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「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」の成果と小型家電リサイクルにおけるレガシーの継承について

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【 特 集: 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の持続可能性対策と資源管理 】

「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」の成果と

小型家電リサイクルにおけるレガシーの継承について

今 井 亮 介 *

【要 旨】 東京 2020 大会は,SDGs 実現の観点を重視して企画されてきたところ,大会のレガシーと なるものの一つに,リサイクル金属によりメダルを製造する「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプ ロジェクト」がある。本プロジェクトについては,小型家電リサイクル法の促進につながるものとして, 環境省でも積極的に推進してきた。本プロジェクトの成果もあり,同法への関係主体の参加は大きく拡 大してきたが,現在実施中の同法の施行状況に関する評価・点検の議論では,制度のさらなる推進に向 けた対応として,回収量の増加,効率的なリサイクルの推進,新たな課題への対応の 3 つが示されてい る。「促進型」の制度として設計された本制度が本プロジェクトにより大きく進展したことを踏まえ, 上記 3 つの対応を進めるとともに,本プロジェクトのストーリーを社会で共有しつつ,小型家電が消費 者からリサイクラーに適切かつ確実に引きわたされる仕組みを作ることが求められている。 キーワード:使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律 (小型家電リサイクル法),メダル プロジェクト,都市鉱山リサイクル,東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会

1.小型家電リサイクルとメダルプロジェクト

東京オリンピック・パラリンピック競技大会 (以下 「東京 2020 大会」という) は,開催までついに残り数カ 月というタイミングで,今般の新型コロナウィルスの世 界的な感染拡大に伴い,オリンピック・パラリンピック 史上初の 1 年間の延期が決定されることとなった。東京 2020 大会は,わが国の社会・経済にとって,一つの目 標であり,かつ,そこからさらに新たな時代に向かって いくための橋頭保として考えられているところがあった。 そうした次の時代に向けた結節点を迎えようとしてい た矢先,人類社会は,新型コロナウィルスの感染拡大に より,新しい危機に直面している。この危機の収束は未 だ定かにはみえず,また,第 2 波,第 3 波のおそれが指 摘されていることを踏まえると,この世界的な感染拡大 がわが国および世界の社会・経済にどのような変化をも たらすのか定かではないが,東京 2020 大会は,この危 機を人類が克服した証として,新たな時代につなげる・ 伝えるものとしていくことが必要であると考えている。 東京 2020 大会は,2030 年を目標年とする国連の持 続 可 能 な 開 発 目 標 (Sustainable Development Goals : SDGs) 実現の観点をとりわけ重視して企画されている。 特に,近年の海洋プラスチックごみ問題への国際的な関 心の高まりや,欧州の循環経済 (Circular Economy : CE) への傾注等により世界的な関心が高まっている資 源管理の観点でも,「Zero Wasting (資源を一切ムダに しない)」を掲げ,調達物品のリユース・リサイクル率 99 % や,大会運営時の廃棄物のリユース・リサイクル 率 65 % を目指すなど,積極的な取り組みを進めてきた。 大会を通じてわが国における取り組みを国内外に発信す る一つの大きなチャンスととらえるとともに,オリン ピック・パラリンピックにおいて取り組んだ成果をレガ シーとして次の時代につないでいくことも求められてい る。 こうした持続可能性の観点からの東京 2020 大会のレ ガシーとして非常に重要なものの一つに,オリンピッ ク・パラリンピック各大会で授与されるメダルがあげら れる。本大会で選手に贈られるメダルは,日本国内で回 収された使用済みの携帯電話やノートパソコンといった 廃棄物資源循環学会誌,Vol. 31, No. 3, pp. 177-188, 2020 177 原稿受付 2020. 5. 22 * 環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室 連絡先:〒 100-8975 東京都千代田区霞が関 1-2-2 E-mail : [email protected]

