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「日本のオリンピック誘致後の経済的影響の一考察―アメリカとの比較―」

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「日本のオリンピック誘致後の経済的影響の一考察

―アメリカとの比較―」

A Cosideraion of The Economic Effect After Bids for

Olympic Games in Japan

―Comparison with the United States―

天 尾 久 夫(作新学院大学経営学部) Amao Hisao(Sakushin Gakuin University, Faculty of Business Administration)

目 次

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・92 1 .本論文で使用するモデルと使用したデータセットについて・・・・・・・・・93  1-1.モデルに選択した 2 ヶ国について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・93  1-2.本論で推計するモデルとデータについて ・・・・・・・・・・・・・・・94 2 .アメリカのオリンピック誘致の経済効果の推計・・・・・・・・・・・・・・95  2-1.アブソープションアプローチによるアメリカのオリンピック誘致の経済効果の推計    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95  2-2 消費関数と投資関数からアメリカのオリンピック誘致の波及効果について    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・98 3 .日本のオリンピック誘致の経済効果の推計・・・・・・・・・・・・・・・ 103  3-1.アブソープションアプローチによる日本のオリンピック誘致の経済効果の推計     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 103  3-2 消費関数と投資関数の日本のオリンピック誘致の経済効果について ・・ 105 4 .結語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108

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要 約  本稿では、令和 2 年になり、コロナウィルスにより、オリンピックの 1 年の遅延発表と 延期によって、これまで統計的に見て経験したことのない経済不況が訪れる気配となっ た。政府が令和 2 年 4 月 7 日に非常事態宣言1を全国で発表し、その後、同年 5 月18日に 東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、京都、神戸、以外で非常事態宣言が解除され、5 月25 日に全国で、宣言が解除された。  本論の目的は、1 年延期したオリンピック誘致ではあるが、これまでのオリンピック誘 致が一国にどの程度経済的影響を及ぼしてきたのかを明示することにある。その狙いは、 その削げ落ちた効果が現実の経済に顕在化すると推測しているからである。もし、不幸に もオリンピックが中止となれば、これまで行った国内で過剰となった投資の影響も現れる 訳であり、その数値を捉える上で本論の考察は有益と考える。  さて、本論で用いたモデルは、初歩的なケインズ経済学の視点であり、支出構成、すな わち、支出面から見た所得(生産)の分析であるアブソープションアプローチを利用した。 このモデルは一般に純輸出と国内生産との関係を扱うときに用い、因果関係のモデルとし て用いるときには注意を要する。そして、今ひとつは、所得要因から消費、投資を説明す るモデルを使用した。これらのモデルでオリンピック時間ダミー変数を用いた重回帰推計 を行い、オリンピック誘致の経済効果の分析を試みた。本論文では、オリンピックを誘致 した国家の中から、20世紀後半に 2 度、夏のオリンピックを誘致したアメリカ、そして、 日本の東京を比較対象として 2 ヶ国を取り上げた。  この論文の研究を進めたのは、もう一つの狙いがある。それは、本学の経営学部にス ポーツマネージメント学科があり、これまで過去なされた研究を散見すると、心理学や人 文科学のスポーツの考究分野は多数行われているが、スポーツマネージメント学科を社会 科学の経営学と捉えた研究がいささか乏しい。この学科がスポーツを経済社会と関係づけ て捉え、マネージメントすることを主眼と置くならば、スポーツ、レジャーを取り巻く社 会や経済環境を考察し、その仮定を置かずにスポーツビジネスで世論に一家言申すことこ そ無謀であり、社会科学として見たとき、因果関係を導く意味でもそれらの批判を免れな い2。本論では、そうした批判を免れる意味から、あえて、この研究に取り組んだ。  スポーツイベントの誘致に表だって反対する者は少ない。これは全国民が平等的な豊か さを享受した後に誘致に乗り出す事ができ、その姿が理想と考える者も多いからであろ う。本論文では、前述したが、その代表例として20世紀後半に二回オリンピック誘致に成 1 日本の現行法制での規定の文言では、新型コロナウィルスによる事態を表現するとき、「緊急事態 (きんきゅうじたい)」・「緊急事態宣言(きんきゅうじたいせんげん)」に統一されている。しかし、 過去の日本の法規定の文言などの慣習で、外国・外国語での表記 emergency や state of emergency の日本語訳で「非常事態」・「非常事態宣言」とメディアが用いていることがある。論文では「非 常事態」という言葉を用いて議論を進めることにした。 2 筆者が、本学を辞した著名なスポーツ研究の専門家から、いくつか学問上の疑念に関して具申し たとき、海外に有名な学会があるという説明だけを賜った。社会科学の一研究者として、学会の 存在と本人の学問の進 とは無関係と思いつつ、その種の質問をしたことの不勉強を恥じ本論を 執筆するに至った。

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功したアメリカを取り上げ、その後、日本を考究することにした。この研究を皮切りにし て、最終的にはアメリカと日本の両国だけでなく、イギリス、ブラジル、中国の三ヶ国を 合わせて 5 カ国を扱う予定である。本論では取得可能なデータの種別や比較方法を検討 し、まず先進国のアメリカと日本の二ヶ国を扱うことにした。  本論の結論を要約すれば、オリンピック誘致の経済効果は、アメリカにおいては、ロサ ンゼルスとアトランタではアトランタ誘致のときのみ、経済的効果が統計的に有意な意味 で確認でき、二つの誘致を合わせた見たときも統計的に有意な意味で経済効果を確認でき る。他方、日本の1964年に誘致した東京オリンピックでは、経済発展途上の日本で、その 経済効果を統計的に有意な意味で確認できた。しかし、それらの経済効果は消費と投資の 面から見て、単に GDP を増やすという予想とは異なった結果であった。多くの研究者は、 先進諸国のオリンピック誘致はゆるやかな経済発展を導くという結論を推測するであろ う。しかし、本論の結論では、オリンピック誘致の誘因について、自国の経済発展に有益 というオリンピックの自国開催を主張する識者の動機を強く説明する結論ではない。 キーワード: オリンピック誘致、経済的影響、ケインズ的消費関数、アブソープ ションアプローチ、日本、アメリカ

