初産婦が保 行動をとる際の動機と負担に関する研究
髙 津 三枝子, 國 清 恭 子, 林
かおり
立 木 香 織, 深 澤 友 子, 常 盤 洋 子
要 旨 【目 的】 初産婦が保 行動をとる際の動機, 負担を明らかにし, 妊婦の保 行動の実態に即した保 指導 のあり方を検討する資料を得ることを目的とする. 【方 法】 妊娠 30週∼34週の妊婦 10名を対象に, 初 妊婦が保 行動をとる際の動機と負担について, 半構造化面接法によりデータを収集した. 析はベレルソ ンの内容 析を 用した. 【結 果】 初産婦が保 行動をとる際の動機と負担について, ①【妊娠中の身体 と日常生活に関心をもって気を付けようとする動機】, ②【医療従事者, 夫や会社の人に指摘を受けたことに 関連した動機】,③【出産・出産後に関連した自 の体と胎児の 康に関連した動機】,④【妊娠経過の変調の 気づきに関連した動機】,⑤【出産体験のある実母や祖母など身近な人から妊娠中の体験を聞いたことに関連 した動機】,⑥【仕事が負担になり妊娠期の保 行動がとれない負担】,⑦【食習慣や生活リズムの変 が自 でコントロールできない負担】という 7つのカテゴリーが得られた. 【結 語】 初産婦が保 行動をとる際 の動機と負担について得られた 7つのカテゴリーから, 妊婦の保 行動は, 食事, 動静, 生活リズムなど日常 生活上の生理的欲求と関係する行動が多いことが明らかになった. 初産婦への保 指導では, 妊婦の日常生 活と保 行動に関与する人間関係を 慮して, 保 行動をとる際の動機になること, 負担になることを把握 し,妊婦自身が妊娠期の 康を意識できるような指導が必要であると える.(Kitakanto Med J 2013;63: 33∼44) キーワード:初産婦, 妊婦, 保 行動, 保 指導, 妊娠期 .は じ め に 妊婦が妊娠による生理的変化に適応し, 妊娠期を 康 で快適に過ごすためには, 保 行動をとることが重要で ある. 妊婦の保 行動は, 食事や運動など日常生活の生 理的欲求である行動が多い. そのため, 妊婦の生理的な 妊娠経過を助長し, 異常の予防・早期発見をするために は, 定期的な妊婦 康診査だけでなく, 保 指導によっ て妊婦自身が妊娠経過を良好に保つための保 行動がと れるように促すことが重要である. しかし, 臨床の現場では, しばしば, 保 指導を医療者 の期待するような保 行動に結びつけられない. また, 間違った保 行動をとる妊婦を目にすることがある. 例 えば, 腹部緊満の症状の増強時に子宮収縮抑制剤を内服 するよう指導されたが, 持続する腰痛を腹部緊満と関連 づけて自覚できなかったために, 内服や安静などの適切 な保 行動がとれず, 切迫早産で入院となった妊婦がい た. また, 増量した帯下を排出させようとトイレに行く 度に腹圧をかけ続けた結果, 切迫早産となった妊婦もい た. このような経験から妊婦がどのようなきっかけや意 図で保 行動を実行しているのかという実態を知り, 一 般的な専門的知識の提供に終始した保 指導のあり方を 見直す必要があると えた. 妊婦の自己 康管理に関する研究は, 1990年代から行 われ, 妊婦がどのような意識をもっているのか, 日常生 活での行動をとるのかなどの報告がある. そして, 妊婦 の保 行動に関する先行研究では, 必要な内容をもれな く指導するためのアセスメントスケール や,妊婦自身 が生活行動 を モ ニ タ リ ン グ す る た め の チェック シー ト が開発されている. また, 医療者が期待する保 行 1 群馬県高崎市中大類町501 高崎 康福祉大学保 医療学部看護学科 2 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学 科 3 群馬県前橋市朝日町3-21-36 前橋赤十字病院看護部 平成24年12月5日 受付 論文別刷請求先 〒370-0033 群馬県高崎市中大類町501 高崎 康福祉大学保 医療学部看護学科 髙津三枝子動がとれたかどうか, 妊娠経過の異常の予防や改善が果 たされたかどうかなどの成果によって保 指導を評価す る研究 が報告されている. これらは医療者が望まし いと える保 行動を促すための保 指導方法に焦点を 当てたものであるが, 実際に妊婦が保 行動をとった きっかけや理由, 保 行動をとらない, または, とれない 原因は, 明らかにされていない. 宗像 は,保 行動は動機が高まり,個人の信念や価値 観によって, 実行に向けた負担が最小限になったときに 実行されると述べている. 妊娠期は生理的変化が著しく, マイナートラブルが出現しやすいため, 意識的に保 行 動をとることが多い. そこで, 本研究では, 初産婦が保 行動をとる際の動 機になること, 負担になることを明らかにすることを目 的とした. そのことによって, 妊婦の保 行動の実態に 即した保 指導のあり方を検討する資料が得られると えた. .用語の操作的定義 保 行動:妊娠期の 康の保持, 増進のために, 妊婦が 妊娠してから妊娠経過に伴って現れる身体症 状に対して, 良かれと思って意識的に変化さ せた日常生活上の行動 動 機:妊婦が保 行動をとる際に, 妊娠経過に伴う 症状に対する苦痛を避けたり, 異常を予防す ることが促される動因と, それらに向かって 自ら気を付けようとしている態度 負 担:妊婦が妊娠したことで, 日常生活行動の変化 を苦痛に思い, 保 行動をとろうと思っても とれずに, 動機が抑制されている状況 .研 究 方 法 1.対象および調査期間 研究対象は, 研究参加の同意が得られた 10名であっ た. 本研究は 18名の妊婦に調査を依頼したが, 切迫早産 などの入院管理が必要になった妊婦, 母体の異常により 他院に搬送された妊婦, 面接の前日または当日に同意が 撤回された妊婦を除き, 最終的に 10名の妊婦に面接を 実施した. 研究対象の条件は, ①妊婦 診を受け, 妊娠経過に異 常を指摘されていない妊娠 30∼34週の初産婦, ②現在 治療中の合併症がない, ③胎児の異常を指摘されていな い, とした. 研究対象の選定に先だって, 研究協力施設の院長およ び看護師長へ本研究の主旨を説明し, 対象条件に合致し た妊婦をリストアップしてもらった. リストアップされ た妊婦に対して, 看護師長から研究者を紹介してもらい, 研究の主旨と方法を文書と口頭で説明し, 同意書に署名 を得た. 調査期間は, 平成 20年 9 月∼11月であった. 2.データの収集方法 インタビューガイドに基づく半構造化面接法により データ収集を行った. インタビューの質問項目は, ①現 在, 妊娠中の 康を保つために, 日頃から良かれと思っ て行動していることとその動機, ②気を付けようと思っ ていること, ③気を付けようと思っていてもできないこ ととその理由, ④実際の行動に対する負担感, ⑤負担感 を生じた場合, 継続できた理由と方法, ⑥今後, に, 妊 娠中の を保つために行動しようと えていること, と した. なお, 面接場所は, プライバシーが保護できるように 研究実施施設の個室を 用した. 面接内容は対象者の同 意を得た上で, IC レコーダーに録音した. 録音された データから逐語録を作成し 析資料とした. 3. 析方法 データ 析は, ベレルソンの内容 析法を用いた. こ の内容 析法は, 表現されたコミュニケーション内容を 客観的, 体系的, かつ数量的に記述する調査技法である. 本研究は, 初産婦が保 行動をとる際の動機になること, 負担になることを明らかにすることを目的として, 言語 的コミュニケーションの内容を 析対象とするため, ベ レルソンの内容 析法が適していると えた. 1)コード化 逐語録より, 妊婦が語った保 行動をとる際の動機と 負担についての内容が表現されている文脈を抽出して データ化し, それを記録単位とした. 1つの文脈の中で異 なる動機と負担を表す言動が複数あった場合には, その 種類ごとに けて複数の記録単位として扱った. 次に保 行動をとる際の動機と負担について表現された記録単 位を集め, 意味内容を変えないように注意しながら初期 コード化の作業を 1事例ごとに行った. 続いて対象者 10 名それぞれで整理した初期コードを集め, 内容の類似性 に従って 類し, 抽象化の作業を経てコード化した. 2)カテゴリー化 コード化した各コードについて, 保 行動をとる際の 動機と負担にしたがって 類し, 抽象度を高めてサブカ テゴリー化した. サブカテゴリーは, 個々の内容と全サ ブカテゴリーの中での位置づけ, 各カテゴリー間の関係 から, データ 類およびサブカテゴリーネームの適切性 について検討した上で決定した. サブカテゴリーは に 高次概念でカテゴリー化し, 同様にカテゴリーネームを 決定した.
