自動車産業における「環境コミュニケーション」についての一考察 : 福特六和(台湾)のISO14063を中心に (研究ノート)
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(2) のコミュニケーションへと発展させ、企業活動に様々. していなかったという問題があり、企業によってやり. な意味で市民性・地域性・環境性を反映させる仕組み. 方が異なっているのが現状である。. を構築することがステークホルダからより信頼が得ら. ISO14063 にも示されているが、 環境コミュニケー. れることになり、結果的に持続可能な社会経済システ. ションのやり方は、環境という文化をも含んだ項目で. ムを実現することへ繋がってくる。. あり、社会経済的背景が異なる国、地域、文化によっ. 現代社会における「車(自動車)」 の存在は、 中核. て異っていなければならないとの認識がある。このよ. 的交通運輸手段であると同時に、 車の使用段階にと. うな地域・環境・文化への依存程度、影響についても、. どまらず、 製造段階も CO2 排出を伴うなど、 地球温. 研究は少ない。. 暖化、エネルギー消費など環境に直接影響を与えてい. 3.研究の目的. る。その意味では、自動車を生産する企業だけの問題 ではなくなっている。企業、行政、そして消費者・市 民との協働すなわちコミュニケーションを通じた環境. 本研究の目的は、台湾の自動車企業の事例研究とし. 方針・環境行動・環境貢献が求められている。. て、その環境報告書・環境戦略の分析を行うことで、. 国際規格認証機構(ISO: International Organization for. 台湾の自動車産業における環境コミュニケーションを. Standardization)が 1996 年 9 月に国際統一規格として. 明らかにすることである。. の環境マネジメント規格、すなわち ISO14000 シリー. 研究対象として取り上げるのは、 台湾の福特六和. ズを発行させた。この ISO14000 シリーズに位置づけ. (福特六和汽車股份有限公司) の環境コミュニケー. られる ISO14063 が環境コミュニケーションの規格化. ションであり、比較対象として日本のトヨタ自動車も. であり、2006 年 8 月に発行させている。ISO14063 の. 取り上げる。台湾の福特六和(福特六和汽車股份有限. 発行は、自動車産業の環境報告書などに強い影響を及. 公司 /Ford Lio Ho Motor Company Ltd) は、 これまで. ぼしている。. アメリカの Ford Motor Company や日本のマツダ株式 会社との資本提携・技術供与・委託生産などの関係が. 2.問題意識. あり、アメリカ系の影響を強く受けている。一方、日. これまでの企業の環境対策は、公害問題や経済成長. の生産販売に代表されるように、環境対応・環境貢献. 優先を背景にして、必ずしも十分な環境関連の情報が. に積極的に取り組んできており、世界の自動車産業に. 公開されてきたとは言えない。たとえ企業が経費をか. も大きな影響を及ぼしてきている企業である。位置づ. けて一生懸命環境経営に取り組んでいても、環境情報. けの異なる 2 社を取り上げ、その差異点(動機、方法、. が部分的公開に留まっていたり、環境対応への意思決. 相手、政策、活動などが含む)について、ISO14063・. 定プロセスの正当性・社会性が欠落していることから、. 環境コミュニケーションを中心とする分析をし、今後. ステークホルダから適正な評価が得られていなかった. の台湾の自動車産業における環境コミュニケーション. 反省・問題もある。特に台湾の企業は、価格面での国. のあり方を提示する。. 本のトヨタ自動車は、ハイブリッドカー「プリウス」. 際競争力が強く問われてきたために、 この傾向が強. 4.研究方法. い(ヒヤリング調査などからも確認している)。環境 対策・対応は、規制強化の国際的動向の影響もあり、 戦略を誤ると企業経営を圧迫しかねないほど財政的負. 本報告は、 筆者が行っている「福特六和(台湾)、. 担となりかねないため、費用対効果も視野に入れる必. トヨタ(日本)の環境経営特に環境コミュニケーショ. 要性が出てきている。リコールなどで環境対応を事後. ンに関する研究」 のなかで、 先行研究、ISO14063 お. 的に必要となる事例も増えてきており、環境リスク軽. よび福特六和の環境報告書について取りまとめてい. 減のためにも環境コミュニケーションが注目されてい. る。筆者が行っている研究の流れは、図 1 に示されて. る。. いるように、本研究の背景、問題の所在と研究の目的. 一方、環境報告書の発行に代表される環境関連の情. などの関連ある資料を収集、精読、整理を第一段階と. 報公開、企業の環境施策への外部専門家・市民などの. して行った。次に、先行研究であるが、環境コミュニ. 参画などが、企業の環境コミュニケーションとして、. ケーション、ISO14063 及び台湾における環境報告書. 増加している。しかし、企業にとって必須なステーク. の現状についてレビューを行った。続いて、台湾の福. ホルダからの環境施策への支持を獲得するために重要. 特六和及び日本のトヨタ自動車を対象として資料収. な手段である環境コミュニケーションは、定義も確立. 集、企業訪問によるヒヤリング調査を行っている。本. 研究ノート. 56.