Keywords: Bids for Olympic games, Economic Effect, United States, Tokyo

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はじめに

令和 2 年、東京オリンピックを迎える祝年ということで日本全体が一体となって年始を 迎えて、2 月になり、原因不明の疫病、新コロナウィルスが中国湖北省の中心都市武漢で 流行したことが報じられた。そして、報道された後、すぐに疫病は日本に上陸し、2 月 1 日北海道の雪まつりで集団感染(クラスター感染)が起き、その後、瞬く間に日本国土の おおよその主要都市でそれらの感染が確認された。日本政府、そして地方政府の首長も、 この新型コロナウィルスの感染スピードの速さ故に、そして正確な疫病の情報入手の遅れ も相まって初動対応に遅れた3。それは、日本の有事における法制度がこの疫病についても 対応出来るのかという確認に手間取ったこと、情報を入手しつつ対策を練るという手法、 それは新種の疫病の医療対策の初動体制の準備も遅らせることになった。 メディアの中には、この疫病の治療方法が確立していないことを知覚しつつ、国民に病 の不安だけを り、不安な人びとがこの原因不明の病になっているかどうかの検査に走ら せることになった。他の病を治療する国民が、疫病の罹患、非罹患の確認のために医療現 場に慌てて駆けつけ、そのため、その他の病を診療できないという医療崩壊の事態が各地 に生じる危険が迫って、政府は全国に非常事態宣言を発令し、国民に不要不急の外出自粛 という自発的行動の抑制を求めた。政府はあくまで「自発的抑制」を求めたが、自発的と 言ったのは、国家財政を鑑み国民への賠償を回避する苦肉の策であったと言える。 他方、この新型コロナウィルスの発生により、世界中に混乱が生じた結果、東京オリン ピック2020の 1 年延期が発表された。オリンピック誘致から開始まで、まさにメディアが 音頭取りして、元来オリンピックに熱狂しがちな一部の国民は、今も再開のアナウンスを 待ち望んでいる。しかし、この疫病の混乱によって再開の決断時期は令和 2 年10月過ぎに ずれ込んでいるとのメディアの報道もある。 本論の問題意識は、オリンピック誘致活動の時期と、そのときの国家の経済活動との関 係を推計することである。この推計によって、もしオリンピックが中止したとき、自国経 済にどの程度の減殺効果が生じるのかを明示することが可能となる。本論では推計する国 は、アメリカと日本の 2 ヶ国を扱うことにした。 日本以外の国の中から、アメリカを選択した理由は、アメリカは20世紀後半に 2 回、ロ サンゼルスとアトランタで夏のオリンピックを開催していて、先進国の経済効果を見る上 3 新型コロナウィルスの治療法が確立していないことを明示せず、病人を探す検査に血道を上げる ことになって、残念な結果として、疫病対策の有識者が却って国民の不安を ることになった。 政府がこの疾病の性質関して明示して、すべての国民に共通の認識を与えることができなかった ことが、この混乱状態の一因になったと考えられる。

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で適していると考えたからであった。日本を扱った理由は、1964年の東京オリンピックが 誘致された頃、当時経済発展途上にあった日本を考察することは、将来オリンピック誘致 を試みる発展途上国の経済効果を見る際の指標になると考えたからである。 この他の研究対象国として、後に続く研究でイギリス、中国、ブラジルの三ヶ国を取り 上げるつもりである。まず、イギリスは先進国の開催国であって、そして、中国はアジア の隣国でオリンピック開催当時、経済規模が日本に近いこと、ブラジルは最近開催した発 展途上国であったためである。本論で取り上げたアメリカと日本の経済分析はその後の国 家との比較研究を行う上で有益と考えた。本論文でも後に言及したが、上記にあげた比較 国では、公開された統計データの種類、量でも整備が十分でなく、他の諸国についてモデ ルを用いて推計結果を暗に比較することは困難である。その点も弁えた上で、日本とアメ リカの 2 ヶ国を本論で考究した訳である。

1 .本論文で使用するモデルと使用したデータセットについて

1-1.モデルに選択した 2 ヶ国について ここでは、アメリカと日本を考察の対象とした。最終的には、イギリス、ブラジル、中 国を合わせて 5 ヶ国を推計の対象とするつもりである。それらの五ヶ国を比較対象に挙げ た理由としては、まず、本論で扱う東京は、1964年と2020年開催予定の東京オリンピック とを比較する意味であった。また、当時発展段階の日本でオリンピック誘致したことの経 済的意味について言及することは、途上国の誘致の経済効果を見る上で意味を持つと考え たからである。 表2-1 本論モデルで扱う国のオリンピック開催時期 1964年 東京オリンピック開催(10月) 1984年 ロサンゼルスオリンピック開催(7 月) 1996年 アトランタオリンピック開催(7 月) 2008年 北京オリンピック(8 月) 2012年 ロンドンオリンピック(7 月) 2016年 ブラジルオリンピック(8 月) 1984年以降の夏のオリンピックを誘致した国家として 5 ヶ国を想定したが、その理由は 以下に説明する(表2−1参照)。 まず、比較する際、比較対象国の開催時期が 7 月∼ 8 月であったという理由が上げられ る。本論で検証したアメリカは20世紀の後半期にオリンピックを 2 回開催した。その頃の 世界の経済状況を見ると、ロサンゼルス開催時は好況、アトランタの開催期はバブル経済

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後の不況期にあって、オリンピックと景気の関係を検証するのに妥当と考えたからである。 本論で扱わなかった 3 ヶ国を比較対象とした理由は、中国は、北京オリンピック時期に 世界の GDP の水準で日本の規模を追い抜く状態にあり、オリンピック誘致と新興発展途 上国の経済的影響を捉えるためにそれを選択した。イギリスは、最近の先進国がオリン ピックを誘致したときにどのような経済的影響となるかを捉えるために有益と考えたから である。ブラジルは、最近の発展途上国がオリンピック誘致活動を控えた現況となってい るが、オリンピック誘致が発展途上国経済にどのような影響を及ぼしているのかを見る上 で参考となるから選択した。これらの分析は、後の12号論集で行う予定である。 1-2.本論で推計するモデルとデータについて 本論文で使用するモデルは、生産における支出(Y)が、消費(C)、投資(I)、輸出(EX)、 輸入(IM)からなるという一種のアブソープションモデルと、ケインズ経済学の初等的 モデルである消費関数 C=Const.+κY や投資関数 I=Const.+δY を基本モデルとして推計 に用いた4(C は消費額、I は投資額、Y は所得学、Const. は定数項)。それらのモデルを用