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小型家電から抽出された金・銀・銅を原材料として作ら れることとなっている。この金・銀・銅を作るための使 用済み小型家電を全国で回収したプロジェクトが,(公財) 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 (以下「組織委員会」という) が実施した「都市鉱山か らつくる!みんなのメダルプロジェクト (以下「メダル プロジェクト」という)」である (図 1)。 メダルプロジェクトは,使用済み小型家電の提供を通 じて,誰もが東京 2020 大会に参画できるプロジェクト であり,オリンピック・パラリンピック史上初の取り組 みである。環境省としても,使用済小型電子機器等の再 資源化の促進に関する法律 (平成 24 年法律第 57 号。以 下「小型家電リサイクル法」という) に基づく都市鉱山 リサイクルの促進,ひいてはわが国における循環型社会 の構築につながるものとして,積極的に推進してきた。 小型家電リサイクル法については,現在,経済産業 省・環境省の合同会議において,同法の附則に基づく施 行状況の評価・点検を実施中であり,2019 年 12 月には, 既に議論を取りまとめた報告書案が示されている1) (既 にパブリックコメントを終了し,2020 年 3 月に報告書 取りまとめのための合同会議を開催予定だったところ, 新型コロナウィルス感染拡大防止のため延期。5 月中に 書面審議の形で開催を予定)。本稿では,本合同会議に おける評価・点検の議論に基づき,小型家電リサイクル 制度の現状と課題,今後の方向性について述べた上で, メダルプロジェクトの成果を今後の小型家電リサイクル 制度のさらなる推進にどのようにつなげていくかについ て述べることとしたい。 なお,本稿は執筆時点 (2020 年 5 月) の状況および 情報に基づき執筆しており,一部その後の状況変化を反 映していない可能性がある。特に,このところの新型コ ロナウィルスの感染拡大に伴う社会・経済の変化等につ いては予測が難しいところ,あくまで執筆時点の状況を 前提としていることを申し添える。

2.小型家電リサイクル制度の成立と概要

小型家電リサイクル制度は,小型家電リサイクル法が 2012 年 8 月 10 日に成立し,翌 4 月 1 日に施行されたこ とに伴い始まったリサイクル制度である (図 2)。 小型家電リサイクル法が施行されるまでは,資源の有 効な利用の促進に関する法律 (平成 3 年法律第 48 号。 以下「資源有効利用促進法」という) に基づく製造事業 者による携帯電話,パソコン等の指定再資源化製品の回 収・リサイクルや,ガイドライン等に基づく自主的な取 り組みによって,金属含有製品の分別回収や金属の再資 源化が進められてきた。さらに,その他の製品でも,含 有する素材の市場価値が高い製品は,金属スクラップ (有価物) や産業廃棄物として,経済合理性を有する範 囲で金属回収が行われてきた。 (法人名は省略) 図 1 「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」概要

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他方,市町村で収集されている使用済み小型家電につ いて,鉄やアルミニウムが主たる構成素材である製品に ついては一定程度の金属回収が進んでいたものの,鉄や アルミニウムを除けば,十分な資源の回収は進んでいな かった。 以上から,使用済み小型家電中の有用金属の循環利用, 環境上の問題を惹起する不適正なリサイクルに繋がる海 外流出の抑制,資源の偏在性および寡占性の緩和,最終 処分量の削減による最終処分場の延命化,リサイクルを 通じて有害物質が適切に処理されることによる環境や健 康への影響緩和,さらには天然資源使用量を削減するこ とによる環境負荷低減を目的とした,小型家電のリサイ クルを促進するための制度的な枠組みを導入する必要性 が求められた。こうした議論を受け,2012 年に小型家 電リサイクル法が成立し,翌 2013 年に施行された。 小型家電リサイクル法では,広域的に使用済み小型家 電を収集し,解体,破砕,選別等を行い製錬事業者等へ リサイクル原料として引きわたす者を認定事業者として 国 (経済産業大臣・環境大臣) が認定し,広域的なリサ イクルを促進することを中心とした制度として導入され た。また,本制度は,資源確保の観点も踏まえ,関係者 が協力して自発的に回収方法やリサイクル実施方法を工 夫しながら,それぞれの実情に合わせた形でリサイクル を実施していく点を特徴としている。 認定事業者は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律 (昭和 45 年法律第 137 号。以下「廃棄物処理法」とい う) に基づく都道府県または市町村の許可を受けずに広 域に一般廃棄物または産業廃棄物の収集運搬または処分 を行うことが可能であり,認定事業者の認定計画に基づ き処理を行う委託先事業者も含め,同法に基づく許可は 不要となる。