(3) ⎇ⓥ⢛᥊䇮㗴䈱ᚲ䇮⋡⊛. ⾗ᢱ㓸䇮ᢛℂ. ʳ. ⅣႺ䉮䊚䊠䊆䉬䊷䉲䊢䊮䈱. ˜˦ˢ䋱䋴䋰䋶䋳䈱ʳ. บḧⅣႺႎ๔ᦠߩ. వⴕ⎇ⓥ. వⴕ⎇ⓥʳ. ⁁ߩవⴕ⎇ⓥ. 䉬䊷䉴䉴䉺䊂䉞䊷䋨䇮䊃䊣䉺䋩. ⅣႺႎ๔ᦠಽᨆʳ. ⚿⺰䇮⺖㗴ʳ. 図 1 研究の流れ(現段階). 報告では、中間段階ではあるが、その一部をまとめて. 境報告書と CSR 報告書を分けてまとめている企業も. いる。 今後、ISO14063 関連事項を中心に、 両企業の. あるが、1 冊にまとめられている年次報告書は、環境. 環境コミュニケーションにおける手法、実施の対象、. 社会貢献報告書、サステイナビリティ報告書、企業の. 戦略などを調査分析し、結論及び考察を行っている。. 公器報告書、CSR 報告書など、 さまざまな名称が使 われている。. 5.先行研究のレビュー. 環境コミュニケーションに関して、平成 16 年版『環. 5.1 環境コミュニケーション. 行政、企業、民間非営利団体といった各主体間のパー. 境白書』では「持続可能な社会の構築に向けて、個人、 トナーシップを確立していくために、環境負荷や環境. 環境コミュニケーションは、環境問題に関する多様. 保全などに関する情報を一方的に提供するではなく、. な利害関係者(ステークホルダー)間の情報共有のこ. 利害関係者の意見を聞き討議することにより、お互い. とであり、 企業の責任において環境報告書( CSR 報. の理解と納得を深めていく」と定義している。また、. 告書) などを公表することが第一義的にとらえられ. 鈴木(2006)は、 『マネジメントの生態学』において、. ている。そうしたなか、国連環境会議( UNEP)や各. 環境意識に対する社会変化があり、旧来は影響者が企. 国の会計士協会、 企業、 非営利団体等によって構成. 業、被影響者が住民、そして行政管理責任者の 3 者が. されている国際的なプログラム GRI (Global Reporting. 存在し、それぞれが対立する別の立場を確保する行政. Initiative) が策定する、 企業等による自発的な持続可. 指導型環境管理の形であったとしている。さらに、現. 能性報告の実質的な世界標準を目指すガイドライン. 在進められている協働型管理は、企業と社会、市民、. ( GRI サステイナビリティ・リポーティング・ガイド. 行政調整役とがお互いに影響しつつ、専門家の意見な. ライン 2002)がある。「持続可能性報告の最大目的は、. どを反映しながら、意思決定を行う方式であるとして. 継続的なステークホルダとのコミュニケーションを手. いる。環境意識の変化があり、単純に加害者と被害者. 助けすることである」としており、持続可能性の指標. を分けることができず、利害関係者はお互いに絡み合. の枠組みが経済・環境・社会の三つの側面から、具体. いつつ、より複雑な関係であるとの認識が得られるこ. 的に提示されている。. とにより、 環境コミュニケーションの台頭がみられ. 日本の企業組織は、情報開示の一環として、財政状. る。. 況を中心とする年次報告書を作成し、また環境に関し. 環境コミュニケーションに参加する人々の立場とし. ては環境報告書を発行してきた。しかしながら、GRI. て、住民・市民・第 3 者といったものがある。市民と. ガイドラインがまとめられた影響もあり、2003 年頃. 住民との立場の違いについては、吉田民雄(1989)は、. から次第に、環境報告書は、企業の社会的責任(CSR). 社会的便益を優先し、自己帰結に直結しない公共的価. を主題とする報告書としてまとめられてきている。環. 値を優先する公的なものが「市民」であり、個人的便. 57. 自動車産業における「環境コミュニケーション」についての一考察 −福特六和(台湾)の ISO14063 を中心に−.