いて、オリンピックの開催時期からその 4 年前までの期間をオリンピック時間ダミーとし て、ダミー変数を用いた重回帰モデルを用いオリンピック誘致の経済効果を計ることにし た。 本論文で扱うアメリカと日本の生産(支出面での所得)、消費、投資、輸出、輸入の数 値については、付表に記しているが、アメリカの FRB のホームページからデータを入手 した。本論で使用したデータは、X-12-ARIMA で季節調整を行い、それを対数値にしたも ので推計を行った。念のため、注記しておく5 アメリカの推計で用いたデータは、1972年第 1 四半期から2020年第 1 四半期までのアメ リカの GDP 統計の数値であり、生産高は実質指数、消費と投資は実質値、輸出と輸入に ついては季節調整済み原数値で取得し、最終的にそれらを季節調整し、自然対数で変換し たものを用いてモデルを推計した。オリンピック時間ダミーについては、開催時期から 4 年前までの期間を誘致時間ダミーとして、ロサンゼルス誘致の時間ダミーとアトランタ誘 致の時間ダミー、そして両期間を合わせた全誘致ダミーの 3 つを用いてオリンピック誘致 の経済効果を検証した。 4 アブソープションアプローチで、恒等的関係から因果関係を導くことにした。本論でこのように 分析するのが適切ではないという批判もあろうが、輸出、輸入などの要因も最終的に分析する可 能性も勘案し、このモデルを採用した。 5 データの変換、加工法については、とりわけ指標(index)の扱い方は数理統計学や計量経済学か らみて問題が残ることは承知しており、本論の今後の解決すべき問題として指摘しておく。

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他方、日本の推計で用いたデータは、1960年 1 月から2020年 6 月までの月次データを使 用した。月次の GDP データは入手不可能なため、GDP の構成要素としての消費額の代わ りに、「製造業の時間稼得金額の総額の指標値」の月次データを代理変数として採用し、 それを消費者物価指数(CPI)で実質化したものを使用した。投資については、日本の構 築物の金額指数(2015=100)を代理変数とし、輸出額と輸入額は自国通貨建て額を採用 した。また、総生産(所得)の代理変数として、日本の総産業の生産高指数の月次データ を用いた。そして、上記のそれぞれの変数を生産者価格指数で実質化し、すべての変数を 季節調整し対数値にしたものを推計に使用した。

2 .アメリカのオリンピック誘致の経済効果の推計

2-1.アブソープションアプローチによるアメリカのオリンピック誘致の経済効果の推計 アメリカでは、ロサンゼルスオリンピックとアトランタオリンピックの二つが誘致され ている。ここではロサンゼルス、アトランタのそれぞれのケースとそれら合わせた全誘致 の 3 つのケースについて言及する。 まず、以下のアブソープションモデルで推計しよう。 Yj= Const. + αCj + βIj + γXj+θMj + DUMij + uj

Const. は定数項、ujは誤差項であり、uj∼ N(0,σ2)に従う、それぞれの Yjは支出、Cj

は個人消費、Ijは資本形成であり、Xjは輸出額、Mjは輸入額であり、これらの変数は季 節調整して実質化し、対数値を用いている。オリンピックダミー(DUMij)は 3 種類あり、 i=1のときロサンゼルス誘致、i=2のときアトランタ、i=3のとき、全オリンピック誘致の ときとした。 まず、上記のモデルのダミー変数を外した推計結果は表2−1に示したとおり、推計式は 以下の通りである。 Yj=−22.1559 + 0.725128Cj + 0.142028Ij+ 0.0574259Xj−0.0177086Mj+ej   (-172.8***) (49.67***) (11.41***) (9.414***) (-2.538**)

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表2-1: 最小二乗法(OLS), 観測 : 1972:1-2020:1 (j= 193) 従属変数 : Yj 係数 Std. Error t 値 p 値 Const −22.1559 0.128217 −172.8 <0.0001 *** α 0.725128 0.0145980 49.67 <0.0001 *** β 0.142028 0.0124513 11.41 <0.0001 *** γ 0.0574259 0.00609985 9.414 <0.0001 *** θ −0.0177086 0.00697631 −2.538 0.0119 ** Mean dependent var 4.116442 S.D. dependent var 0.390830 Sum squared resid 0.013215 S.E. of regression 0.008384 R-squared 0.999549 Adjusted R-squared 0.999540 F(4, 188) 104257.8 P-value(F) 0.000000 Log-likelihood 651.4917 Akaike criterion −1292.983 Schwarz criterion −1276.670 Hannan-Quinn −1286.377 Rho 0.836055 Durbin-Watson 0.326804

表の p 値の後の、※※※・・・・有意水準 1 % ※※・・・・有意水準 5 % ・・・・有意水準10%となっている。

この推計の数値データは、FRB の ECONOMIC RESEARCH のサイトより入手した(https://fred.stlouisfed.org/)。(2020

年 5 月22日現在)。 表のαは定数項、Std. Error はこの推計式の分散に対応する各パラメーターの標準偏差、 R-squared は決定係数、Adjusted R-squared は修正済み決定係数である。F( )は F 値を示す。S.E. of regression は 推計式の攪乱項の分散の不偏推定量である s2の計算値である。加藤(加藤 [ 加藤 , 2012])54−57ページ参照。 そして、上記のモデルを用いて、ロサンゼルス、アトランタ、全誘致のダミー変数を用 いた 3 種の重回帰モデルの推計式は、以下の通りである(表2−2:ロサンゼルス、表2− 3:アトランタ、表2−4:二つの全誘致参照)。 ロサンゼルス誘致: Yj=−22.1488 +0.724957Cj + 0.141795Ij+ 0.0573948Xj−0.0174561Mj (-162.6***) (49.40***) (11.28***) (9.380***) (-2.433**) −0.0000364842DUM1j+ej (-0.1581) アトランタ誘致: Yj=−22.1107 + 0.718118Cj + 0.148120Ij + 0.0511218Xj− 0.0120718Mj (-189.0***) (53.84***) (13.02***) (9.059***) (-1.882**) +0.0123571 DUM2j + ej (6.308***) 全誘致の場合: Yj=−22.2731 + 0.724396Cj + 0.150395Ij+ 0.0542861Xj−0.0194522Mj (-179***) (52.23***) (12.57***) (9.303***) (-2.930***) + 0.00738775 DUM3j + ej (4.614***)

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表2-2 ロサンゼルス誘致 : 最小二乗法(OLS), 観測 : 1972:1-2020:1 (j = 193) 従属変数 : Yj 係数 Std. Error t 値 p 値 Const −22.1488 0.136216 −162.6 <0.0001 *** α 0.724957 0.0146759 49.40 <0.0001 *** β 0.141795 0.0125706 11.28 <0.0001 *** γ 0.0573948 0.00611889 9.380 <0.0001 *** θ −0.0174561 0.00717457 −2.433 0.0159 ** DUM1 −0.000364842 0.00230792 −0.1581 0.8746

