,多くり共通事項に関する立証の負担 という訴訟コスト等を考慮すると,確定判決以前 i こ実行された犯罪を同時 娃理すべき義務が肯定されることの要請が働く。しかし,公訴事実の同一 世,特 i こ単一性の観点から同時延理義務を検討するならば,公訴事実の同 一性が否定される,つまり訴因変更手続を通じた局ーの手続における同時 延理の可能性が否定される場合,それでもなお同時処理義務を認めること は困難であると思われる O もっとも,右検討の前提として, I 公訴事実の同一性J ,つまり一個の刑 事手続における毘時処理む可能性及び義務の範囲を決定するにあたり,特 に単一性という観点においてそもそも実体法の罪数論に従属するべき必然 法5 1条の存在から実 性はないように思われる O つまり,前述のとおり,東i. Q 6 ) 鈴木茂調『続・刑事訴訟の基本構造上j 3 4 6頁(19 9 6 年,成文堂。初出庁公 訴事実の同一性』再論一一私見への諸批判に応えて」犯罪と璃罰 4号 1頁(19 8 8 年 ) ) 。. 3 0 1(1 1 0 ).

(16) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻 第 3号. 体法上ー留の罪について護数の有罪持決,さらにはそれに対応する複数の 審判は否定されるべきであるとしても,その逆,つまり実体法上複数の罪. 5条以 が成立しうる場合,併合罪処理されることの被告人の和益(璃法4 下)及び手続に付されることの負担ということを考慮するとき,なおも一 留の刑罰,さらにはそれに対応する一個の手続において処理すべき義務を 肯定することは可能であるように思われる O 伊i えば,窃盗教唆(又は帯助〉 罪と盗品関与罪との関係について,実体法上併合罪の関係にあり絹,訴訟 法上も公訴事実の毘一性〈単一性)を否定するのが通説的見解0 8 )である O し かし,窃盗教唆罪から窃盗共同正犯に訴因変更され,さらに盗品関与罪へ の訴因変更は可能であるかという問題を検討するとき,有力な見解峨はこ れを肯定する O この問題は,狭義の局一性の検討に探して当初訴因の掲束 力を認めるかという観点から議論されるものであるが,窃盗教唆罪と盗品 関与罪の再立可詑性,つまり実体法上複数の罪の成立可能性という観点か らは,ここで検討されるべきものと同ーの問題であり,少なくとも結論に おいて,このような訴因変更の態様において足時処理が可能であると理解 されている状況を見ると,端的に両事実の間で訴因変更の可能性,つまり 公訴事実の毘一性を肯定することも可能で誌な L、かと思われる民このよ うな結論においても,あくまで前述むような同時処理されるべき利益が前 提であり,公訴事実の同一性の範囲が無限定になるというものでもないで あろう O 以上の検討から,例えば,前述の例において,窃盗教唆罪の訴因に i 察し て盗品関与罪の嫌疑も判明した場合,客体及び法益主体の同一性など再事. s 号1 4 1 8頁。大塚仁『飛法概説各論・第 3版 ( 2 0 0 5年,有斐麗),昆藤・前掲注包) r 璃法網要各論J6 6 8頁。. 間 最 暫 昭 和2 4年 7月308刑 集 3巻 増 補 版J3 3 3頁. 鱒 最 判 昭 和3 3年 2月 218璃 集 1 2巻 2号 2 8 8頁。 締. 罰宮・苗掲在位『刑事訴訟法J2 0 6頁。. ω『刑事訴訟論集J137頁。. 舗斎譲・菌掲注. 3 0 2(1 0 9 ).