3.小型家電リサイクル制度の課題

小型家電リサイクル法が施行されてから既に約 7 年が 経過しているところ,2019 年 3 月からは,法制度の評 価・点検が実施されているところである。本制度のこれ までの成果として,2020 年 2 月時点で再資源化事業を 行う者として全国で 53 の事業者が認定され,2019 年 7 月時点で,全国で 8 割を超える市町村が同法に基づく小 型家電の回収に取り組んでいる。さらに,認定事業者と 連携した家電量販店による小型家電の店頭回収は 2,000 を超える店舗で実施され,また,認定事業者が設置する 回収拠点での直接回収や宅配便による個人宅からの回収 が行われるなど,消費者のニーズに対応した多様な回収 ルートの整備が進んでいる。メダルプロジェクトによる 使用済み小型家電の認知度向上効果も加わり,小型家電 の回収量は制度制定当時,市町村からの回収量と小売店 メダルプロジェクトの成果と小型家電リサイクルの今後 179 図 2 小型家電リサイクル法の概要

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等からの回収量を合わせても約 2 万 4 千 ton であったの に対し,2018 年度の回収量は約 10 万 ton を超えるなど 確実な成果が出てきている (図 3〜5)。 こうした成果は,自治体,処理事業者 (認定事業者), 家電量販店等,小型家電リサイクルに対してさまざまな 主体の参加が進んできたことによるものであり,その要 因の一つとして,メダルプロジェクトを通じた全国の自 治体,事業者への小型家電リサイクルへの参加の呼びか けがあったことは間違いないと考えている。特に,市町 村ベースでの参加率の向上には,メダルプロジェクトを きっかけにした参加促進が大きく貢献したと考えている。 そうした形でさまざまな主体の小型家電リサイクルへ の参加が進んだ一方で,法制定当初に設定した目標であ る年間回収量 14 万 ton には到達できず,未利用資源の 活用等の法制定時の目的に対して道半ばの状況にある。 加えて,近年急激に進んでいる中国をはじめとするアジ 図 4 認定事業者の分布状況 (全国 53 社) 図 3 市町村の参加状況       㸦ᖺ㸧       㸦ᖺ㸧

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ア各国の輸入禁止措置の影響による廃プラスチック類等 の処分費用の上昇,金属をはじめとする資源価格の大き な変動等により,認定事業者は一層の効率的な処理の実 施を求められる状況にあると同時に,市町村にとっても, 単に小型家電を分別収集すれば有価で認定事業者に引き 取ってもらえるという状況ではなくなっている。さらに, さまざまな小型電子機器にリチウムイオンを使用した二 次電池を内蔵されるようになり,加熱式たばこ等の新た な製品も増加する中で,処理過程での発火リスクが顕在 化するなど,法施行当初に想定されていなかった新たな 課題にも対処する必要が指摘されているところである。

4.課題に対する対応について

法施行後の成果を踏まえつつ,より小型家電リサイク ルを促進する観点からの課題への対処を検討するため, 現在審議中の経済産業省・環境省合同での有識者会議に おいて取りまとめ中の「小型家電リサイクル制度の施行 状況の評価・検討に関する報告書 (案)」では,現状の 分析とともに,今後の具体的方策の案を示している。以 下では,回収量の増加,効率的なリサイクルの推進,新 たな課題への対応の 3 つに分けてその内容を紹介したい。 4. 1 回収量の増加 法制定時の目的を踏まえれば,まずは小型家電の回収 量を拡大し,廃棄物の適正処理と未利用資源の活用を促 進することが必要である。そのため,報告書案小型家電 の回収量を増加させ,年間 14 万 ton の回収量目標を達 成するための方策として,①市町村の回収量の増加, ②認定事業者による直接回収の拡大,③違法な回収業 者対策,④消費者のさらなる認知向上の四点をあげて いる。以下では,特に重要な観点として,①の市町村回 収の観点と,④の消費者の観点について報告書案におけ る議論を詳細に紹介する。 まず,①の市町村回収に関し,上述のとおり市町村の 小型家電リサイクル制度への参加率は 9 割を超える状況 にあるが,その一方で,人口 1 人あたりでの回収量を比 較すると,市町村により大きな差があることがわかって いる。回収量の目標値である 14 万 ton 達成に向けた目 安である平均 1 kg/人を達成している市町村は,居住人 口ベースで全体の約 2 割にとどまる一方で,0.1 kg/人 の市町村が居住人口ベースで全体の 4 割を占める状況に ある。こうした市町村による 1 人あたり回収量の差は, 基本的には,導入している回収方法の違いによるものと 考えられる (図 6)。 したがって,市町村単位での回収量増加のためには, 1 人あたり回収量が多いステーション回収 (市町村の分 別区分に小型家電を加える回収方式) またはピックアッ プ回収 (回収した不燃物等から小型家電をピックアップ する回収方式) を含む複数の回収方式について,多くの 市町村で進めていくことが重要となる。一方で,これら の回収方法を実施することに関し,追加的コストや人員, スペースの確保が難しいことを理由として実施すること を躊躇する市町村も多く存在する (図 7)。 メダルプロジェクトの成果と小型家電リサイクルの今後 181 ※メーカー等から家庭系のパソコン・携帯電話を引き取ったもの,および事業者から引き取ったもので,再資源化事業計画どお り処理したものを含む 図 5 小型家電がリサイクル事業者の元に回収された実績

