Epsteinの認知経験的自己理論とCTI(建設的思考尺度)
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(2) 34. 辻 平治郎 0向 山泰代. 来事 を予測 し, 自己の行動を統制す るための「 理論」を もつ。あ る意味 では 誰 もが科学者だ とい うのであ る。 ところでこの「 科学者 としての人間 モデル」では,Kellyの それをも含めて. ,. 多 くが「 意識的」な理論 (認 知)の みを取上げて きた。 これ に対 して最近 の認 知心理学は,「 意識的」な認知だけでは片手落ちであ り,「 暗黙 の. (implicit)」. あ るいは「 前意識的・ 無意識的」な認知 の重要性を認めるよ うになって きて いる (た とえば, Bowers,K.S.&Meichenbaum,D.,1984)。 前意識的あ るいは無意識的認知を考 える根拠 については後 に述べ るが, とりあえず「理 屈 ではするべ きだ と思 うが,気 が進 まない」とい うよ うな経験を思 い起せば. ,. 意識的認知 (理 屈)と 前意識的認知 (気 )と が異なる体系 に属す る ことが理解 で きるだろ う。Epsteinの 「認知経験的 自己理論 (CEST)」 は,James,W.. (1898)以 来の 自己理論を ベ ース として, このよ うな「意識的,前 意識的. ,. 無意識的認知を も包含する認知論」 と「科学者 としての人間 モデル」を統合 し体系化 した ものだ とい うことがで きよ う。 さて Epsteinに よれば,各 人が もつ このよ うな「個人的理論」は体系化 さ れ て「 概念体系 (conceptual system)」 を構成する。彼は これを「 現実 につい ての個人的な理論 (a personal theory of reality)」. と名 づけている。 この個. 人的な理論 は,お おざっばに,① 自己 自身 についつの理論 である「 自己理論 (self theOry)」. (こ. れはいわゆる自己概念 (self concept)に 相当する),②. 自己以外の外界についての理論である「世界理論 (world theOry)」 ,お よび. ,. ③ この両者を結びつける「 関連づけ仮説 (connecting propositions)」 に区別 される。. 2.「 現実 についての個人的理論」 の構造 現実 についての個人的理論 は ,個 別的 な認知 要素 で あ る「 ス キ ーマ. (sche‐. ma)」 あ るいはそのネ ッ トワー クが 階層的 に構造化 され た もので あ る。 最 も. 基本的 な (上 位 の)ス キ ーマ は「 仮説 (postulates)」 と呼 ばれ る。 そ の基本 的 な ものは,情 動的 に重要 な体験 か ら帰納的 に導 きだ され た もので あ り,大.
(3) ). 35. Epsteinの 認知経験的自己理論と CTI(建 設的思考尺度. 部分 が 前意識 の レベルに あると考 え られている。これ らの 仮説 は,① 記述仮 説 (descriptive postulates)と. ,② 動機づけ仮説. (mOtivatiOnal postulates),. の 2種 類 に分れる。記述仮説 は以下 に述べ るように, 自己や世界 が どのよ う なものであるかについての仮説 であ る。 その仮説 の強度 (反 証す る事実が 出 て きた ときの抵抗力)は ,そ れを基礎づける体験 の数,そ れを体験 した とき の情動 の強度,全 概念体系 の中でその概念体系が果 している役割,な どによ って決 って くる。 基本的な記述仮説 としては次 のよ うなものが認め られ ている。 それは,① 世界 は どの程度意味 のある. (ま. た,予 測可能な,統 制可能な,公 正な)も の. か,② 世界 は どの程度好 ましいか,好 ましくないか,③ 他者 は 自己に対 して どの程 度好意的 か ,あ るいは脅威的 か ,④ 自己 は どの程 度好 ま しい. (ま. た. ,. 有能 ,善 良,愛 す べ き)か ,に 関す る仮説 で あ る。 これ らの基本仮説 は 人生 の初期 に形成 され ,新 しい経験 を同化 し,他 の仮説 を導 き出す役割を果 たす ので,極 めて重要 で あ る。 この よ うな基本仮説 は もちろ ん,階 層構造 にお け る最 も高次 の位置 を 占め てい る。 それ は個人 が どの よ うな経験 を し, ど う解釈す るかを も決定す る力 を もってい る。 したが って, 高次 の 仮説 に 基 づ く予測 は 自己成就的. (self一. fu111ling prOphecies)に な りやす く,低 次 の仮説 (ス キ ーマ)に 較 べ る と反. 証 され に くい。 一 方 ,低 次 のスキ ーマは直接経験 と結 び つ いてお り,そ れだ け状況特殊的 で あ る。 もちろん経験 に適合 しない ときには,比 較的容 易 に変 化 し うる し, この変化 が 概 念体系 に及 ぼ す 影響 も小 さい。 この よ うに, 仮 説 は 高次 で あ るほ ど変 化 しに くく安定 してお り,低 次 で あ るほ ど変 化 しや す い。 なお,こ の よ うな仮説を低 次 か ら高 次 まで 順 をお って例示す る と,「 私 は数学 がで きる学 生 で ある」,「 私 は よい学生 で あ る」,「 私 は 有能 な人間であ る」,「 私 は価値 の あ る人間 で あ る」,と い った ものが挙 げ られ よ う。 上記 の よ うに,概 念体系 の 中 で も高次 の仮説 はか な り安定 してお り,変 化 しに くい。 それ は, この体系を維持す るために,① 仮説体系を事実上検 証不 可能 な ものに仕立 上げ る,② 信念体系を支持す る よ うな事象 のみを選択的 に.
(4) 36. 辻 平治郎・ 向山泰代. 知覚 し解釈す る,③ 既存 の体系 に一致す るような経験を選択的に追求する. ,. といった方略が前意識的 に使われ るか らであ る。 このよ うな方略 は,概 念体 系 の安定性が脅か された ときに生 じる不安 を信号 として,前 意識 レベルで採 られるのだ と考 えるのであ る。子供 の時に暴力的虐待 を うけていた女性が. ,. 暴力を ふる う男 と恋を し,虐 待 され 続け るとい うような事例は 少 な くない が,そ れは幼児期 に形成 された仮説体系 の統合性を維持 しようとする前意識 的な試 みだ と解釈すれば,理 解 で きる。 もちろん, よほど衝撃的 な体験を し た場合 には,高 次 の体系 といえども変化 しうる。 ただ しこれは階層構造 の根 幹をゆ るがす ことになるので,人 格 の解体を も招 きかね ない危険性をは らん でいる。 動機 づ け仮説 は,望 ましい もの を獲 得 し有害 な ものを回避す るには,何 を なす べ きか ,に 関す る仮説 で あ る。 これは情動的 に重要 な体験 か ら生 じて く る もので あ り,情 動的 負荷 を もつ ホ ッ トな認知 で あ る。 た とえば,拒 否的 な 母親 に育 て られ た子供 は,「 世界 は悪意 に満 ちた もので あ り,信 頼 で きな い」 とい う前意識的 な記述仮説を もち, うま くや ってい くた めには「 欲 しい もの を取 り,愛 着 を避 け よ」 とい う動機 づ け仮説 を もつ よ うに な るだ ろ う。動機 づ け仮説 は価値 , 日標 ,計 画 な どの概念 に含 まれ てお り,や は り階層構造 を もつ。 その強 度 は ,そ れ に関連 した記 述仮説 の強度 ,強 化史 ,そ れ に,全 概 念体系 の 中 でその概念体系 がはた して い る役割 ,に よって決定 され る。. 3.「 現実 につい ての個人的理論」 の推測 と同定 現実 につい ての個人的理論 は, 通常 , 暗黙的 (implicit)で あ る。 もとも と意識的 に形成 され た ものでは な いので,多 くは前意識 的 で あ る。 したが っ て, 問われれ ば 誰 で も 自分 の理論 が 説 明 で きる とい うわけ では な い。 しか し,そ れ では これを捉 える方法 が な いのか とい うと,そ うで もな い。. Epsteinに よれ ば,そ れ は感情 と緊密 に結 び つい てい るので,感 情的 な行 動 ,中 で も反復 して現れ る行動 を 観察すれ ば,推 測す る ことがで きる。個人 的理論 にお け る 基本仮説 は 2つ の方法 で 推測 で きる。 ① まず , 情動 の喚起.
