ヘーゲル「法・権利の哲学」第6回講義の国家論 : 1824/25年・冬学期(ベルリン大学)
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(2) した が っ て 、 第6回 家」 中 の 「b.国. 「a.国. 講 義 録 の うち主 な検 討 の 対 象 に な る の は 、 第 三 部. 内 法 」 で あ る(ち. 際 法 」、 「c.世. 「倫 理 」 の 第3章. な み に 、 「国 家 」 は 『要 綱 』 と 同 じ く 「a.国. 界 史 」 と論 じ られ て い く)。 な お 、 「a.国. 内法」 に 続 い て. 内 法 」 は 第260節. ま で 割 り当 て ら れ て い る が 、 こ の うち 第264節 、 第288節 ∼ 第294節 、 第309節. 「国. か ら 第329節. 、 第311節. ∼ 第314節. の 合 計13節 分 が 講 義 録 に 収 録 さ れ て い な い 。 これ は グ リー ス ハ イ ム に よ る 筆 記 が 欠 如 し て い る た め で あ る。 この講 義 録 に は こ うした 不 十 分 な部 分 もあ るが 、 以下 で 私 は 講義 録 に 収録 され た ヘ ー ゲ ル の 「口 頭 解 説 」 を 中 心 に し て 、 彼 の 国 家 観 、 政 治 観 の 特 徴 に つ い て み て い き た い 。. 1 ヘ ー ゲル は 国 家機 構 、 国 内政 治 体 制 の具 体 的 な 論述 に 先 立 ち 、第260節 か ら第271節 まで の(第 264節 が 欠 如)11節 (2)国. の 「本 文 」 お よび 「口頭 解 説 」 に お い て 、(1)国. 家 と家 族 ・市 民社 会 との 関係 、(3)国. 家 の 本 質 ・目的 ・原 理 、. 家 と宗 教 との関 係 、等 の 国家 の基 本 に 関 わ る点 に. つ い て 考 え を 述 べ て い る。 これ らは 『 要 綱 』 で は あ ま り詳 し く説 明 され て い な いが 、 重 要 だ と思 わ れ るの で 、 ま とめ て お きた い 。 (1)国. 家 の 本 質 ・目的 ・原 理 につ いて 。. ヘ ー ゲル は い う. 「国 家 は 具 体 的 な 自由 の実 現 体 で あ る。 ところ で 、具 体 的 な 自由 とは な に. か とい えば 、個 の人 格 とそ の特 殊 な 利 益 が 完全 に 開花 し、 そ の正 当性 が そ れ と して … …承 認 され る と と もに 、個 人 が みず か ら進 ん で共 同 の 利益 とか か わ り、知 と意 志 に も とづ い て 、共 同 の利 益 こそ が お の れ の 土 台 を なす 精 神 だ と認 め 、 共 同 の利 益 を 最 終 目的 と して 活 動 す る こ と に あ る 」 (第260節. 「 本 文 」、S.634、502頁)。 この よ うに ヘ ー ゲル は 、国 家 の本 質 を 具 体 的 な 自由 を実 現 す. る と ころ に あ る とす る。 で は 、 「具 体 的 な 自由 の実 現 」 とは どの よ うな事 態 を さす の か。 そ れ は、 「個 の 人格 とそ の 特殊 な利 益 」 が実 現 す る と同 時 に 、 「 共 同 の利 益」が 遂 行 され る こ とだ とヘ ー ゲ ル は強 調 す る。 こ う した 国家 の本 質 理 解 に 立 つ た め に 、 と りわ け 主 体 性 あ るい は主 観 性 が 極 度 に達 成 され て い る とみ な され る近 代(ヘ るのである. ー ゲル の 現 代)に おけ る国 家 の原 理 は 、 ヘ ー ゲ ルに よる と こ う確認 され. 「 近 代 国家 の原 理 は 、 主体 性(主 観 性)の 原 理 を 特殊 な人 格 の 自立 とい う極 限 に. まで至 らせ る と同 時 に、 そ れ を 共 同体 の統 一 へ と押 し も ど し、 主 体性(主 観 性)の 原 理 の うち に 共 同体 の統 一 を保 持 す る も の で あ っ て、 そ こに近 代 国家 の おそ るべ き強 さ と深 さが あ る」(第260 節 「 本 文 」、S.635、503頁)。 近 代 国家 の 「強 さ と深 さ」 と して説 明 され る近 代 国 家 の原 理 の 内容 は 、 当 然 な が らヘ ー ゲ ル の 考 え る国 家 の 本 質 理解 と矛 盾 す る わ け で はな い 。 矛盾 す る ど ころか 、 近 代 つ ま りヘ ー ゲ ル に と っ て の 現 代 は 国 家 の 本 質 が最 も豊 か に展 開 され 開 花 して い る。 そ れ は、 主 体 的(主 観 的)特 殊 性 と 共 同 性 との 一 致 とい うこ とで あ る 。 す なわ ち、 各 人 格 が 完 全 に 自立 しつ つ 、 共 同 体 との統 一 を 確 保 し維 持 して い る。 み られ る よ うに、 ヘ ー ゲル は 国 家 の 本質 や 国 家 の原 理 に関 わ って 「共 同体 」、 「共 同 性」 とい う 2.
(3) こ とを特 に強 調 して い る。 口頭 解 説 に お い て ヘ ー ゲル は、 「国家 は 共 同性 そ の も の を 目的 とす る 共 同体 で あ る」(第260節. 「 解 説 」、S.635、503頁)と. い う。 先 に み た個 々 人 の 「人 格 的特 殊 性 」 に. 関わ る点 は ど うな る のか と懸 念 さ え して し ま うほ どで あ る。 これ は 、 ヘ ー ゲル に よる と個 々 人 と い うの はみ ず か ら の特 殊 的 利 益 の追 求 を は な れ て は 存 在 しえな い 。 ま して 人 格 的 自立 の達 成 とい うこ とが そ の最 も良 き最 大 の 特 徴 と して ヘ ー ゲル に よ り理 解 され る近 代 に あ って は 、 そ の国 家 の 本 質 把 握 に お いて 、 い か に 「共 同 体」、 「 共 同性 」 が 強調 され て も 「 人 格 的 特 殊 性 」(個 々人 の 特 殊 的 利 益 の 追 求)が ネ グ レク トされ て い るわ け で は 決 して な い の で あ る。 「共 同 性 」 との 一 致 の と ころ で こそ 個 々人 の 「人 格 的 特殊 性 」 が 開花 し最 大 限実 を結 んで い る との 先 の 確 認 が 、 口頭 説 明 で は 次 の よ うに 分 か りや す くな され て い る. 「国家 の強 さを成 り立. た せ る核 心 は 、 個 々人 の 幸 福 、 特 殊 な 目的 、精 神 生活 、精 神 的発 展 のす べ て が 国家 の うち で 実 現 され 、個 人 の 目的 が 共 同 の 目的 と一体 化 す る な か で実 現 され る こ とを、 個 人 が 認 識 し、 自覚 す る こ とが で き、 か くて権 利 と義 務 の統 一 が実 現 す る と ころ に あ る」(第261節. 「 解 説」、S.636、504. 頁)。 こ こで指 摘 され て い る 「 共 同体 」 は い うま で も な く国家 で あ る。 これ か らの 議論 の 中心 は 国 家 に他 な ら な い。 しか し共 同体 と い え ば国 家 の他 に 、 例 え ば代 表 的 な もの と して 家族 や 市 民 社 会 が あ る。 で は、 これ ら家 族 ・市 民 社 会 と国 家 は い か な る関 係 に あ り、 両者 で は 「人格 的特 殊 性 」 の 実 現 と い うこ とに おい て どの よ うな 相 違 が あ るの だ ろ うか 。 (2)国. 家 と家 族 ・市 民 社 会 と の 関係 に つ いて 。. ヘ ー ゲル に よ る と、 家族 も市 民 社 会 も共 同体 で あ る こ とに変 わ りは な い。 『 要綱』 においても、 この 「法 ・権 利 の 哲 学 講 義(録)」 に お い て も、家 族 ・市 民社 会 は 国家 の前 段 階 で論 じられ 、そ し て家 族 ・市 民 社 会 ・国家 の三 者 は 第3部. 「 倫 理(共 同体)」 の重 要 な構 成 体 な の で あ る。い っ た い. 三 者 は共 同体 と して何 が異 な る の か。 ヘ ー ゲル は い う. 「 家 族 と市 民 社 会 は、 共 同 体 の倫 理 と して の ま と ま りを 実 現 した 自由 の要. 素 で は あ るが 、 す べ て の人 を 包 み 込 む 共 同 性 を 獲 得 した も ので は な く、 そ れ ぞ れ に一 定 の共 同性 を 展 開 し、 実 現 してい るに す ぎな い」(第260節. 「解 説 」、S.634f.、503頁)。. この説 明 で は、 家 族. と市 民 社 会 は 共 同 体 とい って も 「す べ て の 人」 を包 み込 ん で いず 、「一 定 の 共 同性 」 しか 実 現 し て い な い 。 つ ま り、 共 同 とい うこ とで の 包 括範 囲 と包 括度 で の 不 十 分 さを もっ て 、家 族 ・市 民社 会 と国 家 との 相 違 が 明 らか に され る。 続 け て ヘ ーゲ ル は 説 明 す る. 「家族 に お い て は 、 自然 の情 が共 同体 の倫 理 の形 を と る し、 市. 民社 会 で は 、特 殊 な 目的 が 力 を発 揮 し、個 人 は特 殊 な 目的 に した が っ て活 動 す る。 す る と、個 人 は社 会 に依 存 し、 共 同体 との統 一 も、強 制 力 の も とで は じめ て実 現 され る。 しか し、精 神 は理 念 性 と して も. 自由 な共 同 の 目的 が そ の ま ま客 観 化 され 、現 実 化 され る よ うな 形 で も. 存在 し. な けれ ば な らず 、 そ して 、共 同 の世 界 がそ の ま ま 目的 と な った のが 、 国 家 の 本 当 の あ りか た で あ る。 家 族 は心 情 を核 とす る場 で あ るか ら、 そ の よ うな 客 観 性 は もた な い し、 市 民社 会 に あ っ て は 、 共 同 の利 益 で は な く、 特 殊 な 利 益 が 目的 とな る」(第266節. 「解 説 」、S.640、507頁)。. こ こでは 共 3.