Mean dependent var 4.116442 S.D. dependent var 0.390830 Sum squared resid 0.013213 S.E. of regression 0.008406 R-squared 0.999549 Adjusted R-squared 0.999537 F(5, 187) 82973.65 P-value(F) 0.000000 Log-likelihood 651.5046 Akaike criterion −1291.009 Schwarz criterion −1271.433 Hannan-Quinn −1283.082 Rho 0.835794 Durbin-Watson 0.327312 表2-3 アトランタ誘致: 最小二乗法(OLS), 観測 : 1972:1-2020:1 (j = 193) 従属変数 : Yj 係数 Std. Error t 値 p 値 Const −22.1107 0.116957 −189.0 <0.0001 *** α 0.718118 0.0133374 53.84 <0.0001 *** β 0.148120 0.0113775 13.02 <0.0001 *** γ 0.0511218 0.00564291 9.059 <0.0001 *** θ −0.0120718 0.00641425 −1.882 0.0614 * DUM2 0.0123571 0.00195892 6.308 <0.0001 ***

Mean dependent var 4.116442 S.D. dependent var 0.390830 Sum squared resid 0.010896 S.E. of regression 0.007633 R-squared 0.999628 Adjusted R-squared 0.999619 F(5, 187) 100624.5 P-value(F) 0.000000 Log-likelihood 670.1092 Akaike criterion −1328.218 Schwarz criterion −1308.642 Hannan-Quinn −1320.291 Rho 0.791773 Durbin-Watson 0.415718

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表2-4 全誘致の場合 : 最小二乗法(OLS), 観測 : 1972:1-2020:1 (j = 193) 従属変数 : Yj 係数 Std. Error t 値 p 値 Const −22.2731 0.124432 −179.0 <0.0001 *** α 0.724396 0.0138699 52.23 <0.0001 *** β 0.150395 0.0119676 12.57 <0.0001 *** γ 0.0542861 0.00583503 9.303 <0.0001 *** θ −0.0194522 0.00663866 −2.930 0.0038 *** DUM3 0.00738775 0.00160130 4.614 <0.0001 ***

Mean dependent var 4.116442 S.D. dependent var 0.390830 Sum squared resid 0.011865 S.E. of regression 0.007965 R-squared 0.999595 Adjusted R-squared 0.999585 F(5, 187) 92409.99 P-value(F) 0.000000 Log-likelihood 661.8944 Akaike criterion −1311.789 Schwarz criterion −1292.213 Hannan-Quinn −1303.861 Rho 0.816632 Durbin-Watson 0.366069

上記の表の p 値の後の、※※※・・・・有意水準 1 % ※※・・・・有意水準 5 % ・・・・有意水準10%となって

いる。この推計の数値データは、FRB の ECONOMIC RESEARCH のサイトより入手した(https://fred.stlouisfed. org/)。(2020年 5 月22日現在)。表のαは定数項、Std. Error はこの推計式の分散に対応する各パラメーターの標準 偏 差、R-squared は 決 定 係 数、Adjusted R-squared は 修 正 済 み 決 定 係 数 で あ る。F( ) は F 値 を 示 す。S.E. of regression は推計式の攪乱項の分散の不偏推定量である s2の計算値である。加藤(加藤 [ 加藤 , 2012])54−57ペー ジ参照。 これらの推計結果を要約すれば、アメリカではオリンピックの誘致で、ロサンゼルスの 場合に誘致による GDP の増大の効果は確認できないが、アトランタ誘致では GDP の増大 の効果について統計的に有意であった。さらに、二つのオリンピックの誘致についての GDP の増大効果を検証したときには両方で GDP の増大の効果が確認できる。 ただし、数値的に見たとき、誘致による効果は、アトランタ、全体誘致に関する限り、 GDP で0.012%∼0.007%の増大という数値範囲であり、アメリカのオリンピック誘致が経 済的に大きな影響を及ぼしたという結論まで言うことはできない。 2-2 消費関数と投資関数からアメリカのオリンピック誘致の波及効果について では、以下の単純化した消費関数を用い、そのダミー変数重回帰モデルから消費の影響 について検証してみよう。ここで、用いられる消費関数は以下の如きである。 (消費関数)

Cj = Const. + κYj + εDUMijYj + DUMij+ uj

Const. は定数項、ujは誤差項であり、uj∼ N(0,σ2)に従う、それぞれの Yjは支出面で

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数値を用いている。ここでもオリンピックダミー DUMijは 3 種類あり、i=1のときロサン ゼルス誘致、i=2のときアトランタ、i=3のとき、全オリンピック誘致のときである。 DUMijYjに掛かるεはオリンピック誘致による直接的な所得を通じた消費の効果を示すこ とになる。 まず、消費のオリンピック誘致効果に関する推計式は以下の通りである(表2−5 :ロ サンゼルス誘致、表2−6 :アトランタ誘致 表2−7:全誘致の場合)。 (オリンピック誘致の消費への波及効果についての検証結果) ロサンゼルス誘致: Cj= 25.1419 +1.07797Yj − 0.0108857DUM1Yj + 0.0385658− ej (2348***) (420.4***) (-0.1491) (0.1428) アトランタ誘致: Cj= 25.1419 +1.07818Yj − 0.0344516DUM2Yj+ 0.128892− ej (2616***) (464.5**) (-0.4891) (0.4482) 全誘致の場合: Cj= 22.1457 +1.07736Yj − 0.0230411DUM3Yj+ 0.0819612− ej (2427***) (435.5***) (-2.120**) (1.929*) 表2-5 ロサンゼルス誘致 : 最小二乗法(OLS), 観測 : 1972:1-2020:1 (j = 193) 従属変数 : Cj 係数 Std. Error t 値 p 値 Const 25.1419 0.0107100 2348. <0.0001 *** κ 1.07797 0.00256387 420.4 <0.0001 *** ε −0.0108857 0.0730313 −0.1491 0.8817 DUM1 0.0385658 0.270034 0.1428 0.8866

Mean dependent var 29.57914 S.D. dependent var 0.421667 Sum squared resid 0.032050 S.E. of regression 0.013022 R-squared 0.999061 Adjusted R-squared 0.999046 F(3, 189) 67041.66 P-value(F) 8.9e-286 Log-likelihood 565.9987 Akaike criterion −1123.997 Schwarz criterion −1110.947 Hannan-Quinn −1118.712 Rho 0.875169 Durbin-Watson 0.244996

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表2-6 アトランタ誘致 : 最小二乗法(OLS), 観測 : 1972:1-2020:1 (j= 193) 従属変数 : Cj 係数 Std. Error t 値 p 値 Const 25.1419 0.00960978 2616. <0.0001 *** κ 1.07818 0.00232108 464.5 <0.0001 *** ε −0.0344516 0.0704360 −0.4891 0.6253 DUM2 0.128892 0.287553 0.4482 0.6545