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このため,収集運搬コストの低減に向けた優良事例の 横展開や,小型家電回収・再資源化に係る費用や便益の 可視化,リチウムイオン電池の発火リスク低減等の数値 化しづらい便益の整理等の促進を進めることとしている。 これらの対応により,1 人あたり回収量の多い回収方式 をとる際の市町村における追加コストをできる限り低減 することに加え,小型家電リサイクルの促進を行うこと のメリットを明確にすることとしている。 特に,リチウムイオン電池については,上述のとおり 近年多様な製品に内蔵され,分別排出をしない場合,市 町村が回収する可燃ごみや容器包装プラスチックに混入 し,破砕や圧縮の工程で発火につながるおそれが指摘さ れている (4. 3 で詳述)。小型家電として分別排出し, 認定事業者等の専門業者に処理を集約することにより, 市町村としても一元的にリスクを管理することができる 旨を指摘している。 こうした形で,市町村における 1 人あたり回収量の増 加のためにはステーション回収等の回収方法を実施する ことが効果的であるが,特に大都市等において,スペー ス等の都合により実施が難しい市町村も存在する。こう した市町村に関しては,回収方法の検討とともに,市町 村回収を補完するものとして,地域の小売業者等や認定 ※小型家電回収を実施している市町村の人口の合計を分母とする 図 6 市町村における 1 人あたり回収量の分布 注:小型家電リサイクルを実施する市町村は回収方法を選択できる 図 7 市町村における小型家電の回収方法の例

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事業者による直接回収の周知により力を入れるといった 方策の実施を促すこととしている。既に,こうした事業 者と連携し,市町村ホームページにおいて市町村による 回収と一体的に広報を実施しているような例もあるとこ ろ,こうした市町村による一元的な情報発信も回収量増 加に有効と考えられる。 また,環境省としては,上記のような市町村による回 収量増加に向けた取り組みを促進すべく,個々の自治体 に対するオーダーメイド型の支援や,データの分析・活 用,事例集の作成・充実等を行っていくべきとされてい る。 次に,④消費者の認知向上に関し,小型家電リサイ クルにおける回収量を増やしていくためには,まず,小 型家電を排出する消費者が小型家電リサイクル制度を認 知し,適切な方法で廃棄することが重要である。メダル プロジェクトは,市町村をはじめとしてさまざまな主体 の参加を促進する観点では大きな成果を得たが,さらに 実際に排出する一般消費者が小型家電リサイクル制度を きちんと認識することが必要であると考えられる。 そこで報告書案では,自治体,認定事業者その他の関 係主体は,引きつづき,その得意分野を活かした普及啓 発に取り組むべきであると示している。特に,市町村は, 小型家電の排出方法等についてごみカレンダーに掲載す ることなどにより,消費者に小型家電の排出方法を周知 するべきであり,また,学校との連携取組を図るなど, 消費者の認知向上に努めるとともに,消費行動の分析や 消費者に伝わりやすい用語の整理を進めるなど,効果的 な周知に努めるべきであるとしている。 加えて,国は,メダルプロジェクトの成果を国内外に 発信するとともに,その成果をレガシーとして活用し, 自治体,認定事業者等との連携の下,小型家電リサイク ルのさらなる普及啓発を進める「アフターメダルプロ ジェクト」を推進することとしている。 この「アフターメダルプロジェクト」では,小型家電 回収の促進を図る自治体等への支援のため,環境省にお いて追加の回収ボックスやアフターメダルプロジェクト を周知するチラシ等の広報物品ツールの提供や,普及啓 発イベント開催時の支援等を実施している。また,取組 事例として,知的障害者のスポーツ大会であるスペシャ ルオリンピックスと連携した回収や,地域スポーツ大会 等での利用事例として,2021 (令和 3) 年に開催予定の 「三重とこわか大会」における金メダル制作に向けた小 型家電リサイクル回収の支援等,多くの住民に小型家電 リサイクルに参加してもらうための新たな意義づけも実 施しているところである (図 8)。 環境省において,2020 年度前半に東京 2020 大会に向 けてアフターメダルプロジェクトとして準備していた広 報事業については,新型コロナウィルスの感染拡大およ び東京 2020 大会の延期に伴い一時実施を見合わせてい る状況にあるが,今後の状況をみつつ,実施の時期を見 極めていきたい。 4. 2 効率的なリサイクルの推進 認定事業者は,既に述べたとおり,金属価格の変動, 中国等のプラスチック輸入禁止に伴う処理費高騰といっ た外的変動に対応しつつ,リサイクルの効率化・高度化 により,小型家電のリサイクルを通じた資源回収および 市町村のごみ処理システム安定化や,地域経済への貢献 を進めてきた。認定事業者がさらなる効率的なリサイク ルを実施することにより,事業採算性の向上や,回収金 属の種類および量の増加が可能となり,ひいては市町村 等からの引取費用の上昇または処理料金の値下げ等の財 政的メリットを大きくさせ,間接的に回収量の増加にも 寄与することが期待される。また,回収金属の種類およ び量が増加することは,貴金属,レアメタル等の有用金 属回収,有害物質管理といった制度の目的を満たすこと メダルプロジェクトの成果と小型家電リサイクルの今後 183 図 8 アフターメダルプロジェクトについて