(4) ᣥ᧪ߩⅣႺߦኻߔࠆᗧ⼂. ᓇ㗀⠪ડᬺ. ᧪ߩⅣႺߦኻߔࠆᗧ⼂. ⵍᓇ㗀⠪ ᳃. ડᬺߣ␠ળ. Ꮢ᳃. ⴕ⺞ᢛᓎ ⴕ▤ℂ⽿છ ⠪. ⴕᜰዉဳⅣႺ▤ℂ. දဳⅣႺ▤ℂ. 㧔ⴕ߇ⷙ㧕. . ኾ㐷ኅᖱႎ . ⅣႺ. ⅣႺ. 㧔ࠦࡒࡘ࠾ࠤ࡚ࠪࡦ㧚ᓎഀಽᜂ㧚࠳ࠪ࠶ࡊ㧕. 図 2 環境コミュニケーションの変化. 益を優先する私的なものを「住民」であるとしている。. 出処:鈴木邦雄 2006. 5.2 ISO 14063. Arnstein(1969)は、さらに、市民参加にも、①住民の 権利としての参加、②形式的な参加(意見聴取・情報. 環境コミュニケーションという言葉は、必ずしもコ. 提供) 、 ③実質的な民意の無視(世論操作) の 3 段階. ンセンサスが得られた定義が存在していなかった。し. があるとしている。. かし、2006 年 8 月 2 日、ISO の 環境マネジメント. 日本における環境コミュニケーションが制度として. 規格 ISO14063 が発行している。その規格は、組織が. 採り入れられたのは、1970 年代の環境アセスメント. 実施する内外部の環境コミュニケーションについて一. 制度であった。 わが国では 1972 年 6 月に「各種公共. 般原則、方針、戦略や活動に関する指針を与えるもの. 事業に係わる環境保全対策について」の閣議了承を受. である。適切な環境システムがあるかどうか、サイズ、. けて、公有水面埋立・港湾計画・空港整備・電源立地・. タイプ、構造、活動、プロダクト及びサービスにもか. 処分地計画などに対する個別法等による環境アセスメ. かわらずすべての組織に適当であるかどうかへの回答. ント制度が国レベルで実施されている。昭和 50 年の. を求めている。なお、企業の環境コミュニケーション. 中央公害対策審議会・環境影響制度専門委員会では、. のパフォーマンスをよりスムーズ伝達するための進め. 環境アセスメント(環境影響評価) について、 「開発. 方に関して指針を提供するものと位置づけており、. 行為等が空気 、 水 、 土 、 生物等の環境に及ぼす影響の. 認証取得の必要はないとしている。ISO14063 規格の. 程度と範囲 、 その防止策等について、代替案の比較検. 内容は、範囲( Scope) 、専門用語及び定義 (Terms and. 討を含め、事前に予測と評価を行うものである。具体. definitions)、環境コミュニケーションの原則 (Principles. 的には 、 環境影響の評価は 、 計画・事業の決定・実施に. of environmental communication)、 環境 コ ミ ュ ニ ケ ー. 伴う種々の環境質の変化を予測し 、 さらに予測された. ション政策 (Environmental communication policy)、環境. 環境質の変化が人の健康その他の環境の適合性にどの. コミュニケーション戦略 (Environmental communication. ような変化を与えるかという評価に帰着する」として. strategy)、環境コミュニケーション行動 (Environmental. いる。アメリカの精度の影響を強く受けた日本の環境. communication activities) との6項目から構成されてい. アセスメント制度は、意思決定の健全性、すなわち利. る。. 害者間の合意形成が取り入れられており、代替案の考 5.3 台湾における環境報告書の現状. 慮、情報公開、記録保存、規定された手続き、利害関 係者の意思表明の機会保障などが組み込まれている。 情報公開と利害関係者の意思表明の機会保障とは、具. 台湾の企業を対象とした環境やコミュニケーショ. 体的に、手続きにおいて市民に説明を行い、その意見. ン関係の調査研究は少ない。 スコアカード (DTT、. を求める説明会・公聴会・意見書の提出とその回答な. UNEP、IÖW) で発行された環境報告書を評価し、 台. どである。これも環境コミュニケーションの 1 形態で. 湾の企業が環境情報に対して公開する現状、差異点を. ある。. 明らかにしている(劉文翔 1999) 。翁榮欽(2005)は、 産業特性の違いによって環境報告書に開示される内容. 研究ノート. 58.