3) 析の信頼性・妥当性 データ 析の過程においては, 質的研究法を熟知した 研究者 2名にスーパービジョンを受け, データに忠実に 解釈が行われ, 妥当性が得られるよう努めた. また, 析結果の信頼性を確保するために, 母性看護 学の研究者 3名に 析を依頼し, スコットの一致率を算 出した. 本研究でのスコットの一致率は, 87.5%であっ た. 4.倫理的配慮 研究実施施設へは, 研究協力の内諾を得た上で, 研究 計画書を群馬大学の臨床研究倫理審査委員会へ提出し, 研究実施の承認を得た (番号 8-12). 研究対象者に対し, 個別に研究目的および内容, 研究 に参加した場合の利益・不利益, 自由意思による参加と 同意の撤回の自由, 個人のプライバシーの保護と研究成 果の 表, 研究終了後の資料・データ等の破棄方法を口 頭および書面にて説明し, 同意を得た. .結 果 1.対象者の背景 対象者の年齢は 21∼37歳で, 平 26.1歳 (SD4.3) で あった. 妊娠週数は 30∼34週で, 平 31週 5日 (SD1.4) であった. 面接は, 妊娠による身体的変化が著しく, 妊娠 期の不快な症状が出現しやすい妊娠 30∼34週の妊婦 診時に実施し,面接時間は,平 36.3 (SD17.5) であっ た. 対象者 10名のうち 7名が勤労妊婦であった. また, いずれも自然妊娠であり, 母体の妊娠経過および胎児の 経過に異常はみられなかった (表 1). 表1 対象者の背景 平 値 標準偏差 年齢 (歳) 26.1 4.3 妊娠週数 (週日) 31週 5日 1.4 面接時間 ( ) 36.3 17.5 有 無 職業の有無 (人) 7 3 妊娠経過・胎児の異常の有無(人) 0 10 表2 初産婦が保 行動をとる際の動機と負担を構成するカテゴリー 【カテゴリー】 記録単位数(%) サブカテゴリー> 記録単位数 本やブログで妊娠経過や異常について読んで調べて実際に書かれている行動 をとった> 11 体重増加を体感した時は, 我慢しながら食事量や間食を調整している> 10 体重が増えたため, 食事の内容やカロリーの工夫を行い, 体重を測っている> 3 【妊娠中の身体と日常生活に関心をもって 37 身体のきつさ次第で動く程度を え日常生活を工夫する> 3 気を付けようとする動機】 (25.0%) 妊娠前から継続して食事内容に気を付け水 摂取を行っている> 2 異常を感じたら直ぐに実母に相談できるようにする> 2 動こうと意識して家事や買い物などで運動をしている> 2 座っていることが苦手でお腹が重たいながらも動いている> 2 運動は嫌いなので甘い物などを我慢する> 1 出産までは体を冷やさず, 食べ物に気を付けることを継続する> 1 医療従事者から妊娠に伴う異常の予防についてアドバイスを受け食事, 体重, 動静に気を付けている> 12 【医療従事者,夫や会社の人に指摘を受けた ことに関連した動機】 28 (18.9%) サプリメントや運動などについて医師等に聞いたことを実際に行っている> 夫や家族の協力により間食や食事を我慢している> 6 5 夫や会社の人に指摘を受け食事や間食に気を付けている> 4 母親学級で逆子の話を聞いたので胎動に気を付けている> 1 出産までの体重管理が気がかりで動こうと思っている> 4 赤ちゃんのために受診し治療を受けた> 4 【出産・出産後に関連した自 の体と胎児の 康に関連した動機】 15 (10.1%) 赤ちゃんを 康に産みたいことと出産の時に自 が苦しみたくないので食生 活を整えた> 3 出産・出産後の母乳育児に困らないようにするために準備をしている> 3 産後の体型を戻すのが大変だと思い, 体重に気をつけている> 1 お腹が張って痛くてつらい時は子宮収縮抑制剤を飲んでいる> 14 【妊娠経過の変調の気づきに関連した動機】 32 (21.6%) マイナートラブルが出現したので緩和するような対処行動をとっている> 動き過ぎてお腹が張った時は休息と動作に気を付ける> 8 6 お腹が痛く張りが続いたため診察してもらった> 4 実母, 祖母から体験談を聞き, 食事, 生活リズム, 運動に気を付け体調管理をし ている> 11 【出産経験のある実母や祖母,身近な人から の話を聞いたことに関連した動機】 17 (11.4%) 祖母, 実母, 叔母など出産体験者の体験談を参 に行動している> 自 の身体の変調を出産体験のある姉妹のアドバイスを受けて診療を受けた> 3 2 出産経験のある家族や友達から 血予防について聞き食事を工夫している> 1 【仕事が負担になり妊娠後期の保 行動が とれない負担】 12 (8.0%) 仕事が負担になり食事管理や運動ができず安静や休息もとれず無理してしま う> 12 【食習慣の改善が自 でコントロールでき ない負担】 7 (4.7%) 食事を我慢しようと思うが, 食べたい物を食べてしまう> 朝食が作ってあれば食べ, 起きられない時は朝食を抜いている> 4 3
2.妊娠期の保 行動をとる際の動機と負担を構成する 7つのカテゴリー 対象者 10名のデータから, 保 行動をとる際の動機 と負担は 148記録単位, 128初期コードが抽出された. 抽 出された初期コードを類似性に従って 類した結果, 87 コード, 31サブカテゴリーが得られた. さらに 31のサブ カテゴリーから, ①【妊娠中の身体と日常生活に関心を もって気を付けようとする動機】, ②【医療従事者, 夫や 会社の人に指摘を受けたことに関連した動機】, ③【出 産・出産後に関連した自 の体と胎児の 康に関連した 動機】,④【妊娠経過の変調の気づきに関連した動機】,⑤ 【出産体験のある実母や祖母など身近な人から妊娠中の 体験を聞いたことに関連した動機】,⑥【仕事が負担にな り妊娠期の保 行動がとれない負担】,⑦【食習慣や生活 リズムの変 が自 でコントロールできない負担】とい う 7つのカテゴリーが得られた (表 2). 以下, 各カテゴリー (【 】で示す) について, サブカ テゴリー ( > で示す) とコード (「 」で示す) を用 いて, 結果を説明する. 1)【妊娠中の身体と日常生活に関心をもって気を付け ようとする動機】 このカテゴリーは, 妊婦が妊娠してから身体に関心を もって, 妊娠中の 康を えて日頃から良かれと思って 行っている保 行動の動機と負担を示した. 10サブカテ ゴリー, 25コード, 37記録単位で構成された. (1) 本やブログで妊娠経過や異常について読んで調 べて実際に書かれている行動をとった> このサブカテゴリーは, 実際に妊婦自身が身体の 変調に気付いた時に, 自ら本やインターネットなど で調べて, 自 にも該当する情報を得られたことが 動機になり, 保 行動をとった内容であった. 妊娠経過について調べた内容は,「友達から妊婦雑 誌, 出産・育児の本をたくさんもらったので読んで いる」, 妊娠初期のつらい時や体調の悪い時に, 母 性看護学の教科書や本を買って妊娠経過を調べた」 と表現された. そして, 実際に紹介されていた保 行動をとった内容では, 妊婦雑誌などの本に書い てある早産予防や浮腫防止のための減塩を行った」, 「同じ週数の同じ事で悩む妊婦のブログを読んで参 にし, 実際に書かれていることを行った」, 他の 人もがんばっているので妊婦雑誌や母親学級の冊子 を読んでいる」と表現された. (2) 体重増加を体感した時は, 我慢しながら食事量 や間食を調整している> このサブカテゴリーは, 妊婦が体重増加を体感し たことが動機になり, 体重管理のために, 我慢しな がら食事量や間食を調整した内容であった. 