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にも寄与すると考えられる (図 9)。 一方で,小型家電のリサイクルは,排出段階,回収段 階,破砕・選別段階,再資源化段階,商品化段階等に分 けられるが,必ずしも業種間の連携が活発ではないとみ られている。そのため,認定事業者の効率的なリサイク ルの推進に向け,技術開発・技術実証,先進的・効率的 な設備の導入を推進するとともに,業種間のコミュニ ケーションを促進することが重要である。 したがって,報告書案では,認定事業者の事業性向上 およびリサイクルの質の向上をさらに図っていくため, 研究開発・技術実証・設備導入補助を活用した技術イノ ベーションの促進と,業種間の連携促進を通じたリサイ クルの効率化・高度化を推進する方向性が示されている。 報告書案では,特に,後者の業種間の連携促進に関して は,認定事業者,市町村,製造業者その他の各関係主体 は,小型家電の回収,再資源化の効率化に向けたコミュ ニケーションに努めるべきとの趣旨が記載されており, 今後,政府においてその具体的なあり方を検討していく べきとされている (図 10)。 こうしたリサイクルの効率化・高度化を推進するため の関係者のコミュニケーションの促進においては,リサ イクルの容易化や促進,内蔵型のリチウムイオン電池の 安全な取出方法等の作業安全確保のための情報や,環境 配慮設計の促進に向けた情報,禁忌物質等のリサイクル を阻害する要因に関する情報等の共有を進めていくこと が必要である。そのためには,情報を共有することで全 ※金属ごとに 2019 (令和元) 年 6 月 1 日の資源価格で試算 (資源価格出所) 鉄,アルミ,銅,真鍮:日刊市境通信社 メタル・リサイクル・マンスリー ステンレス,金,銀,パラジウム:アルム出版社 メタルニュース 図 9 認定事業者の再資源化実績 図 10 効率的なリサイクルのためのコミュニケーションの促進