(17) 常習窃盗罪における一事不再理効・形式裁判における訴因の拘束力 実聞の関連性が書定されるのであれば,被告人の手続負担だけでなく,統 一的処理と L、った公的利益の観点からも,訴因の変更(追加〉を認めて一 個の手続で処理すべき義務を肯定することは可能である O 同じく,単純窃 盗罪の訴因に探して同時期,同地区での同種子日による単純窃盗罪の嫌疑 が生じたというような場合,やはり一国的解決の要請から公訴事実の同一 性・単一性を言定することも可詫であるように忌われる。従って,本件に 関しても,仮に前訴と後訴で掲げられた公訴事実の障で常習性が否定さ れ,実体法上併合罪の関係にあると評価される場合であっても,棺互の関 連性から公訴事実の同一性・単一性を肯定し,前訴における同時娃理義務 を前提とする一事不再理効による後訴の遮軒という結論を認めることも可 能であったと思われる O 第一審判決において判示されているように本件 むように少なくとも前訴において公訴事実以外の余罪が捜査機関に認知さ まど不当な結論で れ,捜査もある謹度進められていたような場合に誌,さ i あるとも思われな L 。 、 ( 2 ) 前訴荏定判決の掲束力. 次に,前訴において複数の窃盗行為の一部が単純窃盗罪として有罪判決 が下された場合,その余の窃盗行為を公訴事実とする後訴において,該公 訴事実と前訴における公訴事実との聞で常習ー罪の関係を認めることは, 龍訴確定判決の内容を変更するものであり,その持束力(実体裁判の内容 的拘束力的に反するのではないかが開題となる。この問題について,前述 のとおり,高松高判昭和 5 9 年では,. r 後に起訴された事件について確定判決. を経ているか否かということは,その事件の公訴事実の全部又は一部につ いて既に判決がなされているかどうかの需題であって,判決の罪名等その 判断内容とは関孫がなく,従って確定判決の拘束力を問題とする余地はな L、。」と判示され,また,やはり後訴において一事不再理効を認めた最判 的. 田口・前掲註紛 F 刑事訴訟法J4 4 9貰 。. -3 0 3(108).

(18) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻第 3号. 昭和 4 3年も,結論において右と同様の晃解を前提とするものである O このような実体裁判の内容的拘束力の問題は,従来,. r 実体裁判の場合に. は一事不再理の効力が発生するので,局一事件に関する後訴ははじめから 理論上の意味しかな 逮新され,持束力が問題となる余地はないから j, r L、よ「したがって,問題は,. Z l i事件に対する拘束力を認めるべきかであ. るj(27)と理解されてきた。確かに,右むとおり,同一事件の範囲が明白であ る場合,一事不再理効によりそもそも審判自体が排F まされることから,実 体裁判に関して同一事件における内容的拘束力の問題詰そもそも生じない といえる O しかし,ここで検討されるべき類型のように,そもそも同一事 件の範酉自体が問題となる場合,後訴において実体法上一罪性(公訴事実 の同一性・単一性〉が肯定されるとき,つまり前訴と後訴が詞一事件であ ると判断されるとき,まさに同一事件における内容的拘束力が問題とな るO 前出高松高*,J 昭和 5 9年は,円前訴]判決の罪名等その判断内容とは関 係がな[~. , J jと判示し,薙定判決の内容的拘束力の問題ではないとするが,. 前述した公訴事実の局一性に関する私見けな))によるのであれば格耳目, 公訴事実の毘ー性・単一性を実体法の罪数論に従属して決定するという特 例・通説の見解を前提とすると,後訴において前訴と後訴との間で常習一 罪の関係にあることを認定することは蔀訴における単純窃盗罪で為るとの 認定と矛盾抵触するものであり,内容的拘束力の問題辻生じるというべき であろう. O. その上で,実体判決における内容的拘束力の成否という問題について, 他の事件との関係においては,実体的真実主義の観点からこれを否定する のが通説的見解である織。他方,局一事件については,従来議論に際して 一般に念頭におかれてきた同一事件であることが明白であるという事例に ( 訪. 田口・前掲注ωF刑事訴訟法~. 諮 (. 鈴木・前揚注ωF刑事訴訟法~. 4 5 0頁 。 2 3 9真。. -3 0 4(107).