Mean dependent var 29.57914 S.D. dependent var 0.421667 Sum squared resid 0.029806 S.E. of regression 0.012558 R-squared 0.999127 Adjusted R-squared 0.999113 F(3, 189) 72093.88 P-value(F) 9.4e-289 Log-likelihood 573.0036 Akaike criterion −1138.007 Schwarz criterion −1124.956 Hannan-Quinn −1132.722 Rho 0.860350 Durbin-Watson 0.274576 表2-7 全誘致 : 最小二乗法(OLS), 観測 : 1972:1-2020:1 (j = 193) 従属変数 : Cj 係数 Std. Error t 値 p 値 Const 25.1457 0.0103610 2427. <0.0001 *** κ 1.07736 0.00247395 435.5 <0.0001 *** ε −0.0230411 0.0108682 −2.120 0.0353 ** DUM3 0.0819612 0.0424965 1.929 0.0553 *

Mean dependent var 29.57914 S.D. dependent var 0.421667 Sum squared resid 0.029665 S.E. of regression 0.012528 R-squared 0.999131 Adjusted R-squared 0.999117 F(3, 189) 72435.64 P-value(F) 6.0e-289 Log-likelihood 573.4596 Akaike criterion −1138.919 Schwarz criterion −1125.868 Hannan-Quinn −1133.634 Rho 0.861855 Durbin-Watson 0.272377

上記の表の p 値の後の、※※※・・・・有意水準 1 % ※※・・・・有意水準 5 % ・・・・有意水準10%となって

いる。この推計の数値データは、FRB の ECONOMIC RESEARCH のサイトより入手した(https://fred.stlouisfed. org/)。(2020年 5 月22日現在)。表のαは定数項、Std. Error はこの推計式の分散に対応する各パラメーターの標準 偏 差、R-squared は 決 定 係 数、Adjusted R-squared は 修 正 済 み 決 定 係 数 で あ る。F( ) は F 値 を 示 す。S.E. of regression は推計式の攪乱項の分散の不偏推定量である s2の計算値である。加藤(加藤 [ 加藤 , 2012])54−57ペー ジ参照。 以上の検証結果を要約すれば、アメリカに関してはそれぞれのオリンピック誘致と消費 に関しての波及効果は確認できないが、誘致全体で見たときに、統計的に弱い意味で有意 な関係が確認でき、誘致によって所得増大したときの消費の反応が弱くなると同時に、切 片が増えることから、その水準を増大させる効果のあることが証明された。 つぎに、生産にのみ依存する投資関数を用いて、オリンピック誘致の経済効果を推計し

(13)

よう。この場合も、この投資関数でダミー変数重回帰モデルを用いることにした。ここで、 用いられる推計モデルは以下の如きである。

(投資関数)

Ij = Const. + δYj + ωDUMijYj + DUMij+ uj

Const. は定数項、ujは誤差項であり、uj∼ N(0,σ2)に従う、それぞれの Yjは生産高と

みなし、Ijは固定資本形成額、すなわち投資額であり、これらの変数は季節調整して実質 化し、対数値を用いている。オリンピックダミー DUMijは 3 種類あり、i=1のときロサン ゼルス誘致、i=2のときアトランタ、i=3のとき、全誘致のときである。DUMijYj に掛か るωはオリンピック誘致期間で生産を通じた投資の直接的影響を示すことになる。 まず、投資についてのオリンピック誘致の経済効果に関する推計式を以下に示す(推計 結果は表2−8、表2−9、表2−10参照)。 (オリンピック誘致の投資への経済効果についての検証結果) ロサンゼルス誘致: Ij= 23.452 +1.18602Yj − 0.443081DUM1Yj – 1.64954− ej (558.3***)(117.9***) (1.547) (-1.557) アトランタ誘致: Ij= 23.4483 +1.18782Yj + 0.571877DUM2Yj – 2.38485− ej (628.3***) (131.8***) (2.091**) (-2.136**) 全誘致: Ij= 23.4732 +1.18248Yj − 0.0604197DUM3Yj + 0.199435− ej (575.0***) (121.3***) (-1.411) (1.191) 表2-8 ロサンゼルス誘致 : 最小二乗法(OLS), 観測 : 1972:1-2020:1 (T = 193) 従属変数 : Ij 係数 Std. Error t 値 p 値 Const 23.4521 0.0420073 558.3 <0.0001 *** δ 1.18602 0.0100561 117.9 <0.0001 *** ω 0.443081 0.286446 1.547 0.1236 DUM1 −1.64954 1.05914 −1.557 0.1210

Mean dependent var 28.33324 S.D. dependent var 0.467691 Sum squared resid 0.493054 S.E. of regression 0.051076 R-squared 0.988260 Adjusted R-squared 0.988073 F(3, 189) 5303.169 P-value(F) 4.2e-182 Log-likelihood 302.2331 Akaike criterion −596.4662 Schwarz criterion −583.4154 Hannan-Quinn −591.1811 Rho 0.968756 Durbin-Watson 0.058747

(14)

表2-9 アトランタ誘致:観測 : 1972:1-2020:1 (j 193) 従属変数 : Ij 係数 Std. Error t 値 p 値 Const 23.4483 0.0373177 628.3 <0.0001 *** δ 1.18782 0.00901348 131.8 <0.0001 *** ω 0.571877 0.273525 2.091 0.0379 ** DUM2  −2.38485 1.11666 −2.136 0.0340 **

Mean dependent var 28.33324 S.D. dependent var 0.467691 Sum squared resid 0.449475 S.E. of regression 0.048767 R-squared 0.989297 Adjusted R-squared 0.989128 F(3, 189) 5823.446 P-value(F) 6.7e-186 Log-likelihood 311.1630 Akaike criterion −614.3261 Schwarz criterion −601.2753 Hannan-Quinn −609.0409 Rho 0.954838 Durbin-Watson 0.086827 表2-10 全誘致 : 最小二乗法(OLS), 観測 : 1972:1-2020:1 (T = 193) 従属変数 : Ij 係数 Std. Error t 値 p 値 Const 23.4723 0.0408195 575.0 <0.0001 *** δ 1.18248 0.00974668 121.3 <0.0001 *** ω −0.0604197 0.0428176 −1.411 0.1599 DUM3 0.199435 0.167425 1.191 0.2351

Mean dependent var 28.33324 S.D. dependent var 0.467691 Sum squared resid 0.460450 S.E. of regression 0.049358 R-squared 0.989036 Adjusted R-squared 0.988862 F(3, 189) 5683.147 P-value(F) 6.5e-185 Log-likelihood 308.8352 Akaike criterion −609.6703 Schwarz criterion −596.6196 Hannan-Quinn −604.3852 Rho 0.962463 Durbin-Watson 0.072568