(5) Epsteinの 認知経験的自己理論と CTI(建 設的思考尺度). 37. は ,個 人的理論 に とって重要 な仮説がそ こに関与 してい る ことを示す ので. ,. そ の推測 の手 がか りとなる。 た とえば,あ る人が成績 が よい と喜 び,悪 い と 落込 んだ とす る と,そ こに この人 の学業成績 へ の重要 な動機 づ け仮説 を見出. す ことがで きる。 ② また, 感情 の背後 には 必ず隠れた 認知があ り, た とえ ば,怒 りは不当な扱 いを受けたので仕返 しをすべ きだ とい う解釈 によって. ,. 恐怖 は危険 の評価 と逃避願望 によって生 じる。 したがって,個 人 に特徴的な 感情を知 ることさえで きれば,そ の人 の前意識的仮説 のい くらかは推測 で き る ことになる。. 4.「 現実 についての個人的理論」 の機能 現実 についての個人的理論 は,人 生 における種 々の課題を解決するための 概念的な道具 であ る。 それは 次 の 4つ の 基本的機能を もつ と仮定 されてい る。すなわち,① 経験的デ ーターを同化する こと. (こ. れ には,こ の概念体系. その ものの一貫性や統合性を維持す る要求が含 まれる),② 快/苦 のバ ランス を最大 にする こと,す なわち,快 楽を最大 に し,苦 痛を最小 にすること,③ 他者 と好 ましい関係を維持する こと,④ 自尊心を好 ましい水準 に維持す る こ とである。 もちろん, これ らの機能 は先 に述べ た 4つ の基本仮説 に対応 して いる。 行動 は この 4つ の機能 (あ るいは動機 )の 妥協 の産物 と考 え られ てい る。 通常 ,こ の 4つ の機 能 は相互 にチ ェ ック・ ア ン ド 0バ ラ ンスの役割 をはた し てい る。 た とえば, 自己評価 を 高 めたい とい う要 求 に よって誇大妄想 が 生 じ な いのは,現 実 のデ ータを正 確 に処理 し,他 者 との関係を維持 したい とい う 要 求 に よって チ ェ ック され るか らで あ る。 この よ うな チ ェ ックが 働 くか ぎ り,極 端 な. self一 serving. biasが 生 じる こ とはない。. しか し 4つ の機 能間 の妥協 が うま くゆ か ぬ と,種 々の病理現象 が 生 じる。 「抑鬱」 は 自己評価 を下げ て も概 念体系 の安定性を 維持 しよ うとす る もの. ,. 「 誇大妄想」 は現実 のデータの 同化 を 犠牲 に して 自己評価を 高 め よ うとす る もの,ま た,「 急性 の分裂病的崩壊」 は悲惨 さを減少 させ ,低 い 自己評価 を.
(6) 38. 辻 平治郎・ 向山泰代. 高 め るために,概 念体系 の安定性 を犠牲 に した もの, と見な し うる。 ところで Epsteinは , これ らの基本的機能 あ るいはその要 求 の うち,特 に 「快楽 の追求」 と「統合 の要 求」 に関 して, 次 の よ うな 興味深 い議論 を 展開 してい る。す なわ ち,彼 のい う「 快 /苦 のバ ラ ンスを最大 にす る要 求 (あ る いは それ を満足 させ る機能 )」 は,Freud,S.の 理論 のいわゆ る「 快楽原理」 や ,学 習理論 の「強化 の法則」 にほぼ 該 当す る もの と考 え られ る。 ただ しこ れ らの理論 では, この快楽原理・ 強 化 の法貝Jこ そがあ らゆ る動機 づ け の基礎 とな る基本 原理 だ としてい る。 一 方 ,「 経験的 デ ータを同化 し,概 念体系 の 一 貫性 0統 合性 を維持 しよ うとす る要 求」 は,現 象学派 のいわゆ る 自己概念 の一 貫性・ 無矛盾性 の追求 で あ る 「 統合原理 (unity principle)」 に相 当す る 。 ただ しここで も,現 象学派 は この統合原理 こそが ,唯 一 の基本原理だ と主張 す る。 自らの信条を守 るためには死を も辞 さな い とい うよ うな例か らも分 る よ うに,「 概念体系統 一 の要 求」 は「 快楽追求・ 苦痛 回避 の要 求」や生命 の維 持 に優先す る とい うので あ る。 しか し Epsteinに よれば, これ らの原理 (要 求)は いずれ も他方 に還元す る こ とので きな い基本的 な原理 で あ る。 一 方 の みを基本的 とし,他 方 を軽視す るのは,明 らかに誤 りであ る。 実 は Freud,S.(1920)も. ,快 楽原理 だ け では片手落 ちだ とい うこ とを後. に認 め る よ うに な ってい るc彼 が 考 え直す切 っかけにな ったのは,戦 争 の恐 怖体験 を反復 して夢 に 見 る兵士 を診察 した こ とであ った。 この夢 はひ ど く恐 怖 をか きたて る もので,患 者 は. RFt‐. る こ とさえ恐れ るほ どであ った 。Freudは. ,. 夢 は快 楽原理 に よ り願望 を充足 す る ものだ と考 え ていたが , この夢 は快楽原 理 では ど うして も説 明 で きな い。 そ こで彼 が 考 え出 したのが「 死 の本能」 の 概 念 で あ り,恐 怖 の夢 は この本能 よ り生 じる反復強迫 で あ る とした。 しか し この概 念 については,精 神分析家 の 間 で さえ評価 が 分れ てい る。 Allport,G。 (1961)も. ,強 化 の法則だけ では人間 の行動 を十 分 には説 明 で. きな い と考 え て,機 能的 自律性 (functional autonOmy)の 概念 を 打 出 した。 す なわ ち, あ る種 の行動 は, それ 自身を 動機 づ け る 性質 が あ り, 強化 な し に持続 し うる, とい うので あ る。 彼 は機能的 自律性 が 人格 に統 一 や一 貫性 を.