(19) 常習窃盗罪における一事不再理効・彰式裁事jにおける訴国的持束力. ついては,一事不再理効を肯定するためには,前訴判決の内容的拘束力が 論理的に前提とされなければならな ~l。一事不再理効の発生根拠を確定判. 決の存在自体に求める見解剖(確定判決の存在的効力),或い誌同じく確定 判決の存在的効力から出発しつつ訴追鶴への禁反言原賠による矛盾行為の 禁止という規範として構成する見解掛も存在するが,これるの見解も,前 訴確定判決が内容的 i こ拘束力を持つものということを前提として,初めて その存在による後訴の遮衝をいう効果を認めることができるものである O もっとも,ここで検討されるべき,そもそも龍訴と後訴とが同一事件で あるかが後訴において問題となる事拠においては,例えば,後訴の審判に 際して対象とされる公訴事実が前訴確定判決で審判を受けた事実との関で 公訴事実の同一性・単一性(実体法上単一の関係〉が肯定される場合,前 訴確定判決における内容的指束力は及ばないといえる O なぜなら,裁判で 判断された内容の後訴への拘束力は,その基礎となる事実が変化しないこ とを苗提とするが,後訴において前訴では審判されなかった事実が判新基 震に取り込まれ,その結果として前訴で審判された事実と後訴で掲げられ た公訴事実との間で公訴事実の同一性・単一性を認めるという場合,いわ ば事情変更む法理(前訴で辻,検察官による一罪の一部起訴(最決昭和 5 9 年 l月2 7日璃集 3 8巻 1号 1 3 6頁〉により,その余の部分は訴追しないとの処 分が行われたにもかかわらず,後訴において,前訴で訴追されないとされ た部分が再び訴追の対象として取り込まれたという意味で〉により前訴の 判断内容との矛盾抵触は生じないといいうるからである。このように考え ないと,前訴では単純窃盗罪として審判され,後訴で公訴事実として掲げ られた事実は審判の対象から除外されていたにもかかわらず,なおも後訴 の公訴事実は苗訴で審判されるべき(同時処理の対象となるべき)事実で. 1 1 7 m 事訴訟法J/ 2 8 1頁 。 f f i O・前掲注Q 2 ) r7fiJ事訴訟法 J4 4 7頁 。. ( 2 4 ) 平野・前掲詮鍛 邸. 3 0 5(1 0 6).

(20) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 3号. あったとして二重の危険を認め,一事不再理効による後訴遮新という結論 を認めることは, (単に後訴の問題としてむみ捉え,苗訴とは無関保の判断 ま)困難であると思われる。 であるという考え方かる i このように解すると,前訴で単純窃盗罪により有罪判決が下されたが, 後訴においてこれと矛盾する実辻常習窃盗罪であったと判概する場合,当 事者がそのような事実を主張するに詰いわ試再審手続におけるような厳格. 3 5条参照〉を満たす必要があるので i まないかが問題とな な要件(荊訴法4 るO しかし,ここで問題としているのは,前訴確定判決の破棄ではなく, 後訴の審判可能性であるから,当事者は,前訴判決における特断の基礎を 揺るがすような事実を主張〈さらに立証〉するだけで足りるのであり,そ のような危慢は妥当しな L王。また,逆に,前訴で掌習窃盗罪として有罪判 決が下されたが,後訴において前訴で審判された事実も含めて全体として 単純窃盗罪であると判断された場合,内容的拘束力の観点からは,やはり 判醗基底となる事実が変化すれば後訴において前訴とは異なる判断をする ことも可能であるとなりそうであるが,こむ場合には,後訴で公訴事実と して掲げられた事実はすでに苗訴において現実に一度審判されているとい う事情から二重の危険が認められ,一事不再理効 i こより後訴が遮斬される ため,具体的結論において不都合法な~ ¥0. 以上か弘前訴確定判決の内容的拘束力の問題は,ここで検討されるべ き事例についても生じるものであるが,後訴の審判において前訴とは異な る常習 a註という要素の存在が判断基底に取り込まれることによる事靖変更 か弘前訴とは異なる判断を行うことも可能であると説明されることにな る 。 ( 3 ) 訴菌の拘束力. 前述のとおり,前訴において単純窃盗罪で審判されながらも,後訴にお いて前訴で審判された事実との関で常習一罪の関係を認め,一事不再理効 -3 0 6(105)一.