体重増加を体感した時には, 夕食を夫と食べる 時には仕方がないので少なめで同じ物を食べる」, 「腰痛は体重が増えたせいかと思い, 食べ物に気を 付ける」,「食べたい物を食べたいとは思うが体重が 増えると思うと食事や甘い物を我慢する」と表現さ れた. また, 食事量が増加した時には, 夫が夜勤の 時の夕食の量を調整した」, 妊娠してから甘い物が 恋しくなって我慢, 我慢と思いながら, 量を減らし て食べている」と表現された. (3) 体重が増えたため, 食事の内容やカロリーの工 夫を行い, 体重を測っている> このサブカテゴリーは, 体重増加が動機になって 食事の工夫や体重測定を行う内容であった. 具体的には, 体重を測るたびに増えたので, 野菜 や魚を多く摂り, 低カロリーの工夫をしている」, 「体重がだんだん増えてまずいと思って, 体重計を 買って毎日体重チェックした」と表現された. (4) 体のきつさ次第で動く程度を え日常生活動作 を工夫する> このサブカテゴリーは, 妊娠経過に伴う身体のき つさが動機となって日常生活を工夫しようとする内 容であった.具体的には,「体のきつさ次第で動く程 度を えている」と表現された. (5) 妊娠前から継続して食事内容に気を付け水 摂 取を行っている> このサブカテゴリーは, 排泄や食事に関する行動 について, 妊娠前から良いと思っていたことが動機 になり, 妊娠後も継続して行っている内容であった. 具体的には, 妊娠前からの 秘や尿路結石のた め 秘予防の食事や水 摂取を継続している」と表 現された. (6) 異常を感じたら直ぐに実母に相談できるように する> このサブカテゴリーは, 相談できる友達がいない ことが動機となって緊急時の対処としてすぐに実母 に相談できるようにしている内容であった. 具体的には, 相談できる友達がいないので異常 を感じたら直ぐに実母に相談できるように携帯を持 ち続ける」と表現された. (7) 動こうと意識して家事や買い物などで運動をし ている> このサブカテゴリーは, 妊娠中の運動に関心を もっていることが動機となり, 日常生活の中で運動 を取り入れていた内容であった. 具体的には, 外へ散歩などに出ない なるべく 家事はこなすようにしている」, 雨が降っていると 外に散歩に行けないので動こうと思ってショッピン
グモールなどに買い物に行く」と表現された. (8) 座っていることが苦手でお腹が重たいながらも 動いている> このサブカテゴリーは, 妊娠経過に伴って増大す る腹部の重さを意識することを動機として, お腹の 重さに意識を向けて行動しようとする内容であっ た. 具体的には, 座っていることが苦手で, お腹の重 さが気にならないので動いてしまう」と表現された. (9 ) 運動は嫌いなので甘い物などを我慢する> このサブカテゴリーは, 妊娠中に運動を行うこと が負担になっていることを示し, 運動は嫌なので 甘い物などを我慢して食べ物に気を付けている」と 表現された. (10) 出産までは体を冷やさず, 食べ物に気を付ける ことを継続する> このサブカテゴリーは, 体を冷やさないこと, 食 べ物に気を付けることなど, 妊娠後に良いと気付き, 実感していることが動機になって出産まで継続しよ うとする内容であった. 具体的には, 「出産までお風呂はゆっくり入って 体を冷やさない事と食べ物に今まで通り気を付け る」と表現された. 2)【医療従事者, 夫や会社の人に指摘を受けたことに 関連した動機】 このカテゴリーは,妊婦 診を通して医師・助産師・看 護師といった医療従事者, 助産師学生, 夫や会社の人な どから体重管理などの 康上問題になる事柄について, アドバイスを受けたことが動機になって保 行動をとる 内容を示した.5サブカテゴリー,14コード,28記録単位 で構成された. (1) 医療従事者から妊娠に伴う異常の予防について アドバイスを受け食事, 体重管理, 動静に気を付け ている> このサブカテゴリーは,妊婦 診で医師・助産師・ 看護師などの医療従事者や助産師学生による, 妊娠 に伴う異常の予防に関する保 指導が動機になり, 妊娠期の 康に望ましいとされる食事行動や運動に つながった内容であった. 具体的には,「医師・助産師・看護師からの食生活 や体重について指摘され体重管理や運動を行う」, 「学生の保 指導で, 安静や休息, 体重増加時の食 事に気を付け, 鉄 を摂るように言われて, そのよ うにしている」と表現された. (2) サプリメントや運動などについて医師等に聞い たことを実際に行っている> このサブカテゴリーは, 妊婦が医療従事者から, 妊娠中の 康を保持増進するために必要な栄養や運 動について聞いたことが動機となった内容が表現さ れた. 栄養については, 葉酸は必要と言われている ので医師に相談し, 医師から教えてもらったサプリ メントを飲み始めた」, 太ると良くないと聞いて, 甘い物などを好き勝手に食べない」と表現された. 運動については, 子宮口が狭いと出づらいと聞い たことがあって股関節を広げて座るようにする」, 「歩いた方が良いと周囲から言われているので, 運 動しようと思っている」と表現された. (3) 夫や会社の人に指摘を受け, 食事や間食に気を 付けている> このサブカテゴリーは, 妊娠後の食事量や間食に ついて, 夫や会社の人から指摘を受けたことが動機 になった内容であった. 具体的には, 「夫やパートナーに言われて甘い物 に気を付け野菜を摂っている」,「夫や会社の人から 指摘を受け, 食べ過ぎないようにしている」と表現 された. (4) 夫や家族の協力により間食や食事を我慢してい る> このサブカテゴリーは, 妊婦自身のみが保 行動 をとるのではなく, 制限された保 行動を夫や家族 が一緒に行ってくれる, または励ましてくれるとい う協力が動機になっていた. 具体的には「祖母が一緒に間食を控えようと言っ てくれたから一緒に間食をやめられた」,「夫に甘い 物を食べないように言ってもらい食べないように我 慢している」と表現された. (5) 母親学級で逆子の話を聞いたので胎動に気を付 けている> このサブカテゴリーは, 母親学級で胎児の位置を 教えてもらったことが動機となって, 胎児を意識し, 胎動を観察するようになった内容であった. 具体的には, 母親学級で逆子だと上腹部に い 部 があると聞いて, 逆子に気を付けながら胎動を 見ている」と表現された. 3)【出産・出産後に関連した自 の体と胎児の 康に関 連した動機】 このカテゴリーは, 胎児の 康に関心をもち, また, 妊 婦自身の身体にも関心をもって出産までに保 行動をと る際の動機を示した. 15サブカテゴリー, 11コード, 15 記録単位で構成された. (1) 出産までの体重管理が気がかりで動こうと思っ ている> このサブカテゴリーは, 産休に入った妊婦が出産