(7) Epsteinの 認知経験的自己理論と CTI(建 設的思考尺度). 39. 与 える ものだ とい うこと,そ してそれが 自己概念 と緊密 に関連 して い る こ と に気 づ いていた。 しか し, 自己概 念 に この よ うな実行機能 (execut市 e func‐. tion)を もたせ る と,科 学的心理学 が 非科学的 で あ る として 排除 した「 た ま しい. (soul)」. の概 念を 復活 させ るの と 同 じこ とに なるのでは な いか と心 配. し,そ れ以上 の議論 は 回避 して しまった。 しか し,快 楽原理 だけでな く,統 一 原理 を考 えるな ら,Freudや Allport が 説 明 に 困 った現象 も問題 な く説 明 で きる。 た とえば 外傷体験 の反復的 な夢 は,「 現実 についての個人的理論」 が 支持 され な くな った とき, そ の外傷体 験 を何 とか して 自己 の 理論 に 同化 しよ うとす る 絶望的 な 試 みだ と理 解 で き る。 また, 自己概 念を 自己理論. (self― theOry)だ. と考 えるな ら,理 論 が 実践. を方 向づ け るのは 当然 の ことな ので,機 能的 自律性 の概 念 が非科学的 ではな いか とい う Allportの 心配 は,杞 憂 とな る。 第 3の「 他者 との好 ましい 関係 の維持」は,新 し く付加 された機能 で あ る。 人 間 が社会的存在 で あ る以上 ,こ れ な くしては生 存 もか なわ な い ことに な る だ ろ う。ただ し,こ れ につい ては未 だあ ま り議論 が な され てお らず ,Bowlby,. J.(1973)や そ の他 の対象関係理論 へ の言及 が な され てい る程度 で あ る。 「 自尊心を好 ま しい ンベ ルに 維持す る」 とい う第 4の 要 求や 機能 につ いて は,第 2の 快楽原理 か ら生 じる と考 え られ な くはない。 しか し, 自己理論 が い ったん形成 され た後 は,単 なる感覚的 な快 /苦 に よる動機 づ け よ りも, 自 尊 心 を好 ま しい水 準 に維持 しよ うとい う動機 の方 がは るか に重要 な もの とな る ことが あ る。 自尊心 は, 自己理論 の 中 で も最 も基本的 な仮説 な ので あ る。 自尊心 は 自己愛 (self-love or love worthiness)と 同 じもので あ り, も と も とは親 の愛情 を取 入れ て 内面化 した もので あ る。 それ は 両親 の承認や 否認 とい う強 しヾ 情動経験 を通 じて形成 され るので,一 般 に変化 に対 す る抵 抗 が強 い 。当然変化す る と きには概念体系全体 に重大 な影 響 を及 ぼす ことに な る。. 5。. 不安 ,崩 壊 ,防 衛機制. 概 念体系を統合 しよ うとす る試 みは常 に行 なわれ てい るが ,完 全 な統合 を.
(8) 40. 辻 平治郎 0向 山泰代. 達成す る こ とは不 可能 で あ る。概念体系 の下位体系 内あ るいは 間 に,ま た概 念体系 と現実 の間 には,絶 えず葛藤 が 生 じる。概念体系 の統 一 は,同 化 で き な い要素 を 解離す ることに よって 達成 され る こと もあ るが , これ さえ うま くゆ かぬ と,概 念体系 は ス トレス に さ らされ ,不 安 を体験す る ことに な る。 ス トレス に対 す る防衛 がで きな い と,時 には全概 念体系 が 崩壊す る こ と も あ る。急性 の分裂病 に よる人格 の崩壊 は この よ うな もの として理 解 で きる。 崩壊 がお こる と,新 しい概念体系 が つ くられ る こ とにな るが ,も ちろん新 し い方 が よ り適応的 で あ る とはか ぎ らな い。 む しろ一 般的 には適応 力 は低下す る。 しか し,崩 壊す る ことに よって よ り優れ た体系 が つ くられ ,そ れが新 し い学習 を促進 し,以 前 に解離 した材料 を も同化す る よ うな過程が まった く生 じないわ け で もな い。 Menningerも 述 べ てい る よ うに,分 裂病患者 の 中 に は病 気 が 治 って,病 前 よ りもず っ とよ くな る人 が 少数 なが らい るので あ る。. 情動的 に重要な体験が現実 についての個人的理論 と矛盾すると,人 は次 の よ うな反応を生 じやす い。① この体験を同化する ことによって,概 念体系 は より分化 し,統 合 し,拡 大する。②防衛機制を使 うことによって,そ の体験 を否認 した り歪曲した りする。③その体験を他 の体系か ら解離す ることによ って,概 念体系へ のス トレスを低減する。 しか し,解 離 した材料 は再活性化 され る可能性があるので,不 安や崩壊 の源 となる可能性が ある。. 6。. 概念体系 と意識 の水準. 意識 の水準は,① 直接覚知 されてい る「意識 (consciousness)」 ,② 直接 に は覚知 されないが,努 力すれば アクセス (意 識化)で きる「 前意識 (precon. sciOusness)」 ness)」. ,③ 通常 は努力 して もアクセスで きない「 無意識. (uncOnscious‐. ,の 3水 準 に分れ る。 この区分 はそれほ ど厳密なものではないが, と. りあえず,Freud,S。 のそれ にほぼ対応すると考 えてよい。 ただ し,Freud の概念 は記述概念 であ るだけでな く力動的概念 で もあるのに対 して,Epstein のそれは純粋 に記述概念 であ るとされ る。 ところで,Epsteinに よれば,概 念体系 (個 人的理論)も 次 の 3種 類 に区.
(9) ). Epsteinの 認知経験的自己理論と CTI(建 設的思考尺度. 41. 別 で きる。すなわち, ① 合理的概念体系 (rational conceptual system), ② 経験的概念体系 (experiential conceptual system), ③ 連想的概念体系 (associatiOnistic∞ nceptual system),の. 3つ であ る。 これ らの概念体系 は. 意識 の 3水 準 にほぼ 対応 してお り,「 合理的体系」 には「 意識」 の水準が. .. 「 経験的体系」 には「前意識」 の水準が,そ して,「 連想的体系」 には「無意 識」 の水準が結びついてい ると考え られ ている。 この 3つ の概念体系はそれぞれが固有 の概念 (構 成要素)と 固有 の論理法 則を もつ独 自の体系 であると考 え られる。「 合理的体系」 の構成要素 は 慣習 的な シンボル (言 語,数 など)で あ り,そ の論理法則 はいわゆる論理的思考 の法則 に相当する。 したが ってそれは,論 理 と事実 に基 づいて機能 し,抽 象 的,非 感情的な分析 に適 している。「 経験的体系」 は情動体験 と緊密 に関わ ってお り,「感情的体系」 とも呼び うる。 その構成要素 は, 通常 は当人 も気 づかぬ ような 自動的慣習的な 方法 で用 い られ る 私的な 言語 であ り,ま た. ,. イ メージである。その論理法則は合理的体系 のそれ よリルーズな感情的論理 である。それ は意識化で きないわけではないが,通 常 は前意識的 であ り,主 として感情や 個人 の福祉 に 関与 している。「 連想的体系」 は無意識 において 機能 し,そ の概念 (構 成要素)は しば しば視覚的 イメージの形を とったメタ フ ァー となる。 その論理法則は,Freudが 1次 過程 と呼 んだ ものに相当し ,. 連想的思考,願 望思考,具 体的視覚 イメージ,置 き換え,圧 縮,時 間的空間 的限界 の無視, といった特徴を有する。 この ような 3つ の概念体系を区別する根拠 について考 えてみ よ う。 まず. ,. 経験的体系 と合理的体系 の区別 については,次 の ような根拠をあげ ることが で きよう。 た とえば,私 たちは しば しばハー ト (heart)と マイ ン ド (mind) との葛藤 を経験する。 それは「勉強す る気が しないけれ ど, しなければいけ ない」 とい うような葛藤 に見 られる。 ここで,勉 強す る気が しないのが,ハ ー トすなわち経験的体系 における自己。 それ で もしなければいけない と強制 す るのが,マ イ ン ドすなわち合理的体系 における自己であ る。 これ らが葛藤 しているとい うことは,こ の 2つ の 自己は異なる体系 に属す るか らだ と考 え.