(4) 同性 の あ り方 、 倫 理 と い った 側面 か ら家族 ・市 民 社 会 ・国 家 の相 違 が説 明 され て い る。 自然 の情 ・主 観 的 心 情 を核 とす るが ゆ え に客 観 性 に欠 け る倫 理 を特 徴 とす る家 族 、 特 殊 な 利 益 追 求を 目的 に す るが ゆ え に 共 同 の利 益 は社 会 に よる強 制 か 偶 然 の結 果 確 保 され る の を特 徴 とす る 市民 社 会 。 こ うした 家 族 と市 民社 会 とは 異 な って 、国 家 に お いて は個 々人 の 特 殊 な 利 益 が 十 分 に 開花 しつ つ 、 「自由 な 共 同 の 目的 が そ の ま ま客 観 化 され 、 現 実 化 され る」。 こ う して 国 家 に お い て は 、包 括 範 囲 ・包 括 度 に お い て も十 分 に 、 そ して倫 理 に お い て も 自由 に客 観 的 に 共 同性 が 確 保 さ れ現 実 化 され て い る とヘ ー ゲル は い う。 この こ とを、 「国 家 は共 同性 そ の もの を 目的 とす る共 同 体 で あ る」(第260節. 「解 説」、S,635、503頁)、 「共 同 の世 界 が そ の ま ま 目的 とな っ た のが 、国 家 の. 本 当 の あ り方 で あ る」(第266節 (3)国. 「 解 説 」、S.640、507頁)と. へ 一 ゲル は 説 明 した の で あ る。. 家 と 宗教 との 関係 につ い て 。. 国家 と宗 教 との 関 係 が な ぜ 問題 に な るの か。 そ れ は 先 に確 認 した 国家 の 目的 と関 わ るの で あ る。 「国家 は 共 同 性 そ の もの を 目的 とす る共 同体 で あ る」(第260節 益 そ の も ので あ り、 … …共 同性 で あ る」(第270節. 「 解 説 」)、「国 家 の 目的 は 共 同 の利. 「 本 文 」、S.644、511頁)と. ヘ ー ゲル は 述 べ 、国. 家 の 目的 を 「共 同性 」、 「共 同体 」 の確 保 ・実 現 とお さ え る が 、 この場 合 の 共 同 性 ・共 同 体 の 自覚 の 二つ の形 態 と し て 国家 と宗教 が あ る とす る。 第270節 の 「口頭 解 説」 に お いて ヘ ー ゲル は、 『要 綱 』 で は み られ な いほ ど きわ め て 詳 細 に 、二 つ の 自覚 形 態 と して の国 家 と宗 教 の(イ)考. 察 順 序 、 内 面 ・外 面 関 係 、土 台 ・真 理 関 係 、(ロ)歴. 史 的特 殊 性 を お び た特 殊 な 国家 体 制 の も とで の繋 が り、 に つ い て のべ て い る。 まず(イ)に. つ い てで あ るが 、 ヘ ー ゲ ル は 国家 と宗 教 の 両 者 を 共 同性 ・共 同 体 を 自覚 す る もの. と して並 列 で は 理 解 して いな い。 「哲 学 的 考 察 全 体 の順 序 か らす る と、国 家 の後 に 宗 教 が くる。宗 教 が最 後 に き、 究 極 の真 理 を最 も純 粋 に 、最 も一 般 的 に と らえ るの が宗 教 で あ る」(第270節 説」、S.645、512頁)と. 「 解. ヘ ー ゲル は い う。 こ うした 国 家 → 宗 教 の位 置 関 係 が生 じる 理 由 は 何 な の. か 。 それ は こ うで あ る。 宗 教=「 精 神 の共 同体 を精 神 的 な もの と して対 象 に 据 え 、 精 神 の 共 同体 を 内面 的 に考 察 し、 自覚 す る」(同 所)。 国家=「. この世 に位 置 を 占 め る精神 で あ り、 民 族 の 日常. 意識 と して あ る精 神 で あ る」(同 所)。 こ こか ら して、 内面 ・外面 関係 とい う表 現 は 必 ず し も適 当 で あ る と は い え な い が、 「 精 神 の共 同体 を 内面 的 に 考 察 」 す る宗 教 に 対 して、 「この 世 に位 置 を 占 め」、 「この世 の存 在 と してみ ず か らを[外 面 的 に]知 る」 国 家 と して、 宗 教 と国 家 を 区 別 し、 両 者 の相 違 をつ か む こ とはヘ ー ゲル 自身 の説 明 か ら もお お よそ 妥 当 で あ ろ う。 とな る と 自覚 の形 態 と して純 粋 な あ り方 をす るの は 国家 で は な くて宗 教 の方 で あ る。 これ が 主 な 理 由で あ る。 この理 由説 明 の と ころ に、「国 家 は 、精 神 が お のれ を 自覚 す る最 高 の 形 態 とは い えず 、宗 教 に お け る 自己意 識 こ そ最 高 の形 態 で あ る」 とす る ヘ ー ゲル の価 値 観 が よ くあ らわ れ て い る と思 う。 こ うした一 連 の説 明 を ま と め る形 で 、 「国家 が 宗 教 を 土 台 と」 し、 「国家 を 権 威 づ け 、 強 化 す るの が 宗 教 で あ り」、 した が って 「 宗 教 こそ が 国家 の真 理 で あ る」(第270節. 「 解 説 」、S.646、513頁)と. ヘ ーゲ ル は強 調 す る の で あ る。 つ ぎ に(ロ)の 4. 国家 と宗 教 の結 び つ きに お け る歴 史 的 特殊 性 に つ い ては ど うか 。 ヘ ー ゲル は イ.
(5) ス ラ ム教 国 家 とキ リス ト教 国 家 の 違 い 、 キ リス ト教 の 中 で もカ ソ リック とプ ロテ ス タ ン トと の 相 違 な どを 明 らか に し、 さ らに は ク ェカ ー派 、 イ ギ リス再 洗 礼 派 、 ヘ レン フ ー タ ー派 の人 々 の信 仰 生活 ・暮 ら しぶ り ・国家 との 関 わ り等 につ い て説 明 した上 で 、 「プ ロテ ス タ ン ト国 家 」 で こ そ 、 「国家 と宗 教 の ほ ん と うの姿 が 国家 の原 理 と宗 教 の原 理 が 統 一 され て い る」(第270節 S.650、516頁)も. 「 解 説 」、. の と確 認 す る。. こ う確 認 で き る理 由 と して 、 第1に な ぜ プ ロテ ス タ ン トと して の キ リス ト教 か とい うこ とが 問 題 に な り、 第2に な ぜ プ ロテ ス タ ン トの 精 神 と国 家 の 原 理 とが一 致 す る の か とい う こ とが 問 題 に な る。結 論 的 に ま とめ て お くと こ うで あ る。第1の 点 で は 、「キ リス ト教 の場 合 、宗 教 と国家 の 違 い は 、一 方 に 、絶 対精 神 の 意識 が 、 つ ま り、全 体 と して ま とま りを なす 過 不 足 の な い精 神 の意 識 が あ り、他 方 に 、法 律 や 国家 機 構 や憲 法 体 系 の形 を とっ て、 あ る い は、 習 慣 や 道 徳 の形 を と っ て 存 在 す る精 神 の意 識 が あ る」(第270節. 「 解 説 」、S.647、513頁)と. され る。 第2の 点 で は、 「プ ロ. テ ス タ ン トの精 神 の原 理 は、 主 観 的精 神 の 内面 の 自 由に あ って 、 人 間 の 精神 は 自 由で あ る こ と、 と いい あ らわ され る。 …… 人 間 の精 神 は 自 由た り うる とい うこ と… …精 神 は 人 間 の心 の な か に 住 む べ き も の で、 そ こで 意 志 と意 識 を も って 生 きて い か ね ば な らな い。 そ れ は 国家 の原 理 で もあ っ て 、人 間 が 自由に 生 活 し、行 動 す べ く、人 間 の 自由 を実 現 した ものが 、す な わ ち国 家 で あ る」(第 270節. 「 解 説 」、S.650、516頁)と. され る。. こ う して へ 一ゲ ル は プ ロテ ス タ ン ト国家 に お い て こそ 宗 教 と国家 とは 同 じもの を 原 理 と して 、 同 じ源 泉 か ら流 れ 出 て お り、 「内奥 の原 理 た る宗 教 的原 理 と現 実 世 界[国 家 が 関 わ る]の 原 理 とが 同一 で あ る」(第270節. 「解 説 」、S.651、516頁)と. 説 明 す る。. II ヘ ー ゲ ル は 第272節 の前 に 「 国 内体 制 」 とい うタイ トル を つ け て い るが 、国 内政 治 体 制 、国家 機 構 の具 体 的 な叙 述 に 入 るの は第273節 か らで あ って 、 第272節 の 「口頭 解 説 」 で は 「 最 善 の政 治 体 制 」、 「 理 性 的 な体 制 」 に つ い て原 則 的 な考 え を示 し、 そ して結 論 的 に 「 立 憲 君 主 制 」 の必 要 性 に つ い て きわ め て詳 細 に論 じて い る。 『要 綱』 との 比較 で い うと、 この講 義 録 に お け る第272節 で の 詳 しい 「口頭 解 説 」 は 、 『 要 綱 』 で の 第273節 第272節. 「注 解 」 に 近 似 して い る よ うに 思 う。 い ず れ に しろ 、. 「口頭 解 説 」は 重要 な 内 容 を含 ん で い る と思 わ れ るの で 、て い ね い に フ ォ ロ ー して お きた. い。 ヘ ー ゲル が 「最 善 の 体 制」 に つ い て 口頭 で 詳 し く説 明 す るの は こ うい う文 脈 に お い て で あ る。 第272節. 「本 文」 に おい て 、ヘ ー ゲル は つ ぎの よ うに述 べ る. 「国 家 が 、概 念 の本 性 に した が っ. て 現実 の活 動 を 分 割 し、決 定 す る と き、 そ こに理 性 的 な体 制 が生 まれ る」(第272節 52、518頁)。. 「 本 文 」、S.6. こ こで意 味 して い る の は 、 国家 が ま っ と うに機 能 して い る時 に は諸 権 力 が 分 割 さ れ. それ ぞれ 特 殊 な仕 事 を担 い、 現 実 に活 動 して い て、 そ してそ れ らが一 つ の ま と ま りを な して い る とい う こ とで あ る。 こ う した と ころ で生 まれ て い る国 家 体 制 は 「理 性 的 な 体 制 」 に 他 な らな い 。 この 「理 性 的 な体 制 」 と 「最 善 の体 制 」 とを イ ー コール だ と し、 で は 「最 善 の 体 制 」 とは 具 体 的 5.