(21) 常習窃盗罪における一事不再理効・形式裁暫における訴罰む拘束力. の発生を肯定することができるとしても,そのような検討に際して,前訴 のみならず後訴においても検察官が単純窃盗罪で訴因を構成した場合,裁 判所はそれでもなお常習性という要素を判断基底に取り込むことができる のかが関われなければならな~ ' 0 この問題について,高松高判昭和 5 9年と. 本判決とで見解が相違し,そのことが結論を分けた理由となった O このような訴訟条件の存否の判断に察して検察官の主張する訴因の拘束 力如侭という問題は,審判対象如荷という問題と密接に関連して議論さ れ,審判対象を訴因とする通説的見解からは,通常,訴訟条件の存否の判 断に擦しても訴因の拘束力を認め,裁判所は訴因を離れて訴訟条件の存否 を判顕することはできないと主張されている叱最高裁粍例は,審判対象 を訴冒と理解するものと一般に評価されているが,訴訟条件の存否という 問題については従来必ずしも明確な見解を示してこなかった。もっとも, いわ沙る横領後の横領の成否が問題となった事椀について,最大事j 平 成1 5 年 4月 2 3B7 f / J 集5 7巻 4号4 6 7頁は,公訴事実として掲記された狸罪事実は 前の横領行為〈訴因外)の不可罰的事後行為であり,独立して罪に関われ るものではないとの主張に対し, I 検察官は,事案の軽重,立証の難易等諸 般の事惜を考麗し,先行の抵当権設定行為ではなく,後行の所有権移転行 為をとらえて公訴を提起することができるものと解される O また,そのよ うな公訴の提起を受けた裁判所は,所存権移転の点[訴因として揚記され た公訴事実]だけを審判の対象とすべきであり,犯罪の成否を決するに当 たり,売去却p ,にこ先立つて横領罪を構成する抵当権設定行為があつたかどうか というような訴因外の事情に立ち入つて審理辛判日断すべきもので i は ま なL のような場合に,被告人に対し,訴国外の犯罪事実を主張立証することに 鶴. r. 田訂・龍掲注(I2)f 刑事訴訟法J3 2 2頁,田宮・前掲注0 2 )J f l J 事訴訟法J1 8 8頁 , 平野・前掲注的 F 剤事訴訟法Jl1 5 2頁。なお,審判対象を[公訴犯罪事実」であ ると理解する鈴木・前掲註O ) Jr 璃事訴訟法Jl1 2 8頁も,事実面(=訴題〉の抱束 力に欝しては同様の見解である。. -3 0 7(1 0 4)一.

(22) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻第. 3号. よって訴因とされている事実について犯罪の成否を争うことを許容するこ とは,訴因外の犯罪事実をめぐって,被告人が犯罪成立の証明を,検察官 が犯罪不成立の証明を志向するなど,当事者双方に不自然な訴訟活動を行 わせることにもなりかねず,訴菌制度を採る訴訟手続の本告に沿わないも のというべきである o J と判示し,審判対象は検察官の主張する訴菌であ り,その理は訴国外の事実の考患が被告人備に有利となる場合 i こも異なる ものではないことを確認した。そして,このような訴因に対する考え方 は,実体審判む場面だけでなく,訴訟条件の存否が問題となった本判決に も引き継がれ,前述のとおり「前訴の訴思と後訴む訴因との間の公訴事実 の単一性についての判断は,基本的には,前訴及び後訴の各訴罰のみを基 準としてこれらを比較対照することにより行うのが相当である O 本件にお いては,前訴及び後訴の訴因が共に単純窃盗罪であって,再訴国を通じて 常習性む発露という面詰全く訴冒として訴訟手続に上程されておらず,両 訴因の相互関需を検討するに当たり,業習性の発露という要素を考慮すべ き契機は存在しないのであるから,ここに常習持殊窃盗罪によるー罪とい う観点を持ち込むことは,相当でな Lリとの判示に至ったのである O これ により,最高裁の立場辻,通説と同様,審判対象如何のみならず,訴訟条 件の春否という問題に関しても訴因の拘束力を肯定する(被告人の有利・ 不利を関わず〉という見解で固まったといえよう ο これに対し,高松高判昭和 5 9年は,前述のとおり,. r 訴冨制度の趣旨,. 目的に照らすと,裁判所は訴国を超えて事実を認定し有罪判決をすること は許されないが,免訴や公訴棄却といった形式的裁判をする場合 i こは訴因 に拘束されないと解すべきである。すなわち,訴国は有罪を求めて換察官 により提示された審判の対象であり,訴留を超えて有罪判決をすること は,被告人の訪禦の権利を侵害するから許されないが,これに対し,確定 判決の有無という訴訟条件の存否は職権謁査事項であるうえ,その結果免. 3 0 8 ( 1 0 3 ).