(5) . 図 3 ISO14063 組織図. 出典:BSI, 2005. も違うが、それぞれ相違点を明らかして、各産業に対. 化炭素による地球温暖化、石油資源の枯渇、年間 500. する環境報告書のモデルのあり方に提起している。環. 万台とも言われる廃車の処理問題など、広範囲に渡っ. 境報告書に対する第三者の評価方法は国によって違う. ており、業界の将来を左右する大きな問題であるとさ. が、台湾向けの評価システムのモデルも提起されてい. れている(所、2002) 。. る(李家萍 2004) 。上記に挙げた三つの研究は台湾で. OICA(国 際 自 動 車 工 業 連 合 会 = Organisation. 進められてきたものである。また、陳・井村( 2007). Internationale des Constructeurs d'Automobiles)は『世界. は、2000 年以降の経営再生について日台比較を行い、. 自動車産業の持続可能な発展及び貢献』と題して、世. 台湾企業の業績回復の早さとその原因として短い周期. 界の自動車産業が、 「環境保護」「経済成長」 「社会的. での経営見直しを指摘している。 国際動向との関連. 公正」という3つの主要なコンセプトのもと、持続可. で、台湾企業による環境対応の早さと関連深い指摘で. 能な発展に向けて取り組んでいるとするステートメン. ある。. トを 2002 年に発表している。日産自動車は、2004 年 3 月に損保ジャパンと共同で「ステークホルダー・ミ. 6.研究対象資料の分析. ティング」を開催し、参加した大学生や NPO のメン. 6.1 自動車産業と環境. を求めることも行っている(中田・梶浦、2005)。. 自動産業と環境の問題は、様々な視点からこれまで. 6.2 ISO14063 について. バー 50 名から「環境・社会報告書」への評価・採点. 取り上げられてきている。自動車産業 - 世界では年間 約 5200 万台の自動車が生産され、現在世界中の自動車. 国 際 規 格 認 証 機 構( ISO: International Organization. の数はおよそ 7 億 5000 万台以上といわれ(篠原勳 . for Standardization) が 1996 年 9 月に国際統一規格と. 2001) 、2020 年頃 10 億台に到達すると予測されてい. しての環境マネジメント規格、すなわち ISO14000 シ. る現状がある(千葉三樹 2001) 。しかも、自動車産業. リーズを発行している。 環境コミュニケーションに. は裾野広い産業であり、使用される車の数の多さのゆ. ついて、ISO14001:2004( JISQ14001:2004) の「 4.4.3. えに、他産業以上に「環境問題に積極的に対応せざる. 項 コミュニケーション」 で「組織は、 著しい環境側. を得ない状況」を生み出す(篠原勳 2001)との認識. 面について外部コミュニケーションを行うかどうかを. が一般的に得られている。この様に、自動車の生産に. 決定し、 その決定を文書化すること。 外部コミュニ. おいて、経済の発展を促進する基幹産業となっている. ケーションを行うと決定した場合は、この外部コミュ. 一方で、地球環境、人間、天然資源エネルギーに間接. ニケーションの方法を確立し、実施すること」として. あるいは直接的な影響を与えている。自動車業界が直. おり、組織の環境パフォーマンスなどの情報公開につ. 面する環境問題は、窒素酸化物による大気汚染、二酸. いては組織にその判断を委ねている。 また、 リスク. 59. 自動車産業における「環境コミュニケーション」についての一考察 −福特六和(台湾)の ISO14063 を中心に−.