(6) に ど の よ うな もの か とい うヘ ー ゲル の 自問 自答 が 「口頭 解 説 」 に あた る の で あ る 。 「 最 善 の体 制 」 とは どの よ うな も のか につ い て の答 え は い くつ か 考 え られ る と し、 ヘ ー ゲル は 第1の 最 も一 般 的 な答 え と して、 「うま く運 用 され さえ す れ ば 、 どん な体 制 で も よ い}(第272節 「 解 説 」、S.652、518頁)と. い うもの を あ げ て い る 。 しか し この 答 え は 、 「 問 い を避 け 、 問 い に蓋. を した だ け の こ と」(同 所)で あ る とヘ ー ゲル は い い 、 こ うした 「どんな 体 制 で も よ く、最 善 の体 制 な どな い とい うの は 、答 え に な っ て い ない 」(同 所)と. され る。 「どん な 体 制 で も よい」 との答. え に特 徴 的 な 、内容 に は区 別 が な く、内容 はみ な 同 じ とす る考 え は、「体 制 に 関 して は理 性 な ど求 め よ うが な く、体 制 に 固有 の 本 質 的 な 内容 な ど存 在 せ ず 、体 制 は偶 然 の ま ま に動 くしか な い」(第 272節. 「解 説 」、S.653、519頁)と. た もの」(第272節. い う こ とに な る。 した が っ て 、 こ うした 考 え は 「理性 を無 視 し. 「説 明」)で あ って 、 最 悪 の もの と して ヘ ー ゲル は厳 し く批 判 す る。. 第2の 答 と して ヘ ー ゲ ルが あ げ る の は 、 「人 々が 満 足 して い る体制 こそ最 善 で あ る」(同 所)と い うもの で あ る。 満足=最 善 で あ る。 しか しヘ ー ゲル に よる と、満 足 す る こ とは 重 要 で あ る し、 「体 制 が よけ れ ば 、 そ こに満 足 感 も あ る はず 」 で は あ る が、 満 足 す る とい う こ とは 「 決定的な事 柄 」 で は な い 。 そ の理 由 は、 満 足 とい うのは 「 客 観 的 な 内容 」 を含 ん で い ず 、 人 間 は 「 最低で最 下 等 な 状 態 に 満 足 す る こ とも あ る」(同 所)か. らだ 、 とヘ ー ゲ ル は い う。満 足 な る もの は、そ もそ. も主 観 的 で 形 式 的 な もの で しか な い と して批 判 され る。 第3の 答 と して 指摘 さ れ る の は、 「あ らゆ る体 制 が この 移 ろ い ゆ く世 界 で は 不 完 全 で あ り、 自 由 の 概 念 に ぴ った り合致 した 理 想 の体 制 の 実 現 は 、 感 情 そ の 他 の 力 に よ っ て 常 に 妨 げ られ る」 (第272節. 「 解 説 」、S.654、520頁)と. い うも ので あ る。 この考 え も もち ろん ヘ ー ゲ ル の支 持 す る. もの で は な い 。 この考 え でヘ ー ゲル が 最 も問 題 とす るの は 、 「自由 の概 念 」に 合 致 した 「 理 想 の体 制」 は この 現 実 の 世 界 で実 現 しな い ほ どひ弱 な もの な の か と い う点 で あ る。 ヘ ーゲ ル に よ る と、 「 理 想 の体 制 」 は 「 理 性 的 な 体 制 」 に他 な らず 、 この 理 性 的 な体 制 こそ 「最 善 の 体制 」 な の で あ る。 では 、 「理 想 の体 制 」 した が っ て ま た 「最善 の体 制 」 と して の 「理 性 的 な 体 制」 は ひ 弱 で な く、現 実 に 実 現 す る保 証 は あ るの か 。 この 点 に つ い て の ヘ ー ゲル の基 本 的 な 考 え は こ うで あ る. 「 理 性 的 な も の は現 実 的 で も あ って 、 理 性 的 な もの が 現 実 とな らな い ほ ど脆. 弱 だ とい うこ とは な い の で あ る」(同 所)。 「 理 性 的」 とい う こと と、 「 現 実 的 」 とい うこ とに つ い ての きわ め て リアル で 力 強 い理 解 を 土 台 に して 、 こ こで もあ の有 名 な<理 性 的=現 実 的 〉の 定 式 が 確 認 され る。 この 定 式 に 関 わ って 留 意 され て い るの は 、 「 現 実 」 と 「現 象 」 の 区別 とい う こ とで あ る。 ヘ ー ゲル に よる と、 「 た だ そ こに あ る とい うだ け の もの」、 「 不 完 全 な も の」、 「非 理 性 的 な もの 」 は た ん な る 「現 象 」 に す ぎな い 。 現 象 と して あ る もの と 「 現 実 的 で あ る こ と」 とは ま った く別 の こ とで あ る。 で は 、 「現 実 」 と 「 現 象 」 とを 区別 す る とこ ろか ら 「現 に あ る国 家 」を 考 察 す る場 合 どの よ うな 違 い が 生 じるだ ろ うか。 ヘ ー ゲル は 「 現 に あ る国 家」 を 一 つ の生 命体 と考 え 、 こ の生 命 体 の 外 面 を 「現 象」、 内面 を 「現 実」 と理解 し、 説 明す る。 国家 は 「巨大 な怪 獣 」 で あ って 、 「 無数の頭、 目、手 、動 き」(同 所)を 有 して お り、そ れ らは あ ち ら こち らで 矛盾 し、 錯 誤 に 陥 っ てお り、不 完 6.
(7) 全 な も の に な っ て い る。 しか しこ の状 況 は 生 命 体 と して の 国 家 の 「現 象 」、つ ま り外 面 の様 子 な の で あ る。 しか し、 こ う した 外 へ の あ らわ れ = 外 面 と、 生 命 体 と して の 国 家 の 内実 、そ の本 体 とを 区別 しな けれ ば な ら な い と され る。 で は 国家 の 内実 、 本 体 は どの よ うに 理 解 され るか 。 ヘ ー ゲル は い う. 「内面 の生 命 や 内臓 が. 健 康 で な い はず は な く、 国家 の生 命 は そ の 内臓 と よ どみ の な い 内面 の過 程 の うえ に成 り立 っ て い て、 こ の生 命 こそ が 真 に 現 実 的 な生 命 な ので あ る」(同 所)。 す な わ ち 、外 面 で は な く 「内面 に 支 え られ た 生 命 こそ が 、 … …現 実 的 な もの で あ る」(第272節. 「 解 説 」、S.655、520-1)。. こ う した ヘ ー ゲル に よ る 「 外 面 」、 「現 象」 と区 別 した と ころ で な され る 「内面 」、 「 現 実 」 の理 解 に 対 す る私 の考 えを こ こで のべ て お きた い 。 ヘ ー ゲル の理 解 は 、一 面 で は重 要 で あ る。 と い う の も、 確 か に ヘ ー ゲル が い うよ うに 、 外 面 に あ らわ れ た 現象 だ け か らで は事 柄 の本 質 は 把 握 す る こ とが で きず 、 本 質 は 「内面 の過 程」 と深 く連 関 して お り、現 象 の よ うに可 視 で あ る よ りは む し ろ 眼 に み え な い もの で あ るか らで あ る。 しか し他 面 で は 、 ヘ ー ゲル 自身 が他 の 著作 で確 認 して い る よ うに、 現 象 とは 「本 質 の現 存 在 」 (『エ ン ツ ィク ロペ デ ィー』)(3)で もあ るの で あ って 、大 きな 矛 盾 、錯 誤 な どが 現 象 して い るの で あ れ ば 、 そ れ は 現 象 の本 体 、本 質 に根 本 的 な 問題 、 欠 陥 が あ る こ とを意 味 して い る と もい え る 。 こ の よ うな 観 点 に立 たず 、 ヘ ー ゲル の先 の確 認 の よ うに く外 面 一 内面 〉、 〈現 象 一 本 質 〉 の二 項 対 立 的理 解 で は 、例 え ば 「 現 に あ る国家 」 を考 察 し評価 す る場 合 、 矛 盾 、 錯 誤 が 現 に あ らわ れ て い て も、 そ の 国家 の本 質 は別 で 良 き もの 、理 性 的 で あ る と して 、 そ の国 家 を 全 体 と して擁 護 し、 そ の存 続 を承 認 す る こ とに もな りかね な い。 つ ま りは現 に あ る国 家 の根 本 的 改 革 の 権利 を否 定 しか ね な い の で あ る。 ヘ ー ゲ ル の説 明 を今 少 しフ ォ ロー して い こ う。 そ の前 に、 ヘ ー ゲル の これ まで の説 明 を か ん た ん に ま とめ て お く と こ うで あ る。 ヘ ー ゲル は 国家 にお け る 「 最 善 の 体 制 」 とは どの よ うな もの か とい う問 い を立 て、 これ に次 の三 つ の答 を 出 した 。 第1は 運 用 次 第 で の あ らゆ る 体 制 。 第2は 人 々 の満 足 して い る体 制 。 第3は 現 実 世 界 で は あ らゆ る体 制 は 不 完 全 。 これ らへ の ヘ ー ゲル の 批 判 は 先 にみ た と う りで あ る。 同時 にヘ ー ゲル 自身 の考 え(特 に 第3)に. 対 す る私 の コメ ン トも先. に して お いた 。 そ の うえで 、 フ ォ ロー して お きた い のは 、 国 家 に お け る理 性 的 な政 治 体制 と は ど の よ うな も のか とい うこ とへ のヘ ー ゲル の 説 明で あ る。 へ 一 ゲル が まず 注 意 す るの は 、 政 治 体 制=議 会 とい う考 え の 誤 りに つ い て で あ る。 この考 え が な ぜ 誤 っ て い るか とい うと、 「議会 は体 制 の一 要 素 」 で しか な く、 体 制 とい う も の は 「 組織の全 体 」を さす か らで あ り、 した が って また 、「ど んな 国家 に も、た とえ議 会 を もた な い 国家 に も体 制 は あ る」(第272節. 「 解 説 」、S.655、521頁)か. らだ と され る。 で は、 「 最 善 の体 制 は理 性 的 な体 制. で あ る」(同 所)と. され る体 制 と して どの よ うな もの が考 え られ て い るか 。. ヘ ー ゲル は 政 治 体 制 を まず は 、 「古 い分 類 法 」に した が って 次 の 三 つ一 制. 君 主制 、貴 族 制 、民 主. に 区 分 す る。 そ して 三 つ は そ れ ぞ れ 君 主 、 公 認 の 評 議 会 、 国 民全 体 が 「 最 終 的 な決 定 権 」. を もつ こ とに よ って 相 違 す る とい う。 しか しな が らヘ ー ゲル に よ る と、 こ う した 三 つ の 区 別 は 7.