(10) 辻 平治郎・ 向山泰代. ざるをえない。不合理な恐怖 もその 1例 である。理屈 では不合理だ と分 かっ ていて も,恐 怖 はな くな らない。 また,知 的な理解 と洞察 との違 い もこの問題 に関係 してい る。心理療法家 な ら誰 で も,患 者 に彼 (女 )の 問題 についての知的情報 を与 えるのは有害 で ある こと,一 方,情 動的 に意味 のあ る体験一― た とえば移転関係一―を通 じ て知識 を与 える場合 には有益 な影響を及ば しうる ことを,知 っている。 このよ うに,合 理的体系 と経験的体系 を区別す る根拠 はかな り明瞭 に述べ られ ているが,こ れ らと連想的体系 を区別す る根拠 については明示 されてい ない。 さて,上 記 の 3つ の 半ば独立 した 概念体系 の仮説 は,Greenwald,A.G.. (1982)の それ ともかな りの 共通点を もっている。 彼 は 4つ の 心的機能体系 (① 言語体系,② 身体的非言語体系, ③ 自己体系, ④社会体系一一 この分類. は確定的 な ものでは な い)を 考 え,そ れ らの 間 の コ ミュニ ケー シ ョンは, コ ンピ ューター言語 が 異 なる と コ ミュニ ケ ーシ ョンがで きな いの と同様 に,ほ とん ど不可能だ と仮定 した。 た とえば,身 体体系 は 言語 に無感覚 で あ り,言 語体系 は生理 的反応 に無感覚 で あ る。 この よ うな見方 をす る と,私 た ちが 自 分 の 行動 を 意識化 で きな いのは,. 1つ には,. 体系間 の コ ミュニ ケ ーシ ョン. が で きな いか らだ と理 解 で き る。 これは,無 意識 を もっば ら抑圧 で説 明す る. Freud理 論 に,重 大 な修正 あ るいは制限を加 える もの とい え よ う。 この よ うに,Greenwaldに よれ ば,4つ の心 的体系 は相互 に独立 で あり,多 く の人格 心理学者 が 考 え てい るほ ど統合 され た ものでは な い。しか し,Epstein に よる と,こ の よ うな考 え方 は行 き過 ぎで あ る。各概念体系 は あ る程度 の独 立性 を もちなが らも,統 合 され てい る。彼 の仮説 に よれ ば,概 念体系 の 間 に は あ る程 度 の重複 が あ り,特 に,合 理的概念 体系 と経 験的概念体系 とは共通 の言語を用 いてい るために,か な り重複 してお り,相 互 の コ ミュニ ケ ーシ ョ ン も可能 だ と考 え られ る。 した が って,体 系間 の不 一 致 が 大 き くなる と,葛 藤 を体験 しス トレスを もつ ことに な る。 また,体 系間 に コ ミュニ ケ ーシ ョン が な くて も,同 一 個人 内 で 異 な る体系 が 異 な る行 動 を命 じた とした ら,人 は.
(11) Epstelnの 認知経験的自己理論と CTI(建 設的思考尺度). 43. 同時 に相反す る反応 をす る ことはで きな いので,や は り葛藤 を生 じる こ とに な るだ ろ う。 た とえば,合 理的概 念体系 の指示 にのみ従 って行動 した とした ら,そ の人 の人生 は退屈 で味気 な い もの とな り,ス トレスを感 じざるを えな くな るだ ろ う。逆 にた だ経験的概念体系 にのみ 従 って快楽 にふ け り,合 理的 概 念体系を無視 した とした ら,や は リス トレスを作 り出す ことに なるはず で あ る。Rogers,C.(1959)の いわゆ る 自己 と経 験 の不 一 致 は, この よ うな体 系 間 の ズ ンを 指 してい る と も理解 で きる。. 7。. 意識水準. 意識水準 に あ るのは主 として合理的概 念体系 で あ る。 この体系 の思考 は一 般 に「 思考」 と称 され る もので あ る。慣習的 な シンボル を使 い,社 会的 に確 立 され た論理法則 と確実 な証拠 に従 う。 この体系 は記述的 な仮説 と動機的仮 説 よ り成 り,階 層構造 を もつ。 意識的信念. (こ. の体系 に属す る仮 説 )が 行動 に. 重大 な影 響 力を もつ こ とは,意 識 的 な態度 と行動 との間に有意 な相関が見出 され てい る こ とか らも分か るが ,状 況 が 変 る と相関 が 見 られ な くなるのは. ,. 経験的概 念体系 か らの影響 力 の方 が 強 いか らで あろ う。. 8。. 無意識 水準. 心的なものの内容 は,ア クセス しに くい (無 意識 の)も のが多 い。 その理 由は,① 道徳的 に受入れがたい内容 の ものは抑圧 。解離 される。②合理的概 念体系 と整合 しない内容 の ものは, この意識的な体系 に同化 されない。③前 言語的,非 言語的なものよ り成 る心的内容 は,言 語的 に符号化 で きない,な どによる。. Freudは ,① と③ は認めたが,統 一原理 に気づかなか ったために② を見落 した。周知 のよ うに彼 は,特 に性的,攻 撃的内容を もつ タブー材料 の抑圧を 重視 している。 が,こ れだけが解離・ 抑圧 の原因だ と考 えると,解 釈を誤 ま る恐れがある。 概念体系 の 安定や 統合を脅かす もの も解離 され るし, かつ ては意識的な体系 と整合 していた材料 で も,体 系が変化すると不整合 になっ.
(12) 44. 辻 平治郎 0向 山泰代. て,後 に解離 され る場合 もあ る。 しか しいずれ に して も,そ れが不整合 で あ る ことが分 か るためには,ま ず ,そ の 内容 が 無意識的 にせ よ知覚 され 符号化 され てい なければな らな い。 さて,そ れ では解離 され 抑圧 され た思考 ,イ メージ,衝 動 な どは何故意識 に現れ 出 よ うとす るのだ ろ うか 。 Freudに よれ ば,抑 圧 され た イ メージや思 考 は エ ネ ル ギ ーを もつ が ,そ の貯溜 された エ ネ ル ギ ーは直接 には放 出 で きな いので,変 換 され ,妥 協的 に夢や言 い間違 い,あ るいは症状 な どとして現 出 す るのだ とい う。 しか しこの よ うな エ ネ ル ギ ー論 は理論的 に も根拠 が 薄弱 で あ る し,そ れを支 持す る証拠 もな い。 それ よ りはむ しろ,あ らゆ る経 験 を統 合的 な概念体系 に 同化 しよ うとす る 傾 向を仮定 した方 が理解 しやす い。す なわ ち,感 情的 負荷 の高 い危機的 な経 験 は個人 の 同化能 力を越 える こ とが あ り,こ の よ うな場合 には,そ の経験 は 解離 され る。 しか しこれを無視す る こ とはで きな いので,危 機的 な状況が終 る と,概 念体系 は この経験 を同化 しよ うとす る。 ここで解離 しよ うとす る傾 向 と同化 しよ うとす る傾 向 とが 葛藤 を生 じる。解離 され た材料 が エ ネ ル ギ ー を もつ よ うに 見 えるのは,こ の 同化傾 向 に よる。 もちろん,こ の よ うな同化 の試 みはず っ と コ ンス タ ン トに行 なわれ てい るわけではない。 何 らか の経験 に よって関連 した思考や イ メージが 活性化 された り, 自我 の統制 力 が 弱 まっ て解離 を維持す るための 回避反応 が 低減 した とき,た とえば,眠 ってい る と き,疲 れ た と き,意 識 の変調 を 来 た した ときな どに,生 じや す い。 と ころ で, もともとは前意識 水準 に あ った心 的 内容 で も。 抑圧 に よ り無 意 識 に変 え られ る 場合 が あ る。Freud理 論 では,か つ ては前意識 水準 に あ った もので も,い ったん抑圧 され 無意識 に な る と,そ れ は無意識 に特徴的 な操作 の 仕方 で取扱われ る よ うに なる,す なわ ち,1次 過程 の思考 に従 う,と され る。 これ に対 して認知経験的 自己理論. (CEST)で は,抑 圧 され た ものの全 て. が 同一 の 1次 過程 に従 うわけ ではない と考 える。前意識的 な ものが抑圧 され. た場合には,「 学習性の回避反応」により意識 にアクセスできなくなっただけ だと考える。すなわち,あ る思考に注意を向けて不安を感 じると,思 考の方.