(6) 表 1 世界各国に輸出状況 台湾メーカ. ブランド. 国籍. 期間. Ford/Ford Lio Ho. Laser (sedan). Canada. 1985. Mitsubishi/CMC. Space Gear (commercial van). Philippines. 2003. Toyota/Kuozui. Zace (commercial van). Vietnam. 2003. Ford/Ford Lio Ho. Escape (SUV). Japan. 2006 Q2. Mazda/ord Lio Ho. Tribute (SUV). Australia New Zealand. 2006 Q2. Toyota/Kuozui. Vios (sub-compact car). South Africa, South America. 2006 2nd half. . ( 出処:Taiwan Economic News より作成 ). コミュニケーションに関わる「 4.4.7 項 緊急事態への. 六和と相次いで、台湾では自動車生産のための会社が. 準備及び対応」 の規定もある。 さらに 2006 年 7 月に. 創設された。 第二次世界大戦後は、 殆ど日本からの. 環境コミュニケーション−環境情報発信−指針及び. 輸入に頼り、1940 年に自動車の保有は 5000 台弱しか. 実例の規格化を内容とした ISO14063 を発行させてい. なかったが、 その後年々伸び、1988 年には国産車の. る。その 1 項 適用範囲において、 『組織に対し、内部. 前年比 16.8%増の 26 万 9000 台、 輸入車は前年比 2.5. 及び外部環境コミュニケーションについての一般的な. 倍の 12 万 13 万 3000 台となり、 全需要は前年比べ、. 原則、 方針、 戦略及び活動についての手引を提供す. 40%増の 39 万 2000 台となった。 こうして 80 年代前. る』 ものと規定している。ISO/TC207/WG4 において. 半には、低い労働コストとより整備された部品産業を. 作成された ISO14063 では、組織がその環境実績につ. 背景として、先進国メーカーの完成車輸出拠点として. いて情報発信することを支援する新しい道具となる規. 発展してきた。しかし、トヨタを招き、自動車産業を. 格として 3 点に概要をまとめている (ISO 中央事務局 :. 輸出産業に育成しようとした『国富汽車計画』が、輸. Press releases, Ref.:1023,4 August 2006)。. 出義務付問題・技術転移問題で白紙還元となっている。 その後、 政府は 85 年 4 月にはそれまでの自動車政策. ①顕著でなお増大する世界の環境への関心は、組織. を転換し、完成車輸入解禁、関税引き下げ、外資規制. の環境実績の情報発信、とりわけ明瞭で透明性のある. 緩和を打ち出し、『自由化と競争原理』により、国際. 情報発信、 が不可欠でかつ重要であることを意味す. 競争力を強化しようとする政策を打ち出した ( 松浦茂. る。. 治 1983)。. ②規格は、内部及び外部への環境情報発信に関する. OICA によると世界の平均成長率の 3.1% より高い. 原則、方針、戦略及び諸活動に関する指針を提供する。. 率で自動車の生産台数を増加させており、前年度と比. ③規格は効果的な環境情報発信に対する実例と説明. べ、2005 年度は 4%の成長率となっているとのことで. を含み、環境報告書と環境情報発信の品質を改善する. ある。. のに適用できる既存の自主的手引きと取組みを引用し. 台湾における自動車メーカーの外資提携の現状であ. ている。. るが、福特六和はアメリカの FORD70%及び台湾六和. . メーカー 30%の出資比率で成り立っており、日本のマ. 6.3 福特六和の環境戦略. ツダとは技術提携の関係となっている。また、台湾工. 本項では、 公表されている『環境報告書 2002 版』. の自動車占有率だが、 福特六和は 17.9% を占めてお. と『永続性報告書 2005 版』 およびヒヤリング調査を. り、第 3 位となる。環境コミュニケーションにおける. 踏まえて、福特六和の環境戦略を分析する。. 福特六和のやり方だが、2002 年に環境報告書を出版・. 研院によると 2005 年台湾における各自動車メーカー. 台湾 の 自動車産業 は、1953 年 に 裕隆 が 生産 を 始. 公表しており、定期的に住民会議、住宅訪問、見学な. めたことからスタートする。 このメーカーは、 最初. どを行い、多くの環境保全賞を受賞するなど、持続可. にアメリカの Willys との技術提携によって 4WD 車. 能な発展に貢献する手本の企業と評価されている。. (JEEP)の組み立てをしている。1959 年頃、日本の日. 福特六和の生産に直接間接に係る特徴的環境戦略. 産自動車と技術提携をしており、まずトラック、その. は、以下の 7 項目を指摘することができる。. 後乗用車を生産し始めた。続いて三富、三陽、中華、. 研究ノート. 60.