(8) 「 抽 象 的 な 区別 」 にす ぎ な い の で あ る。 なぜ な ら、 「国家 の体 制 は 有機 的 に発 展 して きた もの」で あ り、 「 全 体 が 概 念 の一 要 素[君 主 、評 議 会 、 国 民]だ け を 取 り出 した 形 式[君 主 制 、貴 族制 、民 主 制]の. も とに包 摂 され る こ とは あ りえ な い」(第272節. 「 解 説 」、S.656、522頁)か. らで あ る。そ. してヘ ー ゲル は 「 立 憲 君 主 制 」 こそ が 、 「 貴 族 制 と民 主 制 を合 わ せ含 み、す べ て の要 素 を 内部 で統 一 した 体 制」(同 所)と. 結 論 づ け る 。 もち ろ ん 、 この 点 で の 詳 細 な 論 述 と説 明 は 次 節 の 「第273. 節 」 以 降 で な され る。 さて 、 これ まで み て きた よ うに 、 第272節 の本 文 に 関す る ヘ ー ゲル の 「口頭 解 説 」 に お い ては 、 国家 の 「理 性 的 な 体 制=最 善 の体 制 と は ど の よ うな もの か 」 につ い て の 問 い 、 これ へ の 答 が主 な テ ー マに な って い た 。 と こ ろが ヘ ー ゲル は、 第272節 の本 文 に お い て 、 「も う一 つ の 問 い」 を 出 し て い る。そ の 問 い は 、 「 政 治 体 制 を作 る の は誰 か」 とい うも ので あ る。 これ に つ い て もヘ ーゲ ル は 詳 細 に 口頭 解 説 を 行 な って い るの で あ る。 ヘ ー ゲル に よ る と、 こ の問 い は 意 味 の な い 問 い で あ って 、 問 い 自身 が 間違 って い る と され る。 そ の理 由は 、 この 問 い の根 底 に は 「政 治 体 制 は も うす で に あ る とは か ぎ らず 、作 り出 す こ とが可 能 だ とい う考 え」(第272節. 「解 説 」、S.658、523頁)が. あ る か らで あ る。 ヘ ー ゲル は 、 「国家 の名. で呼 ば れ る もの が あ る と こ ろに は 、必 ず 政 治 体制 は存 在 す る 」(同 所)と い う。法 ・権利 や正 義 が 受 け 入 れ られ 、 文 明が 広 が って い る民 族 の うちに は 、 常 に な ん らか の政 治 体 制 が あ る とい うのが ヘ ー ゲル の 確 信 で あ る。 そ れ で もな お 、 現 存 の政 治 体 制 に は 納 得 せ ず 、 古 い体 制 を廃 棄 し、新 た な体 制 は作 れ な い のか 。 作 れ る とす れ ば 、 そ れ は 誰 か 。 この 一 連 の問 い に ヘ ー ゲ ル は 答 え る。 古 い体 制 の廃 棄 →新 た な体 制 の樹 立 との 目論 見 か ら生 じる状 態 は 、 法 律 が 無 効 とな った 無 政 府状 態 だ と され 、 そ して そ の状 態 の主 人 公 は 「烏 合 の 衆 」だ と され る。 この よ うな状 態 で は 、「誰 が権 力 を もつ か は偶 然 に委 ね ら れ 、 法 も体 制 もな い 状 態 が あ らわ れ て 、 政 権 を握 るの は暴 力 で あ る」(第272節. 「 解 説 」、S.658、. 524頁)。 フ ラ ンス 革 命 を は じめ 、 す べ て の革 命 で起 こ った の は この よ うな状 態 だ とされ る。 した が って 「 政 治 体 制 を作 り出 せ る」 か否 か とい うこ とに は 、 そ れ は 「 不 可 能 」 で あ り、 そ の理 由は 「国 民 が 自分 の皮 膚 を 変 え る よ うな こ と」(同 所)だ か ら、 と してヘ ー ゲル は 再 度 自説 を 強 調 す る。 こ うした ヘ ー ゲル の 考 え に コ メ ン トを す るな ら、多 少 の戸 惑 い と違 和 感 を 抱 くと い うのが 正 直 な と ころ で あ る。 も っ と も、 ヘ ー ゲ ル は政 治 体 制 を新 た に作 り出す こ とは 不 可 能 だ と考 え る こ と に よ って現 存 の体 制 を 、 現 に今 あ るか ら とい うの で単 純 にそ の ま ま鵜 呑 み に し、 容 認 して い るわ け で は な い。 ヘ ー ゲル に よる と、 あ る 国 民 の一 定 の政 治 体 制 は 、 「突然 」、 「 一 挙 に」、 「 外 部 か ら」 与 え られ た もの で は な く、「ゆ っ く り時 間 を か け て 徐 々 に うみ だ され」、「多 くの段 階 を 踏 み 、様 々 な個 別 の条 件 の も とで 、 あ らゆ る面 に わ た って この世 に 浸 透 して くる」(第272節 524頁)の. 「解 説 」、S.659、. で あ り、 「 歴 史 に お け る進 歩 」 とい う基 本 観 点 か ら み て、 必 然 的 な 発 展 段 階 に 達 した も. の だ と され る。 こ こか らす る と、 ヘ ー ゲル の考 え は発 展 ・進 歩 観 に 立 って い る のだ か ら、 どん な 変 化 も認 め な 8.