までの体重管理が気がかりになったことが動機と なって, 運動しようとする内容であった. 具体的には, 産休に入ると自 で自 の体重管 理ができるかどうかが気がかりで, 動くようにはし ようと思っている」と表現された. (2) 赤ちゃんのために受診し, 治療を受けた> このサブカテゴリーは, 胎児の 康を思うことが 動機となり, 診や治療を受ける内容であった. 具体的には「エコーを受けるために病院で 診を 受ける」, 妊娠して赤ちゃんのために針治療に通っ ている」, 産婦人科からもらった薬は, 赤ちゃんの ためだと思ってつらいけど飲んだ」など, 胎児の 康を思い, 保 行動をとった内容が表現された. (3) 赤ちゃんを 康に産みたいことと出産の時に自 が苦しみたくないので食生活を整えた> このサブカテゴリーは, 康な子どもを産みたい, 自 も出産の時に苦しみたくないという思いが動機 となり, 妊娠と診断された時から食生活を整える内 容であった. 具体的には, 赤ちゃんを 康に産みた いことと出産の時に自 が苦しみたくないのでお菓 子や外食を我慢する」, 妊娠してから野菜を摂り, 3 食食べ, カップラーメンやレトルト食品をやめて食 生活を整えた」, 妊娠をきっかけに緑黄色野菜を食 べるようにしている」と表現された. (4) 出産・出産後の母乳育児に困らないようにするた めに準備をしている> このサブカテゴリーは, 入院準備や陣痛を想像で きない不安, 母乳で育てたい気持ちをもっているこ とが動機となり, 出産準備や乳頭・乳房マッサージ を行っている内容であった. 安心なので早めに入 院の準備を始めた」, いつ陣痛が来るか解らないの でテレビのお産のシーンなどから想像して陣痛をイ メージしている」, 母乳育児のために乳房マッサー ジをしている」と表現された. (5) 産後の体型を戻すのが大変だと思い, 体重に気 を付けている> このサブカテゴリーは, 産後の体重増加への関心 が動機となって, 出産後のボディイメージを意識す る内容であった. 具体的には, 「体重が増えすぎると産後戻すのが 大変だと思い, 体重に気を付けている」と表現され た. 4)【妊娠経過の変調の気づきに関連した動機】 このカテゴリーは, 妊娠経過中に, 身体の異変に気づ き, 妊婦自身が予防を意識して保 行動をとる際の動機 を示した.3サブカテゴリー,19 コード,32記録単位で構 成された. (1) お腹が張って痛くてつらい時は子宮収縮抑制剤 を飲んでいる> このサブカテゴリーは, 腹部緊満や腹痛を感じた ことが動機になって, 受診や子宮収縮抑制剤を内服 したなどの対処行動をとった内容であった. 具体的には, 医師からお腹が張っていると言わ れ, 仕事をしているせいなのかと思い, 子宮収縮抑 制剤を飲んで様子を見た」など, 腹部緊満を感じて 医師の指示通りに子宮収縮抑制剤を内服する内容が 表現された. に,「定期的な内服以外にもお腹が痛 くてつらい時は, 我慢しても仕方ないと思うので随 時子宮収縮抑制剤を内服し休む」など, 子宮収縮抑 制剤の内服後も腹部緊満に注意を払っている表現も みられた.また,「日中は子宮収縮抑制剤を飲むと楽 で, 安心なので, 医師の指示通り定期的に子宮収縮 抑制剤を内服する」, 癖のように三度三度, 子宮収 縮抑制剤を飲んでいた」など, 子宮収縮抑制剤を内 服することが安心につながっていた内容もあった. (2) マイナートラブルが出現したので, 緩和するよ うな対処行動をとっている> このサブカテゴリーは, 妊娠期の腹部増大に伴っ て出現した不快な症状を苦痛に感じたことが動機と なって, 日常生活における苦痛を緩和するための対 処行動をとった内容であった. 具体的には, 「お腹が大きくなり立っていると胎 動で胎児が落ちそうになるので, さらしを巻くよう にした」,「 が出なかったら下剤をもらおうと思っ ていた」,「腰痛があり薬局の店員に湿布を 用して よいかを確認して温湿布を買った」という内容で あった. (3) 動き過ぎてお腹が張った時は休息と動作に気を 付ける> このサブカテゴリーは, 妊娠中に腹部の緊満を感 じたことが動機になり, その対処として日常生活に おいて休息や安静を選択した内容であった. 具体的には「動きすぎてお腹が張ると思うと動か ないように気を付け, 張っていると休み, 治まった ら動く」, 動くと にお腹が張り, 回数が増えると 思い動かない」,「体のサインで休んでいた方が良い のかと思って休むことが多い」と表現された. (4) 動き過ぎてお腹が痛く, 張りが続いたため診察 してもらった> このサブカテゴリーは, 妊娠経過において異常な 徴候を感じたことが動機になり受診行動をとった内 容であった. 具体的には,「お腹が痛くて,張りが続いたので診 察してもらった」,「汗をかくほどお腹が痛くて眠れ
ない時があって翌日病院に来た」と表現された. 5)【出産体験のある実母や祖母など身近な女性から妊 娠中の体験を聞いたことに関連した動機】 このカテゴリーは, 妊婦が家族をはじめとした身近な 女性から妊娠中の体験を聞いたことが動機になって保 行動をとる内容を示した. 5サブカテゴリー, 6コード, 17記録単位で構成された. (1) 実母, 祖母から体験談を聞いて, 食事, 生活リズ ム, 運動に気を付け体調管理をしている> このサブカテゴリーは, 妊婦の身近な存在である 実母や祖母の体験談が動機になって, 日常生活の中 で妊娠期の 康に注意している内容であった. 具体的には,「実母のアドバイスを聞き,食事や食 べ過ぎに注意して, 運動を行った」, 祖母から濃い 味付けや高脂肪の食事や夜遊びを指摘され生活リズ ムを整えた」, 実母や祖母から出産の話を聞き, 運 動のために散歩をしている」と表現された. (2) 祖母, 実母, 叔母など出産体験者の体験談を参 に行動している> このサブカテゴリーは, 実際に出産を体験した女 性達から聞いた, 妊娠中に良いとされていた保 行 動の体験が動機になって, 妊婦の日常生活に取り入 れた保 行動の内容であった. 具体的には, 祖母, 実母, 叔母などの経験者の言 葉ほど心強いものはなく, そのまま受け継いでい る」,「冷たい風が良くないことや体を冷やしてはい けないと言われ, 夏場は暑かったが扇風機や団扇で 我慢した」,「伯母達から柿や茄子は食べてはいけな いと言われて柿や茄子は食べていない」と表現され た. (3) 自 の身体の変調を出産体験のある姉妹のアド バイスを受けて診療を受けた> このサブカテゴリーは, 自 の身体の変調につい て出産体験のある姉妹からのアドバイスが動機とな り診療を受けた内容であった. 具体的には, 腹部緊満を感じた時は姉に相談し, 「姉が腹痛の時に診察を受けた経験を聞いて, お腹 が痛いと思い診察してもらった」と表現された. (4) 出産経験のある家族や友達から 血予防につい て聞き食事を工夫している> このサブカテゴリーは, 妊婦が家族, 親戚や友達 などの身近な人から, 妊娠中の 血の情報を得たこ とが動機になって 血 を 予 防 し た 内 容 で あった. 「親, 友達から聞いて 血に気を付け食事を工夫し ている」と表現された. 6)【仕事が負担になり妊娠期の保 行動がとれない負 担】 このカテゴリーは, 仕事をしている妊婦が妊娠期にお ける保 行動をとる際の負担になっている内容を示し た. 1サブカテゴリー, 6コード, 12記録単位で構成され た. 