(13) Epsteinの 認知経験的自己理論と CTI(建 設的思考尺度). 45. 向 を変 え よ うとす る動機 づ け が 喚起 され ,回 避反応 が 生 じる。 そ して,こ の 回避反応 (抑 圧 )力 `うま くい くと,関 連 した思 考 が Jい に浮 んで も,も はや不 安 は生 じな くな る。 この場合 には,意 識 か ら排除 され た とい って も,そ の 内 容や心的過程 に変化 が 生 じるわけではな い し,抑 圧 され て も,そ の材料 は依 然 ,経 験的体系 の法則 に従 ってい る, と考 え てい る。 と ころ で,抑 圧 され た思 考 と間接的 なつ なが りしか もたな い連想 は,直 接 的 なつ なが りもを もつ連想 よ りも制止 され に くく,関 連 の薄 い ものの方 が連 想 されやす い。 この ことは,連 想を喚起す る興奮 の汎化勾配 の方 が これを制 止す る汎化勾配 よ り緩やか で あ る と仮定すれ ば,説 明す る こ とがで き る。 こ の メカ ニ ズムは また,置 き換 え (displacement)の 説 明 に も使 える。 この よ うに,無 意識 の水準 において も経験 的体系 が働 くこ ともあ るが ,こ の水準 で もっ と も有 力な のはやは り連想的概 念体系 で あ る。 これ は主 として 視覚 イ メージを使 う。通常 これは意識的 な 吟味 が で きな いが , 夢や 意識 の 変調 を 来 した とき, あ るいは 謄妄や 精神病状態 において 観察 で きる。 この 体系 は. Freudの いわゆ る 1次 過程 の 思考 に 従 い,連 想的思考 , 具体的心. 像 ,置 き 換 え, 圧縮 , 願望充足 な どの 特徴 を も ってい る。 ただ し Epstein に よれ ば,願 望充足 的思考 は また,. Jungの. Freudの 考 えて い るほ ど頻繁 には生 じな い。. い うよ うに, 遊戯的 , 創造的 性質を も ってい る よ うで あ. る。. 3つ の概念体系 は異 な る論理法則 に従 って働 く。連想的体系 は,重 要 な体 験 を関連 した経 験 と結 び つ け るこ とに よって,ま た,メ タ フ ァーを使 うこ と に よって,種 々の課題 に対処す る。 この体系 は,慣 習的 シンボル を使用 して 抽象的概 念を表象す る こ とがで きな い。 この体系 の概念 はふ つ う視覚的情景 において表象 され るが ,経 験 が ス トレー トに表象 され るのではな く,不 安や 葛藤 と無関係 な場 合 で も,そ の表象 は置 き換 え (displace)ら れ ,メ タ フ ァー 化 され る傾 向が あ る。. Epsteinの 夢 の例 ……私 は前 の晩論文 を書 き直 して いたが,い くら頑張 っ て も締切 に間 に 合 い そ うに な く, うん ざ りしていた。 翌 朝 目を さま した と.
(14) 46. 辻 平治郎・向山泰代. き,夢 を思 い 出 した。「 私 は飛行機 に乗 る予定 で,空 港 バ スの停留所 に歩 い て ゆ くの だが ,そ れが 無限 に続 く。 お まけ にひ ど く重 いスー ツケースを っ も て い るので,思 うよ うに歩けず ,つ いに 間 に合わ な くな って,バ スに乗 るの を あ き らめたJ。. 実際 には, 私 は 飛行機 に乗 る予定 は な く, 論文 の こ とが 気. に な ってい ただ け で あ る。 それ では,ど うして タイプライタ ーに 向 い,失 敗 した タイ プ用紙 が 散 らば っている よ うな夢 を見なか ったので あろ うか。 ど うも夢 は置 き換 えた表 現を好む よ うであ る。 そ して これ が連想的概念 体 系 の論理 の特徴 をあ らわ してい る。 そ の メ タ フ ァーは遊戯的 ,か つ 創造的 で あ る。 そ して,そ れ は非常 に多 くの 異な る概念 を 代表 し うる。 この ため ,そ の解釈 は しば しば容 易 で な くなる。 なお, この種 の連想的 ,陰 喩的過程 の メカ ニ ズムが ど うな ってい るのか に つ いて は ,先 述 の興奮 と制上 の汎化勾配 の違 いに よって説 明す ることが で. き. る と Epsteinは 述 べ てい る。. 9.前 意識水準 前意識的 な材料 の特徴 は,そ れ に注意を向けれ ば意識化 で きる ところに あ る。 しか し前意識 水準 の反応 は 自動的 で,か つ非常 に素速 く起 こ るので,そ の思考や イ メー ジに注意を向け意識化す るのは,必 ず し も容 易 では な い そ 。 れ が 可能 となるためには,か な りの訓練 が 必要 で あろ う。 しか し,無 意識的 な材料 とは 異 な って ,不 安 が 意識化 の障碍 に なる こ とは な い。. Freudは 無意識的動機が. もっ と も重要 な行動 決定因だ と 述 べ てい るが. ,. Epsteinは 前意識 の方 が重要 だ と考 えてい る。 とい うのは, 日常的 な経験 や 行動 を体制化 し 方 向づ け てい るのは implicitな 信念や 価値観 (経 験的概念 体 系 )で あ り,そ れが 前意識水準 に ある と考 えるか らであ る。 しば しば態度 か ら行動が 予測 で きな いの は,意 識的態度 しか 測定 してい な いか らであ る 。 感 情や反復的 行動 パ ター ンか ら前意識的 態度 を推 測 した な らば, よ り正 確 な 行動予測 が 可能 だ と考 え られ る。 なお,防 衛機制 は 無意識的動 機 を否 認す るためだ け で な く,前 意識的 な信.