上記の表の p 値の後の、※※※・・・・有意水準 1 % ※※・・・・有意水準 5 % ・・・・有意水準10%となって

いる。この推計の数値データは、FRB の ECONOMIC RESEARCH のサイトより入手した(https://fred.stlouisfed. org/)。(2020年 5 月22日現在)。表のαは定数項、Std. Error はこの推計式の分散に対応する各パラメーターの標準 偏 差、R-squared は 決 定 係 数、Adjusted R-squared は 修 正 済 み 決 定 係 数 で あ る。F( ) は F 値 を 示 す。S.E. of regression は推計式の攪乱項の分散の不偏推定量である s2の計算値である。加藤(加藤 [ 加藤 , 2012])54−57ペー ジ参照。 これらの推計結果を要約すれば、アメリカではアトランタ誘致に関してみれば、生産が 投資に及ぼす効果は0.57大きくなっており、切片についてみたとき、−2.38小さくなって いるということが統計的に有意であり、他のロサンゼルスや全オリンピック誘致で見たと きにはオリンピックの生産活動から投資への影響は確認できなかった。

(15)

3 .日本のオリンピック誘致の経済効果の推計

日本のオリンピック開催は1964年の10月10日であり、この事例を取り上げるのは、現在 直面するオリンピックの延期の効果を探るとした場合に、いささか物足りないと思う。し かし、オリンピックを誘致した時代は、日本が高度経済成長を迎えるときであり、まだ発 展途上国に近い段階にあったと考えれば、この時代のオリンピック誘致の経済効果を見る ことは、発展途上国の誘致の経済効果を比較するときに大きな意味を持つと考える。本論 で過去の東京オリンピック誘致の経済効果を推計するのは、上記の理由からである6 3-1.アブソープションアプローチによる日本のオリンピック誘致の経済効果の推計 まず、2 章のアメリカで用いた手法と同様に以下のアブソープションモデルを用いるこ とにした。 ただし、日本のオリンピック開催時期が1964年という相当古い時期であり、現在取得可 能な月次データで観測数を確保した。また、月次データの存在する種別を考慮して、そこ から GDP 統計の構成要素の代理変数として以下のような月次データを用いた。まず、消 費の代理変数として、消費と近い動きをする意味で「製造業の時間稼得金額の指数」を使 用した。投資は構造物の金額の指数を用い、生産(所得)の代理変数には、日本の総産業 の生産額の指数を使用した。それぞれの変数の実質化については、消費と輸入は消費者物 価(CPI)で、投資、GDP、輸出は生産者価格指数(PPI)を用いた。そして、それらの変 数を季節調整し、対数値にしたものを本論文の推計で使用した。

Yj= Const. + αCj + βIj + γXj+θMj + DUMij + uj

Const. は定数項、ujは誤差項であり、uj∼ N(0,σ2)に従う、それぞれの Yjは生産、Cj

は個人消費、Ijは投資(構築物の金額)であり、Xjは輸出額、Mjは輸入額であり、これ らの変数は季節調整して実質化し、対数値を用いている。日本ではオリンピックダミー (DUMij)は一つで、i=1のとき東京誘致とし、期間は1960年 1 月∼1964年10月までとしオ リンピック誘致期間ダミーとして設定した。 まず、上記のモデルのダミー変数を除いた推計式は以下の通りである(推計結果は表3 −1参照)。 6 中国、ブラジル、イギリスの経済効果の分析については、すでに進めている。比較するデータの 整合性の確保などいくつかの問題が残り、次回の論文で示す予定である。

(16)

Yj= 0.430311 +1.20162Cj + 0.894238Ij+ 0.208490Xj−0.220741Mj+ej (0.7921) (22.14***) (32.71***) (8.583***) (-11.58***) 表3-1 : 最小二乗法(OLS), 観測 : 1960:01-2020:02 (T = 722) 従属変数 : Yj 係数 Std. Error t 値 p 値 Const 0.340311 0.429619 0.7921 0.4286 α 1.20162 0.0542670 22.14 <0.0001 *** β 0.894238 0.0273367 32.71 <0.0001 *** γ 0.208490 0.0242919 8.583 <0.0001 *** θ −0.220741 0.0190598 −11.58 <0.0001 *** Mean dependent var −0.304920 S.D. dependent var 0.360154 Sum squared resid 5.034640 S.E. of regression 0.083796 R-squared 0.946166 Adjusted R-squared 0.945866 F(4, 717) 3150.430 P-value(F) 0.000000 Log-likelihood 768.1380 Akaike criterion −1526.276 Schwarz criterion −1503.366 Hannan-Quinn −1517.433 Rho 0.964716 Durbin-Watson 0.047526

上記の表の p 値の後の、※※※・・・・有意水準 1 % ※※・・・・有意水準 5 % ・・・・有意水準10%となって

いる。この推計の数値データは、FRB の ECONOMIC RESEARCH のサイトより入手した(https://fred.stlouisfed. org/)。(2020年 5 月22日現在)。表のαは定数項、Std. Error はこの推計式の分散に対応する各パラメーターの標準 偏 差、R-squared は 決 定 係 数、Adjusted R-squared は 修 正 済 み 決 定 係 数 で あ る。F( ) は F 値 を 示 す。S.E. of regression は推計式の攪乱項の分散の不偏推定量である s2の計算値である。加藤(加藤 [ 加藤 , 2012])54−57ペー ジ参照。 そして、東京オリンピック誘致の期間ダミー変数を用いた重回帰モデルの推計式は、以 下の通りである(推計結果は表3−2を参照)。 東京誘致: Yj = 0.0447 +1.13002Cj + 0.897847Ij+ 0.216540Xj−0.216966Mj (0.106) (21.29***) (34.12***) (9.252***) (-11.82***) − 0.117180 DUM1j + ej (-7.611***)

(17)

表3-2 東京誘致 : 最小二乗法(OLS), 観測 : 1960:01-2020:02 (j = 722) 従属変数 : Yj 係数 Std. Error t 値 p 値 Const 0.0447000 0.415337 0.1076 0.9143 α 1.13002 0.0530735 21.29 <0.0001 *** β 0.897847 0.0263164 34.12 <0.0001 *** γ 0.216540 0.0234053 9.252 <0.0001 *** θ −0.216966 0.0183522 −11.82 <0.0001 *** Dum1 −0.117180 0.0153963 −7.611 <0.0001 ***

Mean dependent var −0.304920 S.D. dependent var 0.360154 Sum squared resid 4.657812 S.E. of regression 0.080656 R-squared 0.950195 Adjusted R-squared 0.949848 F(5, 716) 2732.032 P-value(F) 0.000000 Log-likelihood 796.2224 Akaike criterion −1580.445 Schwarz criterion −1552.953 Hannan-Quinn −1569.833 Rho 0.955077 Durbin-Watson 0.056407