「仕事で立ち続けてつらくて座った」,「仕事でどうし ても重い物を持たなければいけないことがあると無理し てしまう」と表現され, 長時間の立位や重たい物を持つ など, 就労中の姿勢や動作が負担となり, 保 行動がと れない苦痛が表現された.また,「仕事のために体は動か ないのに動かなくてはならず, お腹が張っても休みたい のに休めず,受診もしづらい」と,腹部緊満を感じた時に 気軽に休息が取れないことや容易に受診できない内容が 表現された. に,「産休を取るために仕事が忙しく食事 の時間が遅くなり, 夕食も遅くなり食べる量が増えてし まう」, 股関節の運動は本の通りにできず, 仕事で疲れ るのでできない」と, 妊娠経過に合わせた食生活や運動 を行いたくても, 仕事が負担になって保 行動がとれな い内容が表現された. 7)【食習慣や生活リズムの変 が自 でコントロール できない負担】 このカテゴリーは, 妊婦自身がやろうと思ってもでき ないこと, 我慢する事が負担になり行動がとれないこと を示した.2サブカテゴリー,5コード,7記録単位で構成 された. (1) 食事を我慢しようと思うが, 食べたい物を食べ てしまう> このサブカテゴリーは, 妊娠中に体重を増やさな いために食事を我慢しなければならないことが負担 になり, 食事管理ができない内容であった. 具体的には, 食べられないことを我慢ばかりし ているとストレスがたまるので, 診が終わった日 の昼食は外食し, お菓子も食べている」, 診で体 重を注意されて気を付けようとは思うが, 出産は自 然な事だから大 夫と思って自 に甘くなってしま う」と表現された. (2) 朝食が作ってあれば食べるが, 起きられない時 は朝食を抜いている> このサブカテゴリーは, 規則正しい生活をしよう とするが, 日常生活のリズムの変 が負担になり, 食生活のリズムが乱れる内容であった. 具体的には, 「目覚めた時に祖母が用意した朝食が 目の前にあると食べる」,「朝が起きられないため朝 食を抜いている」と表現された. . 察 1.初産婦が保 行動をとる際の動機と負担 初産婦が保 行動をとる際の動機と負担について 7カ
テゴリーが導き出された. 以下に, 初産婦が保 行動の 動機と負担を 察し, そこで得られた知見をもとに保 指導のあり方について えを述べる. 1)妊娠中の身体への関心と日常生活行動 【妊娠中の身体と日常生活に関心をもって気を付けよ うとする動機と負担】では, 体重管理に関連して食事や 運動に注意し工夫している, 運動をする, または, しよう としている内容が表現された. このことによって, 妊娠 期にある妊婦は, 体重管理に関連した食事や運動につい て関心が高いと えられた. 体重管理については, 体重が増えたと思った時は,食 事量や間食を調整している>, 体重増加を実感したこと が動機になって食事量や間食を調整していた. さらに, 体重増加をした場合は, 体重が増えたため,食事の内容 やカロリーの工夫を行い, 体重を測っている> とセルフ チェックを加えて実施していた. また, 運動については, 家事や買い物などの日常生活 の中で運動を意識しようとした動機, 増大する腹部の変 化に対応しながら行動しようとする動機であった. 妊娠 期の運動についての保 指導は, いかに各自の日常生活 の中で身体活動量を高めるかという工夫をさせることが 大切であるといわれている. そのため, 妊婦の環境や生 活習慣に合わせた運動に関する保 指導が必要であると える. さらに, 同じ週数の同じ事で悩む妊婦のブログを読 んで参 にし,実際に書かれていることを行った」と,本 やインターネットから調べた内容を実際の保 行動に取 り入れていた.加えて,「他の人もがんばっているので妊 婦雑誌や母親学級の冊子を読んでいる」と, 他の妊婦か らの情報も活用しようとしていた.妊娠・出産・育児期の ニーズに対応するためのシステム開発の研究では, 必要 な情報を必要な時に入手できる重要性が指摘され, 妊娠 中の適切な情報を入手できるシステムの開発が検討され ている. 本研究では, 妊婦がインターネットやブログ, 他の妊婦からの情報が保 行動の動機になっていること がわかった. これらの情報は専門的知識をもとに発信さ れている保証はなく, 妊婦が自 にとって都合の良い情 報の影響を受けて間違った保 行動をとる可能性が懸念 される. そこで, 妊婦が, 自身にとっての好都合な情報で はなく, 産科学的に正しい情報を選択できる支援が必要 と える. 食事については, 【食習慣や生活リズムの変 が自 でコントロールできない負担】において, 食事を我慢す る苦痛が表現された. 食事を我慢しようと思うが,食べ たい物を食べてしまう>を構成するコードに,「 診で体 重を注意されて気を付けようとは思うが, 出産は自然な 事だから大 夫と思って自 に甘くなってしまう」と表 現された内容がある. 妊婦は, 体重に気を付けようとい う動機をもつが, 食欲という生理的欲求が優位になった ため, 体重管理の意識が低くなっていた. 妊婦にとって 食事を我慢することは負担が強化され, 予防を意識した 保 行動が抑制されてしまう. 妊娠は身体の生理的変化 であるが, 生理的範囲を逸脱した場合, 急激に異常へ進 行し, 周産期死亡や妊産婦死亡に至る可能性がある. 妊 婦が負担に思う保 行動について, 負担の内容を明らか にし, 妊娠期の 康を保つためにも, 食事や運動など日 常生活行動を調整することが望ましい. 体重管理に関連した食事や運動, 生活リズムなどの日 常生活行動は, マズローの欲求階層の最も低階層である 生理的欲求である. 生理的欲求は, 本能的・根源的な欲 求であるため, 食欲や運動などが制限された行動になり 負担が高まる可能性がある. そのため, 妊婦が妊娠中の 身体に関心を持ちながら, 日常生活の中での保 行動を 定着できるような働きかけが必要であろう. 一方で,【仕事が負担になり妊娠期の保 行動がとれ ない負担】のカテゴリーでは,仕事が負担になって,食事 管理や運動が行えない, 仕事中は安静や休息が取りにく く, 無理している内容が明らかになった. 職場の環境に よっては, 動かざるを得ない状況であったり, 切迫早産 の徴候が見られ受診をしたくても休めない状況があっ た. そのような中で日常生活の食事や運動に気を付けよ うと思っても出来ないことが明らかになり, 仕事をして いることが負担になっていた. 妊婦の労働状態と生活リ ズムを 慮した, 実施可能な保 行動をアセスメントす る必要がある. 妊娠期は妊娠高血圧症候群などの産科的合併症が発生 しやすい. このようなハイリスク妊娠を予防するために, 妊娠期の保 指導では, 食事や体重管理の指導が行われ ることが多い. 同時に, 妊娠期の生活リズムを整え, 積極 的に運動することも指導される. 妊婦のセルフモニタリ ングシートの開発, 生活行動アセスメントスケールの妥 当性についての先行研究では, その項目に体重, 食生活, 運動, 生活リズムが含まれる. つまり, 妊娠期の 康を維持し, 異常を予防するためには, 妊婦が日常生活 行動を自己管理できることが重要である. 妊娠期の妊婦 が 康を維持するための保 行動として, 日常生活行動 が関与していることが示唆された. 2)妊娠経過の変調への気づき 【妊娠経過の変調の気づきに関連した動機】では,妊婦 自身が妊娠経過に伴って現れる腹部緊満や妊娠期の不快 な症状を身体で感じ取りながら動静に注意していた. に, 腹部緊満を感じた時には, 自ら子宮収縮抑制剤の内 服を調整し, 診察を受け, 異常にならないような保 行 動をとっていた.