(9) い 、単 純 素 朴 で軽 薄 な現 状 容 認 論 で は な い。「政 治 体 制 とい うもの は 、少 な くと も主 観 が 自由 な 西 洋 に あ っ て は、 同 じま ま で あ る こ とは な く、 常 に 変 化 し、 常 に 革 命 され 、 常 に 前進 す る」(第272 節 「 解 説 」、S.660、525頁)と. ヘ ー ゲル は強 調 す るか ら、な お の こ とで あ る。変 化 や 変 革 を重 視 し. て い るに か か わ らず 、 先 に み た よ うに 、 新 しい 政 治 体制 の樹 立 は 不 可能 との主 張 に は矛 盾 が あ る よ うに 思 う。 あ の 「不 可 能」 と され る論 拠 は 、 国民 一 人 ひ と りが好 き勝 手 に、 恣 意 的 に 政 治 体 制 を変 え よ うとす る こ とに は どん な必 然 性 もな く不 可 能 だ との考 え で あ ろ う。 こ う した ヘ ー ゲ ル の一 連 の説 明や 考 え の基 本 に は 同意 しつ つ も、 そ れ で もな お 私 が違 和 感 を 抱 くの は、 必 然 的 な発 展 の結 果 と して あ る現 在 の 政 治 体 制 は変 化 や 変 革 を 通 した まさ に必 然 的 な 結 果 と して あ る のだ か ら、 一 人 ひ と りに さ らに 新 しい 政 治 体 制 を 作 り出 す こ とを禁 止 し認 め な い と す る と、 ヘ ー ゲル が 厳 し く批 判 す る単 純 素朴 な 現 状 容 認 論 よ りも質 の 悪 い歴 史 必 然 論 に基 づ く現 状 肯 定 論 に ヘ ー ゲル 自身 が 陥 って い な い か とい う点 で あ る。. III 第273節 か ら国 家機 構 、 国 家 の政 治 体制 に つ い て 具体 的 に論 評 され 、説 明 され て い く。 『要 綱 』 の場 合 と同 じ く、 三 つ の権 力 分 立 が 中 心 テ ー マ と な る。 第273節. 「 本 文 」 で は 、 『要 綱 』 そ の ま まに 三 つ の 国 家 権 力 で あ る立 法権 、統 治 権 、 君 主 権 に つ. い て 基 本 的 な 考 えが叙 述 され る。 そ れ は ヘ ー ゲル の 考 え と して 陳腐 な ほ どに よ く知 られ てい る が 、 念 の た め まず 簡 単 に ま とめ て お きた い。 立 法 権 は 「 一 般 原 則 を決 定 し確 定 す る権 力 」 で あ り、 統 治権 は 「 特 殊 な 分 野や 個 別 の事 例 を一 般 原 則 の も とに包 摂 す る権 力 」 で あ る。 これ に 対 して 第3 の君 主 権 は 「 最 終 的 な意 志 決 定 を行 な う主 体 性 の権 力 」 で あ る。 こ の君 主 権 の も とで 、 諸権 力 が 「 個 と して の統 一 」 へ と向か い、 この 「一 な る個 」 こそ 「全 体 のー で あ り、 は じま り」(第273節. 「本 文 」、S.661、526頁)な. 立 憲 君 主 制全 体 のー. 頂点. の で あ る。. これ ら三 権 に つ い て(相 互 の 関 係 の 仕方 を も含 め て)の 具 体 的 な 説 明は 、第275節 か ら行 なわ れ る。興 味深 い 点 は 、先 に示 した第273節. 「本 文」 で叙 述 され た三 権 に つ い て の基 本 的 な考 えに 関 す. る次 の よ うな ヘ ー ゲ ル の 口頭 解 説 で あ る。 「解 説 」の 冒頭 でヘ ー ゲル は こ う言 う一 [第273節. 「い う意 味 は. 「本 文 」 で 最 も強 調 し述 べ た い こ とは]、 君 主 権 が 国家 を 個 体 た ら しめ る とい うこ と で. あ り、 それ が こ こで の最 終 の結 論 で あ る」(第273節. 「 解 説 」、S.661、526頁)。. つ ま り、 国家 の 諸. 権 力 は 君 主 権 に よっ て統 合 され 、 そ して こ の君 主 権 は 君 主 とい う 「個 」 に 担 わ れ る こ とに よ り国 家 自体 が 「 個 体 」 た ら しめ られ るの で あ る。 こ うした 「 最 終 の結 論 」 に い た る過 程 の詳 細 な説 明 は 、第273節. 「本 文」 お よび 「口頭 解 説 」 で. の課 題 で は もち ろ ん な い 。 ヘ ー ゲル が 「口頭 解 説 」 の 冒頭 で強 調 した先 の 「 最終の結論」に続 い て 、三 権 の 能 上 の連 関 に つ い て簡 潔 に次 の よ うに ま とめ て お り、 これ が 分 か りや す く重 要 で あ る。 ヘ ー ゲ ル は述 べ る. 「 一 般 原 則 が まず は っ き り打 ち立 て られ[立 法 権]、 つ い で 意 志 が 具 体. 的 な場 面 で発 動 し[統 治 権]、 第 三 に 行動 に 向 か う決 断 が な され る[君 主 権]。 そ の と き、 意 志 が は じめ て 現 実 の意 志 とな る のだ か ら、 第 三 の 決 断 が 国 家 の全 体 を お お うもの で あ り、 政 治 的 国 家 9.
(10) の考 察 も この最 終 項 か ら出発 しな け れ ば な らな い」(同 所)。 第274節 「本 文 」、 「口頭 解 説 」に お い て は 、政 治 体制 とい うの は 固 有 の 民族 精 神 と民 族 の意 識 の 発 展段 階 の産 物 で あ り、 そ の あ らわ れ に 他 な らな い か ら、 そ れ ぞ れ の 民族 に は彼 らに ふ さわ しい そ れ ぞ れ の 政治 体 制 が あ り、 相 手 に み ず か らの もの を 押 し付 け る こ とは で きな い との確 認等 が さ れ る。 三 権 の あ り方 の 検 討 を 通 した 政 治 的 国 家 の 考 察 は 、諸権 力 が 統 合 され る 「 最 終 項 」、つ ま り 「 君 主 権 」か らは じめ られ る。 これ が 第275節 以 降 の役 目で あ る。 と ころで 、ヘ ー ゲル が三 権 に つ い て 考 察 す る場 合 い ず れ の権 力 に重 点 を お いて い るだ ろ うか 。 内容 の検 討 に 先 立 ち 、 量 的 な 側 面 か ら だ け で測 か って み る と次 の よ うな こ とがみ え て くる。 君 主 権 は12節(第275節 24頁)、 統 治 権 は11節(第287節 書 で35頁)で. ∼ 第297節 、 原 書 で6頁)、. ∼ 第286節 、 原 書 で. 立 法 権 は23節(第298節. ∼ 第320節 、 原. あ り、 ペ ー ジ数(「 本 文 」 と 「口頭 解 説」 を合 わ せ た)比 で君 主 権 ・統 治 権 ・立 法 権. は お お よそ4割. ・1割 ・5割 に な る。 こ こか らみ て、 立 法 権 が最 も重 視 され 、 これ と 同程 度 に 君. 主 権 が 取 り扱 わ れ 、前 二 者 に 比 べ て統 治 権 は か な り軽 く扱 わ れ て い る よ うで あ る。 こ の評 価 は 当 面 、 あ くまで量 的 な面 か らの もの に す ぎな い 。 まず は 、 き わ め て重 視 され る君 主 権 の 内容 か らみ て い くこ とに し よ う。. IV (a)君. 主権. 君 主 権 につ い て 論 じる 冒頭 の第275節. 「本 文 」 に お い て 、君 主 権 は 「一 般 原 則 」、「 審 議 」、 「最終. 的決 断」 の三 つ の要 素 を含 ん で い る こ と、 す べ ては 三 番 目の 「最 終 的 決 断」 へ と帰 一 す る こ と、 そ して この 「 最 終 的 決 断」 あ る い は 「 絶 対 の 自己 決 定 」 こそ が 君 主 権 を 他 か ら区 別 す る原 理 で あ る こ と、等 が 確認 され る。 と ころ が、 第275節. 「口頭 解 説 」 で は 、主 に(国 家)主 権 に つ い て の べ. られ る。 (1)国. 家の 「 主権」 について. ヘ ー ゲル は主 権 こそ が 第1の. もの 、 国家 の始 ま りだ と して次 の よ うに説 明す る. 「一 民 族 が. 一 国 家 を な す と き、 国 家 が 主 権 者 で 、 そ れ が 事 の は じま りで あ る 。国 家 は 個 体 と して あ り、 まず も って 独 立 の存 在 で あ り、 い まだ 不 完 全 で は あ って も、 ま った く自由 で、 完 全 に 独 立 した個 体 で あ る」(第275節. 「解 説 」、S.664、528頁)。. この よ うに 、 あ る特 定 の一 人 の人 間 が 個 体 で あ り、 自. 由 で 自立 して い る こ とが あ らゆ る議 論 の 出 発 点 と して重 要 で あ る の と同 じ よ うに 、 国 家 も まず 「 主 権 国家 」 で あ り、 「一 個 の 個 体 」 で あ る重 要 性 が 確 認 され る。 しか しな が ら、国家 が主 権 を有 す る と か、 国家 は 主 権 国家 で あ る との一 種 の定 義 だ け で は 君 主 権 の定 義 とは な らな い 。 で は 、 どの よ うな とき に主 権 が君 主 権 と名 づ け られ る とヘ ー ゲル は い うで あ ろ うか 。 そ れ は 、 「 主 権 の 内部 に 区別 が 生 じ」、 主 権 が 「 全 体 の一 要 素 」(第275節. 「 解 説 」、S.664、529頁)へ. と変. 化 し、統 治 権 ・立 法 権 と区別 され た ときだ とヘ ー ゲル は 説 明す る。 だ か ら とい って しか しな が ら、 主権 が 部 分 的 な もの か とい うとそ うで は な い。 「主権 が 国家 の全 体 に 及 ぶ こ とに 変 わ りは な く、 io.