(15) Epsteinの 認知経験的 自己理論 と. CTI(建 設的思考尺度). 47. で 念 に 気 づ か な い よ うに ,そ して , 自分 の 行 動 は理 性 的 で あ っ て 自己中 心 的 は な い と 自己偽 臓 す るた め に も,使 わ れ る よ うで あ る。. 10.情 動 ,気 分 ,経 験的体系 の論理法則 (1)感. 情. 精神分析家 は,情 動 が 1次 的 で あ り,認 知 は 2次 的 だ と考 えてい るが ,認 知論者 は,認 知 が 1次 的 で あ り,情 動 は 2次 的 だ と考 える。 も っ とも, ここ で 認知論者 が 認知 と呼 んでい るのは,前 意識 的 , 自動的 ,直 観的 とい った特 徴 を もつ もの を含 んではい るが。 この問題 について,ZttOnc,R.B.(1980)は ,「 情動的意味 あ いの強 い単語 を瞬間的 に呈示す る と,呈 示時間 が極端 に短 い場合 には,被 験者 は単 語 を読 み とる こと (認 知 )は で きな いが ,好 悪 の (感 情 )半 J断 はで きる」 とい う実 験 事実 を示 して,感 情 が 認知 に先行す る と主張 した。 この研究結 果 は,実 験 手続 きそ の他 を見 るか ぎ り,確 かに感情 (好 悪 )が 認知 (読 み と り)に 先行 してお り,後 者 が前者を決定 して い る とは いいがたい。 しか しそれ では,被 験者 は何 に よって好悪 の判断 を した ので あろ うか。 当 然 の こ となが ら,当 を 得 た判断 をす るため には ,ま ず そ の判断材料 の「 受容」 が不 可欠 で あ る。 そ して,こ の受容 は,意 識的 な読 み と り (認 知)に 先 立 つ 好悪 の判断 よ りも,さ らに先行 して い なければな らな い。 いいか えれば ,そ れ は,瞬 時 に成立す る感情判断 よ りもさ らに短時間 で成立 し,意 識 され る こ とが な い とい う特徴 を もつ。 したが って,そ れ は 閾下 (subthreshold)の 認 知 で あ る と仮定 せ ざるを えな い。 これ は前意識 的 な認知 の 1種 と見な し うる が , これ こそが感情を生 じさせた もので あ る。 と ころ で, 人 はふ つ う「 彼 が 私を 怒 らせた」 とい い,「 私 が彼 の行動 を こ の よ うに解釈 した こ とが ,私 を怒 らせた。違 う解釈 を して いた ら,私 は怒 ら なか っただ ろ う」 とい うよ うな ことは 言わ な い。 しか した とえば ,「 彼 が 叩 いた 」 と解釈す るか「 彼 の手 が あ た った」 と解釈す るか に よって,確 か に生 じる情動 も異 な って くる。 この こ とは,情 動 が ,も ろ もろ の事象 それ 自体 に.
(16) 48. 辻 平治郎・向山泰代. 対 す る直接的反応 では な く,そ の事象 の解釈 (認 知 )に 対 す る反応 だ とい う こ とを示 してい る。 ふだん こ・ の よ うな解釈が 意識 され な いのは,そ れが 前意 識 水準で 自動的 か つ即時的 に起 こってい るためだ と考 え られ る。前意識的認 知 は この よ うな事態 の解釈や意味 づ け までを も含む ので あ る。 この よ うに考 える と,情 動経験 は,① 外的事象 の生起 ,② そ の事象 につ いての 自動的前意 識的解釈 ,③ 情動反応 ,そ して時 に,④ 情動反応 の意識的認知 , とい う順序 をた どって生起す る と理 解 で き よ う。 この こ とは もちろ ん,情 動や気分 が 前意識的認知 に影響 を及ぼ さない とい うこ とではない。 気分 に よって世界 の 見方 が 色 づ け され ,前 意識的認知 が変 化す る とい うこ とは十分 あ りうる。 気分 ほ どではないが ,情 動 について も同 様 の こ とがいえる。 しか し通常 は,情 動 は前意識的認知 に と もな って生 じる もので あ る。 感情 は また,一 般 に動機 づ け の機能を もつ と考 え られ てい る。 ふ つ うは. ,. 自動的即時的 な前意識的 な認知が成立す る と,同 時 に感情 が 生起 し, これが 直 ち に接近や 回避反応 を動機 づ け る。 これが 危機的 な状況では 役 に立 つ こ と が あ る。 た とえば 犬 に噛 み つ かれ そ うに な った ら,間 髪 を入れず に危険 を回 避 せねば な らな い。 この よ うな場合 に,そ の危険性を意識的 に評価 し,そ の 認知 に基 づいて反応 していたのでは 間 に合 わ な い。意識的 な認知 に基 づ く対 処 行動 の重要性 を過 小評価 してはな らな いが ,感 情 に動機 づ け られ て生 じる 即応 的行動 も,適 応上 きわ めて重要 な意味 を もつ ので あ る。 なお,人 は一 般 に「 意識的」認知を過大評価す る傾 向が あ るが ,そ れは. ,. 意識的 な ものの方 が 意識的 で な い もの よ り明瞭 (salient)で あ り,ま た, 自 己 の信念や行動 を意識的 に コ ン トロール してい る と思 う方 が 気分 が よいか ら で あ る。 しか し,実 際 に人間 の感情や行動 を決定 してい るのは,大 部分「 前 意識的」認知 な ので あ る。 (2)気. 分. 気分 と情動 との関係 はち ょうど潮 と波 の関係 にた とえ られ る。気分 も情動 も前意識的認知 の影響 を受 け るが,情 動 の方 がその持続 時間 が 短 く,誘 発刺.
(17) Epsteinの 認知経験的自己理論 と CTI(建 設的思考尺度). 49. 激 も限定 され てい る。 あ る意味 では,情 動 は事象 の直観的評価 に基 づ くのに 対 して,気 分 は 人生 の評価 を反映す るもの とな ってい る。情動 を生起 させ る 前意識的解釈 は 明確 に しに くい こと もあ るが ,そ の誘発刺激 は簡単 に 見分 け られ る。 しか し,気 分 の方 は,い ずれ も見分 け に くい。 気分 には非常 に一 般 的 な前意識的仮説 がかかわ ってお り,こ の仮説 は他 の 多 くの信念 ネ ッ トワー クの 中核 をなす もの と思われ る。 したが って,あ る気 分 の もとでは,そ の気分 に関連 した過去経験 が 思 い 出 され る し,将 来 に もそ の気分 が 投影 され る。 それゆ え,気 分 の変化 が 生 じる と,人 格 が変 った よ う な印象を生 じる こ とが ある。 β)経 験 的概念体系 の論理法則 経験的体系 は情動 と密接 に関係 して い るので, この体系 の論理法則 は,感 情 を経験 してい る ときの思考過程 を分析す る ことに よって,推 沢1で き る。他 の認知論者 とは違 って ,Epsteinは 喚起状況 の評価 は情動 の構成要素 には含 め な い。情動 の本質 は,攻 撃 ,逃 走 ,環 境 か らの離脱 や環境 へ の参加 な ど. ,. 一定 の 方式 で 体制化 された 反応傾 向 に あ る。 この反応傾 向 には, 行動的要 素 ,生 理的要素 ,主 観的感情要素 ,受 容的要素 ,認 知的要素 が 含 まれ る。. 経験的体系は,感 情経験 とともに発達す るので,意 識的 な概念体系 とくら べ ると,次 のよ うな特徴を よ り強 くもつ。①直接的 な感情経験 と緊密 に結び ついてお り,抽 象的ではない。②行動志向的 であ り,考 え込む ような もので はない。③ 自己中心的 で, 自己の福利 への関心が強 い。④ ゆるやかに統合 さ れ てお り,解 離 を生 じやす い。⑤ じゅうぶん分化 していないので,汎 化勾配 がゆるやかであ る。⑥次元的判断 より範疇的判断 にな りやす い。⑦事象の解 釈 によって媒介 され るのではな く,あ たか も事象 と情動 とが直接働 きかけて くるかのよ うに体験 される。 経験的概念体系 と合理的概念体系 の 違 いを 明 らかにす るために,Epstein は強姦 についての テ レビ討論番組を 例 にあげ ている。 参加者 は 2人 の強姦 犯,心 理学者, お よび 視聴者 であ った。 ここで 強姦犯 は, 普通 の意識状態 では 自分 が どうしてこんなに非道な ことを したのか と思 うが, しか し同 じよ.