妊娠期の妊婦の身体は, 胎児の成長とともに腹部が増 大し, 母体へ身体的負荷がかかり, マイナートラブルが 出現するだけでなく, 日常生活動作も緩慢になりがちで ある. また, 妊娠経過の異常として切迫早産や早産の可 能性がある. 保 指導では, マイナートラブルについて 妊婦の苦痛や不安を受け止め対処することが求められ る. また, 早産の予防は, 母体が妊娠中の摂生によって 防ぐことができるので, 妊娠確定後, 早期に保 指導を 行うことが重要である. 妊娠期の妊婦は, 腹部の増大による動作や食事などの 生活行動が制限され, 保 行動への負担が強まる可能性 がある.佐藤ら は,妊婦の身体感覚に関する研究におい て, 身体に良い生活調整を行うと実際に身体の調子が良 くなることを知識だけでなく身体感覚で実感できたこと が, 生活調整への積極的な姿勢を強めたと報告している. 【妊娠経過の変調の気づきに関連した動機】では, 妊婦 が妊娠経過に伴う変調を身体感覚として気づくことに よって異常の予防や受診行動などの保 行動をとるきっ かけになっていた. 妊婦の身体感覚は, 妊婦が妊娠経過 に伴う変調への意識を高め, 保 行動をとる際の動機と して重要であると える. 一方で,【出産・出産後に関連した自 の体と胎児の 康に関連した動機】のカテゴリーでは, 妊婦は自 自身 の 康だけでなく, 胎児への 康にも関心があることが 明らかになった. 妊娠期の妊婦の情緒的変化として, 胎 児の 康と自 の体について不安が生じるようになる. この時期は, 出産に対する心身の準備を始めようとする 時期であり, 妊婦が出産と育児において困らないように という動機によって, 入院の準備や陣痛をイメージし, 乳房マッサージを始めていた. また, 妊婦は, 胎児の 康 について, 妊婦 診での胎児の超音波画像を見るために 受診するなど積極的な行動をとっていた.鈴井 は,妊婦 の身体感覚と胎児への愛着の関連性の研究で, 妊婦 診 でのレオポルド触診法によって妊婦が胎児の位置を理解 することで愛着形成が促されることを報告している. ま た, 超音波診断を含む妊婦 診と, 超音波診断を含まな い妊婦 診を受けた妊婦の体験の研究では, 妊婦 診で 超音波の画像を見せながら行う胎児診断の説明が, 妊娠 経過に合わせた胎児の成長・発達や正常の経過を妊婦が 意識することにもつながると報告している. 以上のことから, 妊婦の身体の変調に併せて, 胎児の 康への気づかいや愛着が動機になって保 行動が促さ れるのではないかと えた. 3)【医療従事者,夫や会社の人からのアドバイスによる 動機】 妊婦 診は妊娠が正常に経過しているかを確認し, 異 常の早期発見のために実施される. 妊娠期に入ると, 妊 婦 診の受診回数は 2週間に 1回になる. そのため, 医 療従事者と出会う機会が増え, 指導回数が増える. 妊婦 が受けた保 指導は, 生活行動の内容がほとんどであり, 【医療従事者, 夫や会社の人からのアドバイスによる動 機】でも食事,体重,動静についてアドバイスを受ける内 容であった. これらのアドバイスを受けた内容が妊婦に とって良い気づきにつながると, 保 行動をとることが できた. 佐藤ら は, 周産期保 の現状の研究において, 保 指導が 康意識に影響する可能性について示唆して いる. そのため, 妊婦 診での妊婦の保 行動を促すに は, 妊婦の生活状況や 康意識についての え方を個別 にアセスメントして, 指導する必要があると える. また, 食事の制限については, 妊婦一人が制限された 行動を行うのではなく, 一緒に生活する家族, 会社の人 の指摘により我慢していることも明らかになった. 妊婦 のキーパーソンからの協力を得られるための支援も必要 であると えられた. 4)実母や祖母など身近な人の妊娠中の体験談 【出産体験のある実母や祖母など身近な人から妊娠中 の体験を聞いたことに関連した動機】は, 出産を体験し た女性達が行った保 行動を聞いて, 妊婦自身の保 行 動に取り入れようとする動機であった. 祖母や実母は自 が受けた保 指導と妊娠・出産の経験を妊婦に伝えて いた. 妊婦は, 出産体験者の体験談を参 にして自 の 生活行動を見直し, 妊娠期の 康において良かれと思い, 食事や生活リズムを改善し, 運動するなどの保 行動を とっていた. 岡山ら は, 妊婦は実母をモデルとして妊 娠・ ・産褥過程をイメージすると報告している.また, 実積ら は, 実母には妊婦の主体性を育成させる効果が あると報告しており, 次世代への伝承は, 妊婦が保 行 動をとる際の動機になり得ると える. 妊婦は, 実母を モデルとして母親役割の模倣を行ったりすることから も, 実母から受けたアドバイスによって保 行動が促さ れる可能性が強いと えられる. 小笠原らは, 妊婦は迷 いや悩みの解決に際して親・きょうだいに相談すること が最も多く, 次いで友人に相談することが多いと報告し ている. しかし, 親や友人などの出産経験者が保 行動 について専門的知識をふまえてアドバイスをしていると は言い難く, 妊婦が産科学的に正しい情報を得ているか を確認する必要があると えられる. 2.初産婦が保 行動をとる際の動機と負担を 慮した 保 指導 妊婦の保 行動は, 食事, 動静, 生活リズムなど日常生 活上の生理的欲求と関係する行動が多い. 宗像 による と, 保 行動は, 多くの相矛盾する動機間の力関係に規 定される. 動機には, 保 行動を促す動機と妨げる動機
があり, 動機間に矛盾がなく, バランスよく体系化され たときに保 行動がとれる. 一方, 体系化された動機が 日常の生活行動に負担がかかる場合には保 行動は妨げ られる. 本研究において, 妊婦が保 行動をとったことを示す カテゴリーとして,【医療従事者,夫や会社の人に指摘を 受けたことに関連した動機】,【出産・出産後に関連した 自 の体と胎児の 康に関連した動機】,【出産体験のあ る実母・祖母など身近な人から妊娠中の体験を聞いたこ とに関連した動機】があげられた. これらのカテゴリー は, 妊婦が妊娠期の 康を保つ上で, 妊婦が良かれと 思って意識的に変化させた時に保 行動がとれていた. 一方で, 妊婦の保 行動がとれないことを示すカテゴ リーとして, 【食習慣や生活リズムの変 が自 でコン トロールできない負担】,【仕事が負担になり妊娠期の保 行動がとれない負担】があった. 妊娠期の 康を保つ ためには, 食事や運動などの日常生活における行動のコ ントロールが必要とされた. 妊婦の日常生活行動は, 生 理的欲求による行動が多いため, 時には負担になって保 行動がとれない. 特に, 体重管理に関連した食事や運 動に対しては負担になる傾向があった. また, 勤労妊婦 にとっては, 仕事の内容や疲労によって保 行動がとれ なくなっていた. 