(11) 国 家 が 主 権 者 で あ る と い うの は、国 家 の第1の 定 義 で あ」(同 所)り 、国 家=主 権 者 ・自由意 志 が 要 素 に 分 か れ る と き、 「 君 主 権」 が 登 場 して くる とヘ ー ゲ ル は再 度 強 調 す る。 第276節. 「 本 文 」 で は 、 前 節 で の 「全体 の一 要 素 」 問題 を うけ て、 「政 治 的 国家 の基 本 条 件 は 、. そ の要 素 を 理 念 と して生 か しつ つ 、 共 同体 と して の統 一 を 確 立 す る こ とに あ る」(第276節 文 」、S.665、529頁)点. 「本. が確 認 され る 。 そ して 同節 「口頭 解 説 」 で は、 「要素 を理 念 と して生 か」. す こ とに つ い て 具 体 的 事 例 に よ りのべ られ る。 ヘ ー ゲル は 要 素 と して の 個 々の 「社 会 階 層 」、 「権 力」、 「 職 業 団 体」 を 、理 念 と して の 「国 家 」 の な か で どの よ うに 生 か す か 、 生 か す 点 で これ まで どの よ うな 問題 が あ った か に つ い て のべ て い る。 事 例 と して 、 職 業 団 体 、 地 方 自治 体 、 教 会 、 官庁 、 な どを あ げ る。 へ 一 ゲル は まず 「職 業 団 体 」 に つ い て の べ る。 職 業 団 体 は 独 立 の 結 社 で は あ る が 、 「国 家 の 中 の 国家 」(第276節 S.665、530頁)に. 「 解 説 」、. な らな い よ う予 防 措 置 を 講 ず る必要 が あ る とい う。 同 じこ とが 「 地 方 自治 体 」. に つ い て もい え る とい う。 自 由に 活 動 しつ つ 全 体 の枠 を外 れ な い とい う、 境 界 を 定 め る のは 難 し い こ とで あ るが 、 しか し この こ とを し っか りと踏 まえ て お か な い と、 かつ て ドイ ツ帝 国 で み られ た よ うに 国 家 は 崩 壊 して し ま う。 同 じ視 点 か らみ て 、 「 教 会 」 とそ の財 産 につ い て は特 に 配 慮 が 必 要 だ とヘ ー ゲ ル は 強調 す る 。教 会 は寄 贈 物 、 遺贈 物 を 含 め て 財 産 を もち 、 この 財 産 は 売 買不 可能 な所 有 物 で 、 増 え る一 方 で あ る。 こ うした 教 会財 産 の 増 加 は 国 家 に と って 大変 困 った こ とで あ る か ら、 「教会 の取 得 物 につ い て は、 一 定 の 制 限 を設 け る必 要 が あ る」(第276節. 「解説 」、S.666、530頁)と. ヘ ー ゲル は い う。. 独立 の存 在 に な り、 国 家 に と って 困 った こ とに な る もの と して 、 へ 一 ゲル は 「官 庁」 に つ いて も指 摘 して い る 。 そ れ ぞ れ の 官庁 に 強 い 縄 張 りの あ った 古 い政 治 体 制 で は官 庁 の 独 立 性 が 強 か っ た が 、 しか し官庁 は 流 動 化 す る原 理 もな け れ ば な らな い と指 摘 され る。 第277節. 「 本 文 」 と 「口頭 解 説 」に お い て は 、国 家 の諸 特 殊 業 務 ・活 動 は個 人 の 手 で 行 な わ れ る. が 、 そ の個 人 は 生 まれ つ きで 従 事 す るの で は な く 「 客 観 的 な資 格 」 に基 づ い て の こ とで あ る こ と、 した が って 「公 職 」や 「公 務 」 は 「私 有物 とは な りえず 、相 続 や 売 買 の 対 象 とは な りえ な い」(第 277節 「解 説 」、S.668、531頁)こ. と等 が 確認 され る。. (2)「 最 終 的 決 断 」 と 「 立憲君主制」について 第279節. 「本 文 」 で は、 国 家 の 「最 終 的 決 断」(を 行 な うも の)が. を下 す 君 主 権 」 と し て、つ ま り 「一 人 の 個 人. 君 主」(第279節. 「 全 体 に つ い て絶 対 的 な 決 断 「 本 文 」、S.670、533頁)と. して. あ らわ れ ね ば な らな い こ とが叙 述 され て い る。 同 節 「口頭 説 明」に お い て は 、「本 文」 の 内容 と深 く関 わ って君 主 の特 性 、 必 然 的 で 必要 な 国家 組 織 と して の立 憲 君 主 制 な どに つ い て詳 し く述 べ ら れ る。 ヘ ー ゲ ル は 「口頭 解 説 」 の ほ ぼ 冒頭 で 、そ もそ も国 家 は 「実 現 され た 自由」 に ほ か な らず 、 「現 実 の うち に表 現 され た 理性 の 象形 文 字 」(第279節. 「 解 説 」、S.670、534頁)で. あ る こ とを 述 べ る。. こ う した 点 に 国家 の本 質 が あ るか ら こそ 、 そ の組 織 体 制 は 「 理 性 的 な体 制」 で あ っ て 、 「憲 法 に よ って組 織 」 さ れ た 「立 憲 君 主制 」 を お い て他 に な い とされ る。 そ して 、 この 立 憲 君 主 制 の 第1 11.
(12) の 要 素 と して あげ られ る の が 「 君 主 」 で あ る。 で は、 君 主 の あ り方 は ど の よ うな もの か 。 君 主 の あ り方 で よ く問題 に な る一 つ の こと は、 「自由」 とい う観 点 か ら と らえ られ 、 「民 主制 」 と 「 君 主 制 」が 対 立 関 係 に おか れ る点 で あ る。 これ に 対 して ヘ ーゲ ル は 、「立 憲 体制 は 自 由を理 性 的 か つ本 質 的 に実 現 す る もの で あ る」(第279節. 「解 説 」、S.671、534頁)と. い う。 も う一 つ の こ と. は 、君 主 の存 在 は実 定法 に 明 記 され 、君 主 は 「生 まれ つ き君 主 に な る権 利 を もつ」(同 所)と され る点 で あ る。 こ う した 君 主 の地 位(君 主 権)が. 「自然 の 出生 」 に も とつ いて 相続 され る とい う点. に つ い て ヘ ー ゲル は、 「思 考 や 概 念 を 欠 い た もの」(第279節. 「 解 説 」、S.671、535頁)と. み な され. るか も しれ な い の で、 十 分 な探 求 の対 象 とし なけ れ ば な らな い とい う。 この こ との検 討 は 、次 節 の 第280節. 「本 文」 と 「口頭 解 説 」 に お い て詳 細 に行 なわ れ る。. 立 憲君 主 制 と関 わ っ て 問題 とな る君 主 の あ り方 に つ い て の 、 さ らに も う一 つ の重 要 点 は 、君 主 に よる 「私 が意 志 す る」 とい う 「 最 終 的 決 断 」 の形 式 、 つ ま り 「主 体性 」 は 国家 の 「 主権」 のあ らわ れ に他 な らな い とい うこ とで あ る。 とい うの も、 これ ま で の と ころ で す で に指 摘 され た よ う に、 「 国 家 は 個 体 と して 一 つ の もの で あ り、個 と して あ る」(第279節. 「 解 説 」、S.672、535頁)こ. とが 確 認 され て は じめ て 国家 は現 実 性 を 獲 得 し、 現 実 に 存在 す る主 権 と して 意 味 を有 し、 同時 に 国 家組 織 を代 表 す る君 主 の 「 私 が意 志 す る」 とい う主 体 性 が 発 露 され て は じめ て、 そ の現 実 的 存 在 意 義 が 明 らかに な るか らで あ る。 こ こ か ら ヘ ー ゲル は 、主 権 と主 体性 は 一 つ とな り、主 体 性 は 「主 権 の魂 」(同 所)に. な る と い う。. 但 し、 こ こで 留 意 して お くべ き こ とは 、君 主 の 「 主 体 性 」、つ ま り君 主 の 「 最終的決断」は 「 根 拠 な き意 志 の 自己決 定 」(同 所)で あ る とヘ ー ゲ ル が特 徴 づ け る点 で あ る 。 この 場 合 、 「根 拠 な き」 に 注 目 しなけ れ ば な らな い。 「根 拠 な き」 で ヘ ー ゲ ル は何 を意 図 し、 意 義 づ け よ う とす る の か 。 この こ とでヘ ー ゲル が意 図す る のは 、君 主 に よ る決 断 ・決 定 に は い か な る内容 もな く、 意 志 の 端 的 な発 露 のみ を あ ら わす とい うこ と で あ る。で は 、内 容 の 点 は ど うな るの か。 「 特 定 の 内容 は 後 か ら付 け加 わ る」(同 所)と 説 明 され る よ うに 、要 す るに君 主 の 決 断 ・決 定 に は 内容 が 関与 しな い こ と、 した が っ て 内容 につ い て は君 主 では な くて 他 の組 織 ・機 関 が 関 与す る とい う こ とで あ る。 こ の こ とにつ い て は 、後 に審 議(権. ・組 織)と 決 定(権. ・組 織)の. 分離 ・区 分 と して詳 述 され る。. 君主の 「 最 終 的 決 断」 につ い て のヘ ー ゲル の説 明 を 今 少 しみ て お こ う。 この点 に つ い てヘ ー ゲ ル は 、 さ らに二 つ の こ とを示 す 。 二 つ の こ と は、 君 主 の決 断 ・決 定 が あ ま りに も強 調 され る と、 「万事 に 君 主 の 自分 勝 手 が まか りとお る」(第279節. 「 解 説」、S.674、537頁)の. では な いか とい う. 懸 念 に 対 して示 され た ヘ ー ゲ ル の考 えで あ る。 そ の 一 つ は次 の こ とで る。 君 主 とい う一 人 格 の決 断 が 国 家 とい う全 体 の意 志決 定 に な り うる 「国 家 は近 代 国家 で あ る こ と」(第279節. 「 解 説 」、S.6. 73、536頁)、 この こ とが 重 要 で あ る。近 代 国 家 とい う こ とは、 「自 由の理 念 を なす す べ て の要 素 が 十 分 に 発 展 し、各 要 素 が 独 自の存 在 を もつ に 至 った 国 家 で あ る」(同 所)こ とを い う。各 要 素 が こ う した 自由 を獲 得 で き て い る の は 「 近 代 の 高 度 の 教 養」(同 所)の お か げ で あ る と して 、貴 族 制 ・ 民 主 制 ・家 父長 制 国家 と、近 代 の立 憲 君 主 制 と の違 い を ヘ ー ゲル は 強調 す る。 も う一 つ の こ とは 、先 に もふ れ た君 主 の決 断 の 内容 に 関す る こ とで あ る。 「内 容 は 問 題 とな ら 12.