(18) 50. 辻 平治郎・ 向山泰代. うな状況 におかれ た ら,ま た罪 を犯す可能性があ る, と告 白 した。 これを聞 い た 1人 の女性 は,彼 らが再 犯 の可能性を認 め る以上 ,重 刑 を科す べ きで一 生刑 務所 か ら出す べ きで な い と,主 張 した。 この発言 に視聴者 は熱狂的 に拍 手 し賛 同 した。 これ に対 して心理学者 は,そ んな こ とを した ら彼 らは正直 に もの を言わ な くな るだけで,問 題 の解決 にはつ なが らな い。 そ の原因を明 ら か に して適切 な処置 を とる ことこそが必要 な のだ。 また,無 期刑 では殺人罪 よ り重 くな るので ,そ の よ うな重刑 を科す る と,か えって証拠 隠滅 の ための 殺 人を助長 しかね な い と説 いた。 心理学者 の議論 は合理的 で分析的 で あ る。 が ,こ の発言 に賛 同す る ものは全 くな く,視 聴者 を苛立 たせただ け で あ った 。 それ は視聴者 が経験的概念体系 に基 づいて反応 してい るか らで あ る。彼 ら はみずか らの強 い感情 が 自分 の考 え の正 しさを証 明 してい る と思 ってい るか の よ うで あ った。視聴者 か らの質問 に対 して犯罪者 が「刑罰 が重 くて もそれ で抑 え られ るわけではない」 と答 えて も,彼 らは全 く理解 で きな い様子 で. ,. 絶対 に そんな こ とはな い と言張 り,何 度 も同 じ質問 を繰返 した。 また,「 そ れ ではお前 のか み さんが 強姦 された ら,ど うす る P」 と,個 人的 な問題 にひ き よせ て理解 しよ うとした。す る と犯罪者 も「 そんな奴 は殺 してや る」 と応 じ,経 験 的体系 の解離 されやす さを示 した。 この よ うに,心 理学者 の合理的 体系 と視聴者 の経験的体系 とはそれ ぞれ が 固有 の論理法則 を もってお り,両 者 の 間 には コ ミュニ ケ ーシ ョン・ ギ ャ ップの あ る ことが 分 る。 それ では,合 理的体系 の方 が建設的 で適応 的 か とい うと,常 に そ うだ とい うわけ では な い。両者 はそれ ぞれ長所 と短所 を も ってい る。合 理的概念 体系 は,選 択肢 の重み づ けを し,行 動 を遅 らせ ,複 雑 な課題 に取組む時間的余裕 が あ る と きには,確 か に適応的 で あ る。数学や科学 の問題 を解 い た り,現 実 生活 の問題 を解決 した りす るには,理 想的 な体系 で あ る。 しか しそれ は,動 機 づ け の 内的源泉を欠 く情熱 の な い体 系 で あ り, この点 に 限界 が あ る。 これ に対 して経験的体系 は,合 理的体系 の よ うに ソフ ィス テ ィケー トされ てい な くとも,情 動経験 に対す る直接的 な反応性 を もつ ので, よい と感 じ悪 い と感 じる もの を 知 ってい る。 この よ うな 意味 で, 両者 は相補性 を もつ といい う.
(19) Epsteinの 認知経験的 自己理論 と. CTI(建 設的思考尺度). 51. 表 1.経 験的概念体系 と合理的概念体系 の性質 の比較 (Epstein,1990) 経験的体系. 合理的体系. 全体的. 分析的 論理的 :合 理性志向 (何 が合理 的か) 行動は事象 の意識的な評価 によ って媒介され る 現実は抽象的象徴 (言 語 と数) によって符号化 され る 緩慢 な処理 :遅 延的行動 を志 向 素速 い変化 :思 考 の速度で変化. 痛志向 (何 が. 『. 詔響患埼香双芦 行動 は 過去 の 経験 か らの 波動 (vibes)に よって媒介される 現実は具体的 イメージや メタフ ァーによって符号化 され る 迅速な処理 :即 時的行動を志向 緩徐な変化 :直 接または間接的 経験 の反復 による変化 経験か ら直接学習. 奄僣 爵 釜詣甚 響寡深術記警厨 てい る. 経験 の象徴的表象か ら学習 よ り高度な分化 と統合. 7こ. 受動的 ,前 意識的 に体験 され る 情動 にか きまわ され る. :. 自明的妥 当性 :体 験 した こ とは 疑 い よ うが な い. に経験 され る 意認理ぁ軍 議 讐 論理 と証拠 に よ り,正 当化す る ことが必要 :. る。 Epsteinは この両者 の違 い を上 の よ うに ま とめてい る。 Ⅲ .実 証 的 研 究. Epsteinの 理論 は この よ うに壮大 で あ り,臨 床事例 の解釈 な どには大 きな 力を発揮す る。 また,彼 の議論 は的確 で説得力 もあ る。 しか し,事 実 の理 解 や解釈 には有効 で あ って も,現 状 では実証 的研究 が あ ま りに も少 ない。 これ ほ どの体系を構築 しなが ら,実 証的研究 を可能 にす る よ うな作業仮説 はほ と ん ど導 き出 しえていない。 それ は この理論 が も と も と臨床的経験 を も とに し て構 築 された ものだか らか もしれ な い。 が ,理 由は と もか く,彼 の理論 は実 証的研究 を と もな ってお らず ,こ れが最大 の弱点 に な ってい る。 しか し もちろ ん,彼 も手 を こ まね いてい るわ け ではない。最近 では ,Con‐. structive Thinking lnventory(略 して. CTI)な るものを作成 して,精 力的. に実証的研究 を進 めてい る。彼 に よれば,知 能 は一 般 に学業成績 とは相関を.
(20) 52. 辻 平治郎・向山泰代. もつ が ,仕 事 や対人関係 な どの社会生活 にお け る成功 とはほ とん ど関係が 認 め られ な い。 そ の理 由は,実 際生活 にお け る成功 は,合 理的体系 に属す る知 能 よ りも,経 験的体系 に属す る建設的思考 (constructive thinking)の 能 力 に よって決定 され る部 分 の方 が 大 きいか らだ と考 え られ てい る。す なわ ち知 能 テ ス トは もっば ら合理的概念体系 の能力を測 る もので あ り,経 験的概念体 系 の能 力を測定す る ものではないのであ る。 したが って,建 設的思考能 力を 測定 で きるテ ス トを作成 で きれ ば ,こ れ に よって実 生活 にお け る成 功 を よ り 正確 に予測 で きる と期待 で きる。 それ では,建 設的思考 の能 力 は どの よ うに して捉 えれば よいのだろ うか。 直 ち に考 え られ るのは ,知 的 な能 力を代表す る と考 え られ る行動標本を テ ス ト項 目に して知能 の測定 をす るの と同様 に,経 験的体系 の能 力を代表す る と 考 え られ る行動標本 を適切 に選 び 出 し,こ れを課題 として被験者 に実施 し. ,. そ の成績 に よって建設的 思考能 力を評価す る方法 で ある。 しか し,知 的 な課 題 に くらべ る と経 験的体系 の能 力を しらべ る課題 は選択・ 作成 がむずか しい か らで あろ う。 Epsteinは この方法 を とらず ,質 問紙法を選 んでいる。 しか し,質 問紙法 に よる測定 も決定 して容 易 ではない。 なぜ な らば ,経 験 的体 系 におけ る認知 や情報処理 は,ほ とん ど自動的 に,意 識 され る ことな く 生 じるので, 自動的思考 (autOmatic thinking)の 内容 や過程 を内省 に よっ て捉 えるのが 困難 だか らで あ る。 とは い え, 自動的思考 は しば しば意識的 な 思考 を も伴 ってい る。 この意識的 な部分 の思考 な ら,被 験者 に 内省 させれ ば 捉 える こ とがで きる。 したが って,そ の断片を よせ 集 めれ ば,そ の人 の 自動 的思考 (あ るいは経験 的体系 の機能 )が どの程度有効 で あ るかを推測で き る と考 えて よか ろ う。 ここで Epsteinは ,神 経症的傾 向や抑鬱傾 向な どを示す不適応 な人は,経 験 的体系 の能 力 が低 い,す なわ ち破壊的思考 (destructive thinking)を しや す い 人 だ と暗黙裡 に仮定 してい る。 この よ うな人 は ,論 理療法 (Ellis,1962) や認知療法 (Beck,1976),あ るいは帰属 ス タイル な どの研究 で 明 らか に され た よ うに,次 の よ うな思考や行動 スタ イル を もつ ことが 分 か ってい る。す な.