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体の効率が向上するなど,情報を提供する側と活用する 側のウィン・ウィンの関係を構築することが必要になる。 既に一部では,業界単位または個別企業単位での連携が 進んでいるところ,政府としては,そうした取り組みを さらに進めるため,具体の連携事例を構築していくとと もに,連携の対象を静脈側のみならず動脈側や市町村等 に広げていくことが必要となると考えている。 加えて,こうしたコミュニケーションの促進は,リサ イクルにかかわるところのみならず,その前段階での消 費者からの小型家電の収集促進や,集約化した形での運 搬等の取り組みにおいても必要と考えている。消費者の 目線のもとで,地域単位での市町村,事業者一体となっ た回収方法の周知や,効率的な収集運搬に向けた取り組 み等も,関係者のコミュニケーションのテーマとして取 りあげていくことが有用と考えている。 4. 3 新たな課題への対応 今回の評価・点検の審議の中では,小型家電リサイク ル法の施行時点では必ずしも想定されていなかったいく つかの点について問題提起され,対応が議論された。こ うした新たな課題に対しても,小型家電リサイクルの推 進のため,適切に対応していくことが必要であると考え ている。 そうした新たな課題の中でも,特に多く指摘されたの は,本稿でもここまで何度か触れてきたリチウムイオン 電池の問題である。リチウムイオン電池は,従前より使 用されている二次電池であるが,近年特に,電気電子機 器の高機能化に伴い,性能が高く,かつ小型のリチウム イオン電池を使用する製品が普及しており,廃棄物とし て排出される段階でのリスク要因となっている。実際, 小型家電に含まれるリチウムイオン電池については,市 町村の可燃ごみ,不燃ごみ,容器包装プラスチックごみ といったさまざまな分別区分に混入し,ごみ収集や中間 処理の過程で衝撃が加わる,破砕されることによる発 火・発煙事例が報告されている。 一般消費者からみて,密閉型で自ら電池を交換するこ ともないため電池が入っていると意識せずに廃棄される ような機器が増加していること,また,小型であっても 高性能で大容量であることから,ひとたび衝撃を受けた 際の発火の危険性が高いことなどが,近年この問題によ るリスクが高まっている背景と考えられる。 こうした状況は,小型家電リサイクルを含む廃棄物処 理工程全体での安全性確保の課題であるが,特に認定事 業者においては,発火による火災リスクの防止のため, 破砕前の選別や手解体の導入,さらには防爆機能つきの 破砕機の導入,消火装置の導入等の追加的な火災対策を 講じる者もおり,全体としての処理コストの増加につな がっている。 こうしたリチウムイオン電池の発火リスクへの対応に 関しては,リチウムイオン電池を排出段階で分別するこ とにより,その運搬において発火の原因となりうる強い 衝撃を与えるおそれのある通常の可燃ごみ,不燃ごみや プラスチック容器包装ごみへの混入を減らすことができ, 発火リスク低減策を講じている認定事業者等において適 切な処理を実施することができる。このような適切な管 理により,廃棄物処理システム全体におけるリチウムイ オン電池による発火リスクを低減することができると考 えられる。報告書案では,このための具体策として,① 消費者による適切な分別のための効果的な周知・情報提 供と,②消費者が排出しやすい回収ルートの整備・維 持の 2 点をあげている (図 11)。 まず,①消費者による適切な分別のための効果的な メダルプロジェクトの成果と小型家電リサイクルの今後 185 図 11 二次電池の適正処理・リサイクルのあるべき姿

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周知・情報提供としては,消費者がリチウムイオン電池 を含んでいる製品を正しく認識するとともに,適切な排 出ルートを選択できるようにするため,市町村,製造事 業者,小売事業者等による具体的な周知や製品情報の表 示,一般的な注意喚起等を求めている。その際,リチウ ムイオン電池を使用した製品は,特殊な機器や方法等を 用いなければ電池の取り外しが困難なもの (「電池一体 型」) と,電池の取り外しが可能なもの (「電池取外可能 型」) に大別されるところ,電池一体型の製品について は安全性の観点から機器のまま取り外さずに排出し,電 池取外可能型の製品については電池を取り外した状態で 排出することが望ましいと整理している。 また,②消費者が排出しやすい回収ルートの整備・ 維持については,リチウムイオン電池の排出時に,小型 家電や電池の回収チャネルにアクセスできない場合,可 燃ごみ,不燃ごみ等に混入するリスクは大きくなってし まうことから,消費者が排出しやすい回収ルートの整備 や既存ルートの維持を求めている。一義的には,資源有 効利用促進法により,リチウムイオン電池や同法で指定 されたリチウムイオン電池使用製品については,その製 造業者等が自主回収に取り組むことが求められており, 製造業者等が自ら,または製造業者等が会員となってい る (一社)JBRC によって回収体制が構築されている。しか し,製品が多様化し,資源有効利用促進法で指定されて いない製品が次々と上市されている状況下において,認 定事業者として,リチウムイオン電池等を安全に処理で きる体制を構築し,消費者が排出しやすい回収ルートを 整備していくことは,市町村の通常のごみ処理における 発火等の事故抑制に寄与すると整理している。小型家電 リサイクル制度におけるこうした社会的役割についても, 関係者で評価した上で,システムとして支えていくこと が重要であると考えられる。 なお,特に近年上市された新たな製品に関し,小型家 電リサイクル法において対象品目として指定されている 28 品目に該当しない,または該当するかどうか容易に 判別がつかないものが排出されはじめている。こうした 製品については,指定品目への該当性を明確化するとと もに,対象品目の指定趣旨に照らし,必要に応じて対象 品目へ追加するべきと整理されている。合同会議の議論 においては,近年特に販売が増加しているものとして加 熱式たばこ等が指摘されているところ,小型家電リサイ クル法を含む関係法令において必要に応じ整理を行うこ とを念頭に置きつつ,関係業界等とともに,実態の把握 や消費者にとってわかりやすい回収方法の検討等を進め ていく必要があると考えている。