保 行動をとる際には, 複数の動機が存在している. 妊婦が保 行動をとれない場合, 動機間の矛盾により, 日常生活での苦痛が生じ, 動機が抑制されたためと え る. そのため, 妊婦が保 行動をとる際に, 促進される動 機, 抑制された動機を把握し, 妊婦の生活背景やリズム に合わせた保 指導が必要と える. 【妊娠中の身体と日常生活に関心を持って気を付けよ うとする動機】では, 妊娠中の身体と日常生活への関心 において, 食事, 動静, 生活リズムなどの生理的欲求と日 常生活における保 行動についての相矛盾する動機間の 力関係が存在し, 保 行動を促進する動機間に矛盾がな く妊婦に受け入れられた場合に保 行動がとれ, 運動 は嫌いなので甘いものなどを我慢する> というように, 日常の生活行動に負担がかかると認識された場合には保 行動が妨げられることが示唆された. 一方, 医療従事者, 夫や会社の人からのアドバイスに よる動機, 出産体験者から聞く動機は, 指摘やアドバイ スを受けて保 行動をとる動機であった. 妊婦が, 他者 からのアドバイスを受けた結果, 妊娠・出産に対する信 念や価値観によっては, 妊婦が妊娠期の 康を保つ上で 良いと えると保 行動をとっていた.吉川ら は,周産 期保 の現状での周産後の質問紙調査において, 市町村 や保 センターで行う保 師が行う保 指導, 施設での 個別の保 指導, 母親学級や両親学級で行われる保 指 導では, 妊産婦が受けた指導内容に違いがみられたこと を報告している. その報告では, 妊婦にとってアドバイ スが強制されたり, 義務を感じることが動機になった場 合, 一時的には保 行動が行われる可能性はあるが, 継 続された行動にはならないことが示唆された. 妊娠中の保 指導は, 妊娠中に起こりやすい異常の 予防は, 日常生活の過ごし方が重要であり, 自 と胎児 の 康が維持できるような積極的な姿勢を養う目的があ る」といわれている. 妊婦が正常な妊娠経過を維持して 出産を迎えるためには, 日常の生活行動を整える必要が ある. しかし, 妊婦の保 行動は, 日常生活における食事 や運動など生理的欲求を伴った行動であることが多い. 久保田ら は,意思決定者の自己評価が高く,意思決定時 のストレスが低い者では予防的保 行動をとることが多 いと報告している.また,大蔵ら の妊婦が出産に関する 自己決定することの意味では, 妊婦が自己決定するため には, ポジティブな感情とネガティブな感情があること, 自己決定には様々な準備行動があると報告している. そ のため, 妊婦が妊娠期の 康を保つ上で良かれと思って とっている保 行動には妊婦の自己決定が作用してお り, 保 行動に関する動機や負担が関与していると え られた. したがって, 妊婦の保 行動を支援する産科医 療従事者は, 妊婦の日常生活や保 行動に関与する人間 関係を 慮して保 行動をとる際の動機になること, 負 担になることを把握する必要があると えた. そのこと によって, 妊婦自身が, 自ら妊娠期の 康を維持しよう とする意識に働きかけられるのではないかと える. 本研究の限界と今後の課題 本研究での研究対象者は, いずれも自然妊娠で正常経 過にある妊婦であり, 不妊治療後や異常の経過に移行し た妊婦が保 行動をとる際の動機の内容とは異なる可能 性がある. また, 本研究において, 初産婦が保 行動をと る際の動機と負担を全て抽出できたとは言い切れず, 理 論的飽和に達していないと えられる. そのため, 今後 の課題として, なるサンプリングを集積し, 理論的飽 和に向けて検討を重ねる必要があると える. 謝辞 本研究にご協力をいただきました対象者の皆様と施設 のスタッフの皆様に深く感謝いたします. 本研究は群馬 大学大学院医学系研究科修士論文に加筆・修正を加えた ものである. 文 献 1. 伊藤直美, 山崎有紀, 田中 響ら. 生活行動アセスメント ツールを用いた肥満妊婦の生活指導 ―基準関連妥当性
を得た試験的看護介入と指導の効果―.母性衛生 2006; 125-134. 2. 原 千夏, 伊藤直美, 田中 響ら. ハイリスク を予測 する生活行動アセスメントスケールの検討. 日本看護学 学会 母性看護 2004; 21-23. 3. 原 千夏, 伊藤直美, 田中 響. 保 指導の評価スケール としての生活行動アセスメントスケールの活用 ―第 4 報 妊婦とナースの満足度を高めるために―. 日本看護 学学会. 母性看護 2006; 122-124. 4. 眞鍋えみ子, 瀬戸正弘, 上里一郎. 妊婦セルフケア行動動 機づけ評定尺度短縮版の作成と信頼性・妥当性の検討. Quality Nursing 2004; 10(9): 49-56. 5. 眞鍋えみ子. 妊婦におけるセルフモニタリング用チェッ クシートの作成. 日本助産学会誌 2006; 19(1): 6-18. 6. 眞鍋えみ子, 田かおり.初妊婦におけるセルフケア行動 の向上を目指した 康学習指導の実施と評価. 日本助産 学会誌 2006; 20(2): 31-39. 7. 田中 響, 原 千夏, 伊藤直美. 帝王切開となるリスクの 高い妊婦に対する保 指導の成果 ―第 3報―. 日本看 護学学会. 母性看護 2005; 158-160. 8. 徳田真理子, 吉富美佐江, 野本百合子. 助産師外来の妊娠 期のケアに関する研究 ―妊婦と相互行為場面に焦点を あてて―. 日本看護学学会. 母性看護 2005; 47-49. 9. 塩道敦子,坪井陽子,椙村光枝.妊娠 22週の助産師外来に おける保 指導の有効性について. 山口大学院内看護研 究発表会収録. 2004; 16: 63-68. 10. 藤森千華, 清水友由夏. 妊娠 5ヶ月までの妊婦の不安の現 状と助産師外来の評価. 山梨中病年報 2005; 32(12): 52-55. 11. 宗像恒次 : 行動科学みた 康と病気. 東京 : メヂカルフ レンド社, 2000; 93-95, 106-110. 12. 青木康子,加藤尚美,平澤美恵子編.助産学体系 3 妊娠・ の病理と病態. 東京 : 日本看護協会出版会 1996; 92-98, 107-110. 13. Brooke E. F. 妊娠・出産・育児期のニーズに対応した テクノロジの開発 (日本語参 訳) Technology@Intel Magazine 2005; 8: 1-8. 14. 板 倉 敦 夫. こ れ か ら の 周 産 期 医 療 に 求 め ら れ る も の ―産婦人科医の立場から―. 現代医学 2003; 51(1): 3-7. 15. 中島義明 (編): 心理学辞典. 東京 : 有 閣, 2000: 810. 16. 佐藤香代,高橋真理.「身体感覚活性化プログラムによる マザークラス」に参加した妊婦の身体感覚 ―身体から の気づきを中心に―. 母性衛生 2005; 45(4): 551-559. 17. 鈴井江三子,大橋一友.妊婦の身体感覚と胎児への愛着の 関連性. 日本助産学会誌 2007; 21(1): 6-16. 18. 鈴井江三子.超音波診断を含む妊婦 診と,超音波診断を 含まない妊婦 診を受けた妊婦の体験 ―妊婦の心理と 身 体 感 覚 を 中 心 に―. 川 崎 医 療 福 祉 学 会 誌 2005; 15(1): 85-93. 