上記の表の p 値の後の、※※※・・・・有意水準 1 % ※※・・・・有意水準 5 % ・・・・有意水準10%となって

いる。この推計の数値データは、FRB の ECONOMIC RESEARCH のサイトより入手した(https://fred.stlouisfed. org/)。(2020年 5 月22日現在)。表のαは定数項、Std. Error はこの推計式の分散に対応する各パラメーターの標準 偏 差、R-squared は 決 定 係 数、Adjusted R-squared は 修 正 済 み 決 定 係 数 で あ る。F( ) は F 値 を 示 す。S.E. of regression は推計式の攪乱項の分散の不偏推定量である s2の計算値である。加藤(加藤 [ 加藤 , 2012])54−57ペー ジ参照。 この推計結果から分かることは、過去の東京オリンピックの誘致は、これまでの経済成 長から見たとき、GDP を押し下げるマイナスの影響であったという統計的に有意な意味 での結論であった。おそらく、これは東京オリンピックの後の経済成長が著しいために、 オリンピックを迎えるにあたり消費や投資、純輸出の効果が大きく、オリンピック誘致の 効果が統計上大きく現れないという解釈も考えられるが、少なくとも、これまでの日本経 済の成長から見て、オリンピック誘致が単純に経済発展の呼び水となっているという説 は、この推計結果からは導かれなかった。 3-2 消費関数と投資関数の日本のオリンピック誘致の経済効果について では、つぎに 2 章のアメリカで用いた分析手法と同じく、単純化した消費関数を用い、 ダミー変数重回帰モデルでオリンピック誘致の消費の影響について検証しよう。ここで、 用いられる消費関数は以下の如きである。 (消費関数)

Cj = Const. + κYj + εDUM1jYj + DUM1j+ uj

(18)

DUM1jは東京誘致の期間ダミーである。DUM1jYj に掛かる係数εはオリンピック誘致の直 接的な所得を通じた消費への効果を示すことになる。 まず、消費についてオリンピックの東京誘致の効果に関する推計式を以下に示す(推計 結果は、表3−3参照)。 (オリンピック誘致の消費への波及効果についての検証結果) Cj= -0.00379887 + 0.896703Yj − 0.507186 DUM1Yj – 0.728084− ej (-0.5111) (46.39***) (-2.821***) (-3.644***) 表3-3 消費への影響 : 最小二乗法(OLS), 観測 : 1960:01-2020:02 (j = 722) 従属変数 : Cj 係数 Std. Error t 値 p 値 Const −0.00379887 0.00743242 −0.5111 0.6094 κ 0.896703 0.0193312 46.39 <0.0001 *** ε −0.507186 0.179764 −2.821 0.0049 *** Dum1 −0.728084 0.199818 −3.644 0.0003 ***

Mean dependent var −0.288393 S.D. dependent var 0.378685 Sum squared resid 15.74483 S.E. of regression 0.148084 R-squared 0.847719 Adjusted R-squared 0.847083 F(3, 718) 1332.323 P-value(F) 7.3e-293 Log-likelihood 356.5366 Akaike criterion −705.0732 Schwarz criterion −686.7451 Hannan-Quinn −697.9984 Rho 0.993150 Durbin-Watson 0.013270

上記の表の p 値の後の、※※※・・・・有意水準 1 % ※※・・・・有意水準 5 %・・・・有意水準10%となって

いる。この推計の数値データは、FRB の ECONOMIC RESEARCH のサイトより入手した(https://fred.stlouisfed. org/)。(2020年 5 月22日現在)。表のαは定数項、Std. Error はこの推計式の分散に対応する各パラメーターの標準 偏 差、R-squared は 決 定 係 数、Adjusted R-squared は 修 正 済 み 決 定 係 数 で あ る。F( ) は F 値 を 示 す。S.E. of regression は推計式の攪乱項の分散の不偏推定量である s2の計算値である。加藤(加藤 [ 加藤 , 2012])54−57ペー ジ参照。

では、つぎに、生産(所得)だけに依存する投資関数を用いて、東京オリンピック誘致の 経済効果を推計しよう。ここでも以下のようなダミー変数重回帰モデルを用いることにしよう。

(投資関数)

Ij = Const. + δYj + ωDUM1jYj + DUM1j+ uj

式の Const. は定数項、ujは誤差項であり、uj∼ N(0,σ2)に従う。オリンピックダミーは、

DUM1jであり、i=1のとき東京誘致である。また、この式の DUM1jYj に掛かるωはオリン

ピック誘致による直接的な所得を通じた投資の影響を示す。

まず、投資についての東京誘致の効果に関する推計式を以下に示す(推計結果は表3−4 参照)。

(19)

(オリンピック誘致の投資への波及効果についての検証結果) Ij= -0.0664061−0.328845Yj + 0.192758 DUM1Yj + 0.5129 + ej (-6.837***) (-13.02***) (0.8205) (1.988**) 表3-4 投資への影響 : 最小二乗法(OLS), 観測 : 1960:01-2020:02 (T = 722) 従属変数 : Ij 係数 Std. Error t 値 p 値 Const −0.0664061 0.00971342 −6.837 <0.0001 *** δ −0.328845 0.0252640 −13.02 <0.0001 *** ω 0.192758 0.234934 0.8205 0.4122 DUM1 0.519021 0.261141 1.988 0.0472 **

Mean dependent var 0.054556 S.D. dependent var 0.260982 Sum squared resid 26.89190 S.E. of regression 0.193530 R-squared 0.452398 Adjusted R-squared 0.450110 F(3, 718) 197.7239 P-value(F) 1.85e-93 Log-likelihood 163.2886 Akaike criterion −318.5772 Schwarz criterion −300.2491 Hannan-Quinn −311.5024 Rho 0.995048 Durbin-Watson 0.008880

上記の表の p 値の後の、※※※・・・・有意水準 1 % ※※・・・・有意水準 5 % ・・・・有意水準10%となって

いる。この推計の数値データは、FRB の ECONOMIC RESEARCH のサイトより入手した(https://fred.stlouisfed. org/)。(2020年 5 月22日現在)。表のαは定数項、Std. Error はこの推計式の分散に対応する各パラメーターの標準 偏 差、R-squared は 決 定 係 数、Adjusted R-squared は 修 正 済 み 決 定 係 数 で あ る。F( ) は F 値 を 示 す。S.E. of regression は推計式の攪乱項の分散の不偏推定量である s2の計算値である。加藤(加藤 [ 加藤 , 2012])54−57ペー ジ参照。 上記の消費と投資関数の推計式ならびに推計結果から、日本のオリンピック誘致の消費 と投資の影響の推計結果を要約すれば、消費に関して見たとき、オリンピック誘致期間で、 推計式の切片が低下していることから、消費水準も減退している。そして、所得の消費へ の反応度も落ちていたことが分かる。もちろん、これらの結論は統計的に有意な意味で確 認できた。 他方、投資の影響について言及すると、全推計期間で、生産活動と比べて投資は減退し た。しかし、オリンピックダミーの効果を見れば、推計式の切片は増えており、東京の誘 致時期で投資(構造物向け投資)が増大したことが確認できる。これは東京オリンピック 誘致時期に国内に構造物が建ったという事象と矛盾しない結論である。ただし、全推計期 間で、国内生産が増えたときに投資の反応が増すといった事象は、統計的に有意な意味で 確認できない。むしろ、δの値は負であり、これは民間の投資をオリンピックの投資が先 食いした結果、それ故、生産の増加への対応が鈍ったと見る方が妥当と思われる。