5.メダルプロジェクトの成果と小型家電リサ

イクルの今後の展開

これまでも述べてきたとおり,小型家電リサイクル法 は,使用済み小型家電中の有用金属の循環利用や,最終 処分量の削減による最終処分場の延命化等をその目的と すると同時に,関係者が協力して自発的に回収方法やリ サイクルの実施方法を工夫しながら,それぞれの実情に 合わせた形でリサイクルを実施していく点を制度の特徴 としている。 このため本制度は,製造事業者等の関係者に一定の義 務を課す特定家庭用機器再商品化法 (家電リサイクル 法) 等と比較して,いわゆる「促進型」の制度であると され,いわゆる「義務型」に比べると,関係者の積極的 な参加や自主的な取り組みがより重要な要素となってい る。 こうした観点からみた場合,メダルプロジェクトは単 にオリンピック・パラリンピック開催上の大きな成果で あることに止まらず,小型家電リサイクル推進の観点か らも非常に大きな意義があるものと考えており,その中 心は「多様な関係者の参加に向けた積極的な動機付け」 である。 メダルプロジェクトの実施過程では,市町村,住民, 認定事業者,アスリート,各地の商工会議所,商工会, 教育機関等,非常に幅広い主体からの協力を得た。これ は,自分が使っていた携帯電話,パソコン等の機器から, 誰もが知っている金・銀・銅メダルを作る,というわか りやすさが,この活動に参加する大きなインセンティブ となったことによる。また,こうした実際の行動を通じ, 日々の生活の中でなかなか実感する機会のない「都市鉱 山リサイクル」を体験することにもつながったものと考 えられる。 一般市民としてリサイクルに参加するといっても,分 別排出することはあっても,自らが分別した資源が製品 となったものを直接目にすることはほとんどない。それ に対して,メダルプロジェクトはオリンピック・パラリ ンピックという世界的なイベントで,誰もが目にする 「メダル」を参加した全員の力で作るという実感を通じ て,リサイクルや資源循環の意義について参加者全員が 共有することができる。こうしたメダルプロジェクト固 有の意義は,「促進型」である小型家電リサイクル制度 における「参加」という要素に非常にマッチしたものと なっている。 同時に,メダルプロジェクトの実施過程では,多様な 主体がさまざまな形で回収を行った。自治体が分別収集 したものもあれば,イベントでのボックス回収,店頭回

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収,協力事業所での回収,教育機関での回収等,多様な 回収方法がとられたが,こうした多様性を可能とするの も,多様な回収方法を可能とする小型家電リサイクル制 度ならではという側面がある。こうした点が,本プロ ジェクトにおいて,開始当時には達成を危ぶむ声もあっ た必要な金属量の期間内の回収につながったともいえる のではないかと考えている。 一方で,ここまで,報告書案にあげられている課題お よびそれへの対応の中で述べてきたとおり,小型家電リ サイクルは,単に多様な主体へ参加を呼びかける段階を 超えて,回収量の増加のための回収方法の変更や,関係 者の連携促進による効率的なリサイクルの実現,リチウ ムイオン電池の適切な分別等,リサイクルのやり方や一 般市民の行動変容を進めていかなければもう一段先に進 むことは難しい状況にある。こうした状況において,メ ダルプロジェクトを本当の意味でレガシーとしつつさら なる段階に進むためには,リサイクルの社会的意義を共 有するためのモデルケースとして,メダルプロジェクト のストーリーを社会で共有するとともに,アフターメダ ルプロジェクトをはじめとする今後の周知広報の文脈で, リチウムイオン電池の対応等の側面も含め,小型家電が 一般消費者からリサイクラーに適切かつ確実に引きわた される仕組みを作っていくことが必要である。その観点 からは,小型家電リサイクルを教育や体験の中に位置づ け,実際の行動を根づかせていく努力も重要であると考 えている。

