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Microb. Resour. Syst. Dec. 2018 Vol. 34, No. 2
平成 30 年度の第 25 回大会は,私が大会長,山口晴 代会員が事務局を務めさせて頂き,国立研究開発法人 国立環境研究所微生物系統保存施設(NIES コレク ション)でお世話をさせて頂きました.平成 30 年 6 月 13 日(水)から 15 日(金)の 3 日間,国立環境研究 所にて開催いたしました.不慣れな点,ご迷惑,ご不 便をお掛けしたこともあったかもしれませんが,参加 されたみなさまに有意義な時間を過ごしていただける ことを願って,NIES コレクション一同で,できる限 りの対応をさせて頂いたつもりです.参加者の内訳 は,正会員 56 名(機関会員を含む),賛助会員 8 名, 非会員 13 名,学生 12 名の計 89 名で,懇親会への参加 者は 60 名,エクスカーション参加者は 30 名となりま した(写真 1).一般講演は口頭発表 11 題,ポスター 発表 15 題の合計 26 題,そして機器・商品・プロジェ クト展示は 7 件(包み屋,(株)生物研究社,(株)テ クノスルガ・ラボ,筑波大学,大学連携バイオバック アッププロジェクト東京大学サテライト,(株)オン チップ・バイオテクノロジーズ,大陽日酸株式会社) でした. さて大会の概要についてですが,スケジュールに 沿ってご紹介させて頂きます.大会初日は,午後から 温暖化棟会議室 1 にて編集委員会,温暖化交流会議室 にてカルチャーコレクション委員会,そして温暖化棟 会議室 1 にて理事会を予定通りに行うことができまし た.2 日目は,大山記念ホール前ロビーにて,8:30 から参加受け付けを開始,大会開会の際には,国立環 境研究所 渡辺知保理事長にご挨拶頂きました.微生 物と人間の深い関わりの中でプラスとマイナスの側面 についてご紹介され,様々な研究分野を支える縁の下 の力持ち的な存在であるカルチャーコレクションの重 要性についても言及頂きました.続けて行われた実務 ワークショップでは,「コレクションにおける人材育 成〜技術や知識をどのように継承していくか」をテー マとして,7 機関の担当者の方々から,話題提供頂き ました.コレクションの技術や知識の継承はとても重 要で,各機関の辿ってきた歴史そのものでもありま す.どの講演も大変興味深く聴かせて頂きました.詳 細につきましては,本号に掲載されている実務ワーク ショップ報告を是非ご覧ください.続いてポスター発 Microb. Resour. Syst. 34(2):93─95, 2018
日本微生物資源学会第 25 回大会報告
第 25 回大会長 河地正伸
日本微生物資源学会第 25 回大会報告 ─ 94 ─ 表の時間となり,各機関の事業報告を含む 15 題のポ スター発表が,大山記念ホール前のロビーにて行われ ました.ポスターを前に活気ある議論が行われて,お 昼休みに入っても,しばらくはポスター前には人だか りができていました(写真 2). 午後のセッションは一般講演から始まり,11 題の 口頭発表が行われました.培養の困難な菌群を対象と する分離法の改良,藻類と細菌の共生関係,新規微生 物の分類や多様性研究等に関する様々な研究成果な ど,微生物資源,微生物系統分類に関連する幅広い分 野の講演が行われました.いずれの発表でも活発な質 疑応答が行われていました.その後,休憩を挟んで総 会が執り行われて,日本微生物資源学会賞と奨励賞の 授賞式,そして受賞講演が行われました.千葉大学真 菌医学研究センターの矢口貴志会員に学会賞(写真 3 左),独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテク ノロジーセンター(NBRC)の浜田盛之会員に奨励賞 (写真 3 右)が授与されました.お二人の受賞をお祝い するともに今後の益々のご活躍を祈念いたします. ホテルグランド東雲で行われた懇親会は,渡邉 信 会員による学会への激励の言葉と乾杯の挨拶で始まり ました(写真 4).国立環境研究所の有志 2 名によるピ アノとバイオリンの生演奏を挟みつつ,参加された 皆々様で交流,親睦を大いに深められていました.優 秀な一般講演,ポスター発表への表彰ですが,選考委 員による投票・選考で,田辺雄彦会員ら(筑波大)の 「炭化水素産生緑藻ボトリオコッカスと共生する新奇 プロテオバクテリア」に優秀発表賞(写真 5 左),久富 敦会員ら(東農大)の「Stenotrophomonas maltophilia 種内のシデロフォアタイプについて」にポスター賞 (写真 5 中),そして森 史会員ら(国環研)の「NIES 藻類コレクションの 2017 年度活動報告」に機関ポス ター賞(写真 5 右)が授与されました.そして宴の終 わりにあたって,山梨大学の柳田藤寿会員から,来年 の第 26 回大会についてのアナウンスがありました. 次大会は山梨大学ワイン科学研究センターにおきまし て開催されることとなりました. 写真 4 懇親会の様子 写真 2 ポスター発表風景 写真 5 大会優秀賞 (左:優秀発表賞 田辺雄彦会員,中:ポスター賞 久富 敦会員,右:機関ポスター賞 森 史会員) 写真 3 学会賞受賞 (左:学会賞 矢口貴志会員,右:奨励賞 浜田盛之会員)
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Microb. Resour. Syst. Dec. 2018 Vol. 34, No. 2 大会 3 日目の最終日は,系統分類部会主催シンポジ ウム「微生物の系統とその機能が織りなす複雑なタペ ストリー」で始まりました.花田 智会員(首都大) による「酸素非発生型光合成の“複雑なタペスト リー”」,森 浩二先生(NBRC)による「硫酸還元能 の描く“複雑なタペストリー”」,吉澤 晋先生(東大) による「ロドプシンが織りなす“複雑なタペスト リー”」,そして野村暢彦先生(筑波大)による「微生 物間相互作用にみられる“複雑なタペストリー”」と いった“タペストリー”を共通のキーワードとして, 多様な微生物の複雑かつ機能的な世界や微生物間の相 互作用を様々な視点で捉えられていて,いずれのご講 演も魅力的で盛り沢山の内容でした.そして休憩を挟 んで,筑波大学の井上 勲先生による微生物資源基調 講演が始まりました.「藻類が牽引した地球進化と生 物進化」と題して,地球環境の歴史的な変化と生物進 化の主要事件の関係について,壮大な時間スケールに 沿って,美しい図表,写真とともにご紹介頂き,様々 な局面で藻類が重要な役割を果たしてきたこと,そし て藻類の進化と多様化が地球史と深く関連しているこ となど,興趣の尽きないご講演を頂きました(写真 6).井上先生の基調講演の後に本大会は閉会となり, その後の午後のエクスカーションには,30 名の方々 に国立環境研究所の環境試料タイムカプセル棟,微生 物系統保存施設,生態毒性標準拠点の 3 施設の見学に ご参加頂きました. 最後に,本大会のために茨城県つくば市まで足を運 んでくださった参加者の皆様方に感謝・御礼申し上げ ます.また シンポジウムや基調講演でご講演いただ いた先生方にも深く感謝申し上げます.次回大会の山 梨にて皆様と再会できることを楽しみにしています. 写真 6 筑波大学 井上 勲先生による微生物資源基調講演