(23) 嘗習寄盗罪における一事不再理効・形式裁判における訴密の拘束力 訴判決がなされても,被告人の防禦権を侵害するおそれは全くな~\から,. 訴因に拘束力を認める理由も必要性も存しないのである O このように解さ なければ,実体に合せて訴菌が変更されれば免訴となるが,そうでなけれ ば有罪判決になるということになり,検察官む選択によって両極端の結果 を生じさせるのは,不合理であって,とうてい容認できず,かかる実際的 な観点からも,検察官の主張は採り得な L、」と判示し,訴訟条件の存否の 判断に際し,少なくとも被告人側 i こ存利な方向では訴因による拘束力を否. 9年 2月 2 5日判時 定するという見解を示している〈横浜地川崎支判昭和 4. 7 6 8号 1 2 8頁も同旨)。 両見解の検討にあたり,審判対象揺何と訴訟条件の存否の判断基準如何. 5年 4月で判示されたよ との関係という理論的問題,及び,前出最判平成 1 うな被告人側が自身に不利な事実を主張・立証すべき f 不自擦な訴訟活 動」の当否という訴訟実践的問題の双方から検討することが必要となる O いずれも飛訴法上重要な開題であり,慎重な検討が必要となるが,本稿で. 、. はその余裕もなく,試論を示すにとどめておきた L. まず,後者の問題は,坂に被告人が犯罪を実行したこと,又は本件で問 題となったような窃盗の常習性など飛を加重する事実等,自身にとって実 体的に不和な事実を主張・立証することを要求されるとしても,該事実は 訴訟において被告人に有利なものとして持活するものであり,そのような 事実の主張・立証誌決して「不自黙な訴訟活動j と評伍されるべきではな いように患われる。また,該事実を少なくとも被告人側から主張(さらに 立証〉をさせるべきものとすれば,本判決が否定する裁判所が話国外の事 実を判断すべき契機を認めることも耳能となるであろう O 他方,前者の問題に関して,審判対象を訴因とし,裁判所が審判すべき 範毘は訴菌によって拘束されるという見解からも,必然的に,そのような 拘束力は訴訟条件の存否という問題に妥当するものとはいえないように思 -3 0 9(102)一.

(24) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻 第 3号. われる O すなわち,訴訟条件は,高松高判昭和 5 9年でも判示されているよ うに,実体審判の前提となる訴訟を適法になしうるための要件事実であ り,裁判所の職権調査事項とされるべき事実であって,それ誌検察官の主 張する具体的事実である訴菌を審判するためむ前提条件であるから,審判 対象を検察官の主張する訴菌であるという見解から論理的に訴訟条件の判 断に当たって一方当事者の主張に拘束されるという結論が導かれるわけで はな~ ,(Z君。すなわち,訴訟条件の存否を訴因として掲記された犯罪を基準. にして判新するとしても,その審判の可否を決定するために設討されるべ き事実が訴冒として掲記されていなければならない必要はなく,その限り. i こおいて,本判決の該判示部分は不合理であるように思わむる O このよう 検察官としては,前訴において嘗習窃盗罪として起訴を な結論によると, I 義務付けられたのと同じことになり,その訴追裁量権・訴因講或権が無損 されることになる」餓との批判もあるが,前訴でー罪の一部についてどの ような形で訴因を講成するかということと,後訴において前訴と同 ~O) 事. 件であると判顕することとは次元を異にする問題であり(例えば,住居侵 入窃盗について,前訴で立証む難易等を考E 言、のうえ窃盗罪のみで起訴し, こ住居侵入罪を独立に起訴するという問題を想定すると それが確定した後 i よい的,また罪数判軒はー殺に裁判所の専権と理解されていることも考慮 すると,右批判は的を射たものとは患われな L例。 こ際してその さらに,振に本判決が判示するように訴訟条件存否の判断 i 師 長 沼 他 〔 佐 藤 隆 之 ] Ir演習璃事訴訟法 j 3 3 8頁 ( 2 0 0 5 年,有斐閣)。 錦井上宏 f 本件控訴審*,J 研j 警 論5 5巻 1 1号 1 8 2頁 ( 2 0 0 2年〉。 餓. 5年重抜 2 0 2頁 ( 2 0 0 4 年)は, 宇藤崇「本件半日解」平成 1. r ー罪性の強弱」から. 設念的競合や牽連犯と本件のような集合犯との差異を強諒する。 餓 小 島 淳 「 本 件 暫 評J現 瑚 6 2号 8 8頁 ( 2 0 0 4 年〉は,ー罪の一部起訴における検 察官の訴追権限の童用性の問題であると捉えているが,訴訟条件判断に擦して の裁判所の審理可能註と検察官の権限濫用性はリンクする必要はないと患われ るO. 3 1 0(1 0 1).