19. 佐藤寧子, 廣森直子, 吉川由希子ら. 青森県における周産 期保 の現状 (第 2報) ―妊娠中期の妊婦を対象とした 質問紙調査から―. 青森保 大雑誌 2006; 7(1): 125-134. 20. 岡山久代,高橋麻里.妊娠期おける初妊婦と実母の関係性 の発達的変化. 母性衛生 2006; 47(2): 455-462. 21. 実積麻美,大谷愛佳,山崎愛沙,他.実母からの出産体験の 伝承に対する意味づけ. 母性衛生 2008; 48(4): 542-549. 22. 小笠原幸子, 藤崎泰子, 脇坂真由美. 現代における妊産褥 婦の情報の選択と活用への意識.日本看護学学会.母性看 護 2002; 40-42. 23. 吉川由希子, 廣森直子, 佐藤寧子ら. 青森県における周産 期保 の現状 (第 3報) ―出産後の妊産婦への質問紙調 査から―. 青森保 大雑誌 2006; 7(1): 135-144. 24. 高橋陽他編 : 母子保 マニュアル. 東京 : 南山堂, 2004; 3-10. 25. 久保田君江, 佐藤芳恵, 福岡欣治. 予防的保 行動に関わ る意思決定に及ぼす要因の研究 ―意思決定時の反応様 式選択型との関連―. 静岡県立短期大学部特別研究報告 書 2003; 1-7. 26. 大蔵志帆, 石井夏美, 漆崎由衣香ら. 妊婦が出産に関する 自己決定をすることの意味 日本看護学学会. 母性看護 2007; 139-141.
M otives and Burdens Associated with Health Behaviors
of Pregnant Women Expecting their First Child
Mieko Takatsu,
Kyoko Kunikiyo,
Kaori Hayashi
Kaori Tachiki,
Tomoko Fukasawa
and Yoko Tokiwa
1 Faculty of Health Care, Takasaki University of Health and Welfare,501 Nakaorui-machi,Takasaki, Gunma 370-0033, Japan
2 Department of Nursing, Gunma University Graduate School of Health Sciences, 3-39-22 Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8514, Japan
3 Maebashi Red Cross Hospital, 3-21-36 Asahi-cho, Maebashi, Gunma 371-0014, Japan
Purpose: To investigate the motives and burdens associated with health behaviors of first-time pregnant women, and to obtain resources for considering how to provide health instruction that complements health behaviors actually undertaken by pregnant women. Subjects and M ethods: Subjects comprised 10 pregnant women in gestational weeks 30-34. Semi-structured interviews were conducted to gather data on motives and burdens associated with health behaviors of first-time pregnant women. Analysis was carried out following Berelson s content analysis. Results: The motives of and burdens associated with health behaviors of first-time pregnant women were categorized into the following seven categories: (1) motives related to interest and care concerning their bodies and daily life during pregnancy; (2) motives related to suggestions received from a medical professional, their husband, or a colleague; (3) motives related to their own body and their babys health during and after birth; (4) motives related to noticing changes during the course of pregnancy; (5)motives related to the pregnancy experience of close relatives such as their mothers or grandmothers; (6) burdens due to work obligations preventing them from carrying out health behaviors during pregnancy; and (7) burdens due to being unable to control changes in dietary habits or lifestyle rhythms. Conclusions: From these seven categories, it was apparent that most health behaviors carried out by pregnant women related to everyday physiological drives such as diet, activity and rest, and lifestyle rhythms. Health instruction for pregnant women should therefore take into account pregnant women s everyday lives and the interpersonal relationships that contribute to health behaviors,based on the understanding that these may constitute either motives or burdens, and such instruction must enable pregnant women to become aware of their own health during pregnancy.(Kitakanto Med J 2013;63:33∼44)