(21) Epsteinの 認知経験的自己理論と CTI(建 設的思考尺度). 53. わ ち, 自己や他者 の 受容 がわ る く,種 々の 問題 を過剰 に 自分 に関係 づ け , も の ごとを ポ ジテ ィ ヴでな くネ ガテ ィヴに考 え,オ ール・ オ フ 0ナ ッシング的 な独断的 な考 え方 を し,過 去 のい や な ことにいつ まで も こだわ り,心 配を し す ぎ,ネ ガテ ィ ヴな結果 に対 して過剰 な反応 や過剰 な一 般 化を し, 目的 に あ った道具的行動 を とらず ,迷 信的 で あ る等 々。 もちろ ん経験的体系 の能 力 の 高 い 人 ,す なわ ち建設的思考 をす る人 は, この逆 の傾 向を示す と考 え られ て い る。 この よ うな仮定 に基 づ いて Epsteinら は,上 記 の よ うな認知や思考 の ス タイル を破壊 的思考 (あ るいは建設的思考 の欠如 )の 特徴 と同一 視 した。 こ うして Epsteinら は, この よ うな認知 ス タイルを尋 ね る百 余 の質問項 目 よ りな る CTI(Constructive Thinking lnventory)を. 作成 し, 妥 当性を. チ ェ ックす るための他 の質問紙 とと もに,大 学生 の被験者 に実施 した。 この 際 ,① この. CTIで 知能 とは独立 の対処能 力を測定 で きる,② この建設的思. 考 の総合因子 は,人 生 にお け る非知的 な側面 の成功 (た とえば,仕 事 ,愛 情. 関係,社 会的な関係,情 緒的 0身 体的な健康 など)に 関係 している,③ 建設 的思考はい くつかの因子に分化 し,そ れぞれの因子が人生における異なる種 類の成功と関係をもつ, とい う仮説を検討 している。 このテス トは現段階ではなお未完成である。が,因 子分析によリー応解釈 可能な次の 6因 子を得ている。すなわち,① 情動的対処 (emOtional coping) ②行動的対処 (beha宙 oral coping),③ 分断的思考 (categorical thinking), ④迷信的思考 (superstitiOus thinking),⑤ 素朴楽観主義 (na市 e optimism), ⑥悲観的思考 (negative thinking),で ある。 これ らの 因子を下位尺度 と見 なすと, 6つ の下位尺度得点が計算で きることになる。 もちろん,下 位尺度 ①,② の得点が高い と建設的思考能力が高 く,③,④,⑤,⑥ が高いとその 能力が低 く,破 壊的な思考を しやすいと考えられている。 また,回 転前の第 1因 子に高 く負荷 した項 目により,総 合尺度 (global scale)得 点を算出す る と, 6つ の下位尺度得点は,⑤ 素朴楽観主義を除き,い ずれもこの総合尺度 得点 と高い相関をもつことが分かった。 妥当性を チュックするために, これ らの尺度得点 と, ①仕事における成.
(22) 54. 辻 平治郎・ 向山泰代. 功, ②異性関係 における成功, ③社会的対人関係 の成功, ④学業成績, ⑤ 心理的症状,⑥ 身体的症状,⑦ 自己統制 の問題,③ アル コールや薬物へ の依 存 , との関係を見 ると,「 総合尺度得点」,「 情緒的対処」,「 行動的対処」 の. 3尺 度 は,「 学業成績」を除 くすべ ての 要因 とあま り高 くはないが 有意な相 関を もつ ことが分か った。す なわち,仕 事や対人関係 の成功 と正の相関を も ち,⑤ 以下 の心身 の症状などと負の相関を もつ。 これ に対 して IQは 学業成 績 とのみ有意な正 の相関を もち,そ の他 の要因 とはまった く関係を もたない ことが 明 らかになった。 これ らの結果 はまさに仮説通 りであ り,こ の尺度 の 妥当性を支持す るもの と考 え られ ている。. Ⅲ .CTI(bnstructive. Thinking lnventory)の. 検討. 本邦 で も Epstcinと 同様 の知見が得 られるか どうかを見るために,私 たち ま CTIを 邦訳 し,こ れを実施 してみた。最初 の 日本版 ヤ. CTIは ,翻 訳一一. 特 に 日本語表現一― に問題 があ り, 必ず しも Epsteinの 知見を 確認で きな か った。 しか し,因 子分析などには,い くらかの興味深 い結果 も見 られたの で,以 下 にその概要を述べ てお きたい。 なお, 日本版. CTIは 現在 その改訂. 作業を進行中なので,や がて信頼性や妥当性 のデータともにその報告がで き るはずである。. 1.方 法 (1)翻 訳版 の作成. CTIは 先 に述べた 6下 位尺度 に (図 1)。. Lie Scaleを 加えた計 108項 目か らなる. これを文化的差異を考慮 しなが ら,で きるか ぎ り忠実 に翻訳す るよ. うに努めた。 (2)被 験者. 被験者 は 女子大学 1年 生 164名 で, 年齢 はほ とんどが 18∼ 19歳 であ る。 記入洩れがあ った ものや教示を じゅうぶん理解 しなかった回答者を除 いたの.
(23) Epsteinの 認知経験的 自己理論 と CTI(建 設的思考尺度) *Global COnstructive Thinking. ①EmotiOnal Coping. 可縦荘瀞:■。 価 s. ② Behavioral. LiI=tril爾 甲. Coping. ③ Categorical Thinking. L:1窯 i.ThnHng. C)Superstitious Thinking. L::1電 :if覇. i∬. ⑤ Naive Optimism ⑥ Negative Thinking ⑦ Lie Scale. 図 1。 CTIの 構造 (Epstein,1989に 基づ き図式化したもの). で ,有 効標本 は 140名 とな った。 β)手 続 き 上 記 の被験者 に授業時間中 に. CTIを 集 団実施 した。 まず 質問紙 に 印刷 さ. れ た注意書 きを音読 し,結 果 は研究 以外 の 目的 には使用 しない ことを伝 えた 後 に記名 させ , これ らの項 目が “自分 の考 え に どの程度 一 致す るか "を 「 全 くそ の とお り」 か ら「 全 く違 う」 の 5段 階 で評定 させた。 回答 に要 した 時間 は約 30分 で あ った。. 2。. 結果. 「 全 くそ の とお り」か ら「 全 く違 う」を 5点 ∼ 1点 に換算 し分析 した。 初 め に,Lie Scaleを も含 めた 108項 目で 因子分析 (主 成分分析・ ヴァ リマ ック ス 回転)を 行 な った ところ,Lie Scaleの 8項 目は共通性 が極端 に低 く,尺 度全体 とはか な り異 質 で あ る と考 え られ た。 この ため ,Lie Scaleを 除 い た. 100項 目で再度因子分析を行 な った。 そ の結果 ,ス ク リー・ テ ス トや因子 の 意味 内容 か ら 5因 子解 が 妥 当で あ る と思われ た。 しか し, 5因 子全体 での説.
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