(7) ␠ฬ ᚑ┙ᤨ㑆 ᚲ. ․ᴁゞ㒢ળ␠㧔ᩣ㧕 1972ᐕ121ᣣ ᩶⋵խᡑؑխဎሁԫ705ᇆ. ⾗ᧄ㗵. NT$555,276,500. ታ⾗ᧄ✚㗵. NT$555,276,500. ᓥᬺຬᢙ ↪✚㕙Ⓧ. ༡ᬺ㗄⋡. ਥⷐߥຠ. 2332 349,289ট ⥄േゞߩㅧ⽼ޔᄁ ࠛࡦࠫࡦߩㅧ⽼ޔᄁ ⥄േゞㇱຠߩㅧ⽼ޔᄁ ೨ㅀຠߩャޔャ߮࿖ౝߩ⽼ᄁ ೨ㅀຠߩᆔ⸤┹ᄁޔⓍ⽼ޔᄁᬺോ ࠦࡦࡇࡘ࠲࠰ࡈ࠻ߩ㐿⊒ޔ⸘⸳ޔὐᬌޔᛛⴚ⻁⹙ᬺോ㧔೨ㅀຠ⋧㑐㧕 TIERRA SEޔMETROSTAR ޔRS MONDEO ޔESCAPE/ TRIBUTEޔIXION/PREMACYޔACTIVA/ISAMUޔPROTÉGÉޔ ECONOVAN/BONGOޔPRONTO/PRZޔMAZDA㧟ޔFOCUSޔMAZDA㧡. 図 4 福特六和の概要 福特六和汽車股份有限公司永続性報告書 2005 版より作成. 清潔生産. ISO14001 の認証を取得している。. Primer Push-Push Process: 溶剤使用量削減及び清潔. グリーンサプライヤーとして、Q1 評定システム. プロセスにより、毎年 12,000 リットルの溶剤、11,600. が主な評価システムとして位置づけられているが、. リットルの中塗料の使用量の減少がされており、140. EMM( Enterprise Material Management)の設置及び環. 万元(約 600 万円)の経済的利益がもたらしている。. 境議題が重視されることに伴い、他の評価システムの. New Underbody Coating,PVC: 防音及び震度削減の. 導入も検討している。. ため、 無鉛 PVC の底面の塗料が開発された。 このこ とにより、毎年 8,000KG の PCV 使用の減少ができる。. 環境会計. PELT Gague: 超音波式膜厚測定機械が導入されて. 環境会計システムの導入により、環境に使用される. いる。国内の自動車生産工場で唯一この機械を採用し. 費用がより明確となり、また管理の手法や方法として. ている。 伝統技術の単層測定方法を替えることによ. 環境問題・環境対応を改善することができる。環境会. り、各層の膜厚の測定ができる。また、塗料の節約に. 計の導入で、福特六和は、車の製造工程におけるコス. つながる。. ト削減をもたらし、持続的発展にも貢献できている。. 環境適合設計. 次に、ISO14063 で取り上げられている項目である. より快速、 安全、環境保全を軸として、 「環境適合. 環境コミュニケーションへの取り組みとその特徴をま. 設計」を車研究開発段階に導入している。回収の容易. とめる。. さ、 再利用、 低汚染を追及すめるため、 化学物質使 用の管理、 部品調達などに尽力する。 現在では、 生. 会社政策. 産される車は( EU)2005 廃車回収法令( End of Life. 1990 年代を境に企業の活動は質的変化をしいられ、. Vehicle)85%の標準を満たしている。. 福特六和も経済成長を目指すことから「環境と社会に 配慮した企業活動」 へと方向転換しなくてはならな. サプライチェーンの管理. い。環境報告書に環境コミュニケーションに取り組む. Q1 評価システム: サプライヤーへの評価システム. 理由が明確的に掲載され、 「環境、 経済及び社会の変. である。Q1 評価システム (Ford Q1 suppliers’verification. 化につれ、地域の住民と新たな関係を築き、社会問題. system.) をクリアーさせることで、福特六和は優良サ. の解決に尽力すべきである。環境コミュニケーション. プライヤーのリストに登録できることになった。 評. を通して、ステークホルダからより信頼が得られ、活. 価される項目に関して、 システム能力( ISO14001、. 動の質を高め、持続可能な社会経済システムを実現す. QS9000、MS9000/MMOG) 、パフォーマンス、現場改. ることへつながる。なお、ステークホルダとは政策者、. 善計画、 顧客満足度及び持続的改善などが含まれる。. NPO、NGO、 消費者、 投資者、 企業パートナー及び. また、サプライヤーに ISO14001 取得を勧め、2005 年. 従業員などである。. 7 月 11 日までにサプライヤーの中で 98 の工場等が. 61. 自動車産業における「環境コミュニケーション」についての一考察 −福特六和(台湾)の ISO14063 を中心に−.