6.お わ り に

小型家電リサイクル制度は,開始されてからまだ日の 浅い制度であり,今回の制度評価・検討においても,今 後のさらなる推進のために対応が必要なさまざまな課題 が示されている。その中でも指摘されているのは,多様 な関係者の都市鉱山リサイクルへの参加であり,メダル プロジェクトの実施はその観点でわが国の循環型社会の 構築,SDGs の実現に向け,大きな意義があるものと考 えている。この成果を今後の都市鉱山リサイクルのさら なる促進につなげていくため,政府としては,近々取り まとめられる有識者の合同会議における報告書等を踏ま え,「アフターメダルプロジェクト」の推進をはじめと するさらなる認知向上,小型家電リサイクルへの参加促 進,さらには小型家電リサイクルにかかわるすべての関 係者の行動変容の促進を含めて,制度を推進していくこ ととする。 本来であれば,今この時期に,メダルプロジェクトの 成果を活かし,小型家電リサイクルをさらなる段階に進 めるための絶好の機会として東京 2020 大会を位置づけ, 環境省としてもさまざまな取り組みを行うことを予定し ていたところ,コロナウィルスの感染拡大の影響により 一旦情勢をみる形となることを余儀なくされている。一 方で,リサイクルは日々の営みであり,重要な経済活動 であることから,歩みを止めることは許されない。1 年 の間に,報告書に基づくさらなる取り組みを進めた上で, 東京にオリンピック・パラリンピックを迎え,日本の取 り組みをアピールしていくこととしたい。 【謝辞】 本稿のベースとなる産業構造審議会産業技術環境 分科会廃棄物・リサイクル小委員会小型家電リサイ クルワーキンググループおよび中央環境審議会循環 型社会部会小型電気電子機器リサイクル制度及び使 用済製品中の有用金属の再生利用に関する小委員会 の合同会議における議論においては,それぞれの座 長を務める東北大学名誉教授 中村崇氏および中部 大学経営情報学部教授 細田衛士氏をはじめとして, 各界の有識者の皆様に多大なる御貢献をいただいた。 この場を借りて,厚く御礼を申し上げる。 参 考 文 献 1 ) 産業構造審議会 産業技術環境分科会 廃棄物・リサイ クル小委員会小型家電リサイクルワーキンググループ, 中央環境審議会 循環型社会部会 小型電気電子機器リ サイクル制度及び使用済製品中の有用金属の再生利用 に関する小委員会:小型家電リサイクル制度の施行状 況の評価・検討に関する報告書 (案),産業構造審議会 産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会小型 家電リサイクルワーキンググループ (第 7 回),中央環 境審議会循環型社会部会 小型電気電子機器リサイクル 制度及び使用済製品中の有用金属の再生利用に関する 小委員会 (第 20 回),資料 3 http : //www.env.go.jp/council/03recycle/20_1.html (閲覧日 2020 年 5 月 20 日) メダルプロジェクトの成果と小型家電リサイクルの今後 187

(12)

Success of the Urban Mine Medal Project Linked to Home Appliance Recycling Progress

Ryosuke Imai

Office for Recycling Promotion, Policy and Coordination Division, Environment Regeneration and Resource Circulation Bureau, Ministry of the Environment

(1-2-2 Kasumigaseki, Chiyoda-ku, Tokyo 100-8975 Japan) Abstract

The TOKYO 2020 Games have been planned with an emphasis on the realization of SDGs. Toward this aim, the Urban Mine Medal Project, which uses recycled metal to manufacture the Olympic medals awarded to athletes, is hailed to be a legacy of these Games for two reasons.

Japanʼs Ministry of the Environment has been proactively promoting this project as a way to boost its Small Home Appliance Recycling Law. Participation by various shareholders with regard to the enactment of this law has expanded significantly due to the success of this project. While measuring further promotional points of the system, three important outcomes have emerged based on evaluation and inspection discussions regarding enforcement of the law since its implementation : increased collection amounts, efficient recycling is promoted, and new challenges are addressed. Based on the fact that this Project, actually designed as a “promotional type” system, has made such great progress it is clear we must promote the above mentioned measures, share the story of this project widely, and create a mechanism that ensures all small home appliances are properly and securely handed over from consumers to recyclers.

参照

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