(13) な い」、 「内容 の 考 察 は も っ と後 の こ と」 と繰 り返 され る よ うに 、 君 主 の 決 断 ・決 定 と して で き る こ とは 、 「 立 憲 体 制 が し っか りして い れ ば 、署 名 以外 にす る こ とは な い 」(第279節 674、537頁)と. 「解 説 」、S.. い わ れ る。 した が って 、 「名 前 だ け が 必 要 で あ って 、名前 だ け の空 虚 な 『私 は 意 志. す る』 こそ が 、 な に もの に も超 え られ ぬ頂 点 を なす 」(同 所)と ヘ ーゲ ル は のべ る。 内容 の審 議 機 関 につ い て は 、君 主 とは別 の 「 最 高審 議 職 」 や 「内 閣」 が後 に取 り上 げ られ 説 明 され る。 こ う して立 憲 君 主 制 に おけ る君 主 の決 断 の さ い の 「自分 勝 手 」 が 通 用 しな い 機構 や そ の 意 味 に つ いて ヘ ー ゲル は詳 し くのべ て い る。 (3)「 第280節. 自然 の 出 生」 に つ い て 「 本 文 」 で は 、 「国 家 意 志 を 体 現 す る この最 終 的 な 自己」(第280節. 「本 文 」、S.677、. 539頁)、 す な わ ち 君 主 は 、 「自然 な 生 まれ に よっ て君 主 の位 に 即 く」(同 所)と 叙 述 され る。 した が って 「口頭 解 説 」 で は 、君 主 の この 「自然 な 生 まれ つ き」 につ い て詳 し く説 明 され る。 ヘ ー ゲ ル は まず 、 国家 意 志 を体 現 す る君 主 に あ っ て、 そ の個 人 の才 能 や 優 劣 、 つ ま り 「質 」 は 問題 に な らな い とい い、そ して 君 主 に あた る条 件 と して 二 つ 指 摘 す る。第1の 条 件 は 、「私 は 意 志 す る」 とい う 「 形 」 が 存 在 す る こ とだ け に関 心 が あ る とい う こ と。 第2の. 条件 は、意 志 の形 は. 「自然 に 基 づ く」 とい うこ と。君 主 の 意 志 す る形 だ け が重 要 で あ る とい うのは 、 「 意 志 に は根 拠 が な く、 内 実 が な く、 内容 が な い」(第280節. 「解 説」、S.677、540頁)と. い うこ とを 意 味 し、 「自然. に 基 づ く」 とは 君 主 の 存 在 そ の もの が 根 拠 の な い 「自然 の 出 生」 に基 づ いて い る こ とを意 味 して して い る。 ま った く無 内 容 で非 理 性 的 だ と思 え る が 、 しか しヘ ー ゲ ル に よる と 「そ の こ とが 国家 の必 要 とす る もの」(同 所)だ. と され る。. 君 主 の存 立 が 無 内容 で非 理 性 的 だ とい う点 こそ 国家 に は必 要 で あ る。 こん な ば か げ た 話 は あ る のか 。 あ る いは 、 ここ に は大 きな 逆 説 が含 まれ て い る のだ ろ うか 。 一 体 全 体 、 先 の よ うな君 主 な ら、誰 もが 「自分 だ っ て王 に な れ る」(同 所)と 思 う。 この 質 問 を ヘ ー ゲル 自身 が 立 て 、 これ に み ず か ら次 の よ うに 答 え る。 「 誰 で も王 に なれ るか ら こそ 、み ん な が王 に な る ので な く、一 人 だ け が 王 に な るの だ」(第280節. 「解 説」、S.678、540頁)、. ね ば な らな い」(同 所)と. ヘ ー ゲル は い う。. そ れ も 「一 人 の 王 が 生 まれ に よ って王 と な ら. 「 一 人 だ け が王 に な る」 とい うの は 私 もそ れ な りに理 解 で き る。 「国 家 が一 つ で あ る以上 、[最 終 的]決 断 者 も一 人 で なけ れ ば な らな い」(同 所)か. らで あ る。 しか しな が ら あ る人 を王 とす る場. 合 に、 「 根 拠 な し」 に そ うしな け れ ば な らな い と し、 「 根 拠 な し」 の根 拠 を 「生 まれ 」 に ヘ ー ゲル がす る と こ ろが 私 に は ど う して も理 解 で き な い の で あ る。 こ の点 につ いて ヘ ー ゲ ル は 、 「決 断 の 最 終 性 」を どの よ うに 保 証 す るか との 関 係 で 「生 まれ」 の 有 効性 ・必 要 性 を説 明す る。 「生 まれ つ き」 とい う固 定 性 で君 主 が き ま る と、 そ の君 主 に よ る決 断 に は 他 の人 の 意志 が 入 り込 む 余地 が な く、 最終 的 な もの と して 固 定 され る。 こ うした 固 定 性 は 「 感 情 の 跳 梁 を抑 え る最 上 の 策」(第280 節 「 解 説 」、S.678、541頁)だ. とされ 、 「選 挙」 で 君 主 を 決 め るの と対 極 を なす とヘ ー ゲル は 強 調. す る。 ヘ ー ゲル は 説 明 す る. 「 選 挙 に よ る場 合 、最 終 的決 断 を誰 が下 す か は市 民 の意 志 に委 ね. られ 、す る と感 情 が 事 態 を左 右 し、最 終 の決 断 が ぐ らつ き、最 悪 の 、 み じめ この上 な い 国が 生 ま 13.
(14) れ か ね な い」(同 所)。 国 家 の あ らゆ る官 職 に は、 最 もふ さわ しい 人 を選 ぶ ことが 要 求 され るの に 、 国 家 の 諸 制 度 の 集 約 点 で あ る君 主 を選 ぶ のに 「生 まれ つ き」 で決 ま る とは、 な ん と 「非 理 性 的 」 か との ヘ ー ゲル の 度 重 な る 自問 に は 、私 は ま った くそ の 通 りと文句 な しに諾 を 与 え る。 しか し、 ヘ ー ゲル の 繰 り返 され る 自答. 「 君 主 の決 断 は、 根 拠 のな い 、 抽 象 的 で空 虚 な 『私 の 意 志 』 で あ って 、 内面 は た. ん な る意 志 で しか な く、抽 象 的 な個 で あ る こ とが肝 心 」(第280節. 「解 説 」、S.679、541頁)-. 「『私 は意 志 す る』 が 抽 象 的 で 、つ なが りの な い もの だか ら、意 志 す る存 在 も、生 まれ つ き の[抽 象 的 な] 存 在 で あ る」(同 所)は. 、 核 心 とは ズ レた 、 は ぐ らか しの 答 えで あ る と思 う。. 第281節 の 「 本 文 」、 「口頭 解 説 」 で は 、 「 生 まれ つ き」 で 決 ま る君 主 の 存 在 が 実 は 君 主 の 「威 厳 」 の源 で あ る こ と、 した が って 「 君 主 を選 挙 で 決 め る方 法 は最 悪 の制 度 で あ り」(第281節. 「 本. 文 」、S.680、542頁)、 選 挙 君 主 国 ・民 主 制 ・貴 族 制 な どへ の批 判 が の べ られ る。 さ らに 第282節 で は 、 君 主 の主 権 か ら犯 罪 者 へ の 「恩赦 権 」 が 出 て くる こ とが説 明 され る が 、 君 主権 の最 重 要 事 項 で はな い の で詳 細 は省 くこ とに す る。 (4)「 最 高 審議 職」 ・ 「内 閣」 につ いて 第283節 と第284節 の 「 本 文 」 お よび 「口頭 解 説 」 で は、 君 主 権 の 第2の 要 素 で あ る 「 特殊性」 の要 素 、 つ ま り一 般 原 則 に基 づ い て特 定 の 国 事 内容 や 必 要 とな る法 案 の 内容 を 審 議 し策定 す る意 味 につ いて の べ られ る。 この仕 事 に従 事 す るの が 「 最 高 審 議 職 」 とそ の 構 成 員(第283節 S.684、546頁)で. 「 本 文 」、. あ って 、彼 らは審 議 策 定 した もの を 「 君 主 の決 断 を 仰 ぐべ く上 申す る」(同 所). の で あ る。 決 断 は君 主 権 に 固 有 の もの で あ る こ とにつ い て は 、す でに これ まで 繰 り返 し説 明 され て きた 。 君 主 の決 断 自体 は きわ め て形 式 的 で空 虚 な もの で ある。 空 虚 だ とい うの は、 君 主 は決 断 内容 の 審 議 策 定 に 関与 して いな い とい うこ とで あ る。 この 内容 の審 議 策 定 に 関 わ る、 君 主 と は別 の機 関 と して 「内閣」(第283節. 「口頭 解 説 」)が あ る とされ る。内 閣 が 、君 主 が 決 断す る 内容 や 法 律 を 組 織. 化 す る機 関 と して あ る こ とが 分 か る。 そ うす る と、「そ の[君 主 の]決 断 は 当該 の法 律 と機 構 の打 ち 出す 考 え に従 属 して い る」(第283節. 「 解 説 」、S.685、547頁)こ. とが 一 層 鮮 明 に な っ た と い え. る。 こ こか らヘ ー ゲル は 、 決 断 内容 に 関す る責 任 を め ぐる君 主 と内閣 の 関 係 につ い て、 次 の よ う な重 要 な結 論 づけ をす る. 「責 任 が あ るの は 内閣 だ け で 、君 主 に責 任 は な い。 責 任 は 内容 に 関. して しか 生 じな い か ら で あ る」(第283節. 「 解 説 」、S.686、548頁)。. それ に して も、 「最 高審 議 職」(「本 文 」)と 第283節 で は 明示 され て い な い 。第284節. 「内閣 」(「口頭 解 説」)に は 違 いが あ る のだ ろ うか 。. 「 本 文 」で は 、決 断 の責 任 につ い て ふ れ 、「 最 高審 議 職 と. そ の構 成 員 が 責任 のす べ て を負 う ことに な る」(第284節. 「本 文 」、S.686、548頁)と. のべ られ る。. 「口頭 解 説 」 で は 、 「そ れ[特 定 の 内 容]を 扱 うのは 内閣 の仕 事 で あ っ て 、君 主 は 『私 は 意 志 す る』 とい うだ けで あ る」(第284節. 「 解 説 」、S.686、548頁)と. のべ られ る。 した が っ て 、前 節 と本. 節の 「 本 文 」 お よび 「口頭 解 説 」 か らみ て、 最 高審 議 職 と内閣 は 同 一 の も の とみ て よい で あ ろ う。. 14.