(8) 表 2 福特六和及びトヨタ自動車における環境報告書の比較 項目. 福特六和 (Taiwan). トヨタ (Japan). 比較年代. 2005. 2006. 時期. 2004/01-2005/09. 2005/04-2006/05. 名称. Corporate Sustainability Report. Sustainability Report. 第三者認証. なし. 有 (Tohmatsu Environmental Research Institute Ltd,). WEBSITE 掲載. 有. 有. 範囲. 経済面、環境面、社会面. 経済面、環境面、社会面. 語言. 中文、英文. 日本語、英文. 印刷紙類. リサイクル用紙. リサイクル用紙. 参考ガイド. GRI 2002. N.A.. . 出典:両社の報告書より作成. 環境コミュニケーション原則. 組んできており、その行動が社会で評価され多数の環. 福特六和の環境戦略へ強い影響をもたらしている. 境保全賞を受賞している。 例えば、2004 年「 Taiwan. フォード社長の Wilson(2006) は、 「環境コミュニケー. Sustainable Development Award 」 、2002 年 か ら 2004 年. ションは環境パフォーマンスの手段」 とする文書に. まで、連続三年間の「 Environment Protection Award of. おいて「企業は ISO14000 シリーズを採用し、 環境コ. the R.O.C 」 の他に、「 Industrial Sustainable Excellence. ミュニケーションを行う。また環境コミュニケーショ. Award 」などの賞が挙げられる。. ンを有効に活用すれば、企業の環境活動はより多くの ステークホルダから支持を得ることができ、企業のブ. 6.4 福特六和とトヨタの環境戦略比較. ランディングやレピュテーションの向上につながるこ とができる。 」と言及している。. 次に、公表されている『環境報告書』を比較するこ. 役割及び責任については、内部コミュニケーション. とから、福特六和とトヨタ(トヨタ自動車)の環境戦. と外部コミュニケーションに分けられている。内部コ. 略を分析する。. ミュニケーションは、組織内部に限定されるものであ り、従業員の認知度、容認度及び外部利害関係者にど. 図 5 で示されるように 2005 年世界の自動車の生産. のように応えるか確認できる。内部コミュニケーショ. 台数に関して、トヨタは高いシェアを示しており、第. ンでは、 各部門のマネージャーが従業員に教育訓練. 2 位となっている。また WBCSD によると、トヨタは. (法規制、 環境政策、 環境改善パフォーマンスなど). 「環境経営」でリードする会社と位置づけられている。. を行い、実務経験を習得させる。その際、従業員はマ. トヨタは CSR を意識して企業活動を行ってきたでは. ネージャーに環境課題が提案される。 一方、 外部コ. なく、 トヨタが行ってきた企業活動そのものが CSR. ミュニケーションは、書類、電話、口頭討議、製造影. であったといえるとの分析もある(佐久間健 2006) 。. 響、環境、安全工程、品質、購買及びマーケティング. また、トヨタは、毎年の売上のほぼ 1%を環境コスト. に対する回答などを意味している。環境に関する緊急. に計上してきた。 例えば 97 年度には維持コスト 113. 事態には、外部コミュニケーションのガイドラインと. 億、環境投資 782 億円で総額 895 億円を使っている。. なる緊急応変条例を設けている。また、環境コミュニ. トヨタの環境経営を取り上げた所(2002)は、「 「環. ケーションを直接扱っている部署は、環境政策・環境. 境のトヨタ」の企業イメージを市場に定着させること. 情報を確実にウェブサイトに公表し、また地域住民の. に成功している」とした上で、 「環境」を企業競争力. 要請に応えることが行われている。. の源泉とする明確な経営方針、ハイブリッドカー「プ リウス」などが前面に出されているトヨタの環境経営. 環境賞. は、余剰資金が 1 兆円を超える優良企業だからこそで. 近年福特六和は環境保護・環境対応に積極的に取り. きるという指摘もあるとしている。. 研究ノート. 62.