(25) 常習窃盗罪における一事不再理効・形式裁判における訴医の拘束力. 判断基震として考慮されるべき事実に関して検察官の主張する訴国に拘束 されると理解した場合でも,裁判所は,訴訟の具体的状況から訴圏外の事. 2 0 8 実について一定の心註を抱いた場合,求釈明を通じた勧告〈刑訴規員U 条)及び訴因変更命令(飛訴法3 1 2条 2項〉等の権限を行使することが訴 訟法上予定されており,例えば,本件においても常習性という要素を訴因 として掲げさせた上で形式裁判を行うこと辻可能であろう O なお,その 擦,実体裁判に関しては,訴因変更命令の形成力を否定するのが判概及び 通説であるが帥,そこで考嘉されている検察官の訴茜構成権援の専権性と いう観点辻,形式裁判においてはそもそもそのような訴因構成が不適法と 評幅されるべき場面であることから妥当せず,裁判所の命令に影成方を認 めることも可能であるように思われる民また,このような形式裁判が必 要となる場合に訴因変更命令が求められるべき趣旨‘からは,裁判所の訴因 変更命令は義務的なものとして理解されるべきであろう O. 4 . まとめ 以上,本稿では,営習(窃盗〉罪における一事不再理効の成否について 判断した,最高裁の重要判開となるであろう事件を検討してきた。前述の 検討でも明らかとなったように,最高裁は,本判決において,一事不再理 効の範茜如何(だけ)で誌なく,むしろ,形式裁判における訴因の拘束力 という刑訴法の本賞に関わる問題を中心に検討し,従来の高裁判決を変更 して,一事不再理効を否定するという結論に至った。その意味において, 本判決の意義は,裁判の効力論にとどまらず,広く今後の裁判実務に対し て影響を年えるものと誰測される。 約 最 大 判 昭 和 幼 年 4丹 288担 1 :j 集1 9巻 3号2 7 0頁 。 総 松 山 地 判 昭 和3 4 年 3月 1 4日(未公刊。本江或憲「常習犯と既判力の範囲」平 野・松尾編「実例法学全集・続刑事訴訟法J3 4 8頁(19 8 0年,青林書院新社)に 引用)。. 311(100)一.

(26) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 3号. もっとも,やはち前述で検討したとおり,本判決で示された見解 i こは本 質的な疑問があり,これらの問題について改めて審暫対象の本質如荷とい う観点に還って検討されるべき契機を与えるものでもある O 本稿で辻,そ の他の論点と共に一定の払晃を示したが,論註として不十分なものにとど まり,およそ試論む域を出ない。この点の検討は,裁判例の動向を見据え つつ,今後の課題としなければな告ない。. ( 2 0 0 6年 G月脱槙). *本語は, 2 0 0 3年 1 0 月2 5日に開催された璃事判例研究会(於・同志社大学)での報 告をまとめたものである。.

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参照

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〔追記〕  校正の段階で、山﨑俊恵「刑事訴訟法判例研究」

Droegemuller, W., Silver, H.K.., The Battered-Child Syndrome, Journal of American Association,Vol.. Herman,Trauma and Recovery, Basic Books,