(15) (5)「 法 律 」 に つ い て 第285節 で は 、君 主 権 の第3要 素 で あ る 「 最 終 的 決 断 」の 内容 が 有す る客 観 的 普 遍 性 に関 わ る 点 を 「絶 対 の 共 同 性 」 と して 説 明 され る 。 で は 、 「絶 対 の共 同 性」 とは 具体 的 に どの よ うな もの か 。 そ れ は こ うで あ る。 君 主 の 決 断 は 君 主 とい う一 人 の人 間 の主 観 的判 断 で しか な い。 しか しこ の判 断 を な す 主 観 の核 心 は(君 主 の)「 良 心」 だ とい う こ と、他 方 で判 断 内容 を 審 議 ・策 定 す る機 関 や 機 構 の 全 体 と審 議 ・策 定 され る 内 容 そ の もの が 「 政 治 体 制 の全 体 と法 律 」 に な る と い うこ と、 こ の 両者 の統 一 が絶 対 の 共 同性 の 中 身 な の で あ る。 「 絶 対 の 共 同性 」 とい う よ うな抽 象 的 で大 仰 な表 現 に な って い るが 、 ヘ ー ゲル が こ こで 主 張 し た い の は 、君 主 も時代 の 「 教 養 文 化 」 と とも に生 きて い る し、 そ の君 主 が主 観 的 に 決 断 す る も の も、つ ま りは 「 法 律 」 な る も の も時 代 の 「 客 観 的 な 教 養 文 化 の 全 体」(第285節 548頁)そ. 「 解 説」、S.687、. の もの 、あ る い はそ れ を組 み 込 み反 映 した も のに 他 な らず 、決 して恣 意 的 で 個 人 的 、趣. 味 的 で私 益 追 求 の も の では な い と い うこ とで あ ろ う。 こ う した こ とが 実 現 し意 味 づ け られ る 君 主 制 の 国家 体 制 は 、 「近 代 に 至 っ て よ うや く可 能 と な った 歴 史 的 成 果 の一 つ」(第286節 君 主 制」(同 所)と. (b)統. 「本 文 」、S.688、550頁)と. し、そ の政 治 ・国家 体 制 を 「 立憲. ヘ ー ゲル は特 徴 づ け る の で あ る。. 治権. 「 統 治権 」 に つ い て の考 察 は第287節 か ら第297節 ま で に な って い るが 、 この(第6回)講. 義録. に は 、 い くつ か の 不備 を なす 事 情 が あ って 、第287節 、 第295節 、 第296節 、第297節 の4節 分 しか 収 録 され て い な い。 まず 第287節. 「 本 文 」 に お い て は 、君 主 に よ って決 断 され た事 柄 、法 律 、共 同 の 目的 の た め の 機. 構 や 施 設 、 これ らを運 営 し維 持 す る のが 「 統 治 権 」 で あ って 、 こ こに は 「司 法 権」 と 「公 共 政 策 権 」 が 含 まれ る こ とが のべ られ る。 そ して、 これ ら 「二 権 は 市 民 社 会 の 特 殊 面 と密 接 な 関 係 を も ち、 特殊 な 目的 が 共 同 の利 益 に つ な が る よ う配 慮 す る」(第287節. 「 本 文 」、S.689、550頁)と. され. る。 (1)「 内 閣」 と 「自治 団体 」 に つ い て 先 の よ うな 役 割 と機 能 を 有 す る統 治 権 の 問 題 点 に つ い て 、 「口頭 解 説 」では のべ られ る。第1の 問 題 点 と して ヘ ー ゲル が 指 摘 す るの は 、 い か に 仕 事 を 分 割 す るか とい うこ とで あ る。 仕 事 の分 割 す る役 目が 「内閣 」 に あ る。 さて 、 分 割 され た 仕 事 の 代表 的 な もの が 、先 の 司法 権 と公 共 政 策 権 に 他 な らな い 。 こ うした 分 割 され た 仕 事 で 最 も難 しい の は 、 そ れ らを い か に再 統 一 す るか とい う こ とで あ る。 ヘ ーゲ ル は この 点 に つ い て説 明 す る. 「そ れ ぞ れ の 省庁 に完 全 に 分 かれ て い る場 合 、互 い の意. 志 の 疎 通 が 図 らね ば な らな い が 、 そ れ が きわ め て難 しい」(第287節. 「 解 説 」、S.690、551頁)。. こ. うした 難 問題 の解 決 に 関 わ る役 職 と して 、 首相 、 国家 宰 相 、 内 閣顧 問 な どが あ り、 これ ら の あ り 方 が これ まで 、 「 行 政 の歴 史 の中 で 中 心 的 な 問 題 と され た」(同 所)と. ヘ ー ゲル は のべ て い る。 15.
(16) 第2の. 問題 と して ヘ ー ゲル は 、 内閣 が 掌 握 す る 「中 央 集 権 制 」 と 、 市 民 社 会 の 中 の 「職 業 団. 体 」 に お け る 「自治 」 との 対 立 関 係 とい うこ とを 指 摘 す る。 内 閣 は 当然 な が ら、 上 か ら共 同 の 利 益 を 追 求 し監 視 す るの に 対 して 、 職 業 団 体 は 市 民社 会 の 中 で 、 「自分 た ち の 特 殊 利 益 を 独 立 の 目 標 と して追 求 す る」(第287節. 「 解 説 」、S.691、552頁)。. だ か ら とい っ て 、職 業 団 体 は 国家 か ら独. 立 して しま い、 「国家 の 中 の 国家 」を なす とい うわ け で は な い。 しか し両 者 の志 向 が対 立 す る こ と は事 実 で あ る。 した が って ヘ ー ゲル は こ うい う. 「 統 治権 は二 つ の勢 力 の ぶ つ か る場 とな り、. 上 か らの統 治 と、 自分 た ち の 利 益 を 気 に か け る特 殊 な 団体 の協 議 とが 対 立 す る」(同 所)。 こ う した 職 業 団 体 と同 じ志 向 性 ・性 格 を有 す る もの と して ヘ ー ゲル は 「 地 方 自治 体 」 を あげ る。 地 方 自治 体 も国 家 か らみ る と特 殊 な利 益 を追 求 す る か らで あ る。 では 、 職 業 団体 や 地 方 自治 体 は 国 家 共 同 の 目的 遂 行 を 阻 害 す る、 また そ れ に対 立 す る とい う理 由 で厳 し く排 除 され よ う とす る の だ ろ うか 。 ヘ ー ゲル は、 職 業 団体 や地 方 自治 体 な どの特 殊 な利 益 を認 め る こ とは 重 要 で、 そ うす る こ と に よっ て 「 近 代 国家 の …… 本 来 の強 さが 作 り上 げ られ る」(第287節. 「 解 説 」、S.692、552-3頁)と. い. う。 つ ま り、 自治 団 体 の 自立 的 活 動 を保 証 す る こ とは大 切 で あ る とい うの で あ る。 そ の理 由は こ うで あ る。 政 府 ・内 閣 は 、 自治 団 体 が 「国家 の 中 の国 家 」 に な らな い よ う監 視 はす るが 、 他 方 で 自治 団 体 の正 当 な利 益 に 目を 留 め 、 そ の利 益 を促 進 す る、 そ うす る こ とに よ って 団体 の構 成 員 各 人 が 、 「自分 の権 利 の行 使 が 保 護 され 、上 部 か ら配 慮 され て い るの を感 じ、特 殊 利 益 と体 制 全 体 の 維 持 とを 結 び つ け て考 え る よ うに な る」(同 所)か. らで あ る。. こ の よ うに ヘ ーゲ ル は 、近 年 は 議 院 や 国会 と い った 上 か らの 組 織化 に 大 い に 力 が 注 が れ て い る 反面、「 全 体 の大 多 数 が 位 置 す る」下 部 の組 織 化 が 十 分 で は な い とい い、職 業 団 体 や 地 方 自治 体 な どの 自治 的 自立 的活 動 を で き る だ け尊 重 し促 進 させ る と い う下 部 の組 織 化 が遂 行 され て は じめ て 、 「近 代 国 家 」 の 本 来 の強 さ が作 り上 げ られ る と重 ね て 強 調 す る。 (2)国. 民 の 代表 と して の 「中 間階 層 」 に つ い て. 第295節 の 「本文 」 と 「口頭 解 説 」 で は 、省 庁 と官 僚 に よ る統 治 権 の濫 用 に つ い て ふ れ 、 これ か ら国 家 と国 民 を 守 る手 だ て は 、一 方 で 「 官 僚 機 構 の位 階 制 と責 任制 」(第295節 554頁)の. 「 本 文 」、S.693、. うちに あ る こ と、 他 方 で 「地 方 自治 体 や 職 業 団体 」(同 所)の 権 限 の うち に あ る こ とが. の べ られ る。次 の第296節 で は 、官僚 に必 要 な専 門 分 野 の知 識 習 得 、職 業 訓 練 、実 務 の養 成 と と も に 、 道 徳 教 育 、 思想 教 育 の大 切 さ につ いて 簡 潔 に の べ られ る。 しか し両 説 で の叙 述 は 『要 綱 』 と ほ とん ど変 わ らな い ので 、 そ の詳 細 につ いて は 省略 す る。 最 後 に 、第297節 の叙 述 に つ い て 言及 して お きた い 。へ 一 ゲル は 「 本 文 」 に お い て こ うのべ る一 一 「政 府 関 係者 と国家 官 僚 は、 国民 大 衆 の 教養 あ る知 性 と法 意 識 とを 体 現 す る 中 間階 層 の中 心 部 分 を な す」(第297節. 「本 文 」、S.694、555頁)。. この主 張 を うけ てヘ ー ゲル は 「口頭 解 説 」 に お い. て 、 国民 の教 養 あ る知 性 と法 意識 とを代 表 す る もの と して 「国家 官 僚 」 と と も に、 「 職 業 団体 」 の 責 任 者 た ち を あ げ て い る。 官 僚 の 場 合 は い うまで もな く、 職 業 団 体 の責 任 者 た ち の精 神 と洞 察 力 は いつ も 「 共 同 の利 益 」 16.
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