(9) 㪦㫋㪿㪼㫉㫊 㪈㪇㩷㪩㪼㫅㪸㫌㫃㫋㪄㪛㪸㪺㫀㪸㪄㪪㪸㫄㫊㫌㫅㪾 㪐㩷㪟㫐㫌㫅㪻㪸㫀㪄㪢㫀㪸 㪏㩷㪧㪪㪘㩷㪧㪼㫌㪾㪼㫆㫋㩷㪚㫀㫋㫉㫆㬡㫅 㪎㩷㪟㫆㫅㪻㪸 㪍㩷㪥㫀㫊㫊㪸㫅 㪌㩷㪛㪸㫀㫄㫃㪼㫉㪚㪿㫉㫐㫊㫃㪼㫉㩷 㪋㩷㪭㫆㫃㫂㫊㫎㪸㪾㪼㫅㩷㪞㫉㫆㫌㫇 㪊㩷㪝㫆㫉㪻㩷. . 㪉㩷㪫㫆㫐㫆㫋㪸. . 㪈㩷㪞㪼㫅㪼㫉㪸㫃㩷㪤㫆㫋㫆㫉㫊㩷 㪇. . . 㪌㪇㪇㪇㪇㪇㪇. 㪈㪇㪇㪇㪇㪇㪇㪇. 㪈㪌㪇㪇㪇㪇㪇㪇. 㪉㪇㪇㪇㪇㪇㪇㪇. 図 5 世界における各メーカーの生産台数 (2005 年 ) ( 出処:OICA より作成 ). 7.今後の課題. は、懇切丁寧な指導をいただいた。記して感謝申し上. 環境報告書 の 分析、 ヒ ヤ リ ン グ 調査等 か ら、. 六和関係者)に協力いただいた。お礼申し上げます。. げます。また、ヒヤリング調査には、許家偉様(福特. ISO14063 で 規定 さ れ て い る 環境 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ. 文献. ンについて福特六和の分析および日本のトヨタとの. 翁榮欽 (2005)、 「國內各類產業企業環境報告書需求內容. 比較を進める予定にしている。 環境報告書は主なコ. 之研究」、 國立台中教育大學 / 環境教育研究所、 修士. ミュニケーションの道具とされており、本研究では、. 論文. ISO14063 の規定にある環境報告書等に記載されてい. 郭博能、胡憲倫 (2006)「企業從事環境溝通之動機與策略. る項目を中心に、両企業の環境コミュニケーションに. 研究 - 福特汽車案例探討」、2006 清潔生產暨永續發展. おける現状を分析している。最近の変化として、ウェ. 研討會研討會、台灣大學集思會議中心. ブサイト、広告などからも環境情報公開の現状や企業. 環境庁(2004) 『環境白書』. の環境行動に関連する情報を習得できることが分かっ. 佐久間 健(2006) 『トヨタの CSR 戦略 』生産性出版. てきた。今後を分析の手法をウェブサイト、広告など. 鈴木 邦雄(2006) 『マネジメントの生態学』共立出版. まで拡大することを考えている。また、本研究では日. 宣伝会議 (2007 春 )『環境会議』. 本及び台湾の自動車メーカーを対象としているが、研. 千葉 三樹(2001) 『トヨタ「環境経営」 』 かんき出版. 究対象が限定されている。時間的に可能なら、欧米に. 陳如・井村直恵( 2007.) 「アジアにおける経営の再生. おける環境コミュニケーションを分析対象に入れるこ. −日本と台湾との比較−」、2007 年度組織学会研究発. とも必要と思われる。. 表大会報告要旨集、229-232、京都産業大学 . 塚本 潔(2001) 『トヨタとホンダ』光文社. 環境経営との関係で環境コミュニケーションの概念. トヨタ自動車株式会社『 Sustainability Report 2006 版』. が欧米そして日本においても多くの企業が導入してい. 中田安彦・梶浦雅己 (2005)「流通小売業における「社. る。しかし、その解釈・やり方は欧米と日本で異なっ. 会性」について.地域分析』第 4 号第 1 巻 .. ており、台湾の自動車会社・福特六和は、アメリカと. 福特六和汽車股份有限公司『永続性報告書 2005 版』 、. 日本の自動車会社の両方と提携を結んできた経緯があ. 『環境報告書 2002 版』. り、 台湾の環境・ 風土の影響も受けた独自の環境コ. 松浦茂治 (1990)『日本自動車産業の発展分析と展』出光. ミュニケーションを展開していることを明示すること. 書店. が重要と考えている。現時点では、必ずしも明確に分. 見目洋子 在間敬子( 2006)『環境コミュニケーション. 析できていないという反省がある。. のダイナミズム』白桃書房 横山彰( 2007)「環境政策と公共政策」 日本経済新聞・. 謝辞. やさしい経済学(2007.9.7,11). 本研究ノートをまとめるに当り、責任指導教員の鈴. 李家萍 (2005)「環境報告書第三者認證之研究」國立交通. 木邦雄教授(横浜国立大学大学院環境情報研究院)に. 大學管理科學系 修士論文. 63. 自動車産業における「環境コミュニケーション」についての一考察 −福特六和(台湾)の ISO14063 を中心に−.
(10) 劉文翔 (2001)「台灣企業環境報告書現況之研究─兼論利. 台湾財団法人工業技術研究院 http://www.itri.org.tw/index.. 害相關者之看法」 、 南華大學環境管理研究所、 修士論. jsp. 文. 中華民国経済部 http://www.moea.gov.tw/. BSI (2005), " Environmental management - Environmental. OICA http://www.oica.net/ Taiwan Economic News( 2006 )http://cens.com/cens/html/. communication - Guidelines and examples ", DRAFT INTERNATIONAL STANDARD ISO/DIS 14063.. en/index.html. 財団法人 地球・ 人間環境 フ ォ ー ラ ム http://www.gef.. WBCSD http://www.wbcsd.org. or.jp/eco-com/10th_ereport.htm. 研究ノート. 64.
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図
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