(20)

4 .結語

本論文で検証した結果は以下の通りである。 アメリカで開催されたオリンピック誘致の経済的影響を検証した結果: 1   ロサンゼルスオリンピック誘致では GDP の増大の影響は確認できず、アトランタオ リンピックにおいて GDP 増大の影響を統計的に有意な意味で確認できる。両者の全 体で誘致の影響を見たときには、GDP増大の影響は統計的に有意な意味で認められる。 2   アメリカのオリンピック誘致の消費と投資の影響についてみたとき、ロサンゼルス、 アトランタの誘致のそれぞれを検証した結果、消費についての効果は確認できず、全 誘致活動で見たとき、所得から消費に負の効果が働くことが統計的に有意な意味で確 認できた。他方、投資の推計結果では、アトランタの誘致で生産から投資へプラスの 影響を及ぼすことが統計的に有意な意味で確認できるが、ロサンゼルスと誘致全期間 でみた場合には、誘致期間で投資への経済的影響は確認できなかった。 日本で開催された1964年の東京オリンピック誘致の経済的影響を検証した結果: 3   東京オリンピックの誘致では、国内 GDP 減少の効果が統計的に有意な意味で確認さ れた。他方、消費と投資の影響について検証した結果、東京オリンピック誘致で消費 の水準の低下と所得から消費への反応の低下の両者が統計的に有意な意味で確認され た。投資については、誘致によって投資水準が増大した事は認められるが、生産から 投資への反応についての動きを統計的に有意な意味で確認できなかった。 本論文を終えるにあたり、オリンピックの誘致の経済的影響について、オリンピック誘 致が誘致国 GDP を増やす、あるいは消費、投資を拡大させるという安易な結論を期待す る者がいるが、そのような結論になってはいない。今後、行う予定である残り三ヶ国の経 済的影響を考察して、オリンピック誘致の経済効果を大別、分類することを切望し、本論 を終えることにしたい。 参照文献 芳賀半次郎.(1995).『マクロ経済学(上)第二版』(第一版1984年部分改定 1995年).東京 : 木鐸社 . 橋本寿朗.(1995).『戦後の日本経済』(岩波新書)東京 : 岩波書店. 加藤久和.(2012).『gretl で計量経済分析』.東京:日本評論社. 長田充弘,尾島麻由実,倉知善行,三浦弘,川本卓司(2015)「2020年東京オリンピックの経済効果」 『Report & Research Paper 2015年12月』pp.1-18 日本銀行調査統計局

日本総研 .(2013) 「2020 年東京五輪の経済効果をどうみるか―7 ∼12兆円の景気浮揚効果―」,日本 総研 Research Focus, No. 2013-027.

東京 (2020)「2020年オリンピック競技大会 日本開催の経済波及効果」.オリンピック・パラリンピッ

(21)

【付表】

本論でも用いた観測データの入手については、FRB の ECONOMIC RESEARCH のサイトより、国 別データで整理されたところから、入手した(https://fred.stlouisfed.org/)。(2020年 5 月22日現在)。

原 典 OECD(2020),"Main Economic Indicators - complete database", Main Economic Indicators (database),https://doi.org/10.1787/data-00052-en (23 May 2020). 本論文の推計に使用したデータの基本統計表を以下に記す。統計表の変数の _USA はアメリカ、 _JA は日本を示している。 アメリカの推計に使用したデータの基本統計量 使用した観測 : 1972:1 - 2020:1 変数 平均 中央値 最小値 最大値

C_USA 7.6367e+012 7.0576e+012 3.3078e+012 1.3414e+013

I_USA 2.2368e+012 2.0258e+012 8.5681e+011 3.9940e+012

X_USA 7.3716e+008 7.2921e+008 1.7262e+008 1.3746e+009

M_USA 1.0816e+009 9.1732e+008 1.9772e+008 2.0556e+009

Y_USA 65.972 62.158 30.143 110.45 変数 標準偏差 変動係数 歪度 過剰尖度 C_USA 3.0404e+012 0.39814 0.23193 -1.3018 I_USA 9.6577e+011 0.43177 0.19266 -1.3626 X_USA 3.6583e+008 0.49628 0.35127 -1.2085 M_USA 6.0620e+008 0.56048 0.28151 -1.4469 Y_USA 24.281 0.36804 0.16063 -1.3305

変数 5% Perc. 95% Perc. IQ range 欠損値数

C_USA 3.5647e+012 1.2746e+013 5.7641e+012 0

I_USA 9.4296e+011 3.8447e+012 1.8052e+012 0

X_USA 3.0151e+008 1.3476e+009 6.7944e+008 0

M_USA 2.9472e+008 1.9912e+009 1.2265e+009 0

Y_USA 32.548 105.48 46.107 0 日本の推計に使用した原データを以下に記載する。 日本の基本統計量 使用した観測 : 1960:01 - 2020:02 変数 平均 中央値 最小値 最大値 C_JA 0.79571 0.74122 0.23737 2.0815 I_JA 1.0957 0.97446 0.79516 1.8727

X_JA 3.1104e+010 2.8021e+010 2.0599e+009 7.1197e+010

M_JA 3.3625e+010 3.0151e+010 6.9291e+009 7.9129e+010

Y_JA 0.77995 0.82780 0.22532 1.1565

変数 標準偏差 変動係数 歪度 過剰尖度

C_JA 0.40112 0.50411 1.2781 1.5505

I_JA 0.32540 0.29697 1.2906 0.16141

(22)

M_JA 1.8144e+010 0.53961 0.63655 -0.58806

Y_JA 0.23503 0.30134 -0.44759 -0.81598

変数 5% Perc. 95% Perc. IQ range 欠損値数

C_JA 0.26906 1.7265 0.26369 0

I_JA 0.80533 1.8117 0.17194 0

X_JA 2.7924e+009 6.7536e+010 3.4795e+010 0

M_JA 9.1510e+009 6.8175e+010 2.2254e+010 0

参照

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